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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】消毒保管庫
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/06 20060101AFI20241220BHJP
   A47L 19/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61L2/06
A47L19/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020143582
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2021146182
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020045132
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰光
(72)【発明者】
【氏名】與語 勇一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 亜美
(72)【発明者】
【氏名】高木 友裕
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-095056(JP,A)
【文献】特開2009-257693(JP,A)
【文献】特開2017-113239(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171533(WO,A1)
【文献】特開2018-136037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/06
A47L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する収納室(16)と、空気の循環経路(14)とが内部に画成された筐体(12)に、該収納室(16)を外部と連通させる通口(50a)が形成され、該通口(50a)を扉(20A,20B)により開閉可能であると共に、加熱装置(30)により加熱した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能な消毒保管庫において、
庫内を冷却可能な冷却装置(36)を備え、該冷却装置(36)により冷却した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能に構成され、
前記筐体(12)には、前記扉(20A,20B)の周囲に位置する複数の設置対象(26,52,53)に、該設置対象(26,52,53)の冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて発熱量が相違する結露防止用ヒータ(71,72,73)が配設されており、
前記扉(20A,20B)における裏面を形成する板金(66)と、該扉(20A,20B)の他の構成部材(65)との間に、該扉(20A,20B)の外周縁部に沿って配設される板状またはシート状の断熱体(92)が介在している
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項2】
物品を収納する収納室(16)と、空気の循環経路(14)とが内部に画成された筐体(12)に、該収納室(16)を外部と連通させる通口(50a)が形成され、該通口(50a)を扉(20A,20B)により開閉可能であると共に、加熱装置(30)により加熱した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能な消毒保管庫において、
庫内を冷却可能な冷却装置(36)を備え、該冷却装置(36)により冷却した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能に構成され、
前記筐体(12)には、前記扉(20A,20B)の周囲に位置する複数の設置対象(26,52,53)に、該設置対象(26,52,53)の冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて発熱量が相違する結露防止用ヒータ(71,72,73)が配設されており、
前記扉(20A,20B)の内部に配設される内板(81,82)と、板状またはシート状の断熱体(91,92,93)と、該断熱体(91,92,93)を前記内板(81,82)に固定する固定部材(83,84)とを備え、
前記固定部材(83,84)は、その一端側の頭部(85)および他端側のネジ部(86)の間に、該ネジ部(86)より大径であって該頭部(85)より小径の嵌合部(87)を備え、
前記断熱体(91,92,93)は、前記固定部材(83,84)の前記ネジ部(86)が前記内板(81,82)に螺合した状態で該内板(81,82)と前記頭部(85)との間に位置し、当該断熱体(91,92,93)に形成された嵌合孔(91a,92a,93a)の内側に前記嵌合部(87)が嵌合した状態で保持されている
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項3】
前記嵌合孔(91a)は、前記断熱体(91)の長手方向に沿う長孔状に形成されている請求項記載の消毒保管庫。
【請求項4】
物品を収納する収納室(16)と、空気の循環経路(14)とが内部に画成された筐体(12)に、該収納室(16)を外部と連通させる通口(50a)が形成され、該通口(50a)を扉(20A,20B)により開閉可能であると共に、加熱装置(30)により加熱した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能な消毒保管庫において、
庫内を冷却可能な冷却装置(36)を備え、該冷却装置(36)により冷却した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能に構成され、
前記筐体(12)には、前記扉(20A,20B)の周囲に位置する複数の設置対象(26,52,53)に、該設置対象(26,52,53)の冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて発熱量が相違する結露防止用ヒータ(71,72,73)が配設されており、
前記扉(20A,20B)として、前記通口(50a)の左辺に沿う軸を中心として回動する左扉(20A)と、前記通口(50a)の右辺に沿う軸を中心として回動する右扉(20B)とを備え、
一方の扉(20A)の開放端部に、上下方向に延在する両扉(20A,20B)の合わせ目(S)を庫内側から閉塞する仕切片(70)が設けられ、該一方の扉(20A)が閉じた状態で他方の扉(20B)を閉じる際に、該他方の扉(20B)の裏面に配設されたパッキン(P)が前記仕切片(70)と接触するよう構成されており、
前記仕切片(70)の延出端側に、前記他方の扉(20B)の裏面のうち前記パッキン(P)よりも軸側の部位と弾性的に接触するシール部材(113,114,115)が設けられている
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項5】
前記仕切片(70)は、延出基部(70b1)と、該延出基部(70b1)から表側に斜めに延出する傾斜部(70b2)とを備え、前記延出基部(70b1)および前記傾斜部(70b2)の表面同士が鈍角の関係となるように屈曲しており、
前記シール部材(114,115)は、前記仕切片(70)の前記傾斜部(70b2)に沿って配設され、その幅方向の一端側が、前記他方の扉(20B)の裏面のうち前記パッキン(P)よりも軸側の部位と弾性的に接触すると共に、幅方向の他端側が、前記仕切片(70)の前記延出基部(70b1)よりも庫内側に位置して前記扉(20A,20B)の裏面に沿う空気の流れに変化を与え得るように構成されている請求項に記載の消毒保管庫。
【請求項6】
前記仕切片(70)は、延出基部(70b1)と、該延出基部(70b1)から表側に斜めに延出する傾斜部(70b2)とを備え、前記延出基部(70b1)および前記傾斜部(70b2)の表面同士が鈍角の関係となるように屈曲しており、
前記シール部材(115)は、板厚方向に離間する平行な複数の可撓板(116,117b)を備え、各可撓板(116,117b)の幅方向の一端側が、前記他方の扉(20B)の裏面のうち前記パッキン(P)よりも軸側の部位と弾性的に接触するように構成されている請求項またはに記載の消毒保管庫。
【請求項7】
物品を収納する収納室(16)と、空気の循環経路(14)とが内部に画成された筐体(12)に、該収納室(16)を外部と連通させる通口(50a)が形成され、該通口(50a)を扉(20A,20B)により開閉可能であると共に、加熱装置(30)により加熱した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能な消毒保管庫において、
庫内を冷却可能な冷却装置(36)を備え、該冷却装置(36)により冷却した空気を前記循環経路(14)から前記収納室(16)に導入可能に構成され、
前記筐体(12)には、前記扉(20A,20B)の周囲に位置する複数の設置対象(26,52,53)に、該設置対象(26,52,53)の冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて発熱量が相違する結露防止用ヒータ(71,72,73)が配設されており、
前記扉(20A,20B)の裏面の下端部に配設されて該扉(20A,20B)と前記筐体(12)の底板(26)との間を塞ぐ遮蔽板(38)を備えると共に、
前記遮蔽板(38)の外縁と前記扉(20A,20B)の裏面との間の隙間を覆う補助遮蔽板(120)を備えている
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項8】
前記扉(20A,20B)として、前記通口(50a)の左辺に沿う軸を中心として回動する左扉(20A)と、前記通口(50a)の右辺に沿う軸を中心として回動する右扉(20B)とを備え、
前記筐体(12)に、両扉(20A,20B)の裏面上縁部に対向する上仕切(52)を備え、
前記上仕切(52)を設置対象とする前記結露防止用ヒータ(71)が、両扉(20A,20B)の上端面(61,61)に沿って左右方向に延在する水平部位(71a,71b,71c)と、両扉(20A,20B)の合わせ目(S)に沿って上下方向に延在する鉛直部位(71e1,71e3)とを有する請求項1~7の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項9】
