(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】レンズユニット、レンズユニットの製造方法およびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20241220BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20241220BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/02 B
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2020099131
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秀洋
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0092270(US,A1)
【文献】実開昭54-151254(JP,U)
【文献】特開2020-016687(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えるレンズユニットであって、
前記中間環は金属製であり、
前記中間環に軸方向において隣り合う前記レンズは、前記中間環と凹凸嵌合しており、
前記中間環の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面と、軸方向において像側に位置し、かつ前記物体側外周面と隣接する像側外周面とを有し、
前記鏡筒の内周面には、前記中間環の外周面と対向する位置に、前記軸方向に対する段差が形成され、
前記鏡筒の前記段差より物体側の内周面に、前記物体側外周面が隙間をもって対向配置され、前記鏡筒の前記段差より像側の内周面に、
前記像側外周面が隙間をもって対向配置され、
前記物体側外周面と前記鏡筒の前記段差より物体側の内周面との隙間が、前記像側外周面と前記鏡筒の前記段差より像側の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズと前記鏡筒の内周面との隙間が、前記中間環の前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環および2つの前記レンズは、接着剤で接着されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えるレンズユニットであって、
前記中間環は金属製であり、
前記中間環に軸方向において隣り合う前記レンズは、前記中間環と凹凸嵌合しており、
前記中間環の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面と、軸方向において像側に位置し、かつ前記物体側外周面と隣接する像側外周面とを有し、
前記鏡筒の内周面には、前記中間環の外周面と対向する位置に、前記軸方向に対する段差が形成され、
前記鏡筒の前記段差より物体側の内周面に、前記物体側外周面が隙間をもって対向配置され、前記鏡筒の前記段差より像側の内周面に、
前記像側外周面が隙間をもって対向配置され、
前記物体側外周面と前記鏡筒の前記段差より物体側の内周面との隙間が、前記像側外周面と前記鏡筒の前記段差より像側の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズと前記鏡筒の内周面との隙間が、前記中間環の前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環および2つの前記レンズは、前記鏡筒に組み込まれる前に一体化されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
前記物体側外周面の軸方向における長さと、前記像側外周面の軸方向における長さとが等しくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記中間環に物体側において隣り合うレンズと前記中間環とが凹凸嵌合する凸部と凹部とは、互いに嵌合する環状の傾斜面を有し、当該傾斜面は物体側に向かうほど小径となるように傾斜しており、
前記中間環に像側において隣り合うレンズと前記中間環とが凹凸嵌合する凸部と凹部とは互いに嵌合する環状の傾斜面を有し、当該傾斜面は像側に向かうほど小径となるように傾斜していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えるレンズユニットを製造する方法であって、
前記中間環は金属製であり、
前記中間環の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面と、軸方向において像側に位置し、かつ前記物体側外周面と隣接する像側外周面とを有し、
前記鏡筒の内周面には、前記中間環の外周面と対向する位置に、前記軸方向に対する段差が形成され、
前記鏡筒の前記段差より物体側の内周面に、前記物体側外周面が隙間をもって対向配置され、前記鏡筒の前記段差より像側の内周面に、
前記像側外周面が隙間をもって対向配置され、
