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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】プラント監視制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
G05B23/02 V
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020113686
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012110
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 祐希
(72)【発明者】
【氏名】園田 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 大智
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】本庄 亮太郎
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0061148(US,A1)
【文献】特開2001-202126(JP,A)
【文献】特開2003-303017(JP,A)
【文献】特開2018-181285(JP,A)
【文献】特開2017-204244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの設備機器の制御を実行するプロセスコントローラと、
オペレータが前記設備機器の監視操作を行う中央監視装置と、
無人移動体と、
前記無人移動体との間で信号授受を行う無人移動体コントローラとを備え、
前記無人移動体は、前記プラントに設けた設備機器制御用のセンサの故障時の代替用のバックアップ用センサを搭載しており、前記無人移動体コントローラからの指令により前記バックアップ用センサで前記プラントの状態を計測するものであり、
前記プロセスコントローラは、前記センサの故障の検知に応じて前記無人移動体コントローラに対して前記センサの故障を通知するセンサ異常検知部を備え、
前記無人移動体コントローラは、前記センサ異常検知部からのセンサの故障の通知に応じて該当センサに紐づく場所および経路を探索する場所経路探索部と、前記場所経路探索部からの探索結果に基づいて前記無人移動体を移動制御する移動制御部と、前記無人移動体の前記バックアップ用センサで得られた計測情報を受信して前記プロセスコントローラに出力する信号授受部と、を備え、
前記プロセスコントローラは、前記プラントに設けた設備機器制御用のセンサの故障時に、前記無人移動体の前記バックアップ用センサで得られた計測情報に基づいて前記プラントの前記設備機器の制御を実行する、プラント監視制御システム。
【請求項2】
前記無人移動体は、ドローンまたは無人移動ロボットである、請求項1に記載のプラント監視制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プラント監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人移動体であるドローンの活用システムとして、ある特定の場所で何らかの異常が発生した場合には、その発生場所にドローンを飛行させ、ドローンに搭載した撮像装置で異常を起こした対象の画像データを入手し、その画像データをドローンから管理者に送信する手法が開示されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-118084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、例えば水処理プラントには、制御状態を計測するセンサに対してバックアップが用意されていることが少なく、自動制御に必要不可欠なセンサが故障した場合には、オペレータが現場まで出向いて手動操作により対応する必要があった。また、多数あるセンサの個々についてバックアップ用のセンサを用意すると、初期費用ならびにメンテナンス費用が増加する。
【0005】
一方、前述の特許文献1には、異常発生時にドローンを活用して画像データを入手する手法が開示されているが、例えば、水処理プラントの自動制御で必要となる水質などは画像データからは判断するのが難しく、水質などを検出するセンサの代替にはならないという問題がある。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、プラントに配備された各種センサに異常が発生した場合でも、自動制御が継続されるようにして、オペレータの負担軽減、およびセンサの初期費用、ならびにメンテナンス費用を削減可能なプラント監視制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示されるプラント監視制御システムは、プラントの設備機器の制御を実行するプロセスコントローラと、
オペレータが前記設備機器の監視操作を行う中央監視装置と、
無人移動体と、
前記無人移動体との間で信号授受を行う無人移動体コントローラとを備え、
前記無人移動体は、前記プラントに設けた設備機器制御用のセンサの故障時の代替用のバックアップ用センサを搭載しており、前記無人移動体コントローラからの指令により前記バックアップ用センサで前記プラントの状態を計測するものであり、
