(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】フィラーパイプのアース構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20241220BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B60K15/04 D
F02M37/00 301M
(21)【出願番号】P 2023502147
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2022000731
(87)【国際公開番号】W WO2022181089
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2021027216
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】マザーサンヤチヨ・オートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】廣原 健
(72)【発明者】
【氏名】花原 裕志
(72)【発明者】
【氏名】小山 忠士
(72)【発明者】
【氏名】永田 敬俊
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0180176(US,A1)
【文献】特表2008-535715(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004026(WO,A1)
【文献】特表2017-538614(JP,A)
【文献】特開2011-213128(JP,A)
【文献】特開2009-220590(JP,A)
【文献】特開2012-011848(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーパイプと、
前記フィラーパイプの上流端が挿入され、給油口を画定する筒状のカバー部材と、
前記フィラーパイプと前記カバー部材との間に介在する環状のシール部と、
前記フィラーパイプの外面に取り付けられ、前記フィラーパイプの長手方向に沿って延在するアース部材と
、
前記給油口を閉じる閉位置と、前記閉位置に対して下流側に位置し、前記給油口を開く開位置との間を変位可能に設けられた開閉体と、
前記開閉体を前記閉位置に向けて常時付勢する付勢部材とを備え、
前記カバー部材が導電材からなり、前記アース部材が前記シール部よりも下流側にて前記カバー部材に接触
し、
前記開閉体が、導電材からなり、
前記付勢部材が、導電材からなり、且つ前記開閉体の内面及び前記カバー部材の内面に常時接するように設けられ、
前記開閉体が、前記カバー部材の内側に装着された環状部材によって回動可能に支持されており、前記環状部材には前記付勢部材を前記カバー部材に接触させるための切欠又は貫通孔が形成されている、フィラーパイプのアース構造。
【請求項2】
前記開閉体が前記閉位置にあるときに前記カバー部材に接触する、請求項1に記載のフィラーパイプのアース構造。
【請求項3】
フィラーパイプと、
前記フィラーパイプの上流端が挿入され、給油口を画定する筒状のカバー部材と、
前記フィラーパイプと前記カバー部材との間に介在する環状のシール部と、
前記フィラーパイプの外面に取り付けられ、前記フィラーパイプの長手方向に沿って延在するアース部材とを備え、
前記カバー部材が導電材からなり、前記アース部材が前記シール部よりも下流側にて前記カバー部材に接触し、
前記シール部は、樹脂製の前記フィラーパイプ及び樹脂製の前記カバー部材の一方に一体に形成された突条であ
る、フィラーパイプのアース構造。
【請求項4】
前記シール部は前記フィラーパイプに一体に形成されている、請求項3に記載のフィラーパイプのアース構造。
【請求項5】
フィラーパイプと、
前記フィラーパイプの上流端が挿入され、給油口を画定する筒状のカバー部材と、
前記フィラーパイプと前記カバー部材との間に介在する環状のシール部と、
前記フィラーパイプの外面に取り付けられ、前記フィラーパイプの長手方向に沿って延在するアース部材とを備え、
前記カバー部材が導電材からなり、前記アース部材が前記シール部よりも下流側にて前記カバー部材に接触し、
