(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド蒸気圧縮-吸着サイクルを有する装置およびその実施方法
(51)【国際特許分類】
F25B 25/02 20060101AFI20241220BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241220BHJP
F25B 1/02 20060101ALI20241220BHJP
F25B 1/04 20060101ALI20241220BHJP
F25B 1/047 20060101ALI20241220BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20241220BHJP
F25B 17/08 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F25B25/02 Z
F25B1/00 396A
F25B1/00 396B
F25B1/00 396D
F25B1/00 396Z
F25B1/02 Z
F25B1/04 Y
F25B1/047 Z
F25B1/053 Z
F25B17/08 A
(21)【出願番号】P 2018532085
(86)(22)【出願日】2016-12-19
(86)【国際出願番号】 IN2016000290
(87)【国際公開番号】W WO2017103939
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】4154/DEL/2015
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】512330592
【氏名又は名称】ブライ・エアー・アジア・ピーヴイティー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビデュト・バラン・サハ
(72)【発明者】
【氏名】チョー・トゥ
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック・パーワ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャン・サッチデヴ
(72)【発明者】
【氏名】クルディープ・シン・マリク
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】平城 俊雅
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-63719(JP,A)
【文献】特開2005-147550(JP,A)
【文献】特開2005-24231(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145278(WO,A1)
【文献】特開2012-37203(JP,A)
【文献】特開平3-91660(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2775236(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとの組み合わせを含む冷凍またはヒートポンプサイクルを備えた装置であって、
吸着手段において吸着および/または脱着可能な第1の作動流体と、
2つ以上の吸着/脱着ベッド
(2、3)を含んだ前記吸着手段と、
1つ以上の専用の方向変更手段
(6、7、8、9、13、18、19)を介して蒸発手段
(1)および凝縮手段
(5)に接続され、交互に作動可能である、前記吸着/脱着ベッドと、
MVC冷媒、すなわち第2の作動流体を圧縮するための機械式蒸気圧縮サイクル(MVC)であって、前記2つ以上の吸着/脱着ベッド
(2、3)に接続され、前記2つ以上の吸着/脱着ベッド
(2、3)は、前記機械式蒸気圧縮サイクルの凝縮器および蒸発
器として交互に機能し、前記凝縮手段および吸着ベッド
(2または3)が、前記吸着ベッド
(2または3)から受け取った前記第2の作動流体を使用して、吸着領域の脱着ベッド
(2または3)に再生熱をもたらし、前記蒸発手段
(1)および過冷却器
(16)が、前記機械式蒸気圧縮サイクルから受け取った前記第2の作動流体を使用して、吸着領域の吸着ベッド
(2または3)に冷却をもたらす機械式蒸気圧縮サイクルと、
を含んでなり、
前記機械式蒸気圧縮サイクルが、前記吸着サイクルにおいて、脱着のための有用な熱および/または吸着のための冷却をもたらし、
吸着ベッド
(2または3)と凝縮手段
(5)との両方からの熱を含んだ第2の作動流体が、脱着のために、前記機械式蒸気圧縮サイクルによりポンピングされ、
熱交換器を介した水のような外部冷却機構が冷媒過冷却用に設けられることを特徴とする装置。
【請求項2】
吸着熱および/または脱着熱を含む前記第2の作動流体を部分的にまたは完全にポンピングする機械式蒸気圧縮サイクルが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
吸着熱を吸収するための前記第2の作動流体を吸着ベッド
(2または3)に送り込むための前記機械式蒸気圧縮サイクルが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記機械式蒸気圧縮サイクルが、脱着熱として脱着ベッド
(2または3)へポンピングされる吸着熱および凝縮熱を搬送するための前記第2の作動流体をポンピングすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記吸着サイクルのための吸着剤+冷媒のペアが、シリカゲル+水、活性炭+エタノール、活性炭+メタノール、および活性炭+複数のHFCからなるグループから選択され、動作圧力が真空から高圧までの範囲であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記吸着サイクルにおいて熱をリサイクルするために使用される機械式蒸気圧縮サイクル
の圧縮機(11)が、遠心圧縮機、スクリュー圧縮機、往復圧縮機およびスクロール圧縮機からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
MVC内の冷媒が、R134a、R410a、CO2、HFO-1234ze(E)およびHFO-1234yfまたはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
MVC冷媒の流れを変更して吸着ベッドと脱着ベッドとの間の方向転換を可能にする専用の方向変更手段
(6、7、8、9、13、18、19)が、4方向弁であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
吸着サイクルと蒸気圧縮サイクルとの間の熱交換を可能にするために、伝熱回路が設けられ、前記伝熱回路のいくつかの部分は蒸発手段内に浸漬されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
冷/熱貯蔵タンクを含むエネルギー貯蔵手段が設けられていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記機械式蒸気圧縮サイクル内の冷媒流動方向を調節することによって吸着サイクルの制御を可能にする方向変更手段が設けられていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