前記物体側外周面と前記鏡筒の前記段差より物体側の内周面との隙間が、前記像側外周面と前記鏡筒の前記段差より像側の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズと前記鏡筒の内周面との隙間が、前記中間環の前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズを、前記鏡筒に組み込む前に、前記中間環と凹凸嵌合させることで、一体化しておき、
この一体化した一体化物を前記鏡筒に組み込むことを特徴とするレンズユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットで結像された画像を撮像する撮像素子を備えることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニット、レンズユニットの製造方法およびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車外の風景または車室内の様子を撮像するためのカメラが、自動車に搭載されている。自動車に搭載されるカメラ(以下、車載カメラという)は、高温または低温の環境に晒される。そこで、温度特性を補償するために、車載カメラでは、金属製鏡筒とガラス製レンズとが多く採用されている。一方、スマー卜フォン等の端末が備えるカメラでは、高性能かつ低コストのカメラを実現するために開発された樹脂製レンズが多く採用されている。
【0003】
従来のレンズユニットの一例として、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1に開示されたレンズユニットは、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えている。
前記中間環は、金属製であり、像側に向かつて形成された凸部を備えている。また、前記中間環の像側に隣接するレンズは、樹脂製であり、前記中間環の凸部と嵌合する凹部を備えている。そして、樹脂製のレンズの外周面と鏡筒の内周面との隙間が、中間環の外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きく設けられている。
【0004】
このようなレンズユニットによれば、樹脂製レンズの凹部と金属製中間環の凸部とが嵌合するように形成され、かつ、樹脂製レンズの外周面と金属製鏡筒の内周面との隙間が、金属製中間環の外周面と金属製鏡筒の内周面との隙間より大きく設けられているため、高温時において、鏡筒との線膨張率差が大きい樹脂製レンズが膨張したとしても、樹脂製レンズが、径方向内側に向かう方向に働く力を受けて変形することがない。また、樹脂製レンズの光軸の位置が、鏡筒との線膨張率差が小さく、高温時の変形量が小さい金属製中間環によって決まるため、光軸ずれが抑制される。したがって、鏡筒の内側に配置される複数のレンズの同軸度が確保され、光学特性の劣化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来のレンズユニットでは、中間環の像側に隣接するレンズの高温変形を防止することはできるが、中間環の物体側に隣接するレンズの高温変形を防止することはきない。このため、当該レンズの高温変形を抑えるために、鏡筒に全てのレンズや中間環を組み込んだもの(製品)に、製品アニールを施すことで、製品を変形させた状態で安定させていた。製品アニールは通常48時間程度の時間を要するため、量産性に劣る。
また、中間環は鏡筒内に圧入状態で組み込まれるが、この際、中間環の外周側面全体(中間環の軸方向に沿う全体側面)が鏡筒の内周面に干渉するため、組み込みの際に中間環が少しでも鏡筒の軸に対して傾くと、中間環が鏡筒の内周面に咬み込んでしまうため、中間環の組み込みが容易でない。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、中間環に軸方向に隣接する樹脂製のレンズの変形を防止して量産性を向上させるとともに、中間環の組み込みを容易に行えるレンズユニット、レンズユニットの製造方法およびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えるレンズユニットであって、
前記中間環は金属製であり、
前記中間環に軸方向において隣り合う前記レンズは、前記中間環と凹凸嵌合しており、
前記中間環の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面と、軸方向において像側に位置し、かつ前記物体側外周面と隣接する像側外周面とを有し、
前記物体側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間が、前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズと前記鏡筒の内周面との隙間が、前記中間環の前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環および2つの前記レンズは、接着剤で接着されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、中間環に軸方向において隣り合う2つのレンズは、中間環と凹凸嵌合しており、当該2つのレンズと鏡筒の内周面との隙間が、中間環の像側外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きくなっているので、高温時において、鏡筒との線膨張率差が大きい樹脂製レンズが膨張したとしても、樹脂製レンズが、径方向内側に向かう方向に働く力を受けて変形することがない。このため、中間環に軸方向に隣接する樹脂製のレンズの変形を防止できるため、従来と異なり製品アニールを施す必要がなく、よって、量産性を向上させることができる。