前記フィラーパイプの前記外面における前記カバー部材により覆われる部分に、周方向に延在する複数の補強部が設けられ、前記シール部に対して上流側及び下流側のそれぞれに、前記補強部の少なくとも1つが配置されてい
るフィラーパイプのアース構造。
【請求項6】
前記シール部は前記フィラーパイプに一体に形成されている、請求項5に記載のフィラーパイプのアース構造。
【請求項7】
前記補強部のそれぞれは、それに対応する前記カバー部材の部分の内径よりも小さな外径を有する請求項6に記載のフィラーパイプのアース構造。
【請求項8】
前記補強部が、前記フィラーパイプの前記上流端と、前記フィラーパイプにおける前記カバー部材の下流端に対応する部分とに配置されている請求項
5~7のいずれか1項に記載のフィラーパイプのアース構造。
【請求項9】
フィラーパイプと、
前記フィラーパイプの上流端が挿入され、給油口を画定する筒状のカバー部材と、
前記フィラーパイプと前記カバー部材との間に介在する環状のシール部と、
前記フィラーパイプの外面に取り付けられ、前記フィラーパイプの長手方向に沿って延在するアース部材とを備え、
前記カバー部材が導電材からなり、前記アース部材が前記シール部よりも下流側にて前記カバー部材に接触し、
前記カバー部材の下流端と、それに対向する前記フィラーパイプの前記外面との間に空隙が設けられ、前記アース部材が板部材の折り曲げ加工品であり、前記アース部材の上流部が、外向きにヘアピン状に折り曲げられ、且つ前記カバー部材の内面に弾発的に当接す
るフィラーパイプのアース構造。
【請求項10】
前記カバー部材の前記内面の前記下流端には、凹部又は貫通孔が設けられ、
前記アース部材の前記上流部が、前記凹部又は前記貫通孔に弾発的に係止される請求項9に記載のフィラーパイプのアース構造。
【請求項11】
前記カバー部材の前記下流端よりも下流側において前記フィラーパイプの前記外面に突部が設けられ、前記突部の上流側又は下流側の面に凹部又は貫通孔が設けられ、前記アース部材が、前記突部の外輪郭に沿って延在して、前記突部を3方から外囲する外囲部と、前記外囲部から前記凹部又は前記貫通孔に突入する係合部とを有する請求項9又は10に記載のフィラーパイプのアース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィラーパイプのアース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される給油装置においては、フィラーパイプの外端部の帯電を防止するために車体を介してフィラーパイプの外端部を接地させるアース構造が設けられる。そのようなアース構造を備えた給油装置として、フィラーパイプと、フィラーパイプの外端部(上流端部)が挿入され、給油口を画定する筒状の外側筒状部材と、フィラーパイプの外端部に設けられた導電性の内側筒状部材と導電性のステーとを電気的に接続するばね片とを有し、ステーが車体を介して接地されたものが公知である(特許文献1)。この給油装置では、外側筒状部材には下流側の端部から上流側に向けて切欠部が形成され、ばね片が切欠部を通過するように配置されている。
【0003】
外側筒状部材に切欠部が設けられると、その部分では外側筒状部材はフィラーパイプを覆う機能を果たさない。また、フィラーパイプと外側筒状部材との間のシール性が確保されない。
【0004】
そのような課題を解消し得る給油装置として、
図7に示すアース構造を備えたものが公用されている。この給油装置101では、フィラーパイプ104の外端部が挿入される筒状のカバー部材105に切欠部が設けられておらず、金属板からなるアース部材130がフィラーパイプ104の外端部の内部に配置された導電性のノズルガイド部材116に接触するように設けられている。アース部材130は、フィラーパイプ104の上流端にて折れ曲がり、フィラーパイプ104の外面に沿って上流端から下流側に向けて長手方向に延在し、カバー部材105の下流端を超えた位置にて導電性のステー108に接触している。フィラーパイプ104とカバー部材105との間のシール性を向上させるために、カバー部材105の外周側にはシール部材140が設けられている。シール部材は、カバー部材105の下流端よりも下流側へ延出し、その下流端がフィラーパイプ104の外周面に密着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の給油装置では、シール部材とフィラーパイプとが密着する部分を通過するようにアース部材が配置されるため、アース部材が通過する部分においてシール性を確保することが難しく、高いシール性を実現することは難しかった。