吸着ベッドと脱着ベッドと
(2、3)を接続する冷媒フロー制御手段の制御によって前記吸着ベッド
(2または3)と前記脱着ベッド
(2または3)の作動を制御する、専用の方向変更手段
(6、7、8、9)が設けられていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記吸着サイクルが、2つ以上の吸着ベッド
(2、3)を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記吸着ベッド/脱着ベッド
(2、3)に冷却および加熱のための前記第2の作動流体を分配する手段が設けられていることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記吸着サイクルからの凝縮
手段(5)の熱は、冷却水によって外部へ排除されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記吸着サイクルからの凝縮
手段(5)の熱は、空気によって外部へ排除されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記装置が、チラー装置、スプリット空調装置、冷凍装置などから選択されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとの組み合わせを含む冷凍サイクルまたはヒートポンプサイクルを有する装置におけるヒートポンプ動作のための方法であって、前記装置は、
吸着手段において吸着および/または脱着可能な第1の作動流体と、
2つ以上の吸着/脱着ベッド
(2、3)を含んだ前記吸着手段と、
1つ以上の専用の方向変更手段
(6、7、8、9、13、18、19)を介して蒸発手段
(1)および凝縮手段
(5)に接続され、交互に作動可能である、前記吸着/脱着ベッド
(2、3)と、
MVC冷媒、すなわち第2の作動流体を圧縮するための機械式蒸気圧縮サイクルであって、前記2つ以上の吸着/脱着ベッド
(2、3)に接続され、前記2つ以上の吸着/脱着ベッド
(2、3)は、前記機械式蒸気圧縮サイクルの凝縮器および蒸発器として交互に機能し、前記凝縮手段
(5)および吸着ベッド
(2または3)が、前記第2の作動流体を使用して、吸着領域の脱着ベッド
(2または3)に再生熱をもたらし、前記蒸発手段
(1)および過冷却器
(16)が、前記機械式蒸気圧縮サイクルから受け取った前記第2の作動流体を使用して、吸着領域の吸着ベッド
(2または3)に冷却をもたらす機械式蒸気圧縮サイクルと、
を含んでなり、
前記機械式蒸気圧縮サイクルが、吸着サイクルのために有用な熱効果をもたらし、
当該方法は、蒸気圧縮手段を使用して、プロセス中の熱を吸着サイクルに送り込み、その中の吸着剤を再生し、
吸着ベッド
(2または3)と凝縮手段
(5)との両方からの熱を含んだ前記第2の作動流体が、脱着のために前記機械式蒸気圧縮サイクルによりポンピングされ、
冷媒が、熱交換器を介した水などの外部冷却機構を介して過冷却されることを特徴とする方法。
【請求項19】
吸着熱および/または脱着熱を含んだ前記第2の作動流体の一部または全部が前記機械式蒸気圧縮サイクルによってポンピングされることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
吸着熱を含んだ前記第2の作動流体が機械的にポンピングされることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
脱着熱として脱着ベッド
(2または3)へポンピングされる吸着熱および凝縮熱は、前記第2の作動流体を介して搬送されることを特徴とする、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
吸着サイクルのための吸着剤+冷媒のペアが、シリカゲル+水、活性炭+エタノール、活性炭+メタノール、および、活性炭+複数のHFCからなるグループから選択され、動作圧力が真空から高圧の範囲であることを特徴とする、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記吸着サイクルからの熱をリサイクルする機械式ポンプ
の圧縮機(11)が、遠心圧縮機、スクリュー圧縮機、往復圧縮機およびスクロール圧縮機からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
冷媒が、R134a、R410a、CO2、HFO-1234ze(E)およびHFO-1234yfまたはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記吸着ベッドと前記脱着ベッドと
(2,3)の間のヒートポンプ方向の変更が、冷媒のフローのための専用の方向変更手段
(6、7、8、9、13、18、19)を介して行われることを特徴とする、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第2の作動流体の流れおよび吸着サイクルは、専用の制御手段
(6、7、8、9)によって制御可能であることを特徴とする、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
エネルギー回収および圧縮機
(11)の保護のために、機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルの高圧側と低圧側との間の圧力均等化を維持することを特徴とする、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
冷媒の過冷却が、吸着サイクルの蒸発手段
(1)からの冷却エネルギーの一部を、過冷却熱交換器を横切る冷却水を介して利用することによって達成されることを特徴とする、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
冷媒の過冷却が、吸着サイクルの蒸発手段内に浸漬された別個の熱交換器と、該熱交換器および過冷却熱交換器を横切る伝熱回路と、を有する吸着サイクルの蒸発手段
(1)からの冷却エネルギーの一部を使用して達成されることを特徴とする、請求項18~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
冷媒の過冷却が、MVCサイクルの冷媒の一部を膨張させることによって得られることを特徴とする、請求項18~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
吸着サイクルの操作間隔/タイミングは、MVCサイクルの冷媒フロー方向の調整によって制御されることを特徴とする、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
吸着ベッド
(2または3)および脱着ベッド
(2または3)のプレコンディショニング間隔またはスケジュールは、吸着サイクルの蒸発手段
(1)および凝縮手段
(5)と連通する蒸気バルブ
(6、7、8、9、13、18、19)の変更を介して制御されることを特徴とする、請求項18~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記吸着サイクルが2つ以上の吸着ベッド
