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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】弾性着衣装着補助具
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/90 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
A47G25/90
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024148433
(22)【出願日】2024-08-30
【審査請求日】2024-09-02
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524325557
【氏名又は名称】加藤 義行
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義行
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-501773(JP,A)
【文献】特開2014-61259(JP,A)
【文献】特開2008-132315(JP,A)
【文献】特許第5048880(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0101046(US,A1)
【文献】米国特許第9198530(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性着衣の身体への装着を補助する弾性着衣装着補助具であって、
前記身体の一部を載せることが可能な身体載置面を有する基台と、
水平方向である左右方向において間隔を空けて設けられた右可動部材および左可動部材と、
前記左右方向における前記右可動部材と前記左可動部材との間隔を調整する左右間隔調整機構と、
前記右可動部材に設けられ、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な右上引っ掛け部および右下引っ掛け部と、
前記身体載置面に垂直な方向における前記右上引っ掛け部と前記右下引っ掛け部との間隔を調整する右上下間隔調整機構と、
前記左可動部材に設けられ、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な左上引っ掛け部および左下引っ掛け部と、
前記身体載置面に垂直な方向における前記左上引っ掛け部と前記左下引っ掛け部との間隔を調整する左上下間隔調整機構と、
前記左右方向において前記右可動部材と前記左可動部材との間に設けられ、前記右下引っ掛け部および前記左下引っ掛け部よりも下方に位置し、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な中央下引っ掛け部と、を備える
ことを特徴とする弾性着衣装着補助具。
【請求項2】
前記左右間隔調整機構は、ねじ軸の回転によって前記右可動部材と前記左可動部材との間隔を調整し、
前記ねじ軸が一方向に回転することで、前記右可動部材と前記左可動部材との間隔が大きくなり、前記ねじ軸が逆方向に回転することで、前記右可動部材と前記左可動部材との間隔が小さくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性着衣装着補助具。
【請求項3】
前記右上下間隔調整機構は、前記身体載置面に垂直な方向における前記右可動部材の伸縮によって、前記右上引っ掛け部と前記右下引っ掛け部との間隔を調整し、
前記左上下間隔調整機構は、前記身体載置面に垂直な方向における前記左可動部材の伸縮によって、前記左上引っ掛け部と前記左下引っ掛け部との間隔を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性着衣装着補助具。
【請求項4】
前記左右方向に対して垂直な水平方向を前後方向としたとき、
前記中央下引っ掛け部は、前記基台の後方の端部に設けられ、
前記右下引っ掛け部および前記左下引っ掛け部は、前記右上引っ掛け部および前記左上引っ掛け部よりも後方に突出している