前記筐体(12)に、前記扉(20A,20B)の裏面の側縁部に対向する横仕切(53)と、該扉(20A,20B)の側端面(62,62)に対向する側枠板(51S,51S)とを備え、
前記扉(20A,20B)の裏面に配設されたパッキン(P)が、前記扉(20A,20B)を閉じた時に前記横仕切(53)と接触するよう構成され、
前記横仕切(53)を設置対象とする前記結露防止用ヒータ(72,72)は、前記パッキン(P)の裏側に並ぶ位置で上下方向に延在する第1の鉛直部位(72a)と、前記側枠板(51S,51S)の裏側に並ぶ位置で上下方向に延在する第2の鉛直部位(72b)とを有し、当該第1および第2の鉛直部位(72a,72b)が前記横仕切(53,53)の同一平面に沿うように配設されている請求項1~8の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項10】
庫内温度を検出する庫内温度センサ(101)を備え、
所定の設置対象(52)に設置された前記結露防止用ヒータ(71)を、冷却運転中に前記庫内温度センサ(101)により検出される庫内温度が該所定の設置対象(52)の表面温度を露点温度まで低下させる温度と比較して高い特定の温度まで低下したことに応じて作動させる請求項1~の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項11】
前記扉(20A,20B)として、前記通口(50a)の左辺に沿う軸を中心として回動する左扉(20A)と、前記通口(50a)の右辺に沿う軸を中心として回動する右扉(20B)とを備えると共に、一方の扉(20A)の開放端部に、上下方向に延在する両扉(20A,20B)の合わせ目(S)を庫内側から閉塞する仕切片(70)が設けられ、
両扉(20A,20B)の合わせ目(S)と前記仕切片(70)の表面との間に断熱体(93)を備えている請求項1~10の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内の収納室に収納した食器等の物品を加熱装置で加熱して消毒および乾燥した後、該収納室を冷却装置で冷却することで物品の温度を低下させる消毒保管庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院や学校その他レストラン等の厨房施設では、洗浄が終わり水滴の付着している食器や箸、ナイフやフォーク等(以下保管物という)を庫内に収納して消毒状態で乾燥させる消毒保管庫が好適に使用されている。すなわち消毒保管庫は、電気ヒータに代表される加熱装置と、該加熱装置により加熱された空気を強制的に庫内に循環させる送風ファンとを備えて、水滴の付いた保管物を熱風で高温に加熱して殺菌消毒と乾燥とを行うものである。
【0003】
図11に示すように、一般的な消毒保管庫10には、断熱構造の筐体(断熱箱体)12の内部(庫内)に、送風ファン28が設けられた循環経路14と、保管物を収納する収納室16とが画成されている。循環経路14は、上部空間14aとこれに連通する側部空間14b,14bとからなり、上部空間14aが収納室16の天板22の上面側に画成されると共に、側部空間14b,14bが収納室16の幅方向に対向する両側板24,24の外側面側に画成されている。収納室16は、天板22に形成された吸込口22aを介して上部空間14aと連通すると共に、側板24,24に形成された複数の吹出口24aを介して側部空間14b,14bと連通している。なお、送風ファン28を駆動するファンモータ29は、筐体12の上部に画成された機械室18に配置されている。
【0004】
循環経路14の上部空間14aには、加熱装置である電気ヒータ30が送風ファン28を周回するように配置されている。送風ファン28は、収納室16の空気を吸込口22aから上部空間14aに吸い込み、その吸い込んだ空気を電気ヒータ30に接触させる。従って、送風ファン28の作動により収納室16側から上部空間14aに吸い込んだ空気は熱風となって側部空間14b,14bへと流入し、側板24の吹出口24aから収納室16に吹き出されて該収納室16の保管物を加熱する。
【0005】
また、消毒保管庫10には、循環経路14と庫外とを接続する排気ダクト32が設けられ、この排気ダクト32はダンパ34によって閉成または開放される構造となっている。すなわち、排気ダクト32を閉成し、収納室16内の湿気が外部に排出されない状態で保管物を加熱することで、当該保管物の消毒がなされる。また、排気ダクト32のダンパ34を開放し、収納室16内の湿気が外部に排出される状態で保管物を加熱することで、当該保管物の乾燥がなされる。
【0006】
厨房施設では、加熱調理した食材(料理)を一旦チルド状態に冷却して食器への盛り付けを行い、該料理を提供するタイミングに合わせて再加熱を行う、といった料理保存・提供方法が用いられることがあり、この場合は料理の盛り付けを行う際に食器が充分に冷えていることが望ましい。これに対し、前述した消毒保管庫10では、消毒乾燥後の保管物が充分冷えるまでに時間がかかってしまい、冷たい食器等を速やかに用意できない点で問題がある。例えば扉を全開して収納室16内に庫外の空気を取り入れれば、保管物が冷えるまでの時間を短縮することはできるが、この場合は折角消毒した収納室16内の保管物に庫外からの空気が接触することになり、衛生面で問題が生じる。このような事情を考慮すれば、庫内を冷却する冷却装置を消毒保管庫10に設けることが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-310527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
消毒保管庫10に冷却装置を搭載することで、冷却装置の作動によって消毒乾燥後の高温状態の保管物を必要な温度まで速やかに冷却することができる。しかし、庫内温度が低下する影響により消毒保管庫10の外面が次第に冷やされるので、扉によって開閉される筐体12の通口(保管物の収納口または取出口)周辺に結露が発生する。この場合、結露対策として、筐体12における前記通口の周縁部分に電気ヒータ(以下「結露防止用ヒータ」という)を設置することが考えられる。なお、結露防止用ヒータとしては例えば、線状または帯状で曲げ変形が可能なものを、通口周縁の設置対象に対して複数回往復するよう蛇行させて配置することができる。
【0009】
結露防止用ヒータを複数設置する場合、同一仕様(形状や性能が同一)のものを用いることで部品単価を抑えることができる。しかし、通口の周縁であっても位置によって冷却運転中の冷却され易さ(温度変化(温度低下)傾向)が相互に異なっており、通口周縁の複数の設置対象に対して同一仕様の結露防止用ヒータを配設して対応しようとすれば、何れかの設置対象の温度変化傾向に合わせて結露防止用ヒータの仕様を決めざるを得ず、他の設置対象は冷却運転中に必要以上に結露防止用ヒータで温められることになる。すなわち、過剰性能を有する過剰品質の結露防止用ヒータを用いることになり、結局は電力消費や部品コストに無駄が生じる。
【0010】
そこで本発明は、従来の消毒保管庫に内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、冷却運転に伴う結露の発生を低コストで抑止し得る消毒保管庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
物品を収納する収納室と、空気の循環経路とが内部に画成された筐体に、該収納室を外部と連通させる通口が形成され、該通口を扉により開閉可能であると共に、加熱装置により加熱した空気を前記循環経路から前記収納室に導入可能な消毒保管庫において、
庫内を冷却可能な冷却装置を備え、該冷却装置により冷却した空気を前記循環経路から前記収納室に導入可能に構成され、
前記筐体には、前記扉の周囲に位置する複数の設置対象に、該設置対象の冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて発熱量が相違する結露防止用ヒータが配設されていることを要旨とする。
この構成によれば、筐体における扉の周囲に位置する複数の設置対象に結露防止用ヒータを設けることで、筐体と扉との境目付近に対する結露の発生を抑止できる。この場合に、冷却運転中の設置対象の温度変化傾向に応じて異なる発熱量の結露防止用ヒータを各設置対象に配設することで、部品コストおよび電力消費の無駄を低減させることができる。
【0012】
第2の手段は、
前記扉として、前記通口の左辺に沿う軸を中心として回動する左扉と、前記通口の右辺に沿う軸を中心として回動する右扉とを備え、
前記筐体に、両扉の裏面上縁部に対向する上仕切を備え、
前記上仕切を設置対象とする前記結露防止用ヒータが、両扉の上端面に沿って左右方向に延在する水平部位と、両扉の合わせ目に沿って上下方向に延在する鉛直部位とを有することを要旨とする。
この構成によれば、冷却運転中、結露防止用ヒータの水平部位の加熱により、上仕切の表面や扉の上端面に対する結露の発生を抑止することができると共に、結露防止用ヒータの鉛直部位の加熱により、上仕切の表面や扉の開放端面に対する結露の発生を抑止することができる。すなわち、上仕切を設置対象とする結露防止ヒータによって扉の合わせ目周辺の結露を防止できるので、扉への結露防止用ヒータの設置を省略可能となり、コストを削減できると共に製造工程の複雑化を防止し得る。
【0013】
第3の手段は、
前記筐体に、前記扉の裏面の側縁部に対向する横仕切と、該扉の側端面に対向する側枠板とを備え、
前記扉の裏面に配設されたパッキンが、前記扉を閉じた時に前記横仕切と接触するよう構成され、
前記横仕切を設置対象とする前記結露防止用ヒータは、前記パッキンの裏側に並ぶ位置で上下方向に延在する第1の鉛直部位と、前記側枠板の裏側に並ぶ位置で上下方向に延在する第2の鉛直部位とを有し、当該第1および第2の鉛直部位が前記横仕切の同一平面に沿うように配設されていることを要旨とする。
この構成によれば、冷却運転中、結露防止用ヒータの第1の鉛直部位の加熱によって横仕切等に対する結露の発生を効果的に抑止することができ、また結露防止用ヒータの第2の鉛直部位によって側枠板や扉の側端面の結露を効果的に抑止することができる。第1および第2の鉛直部位が横仕切の同一平面に沿うように結露防止用ヒータを配設するので、結露防止用ヒータの設置作業が煩雑とならず、また設置状態が不安定になることも防止できる。
【0014】
第4の手段は、
庫内温度を検出する庫内温度センサを備え、
所定の設置対象に設置された前記結露防止用ヒータを、冷却運転中に前記庫内温度センサにより検出される庫内温度が該所定の設置対象の表面温度を露点温度まで低下させる温度と比較して高い特定の温度まで低下したことに応じて作動させることを要旨とする。