前記プロセスコントローラは、前記センサの故障の検知に応じて前記無人移動体コントローラに対して前記センサの故障を通知するセンサ異常検知部を備え、
前記無人移動体コントローラは、前記センサ異常検知部からのセンサの故障の通知に応じて該当センサに紐づく場所および経路を探索する場所経路探索部と、前記場所経路探索部からの探索結果に基づいて前記無人移動体を移動制御する移動制御部と、前記無人移動体の前記バックアップ用センサで得られた計測情報を受信して前記プロセスコントローラに出力する信号授受部と、を備え、
前記プロセスコントローラは、前記プラントに設けた設備機器制御用のセンサの故障時に、前記無人移動体の前記バックアップ用センサで得られた計測情報に基づいて前記プラントの前記設備機器の制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0008】
本願のプラント監視制御システムによれば、プラントに配備されたセンサに異常が発生した場合でも、その異常が生じたセンサの配置箇所まで無人移動体が自動的に移動し、無人移動体によって取得したデータを用いてプラント制御が継続されるため、オペレータの負担が軽減されるとともに、センサの初期費用およびメンテナンス費用の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1の水処理プラント監視制御システムの全体を示す構成図である。
図2】実施の形態1のプロセスコントローの構成を示す機能ブロック図である。
図3】実施の形態1のドローンコントローラの構成を示す機能ブロック図である。
図4】ドローンコントローラの場所経路探索部に予め登録されている飛行経路ならびに各センサの位置情報を登録したデータベースの一例を示す説明図である。
図5】実施の形態1の水処理プラント監視制御システムの監視制御処理を示すフローチャートである。
図6】プロセスコントローラおよびドローンコントローラのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本願を水処理プラントの監視制御に適応した場合について説明するが、本願は水処理プラントの監視制御に限定されるものではなく、他のプラントの監視制御にも適用可能である。
【0011】
図1は、実施の形態1の水処理プラント監視制御システムの全体を示す構成図である。
【0012】
この水処理プラント監視制御システムは、例えば開渠17を流れる水の水位、水質などを計測するセンサ1、および水処理を行うポンプ、バルブなどの設備機器2が配備されている。なお、ここでは、便宜上、センサ1は一つのみを示しているが、実際には、水処理プラントの必要箇所に多数配置されている。
【0013】
また、この水処理プラント監視制御システムは、センサ1および設備機器2との間で信号の授受を行って水処理プラントの設備全体の自動制御を行うプロセスコントローラ(以下、プロセスCTRと表記)3、および水処理プラントの全体の監視および操作を実施する中央監視装置(以下、OPSと表記)7を備える。さらに、この実施の形態1の特徴として、無人移動体としてのドローン5、およびこのドローン5の自動制御を行う無人移動体コントローラとしてのドローンコントローラ(以下、ドローンCTRと表記)6を有する。そして、プロセスCTR3、ドローンCTR6、およびOPS7は、プラントバス4を介して互いに接続されている。
【0014】
なお、ここでは、無人移動体として、ドローン5を採用した場合について説明するが、このようなドローン5に限らず、例えば無人移動ロボットを採用することも可能である。
【0015】
図2は、図1のプロセスCTR3の構成を示す機能ブロック図である。
水処理プラントに予め配備されたセンサ1が正常に動作している場合、プロセスCTR3は、センサ1からの計測値(水質、水位等のデータ)を入力部3a、入出力部3bを介してOPS7に出力する。
【0016】
一方、センサ1が故障するなどの異常が発生した場合には、プロセスCTR3に内蔵されたセンサ異常検知部3cがセンサ1からの信号がない等の異常状況を検知する。これに応じて、センサ異常検知部3cは、センサ1から入力部3aを経由して入出力部3bへ入る信号の流れを止め、ドローンCTR6から入力部3dを介して入出力部3bへ信号が流れるように切り替える。さらに、センサ異常検知部3cは、センサ1の異常を知らせる異常信号をプラントバス4を介してドローンCTR6に出力する。
【0017】
図3は、ドローンCTR6の構成を示す機能ブロック図である。
ドローンCTR6は、プロセスCTR3からのセンサ1の異常発生の通知の受信に応じて該当センサ1に紐づく場所および経路を探索する場所経路探索部6aと、場所経路探索部6aからの探索結果に基づいてドローン5を移動制御する移動制御部6bと、ドローン5のバックアップ用センサ5aで得られた計測情報を受信してプロセスCTR3に出力する信号授受部6cとを有する。
【0018】
上記の場所経路探索部6aは、図4に示すように、水処理プラント内の地図およびドローン5の飛行経路を示す情報、ならびに各センサ1の位置がリストアップされてデータベースとして格納している。
【0019】
水処理プラント内のセンサ1が故障し、これに応じてプロセスCTR3から出力された異常信号を入力すると、場所経路探索部6aは、センサ1に紐づく水処理プラントの場所(位置)および経路の情報を図4に示したデータベースから呼び出し、移動制御部6bへ当該情報を出力する。
【0020】