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、フィラーパイプとカバー部材との間のシール性を向上できるフィラーパイプのアース構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、フィラーパイプのアース構造であって、フィラーパイプ(4)と、前記フィラーパイプの上流端(4a)が挿入され、給油口(3)を画定する筒状のカバー部材(5)と、前記フィラーパイプと前記カバー部材との間に介在する環状のシール部(22)と、前記フィラーパイプの外面(4b)に取り付けられ、前記フィラーパイプの長手方向に沿って延在するアース部材(30)とを備え、前記カバー部材が導電材からなり、前記アース部材が前記シール部よりも下流側にて前記カバー部材に接触する。
【0009】
この構成によれば、アース部材がシール部を通過するように配置されなくても、アース部材が導電材からなるカバー部材に接触することで、カバー部材が接地され、カバー部材の帯電が防止される。そして、シール部を通過するようにアース部材を配置する必要がないため、フィラーパイプとカバー部材との間のシール性を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、フィラーパイプのアース構造は、前記給油口(3)を閉じる閉位置と、前記閉位置に対して下流側に位置し、前記給油口を開く開位置との間を変位可能に設けられた開閉体(41)と、前記開閉体を前記閉位置に向けて常時付勢する付勢部材(43)とを更に備え、前記開閉体が、導電材からなり、且つ前記閉位置にあるときに前記カバー部材(5)に接触するとよい。
【0011】
この構成によれば、開閉体は給油ノズルにより下流側へ押し込まれることによって給油口を開く。給油口を開く際に給油ノズルが開閉体に接触すると、開閉体を介して給油ノズルがカバー部材に電気的に接続され、アース部材を介して接地される。
【0012】
好ましくは、前記付勢部材(43)が、導電材からなり、且つ前記開閉体の内面(41a)及び前記カバー部材の内面(5d)に常時接するように設けられているとよい。
【0013】
この構成によれば、開閉体は、閉位置にあるときだけでなく、閉位置以外の位置にあるときにも、付勢部材を介してカバー部材に電気的に接続される。
【0014】
好ましくは、前記開閉体(41)が、前記カバー部材(5)の内側に装着された環状部材(42)によって回動可能に支持されており、前記環状部材には前記付勢部材(43)を前記カバー部材に接触させるための切欠(42a)又は貫通孔が形成されているとよい。
【0015】
この構成によれば、カバー部材に開閉体を回転可能に支持する構造を設ける必要がない。そのため、導電材からなるカバー部材の形状が簡単になり、カバー部材の成形性がよい。また、開閉体を回転可能に支持する構造の設計自由度が高い。
【0016】
好ましくは、前記シール部は、樹脂製の前記フィラーパイプ(4)及び樹脂製の前記カバー部材(5)の一方に一体に形成された突条(22)であるとよい。
【0017】
この構成によれば、シールのために別部材を用意する必要がない。そのため、部品点数が削減され、組立工数が低減する。
【0018】
好ましくは、前記シール部(22)は前記フィラーパイプ(4)に一体に形成され、前記フィラーパイプの前記外面における前記カバー部材(5)により覆われる部分に、周方向に延在する複数の補強部(21、23、24)が設けられ、前記シール部に対して上流側及び下流側のそれぞれに、前記補強部の少なくとも1つが配置されているとよい。
【0019】
この構成によれば、フィラーパイプの外面に複数の補強部とシール部とが形成されるため、組付け性の低下を招くことなくフィラーパイプを補強し、これによりカバー部材の変形を抑制することができる。また、カバー部材の変形が抑制されることにより、シール性の低下が抑制される。
【0020】
好ましくは、前記補強部(21、23、24)のそれぞれは、それに対応する前記カバー部材の部分の内径よりも小さな外径を有するとよい。
【0021】