(2、3)を含むことを特徴とする、請求項18~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
脱着及び吸着のそれぞれの効果のための加熱又は冷却用の冷媒が、それぞれの吸着ベッド
(2、3)に分配されていることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記吸着サイクルからの凝縮
手段(5)の熱が、冷却水によって外部へ排除されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項36】
前記吸着サイクルからの凝縮
手段(5)の熱が、空気によって外部へ排除されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項37】
冷媒の過冷却が、空気を使用した過冷却熱交換器を介して達成されることを特徴とする、請求項18~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド蒸気圧縮-吸着サイクルを有する装置に関し、特に、冷凍サイクルまたはヒートポンプサイクルを組み込んだ或いはそれを具現化した、水分若しくは温度の制御用途に使用される装置に関する。本発明では、吸着プロセスの熱および/または吸着サイクルの凝縮プロセスは、脱着プロセスにポンプ輸送(ポンピング)される。したがって、この新しいハイブリッド複合サイクルは、部分的にまたは完全に電気駆動のヒートポンプサイクルになる。
【0002】
本発明の適用の一例は、従来の機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとを組み合わせることによって、装置の現在の冷却性能を大幅に改善し、向上させることを目的とする冷凍装置の分野に属する。
【0003】
本発明は、本明細書の最初の2名の発明者による新しいハイブリッド化した機械式蒸気圧縮-吸着サイクルの生成に依存する。この明細書では、この新しいハイブリッドコンバインサイクルを、とりわけ参照を容易にするために「Saha-Thuサイクル」と呼ぶ。この新しく作成されたサイクルは、HVACアプリケーションなどのヒートポンプサイクルおよび吸着サイクルを含む水分または温度制御アプリケーションで使用される一連のデバイスへの適用性に柔軟性がある。
【背景技術】
【0004】
凝縮器ユニットと蒸発器ユニットとを電動圧縮機及び冷媒ラインで接続した機械式冷凍サイクルに用いられる冷凍ユニットは周知である。蒸気圧縮システムは、本質的に、作動流体を冷却し、冷却すべき大気/空間と直接熱接触している蒸発器ユニットに循環させるための凝縮器ユニットを含む。使用済みの作動流体は、電動コンプレッサーユニット[1-4]を通ってコンデンサーユニットにリサイクルされます。
【0005】
蒸気吸収または蒸気吸着を作業原理として用いる熱操作冷却システムも当該技術分野で知られている[5-8]。このようなシステムは、一般に、凝縮器と蒸発器ユニットが必ず同じハウジング内に設けられている単一ユニットに対してのみ知られている。このようなシステムで利用される吸着器または吸収器の冷凍サイクルは、機械式冷凍サイクルの圧縮機を吸収器または吸着器に基づく熱交換器で置き換えることを含む[5、9、10]。従来の機械式蒸気圧縮サイクルを吸着サイクルと組み合わせる試みはなかったようであり、システムの機能のためにシステムで発生した熱を利用し、それによって熱利用および冷却性能を向上させている。
【0006】
特許文献1は、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける機械的作業負荷が低減されるハイブリッド冷凍システムを開示している。ハイブリッド冷凍システムは、圧縮機(コンプレッサ)、凝縮器(コンデンサ)、膨張器(エクスパンダ)、および蒸発器(エバポレータ)を有する蒸気圧縮冷凍サイクルと、他の脱着吸着冷媒を同時に、冷媒を吸着するための少なくとも一対の吸着器を有する吸着冷凍サイクルとの組み合わせによって形成され、次のサイクルで交互に切り替わる。吸着冷凍サイクルは蒸気圧縮冷凍サイクルと組み合わされ、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける圧縮機の圧縮圧力が低減される。この技術は、吸着システムを有する圧縮機の圧縮負荷を低減することによって、機械式蒸気圧縮チラーの効率を改善することに関する。吸着システムは、吸着プロセスおよび脱着プロセスのための別個の冷却を必要とする。換言すれば、機械式蒸気圧縮(MVC)と吸着(AD)の2つのシステムが直列に接続されている、すなわち、冷媒移動が機械圧縮機と熱圧縮機の間で直列になっている。冷却エネルギーはMVCの蒸発器から抽出され、圧縮比の減少は機械圧縮機の吐出圧力を減少させることによって達成される。
【0007】
特許文献2は、家庭用冷凍機に蒸気圧縮サイクルを伴う吸着サイクルを追加することによって、冷蔵庫の現在の冷却性能を向上させるシステムを開示している。この開示は、蒸気圧縮サイクルから完全に独立して動作し、蒸気圧縮サイクルに加えてシステムに加えられる家庭用冷凍機および閉ループに使用される吸着システムを提供する。この開示の焦点は、(1)MVC蒸発器および(2)AD蒸発器の2つの蒸発器を使用する家庭用冷蔵庫の蒸発能力の強化にある。吸着と凝縮のために別個の冷却が必要である。吸着プロセスと脱着プロセスとの間の切り替えは記載されておらず、そこに提供されている図(
図1、2および3)ではプロセスを促進しない。
【0008】
吸収サイクルで蒸気圧縮サイクルをハイブリッド化する試みがなされている技術が開示されている。例えば、特許文献3は、凝縮した一次冷媒中の冷却媒体からの熱抽出のために一次蒸発器において冷凍効果を提供する蒸気圧縮システムが、蒸気吸収システムに加えて使用されるハイブリッド吸収圧縮チラー(chiller)を開示する。しかし、本開示の焦点は蒸気圧縮サイクルおよび吸収サイクルのみにあり、ハイブリッド結合機械蒸気圧縮-吸着サイクルへの言及はない。
【0009】
特許文献4は、蒸気圧縮システムにおける熱電装置の使用と、両方に接続された制御機構の使用による加熱および冷却の制御を確実にするために、所望の温度に領域を維持するための加熱および冷却システムを開示している。この開示の焦点は、冷却性能を向上させるための熱電手段の使用に関する。
【0010】
特許文献5には、電子機器の排熱を冷却して回収するシステムが開示されている。このシステムは、加熱装置の加熱要素を直接冷却するための蒸発器と、吸着剤を有する吸着剤冷凍装置とを有する蒸気圧縮式冷凍装置である。蒸気圧縮式冷凍機の凝縮器と吸着冷凍機の脱着用吸着器とは、熱回収チューブ内を循環する加熱水などの熱媒体を介して熱結合されている。これにより、吸収剤による水蒸気の脱着処理が行われる。蒸気が生成されて吸着剤に吸着されて吸着される蒸発器では、蒸発熱を伴う冷却作用により冷却されて冷却水が生成される。この冷却水は冷却に利用される。しかし、この開示では、エネルギーは外部から回収され、システムは外部冷却源に依存する。
【0011】