この構成によれば、所定の設置対象に設置された結露防止用ヒータを、冷却運転中の庫内温度が特定の温度まで低下することで作動させるので、結露防止用ヒータの作動時間を短くして稼働中の電力消費を抑えることができ、また庫内冷却の効率を過度に低下させることもない。庫内温度における特定の温度は、所定の設置対象が露点温度に達する温度よりも高いので、所定の設置対象への結露の発生を充分に抑止できる。
【0015】
第5の手段は、
前記扉として、前記通口の左辺に沿う軸を中心として回動する左扉と、前記通口の右辺に沿う軸を中心として回動する右扉とを備えると共に、一方の扉の開放端部に、上下方向に延在する両扉の合わせ目を庫内側から閉塞する仕切片が設けられ、
両扉の合わせ目と前記仕切片の表面との間に断熱体を備えていることを要旨とする。
この構成によれば、両扉の合わせ目に流入する庫外の温かい空気との接触によって仕切片の結露が生じ得る。これに対し、断熱体を両扉の合わせ目と仕切片との間に位置させることにより、このような結露の発生を安価な構造で抑止することができる。
【0016】
第6の手段は、
前記扉における裏面を形成する板金と、該扉の他の構成部材との間に、該扉の外周縁部に沿って配設される板状またはシート状の断熱体が介在していることを要旨とする。
この構成によれば、収納室に面する扉の裏面は、冷却運転時に温度が低下する。これに対し、扉の外周縁部に沿って板状またはシート状の断熱体を配設して、扉の裏面を形成する板金と扉の他の構成部材との間に断熱体を介在させることで、前記板金との接触による前記構成部材の温度低下を防ぐことができ、扉の結露の発生を抑止できる。
【0017】
第7の手段は、
前記扉の内部に配設される内板と、板状またはシート状の断熱体と、該断熱体を前記内板に固定する固定部材とを備え、
前記固定部材は、その一端側の頭部および他端側のネジ部の間に、該ネジ部より大径であって該頭部より小径の嵌合部を備え、
前記断熱体は、前記固定部材の前記ネジ部が前記内板に螺合した状態で該内板と前記頭部との間に位置し、当該断熱体に形成された嵌合孔の内側に前記嵌合部が嵌合した状態で保持されていることを要旨とする。
この構成によれば、固定部材におけるネジ部および頭部の間に設けられる嵌合部を、結露防止用の断熱体の嵌合孔内に嵌合させる。すなわち、固定部材は、ネジ部および頭部の間に設けられる嵌合部の寸法分のスペースに断熱体を保持するので、固定部材の頭部が断熱体を強く押し付けて変形させることがない。従って、固定部材の頭部に押されて変形する断熱体の復元力によりネジ部の螺合が緩む不具合を防止することができ、扉の剛性を維持し得る。
【0018】
第8の手段は、
前記嵌合孔は、前記断熱体の長手方向に沿う長孔状に形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、断熱体の嵌合孔を当該断熱体の長手方向に延在する長孔状とすることで、温度変化等に起因して断熱体に収縮や反りが生じた場合も、固定部材による固定状態を良好に維持することができる。
第9の手段は、
前記扉として、前記通口の左辺に沿う軸を中心として回動する左扉と、前記通口の右辺に沿う軸を中心として回動する右扉とを備え、
一方の扉の開放端部に、上下方向に延在する両扉の合わせ目を庫内側から閉塞する仕切片が設けられ、該一方の扉が閉じた状態で他方の扉を閉じる際に、該他方の扉の裏面に配設されたパッキンが前記仕切片と接触するよう構成されており、
前記仕切片の延出端側に、前記他方の扉の裏面のうち前記パッキンよりも軸側の部位と弾性的に接触するシール部材が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、パッキンに加えてシール部材が仕切片および他方の扉の間を塞ぐことにより、両扉の開放端部間の密閉性を高めることができる。
第10の手段は、
前記仕切片は、延出基部と、該延出基部から表側に斜めに延出する傾斜部とを備え、前記延出基部および前記傾斜部の表面同士が鈍角の関係となるように屈曲しており、
前記シール部材は、前記仕切片の前記傾斜部に沿って配設され、その幅方向の一端側が、前記他方の扉の裏面のうち前記パッキンよりも軸側の部位と弾性的に接触すると共に、幅方向の他端側が、前記仕切片の前記延出基部よりも庫内側に位置して前記扉の裏面に沿う空気の流れに変化を与え得るように構成されていることを要旨とする。
この構成によれば、延出基部に対して鈍角の関係で屈曲する傾斜部を仕切片に設けたことにより、パッキンの変形できる範囲を狭めてパッキンと仕切片との接触面積を増やすことができ、これにより両扉の開放端部間の密閉性を高めることができる。また、シール部材が扉の裏面に沿う空気の流れに変化を与えることにより、冷却運転が行われる場合に、仕切片の温度低下による結露の発生を抑制することができる。また、冷却運転による冷却能力の向上および消毒・乾燥運転における加熱能力の向上を図ることができる。
第11の手段は、
前記仕切片は、延出基部と、該延出基部から表側に斜めに延出する傾斜部とを備え、前記延出基部および前記傾斜部の表面同士が鈍角の関係となるように屈曲しており、
前記シール部材は、板厚方向に離間する平行な複数の可撓板を備え、各可撓板の幅方向の一端側が、前記他方の扉の裏面のうち前記パッキンよりも軸側の部位と弾性的に接触するように構成されていることを要旨とする。
この構成によれば、延出基部に対して鈍角の関係で屈曲する傾斜部を仕切片に設けたことにより、パッキンの変形できる範囲を狭めてパッキンと仕切片との接触面積を増やすことができ、これにより両扉の開放端部間の密閉性を高めることができる。また、シール部材に設けられる複数の可撓板が仕切片および他方の扉の間を塞ぐことにより、両扉の開放端部間の密閉性を高めることができる。
第12の手段は、
前記扉の裏面の下端部に配設されて該扉と前記筐体の底板との間を塞ぐ遮蔽板を備えると共に、
前記遮蔽板の外縁と前記扉の裏面との間の隙間を覆う補助遮蔽板を備えていることを要旨とする。
この構成によれば、扉の下端と底板との間を通じて庫内の空気が流出するのを遮蔽板で防ぐと共に、当該遮蔽板の上縁と扉の裏面との間を通じて庫内の空気が流出するのを補助遮蔽板で防ぐようにすることで、冷却運転が行われる場合に、扉の下端面や底板の温度低下による結露の発生を抑制することができる。また、冷却運転による冷却能力の向上および消毒・乾燥運転における加熱能力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る消毒保管庫によれば、冷却運転に伴う結露の発生を低コストで抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1に係る消毒保管庫の正面図である。
図2図1の消毒保管庫の上部の内部構造を示す縦断正面図である。
図3図1の消毒保管庫から扉を取り外した状態であって、筐体の通口形成部に設置される各コードヒータを破線で示してある。
図4図3における通口形成部の上部であり、扉の位置を二点鎖線で示してある。
図5図3における通口形成部の下部(底板)を右前方から見た斜視図である。
図6】上辺ヒータ、側辺ヒータおよび下辺ヒータの仕様を一覧で示してある。
図7】(a)は、図1の消毒保管庫における電気的な接続関係を示す回路図であり、(b)は、制御手段による冷却運転中の制御内容を示すフローチャートである。
図8図1の消毒保管庫の左扉および右扉と、通口形成部の側部との関係を示す横断平面図である。なお、左扉の右内板に第1・第3断熱体を固定する第1固定部材と、左扉の左内板に第2断熱体を固定する第2固定部材とを拡大して示してある。
図9】第1断熱体を右前方から見た斜視図である。
図10】実施例2に係る消毒保管庫の左前部を示す横断平面図である。
図11】一般的な消毒保管庫の内部構造を示す説明図である。
図12】実施例3に係る消毒保管庫における閉成した両扉の開放端部についての横断平面図である。
図13】実施例3における左扉の開放端側を示す正面図である。
図14】実施例4に係る消毒保管庫における両扉の開放端部についての平面図であって、(a)は、開放状態から閉成位置に移動する右扉が閉成位置に至る直前の状態を示しており、(b)は、右扉が閉成位置に到達した状態を示している。
図15】実施例5に係る消毒保管庫における閉成した両扉の開放端部を示す平面図である。
図16】実施例6に係る消毒保管庫における両扉の開放端部についての平面図であって、(a)は、開放状態から閉成位置に移動する右扉が閉成位置に至る直前の状態を示しており、(b)は、右扉が閉成位置に到達した状態を示している。
図17】実施例7に係る消毒保管庫における扉の下端部と筐体の底板との関係を示す縦断側面図である。
図18】実施例8に係る消毒保管庫の右下隅部についての縦断正面図である。
図19】実施例9に係る連結機であり、(a)は、右上方から見た状態の斜視図、(b)は、2台の消毒保管庫を分離した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る消毒保管庫につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図11を参照して説明した消毒保管庫10と共通する構造に関しては同じ名称および参照符号を用い、詳細な説明を省略する。以下の記載では、図1のように消毒保管庫10を正面(前側)から見た状態に合わせて「左」、「右」を指称する。また、以下の記載において部材の表・裏を説明する場合、庫外側を「表側」とし、庫内側(収納室16側)を「裏側」として説明する。例えば、収納室16の前側に設けられる扉20A,20B(後述)は、前側(庫外側)が「表側」、後側(庫内側)が「裏側」となる。なお、収納室16の後側(筐体12の後端部)に扉20A,20Bを備えるようにしてもよく、この場合は後側(庫外側)が「表側」、前側(庫内側)が「裏側」となる。
【実施例1】
【0022】
(消毒保管庫10の全体構成)
前述したように、消毒保管庫10は、消毒・乾燥の対象となる食器等の保管物(物品)を収納する収納室16が、矩形箱状の筐体12の内部(庫内)に画成されている。この収納室16は、筐体12の前端部に形成された通口50aによって外部(庫外)と連通している。そして、図1に示す如く、筐体12の前端部に、通口50a(図3参照)を開閉する扉(左扉20Aおよび右扉20B)が設けられている(以下、筐体12の前端部のうち通口50aを形成する部分を「通口形成部50」ということがある)。なお、実施例1の消毒保管庫10は、保管物を載せた食器カート(カート)を収納室16内に搬入し、電気ヒータ(加熱装置)30の作動によって食器カート上の保管物の消毒・乾燥を行う、所謂カートインタイプの消毒保管庫である。すなわち、通口50aは、食器カートを収納室16に搬入・搬出する際の搬入口・搬出口として用いられる。
【0023】
図2に示すように、実施例1の消毒保管庫10には、冷凍機構Rが搭載されている。冷凍機構Rは、圧縮機、凝縮器、膨張弁等と、庫内を冷却する冷却装置としての蒸発器36とを、冷媒配管で環状に接続したものであって、蒸発器36以外の大部分が機械室18に配設されている。この冷凍機構Rは、蒸発器36を複数(具体的には2つ)備えており、各蒸発器36は循環経路14の上部空間14a(より具体的には、送風ファン28を挟んだ左右両側)に配設されている。なお、上部空間14aの外周側に電気ヒータ30が設けられており、各蒸発器36は電気ヒータ30の内周側に位置している。