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性着衣装着補助具。
【請求項5】
前記基台を水平面に設置したとき、前記身体載置面は前方に向かうにつれて低くなるように傾斜する
ことを特徴とする請求項4に記載の弾性着衣装着補助具。
【請求項6】
前記基台の前方の端部に設けられ、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な脱衣用引っ掛け部をさらに備えている
ことを特徴とする請求項5に記載の弾性着衣装着補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ストッキング、弾性ソックスや弾性スリーブ等の弾性着衣の装着を補助する弾性着衣装着補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性着衣は、圧迫療法の一方法として用いられ、下肢静脈瘤や静脈血栓後遺症群等の静脈疾患の治療、手術後や入院加療中の患者の肺塞栓症や深部静脈血栓症の予防、および、下肢や上肢に間質液が溜まるむくみ(浮腫)の治療に使用される。弾性ストッキングは、一般的なストッキングと比べて締め付け圧が強くなっているため、弾性ストッキングを着用することでふくらはぎの筋肉をサポートし、さらには深部にある静脈や表在静脈を締め付け、それらの血管の断面積を縮小させることで血流速が上がり、結果として、重力に逆らって心臓に運ばれる静脈の血流を促進するものである(非特許文献1参照)。
【0003】
弾性着衣は、身体の一部を締め付けるための強い弾性を有しており、装着が容易ではないという課題を有している。具体的には、弾性ストッキングにおいては一般に足首周りを最も強く締め付けるように構成されているため、踵を超えて引き上げるために弾性ストッキングの履き口を広げることが特に困難であり、弾性ストッキングの履き口を広げながら装着することに多大な労力が必要である。そのため、弾性着衣の装着を補助する弾性着衣装着補助具として、上記疾患の患者と共に、弾性着衣の装着に苦労する脳梗塞等の後遺症を患った片麻痺患者や高齢者等が容易に使用できる補助具が望まれている。
【0004】
特許文献1には、足部用弾性着衣の装着を補助するための装着補助具が記載されている。この装着補助具は、U字型に形成されたベース部材と、ベース部材上に形成された膝側開口部および爪先側開口部を有するトンネル状の案内部と、ベース部材の両端に設けられた把持部とを備えている。膝側開口部とその周辺は、把持部を操作することによって幅方向に広がるように構成されている。把持部またはその近傍を両手で握った状態で、足部用弾性着衣が装着されている装着補助具を膝側に引っ張ることで、足部用弾性着衣が使用者の足に装着された状態となる。
【0005】
特許文献2には、弾性靴下類を差し込んで足の挿入位置に合わせて保持するための左右一対の保持器を、使用者の足幅に合わせるために左右の方向に移動する拡縮装置と、弾性靴下類の踵部分を下向きに拡張するための踵掛け装置とを有した装着補助具ユニットが記載されている。踵掛け装置は、弾性靴下類の踵部分を引っ掛けるフックと、その踵部分を下方へ拡張した状態を維持するためのロックレバーとを有しており、ロックレバーによるフックの位置の固定を解除することで、バネによってフックが跳ね上がるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-217417号公報
【文献】特許第5048880号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】岩井武尚、孟真、佐久田斉、「新 弾性ストッキング・コンダクター 第2版 増補版」へるす出版、2020年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の把持部を操作することで膝側開口部を広げる構成では、弾性着衣の履き口を広げることができるものの、把持部を操作するために腕力が必要となるため、弾性着衣の履き口を広げた状態で維持するには依然として多大な労力が必要であった。また、使用者毎に身体の形状やサイズは異なり、膝側開口部が幅方向にのみ広がる構成では、弾性着衣の履き口を身体への装着に適した形状に広げることができない場合があった。
【0009】