また、中間環の物体側外周面と鏡筒の内周面との隙間が、中間環の像側外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、中間環および2つの前記レンズは、接着剤で接着され、さらに、鏡筒の内周面に接するのは中間環の像側外周面であるため、接着剤で接着された中間環および2つのレンズの軸が鏡筒の軸に対して傾いて中間環が鏡筒の内周面に咬み込むのを抑制でき、よって、中間環の組み込みが容易となる。
【0010】
また、本発明に係る他のレンズユニットは、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えるレンズユニットであって、
前記中間環は金属製であり、
前記中間環に軸方向において隣り合う前記レンズは、前記中間環と凹凸嵌合しており、
前記中間環の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面と、軸方向において像側に位置し、かつ前記物体側外周面と隣接する像側外周面とを有し、
前記物体側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間が、前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズと前記鏡筒の内周面との隙間が、前記中間環の前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環および2つの前記レンズは、前記鏡筒に組み込まれる前に一体化されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、中間環に軸方向において隣り合う2つのレンズは、中間環と凹凸嵌合しており、当該2つのレンズと鏡筒の内周面との隙間が、中間環の像側外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きくなっているので、高温時において、鏡筒との線膨張率差が大きい樹脂製レンズが膨張したとしても、樹脂製レンズが、径方向内側に向かう方向に働く力を受けて変形することがない。このため、中間環に軸方向に隣接する樹脂製のレンズの変形を防止できるため、従来と異なり製品アニールを施す必要がなく、よって、量産性を向上させることができる。
また、中間環の物体側外周面と鏡筒の内周面との隙間が、中間環の像側外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、中間環および2つの前記レンズは、鏡筒に組み込まれる前に一体化されて一体化物となり、さらに、鏡筒の内周面に接するのは中間環の像側外周面であるため、前記一体化物の軸が鏡筒の軸に対して傾いて中間環が鏡筒の内周面に咬み込むのを抑制でき、よって、中間環の組み込みが容易となる。
【0012】
また、本発明の前記構成において、前記物体側外周面の軸方向における長さが、前記像側外周面の軸方向における長さと等しくなっていてもよい。
【0013】
中間環の物体側外周面の軸方向の長さが長いほど、像側外周面の軸方向の長さが短くなるので、中間環の咬み込みをより抑制できる一方、鏡筒の内周面に接する像側外周面の軸方向の長さが短くなるので、中間環の径方向における位置安定性が低下する。したがって、物体側外周面の軸方向における長さを、像側外周面の軸方向における長さと等しくすることによって、中間環の咬み込みを抑制しながら、中間環の径方向における位置安定性を確保できる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記中間環に物体側において隣り合うレンズと前記中間環とが凹凸嵌合する凸部と凹部とは、互いに嵌合する環状の傾斜面を有し、当該傾斜面は物体側に向かうほど小径となるように傾斜しており、
前記中間環に像側において隣り合うレンズと前記中間環とが凹凸嵌合する凸部と凹部とは互いに嵌合する環状の傾斜面を有し、当該傾斜面は像側に向かうほど小径となるように傾斜していてもよい。
【0015】
このような構成によれば、中間環に像側において隣り合うレンズと中間環とが凹凸嵌合する凸部と凹部とは互いに嵌合する環状の傾斜面を有し、当該傾斜面は像側に向かうほど小径となるように傾斜しているので、中間環を像側に隣接するレンズに組み付ける際に、傾斜面がガイドの役割を担い、組付け作業がスムーズになる。
また、中間環に物体側において隣り合うレンズと中間環とが凹凸嵌合する凸部と凹部とは、互いに嵌合する環状の傾斜面を有し、当該傾斜面は物体側に向かうほど小径となるように傾斜しているので、物体側に隣接するレンズを中間環に組み付ける際に、傾斜面がガイドの役割を担い、組付け作業がスムーズになる。
したがって、中間環および2つのレンズを、鏡筒に組み込まれる前に容易に一体化することができる。
【0016】