【0024】
(通口形成部50)
図3に示すように、筐体12の通口形成部50に、左右に延在して通口50aの開口上縁を形成する柱状の上仕切52と、上下に延在して通口50aの開口側縁を形成する柱状の横仕切53とが設けられている。なお、収納室16の底面を形成する底板26には、上仕切52や横仕切53のような仕切が突設されていない。従って、通口50aの下縁は、平板状の底板26により、収納室16の底面と同一平面上に形成されている。そして、通口形成部50のうち上仕切52や横仕切53より前側の枠状部分(外周枠51)の内側に、通口50aの左辺(側辺)に沿う軸を中心に回動する左扉20Aと、通口50aの右辺(側辺)に沿う軸を中心に回動する右扉20Bとが設けられている。
【0025】
前記外周枠51は、図3に示すように、扉20A,20Bの上端面61に対向する上枠板51Tと、扉20A,20Bの軸側の側端面62に対向する側枠板51Sとを備えている。また、底板26の前端部分(具体的には、横仕切53より前側の範囲)が、外周枠51における扉20A,20Bの下端面64に対向する部分として機能している。
【0026】
上仕切52および横仕切53は、通口50aを閉じた状態の扉20A,20Bの外縁部に対して裏側から近接している。具体的には、扉20A,20Bの裏面の上縁部に上仕切52の表板52aの表面が対向すると共に、扉20A,20Bの裏面の(軸側の)側縁部に横仕切53の表板53aの表面が対向している。そして、上仕切52(表板52aの表面)は、扉20A,20Bの上端面61および上枠板51Tの間隙に対して裏側から臨んでいる。また、横仕切53(表板53aの表面)は、扉20A,20Bの軸側の側端面62および側枠板51Sの間隙に対して裏側から臨んでいる。なお、上仕切52は、循環経路14における上部空間14aの前壁を構成している。前述のように上部空間14aには送風ファン28および蒸発器36が配設されているので、上仕切52は冷却運転に応じて冷却され易い。
【0027】
なお、前述した扉20A,20Bの裏面の外周縁部に沿ってパッキンPが設けられており(図1に破線で示してある)、扉20A,20Bを閉じた状態で当該パッキンPが上仕切52や横仕切53と接触して扉20A,20Bの裏面と通口形成部50との間を塞ぐように構成されている。なお、扉20A,20Bの裏面下縁部にはパッキンPが設けられておらず、その代わりに薄板状の遮蔽板38(図1参照)が底板26に向けて垂下するように配設されている。扉20A,20Bを閉じた状態では、遮蔽板38の下縁側が底板26に接触し、扉20A,20Bの下端面と底板26との間隙を遮蔽板38が裏側から塞ぐように位置する。
【0028】
(コードヒータ71,72,73)
前述のように消毒保管庫10では、扉20A,20Bの上端面61・側端面62と筐体12の外周枠51との間に生じる間隙を通じて、庫外の空気が上仕切52および横仕切53に接触する。上仕切52および横仕切53は、冷却運転の影響で温度が低下するため、庫外の温かい空気が接触すると結露が発生し得る。この他、収納室16の底板26の周辺は、冷気が下方に移動する性質上、冷却運転中に温度が低下し易い。このため、扉20A,20Bの下端面64や底板26の前部26aに庫外からの温かい空気が接触することで結露が発生し得る。そこで、実施例1では、筐体12のうち扉20A,20Bの周囲に位置する複数の設置対象(上仕切52、左右の横仕切53,53および底板26)に、結露防止用の電気ヒータ(結露防止用ヒータ)を夫々設置している。なお、実施例1では、結露防止用ヒータとして、曲げ変形可能な線状のコードヒータ71,72,73を各設置対象52,53,26に設置している。
【0029】
図3に示すように、前記コードヒータ71,72,73として、上仕切52を設置対象とする(扉20A,20Bの上辺に対応する)上辺ヒータ71と、横仕切53を設置対象とする(扉20A,20Bの側辺に対応する)側辺ヒータ72と、底板26の前部26aを設置対象とする(扉20A,20Bの下辺に対応する)下辺ヒータ73とを配設している。上辺ヒータ71(図4参照)は、上仕切52における表板52aの裏面に貼付されており、側辺ヒータ72(図4および図5参照)は、横仕切53における表板53aの裏面に貼付されている。また下辺ヒータ73(図5参照)は、底板26の下面の前側部分(前部26aの下面)に貼付されている。すなわち、コードヒータ71,72,73は、筐体12における扉20A,20Bの周囲(通口形成部50)であって、扉20A,20Bの外周端面61,62,63,64と近接する位置に設置されている。
【0030】
実施例1の消毒保管庫10では、コードヒータ71,72,73の設置対象(上仕切52、横仕切53、底板26)における冷却運転中の温度変化傾向(温度低下傾向、すなわち、冷却運転による冷却され易さ)等の違いを考慮して、各コードヒータ71,72,73の発熱量を決定している。なお、各コードヒータ71,72,73として、素材や太さが同じものを用いているが、その全長を異ならせることで全体としての発熱量を異ならせてある。具体的には、図6に示すように、上辺ヒータ71として消費電力が40.0Wのコードヒータが採用され、側辺ヒータ72として消費電力が28.0Wのコードヒータが採用され、下辺ヒータ73として消費電力が60.0Wのコードヒータが採用されている。全長は、上辺ヒータ71が2.5m、側辺ヒータ72が1.8m、下辺ヒータ73が3.8mであり、相互に異なっている。
【0031】
ここで、上仕切52は、前述のように上部空間14aの前壁となっていることから冷却運転に応じて温度低下し易い。一方、横仕切53は、側部空間14bの前側に位置しており、上仕切52と比較して冷却運転による温度低下が小さい。このため、冷却運転中の上仕切52および横仕切53の表面温度を測定すると、横仕切53の表面温度よりも上仕切52の表面温度の方が低い温度となる。すなわち、上辺ヒータ71の設置対象である上仕切52と、側辺ヒータ72の設置対象である横仕切53とでは、冷却運転中の温度変化傾向が異なっている。これに対し、実施例1の消毒保管庫10では、上仕切52および横仕切53における冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて、上辺ヒータ71の発熱量を、側辺ヒータ72の発熱量よりも大きくしている。
【0032】
また、庫内において冷気が下方へ移動することから、収納室16の下側に位置する底板26は横仕切53と比較して温度低下し易い。このため、冷却運転中の底板26(前部26a)および横仕切53の表面温度を測定すると、横仕切53の表面温度よりも底板26(前部26a)の表面温度の方が低い温度となる。すなわち、下辺ヒータ73の設置対象である底板26の前部26aと、側辺ヒータ72の設置対象である横仕切53とでは、冷却運転中の温度変化傾向が異なっている。これに対し、実施例1の消毒保管庫10では、底板26の前部26aおよび横仕切53における冷却運転中の温度変化傾向の違いに応じて、下辺ヒータ73の発熱量を、側辺ヒータ72の発熱量よりも大きくしている。
【0033】
このように、実施例1の消毒保管庫10では、筐体12における扉20A,20Bの周囲に位置する上仕切52、横仕切53、底板26の前部26a(複数の設置対象)にコードヒータ(結露防止用ヒータ)71,72,73を設けることで、筐体12(通口形成部50)と扉20A,20Bとの境目付近に対する結露の発生を抑止できる。この場合に、冷却運転中の設置対象52,53,26aの温度変化傾向の違いに応じて異なる発熱量のコードヒータ71,72,73を各設置対象52,53,26aに配設することで、部品コストおよび電力消費の無駄を低減させることができる。
【0034】
なお、側辺ヒータ72の設置対象である横仕切53の短手方向の寸法(左右寸法)w2は狭く、横仕切53は上下に細長い形状とされている。このため側辺ヒータ72は、横仕切53の長手方向(上下方向)に延在する1本の直線状に(1つの直線部分72aとして)設けられている。これに対し、上辺ヒータ71の設置対象である上仕切52や、下辺ヒータ73の設置対象である底板26の前部26aは、短手方向の寸法w1,w3が比較的大きい。このため上辺ヒータ71や下辺ヒータ73は、上仕切52や底板26の前部26aにおける長手方向(左右方向)に延在する直線部分71a,71b,71c, 73a,73b,73cが、各設置対象52,26aの短手方向に複数並ぶように配設されている。
【0035】
(上辺ヒータ71による扉20A,20Bの合わせ目の結露防止)
ここで、前述した上辺ヒータ71の設置状態での形状・位置について、図3および図4を参照しながらより具体的に説明する。上辺ヒータ71は、扉20A,20Bの上端面61に沿うやや上側に延在する第1の水平部位71aと、扉20A,20Bの上端面61に沿うやや下側に延在する第2の水平部位71bおよび第3の水平部位71cと、第1・第2の水平部位71a,71bの各右端部を接続する第1の返し部71dと、第2の水平部位71bの左端部および第3の水平部位71cの右端部を接続する迂回部71eとで構成されている。
【0036】
左扉20Aおよび右扉20Bの開放端側の側端面63,63の間に、上下方向に延在する空間(以下「合わせ目S」という)が形成されている。ここで、上辺ヒータ71の迂回部71eは、左扉20Aの開放端側の側端面63に沿って(合わせ目Sの左辺に沿って)上下方向に延在する左鉛直部位71e1と、右扉20Bの開放端側の側端面63に沿って(合わせ目Sの右辺に沿って)上下方向に延在する右鉛直部位71e3とを有し、左鉛直部位71e1の下端部と右鉛直部位71e3の下端部とが、合わせ目Sを横断する第2の返し部71e2を介して接続されている。
【0037】
このように、実施例1の消毒保管庫10では、扉20A,20Bの上辺に対応する上辺ヒータ71が、扉20A,20Bの上端面61に沿って左右方向に延在する水平部位71a,71b,71cと、扉20A,20Bの合わせ目Sに沿って上下方向に延在する鉛直部位71e1,71e3とを有するので、上辺ヒータ71の水平部位71a,71b,71cの加熱により、上仕切52の表面や、扉20A,20Bの上端面61に対する結露の発生を抑止することができる。また、上辺ヒータ71の鉛直部位71e1,71e3の加熱により、上仕切52の表面や、扉20A,20Bの開放端側の側端面63に対する結露を効果的に防ぐことができる。すなわち、上辺ヒータ71によって扉20A,20Bの合わせ目S周辺の結露を防止できるので、扉20A,20B(の開放端部)へのコードヒータの設置を省略可能となり、コストを削減できると共に製造工程の複雑化を防止し得る。
【0038】
(コードヒータ71,72,73の制御)