また、上記特許文献2では、ロックレバーを解除したときにバネの力により弾性靴下類の履き口の位置にフックを跳ね上げることが記載されているものの、フックに引っ掛かる弾性靴下類の張力によって、フックが足の爪先側(すなわち前方)に強く引っ張られて跳ね上がらない場合が考えられ、この場合、弾性着衣の踵部分を容易に装着することができない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、弾性着衣の履き口を身体への装着に適した形状に広げることができ、かつ、弾性着衣の履き口を広げた状態で維持するための労力を低減することができ、梃の原理を利用した人の動きで弾性着衣を容易に装着できる弾性着衣装着補助具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の弾性着衣装着補助具は、弾性着衣の身体への装着を補助する弾性着衣装着補助具であって、前記身体の一部を載せることが可能な身体載置面を有する基台と、水平方向である左右方向において間隔を空けて設けられた右可動部材および左可動部材と、前記左右方向における前記右可動部材と前記左可動部材との間隔を調整する左右間隔調整機構と、前記右可動部材に設けられ、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な右上引っ掛け部および右下引っ掛け部と、前記身体載置面に垂直な方向における前記右上引っ掛け部と前記右下引っ掛け部との間隔を調整する右上下間隔調整機構と、前記左可動部材に設けられ、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な左上引っ掛け部および左下引っ掛け部と、前記身体載置面に垂直な方向における前記左上引っ掛け部と前記左下引っ掛け部との間隔を調整する左上下間隔調整機構と、前記左右方向において前記右可動部材と前記左可動部材との間に設けられ、前記右下引っ掛け部および前記左下引っ掛け部よりも下方に位置し、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な中央下引っ掛け部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記左右間隔調整機構は、ねじ軸の回転によって前記右可動部材と前記左可動部材との間隔を調整し、前記ねじ軸が一方向に回転することで、前記右可動部材と前記左可動部材との間隔が大きくなり、前記ねじ軸が逆方向に回転することで、前記右可動部材と前記左可動部材との間隔が小さくなるように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記右上下間隔調整機構は、前記身体載置面に垂直な方向における前記右可動部材の伸縮によって、前記右上引っ掛け部と前記右下引っ掛け部との間隔を調整し、前記左上下間隔調整機構は、前記身体載置面に垂直な方向における前記左可動部材の伸縮によって、前記左上引っ掛け部と前記左下引っ掛け部との間隔を調整することが好ましい。
【0014】
また、前記左右方向に対して垂直な水平方向を前後方向としたとき、前記中央下引っ掛け部は、前記基台の後方の端部に設けられ、前記右下引っ掛け部および前記左下引っ掛け部は、前記右上引っ掛け部および前記左上引っ掛け部よりも後方に突出していることが好ましい。
【0015】
また、前記基台を水平面に設置したとき、前記身体載置面は前方に向かうにつれて低くなるように傾斜することが好ましい。
【0016】
また、前記基台の前方の端部に設けられ、前記弾性着衣を引っ掛けることが可能な脱衣用引っ掛け部をさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性着衣の履き口を任意の形状に広げることができ、かつ、弾性着衣の履き口を広げた状態で維持するための労力を低減することができ、梃の原理を利用した人の動きで弾性着衣を容易に装着できる弾性着衣装着補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る弾性着衣装着補助具の概略構成図であり、(A)は左側面図、(B)は平面図、(C)は背面図である。
図2】(A)~(C)は、右上引っ掛け部および右下引っ掛け部の構成を示す右可動部材の拡大図であり、(D)および(E)は、中央下引っ掛け部の拡大図であり、(F)および(G)は、脱衣用引っ掛け部の拡大図である。