また、本発明に係るレンズユニットの製造方法は、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内周側に、前記鏡筒の軸方向に沿って並べて配置される複数のレンズと、軸方向に隣り合う前記レンズの間に配置される環状の中間環とを備えるレンズユニットを製造する方法であって、前記中間環は金属製であり、
前記中間環の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面と、軸方向において像側に位置し、かつ前記物体側外周面と隣接する像側外周面とを有し、
前記物体側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間が、前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズと前記鏡筒の内周面との隙間が、前記中間環の前記像側外周面と前記鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、
前記中間環に軸方向において隣り合う2つの前記レンズを、前記鏡筒に組み込む前に、前記中間環と凹凸嵌合させることで、一体化しておき、
この一体化した一体化物を前記鏡筒に組み込むことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、中間環に軸方向において隣り合う2つのレンズは、中間環と凹凸嵌合しており、当該2つのレンズと鏡筒の内周面との隙間が、中間環の像側外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きくなっているので、高温時において、鏡筒との線膨張率差が大きい樹脂製レンズが膨張したとしても、樹脂製レンズが、径方向内側に向かう方向に働く力を受けて変形することがない。このため、中間環に軸方向に隣接する樹脂製のレンズの変形を防止できるため、従来と異なり製品アニールを施す必要がなく、よって、量産性を向上させることができる。
また、中間環の物体側外周面と鏡筒の内周面との隙間が、中間環の像側外周面と鏡筒の内周面との隙間より大きくなっており、中間環および2つの前記レンズは、鏡筒に組み込まれる前に一体化されて一体化物となり、さらに、鏡筒の内周面に接するのは中間環の像側外周面であるため、前記一体化物の軸が鏡筒の軸に対して傾いて中間環が鏡筒の内周面に咬み込むのを抑制でき、よって、中間環の組み込みが容易となる。
【0018】
本発明に係るカメラモジュールは、前記レンズユニットと、前記レンズユニットで結像された画像を撮像する撮像素子を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、カメラモジュールは、上述の本発明のレンズユニットと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中間環に軸方向に隣接する樹脂製のレンズの変形を防止して量産性を向上させるとともに、中間環の組み込みを容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るレンズユニット100の断面図である。
図2は、レンズユニット100の要部の断面図、
図3は
図2におけるX縁部の拡大図である。
図1に示すレンズユニット100は、例えば、車載カメラに用いられる。
この車載カメラは、例えば、バックミラーに内蔵され、車室内の様子を撮像する。
【0023】
図1に示すように、レンズユニット100は、鏡筒10と、複数のレンズ21,22,23,24,25と、中間環(スペーサ)31,32,33と、光学フィルタ40と、押え部材70と、絞り部材81,82とを備えている。なお、
図1~
図3では、断面であることを示すハッチング(斜線部)を鏡筒10にのみ施し、それ以外の部品についてはハッチングを省略している。
【0024】
光学フィルタ40は、レンズユニット100における、複数のレンズ21~25が像を結ぶ像側の端部に配置されている。以下、円筒状である鏡筒10の軸方向を軸方向Zとする。また、軸方向Zにおける、レンズユニット100の光学フィルタ40側の端部を、像側という。また、軸方向Zにおける、レンズユニット100の像側とは反対側の端部を、物体側という。レンズユニット100は、物体側が撮像対象を向くように配置されている。また、
図2に示すように、レンズユニット100の像側には、撮像素子60が配置されている。撮像素子60は、レンズユニット100で結像された画像を撮像するために、レンズユニット100が取り付けられるカメラケースに配置されている。また、
図1に示すように、押え部材70は、鏡筒10の内側に収容された部品を押さえるために、レンズユニット100の物体側の端部に取り付けられている。押え部材70は、金属製であり、例えば、アルミニウムで形成されている。
【0025】
鏡筒10は、金属製であり、例えば、アルミニウムで形成されている。レンズ21~25、中間環31~33、および絞り部材81,82は、鏡筒10の内周側に挿入され、鏡筒10の軸方向Z(以下、軸方向Zという)に沿って並べて配置されている。レンズ21~25、中間環31~33、および絞り部材81,82は、像側から物体側に向かつて、レンズ21、中間環31、レンズ22、レンズ23、絞り部材81、中間環32、レンズ24、絞り部材82、中間環33、レンズ25の順で配置されている。レンズ21~25は、それぞれの光軸を一致させて、光軸(Z軸)に沿って並べた状態で配置されている。