次に、図7を参照し、前述したコードヒータ71,72,73に関する制御について説明する。図7(a)に示すように、消毒保管庫10に備えられる制御手段100は、電気ヒータ30、ファンモータ29、ダンパ34および冷凍機構Rと電気的に接続されている。そして、収納室16内の保管物を消毒する消毒運転では、排気ダクト32の閉成状態(ダンパ34のオフ状態)を維持しつつ、電気ヒータ30およびファンモータ29を作動させる。また、消毒した保管物を乾燥させる乾燥運転では、電気ヒータ30およびファンモータ29の作動状態を継続しつつ、ダンパ34をオン状態にして排気ダクト32を開放する。そして、消毒・乾燥運転の終了後、冷凍機構Rを制御して、高温状態の収納室16内(保管物)を冷却する冷却運転を実行する。ここで、制御手段100は、前述した上辺ヒータ71、側辺ヒータ72および下辺ヒータ73や、庫内温度を検出する庫内温度センサ101とも電気的に接続されている。
【0039】
実施例1の消毒保管庫10の使用環境として想定される範囲で最も厳しい条件(具体的には、相対湿度70%・室温35℃の環境)下の露点は、28.7℃である。そして、消毒保管庫10の筐体12は、消毒・乾燥運転後の冷却運転中に庫内温度センサ101により検出される庫内温度が低下して20℃となった時に、前述した上辺ヒータ71の設置対象である上仕切52(表板52a)の表面温度が約30℃(露点温度よりやや高い温度)となる断熱性能を有している。なお、前述した側辺ヒータ72および下辺ヒータ73の設置対象である横仕切53や底板26(前部26a)は、庫内温度が20℃となった時に表面温度が30℃より高い温度を維持する。すなわち、消毒保管庫10は、厳しい使用環境下にあっても、庫内温度が20℃(上仕切52の表面温度を露点温度まで低下させる温度より高い特定の温度)を下回るまでは、上仕切52、横仕切53、底板26の前部26aに結露が発生する可能性が低い。そこで、制御手段100は、上辺ヒータ71、側辺ヒータ72および下辺ヒータ73を、冷却運転の開始時から作動させるのではなく、庫内温度が特定の温度(20℃)まで低下したことに応じて作動させる。
【0040】
図7(b)に示すように、制御手段100は、冷却運転を開始すると(ステップS1)、庫内温度センサ101により検出される庫内温度を監視する。そして、庫内温度が特定の温度(20℃)まで低下したか否かを判定する(ステップS2)。この場合に、庫内温度が特定の温度まで低下していれば、非作動状態に維持されていた上辺ヒータ71、側辺ヒータ72および下辺ヒータ73を作動させる(ステップS3)。そして、冷却運転の終了タイミング(運転終了操作が行われた場合等)になると(ステップS4)、冷却運転を終了する(ステップS5)。
【0041】
このように、消毒保管庫10の制御手段100は、冷却運転中の庫内温度が低下して特定の温度である20℃に達したことに応じて、上辺ヒータ71、側辺ヒータ72および下辺ヒータ73を作動させるので、上仕切52、横仕切53、底板26の前部26aの作動時間を短くして消毒保管庫10の稼働中の電力消費を抑えることができ、また庫内冷却の効率を過度に低下させることもない。なお、庫内温度における特定の温度は、上仕切52(表板52a)が露点温度に達する温度より高いので、上仕切52への結露の発生を充分に抑止できる。同様に、庫内温度における特定の温度は、横仕切53(表板53a)や底板26の前部26aが露点温度に達する温度より高いので、上仕切52や底板26の前部26aへの結露の発生を充分に抑止できる。
【0042】
(第1~第3断熱体91,92,93)
次に、図8および図9を参照し、扉20A,20Bに設けられる結露防止用の構成(コードヒータ71,72,73以外の結露対策)について説明する。なお、左扉20Aおよび右扉20Bの概略構成について先ず説明を行い、その後に第1~第3断熱体91,92,93について説明する。
【0043】
図8に示すように、左扉20Aおよび右扉20Bは、複数の板金65,66,67によって箱状に構成され、内部空間には断熱材69が配設されている。左扉20Aおよび右扉20Bの各開放端部には、後述する第1固定部材83のネジ部86を螺合させる対象の右内板(対象部位)81が配設されており、左扉20Aおよび右扉20Bの各軸側端部に、後述する第2固定部材84のネジ部86を螺合させる対象の左内板(対象部位)82が配設されている。
【0044】
左扉20Aの開放端部には、上下方向に延在して扉20A,20Bの合わせ目Sを庫内側から閉塞する仕切片70が、扉20A,20Bの板金67によって形成されている。仕切片70は、庫内側に向けて延出する第1延出部70aと、第1延出部70aから右方(右扉20B側)に向けて延出する第2延出部70bとで構成されている。すなわち、第2延出部70bの表側に合わせ目Sが位置し、裏側に収納室16が位置している。右扉20Bにおける開放端部には、前記パッキンPが上下方向に延在するように設けられているので、左扉20Aが閉じた状態で右扉20Bが閉じる時に、右扉20BのパッキンPが仕切片70の右端部と接触する。
【0045】
収納室16に面する扉20A,20Bの裏面を形成する板金66は、冷却運転時に温度が低下する。この板金66の影響で扉20A,20Bの構成部材(例えば、板金65)や扉20A,20Bの内部空間が冷えると、庫外に露出する扉20A,20Bの外面に対して結露が発生し得る。また、板金65,66のうち合わせ目Sの周辺に位置する部位(板金65の右端部や板金67の仕切片70)にも、扉20A,20Bの合わせ目Sに流入する庫外の温かい空気との接触により結露が発生し得る。これに対し、左扉20Aおよび右扉20Bにおける適宜位置に、結露防止用の第1~第3断熱体91,92,93が設置されている。
【0046】
第1断熱体91(図1および図8参照)は、合成樹脂材により形成された板状部材であって、板金65における左扉20Aおよび右扉20Bの開放端側および下端側の外面に夫々設けられて、扉20A,20Bにおける開放端側の側端面63および下端面64を構成している。また、第2断熱体92(図8参照)は、消毒・乾燥運転時の高温や冷却運転時の低温に耐え得る素材(例えばシリコン)により形成されたシート状部材であって、左扉20Aおよび右扉20Bにおける板金66の表面の外周縁部に夫々設けられている。更に、第3断熱体93(図1および図8参照)は、合成樹脂材により形成された板状部材であって、一部が左扉20Aにおける開放端部の内面側で固定されると共に、他の一部が左扉20Aの仕切片70を被覆している。なお、第1断熱体91および第3断熱体93は、外部に露出することを考慮して硬質の素材(合成樹脂)が選定されている。
【0047】
第1断熱体91および第3断熱体93は、図8に示すように、扉20A,20Bの開放端部において、第1固定部材83によって右内板81に固定されている。第1固定部材83は、長手方向の一端側に頭部85を有し、他端側にネジ部86を有するネジ部材である。但し、図8中の拡大図から明らかなように、頭部85およびネジ部86の間に、ネジ部86より大径であって頭部85より小径の嵌合部87が設けられている。ここで、第1断熱体91には、長手方向(上下方向)に延在する長孔状の嵌合孔91a(図9(a)参照)が、当該第1断熱体91の長手方向に離間する複数箇所に設けられている。この嵌合孔91aは、第1固定部材83の頭部85の直径寸法より小さく、かつ嵌合部87の直径寸法より僅かに大きな幅寸法(図8参照)で設けられている。また、第3断熱体93には、円形状の嵌合孔93a(図8参照)が、当該第3断熱体93の長手方向に離間する複数箇所に設けられている。この嵌合孔93aは、第1固定部材83の頭部85の直径寸法より小さく、かつ嵌合部87の直径寸法より僅かに大きな直径寸法(図8参照)で設けられている。そして、第1断熱体91および第3断熱体93は、第1固定部材83のネジ部86が右内板81に螺合した状態で、該右内板81と頭部85との間に位置し、嵌合部87が嵌合孔91a,93aの内側に嵌合した状態で固定されている。
【0048】
また、第2固定部材84は、第1固定部材83と同様、長手方向の一端側に頭部85を有し、他端側にネジ部86を有するネジ部材であって、ネジ部86より大径かつ頭部85より小径の嵌合部87が頭部85およびネジ部86の間に設けられている。第2断熱体92には、第2固定部材84の頭部85の直径寸法より小さく、かつ嵌合部87の直径寸法より僅かに大きな直径寸法の円形状の嵌合孔92aが、当該第2断熱体92の長手方向に離間する複数箇所に設けられている(図8参照)。そして、第2断熱体92は、第2固定部材84のネジ部86が左内板82に螺合した状態で、該左内板82と頭部85との間に位置し、嵌合部87が嵌合孔92aの内側に嵌合した状態で固定されている。
【0049】
このように、実施例1の消毒保管庫10は、第1固定部材83および第2固定部材84が、ネジ部86および頭部85の間に設けられる嵌合部87の寸法分のスペースに断熱体91,92,93を保持するので、固定部材83,84の頭部85が断熱体91,92,93を強く押し付けて変形させることがない。従って、固定部材83,84の頭部85に押されて変形する断熱体91,92,93の復元力によりネジ部86の螺合が緩む不具合を防止することができ、扉20A,20Bの剛性を維持し得る。また、第1断熱体91の嵌合孔91aを、当該第1断熱体91の長手方向に延在する長孔状とすることで、温度変化等に起因して第1断熱体91に収縮や反りが生じた場合にも、第1固定部材83による固定状態を良好に維持することができる。更に、シート状の第2断熱体92を、扉20A,20Bの裏面を形成する板金66と、左内板82との間に挟み込む形で、当該板金66の表面に沿って配設することで、扉20A,20Bの表面等への結露の発生を抑止することができる。
【0050】
左扉20Aの表面を形成する板金65は、図8に示すように左端部が断面視コ字状が曲げられることで、一部が左扉20Aの軸側の側端面62を形成し、一部が左扉20Aの裏面の側縁部を形成している。そして、左扉20Aの外周縁部において、板金65および板金66が前後に重なっている。これに対し、第2断熱体92は、左扉20Aの外周縁部において、板金65と板金66とに挟み込まれた状態で、第2固定部材84によって左内板82に固定されている。なお、図示省略するが、右扉20Bも同様になっている。
【0051】
すなわち、実施例1の消毒保管庫10は、扉20A,20Bの裏面を形成する板金66と、扉20A,20Bの表面を形成する板金(他の構成部材)65との間に、当該扉20A,20Bの外周縁部に沿って配設される第2断熱体92が介在している。これにより、扉20A,20Bの裏面を形成する板金66との接触による板金65の温度低下を防ぐことができ、扉20A,20Bの結露の発生を抑止できる。
【0052】