先行技術の試みはこれまで、蒸気圧縮サイクルの性能を改善または向上させるために、吸着サイクルを機械式蒸気圧縮サイクルと組み合わせることに焦点を当ててきた。発明者が知る限りでは、従来の機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとを組み合わせる試みはないようであり、これは、水分または水分に使用される装置の範囲全体にわたる性能効率の改善に関して利点を提供し、ヒートポンプサイクル運転における吸着サイクルの性能を向上させることによって、温度制御動作を可能にする。簡潔に言えば、例えば、使用される吸着剤を再生するために、吸着サイクルにおける外部加熱または冷却回路の必要性を排除/最少化するための機械式蒸気圧縮サイクルの使用の開示はないようである。
【0012】
先行技術の上記の開示は冷却設備に関連するものであるが、当技術分野の範囲は冷却、加熱および/または湿度制御装置ならびに上記のいずれかまたは両方である他の設備が必要であることを理解されたい。例えば、本発明の基礎を成す原理は、脱塩装置にも適用される。実施された検索では、冷却、加熱および/または湿度制御装置における従来の機械式蒸気圧縮および吸着サイクルの組合せ/ハイブリッド化の使用を対象とするいかなる先行技術も存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2009/145278号
【文献】欧州特許出願公開第2775236号明細書
【文献】米国特許第9239177号明細書
【文献】米国特許第7926294号明細書
【文献】特開2012-037203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の主な目的は、従来の機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとを組み合わせ/ハイブリッド化したヒートポンプサイクルを提供し、冷却、冷凍または加熱の向上した性能をさらに促進することである。
【0015】
本発明の他の目的は、従来の機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルを組み合わせ/ハイブリッド化することによって、冷凍装置の現在の冷却性能を向上させた装置および方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、標準的な蒸気圧縮サイクルを冷却および加熱源として使用することに加えて、システム内に一体化された吸着サイクルのための凝縮器ユニットからの未利用または未利用の熱を使用することであり、これによって、同様の装置の性能をさらに効率化することができる。
【0017】
本発明の他の目的は、コンプレッサ出力や蒸発器効率などのサイクル特性を変更することなく、システムの冷却性能を向上させることである。
【0018】
本発明の別の目的は、目標とする冷媒がHFO混合物(HFO-1234zeおよびHFO-1234yf)やHFC-32等の天然/低GWP(地球温暖化ポテンシャル)系化合物(コンパウンド)であるように、環境に優しい方法で作動可能で、吸着サイクルと機械式蒸気圧縮サイクルとを組み合わせ、さらに/或いはハイブリッド化することによって、冷却性能を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、従来の機械式蒸気圧縮サイクルが、以下に記載される方法で吸着サイクルと組み合わされ、Saha-Thuサイクルが使用され得る装置において実施されるハイブリッド蒸気圧縮サイクルを利用することによって達成される。
【0020】
したがって、本発明は、機械式蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとの組み合わせを含む冷凍またはヒートポンプサイクルを備えた装置を提供し、この装置は、
吸着手段において吸着および/または脱着可能な第1の作動流体と、
前記吸着手段は2つ以上の吸着/脱着ベッドを含み、
前記吸着/脱着ベッドは、1つ以上の専用の方向変更手段を介して蒸発手段および凝縮手段に接続され、交互に作動可能で、
MVC冷媒、すなわち第2の作動流体を圧縮するための蒸気圧縮ユニットであって、前記2つ以上の吸着/脱着ベッドに接続され、機械式蒸気圧縮ユニットの凝縮器および蒸発器として代替的に機能し、凝縮器が吸着領域の脱着ベッドに再生熱をもたらし、蒸発器が吸着領域の吸着ベッドに冷却をもたらす蒸気圧縮ユニットと、を含んでなり、
ヒートポンプサイクルは、吸着サイクルのために、吸着熱および/または脱着熱を含む熱を内部に再循環させ、
ヒートポンプサイクルは、吸着サイクルのために、吸着熱および/または脱着熱を含む熱を内部に再循環させる。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、機械的手段が、熱を部分的にまたは完全に汲み上げるために設けられる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、完全なまたは部分的な熱リサイクルモードで、脱着のために吸着ベッドから脱着器に熱をポンピングするための機械的手段が設けられる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態では、吸着器と脱着用の凝縮手段との両方から熱をポンピングするための手段が設けられており、必要に応じて水冷または空冷技術を介した外部回路を用いて余剰エネルギーが除去される。
【0024】
本発明の別の実施形態では、機械式蒸気圧縮サイクルの冷媒が、部分的な熱ポンピング構成の吸着熱を伝達し、全熱再循環モードでの凝縮が、脱着プロセスにポンピングされる。
【0025】
本発明の別の実施形態では、吸着サイクルのための吸着ペアは、シリカゲル+水、活性炭+エタノール、および活性炭+複数のHFCからなるグループから選択され、操作圧力は真空から高圧までの範囲である。
【0026】
本発明の別の実施形態では、吸着サイクルにおいて熱をリサイクルするために使用される機械式ポンプは、遠心圧縮機、スクリュー圧縮機、往復圧縮機およびスクロール圧縮機からなるグループから選択される。
【0027】
本発明の別の実施形態では、MVC内の冷媒は、任意の従来の冷媒または従来の冷媒の混合物を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態では、MVC冷媒の流れを変更して吸着ベッドと脱着ベッドとの間の方向転換を可能にする専用の方向変更手段は、好ましくは4方向弁である。
【0029】
本発明の別の実施形態では、必要に応じて、熱交換器を介して水または空気などの外部冷却機構を冷媒過冷却用に設けることができる。
【0030】
本発明の別の実施形態では、必要に応じて、熱交換器を介した吸着サイクルの蒸発器からの冷却エネルギーの一部を、冷媒過冷却用に設けることができる。
【0031】
本発明の別の実施形態では、必要に応じて、吸着サイクルとMVCとの間の熱交換を可能にするために、伝熱回路またはエネルギー蓄積手段が設けられる。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、エネルギー貯蔵手段は、液体または相変化材料のような熱交換媒体を有する冷/熱タンクを含む。
【0033】
本発明の別の実施形態では、MVC内の冷媒流動方向を調節することによって収着プロセスの制御を可能にする手段が設けられる。
【0034】