この構成によれば、カバー部材の内面に対するシール部の密着性が低下することが抑制される。これにより、フィラーパイプとカバー部材との間のシール性を確保しつつ、カバー部材の変形を抑制することができる。
【0022】
好ましくは、前記補強部(21、23、24)が、前記フィラーパイプ(4)の前記上流端(4a)と、前記フィラーパイプにおける前記カバー部材(5)の下流端(5c)に対応する部分とに配置されているとよい。
【0023】
この構成によれば、カバー部材の変形を効果的に抑制することができる。
【0024】
好ましくは、前記カバー部材の下流端(5c)と、それに対向する前記フィラーパイプの前記外面との間に空隙が設けられ、前記アース部材が板部材の折り曲げ加工品であり、前記アース部材の上流部(31)が、外向きにヘアピン状に折り曲げられ、且つ前記カバー部材の内面(5d)に弾発的に当接するとよい。
【0025】
この構成によれば、アース部材の上流部は、フィラーパイプの上流端がカバー部材に挿入されることによってカバー部材の内面に当接する。したがって、アース部材の組付けが容易である。
【0026】
好ましくは、前記カバー部材の前記内面の前記下流端には、凹部又は貫通孔(5e)が設けられ、前記アース部材の前記上流部が、前記凹部又は前記貫通孔に弾発的に係止されるとよい。
【0027】
この構成によれば、アース部材の上流部が凹部又は前記貫通孔に係止されるため、組付け後におけるアース部材の位置ずれが防止される。
【0028】
好ましくは、前記カバー部材の前記下流端よりも下流側において前記フィラーパイプ(4)の前記外面(4b)に突部(26)が設けられ、前記突部の上流側又は下流側の面に凹部又は貫通孔(26a)が設けられ、前記アース部材が、前記突部の外輪郭に沿って延在して、前記突部を3方から外囲する外囲部(34)と、前記外囲部から前記凹部又は前記貫通孔に突入する係合部(35)とを有するとよい。
【0029】
この構成によれば、アース部材の係合部がフィラーパイプの突部に係止されるため、組付け時におけるアース部材のフィラーパイプからの脱落が抑制される。
【発明の効果】
【0030】
このように本発明によれば、フィラーパイプとカバー部材との間のシール性を向上できるフィラーパイプのアース構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る給油装置の取付状態を示す要部斜視図
【
図4】
図2に示すアース部材の取り付け構造の説明図
【
図6】給油時にフィラーパイプに作用する荷重の説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
図1は実施形態に係る給油装置1の取付状態を示す要部斜視図である。給油装置1は、給油ノズル2(
図6参照)から供給される液体燃料を燃料タンクに導くための装置である。本実施形態では、給油装置1はガソリンや軽油等の液体燃料を用いて走行する自動車に搭載され、燃料を走行用燃料タンクに導く。
【0034】
図1に示すように、給油装置1は、給油口3から燃料タンクに至る流路形成部材として、一端側において燃料タンクに接続されるフィラーパイプ4と、フィラーパイプ4の他端側が挿入され、給油口3を画定する筒状のカバー部材5とを有している。なお、
図1にはフィラーパイプ4の他端側の一部のみが示されている。以下、燃料の流路における燃料タンクの側を下流側といい、給油口3の側を上流側という。カバー部材5にはフィラーパイプ4の上流端4a(
図2)が挿入されている。
【0035】
フィラーパイプ4は非導電性の樹脂からなる略円筒状のパイプ部材であり、長手方向に延びる燃料流路を内部に画定している。フィラーパイプ4の外面4bには、半径方向外向きに突出する1対の舌片6(
図1には一方のみが示されている)が設けられている。1対の舌片6は板状をなし、フィラーパイプ4の長手方向に平行な壁面を形成している。1対の舌片6はフィラーパイプ4の外面4bにおいて周方向に離間して配置されている。各舌片6にはその厚さ方向に貫通する取付孔6aが設けられている。
【0036】