図3】(A)~(C)は、左右間隔調整機構、右上下間隔調整機構、および左上下間隔調整機構を示す概略構成図である。
図4】(A)~(C)は、弾性着衣を装着する際の流れを説明するための弾性着衣装着補助具の側面図である。
図5】(D)~(F)は、弾性着衣を装着する際の流れを説明するための弾性着衣装着補助具の側面図である。
図6】弾性着衣が右上引っ掛け部、左上引っ掛け部、右下引っ掛け部、左下引っ掛け部、および中央下引っ掛け部に引っ掛かった状態を説明するための説明図である。
図7】(A)~(C)は、弾性着衣を脱衣する際の流れを説明するための弾性着衣装着補助具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る弾性着衣装着補助具を説明する。なお、図中の矢印で示す前後方向X、左右方向Y、および上下方向Zは、互いに直交する直線方向であって、前後方向Xと左右方向Yは水平方向であり、上下方向Zは鉛直方向である。
【0020】
図1に示すように、弾性着衣装着補助具1(以下「装着補助具1」という)は、基台10と、可動部材であるポール20R,20Lと、弾性着衣を引っ掛けることが可能な引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50,60とを備えている。装着補助具1は、弾性着衣の足・脚への装着を補助する。
【0021】
基台10は、身体の一部を載せることが可能な身体載置面としての上面11と、中央下引っ掛け部50が設けられた後方の端部である後端部12と、脱衣用引っ掛け部60が設けられた前方の端部である前端部13とを有している。
【0022】
上面11は、前方に向かうにつれて低くなるように構成されている。すなわち、基台10を水平面に設置したとき、上面11は、前方に向かうにつれて低くなるように傾斜する。図中の矢印Sは、上面11に対して平行な方向であって左右方向Yに垂直な上面平行方向Sを示し、図中の矢印Tは、上面11に対して垂直な方向である上面垂直方向Tを示している。上面11には、ポール20R,20Lが基台10の内部から上方に突出するための開口部11R,11Lが設けられている。
【0023】
左右一対のポール20R,20Lは、左右方向Yにおいて間隔を空けて設けられており、それぞれ、柱状に形成された基端部材21と、基端部材21の上端に嵌まった先端部材22とにより構成されている。
【0024】
具体的には、右可動部材である右ポール20Rは、右下引っ掛け部40Rが設けられた基端部材21と、右上引っ掛け部30Rが設けられた先端部材22とにより構成されている。一方、左可動部材である左ポール20Lは、左下引っ掛け部40Lが設けられた基端部材21と、左上引っ掛け部30Lが設けられた先端部材22とにより構成されている。
【0025】
図2(A)~(C)を参照して、引っ掛け部30R,30L,40R,40Lの構成を説明する。なお、左上引っ掛け部30Lおよび左下引っ掛け部40Lの形状は、右上引っ掛け部30Rおよび右下引っ掛け部40Rと同じであるため、図2における図示は省略する。
【0026】
上引っ掛け部30R,30Lは、先端部材22の上端により構成されており、フランジ部31と半球部32とを有している。フランジ部31は、左右方向Yおよび上面平行方向Sにおいて先端部材22で最も大きい径を有する部分である。フランジ部31には、滑り止めとして機能するローレット溝が形成されている。半球部32は、フランジ部31から上方に突出した半球面を有する部分である。
【0027】
下引っ掛け部40R,40Lは、基端部材21から後方に突出した後方突出部により構成されており、上引っ掛け部30R,30Lよりも後方に突出している。下引っ掛け部40R,40Lは、湾曲下面部41と傾斜側面部42R,42Lと傾斜上面部43とを有している。なお、本実施形態の下引っ掛け部40R,40Lは、湾曲下面部41と傾斜上面部43との間がくり抜かれたように形成されているが、湾曲下面部41と傾斜上面部43との間はくり抜かれていなくてもよい。
【0028】
湾曲下面部41は、左右方向Yにおける中央から右方および左方に向かうにつれて低くなる湾曲面により構成されており、当該湾曲面は基端部材21の後端から上面平行方向Sに延びている。
【0029】