本発明の別の実施形態では、吸着ベッドと脱着ベッドと凝縮手段と蒸発手段とを接続する冷媒フロー制御手段の制御によって吸着器と脱着器の作動を制御する手段が設けられている。
【0035】
本発明の別の実施形態では、吸着サイクルからの凝縮熱は、冷却水によって外部へ排除される。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態では、吸着サイクルからの凝縮熱は、空気によって外部へ排除される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態では、装置は、チラー装置、スプリット空調装置、冷凍装置などから選択される。
【0038】
本発明はまた、機械蒸気圧縮サイクルと吸着サイクルとの組み合わせを含む冷凍サイクルまたはヒートポンプサイクルを有する装置におけるヒートポンプ動作のための方法であって、前記装置は、
吸着手段において吸着および/または脱着可能な第1の作動流体と、
前記吸着手段は2つ以上の吸着/脱着ベッドを含み、
前記吸着/脱着ベッドは、1つ以上の専用の方向変更手段を介して蒸発手段および凝縮手段に接続され、交互に作動可能で、
MVC冷媒、すなわち第2の作動流体を圧縮するための機械式蒸気圧縮ユニットであって、前記2つ以上の吸着/脱着ベッドに接続され、機械式蒸気圧縮ユニットの凝縮器および蒸発器として代替的に機能し、凝縮器が吸着領域の脱着ベッドに再生熱をもたらし、蒸発器が吸着領域の吸着ベッドに冷却をもたらす機械式蒸気圧縮ユニットと、を含んでなり、
ヒートポンプサイクルは、吸着サイクルのために有用な熱効果(脱着プロセスのために吸着熱をポンピングする)を提供し、
当該方法は、蒸気圧縮手段を使用して、プロセス中の熱を収着プロセスに送り込み、その中の吸着剤を再生し、これによって強化された効果/出力をもたらす。
【0039】
本発明の一実施形態では、熱の一部または全部は、機械的手段によってポンピングされる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、完全または部分的な熱リサイクルモードでの脱着のための吸着熱が機械的にポンピングされる。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態では、吸着器と凝縮手段との両方からの熱が脱着のためにポンピングされる。
【0042】
本発明の別の実施形態では、完全または部分的な吸着熱と、全熱再循環モードでの凝縮熱とは、冷媒を介して脱着プロセスにポンピングされる。
【0043】
本発明の別の実施形態では、吸着サイクルのための吸着ペアは、シリカゲル+水、ゼオライト+水、活性炭+エタノール、活性炭+メタノール(低圧または部分真空での操作)、および、活性炭+複数のHFC、活性炭+プロパン、活性炭+n-ブタン(高圧操作)からなるグループから選択され、動作圧力は真空から高圧の範囲である。
【0044】
本発明の別の実施形態では、吸着サイクルからの熱をリサイクルする機械式ポンプは、遠心圧縮機、スクリュー圧縮機、往復圧縮機およびスクロール圧縮機からなるグループから選択される。
【0045】
本発明の別の実施形態では、冷媒は、R134a、R410a、CO2、HFO-1234ze(E)およびHFO-1234yfなどの従来の冷媒またはこれらの混合物を含む。
【0046】
本発明の別の実施形態では、吸着ベッドと脱着ベッドとの間のヒートポンプ方向の変更は、冷媒のフローのための専用の方向変更手段を介して行われる。
【0047】
本発明の別の実施形態では、必要に応じて、冷媒は、熱交換器を介した水または空気などの外部冷却機構を介して過冷却される。
【0048】
本発明の別の実施形態では、必要に応じて、吸着サイクルと機械式蒸気圧縮サイクルとの間の熱交換が、熱伝達回路、或いは、液体または相変化材料のような熱交換媒体を有する冷/温貯蔵タンクのようなエネルギー貯蔵機構を介して実行される。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態では、冷媒フローおよび収着プロセスは、専用の制御手段によって制御可能である。
【0050】
本発明の別の実施形態では、エネルギー回収および圧縮機の保護のために、機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルの高圧側と低圧側との間の圧力均等化を維持する方法が提供される。
【0051】
本発明の別の実施形態では、この方法では、冷媒の過冷却は、吸着サイクルの蒸発器からの冷却エネルギーの一部を、過冷却熱交換器を横切る冷却水を介して利用することによって達成される。
【0052】
本発明の別の実施形態では、この方法では、過冷却用熱交換器を介して空気を使用することによって冷媒の過冷却が達成される。
【0053】
本発明の別の実施形態では、この方法では、冷媒の過冷却は、吸着サイクルの蒸発器内に浸漬された別個の熱交換器と、その熱交換器および過冷却熱交換器を横切る伝熱回路と、を有する吸着サイクルの蒸発器からの冷却エネルギーの一部を使用して達成される。
【0054】
本発明の別の実施形態では、この方法では、冷媒の過冷却は、MVCサイクルの冷媒の一部を膨張させることによって得られる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、この方法では、液体または相変化材料のような熱交換媒体を有する冷/温タンクのようなエネルギー貯蔵機構または伝熱回路などの中間媒体/媒体を利用して、吸着サイクルとMVCサイクルとの間で熱を交換する。
【0056】
本発明の別の実施形態では、この方法では、収着プロセスの操作間隔/タイミングは、MVCサイクルの冷媒フロー方向の調整によって制御される。
【0057】
本発明の別の実施形態では、この方法では、吸着器および脱着器のプレコンディショニング間隔またはスケジュールは、収着熱交換器と吸着サイクルのそれぞれの蒸発器および凝縮器と連通する蒸気バルブの変更を介して制御される。
【0058】
本発明の別の実施形態では、吸着サイクルからの凝縮熱は、冷却水によって外部へ排除される。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態では、吸着サイクルからの凝縮熱は、空気によって外部へ排除される。
【0060】
本明細書で上に明示的に論じられていない本発明の上記および他の実施形態は、以下の説明および添付の実施例を参照して、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明の実施形態に関する詳細は、添付図面を参照して例示的な方法のみで詳細に説明される。
【0062】
【
図1】吸着サイクルを機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルとハイブリッド化するヒートポンプサイクルの模式図で、MVCサイクルは、半サイクルの動作で吸着ベッドおよび凝縮器からの熱を脱着ベッドに内部で熱をポンピングする。
【
図2】吸着サイクルを機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルとハイブリッド化するヒートポンプサイクルの模式図で、MVCサイクルは、切り替え動作および他の半サイクル動作で吸着ベッドおよび凝縮器からの熱を脱着ベッドに内部で熱をポンピングする。