1対の舌片6には、取付孔6aに挿入される金属製の螺子部材7によってブラケット8が結合されている。ブラケット8は導電性を有する金属製の板状部材(ステー)であり、一側においてフィラーパイプ4の舌片6に取り付けられ、他側において金属製のボルトによって車体に取り付けられる。これにより、フィラーパイプ4はブラケット8を介して車体に支持される。ここでいう車体とは、車両の骨格を形成する金属製のフレーム(メンバ)やフレームに設けられた金属製のパネルを意味する。ブラケット8が車体に締結されることにより、ブラケット8は車体を介して接地される。ブラケット8は、螺子部材7に限られず、リベットやクリップ等の締結部材によって1対の舌片6に締結されてもよい。
【0037】
カバー部材5は導電性を有する樹脂製の部材であり、フィラーパイプ4の上流端4aに外嵌し、その上流側の端部において略円形の給油口3を画定している。カバー部材5は、フィラーパイプ4の外面4bの上流側部分及び上流端面を覆う。給油装置1は更に、給油口3を開閉するためのシャッタ9を備えている。シャッタ9はカバー部材5に取り付けられており、シャッタ9とカバー部材5とによりカバーユニット10が構成される。
【0038】
図2は
図1に示す給油装置1の要部縦断面図である。
図2に示すように、フィラーパイプ4は、上流側に配置されて上流端4aにおいて略円形に開口する大経部11と、大経部11から下流側に向けて次第に縮径するように延出するテーパ部12とを有している。大経部11の内部には、メインフラップ弁13を回動によって開閉可能に保持する弁支持部材14が設けられている。弁支持部材14の下流側、且つテーパ部12の内部には、燃料をガイドする燃料ガイド部材15が設けられている。弁支持部材14の内側であってメインフラップ弁13の上流側には、給油ノズル2(
図6)をガイドするノズルガイド部材16が設けられている。
【0039】
これらの弁支持部材14、メインフラップ弁13、ノズルガイド部材16及び燃料ガイド部材15は、
図7に示す従来構造の弁支持部材114、メインフラップ弁113、ノズルガイド部材116及び燃料ガイド部材115と同一又は同様の構成であってよい。
【0040】
フィラーパイプ4の上流端4aはカバー部材5に挿入されて、適宜な結合構造によってカバー部材5に結合される。結合構造は公知の構造であってよい。結合構造は、例えば、フィラーパイプ4をカバー部材5に挿入することによって両者を係合させるソケット式の結合構造や、フィラーパイプ4をカバー部材5に挿入した後に回転させることによって両者を係合させるバヨネット式の結合構造等であってよい。
【0041】
図3は
図2に示すフィラーパイプ4の要部斜視図である。
図3に示すように、フィラーパイプ4の上流端4aには矩形状の切欠17が形成されている。またフィラーパイプ4の上流端4a近傍には、弁支持部材14を係止するために、弁支持部材14の外周部に突出形成された爪18(
図2)を受容するべくフィラーパイプ4を貫通する矩形状の複数の爪受容孔19が周方向に並んで形成されている。
【0042】
フィラーパイプ4の外面4bには周方向に延在する複数の突条(21~24)が一体形成されている。本実施形態では、フィラーパイプ4の外面4bにおけるカバー部材5により覆われる部分に4つの突条が形成されている。以下、上流側から順に、第1突条21、第2突条22、第3突条23、第4突条24と称する。第1突条21はフィラーパイプ4の上流端4aに形成されており、切欠17に沿って屈曲している。第2突条22は複数の爪受容孔19よりも下流側に円環状に形成されている。第3突条23及び第4突条24は周方向の一部において高さが小さくなるように形成され、互いに近接して配置されている。
【0043】
図2に示すように、第4突条24は、フィラーパイプ4におけるカバー部材5の下流端5cに対応する部分に配置されている。第1突条21、第3突条23及び第4突条24は、矩形の断面形状をしており、それぞれに対応するカバー部材5の部分の内径よりも小さな外径を有している。なお、高さが変化する第3突条23及び第4突条24の外径とは、最も高い部分の外径をいう。したがって、第1突条21、第3突条23及び第4突条24と、カバー部材5の内面5dとの間には小さな隙間が形成されている。これらの第1突条21、第3突条23及び第4突条24は、後述するようにカバー部材5を補強する補強部として機能する。
【0044】
第2突条22は、略三角形の断面形状をしており、対応するカバー部材5の部分の内径よりも大きな外径を有している。したがって、第2突条22の先端は全長にわたってカバー部材5の内面5dに密着しており、第2突条22はフィラーパイプ4とカバー部材5との間に介在する環状のシール部として機能する。このように、樹脂製のフィラーパイプ4に一体に形成された第2突条22によってシール部が構成されることにより、シールのために別部材を用意する必要がない。そのため、部品点数が削減され、組立工数が低減する。