傾斜側面部42R,42Lは、上面垂直方向Tに対して傾斜した傾斜平面により構成されており、当該傾斜平面は、上方に向かうにつれて左右方向Yにおける傾斜側面部42R,42Lの間隔が小さくなるように、湾曲下面部41の右端および左端から上方に延びている。
【0030】
傾斜上面部43は、上面平行方向Sに対して傾斜した傾斜平面により構成されており、当該傾斜平面は、左右一対の傾斜側面部42R,42Lを接続するとともに上方に向かうにつれて左右方向Yの幅が小さくなるように構成されている。
【0031】
次に、図2(D)および(E)を参照して、中央下引っ掛け部50の構成を説明する。
中央下引っ掛け部50は、ねじ等の固定手段(図示略)により基台10に取り付けられる部品により構成され、左右方向Yにおいて右ポール20Rと左ポール20Lとの間に設けられ、下引っ掛け部40R,40Lよりも下方に位置している。
【0032】
中央下引っ掛け部50は、湾曲下面部51を有している。湾曲下面部51は、前後方向Xにおける中央から前方および後方に向かうにつれて低くなる湾曲面により構成されており、当該円弧面は左右方向Yに延びている。湾曲下面部51は、中央下引っ掛け部50の後端かつ下端を構成する後端縁51Aを有している。湾曲下面部51および後端縁51Aは、左右方向Yにおける中央から右方および左方に向かうにつれて高くなるように湾曲している。
【0033】
次に、図2(F)および(G)を参照して、脱衣用引っ掛け部60の構成を説明する。
脱衣用引っ掛け部60は、ねじ等の固定手段(図示略)により基台10に取り付けられる部品により構成され、上下延伸部61と、水平延伸部62と、下垂部63とを有している。
【0034】
上下延伸部61は、基台10の前端よりも上方に延びた部分により構成されている。水平延伸部62は、上下延伸部61の上端から後方に延びた部分により構成されている。下垂部63は、水平延伸部62の後端から下方に突出した部分により構成されている。水平延伸部62は、左右方向Yにおける中央から右方および左方に向かうにつれて高くなるように湾曲した下面部62Aを有し、同様に、下垂部63は、左右方向Yにおける中央から右方および左方に向かうにつれて高くなるように湾曲した下端縁63Aを有している。
【0035】
また、図3に示すように、装着補助具1は、左右間隔調整機構70と、上下間隔調整機構80R,80Lとを備えている。図3は、基台10内の構成を示す図であって、基台10の外形を破線で示している。
【0036】
左右間隔調整機構70は、ねじ軸71と、ハンドル72と、左右一対のキャリッジ73R,73Lと、ガイド軸74とを備えている。
ねじ軸71は、左右方向Yに延びており、右キャリッジ73Rを支持する第1ねじ部71Aと、左キャリッジ73Lを支持する第2ねじ部71Bとを有している。第1ねじ部71Aおよび第2ねじ部71Bには、互いに逆方向に切られたおねじが形成されている。なお、図中において、ねじ軸71を支持する構成の図示は省略している。
【0037】
ハンドル72は、基台10の側方である右方に設けられている。装着補助具1の使用者は、ハンドル72を回転させることにより、ねじ軸71を回転できるように構成されている。
【0038】
右キャリッジ73Rは、ねじ軸71の第1ねじ部71Aと噛み合うめねじ(図示略)を有するとともに、右ポール20Rを支持している。こうして、ねじ軸71の回転によって、右キャリッジ73Rおよび右ポール20Rは一体となって左右方向Yに移動するように構成されている。
【0039】
左キャリッジ73Lは、ねじ軸71の第2ねじ部71Bと噛み合うめねじ(図示略)を有するとともに、左ポール20Lを支持している。こうして、ねじ軸71の回転によって、左キャリッジ73Lおよび左ポール20Lは一体となって左右方向Yに移動するように構成されている。
【0040】
ガイド軸74は、ねじ軸71に対して平行に設けられており、キャリッジ73R,73Lを貫通するように構成されている。ガイド軸74は、左右方向Yにおけるキャリッジ73R,73Lの移動をガイドする。なお、図中において、ガイド軸74を支持する構成の図示は省略している。
【0041】