【
図3】サイクル動作中の検証実験結果に基づく、ハイブリッドサイクルの主要コンポーネントの温度プロファイルを示すグラフである。
【
図4】切り替え動作中のハイブリッドサイクルの主要コンポーネントの温度プロファイルを示すグラフである。
【
図5】吸着サイクルの吸着ベッドからの熱が、圧縮サイクルを使用して脱着ベッドにポンピングされる、本発明の一実施形態を示す概略図である。
【
図6】本明細書で言及されるSaha-Thuサイクルにおけるエネルギーフローおよび温度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
上述のように、本発明は、従来の機械式蒸気圧縮と吸着サイクルとをハイブリッド化する、冷却(冷凍)またはヒートポンプサイクルに関する。個々のサイクルの一見低効率は、個々のサイクルとの合併によって克服される。機械式蒸気圧縮サイクルは、吸着サイクルの吸着器ベッドおよび/または凝縮器から脱着器ベッドへの内部熱ポンピングのために使用される一方、吸着サイクルの蒸発器から冷却エネルギーが生成される。従来技術(例えば、温水回路)で必要とされるような外部熱源は、もはや吸着剤の再生のために必要とされない。この効果によって、容易に利用可能な電気を利用してコンプレッサを動作させることができるので、当該サイクルをポータブル化することができる。これは、本発明の重要な利点の1つである。
【0064】
本発明は、本質的にヒートポンプサイクルの開発のために提供され、冷却、冷凍、除湿、加熱または脱塩などの、但しこれらに限定されない有用な効果をもたらすサイクルとして吸着サイクルが役割を果たし、その一方で、機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルは、吸着サイクル内で熱をポンピングまたは再循環させるために使用され、これらの技術分野で利用される装置/機器でこのヒートポンプサイクルを実施するために使用される。本発明における進歩性は、とりわけ、吸着サイクル内で内部的に熱をシフトさせる際の機械式蒸気圧縮サイクルの組合せおよび適用にある。
【0065】
本発明の第1の態様によれば、このサイクルは、シリカゲル+水、活性炭+エタノール、活性炭+メタノール、活性炭+複数のHFCなどの、但しこれに限定されない多くの吸着質+吸着剤のペアを利用することができる吸着ヒートポンプを含み、動作圧力は真空から高圧の範囲であり得る。吸着サイクルにおける熱は、遠心圧縮機、スクリュー圧縮機、往復圧縮機およびスクロール圧縮機を含むが、これに限定されない機械的手段によって再循環されるが、任意の種類または混合冷媒が動作流体として使用され得る。熱再循環は、機械蒸気圧縮(MVC)サイクルの冷媒が吸着/脱着プロセスを用いて直接的に熱伝達される直接的な手段、または熱交換器または貯蔵設備のような中間物を使用する間接的な手段によって達成され得る。
【0066】
ヒートポンプサイクルは、熱交換器を含む。一例として、冷却負荷の抽出のために1つの熱交換器が設けられており、一方の側が冷たい水または空気等の冷却媒体と直接連通/接触し、吸着プロセスの冷媒が蒸発する。2つの熱交換器は、吸着材が熱連通している一方、他方の側がMVCサイクルの冷媒の蒸発/凝縮と熱的に相互作用する吸着ベッドとして機能し、吸着サイクルの冷媒の凝縮のための熱交換器として機能する。吸着器熱交換器の熱交換側は逆転することができ、すなわち、MVCサイクルの冷媒は、吸着材が熱交換器の反対側にある間にシェル側のチューブ側にあり得る。この実施形態では、膨張/圧力平衡装置を介してサイクルの蒸発器に再循環される冷媒を凝縮させるために、吸着サイクルに外部冷却源が使用される。
【0067】
吸着材料は、好ましくは、分離バルブを介した吸着サイクルの蒸発器及び凝縮器と連通するチャンバ/コンパートメント内に封入されている吸着熱交換器の一方の側の熱交換面の周りに被覆又は充填される。吸着熱交換器の他方の側は、吸着プロセス中の蒸発器として機能する一方、機械式蒸気圧縮サイクル用の脱着プロセスの凝縮器として役割を果たす。
【0068】
吸着および脱着プロセスは、予め設定された時間または飽和条件まで実施される。このプロセスの後に、以前に吸着プロセスを行った吸着ベッドを加熱し、その対応物を冷却し、ここで加熱および冷却の両方を機械式蒸気圧縮サイクルによって達成し、このサイクルにおける切り替えを4方向弁と膨張装置とが実施する。各プロセスの第1段階では、熱交換器の吸着剤側が蒸発器および凝縮器から隔離される。ここで、サイクル時間は、機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルにおける4方向弁の動作によって制御されるが、切換時間は、蒸発器および凝縮器で吸着器側と連通する蒸気バルブの調整によって制御される。
【0069】
MVCの凝縮器側と蒸発器側の圧力は、4方向弁の切換えに先立って均等化されることが好ましい。この圧力均等化は、MVCサイクルの多数のバルブ調整、または制御バルブと別の圧力均等化ラインを使用することによって達成することができるが、このプロセスは、短期間、或いは均等化または好ましい圧力条件に達するまで行うことができる。
【0070】
別の実施形態は、MVCサイクルを使用して、吸着および凝縮プロセスからの熱を吸着サイクルの脱着プロセスにポンピングする。吸着熱交換器の構成は、前の実施形態と同様のままであるが、今は、吸着サイクルの凝縮熱交換器の一方の側がMVCサイクルと熱的に連通している。余分なエネルギーは、熱交換器を介して空気または冷却水によって排除される。
【0071】
必要に応じて、吸着熱交換器の出口での冷媒の過冷却は、熱交換器を介した冷却水回路を用いた外部冷却によって達成される。1つの熱交換器を使用していずれかの吸着熱交換器からの過冷却が行われるように、冷媒を配置することができる。
【0072】
脱着器からの冷媒の過冷却のための冷却源は、吸着サイクルの冷却エネルギーから抽出される。これは、冷水の一部を抜き出し、過冷却用熱交換器を横切って流れることによって達成される。
【0073】
過冷却のための冷却エネルギーは、好ましくは、蒸発器内にいくつかの部分が挿入/浸漬された別個の伝熱回路を利用する吸着サイクルの蒸発器から抽出される一方、エネルギー伝達媒体が過冷却熱交換器を横切って流れる。
【0074】
代替的に、冷媒の過冷却は、膨張装置または毛管チューブのような別個の機構を使用してMVCサイクルから冷媒を膨張させることによって達成される。
【0075】
次に、本発明のいくつかの実施形態を例示する図面を参照する。
【0076】
図1は、吸着サイクルを機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルとハイブリッド化するヒートポンプサイクルの概略図を示す。このシステムは、有用な効果(冷却、冷凍、除湿、加熱および脱塩)のための吸着サイクルと、機械的手段による吸着サイクル内での熱の再循環のためのMVCサイクルとを含む。
【0077】
吸着サイクルは、吸着サイクルからの冷媒の蒸発から冷却効果(冷却水または冷凍)が抽出される蒸発器1を含む。吸着サイクルは、シェル側がフィン(fin)およびチューブ面上の吸着材4で被覆されている2つの吸着反応器またはベッド2、3を含む。作用する吸着剤+吸着質のペアは、シリカゲル+水、活性炭+エタノール、活性炭+メタノール、活性炭+複数のHFCであり得るが、動作圧力は、真空から高圧の範囲で、選択されたペアの作用性質に依存し得る。吸着サイクルはまた、吸着サイクルの冷媒を凝縮するための凝縮器5からなる。