【0045】
図3に示すように、第1突条21~第3突条23は、フィラーパイプ4の外面4bに周方向に所定の間隔を空けて配置されて長手方向に延在する複数の軸方向リブ25によって互いに連結されている。第3突条23及び第4突条24は1つの軸方向リブ25によって互いに連結されている。
【0046】
第3突条23及び第4突条24は、
図2の断面図に示される2か所において高さが他の部分に比べて低くなっている。したがって、この部分では他の部分に比べてカバー部材5の内面5dとフィラーパイプ4の外面4bとの間の隙間が大きくなっている。本実施形態では、この部分において第3突条23及び第4突条24の高さはゼロになっている。言い換えれば、この部分において第3突条23及び第4突条24は欠落している。
【0047】
図2に示すように、第3突条23及び第4突条24の欠落部に対応する周方向位置にて第4突条24から下流側へ離間した部分には、フィラーパイプ4の外面4bから径方向外側に突出する突部26が設けられている。突部26にはフィラーパイプ4の長手方向に延びる貫通孔26aが形成されている。貫通孔26aは、突部26の上流側の面及び下流側の面に開口している。
図1に併せて示すように、ブラケット8は、長手方向について突部26と重なるようにフィラーパイプ4に固定される。突部26に対応するブラケット8の部分には、突部26を受容するべくブラケット8を貫通する突部受容孔28が形成されている。
【0048】
フィラーパイプ4の外面4bにおける第3突条23及び第4突条24が低くなった部分には、アース部材30が取り付けられている。アース部材30は、導電性を有する長尺部材であり、フィラーパイプ4の長手方向に沿って延在している。本実施形態では、アース部材30は弾性を有する金属製の板部材を折り曲げ加工してなる折り曲げ加工品である。アース部材30は、第2突条22よりも下流側且つ第3突条23よりも上流側の位置から下流側へ向けて延び、第4突条24よりも下流側であってブラケット8とオーバーラップする位置に至っている。
【0049】
図2に示すように、アース部材30は、外向きにヘアピン状に折り曲げられた上流部31と、上流部31から下流側へ延びる本体部32とを備えている。アース部材30の上流部31はカバー部材5の内面5dに弾発的に当接している。アース部材30の上流部31には、外向きに膨出する膨出部33が形成されている。膨出部33に対応するカバー部材5の下流端5cには貫通孔5eが形成されており、膨出部33が貫通孔5eに進入することによって上流部31はカバー部材5の貫通孔5eに弾発的に係止される。
【0050】
アース部材30の本体部32の下流側部分には、外向きに突出し、突部26の外輪郭に沿って延在して突部26を上流側、外側及び下流側の3方から外囲する外囲部34が形成されている。外囲部34の下流側には、突部26の貫通孔26aに突入し、突部26に係合する係合部35が形成されている。また、アース部材30における外囲部34及び係合部35の下流側には、外向きにヘアピン状に折り曲げられた下流部36が設けられている。アース部材30の下流部36はフィラーパイプ4の外面4bとブラケット8との間に配置され、ブラケット8に弾発的に当接している。
【0051】
図4は
図2に示すアース部材30の取り付け構造の説明図である。
図2及び
図4に示すように、アース部材30は、本体部32が第3突条23及び第4突条24の欠落部に受容され、係合部35が突部26の貫通孔26aに突入することで、フィラーパイプ4の外面4bに取り付けられる。アース部材30がフィラーパイプ4の外面4bに取り付けられた状態で、フィラーパイプ4の上流端4aはカバー部材5に挿入され、カバー部材5がフィラーパイプ4に結合される。また、アース部材30がフィラーパイプ4の外面4bに取り付けられた状態で、ブラケット8がアース部材30の下流部36に接触するようにフィラーパイプ4の舌片6に取り付けられる。これにより、給油装置1は
図1及び
図2に示す組付け状態になる。
【0052】