図8および図9に示すように、第3断熱体93には、左扉20Aの閉成状態において板厚方向が左右方向となる固定板部94と、左扉20Aの閉成状態において板厚方向が前後方向となる被覆板部95とが設けられている。固定板部94は、左扉20Aの開放端部に裏側から挿入され、左扉20Aの板金65の右端部と、左扉20Aの内側に配置された右内板81との間に固定されている。被覆板部95は、固定板部94の裏側端部から仕切片70の第2延出部70bに沿って右方へ延出し、当該第2延出部70bの表面(右扉20BのパッキンPが接触する右端側の部位を除く)を被覆している。
【0053】
このように、実施例1の消毒保管庫10は、第3断熱体93(被覆板部95)を左扉20Aの仕切片70と合わせ目Sとの間に位置させることにより、仕切片70への結露の発生を、安価な構造で抑止することができる。なお、第3断熱体93(被覆板部95)は、仕切片70の第2延出部70bのうち右扉20BのパッキンPが接触する右端部を避けるように位置するので、仕切片70の表面と右扉20Bの裏面との間にパッキンPのスペースが確保されており、左扉20Aが閉じた状態で右扉20Bが閉じる時に作業者の力が余分にかかることはない。また、上下方向に延在する第3断熱体93の固定板部94を左扉20Aの開放端部の内部に位置させることにより、左扉20Aの内部の温度低下の影響で合わせ目Sの空気が冷やされるのを防ぐことができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る消毒保管庫10について、図10を参照して以下に説明する。なお、実施例1と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。前述した実施例1では、横仕切53の側辺ヒータ72を1本の直線状とした。これに対し、実施例2の消毒保管庫10は、側辺ヒータ72を実施例1とは異なる形状で横仕切53に設置するものであり、その他については実施例1と同じである。従って実施例2では、側辺ヒータ72の設置状態について説明する。
【0055】
消毒保管庫10において冷却運転を行う場合、扉20A,20Bの軸側の側端面62や筐体12(通口形成部50)の側枠板51S等に結露が生じる可能性がある。しかし、側辺ヒータ72とは別のコードヒータを用意して側枠板51Sに直接的に設置する場合は、コードヒータの数が増加するためコストも増大し、設置作業にも手間がかかることになる。そこで、実施例2では、1つのコードヒータ(側辺ヒータ72)をU字状に折り返すことで、扉20A,20BのパッキンPと前後に並ぶ位置で上下方向に延在する鉛直部位72aに加えて、この鉛直部位72aに並行して上下方向に延在する第2の鉛直部位72bを設け、側枠板51S等に対する結露の発生を第2の鉛直部位72bによって防止する。
【0056】
第2の鉛直部位72bは例えば、側枠板51Sの左側面を設置対象面として貼付することが考えられる。しかしながらこの場合、横仕切53の表板53aと側枠板51Sとの間に生じる角部で側辺ヒータ72に浮きが生じ易く、側辺ヒータ72の設置状態を良好に維持することが困難である。そこで、実施例2の消毒保管庫10は、第1の鉛直部位72aと同じ設置対象面(横仕切53の表板53aの裏面)に、側枠板51Sと前後に並ぶ位置で延在するように第2の鉛直部位72bを貼付するようにしている。
【0057】
従って、冷却運転中に制御手段100の制御に基づいて側辺ヒータ72を作動する場合、側辺ヒータ72の第1の鉛直部位72aおよび第2の鉛直部位72bによって横仕切53の表板53aが充分温められる。また、第2の鉛直部位72bによって側枠板51Sが効率的に温められ、当該側枠板51Sからの熱放射によって扉20A,20Bの軸側の側端面62が温められることで、当該側端面62周辺の結露が効果的に防止される。
【0058】
すなわち、実施例2の消毒保管庫10は、冷却運転中、側辺ヒータ72の第1の鉛直部位72aの加熱によって横仕切53等に対する結露の発生を効果的に防ぐことができ、また側辺ヒータ72の第2の鉛直部位72bの加熱によって側枠板51Sや扉20A,20Bの軸側の側端面62の結露を効果的に防ぐことができる。ここで、第1および第2の鉛直部位72a,72bが横仕切53の同一平面(横仕切53の表板53aの裏面)に沿うように側辺ヒータ72を配設するので、側辺ヒータ72の設置作業が煩雑とならず、また設置状態が不安定になることも防止できる。
【実施例3】
【0059】
次に、実施例3に係る消毒保管庫10について、図12および図13を参照して以下に説明する。なお、実施例1,2と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1,2と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。前述した実施例1では、第1断熱体91における長手方向に離間する複数箇所に設けられる嵌合孔91aを、当該第1断熱体91の長手方向に沿う長孔状にすることで、第1断熱体91における温度変化等に起因する変形(反り等)を許容するようにした。これに対し、実施例3では、第1断熱体91の変形を抑止する変形抑止手段を備えているので、実施例3では第1断熱体91の変形抑止の構成について主に説明する。なお、第1断熱体91として、扉20A,20Bの開放端側を覆うものと、扉20A,20Bの下端側を覆うものとを備える(前述の実施例1と同様)が、これらは変形抑止手段に関する構造が同様であるので、左扉20Aの開放端側を覆う第1断熱体91に関して説明する。
【0060】
図12および図13に示すように、実施例3では、第1断熱体91と左扉20A(板金65)との間に、変形抑止手段としての両面テープ(接着手段)111を介在させている。すなわち、第1断熱体91および板金65の対向面同士を接着した状態で、各嵌合孔91aに第1固定部材83を挿入して第1断熱体91の複数箇所を固定することで、第1断熱体91が左扉20Aに取り付けられている。これにより、第1断熱体91が板金65により補強され、温度変化等に起因する撓み変形が抑止されるので、板金65(左扉20A)との間に隙間が生じ難くなる。また、第1断熱体91の撓み変形が抑止されることで、第1固定部材83が緩み難くなる。従って、第1断熱体91による結露防止の効果を維持することができる。なお、第1断熱体91の各嵌合孔91aは円形状に形成されている(図示省略)が、前述した実施例1と同様に長孔状としてもよい。
【0061】
図13に示すように、両面テープ111は、第1断熱体91の上端から下端までの範囲x1のうち、最上部・最下部の第1固定部材83による固定位置の間の範囲x2に対応するように配設されている。すなわち、第1断熱体91の上端側(最上部の第1固定部材83より上側x3)および第1断熱体91の下端側(最下部の第1固定部材83より下側x4)は、温度変化により伸長しても、第1固定部材83による固定位置に挟まれておらず撓み変形が生じ難いため、第1断熱体91の上端側および下端側を除いた範囲を両面テープ111で左扉20A(板金65)に接着するようにして両面テープ111の寸法の無駄をなくしている。
【実施例4】
【0062】
次に、実施例4に係る消毒保管庫10について、図14を参照して以下に説明する。なお、実施例1~3と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1~3と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施例4では、仕切片70(第2延出部70b)の形状が前述した実施例1と異なり、また後述するシール部材113を備える点も実施例1と相違している。そこで実施例4では、仕切片70(第2延出部70b)およびシール部材113について主に説明する。
【0063】
なお、実施例1で説明したように、右扉20Bの開放端部の裏面にはパッキンPが設けられており、左扉20Aが閉じた状態で右扉20Bを閉じる際に、該右扉20BのパッキンPが左扉20Aの開放端部に設けられた金属製の仕切片70と接触するようになっている。ここで、実施例4の仕切片70は、パッキンPとの密着性を高めるため、第2延出部70bを屈曲状に形成している。具体的には、図14(a)に示すように、仕切片70における第2延出部70bが、第1延出部70aから左扉20Aの裏面と平行に(閉成状態における右方へ向けて)延出する延出基部70b1と、この延出基部70b1の延出端から表側に斜めに延出する傾斜部70b2とで構成されている。
【0064】
図14(a)に示すように、仕切片70の第2延出部70bは、延出基部70b1および傾斜部70b2の表面同士が鈍角の関係となるように屈曲している。すなわち、第2延出部70bの傾斜部70b2は、延出端側に向かうにつれて第1延出部70aから次第に離間するように形成されている。なお、傾斜部70b2の延出寸法は、両扉20A,20Bを閉じても傾斜部70b2が右扉20Bに接触しない寸法に設定されている。
【0065】
ここで、左扉20Aが閉じた状態で右扉20Bを閉じると、図14(b)に示すように、仕切片70と右扉20Bの開放端部との間にパッキンPが挟み込まれる。この場合にパッキンPは、仕切片70の延出基部70b1との接触によって右扉20Bの厚み方向に押し潰されるが、仕切片70の傾斜部70b2により受け止められて右方への変形が制限される。このため、右扉20Bを閉じると、パッキンPが延出基部70b1および傾斜部70b2に夫々接触した状態となる。すなわち、仕切片70(第2延出部70b)に傾斜部70b2を設けることで、パッキンPの変形できる範囲を狭めてパッキンPと仕切片70との接触面積を増やし、庫内の密閉性を高めている。
【0066】
図14(a)に示すように、仕切片70における第2延出部70bの延出端側に、右扉20Bの裏面のうちパッキンPよりも軸側の部位と弾性的に接触するシール部材113が設けられている。シール部材113は、軟質樹脂材またはゴム材からなり、仕切片70の傾斜部70b2の裏面に重ね合わせてネジ部材Nにより固定されている。なお、シール部材113の上下寸法は、仕切片70の上下寸法に合わせて設定されている。ここで、シール部材113は、その左端側が仕切片70の傾斜部70b2に重ね合わされ、右端側が傾斜部70b2よりも大きく表側へと延出している。傾斜部70b2は延出基部70b1に対し傾斜しているので、傾斜部70b2の裏面に重ね合わせて取り付けられるシール部材113も延出基部70b1に対する傾斜姿勢となっている。このため、右扉20Bを閉じると、図14(b)に示すように、シール部材113の右端側が右扉20Bとの接触により弾性変形して当該右扉20Bの裏面(パッキンPよりも軸側の部位)と面同士で密着する。すなわち、パッキンPに加えてシール部材113が仕切片70および右扉20Bの間を塞ぐことにより、扉20A,20Bの開放端部間の密閉性を高めている。
【0067】