【0026】
以下、
図2および
図3を用いてレンズユニット100の要部について説明する。中間環31は、軸方向Zに隣り合うレンズ21とレンズ22との間に配置されている。鏡筒10の像側の端部には、レンズ21が当接する支持部11が設けられている。支持部11は、鏡筒10の内側に、径方向内側に向かつて突出するように形成されている。
【0027】
レンズ22,23は、円形状の樹脂製レンズである。レンズ22,23の外径は、鏡筒10の内径より小さく形成されている。
レンズ22,23の外周面と、鏡筒10の内周面との間には、直径方向において常温で約0.1mmの隙間が全周にわたって設けられている。このため、レンズ22,23の径方向に対する位置は、鏡筒10の内周面によっては決まらない。レンズ23には、軸方向Zにおいて像側に向かつて窪んだ形状である凹部23aが形成されている。また、レンズ22には、軸方向Zにおいて像側に向かつて突出した形状である凸部22eが形成されており、凹部23aと凸部22eとは凹凸嵌合している。
また、レンズ23の凹部23aの径方向外側には、凹部23aから径方向外側に向けて凹凸部23dが形成され、レンズ22の凸部22eの径方向外側には、凸部22eから径方向外側に向けて凸凹部22dが形成されており、凹凸部23dと凸凹部22dが凹凸嵌合している。
このようにしてレンズ22とレンズ23とは凹凸嵌合している。なお、上記では、凸部22eおよび凸凹部22dがレンズ22に形成され、凹部23aおよび凹凸部23dがレンズ23に形成されているものとしたが、凹部および凹凸部がレンズ22に形成され、凸部および凸凹部がレンズ23に形成されていてもよい。
このようなレンズ22,23は貼り合わせレンズであり、レンズ22,23は鏡筒10に組み込まれる前に一体化される。
【0028】
また、鏡筒10の内周面であって、中間環31の外周側の側面(外周側面)と対向する位置には、軸方向Zに対する段差12が形成されている。中間環31の外周側面の上半分(物体側の半分)と鏡筒10の内周面との間には、直径方向において常温で約0.1mmの隙間が全周にわたって設けられている。中間環31の外周側面の下半分(像側の半分)と鏡筒10の内周面との間には、直径方向において常温で約0.0lmmの隙間が全周にわたって設けられている。
【0029】
中間環31は、環状の部材である。また、中間環31は、金属製であり、例えば、アルミニウムで形成されている。
また、中間環31に軸方向において物体側に隣り合うレンズ22は、中間環31と凹凸嵌合している。すなわち、レンズ22は、円形状の樹脂製レンズであり、光学的機能を担うレンズ部22aとその外周に形成されたフランジ部22bとを備えている。中間環31に物体側において隣り合うレンズ22と中間環31とが凹凸嵌合する凸部31aと凹部22cとは、互いに嵌合する環状の傾斜面K1を有し、当該傾斜面K1は物体側に向かうほど小径となるように傾斜している。凸部31aは中間環31の上面(物体側の面)の内周部に、上側(物体側)に突出形成され、凹部22cはレンズ22の下面(像側の面)において、レンズ部22aとフランジ部22bとの間に、上側(物体側)に凹むように、かつ中間環31の全周にわたって環状に形成されている。
【0030】
また、上述したように、レンズ22の外径は、鏡筒10の内径より小さく形成されており、レンズ22の外周面と鏡筒10の内周面との間には、直径方向において常温で約0.1mmの隙間が全周にわたって設けられている。このため、レンズ22の径方向に対する位置は、鏡筒10の内周面によっては決まらない。
一方、中間環31の外周面のうち後述する像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間は、レンズ22の外周面と鏡筒10の内周面との隙間より小さい。つまり、レンズ22の外周面と鏡筒10の内周面との隙間が、中間環31の像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間より大きくなっている。
このため、中間環31の径方向に対する位置は、鏡筒10の内周面によって決まる。そして、レンズ22と中間環31とは、上述したように凹凸嵌合している。これにより、レンズ22の径方向に対する位置(レンズ22の光軸の位置)は、中間環31の径方向に対する位置によって決まることとなる。
また、レンズ22とレンズ23とは上述したように凹凸嵌合しているので、レンズ23の径方向に対する位置(レンズ23の光軸の位置)は、中間環31の径方向に対する位置によって決まることとなる。
【0031】
なお、本実施形態では、凹部22cが、レンズ22の内周側に形成されている例を示しているが、凹部22cは、レンズ22の外周側に形成されていてもよい。また、本実施形態では、凸部31aが、中間環31の内周側に形成されている例を示しているが、凸部31aは、中間環31の外周側に形成されていてもよい。なお、凹部が中間環31に形成され、凸部がレンズ22に形成された場合には、中間環31とレンズ22の線膨張率の差によって、レンズ22が中間環31から力を受けてしまい、光学性能が劣化してしまうという問題がある。