導電性を有するアース部材30は、フィラーパイプ4の長手方向に沿って延在し、第2突条22よりも下流側にて導電材からなるカバー部材5に接触するとともに、下流部36にてブラケット8に接触している。つまり、カバー部材5及びブラケット8はアース部材30によって電気的に接続される。これにより、カバー部材5はアース部材30、ブラケット8及び車体を介して接地され、アース部材30がシール部である第2突条22を通過するように配置されなくても、フィラーパイプ4の上流端4aに設けられたカバー部材5の帯電が防止される。したがって、給油ノズル2が帯電している場合には、給油ノズル2がカバー部材5に接触したときに放電が行われ、メインフラップ弁13の下流側で燃料通路に充満するベーパに引火することがない。
【0053】
図2に示すように、カバー部材5の下流端5cと、それに対向するフィラーパイプ4の外面4bとの間に空隙が設けられており、この部分でアース部材30の上流部31が外向きにヘアピン状に折り曲げられている。よって、アース部材30の上流部31は、フィラーパイプ4の上流端4aがカバー部材5に挿入されることによってカバー部材5の内面5dに当接する。そのため、アース部材30の組付けが容易である。また、カバー部材5の下流端5cに貫通孔5eが設けられ、アース部材30の上流部31が、貫通孔5eに弾発的に係止されるため、組付け後におけるアース部材30の位置ずれが防止される。
【0054】
他の実施形態では、カバー部材5の下流端5cに貫通孔5eが形成される代わりに、カバー部材5の内面5dに凹部が形成され、アース部材30の上流部31が、凹部に弾発的に係止されてもよい。
【0055】
上記のようにアース部材30は、突部26を3方から外囲する外囲部34と、外囲部34から突部26の貫通孔26aに突入する係合部35とを有する。これにより、アース部材30の係合部35がフィラーパイプ4の突部26に係止され、組付け時におけるアース部材30のフィラーパイプ4からの脱落が抑制される。
【0056】
他の実施形態では、係合部35は外囲部34の上流側に形成されてもよい。また、突部26に貫通孔26aが形成される代わりに、係合部35が形成された側の突部26の面に凹部が形成されていてもよい。
【0057】
図5は
図1に示すカバーユニット10の背面図である。
図2及び
図5に示すように、シャッタ9は、給油口3の中心を通る分割線によって分割された2枚の開閉体としての扉41によって構成されている。扉41は、導電性を有する樹脂製の板状部材であり、給油口3のカバー部材5の内側に装着された環状部材42によって分割線と平行な回動軸周りに回動可能に支持されている。扉41は、給油口3の下流側に配置されており、給油口3を閉じる閉位置と、閉位置に対して下流側に位置し、給油口3を開く、
図2に想像線で示される開位置との間を回動により変位可能に設けられている。
【0058】
またシャッタ9は、扉41を閉位置に向けて常時付勢する付勢部材を備えている。付勢部材は、本実施形態では各扉41の回動軸に同軸に取り付けられた金属製の2つの捩じりコイルばね43によって構成されている。捩じりコイルばね43は環状部材42によって支持されており、その一端は対応する扉41の内面41aに当接し、その他端は環状部材42に形成された切欠42aを通過してカバー部材5の内面5dに当接している。
【0059】
このように扉41はカバー部材5の内側に装着された環状部材42によって回動可能に支持されるため、カバー部材5に扉41を回転可能に支持する構造を設ける必要がない。そのため、導電材からなるカバー部材5の形状が簡単になり、カバー部材5の成形性がよい。また、扉41を回転可能に支持する構造の設計自由度が高い。更に、カバー部材5の内側に環状部材42が装着されていても、環状部材42に切欠42aが形成されたことにより、捩じりコイルばね43がカバー部材5に接触する構成が実現される。なお、切欠42aの代わりに貫通孔が環状部材42に形成されてもよい。
【0060】
図2に示すように、各扉41は閉位置にあるときにカバー部材5に接触している。一方、各扉41は、閉位置から開位置側へ回動するとカバー部材5から離間する。ただし、扉41は捩じりコイルばね43を介してカバー部材5に常時電気的に接続されている。
【0061】
給油ノズル2(
図6)は、給油時に扉41に押し付けられることによって扉41を下流側の開位置へ回動させて給油口3を開き、給油口3の奥(下流側)へ挿入される。給油口3の奥へ挿入されると、給油ノズル2はノズルガイド部材116によってフィラーパイプ4の軸線上へ案内され、ノズルガイド部材116の奥に配置されたメインフラップ弁13を奥へ回動させて燃料流路を開く。これにより、給油ノズル2から供給される燃料が燃料流路を通って走行用燃料タンクに導かれる。