移動制御部6bは、当該情報に基づき、ドローン5を稼働させ、センサ1のある現場までの飛行を指令する。これに応じて、ドローン5は、現在地を移動制御部6bに出力(通信)して現在地を確定する。
【0021】
また、ドローン5は、水処理プラントに配備されたセンサ1の故障時の代替用として、水質を計測するバックアップ用センサ(具体的には、水の温度、ph、溶存酸素などの水質を計測する水質センサ)5a、および水位を計測する撮像カメラ(図示省略)が搭載されている。そして、ドローン5は、バックアップ用センサ5aで計測した水質ならびに撮像カメラで撮像した水位などを含む現地状況を画像データとして生成し、それらの計測データと画像データをドローンCTR6に出力する。
【0022】
次に、水処理プラント監視制御システムの全体的な動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、図中の符合Sは各処理ステップを意味する。
【0023】
プロセスCTR3は、水処理プラントの自動制御をするためのセンサ1に異常がないかを常に監視しており(ステップS1)、センサ1に故障などの異常があれば、センサ異常検知部3cからドローンCTR6に対して該当するセンサ情報を送信する(ステップS2)。
【0024】
ドローンCTR6のデータベースには、図4に示したように、予め各センサ1の位置およびプラント内の地図、ならびに各センサ1に至る経路を示す情報がリストアップされている。したがって、ドローンCTR6は、プロセスCTR3からセンサ情報を受信すると、これに応じて、データベースに格納されているプラント内の地図、経路を示す情報などを参照し、ドローン5がプロセスCTR3から送信されたセンサ1に紐づく位置へ飛行するように、ドローン5へ指令を出力する(ステップS3)。これにより、ドローンCTR6は該当場所へドローン5を飛行させる。
【0025】
ドローン5は、指定された位置に飛行すると(ステップS4)、ドローン5に搭載されたバックアップ用センサ5aによって、例えば開渠17を流れる水の水質を計測して計測データを生成するとともに、撮像カメラで撮像した水位などを含む現地状況を画像データとして生成し、これらの計測データおよび画像データをリアルタイムでドローンCTRに出力する(ステップS5)。ドローンCTR6の信号授受部6cは、ドローン5から計測データおよび画像データを受信すると、それらのデータをプロセスCTR3へ送信する。
【0026】
プロセスCTR3は、ドローンCTR6から受信した計測データおよび画像データに基づいて設備機器2を自動制御する(ステップS6)。また、プロセスCTR3は、ドローンCTR6から受信した計測データおよび画像データ、ならびにセンサ1の故障情報をプラントバス4を介してOPS7に送信する。OPS7は、プロセスCTR3から受信したこれらの計測データ、画像データ、ならびにセンサ1の故障情報を図示しないモニタなどに表示する(ステップS7)。
【0027】
以上のように、この実施の形態1では、水処理プラントに配備されたセンサ1に異常が発生した場合でも、ドローン5に搭載したバックアップ用センサ5aで検出された計測データおよび撮像カメラで撮像した画像データにより、水処理プラントの自動制御に必要な流量、水質などの情報を容易に継続して入手可能となる。そのため、水処理プラントの自動制御を継続できるので、ポンプ、バルブなどの各設備機器への指令を迅速かつ正確に行うことができ、かつオペレータの負担が軽減される。また、故障したセンサの交換には数か月かかる場合があるが、その間もドローン5による継続的なプラント監視制御が行える。さらに、従来のように、水処理プラントに余分なバックアップセンサを取付ける必要性がなくなるので、センサ初期費用ならびにメンテナンス費用の削減になる。
【0028】
なお、上記の実施の形態1において、プロセスCTR3およびドローンCTR6は、例えば図6に示すように、プロセッサ100と記憶装置101とからなるハードウェアで構成される。記憶装置101は、図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ100は、記憶装置101から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ100にプログラムが入力される。また、プロセッサ100は、演算結果等のデータを記憶装置101の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0029】
なお、本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態1に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態1に適用可能である。
【0030】
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも一つの構成要素を変形する場合、追加する場合、または省略する場合が含まれものとする。
【符号の説明】
【0031】
1 センサ、2 設備機器、3 プロセスCTR、3c センサ異常検知部、
5 ドローン(無人移動体)、5a バックアップ用センサ、
6 ドローンCTR(無人移動体コントローラ)、6a 場所経路探索部、
6b 移動制御部、6c 信号授受部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6