以上の構成を備えた左右間隔調整機構70によれば、ハンドル72およびねじ軸71が一方向R1(図3(A)参照)に回転すると、ガイド軸74に沿って右キャリッジ73Rが右方に移動するとともに左キャリッジ73Lが左方に移動し、右ポール20Rと左ポール20Lとの間隔が大きくなる。また、ハンドル72およびねじ軸71が逆方向R2(図3(A)参照)に回転すると、ガイド軸74に沿って右キャリッジ73Rが左方に移動するとともに左キャリッジ73Lが右方に移動し、右ポール20Rと左ポール20Lとの間隔が小さくなる。こうして、左右間隔調整機構70は、ねじ軸71の回転によって左右方向Yにおける右ポール20Rと左ポール20Lとの間隔を調整する。
【0042】
左右一対の上下間隔調整機構80R,80Lは、ポール20R,20Lの基端部材21に設けられためねじ(図示略)と、ポール20R,20Lの先端部材22に設けられたおねじ81とにより構成されている。
【0043】
右上下間隔調整機構80Rによれば、右ポール20Rの先端部材22の回転に応じて右ポール20Rが伸縮し、右上引っ掛け部30Rが上面垂直方向Tに移動する。こうして、右上下間隔調整機構80Rは、上面垂直方向Tにおける右ポール20Rの伸縮によって、上面垂直方向Tにおける右上引っ掛け部30Rと右下引っ掛け部40Rとの間隔を調整する。
【0044】
一方、左上下間隔調整機構80Lによれば、左ポール20Lの先端部材22の回転に応じて左ポール20Lが伸縮し、左上引っ掛け部30Lが上面垂直方向Tに移動する。こうして、左上下間隔調整機構80Lは、上面垂直方向Tにおける左ポール20Lの伸縮によって、上面垂直方向Tにおける左上引っ掛け部30Lと左下引っ掛け部40Lとの間隔を調整する。
【0045】
図4図6を参照して、装着補助具1を使用して弾性着衣である弾性ストッキング2を身に着ける際の手順の一例を説明する。
【0046】
まず、間隔調整機構70,80R,80Lを動作させて、足のサイズに合わせて、ポール20R,20Lの間隔、右側の引っ掛け部30R,40Rの間隔、および、左側の引っ掛け部30R,40Rの間隔を調整する。
【0047】
次いで、弾性ストッキング2の履き口2A付近まで弾性ストッキング2の爪先部分2Bまで手繰り寄せた状態で履き口2Aに足を入れ、図4(A)に示すように、足の爪先から足の甲および土踏まずまで弾性ストッキング2を履く。
【0048】
次いで、図4(B)に示すように、履き口2Aを構成する弾性ストッキング2の踵部分を中央下引っ掛け部50の湾曲下面部51に引っ掛けるとともに、足の土踏まずを基台10に乗せ、踵を持ち上げるように、土踏まずを支点として図4(B)中の白抜き矢印の方向に足を回転させる。履き口2Aを中央下引っ掛け部50に引っ掛けた状態で踵を持ち上げることにより、履き口2Aが大きく開く。
【0049】
次いで、図4(C)に示すように、履き口2Aを残りの引っ掛け部30R,30L,40R,40Lに引っ掛け、上面11上を滑るように図4(C)中の白抜き矢印の方向に足を移動させる。こうして、引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50から弾性ストッキング2を引き出し、図5(D)に示すように、足の踝付近まで弾性ストッキング2を履く。
【0050】
図6は、履き口2Aが引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50に引っ掛けられた状態を上面平行方向Sの後方側から見た様子を示している。図6では、足を二点鎖線で図示している。
【0051】
図6に示すように、弾性ストッキング2は、フランジ部31および半球部32が弾性ストッキング2で覆われるようにして、引っ掛け部30R,30Lに引っ掛けられる。フランジ部31は、弾性ストッキング2が引っ掛け部30R,30Lから意図せずに外れることを抑制し、半球部32は、引っ掛け部30R,30Lからの弾性ストッキング2の引き出しを容易なものとしている。
【0052】
また、弾性ストッキング2は、傾斜側面部42R,42Lおよび傾斜上面部43の一部が弾性ストッキング2で覆われるようにして、引っ掛け部40R,40Lに引っ掛ける。このとき、弾性ストッキング2は、湾曲下面部41の後端に引っ掛かる。湾曲下面部41は、弾性ストッキング2が引っ掛け部40R,40Lから意図せずに外れることを抑制し、傾斜側面部42R,42Lおよび傾斜上面部43は、足を前方に移動させる際に、弾性ストッキング2を相対的に後方へ押し出すものとして機能する。
【0053】