【0062】
扉41は導電材からなり、且つ閉位置にあるときにカバー部材5に接触している。そのため、給油口3を開く際に給油ノズル2が扉41に接触すると、給油ノズル2は扉41を介してカバー部材5に電気的に接続され、アース部材30等を介して接地される。
【0063】
上記のように、捩じりコイルばね43は導電材からなり、且つ扉41の内面41a及びカバー部材5の内面5dに常時接するように設けられている。これにより、扉41は、閉位置にあるときだけでなく、閉位置以外の位置にあるときにも、付勢部材を介してカバー部材5に電気的に接続される。そのため、給油ノズル2は、扉41に接触した瞬間だけでなく、給油口3を開いている間も、扉41、捩じりコイルばね43、カバー部材5等を介して接地される。
【0064】
給油ノズル2は、燃料流路に挿入された状態で給油者が手を放すことで、
図6に示すように給油装置1に支持された状態になることがある。このとき、給油ノズル2の白抜き矢印で示す荷重がカバー部材5に作用することにより、カバー部材5は楕円形に変形する。
【0065】
本実施形態では、
図2に示すように、フィラーパイプ4の外面4bにおけるカバー部材5により覆われる部分に、周方向に延在する4つの突条が設けられ、第2突条22がシール部として機能する。そして、第1突条21が第2突条22の上流側に配置されて補強部として機能し、第3突条23及び第4突条24が第2突条22の下流側に配置されて補強部として機能する。すなわち、シール部に対して上流側及び下流側のそれぞれに、補強部として機能する突条の少なくとも1つが配置されている。これにより、組付け性が低下することなくフィラーパイプ4が補強され、カバー部材5の変形が抑制される。また、カバー部材5の変形が抑制されることにより、第2突条22のカバー部材5の内面5dに対する密着が維持され、シール性の低下が抑制される。
【0066】
また、第1突条21、第3突条23及び第4突条24は、それぞれに対応するカバー部材5の部分の内径よりも小さな外径を有するため、カバー部材5の内面5dに対する第2突条22の密着性が低下することが抑制される。これにより、フィラーパイプ4とカバー部材5との間のシール性が確保されるとともに、カバー部材5の変形が抑制される。
【0067】
更に、第1突条21はフィラーパイプ4の上流端4aに配置され、第4突条24はフィラーパイプ4におけるカバー部材5の下流端5cに対応する部分に配置されている。これにより、第1突条21又は第4突条24が、より第2突条22に近い位置に設けられる場合に比べ、カバー部材5の変形が効果的に抑制される。
【0068】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、給油装置1が自動車に搭載されているが、船や飛行機等、自動車以外の移動体に搭載されてもよい。或いは、発電機のような装置又は固定物(不動産)に給油装置1が設けられてもよい。また、給油装置1は移動体の移動用燃料タンクに燃料を導くものに限られず、例えば、燃料を輸送するタンクローリーやタンカー等の輸送用タンクに燃料を導いてもよい。上記実施形態では、シール部がフィラーパイプ4に一体形成された第2突条22によって構成されているが、シール部は、カバー部材5の内面5dに一体形成されてもよく、Oリングのような別部材によって構成されてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材、製造方法など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :給油装置
2 :給油ノズル
3 :給油口
4 :フィラーパイプ
4a :上流端
4b :外面
5 :カバー部材
5c :下流端
5d :内面
5e :貫通孔
8 :ブラケット
9 :シャッタ
21 :第1突条(補強部)
22 :第2突条(シール部)
23 :第3突条(補強部)
24 :第4突条(補強部)
26 :突部
26a :貫通孔
30 :アース部材
31 :上流部
34 :外囲部
35 :係合部
41 :扉(開閉体)
41a :内面
42 :環状部材
42a :切欠
43 :捩じりコイルばね(付勢部材)