【0078】
吸着ベッド/チャンバは、蒸発器1と直接的に蒸気連通し、蒸気バルブ6、7、8、9を介して凝縮器5と蒸気連通している。ある時間にのみ吸着または脱着のいずれかを行うことができる吸着材料の性質のために、2つの吸着ベッド/チャンバ2、3が、吸着および脱着プロセスを交互に行うために使用される。ここで、吸着ベッド3は、蒸気バルブ7を介して蒸発器に連通し、吸着プロセスを実行する一方、蒸気バルブ9を閉じることによって凝縮器5から隔離される。吸着ベッド/チャンバ3内の吸着材料による蒸気の取り込みは、冷凍、冷蔵及び/又は除湿のような有用な効果が抽出され得る蒸発器1内の冷媒の蒸発を開始する。吸着プロセスまたは蒸気取り込みプロセスは発熱プロセスであり、したがって吸着プロセスを維持するために吸着熱を吸着ベッド3から除去しなければならない。
【0079】
同時に、前もって吸着プロセスが行われていると思われる別の吸着ベッド/チャンバ2は、蒸気バルブ6を閉じることによって蒸発器1から隔離されるが、間にある蒸気バルブ8を介して凝縮器に接続される。脱着プロセスは、吸熱プロセスであるため、熱の形でエネルギーを供給することによって引き起こされる。脱着された蒸気は、凝縮熱を排除することによって凝縮され、液体冷媒は、圧力均等化ラインまたはUチューブ10を介して蒸発器に戻る。
【0080】
吸着/脱着プロセスの持続時間またはサイクル時間は、吸着ベッドが飽和する時間、または、脱着ベッドが完全に不飽和となる時間、または有用な効果生成が重要でなくなるまでの時間とすることができる。次のサイクルでは、今やベッド3を飽和させる必要があるが、再生ベッド2は関連する蒸気バルブを調整することによって吸着プロセスを実行する。しかしながら、ベッド3の内部の圧力は蒸発器1の圧力で、蒸発器1の圧力は蒸発する冷媒の飽和圧力である一方、吸着ベッド2の内部の圧力は凝縮器5の圧力で、蒸発圧力に比べて相対的に高い。したがって、これらの吸着ベッドの圧力は、それぞれの蒸発器または凝縮器に曝される前に事前調整される必要がある。このプロセスは、ベッド2、3が蒸発器1および凝縮器5から隔離される切り替え時間と通常呼ばれる。
【0081】
このサイクルでは、吸着熱および凝縮熱が、機械式蒸気圧縮サイクルによって脱着プロセスのためにポンピングされる。水または空気冷却機構による過剰エネルギー除去はここでは示されていない。機械式蒸気圧縮(MVC)システムは、吸着プロセスを受けている吸着ベッド3と凝縮器5とからの吸着熱を脱着プロセスを行う脱着ベッド2へポンピングする圧縮機11を含む。この構成では、MVCサイクルの冷媒が吸着熱交換器2、3のチューブ側を流れる。膨張装置12を通って、吸着熱交換器3および凝縮器5のチューブ側に冷媒が膨張する。冷媒が過熱蒸気に変換された吸着熱および凝縮熱を取り込み、4方向弁13を介して圧縮機11に吸入される。圧縮機11からの冷媒吐出は、吸着ベッド2に送られ、ここで、冷媒からの熱は脱着プロセスに使用される。脱着熱交換器2からの冷媒は、過冷却熱交換器16によって別の膨張装置14を介して液体冷媒のごく一部を膨張させることによってさらに過冷却される。冷媒は次に膨張装置を介して膨張され、サイクルが完了する。
【0082】
吸着および脱着プロセスのサイクル時間は、4方向弁位置の持続時間によって設定される。サイクル作動の終了時に、吸着ベッド/チャンバ2、3は、まず、蒸気バルブ6、7、8、9を閉じることによって、蒸発器1および凝縮器5から隔離される。MVCサイクルの冷媒側の圧力、すなわち、吸着チャンバ/ベッド2、3のチューブ側は、圧力均等化ラインおよびバルブ18を介して数秒間で均等化される。次いで、4方向弁13が切り換えられ、全ての3方向弁19がそれらの位置を変える。
【0083】
図2は、次の動作フェーズの概略図を示している。ここでは、吸着ベッド2は圧縮機11の吸引口に接続され、他方の吸着器ベッド3のチューブ側に排出口が設けられている。しかしながら、蒸気バルブ6、7、8、9は、吸着ベッド/チャンバのシェル側の圧力が冷媒の蒸発および凝縮圧力(吸着サイクル)に近づくまで閉じたままである。サイクルは、予め設定されたサイクル時間に達するまで、吸着ベッド/チャンバ2、3と蒸発器1または凝縮器5との間を接続するそれぞれの蒸気バルブを開閉することによって継続する。
【0084】
図3は、MVCサイクルと吸着サイクルをハイブリッド化するヒートポンプサイクルの温度プロファイルを示している。これは、実験的に測定された等温線と作業ペアの運動特性とともに質量とエネルギーの保存を使用するハイブリッドサイクルのプロファイリングに基づく。ここでは、シリカゲル+水が吸着サイクルの作業ペアとして選択され、MVCサイクルの冷媒はR134aである。吸着ベッドの温度および冷媒の蒸発温度は、迅速な吸着プロセスおよびその後のより高い吸着生成熱のために、最初に増加する。吸着プロセスが進むにつれて吸着剤が飽和し、吸着ベッドの温度は徐々に低下する。吸着サイクルの蒸発器温度は、303.15Kの初期条件から約293Kに低下する。初期脱着プロセスへのエネルギー供給は、その期間中にかなり大きく急速であるため、脱着工程の開始時には脱着ベッド温度はかなり低い。ベッドが徐々に不飽和になるので、サイクル時間が始まると、脱着器の温度は徐々に上昇する。定常的な脱着プロセスは、凝縮器温度プロファイルに反映される。
【0085】
図4は、切り替え動作中のMVCサイクルの吸着器、脱着器、凝縮器(吸着サイクル)および蒸発器の時間的温度プロファイルを示す。次のサイクルを開始する前に、脱着ベッドを予熱する必要があるのに対し、吸着ベッドを予冷する必要があることに留意されたい。MVCサイクルの蒸発器における突然の温度ジャンプは、4方向弁による吸着器から脱着ベッドへの即座の切り替えのために、切り替え動作の開始時に検出される。MVCサイクルの脱着器と蒸発器の両方の温度は、切り替え時間の開始に伴い降下する。予熱されている吸着ベッドの温度は、180秒後に306Kからほぼ320Kに上昇する。ここでは、吸着器と脱着器のチューブ側との間の圧力均等化スキームは実施されておらず、したがって、好ましい温度および圧力条件を達成するために必要な切り替え時間が比較的長くなることに留意されたい。
【0086】
図5に示すように、本発明の一実施形態が実施される。
図5では、吸着サイクルの吸着ベッドからの熱は、機械式蒸気圧縮(MVC)サイクルを用いて脱着ベッドにポンピングされる。換言すれば、MVCサイクルの蒸発プロセスは、発熱プロセスである吸着プロセスを維持するために利用される。吸着サイクルからの凝縮熱および機械式蒸気圧縮サイクルからのエネルギー、すなわち圧縮エネルギーは、水冷または空気冷却熱交換器を介して周囲に排除されるが、外部冷却によって過冷却が実現される。この実施形態の機能は、上記の
図1および
図2を参照して説明したものと同様である。
【0087】
本サイクルのエネルギーフローおよび温度線図が