図5(D)に示すように、足の踝付近まで弾性ストッキング2を履いた状態から、図5(D)中の白抜き矢印の方向に足をさらに移動させる。こうして、引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50から弾性ストッキング2をさらに引き出し、図5(E)に示すように、引っ掛け部40R,40Lの後端よりも前方に足の踵を移動させる。
【0054】
次いで、足の爪先が持ち上げるように、踵を支点にして図5(E)中の白抜き矢印の方向に足を回転させる。爪先を持ち上げることにより、履き口2Aが小さくなり、履き口2Aの張力が低下する。
【0055】
次いで、図5(F)に示すように、中央下引っ掛け部50から履き口2Aを取り外しながら踵の上方まで引っ張り、残りの引っ掛け部30R,30L,40R,40Lから履き口2Aを取り外す。こうして、引っ掛け部30R、30L,40R,40L,50から弾性ストッキング2を取り外すことで、足首付近まで弾性ストッキング2を履く。
【0056】
そして、履き口2Aがふくらはぎに移動するように弾性ストッキング2を手繰り寄せることで、足の爪先からふくらはぎまで弾性ストッキング2を履く。以上のように装着補助具1を使用することで、手の力に代えて足の回転を利用して、弾性ストッキング2を装着することができる。
【0057】
図7を参照して、装着補助具1を使用して弾性ストッキング2を脱ぐ際の手順の一例を説明する。
【0058】
まず、弾性ストッキング2の履き口2Aを持って足首付近まで弾性ストッキング2を降ろし、図7(A)に示すように、足の爪先が後方を向くようにして足の裏の全体を基台10に乗せる。
【0059】
次いで、図7(B)に示すように、履き口2Aを脱衣用引っ掛け部60の水平延伸部62および下垂部63に引っ掛け、踵を持ち上げるように、爪先付近を支点として図7(B)中の白抜き矢印の方向に足を回転させる。履き口2Aを脱衣用引っ掛け部60に引っ掛けた状態で踵を持ち上げることにより、履き口2Aが大きく開く。
【0060】
そして、履き口2Aが大きく開いている状態で、図7(C)に示すように、踵を持ち上げたまま弾性ストッキング2から足を引き抜くことで、弾性ストッキング2を脱ぐことができる。
【0061】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)装着補助具1は、弾性着衣を引っ掛けることが可能な引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50(右上引っ掛け部、右下引っ掛け部、左上引っ掛け部、左下引っ掛け部、および中央下引っ掛け部)と、ポール20R,20L(右可動部材および左可動部材)の間隔を調整する左右間隔調整機構70と、引っ掛け部30R,40Rの間隔を調整する右上下間隔調整機構80Rと、引っ掛け部30L,40Lの間隔を調整する左上下間隔調整機構80Lとを備えている。この構成によれば、弾性着衣の履き口を引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50に引っ掛けることで、弾性着衣の履き口を広げた状態で維持することができる。また、間隔調整機構70,80R,80Lで左右方向Yおよび上面垂直方向T(身体載置面に垂直な方向)における引っ掛け部30R,30L,40R,40Lの間隔を予め調整しておくことで、履き口の形状およびサイズを使用者の身体に合わせることができる。したがって、弾性着衣の履き口を身体への装着に適した形状に広げることができ、かつ、弾性着衣の履き口を広げた状態で維持するための労力を低減することができる。また、基体10に載せた踵を支点にして足を回転させ、中央下引っ掛け部50から履き口2Aを取り外しながら踵の上方まで引っ張り、残りの引っ掛け部30R,30L,40R,40Lから履き口2Aを取り外すことで、足首付近まで弾性ストッキング2を履くことができる。このため、梃の原理を利用した人の動き(すなわち使用者の足の動き)で弾性着衣の踵部分を容易に装着できる。
【0062】
(2)ねじ軸71が一方向R1に回転することで、右ポール20R(右可動部材)と左ポール20L(左可動部材)との間隔が大きくなり、ねじ軸71が逆方向R2に回転することで、右ポール20Rと左ポール20Lとの間隔が小さくなるように構成されている。この構成によれば、ポール20R,20Lの位置を個別に調整することなく、ポール20R,20Lの間隔を調整できる。