【0032】
また、中間環31は、鏡筒10に中間嵌めされるように形成されている。具体的には、中間環31の外周面は、軸方向において物体側に位置する物体側外周面31cと、軸方向において像側に位置し、かつ物体側外周面31cと隣接する像側外周面31dとを有している。また、物体側外周面31cと像側外周面31dとは同径であり、軸方向Zにおいて面一となっている。
上述したように、鏡筒10の内周面であって、中間環31の外周側の側面(外周側面)と対向する位置には、軸方向Zに対する段差12が形成されている。そして、鏡筒10の段差12より上側(物体側)の内周面に、物体側外周面31cが所定の隙間をもって対向配置され、段差12より下側(像側)の内周面に、像側外周面31dが僅かの隙間をもって対向配置されている。
このようにして、物体側外周面31cと鏡筒10の内周面との隙間が、像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間より大きくなっている。例えば、物体側外周面31cと鏡筒10の内周面との隙間は0.1mm程度となっており、像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間は0.01mmとなっている。
【0033】
中間環31の像側外周面31dの外径寸法は、鏡筒10の内径より僅かに小さい寸法から鏡筒10の内径より僅かに大きい寸法までの間の範囲で設定されている。中間環31の像側外周面31dの外径寸法は、例えば、鏡筒10の内径より0.005mm小さい寸法から鏡筒10の内径より0.005mm大きい寸法までの間の範囲で設定されている。なお、このように中間環31の像側外周面31dの外径寸法が、鏡筒10の内径に対して0~+0.005mmと設定されている場合、中間環31の鏡筒10への挿入は、鏡筒10を高温にした状態で、鏡筒10の内側に挿入される。但し、後述するように、中間環31、レンズ21および貼り合わせレンズとなっているレンズ22,23は、鏡筒10に組み込まれる前に一体化されている。
また、中間環31の物体側外周面31cの軸方向における長さと、像側外周面31dの軸方向における長さとは等しくなっている。
【0034】
また、中間環31に軸方向において像側に隣り合うレンズ21は、中間環31と凹凸嵌合している。すなわち、レンズ21は、円形状の樹脂製レンズであり、光学的機能を担うレンズ部21aとその外周に形成されたフランジ部21bとを備えている。中間環31に像側において隣り合うレンズ21と中間環31とが凹凸嵌合する凸部31bと凹部21cとは、互いに嵌合する環状の傾斜面K2を有し、当該傾斜面K2は像側に向かうほど小径となるように傾斜している。凸部31bは中間環31の下面(像側の面)の内周部に、下側(像側)に突出形成され、凹部21cはレンズ22の上面(物体側の面)において、レンズ部21aとフランジ部21bとの間に、下側(像側)に凹むように、かつ中間環31の全周にわたって環状に形成されている。
【0035】
また、上述したように、レンズ21の外径は、鏡筒10の内径より小さく形成されており、レンズ21の外周面と鏡筒10の内周面との間には、直径方向において常温で約0.1mmの隙間が全周にわたって設けられている。このため、レンズ21の径方向に対する位置は、鏡筒10の内周面によっては決まらない。
一方、中間環31の像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間は、レンズ21の外周面と鏡筒10の内周面との隙間より小さい。つまり、レンズ21の外周面と鏡筒10の内周面との隙間が、中間環31の像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間より大きくなっている。
このため、中間環31の径方向に対する位置は、鏡筒10の内周面によって決まる。そして、レンズ21と中間環31とは、上述したように凹凸嵌合している。これにより、レンズ21の径方向に対する位置(レンズ22の光軸の位置)は、中間環31の径方向に対する位置によって決まることとなる。
【0036】
なお、本実施形態では、凹部21cが、レンズ21の内周側に形成されている例を示しているが、凹部21cは、レンズ21の外周側に形成されていてもよい。また、本実施形態では、凸部31bが、中間環31の内周側に形成されている例を示しているが、凸部31bは、中間環31の外周側に形成されていてもよい。なお、凹部が中間環31に形成され、凸部がレンズ21に形成された場合には、中間環31とレンズ21の線膨張率の差によって、レンズ21が中間環31から力を受けてしまい、光学性能が劣化してしまうという問題がある。
【0037】
また、レンズ21は、フランジ部21bにおける像側の面が、鏡筒10の支持部11に当接するように配置されている。また、レンズ21は、レンズ部21aがフランジ部21bから像側に向けて湾曲した形状となっている。レンズ部21aにおける物体側の面は、凹曲面となっている。また、レンズ部21aにおける像側の面は、中心部が凹曲面となっていて、その周辺部が凸曲面となっている。レンズ21の外径は、鏡筒10の内径より小さく形成されており、レンズ21の外周面と鏡筒10の内周面との間には、直径方向において常温で約0.1mmの隙間が全周にわたって設けられている。このため、レンズ21の径方向に対する位置は、鏡筒10の内周面によっては決まらない。