ところで、扉20A,20Bの閉成状態は、右扉20Bのラッチ112(図14参照)と筐体12側のラッチ受け(図示省略)との係合により維持される。すなわち、左扉20Aが閉じた状態で右扉20Bを閉じる場合には、右扉20Bを筐体12の通口50aに向けて、ラッチ112がラッチ受けに掛かるまで押し込むことになる。ここで、ラッチ受けは凹状であり、通口50aの下縁側(筐体12の底板26)に設けるとゴミ等が溜まり不衛生となり得ること等から、消毒保管庫10の右扉20Bには上端面61のみにラッチ112が設けられ、ラッチ受けは筐体12の上枠板51T(通口50aの上縁側)のみに設けられている。従って、右扉20Bを閉成する際、右扉20Bの開放端部のうちラッチ112のない下端側がパッキンPの復元力(反力)等によって表側に若干押し戻されてしまい、仕切片70とパッキンPとの密着力が弱くなる。このような事情に関し、前述のように仕切片70に傾斜部70b2を設けてシール部材113を取り付ける構成により、ラッチ112およびラッチ受けによる係止構造を右扉20B(通口50a)の上側のみに設けている場合にも充分な密閉性を実現できる。なお、右扉20B(通口50a)の上下両側に係止構造を設けるようにすれば仕切片70とパッキンPとを密着させ得るが、前述したような衛生面の問題の他、部品点数の増加や、右扉20Bを閉じる際に必要な押し込み力の増加等が問題となる。
【実施例5】
【0068】
次に、実施例5に係る消毒保管庫10について、図15を参照して以下に説明する。なお、実施例1~4と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1~4と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施例5では、シール部材114の庫内側(裏側)への突出寸法を大きくすることで、庫内側から仕切片70側に向かう空気の流れに変化を与えるようにしている。そこで、実施例5では、シール部材114について、実施例4のシール部材113との相違点を主に説明する。
【0069】
図15に示すように、実施例5では、シール部材114の略中央位置をネジ部材Nによって仕切片70の傾斜部70b2に固定している。そして、シール部材114の右端側(幅方向の一端側)が、右扉20Bの裏面のうちパッキンPよりも軸側の部位と弾性的に接触し、左端側(幅方向の他端側)が、仕切片70の延出基部70b1よりも庫内側(裏側)に位置している。なお、シール部材114のうちネジ部材Nによる固定位置よりも左端側の部分の横幅寸法w1は、ネジ部材Nの頭部Naの直径寸法よりも大きな寸法となっている。このようにシール部材114を構成することで、消毒保管庫10の冷却運転中は、庫内側から左扉20Aの裏面および仕切片70(第2延出部70b)の裏面に沿って右方向に向かおうとする冷気が、延出基部70b1とシール部材114との間の領域で滞る(図15における矢印Y1方向に流れる)。また、庫内側から右扉20Bの裏面に沿って左方向に向かおうとする冷気の経路が遮断され、当該冷気はシール部材114によって第2延出部70bから離間する側(図15における矢印Y2方向)へと誘導されることになる。すなわち、実施例5におけるシール部材114は、ネジ部材Nによる固定位置よりも左側の部分を庫内側に延出させることにより、冷却運転中における扉20A,20Bの裏面に沿う空気の流れに変化を与え、仕切片70が冷却され難くなるように構成されている。従って、冷却運転が行われる場合に、仕切片70の温度低下による結露の発生を抑制することができる。また、庫内の密閉性を高め、冷却運転による冷却能力の向上および消毒・乾燥運転における加熱能力の向上を図ることができる。
【実施例6】
【0070】
次に、実施例6に係る消毒保管庫10について、図16を参照して以下に説明する。なお、実施例1~5と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1~5と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施例6では、シール部材115に対してネジ部材Nの頭部Naを庫内側から覆うカバー部117を設けるようにしている。そこで、実施例6では、シール部材115の構成について主に説明する。
【0071】
図16に示すように、実施例6のシール部材115は、仕切片70の傾斜部70b2の裏面に沿って延在する第1可撓板116と、ネジ部材Nの頭部Naを庫内側から覆うカバー部117とで構成されている。カバー部117は、第1可撓板116の裏面から略垂直に立ち上がる起立部117aと、この起立部117aの延出端から第1可撓板116と略平行に延出する第2可撓板117bとで構成されており、起立部117aはネジ部材Nよりも庫内側(裏側)に位置している。第1可撓板116とカバー部117の第2可撓板117bとは起立部117aの延出寸法分だけ板厚方向に離間しており、この離間寸法分のスペースにネジ部材Nの頭部Naが位置している。また、第1可撓板116と第2可撓板117bとは、起立部117aからの表側の延出寸法が概ね同じとなっている。
【0072】
ここで、第1可撓板116および第2可撓板117bは、右扉20Bが閉成状態の時に当該右扉20Bの裏面と接触する位置まで延出している。このため、右扉20Bを閉じる場合、第1可撓板116が先ず右扉20Bと接触して弾性変形し、右扉20Bを更に閉成方向に移動させると、第2可撓板117bが右扉20Bと接触して弾性変形する。これにより、第1可撓板116と第2可撓板117bとが共に右扉20Bの裏面と密着する。すなわち、実施例6のシール部材115は、板厚方向に離間する平行な複数の可撓板116,117bを備えており、各可撓板116,117bの右端側(幅方向の一端側)が、右扉20Bの裏面のうちパッキンPよりも軸側の部位と弾性的に接触するように構成されている。このように、シール部材に設けられる複数の可撓板116,117bを右扉20Bと接触させることで、前述した実施例4,5のシール部材113,114のように一枚の板状のものと比較して、両扉の開放端部間の密閉性を高めることができる。
【0073】
更に、シール部材115にカバー部117を設けたことにより、消毒保管庫10の冷却運転中に庫内側から仕切片70の第2延出部70bの側に向かう冷気(図16における矢印Y4方向に流動する空気)が第1可撓板116に接触し難くなっている。特に、庫内右側から仕切片70の第2延出部70bの側に向かおうとする冷気の経路が遮断され、当該冷気はシール部材115によって第2延出部70bから離間する側へと誘導されることになる。また、第1可撓板116は、仕切片70の第2延出部70bよりも庫内側(裏側)に大きく突出しているので、当該第1可撓板116の存在により、庫内左側から第2延出部70bの裏面周辺に向かう空気の流れ(図16における矢印Y3)が滞る。すなわち、冷却運転が行われる場合に、仕切片70の温度低下を抑制することができ、結露を防ぐことができる。また、冷却運転による冷却能力の向上および消毒・乾燥運転における加熱能力の向上を図ることができる。更に、カバー部117によってネジ部材Nの頭部Naを覆うことで、作業者が作業中にネジ部材Bとの接触によって手指を怪我すること等も防止できる。なお、作業者の怪我防止の観点では、ネジ部材Nに袋ナットを組み合わせることが好適である。
【実施例7】
【0074】
次に、実施例7に係る消毒保管庫10について、図17を参照して以下に説明する。なお、実施例1~6と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1~6と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。前述した実施例1では、扉20A,20Bの下端部に設けられる遮蔽板38について具体的な形状等の説明を省略した。そこで、実施例7では、遮蔽板38の形状について具体的に説明することとする。また、実施例7では、補助遮蔽板120を追加的に設けているので、当該補助遮蔽板120についても説明する。なお、仕切片70には、前述した実施例6と同じシール部材115が設けられているものとする。
【0075】
図17に示すように、遮蔽板38は、両扉20A,20Bの裏面の下端部に夫々配設されて扉20A,20Bと筐体12の底板26との間を塞ぐように構成されている。この遮蔽板38は、軟質樹脂材またはゴム材からなり、ネジ部材Nによって扉20A,20Bの裏面下縁部に固定されている。この遮蔽板38は、扉20A,20Bの裏面に沿って垂下する第1可撓板118と、この第1可撓板118を扉20A,20Bの裏面に固定するネジ部材Nの頭部Naを覆うカバー部119とで構成されている。カバー部119は、第1可撓板118の上縁から庫内に向けて延出する起立部119aと、この起立部119aに対して垂直な第2可撓板119bとで構成されており、起立部119aはネジ部材Nよりも上方に位置している。すなわち、第1可撓板118とカバー部119の第2可撓板119bとは起立部119aの延出寸法分だけ離間しており、この離間寸法分のスペースにネジ部材Nの頭部Naが位置している。各可撓板118,119bは、筐体12の底板26の高さ位置よりも下方まで延出している。すなわち、遮蔽板38は、扉20A,20Bを閉じる際に各可撓板118,119bが撓んで底板26と密着し、扉20A,20Bの下端面64と底板26との間を二重に塞ぐように構成されている。なお、符号129は、遮蔽板38の形状を保持するための支持金具である。
【0076】
ここで、第2可撓板119bは、その上端側が起立部119aに対し上方に延出しており、冷却運転中の庫内の空気が扉20A,20Bの裏面と遮蔽板38の上縁との間に入り込むのをある程度防いでいる。しかし、扉20A,20Bの裏面に沿って下方に向かう一部の空気は、この遮蔽板38のうちの起立部119aより上端側の部分に誘導されて扉20A,20Bの裏面と遮蔽板38(第1可撓板118)の上縁との間に流れ込む可能性がある。そこで、実施例7では、遮蔽板38の上方に、遮蔽板38の上縁(外縁)と扉20A,20Bとの間の隙間を覆う補助遮蔽板120を配設している。図17に示すように、補助遮蔽板120は、遮蔽板38に合わせた幅寸法で形成され、起立部119aより上側に突出する第2可撓板119bの上端側を覆うようにして扉20A,20Bの裏面に取り付けられている。このように、扉20A,20Bの下端と底板26との間を通じて庫内の空気が流出するのを遮蔽板38で防ぐと共に、当該遮蔽板38の上縁と扉20A,20Bの裏面との間を通じて庫内の空気が流出するのを補助遮蔽板120で防ぐことで、冷却運転が行われる場合に、扉20A,20Bの下端面64や底板26の温度低下による結露の発生を抑制することができる。また、冷却運転による冷却能力の向上および消毒・乾燥運転における加熱能力の向上を図ることができる。
【0077】
なお、遮蔽板38、補助遮蔽板120およびシール部材115のうち2以上について、同一形状の共通部材を用いるようにしてもよい。この場合に、遮蔽板38と、シール部材115および補助遮蔽板120とでは、使用するネジ穴の位置が異なるので、第1可撓板116(第2可撓板119b)および第2可撓板117b(第1可撓板118)の両方にネジ穴が形成された部材を共通部材として用い、使用しないネジ穴については別部材で埋める等すればよい。この他、遮蔽板38の形状について、第2可撓板119bのうち起立部119aより下側の部分をなくした形状(断面視クランク状)としてもよい。