図6に示されている。このサイクルは、脱着プロセス101、吸着プロセス102およびMVCプロセス103からなる。吸着剤のワークポテンシャルまたは化学ポテンシャルは、再生プロセス、すなわち脱着温度で熱源104を使用した脱着プロセス101によって生成され、再生された蒸気は凝縮ヒートシンク105で凝縮される。2つの温度リザーバ間で作動する熱機関であるこの脱着プロセス101は、仮想仕事W(ads)を生成する。本質的にヒートポンプサイクルである吸着サイクル102では、前記の脱着サイクル101によって生成されたW(ads)を利用して、T(EVAP)の熱源106からの熱をT(ADS)のヒートシンク107にポンピングするためにW(ads)が使用される。ここでは、蒸気取り込みを受けることによって吸着剤の化学ポテンシャルが破壊される。別のヒートポンプサイクル、すなわちMVCプロセス103を使用して、T(ADS)の熱リザーバからT(DES)温度のヒートシンクに熱をポンピングする。ここで、このポンピング動作を達成するためには外部の電気的ワーク作業が必要で、MVCプロセス103は吸着サイクル内の熱を再循環させる。そして、そのサイクルは完了し、外部熱源なしで電動ヒートポンプサイクルとなっている。
【0088】
本発明に具体化されたSaha-Thuサイクルは、加熱または冷却のいずれか、またはその両方のために使用される広範囲の装置にわたって適用可能である。そのような装置は、本質的に吸着サイクルに基づくヒートポンプサイクルまたは冷凍サイクルを利用することのみが求められる。機械式蒸気圧縮サイクルを吸着サイクルと組み合わせることは、そのようなデバイス/装置の性能を著しく向上させ、貴重なエネルギーの節約をもたらす。
【0089】
[例]:本発明において、機械式蒸気圧縮サイクルの凝縮プロセスは、脱着モードで作用する吸着サイクルの再生プロセスのための熱源を提供する。したがって、複合サイクルは、従来の吸着サイクルの吸着ベッドへの冷却および加熱回路を本質的に排除し、システムは著しくコンパクトで携帯可能で、電動コンプレッサによって作動可能である。
【0090】
吸着サイクルにおける吸着、凝縮および再生のための冷却および加熱の方法は、あらゆる種類の吸着剤+吸着質のペアに適用可能である。
【0091】
上述の複合ハイブリッドサイクルおよび本発明の一部を形成する複合ハイブリッドサイクルは、従来の蒸気圧縮サイクルまたは吸着サイクルのみと比較して優れた性能係数(COP)をもたらす。
【0092】
本サイクルは、従来の機械式蒸気圧縮サイクルまたは吸着または吸収サイクルと比較して優れた性能を提供する。したがって、このサイクルは、HVACシステム、住宅/商業用冷却および自動車用アプリケーションなどの既存の冷却生成アプリケーションをすべて置き換える可能性がある。
【0093】
[例1]熱帯気候条件における商業用建物用の冷水システムへの本サイクルの適用を評価する。このような適用のための冷水供給温度は、通常、AHRI規格に従って7℃に維持されるが、凝縮器冷却水温度は約30℃である。冷却が、65℃の冷却水温度と同じ熱源温度によって駆動される吸着チラー(an adsorption chiller)によってもたらされる場合、最大またはカルノー(Carnot)COPは約0.72であることが判る。ここで、蒸発温度は6℃とした(実験的に確認されたアプローチは1℃である)。R134aを用いた従来の機械式蒸気圧縮サイクルが適用される場合、実験的に測定された蒸発温度が約マイナス1.2℃(蒸発器圧力が2.8バールで、6.2℃の過熱)で、凝縮温度が約41℃(凝縮圧力が10.5バール)。現在のサイクルが適用される場合、可能な最大COPは、吸着サイクルについて同じ再生温度および吸着温度を維持して9.6であることが判る。本サイクルは、このシナリオでは非常に優れたエネルギー効率をもたらす。
【0094】
カルノーCOPを用いた吸着および機械式蒸気圧縮サイクルと比較した、システムのCOPの簡単な数値を以下の表1に示す。MVCサイクルの凝縮温度は80℃に設定され、蒸発温度は35℃に設定されている。したがって、脱着剤の対数平均温度差(LMTD)が5℃であると仮定すると、吸着温度の再生温度は約75℃である。同様に、吸着温度は約40℃である。これらの吸着および脱着温度およびシリカゲル+水のような典型的な吸着剤+吸着質のペアにおいて、吸着サイクルから抽出され得る冷却水温は約7℃で、吸着サイクルの蒸発温度は約6℃である。
【0095】
【0096】
これらの温度を用いて、MVCサイクルと吸着サイクルのカルノーCOPはそれぞれ7.85と1.01であるが、提案されたハイブリッドサイクルの全体のCOPは約7.96である。一方、冷媒R134aを用いた7℃の冷水を製造するMVCシステムのカルノーCOPは約6.47と計算されている。
【0097】
提案されたハイブリッドMVC-ADサイクルは、従来のMVCサイクルまたはADサイクルと比較してより良好なCOPをもたらすことが観察される。
【0098】
典型的には65℃~80℃のより低い再生温度の吸着剤+吸着質ペアのサイクルから、著しく高いCOPが実現される。一方、改良された熱およびマス(mass)移動を有する熱交換材料の吸着のための高度なコーティング方法は、再生温度を低下させる可能性がある。
【0099】
本発明は、2つの吸着ベッドを有する吸着サイクルに適用可能で、3ベッドまたは4ベッドなどの複数ベッドシステムに適用可能である。マルチベッドシナリオでは、冷却および加熱のための冷媒を吸着ベッドに分配することができ、これによって、吸着および脱着プロセスを実現する。
【0100】
本発明の吸着サイクルでは、様々な材料ペア(水-シリカゲル、水-ゼオライトなど)を使用することができる。本発明の対象となる吸着サイクルは、真空中で動作する。現在のシステム(蒸気圧縮サイクル)とは独立したシステムである。このサイクルシステムは、凝縮器からの熱のみを使用し、それ以外は周囲に排除される。冷媒流体は互いに混合しない。本発明は、吸着サイクルに加えて従来の機械式蒸気圧縮サイクルを追加することにある。
【0101】
本発明は、吸着ベッドを冷却し、脱着ベッドを完全に加熱するための機械式蒸気圧縮システムを利用し、それによって、吸着装置の外部の冷却および加熱を排除する。冷却負荷は、吸着サイクルの蒸発器から抽出される。MVCサイクルの蒸発温度は吸着温度(29~34℃)まで上昇し、冷凍機の凝縮は脱着温度で生じる。このシステムは、2つの別個の冷媒循環(回路)、すなわち吸着サイクル用と、MVCサイクル用の2つの回路を有する。
【0102】
本発明の主な利点は以下の通りである。
(1)サイクルは、外部の熱源に頼ることなく完全に携帯可能で、
(2)機械式蒸気圧縮サイクルがよりシンプルで効率的な切り替え機構を設けるので、最低限の水バルブおよびポンプ使用によって複雑さが低減され、
(3)システムの規模(the scalability)が、0.5Rトンのような小容量からメガワットの規模までで、さらに
(4)機械式蒸気圧縮サイクルおよび吸着サイクルの両方の冷媒が、水または他のグリーン冷媒のような天然の冷媒からのものであり得るために、環境親和性に優れる。
【0103】
上述の開示の変形および変更は、本明細書に組み込まれ、本発明の一部を構成するものとみなされることが理解される。
【0104】
[参考情報]
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【符号の説明】
【0105】
1 蒸発器
2、3 吸着反応器、吸着熱交換器、ベッド、チャンバ
4 吸着材
5 凝縮器
6、7、8、9 蒸気バルブ
11 圧縮機
12、14 膨張装置
13 4方向弁
16 過冷却熱交換器
19 3方向弁