【0038】
また、本実施形態では、凹部21c,22cの窪み量は、例えば、0.2mmである。
また、傾斜面K1,K2は、例えば、鏡筒10の軸方向Z(光軸方向)に対して約20°傾斜している。凹部21c,22cにおける外周側の面は、傾斜面K1,K2と当接または近接する傾斜面となっており、当該傾斜面と傾斜面K1,K2との間には、0~約0.01mmの隙間が形成されている。
【0039】
レンズユニット100は、撮像素子60、配線基板、信号処理回路、フレキシブル配線シート、およびコネクタ等とともに、カメラモジュールを構成する。なお、カメラモジュールとは、少なくともレンズユニット100と撮像素子60とを備えたものをいう。なお、撮像素子60には、CCD( Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の一般的な撮像素子が用いられる。
【0040】
また、中間環31、レンズ21および貼り合わせレンズとなっているレンズ22,23は、鏡筒10に組み込まれる前に一体化されている。レンズ22,23は貼り合わせレンズとなっているので、レンズ22と中間環31とを上述した凹凸嵌合している部位で接着剤等によって接着固定することで、貼り合わせレンズ(レンズ22,23)と中間環31とが一体化され、さらに、中間環31とレンズ21とを上述した凹凸嵌合している部位で接着剤等によって接着固定することで、中間環31とレンズ21が一体化される。これによって、3枚のレンズ21,22,23と中間環31とが一体化されて一体化物(サブアッシ)となる。
そして、鏡筒10内に、3枚のレンズ21,22,23と中間環31とが一体化されてなるサブアッシを組み込む。この際、鏡筒10を所定の温度(例えば70℃)に加熱したうえでサブアッシを組み込み、温度低下して安定となった後、鏡筒10内に、絞り81、中間環32、レンズ24、絞り82、中間環33、レンズ25を順次組み込み、最後に押え部材70を鏡筒10の上端部(物体側の端部)に取り付けて、当該押え部材70と鏡筒10の下端部に設けられた支持部11とによって、レンズ21~23、中間環31~33、絞り81,82を挟み付ける。
【0041】
本実施形態によれば、中間環31に軸方向において隣り合う2つのレンズ21,22は、中間環31と凹凸嵌合しており、当該2つのレンズ21,22と鏡筒10の内周面との隙間が、中間環31の像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間より大きくなっているので、高温時において、鏡筒10との線膨張率差が大きい樹脂製レンズ21,22が膨張したとしても、樹脂製レンズ21,22が、径方向内側に向かう方向に働く力を受けて変形することがない。このため、中間環31に軸方向に隣接する樹脂製のレンズ21,22の変形を防止できるため、従来と異なり製品アニールを施す必要がなく、よって、量産性を向上させることができる。
【0042】
また、中間環31の物体側外周面31cと鏡筒10の内周面との隙間が、中間環31の像側外周面31dと鏡筒10の内周面との隙間より大きくなっており、中間環31および2つのレンズ21,22、レンズ23は、鏡筒10に組み込まれる前に一体化され、さらに、鏡筒10の内周面に接するのは中間環31の像側外周面31dであるため、サブアッシの軸が鏡筒10の軸に対して傾いて中間環31が鏡筒10の内周面に咬み込むのを抑制でき、よって、中間環31の組み込みが容易となる。
【0043】
また、中間環31の物体側外周面31cの軸方向における長さが、像側外周面31dの軸方向における長さと等しくなっているので、中間環31の咬み込みを抑制しながら、中間環31の径方向における位置安定性を確保できる。
【0044】
さらに、中間環31に像側において隣り合うレンズ21と中間環31とが凹凸嵌合する凸部31bと凹部21cとは互いに嵌合する環状の傾斜面K2を有し、当該傾斜面K2は像側に向かうほど小径となるように傾斜しているので、中間環31を像側に隣接するレンズ21に組み付ける際に、傾斜面K2がガイドの役割を担い、組付け作業がスムーズになる。
また、中間環31に物体側において隣り合うレンズ22と中間環31とが凹凸嵌合する凸部31aと凹部22cとは、互いに嵌合する環状の傾斜面K1を有し、当該傾斜面K1は物体側に向かうほど小径となるように傾斜しているので、物体側に隣接するレンズ22をレンズ22と一体化されたレンズ23を含んで中間環31に組み付ける際に、傾斜面K2がガイドの役割を担い、組付け作業がスムーズになる。
したがって、中間環31および3つのレンズ21,22,23を、鏡筒に組み込まれる前に容易に一体化することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、レンズ21,22,23が樹脂製であるが、それ以外のレンズ24,25は、樹脂製であってもガラス製であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 鏡筒
21,22,23,24,25 レンズ
31a,31b 凸部
21c,22c 凹部
31 中間環
31c 物体側外周面
31d 像側外周面
100 レンズユニット
K1,K2 傾斜面
60 撮像素子