【0063】
(3)右上下間隔調整機構80Rは、右ポール20Rの伸縮によって、右上引っ掛け部30Rと右下引っ掛け部40Rとの間隔を調整するため、上面垂直方向Tにおける右ポール20Rの長さを変えることで、引っ掛け部30R,40Rの間隔を調整できる。また、左上下間隔調整機構80Lは、左ポール20Lの伸縮によって、左上引っ掛け部30Lと左下引っ掛け部40Lとの間隔を調整するため、上面垂直方向Tにおける左ポール20Lの長さを変えることで、引っ掛け部30L,40Lの間隔を調整できる。
【0064】
(4)中央下引っ掛け部50は、基台10の後端部12(後方の端部)に設けられ、右下引っ掛け部40Rおよび左下引っ掛け部40Lは、右上引っ掛け部30Rおよび左上引っ掛け部30Lよりも後方に突出している
【0065】
(5)基台10を水平面に設置したとき、上面11(身体載置面)は前方に向かうにつれて低くなるように傾斜する。この構成によれば、上面11に対して足を下方に押し付けることで、足を前方に移動させることができる。
【0066】
(6)装着補助具1は、基台10の前端部13(前方の端部)に設けられ、弾性着衣を引っ掛けることが可能な脱衣用引っ掛け部60をさらに備えている。この構成によれば、脱衣用引っ掛け部60により、弾性着衣の脱衣も補助することができる。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0068】
・各引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50,60の形状を適宜変更してもよい。また、引っ掛け部30R,30L,40R,40L,50,60とは別に、弾性着衣を引っ掛けることが可能な引っ掛け部を設けてもよい。
【0069】
・上記実施形態に記載した装着補助具1の使用方法は一例であり、弾性ストッキング2を身に着ける際の手順を変更してもよい。例えば、弾性ストッキング2を引っ掛け部30R,30L,40R,40Lに引っ掛けた後に、左右間隔調整機構70によりポール20R,20Lの間隔を調整してもよい。
【0070】
・弾性ストッキング2以外の弾性着衣の装着を補助する装着補助具に本発明を適用してもよい。すなわち、弾性着衣装着補助具は、例えば、弾性着衣である弾性スリーブの腕への装着を補助するものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 弾性着衣装着補助具
2 弾性ストッキング(弾性着衣)
10 基台
11 上面(身体載置面)
12 後端部(後方の端部)
13 前端部(前方の端部)
20L 左ポール(左可動部材)
20R 右ポール(右可動部材)
30L 左上引っ掛け部
30R 右上引っ掛け部
40L 左下引っ掛け部
40R 右下引っ掛け部
50 中央下引っ掛け部
60 脱衣用引っ掛け部
70 左右間隔調整機構
71 ねじ軸
80L 左上下間隔調整機構
80R 右上下間隔調整機構
R1 一方向
R2 逆方向
T 上面垂直方向(身体載置面に垂直な方向)
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
【要約】
【課題】弾性着衣の履き口を身体への装着に適した形状に広げることができ、かつ、履き口を広げた状態で維持するための労力を低減することができ、梃の原理を利用した人の動きで弾性着衣を容易に装着できる弾性着衣装着補助具を提供する。
【解決手段】弾性着衣装着補助具1は、基台10と、左右一対のポール20R,20Lと、ポール20R,20Lの間隔を調整する左右間隔調整機構と、右ポール20Rに設けられ、弾性着衣を引っ掛けることが可能な引っ掛け部30R,40Rと、引っ掛け部30R,40Rの間隔を調整する右上下間隔調整機構と、左ポール20Lに設けられ、弾性着衣を引っ掛けることが可能な引っ掛け部30L,40Lと、引っ掛け部30L,40Lの間隔を調整する左上下間隔調整機構と、ポール20R,20Lとの間に設けられ、引っ掛け部40R,40Lよりも下方に位置し、弾性着衣を引っ掛けることが可能な中央下引っ掛け部50とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7