【実施例8】
【0078】
次に、実施例8に係る消毒保管庫10について、図18を参照して以下に説明する。なお、実施例1~7と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1~7と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。前述した実施例1では、扉20A,20Bの外周端面61,62,63,64やその周辺に結露が発生し易いことに鑑み、筐体12の通口50aを形成する通口形成部50(上仕切52、横仕切53、底板26の前部26a)に対してコードヒータ(結露防止用ヒータ)71,72,73を設置するようにした。これに対し、実施例8では、筐体12の外面への結露の発生を防止するためのコードヒータ124を備えている。従って、実施例8では、筐体12の外面への結露の発生を防止するコードヒータ124に関する構成について主に説明する。なお、実施例1で説明したコードヒータ71,72,73のうち少なくとも1つの設置を省略することとしてもよい。
【0079】
図18に示すように、消毒保管庫10の下隅部では、庫内の循環経路14を画成する区画板121の下端部と、区画板121を補強する補強板123の下端部とが左右に重ねられており、補強板123の下端部は水平に曲げられて筐体12の外側面を形成する側面パネル122の下端部と上下に重ねられ、ネジ部材Nにより共締めされている。このため、冷却運転による冷気が循環経路14を循環して区画板121が冷やされると、その影響で側面パネル122が下端側から次第に冷やされ、その外面に結露が発生し得る。そこで、実施例8では、コードヒータ(結露防止用ヒータ)を、側面パネル122の内側面の下端部に設置している。以下、このコードヒータを「側面ヒータ124」として説明する。
【0080】
側面ヒータ124は、側面パネル122の内側面の下端部に貼付されており、2つの前後方向への直線部分124a,124aと、この直線部分124a,124aの後端部同士を接続する折り返し部124bとで構成されている。すなわち、側面ヒータ124全体としては、側面パネル122の下縁に沿って水平に延在するように配設されている。なお、側面ヒータ124の設置対象である側面パネル122についての冷却運転中の温度変化傾向を考慮して、側面ヒータ124の適切な仕様(長さや発熱量)が選択され、その結果、他のコードヒータ71,72,73の少なくとも何れかに対して長さ・発熱量が異なるコードヒータが採用されている。また、側面ヒータ124は、冷却運転中、制御手段100によって他のコードヒータ71,72,73と同様に制御される(すなわち、冷却運転の開始時点より後のタイミングで作動する)ようになっている。
【0081】
このように、側面パネル122の内側面の下縁に沿って側面ヒータ124を設けることで、筐体12の側面下部に対する結露の発生を抑止することができる。
【実施例9】
【0082】
次に、実施例9に係る消毒保管庫10について、図19を参照して以下に説明する。実施例9では、2台の消毒保管庫10からなる連結機125について説明する。なお、連結機125を構成する2台の消毒保管庫10は実施例1の消毒保管庫10と基本的に同一構造(カートインタイプ)であるが、互いに接続される背面にも開口(以下「連通口125a」という)が形成されて一方の収納室16から他方の収納室16にカートが移動できるようになっている。実施例9では、2台の消毒保管庫10の連結構造について基本的に説明を行い、各消毒保管庫10の具体的な構成については実施例1~8と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0083】
図19(a)に示すように、連結機125は、2台の消毒保管庫10の背面同士を連結することで構成され、背面に形成された連通口125aにより互いの収納室16が繋がって1つの収納スペース125bを形成している。ここで、2台の消毒保管庫10の背面が完全な平面であれば、単に両消毒保管庫10の背面を向き合わせてボルトおよびナットで互いに締め付け固定するだけで、密閉された収納スペース125bを形成することができる。しかし実際には、各消毒保管庫10の背面を完全な平面にすることは非常に困難なことである。すなわち、連結する2台の消毒保管庫10の対向面(背面)間には隙間が生じてしまうため、連結機125の収納スペース125bが密閉状態とならず、冷却運転および消毒・乾燥運転を効率よく行うことができていないという問題がある。
【0084】
そこで、実施例9では、図19(b)に示すように、2台の消毒保管庫10の背面の間に、連通口125aの外周側を周回するように帯状のシール材を配設している。なお、帯状のシール材として具体的には、フッ素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み耐熱性に優れたフッ素樹脂シール126を用いるようにしている。すなわち、一方の消毒保管庫10の背面(連通口125aの外周側)にフッ素樹脂シール126を貼り付けたもとで、ボルトおよびナットを用いてフッ素樹脂シール126が潰れる程度に両消毒保管庫10の背面同士を互いに引き寄せて固定することで、連結機125が構成される。このように両消毒保管庫10の間にフッ素樹脂シール126を配設して隙間を塞ぐことで、収納スペース125bを密閉状態にすることができ、冷却運転および消毒・乾燥運転の効率を高めてエネルギー消費を抑制することができる。また冷却運転中の冷気漏れに起因する連結機125外面への結露の発生を防ぐことができる。
【0085】
〔変更例〕
本願は前述した実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例1~9では、カートインタイプの消毒保管庫について説明したが、食器等の保管物(物品)を載置する棚が収納室内に設けられて食器カートを搬入不可能な消毒保管庫に実施例の構成を適用することもできる。
(2) 実施例1~9では、筐体の前端部(通口形成部)に設けられた通口を食器カートの搬入口および搬出口として用いたが、食器カートの搬入口(通口)を筐体の前端部(通口形成部)に設けると共に食器カートの搬出口(通口)を筐体の後端部(通口形成部)に設けるようにして、各通口を別個の扉により開閉するように構成してもよい。なおこの場合、何れか一方の通口形成部・扉に実施例の構成を適用してもよいし、両方の通口形成部・扉に実施例の構成を適用してもよい。
(3) 実施例1~9では、結露防止用ヒータとして曲げ変形可能な線状の電気ヒータ(コードヒータ)を通口形成部に設けたが、曲げ変形可能な帯状の電気ヒータや、曲げ変形が不可能な他の電気ヒータを結露防止用ヒータとして通口形成部に設けるようにしてもよい。
(4) 実施例1~9では、通口形成部に設けられる複数の結露防止用ヒータ(上辺ヒータ、側辺ヒータおよび下辺ヒータ)についての発熱量を相互に異ならせたが、何れか2つまたは3つ全ての結露防止用ヒータの発熱量を同一としてもよい。
(5) 実施例1~9では、通口形成部に設けられる複数の結露防止用ヒータ(上辺ヒータ、側辺ヒータおよび下辺ヒータ)についての全長寸法を相互に異ならせたが、何れか2つまたは3つ全ての結露防止用ヒータの全長寸法を同一としてもよい。
(6) 実施例1~9では、冷却運転中の庫内温度が、上仕切の表面温度を露点温度まで低下させる温度と比較して高い特定の温度まで低下したことに応じて、全ての結露防止用ヒータ(上辺ヒータ、側辺ヒータおよび下辺ヒータ)を作動させるようにしたが、上辺ヒータ以外の結露防止用ヒータの何れかを、庫内温度が特定の温度に達する前から(例えば冷却運転の開始時から)作動させるようにしてもよい。また、特定の温度は、横仕切や底板の前部の表面温度を露点温度まで低下させる温度と比較して高い温度を設定してもよい。
(7) 実施例1~9では、左扉が閉じた状態で右扉を閉じる時に、右扉のパッキンが左扉の仕切片に接触するようにしたが、仕切片を被覆する第3断熱体(断熱体)の被覆板部に右扉のパッキンが接触するように構成してもよい。
(8) 実施例1,2,4~9では、合成樹脂材からなる断熱体のうち、第1断熱体については嵌合孔を長孔状に形成する一方、第3断熱体については嵌合孔を円形としたが、第3断熱体の嵌合孔を長孔状に形成してもよい。また、第1断熱体の嵌合孔を円形状としたり、シリコンにより形成された第2断熱体の嵌合孔を長孔状としたりすること可能である。
(9) 実施例1~9では、第1・第3断熱体(断熱体)を合成樹脂材により形成し、第2断熱体(断熱体)をシリコン材により形成したが、第1断熱体または第3断熱体をシリコン材により形成してもよいし、第2断熱体を合成樹脂材により形成してもよい。
(10) 実施例4~6では、左扉の仕切片に傾斜部を設け、この傾斜部に沿ってシール部材を配設することで、シール部材が表側へ斜めに延出して右扉の裏面に弾性的に接触するようにした。これに対し、シール部材を、仕切片(延出基部)に沿って取り付けられる取付基部と、この取付基部に対して表面同士が鈍角の関係となるように屈曲する可撓板部とで構成することで、取付基部に対して可撓板部が表側へ斜めに延出して右扉の裏面に弾性的に接触するようにしてもよい。
(11) 実施例6では、左扉の仕切片(傾斜部)に配設されるシール部材に2つの可撓板を設けたが、可撓板の数は3つ以上であってもよい。また、実施例6では、2つの可撓板のうち一方(第2可撓板)を、ネジ部材の頭部を覆うカバー部の一部として設けたが、このカバー部が可撓板(第2可撓板)を備えず、1つの可撓板(第1可撓板)のみが右扉の裏面に弾性的に接触する構成としてもよい。
(12) 実施例6では、シール部材に設けられる第1可撓板および第2可撓板が起立部から同じ寸法で延出する構成とした。このシール部材は、仕切片の傾斜部に傾斜姿勢で設けられるため、各可撓板における右扉の裏面との接触度合いは相違することになる(図16参照)。これに対し、第1可撓板よりも第2可撓板を起立部から長く延出させることで、第2可撓板による右扉裏 面との接触度合いを高めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
12 筐体,14 循環経路,16 収納室,20A 左扉(扉),20B 右扉(扉),
26 底板(設置対象),30 電気ヒータ(加熱装置),36 蒸発器(冷却装置),
50 通口形成部,50a 通口,51S 側枠板,
52 上仕切(設置対象、所定の設置対象),53 横仕切(設置対象),
66 板金,70 仕切片,71 上辺ヒータ(結露防止用ヒータ),
71a 第1の水平部位(水平部位),71b 第2の水平部位(水平部位),
71c 第3の水平部位(水平部位),71e1 左鉛直部位(鉛直部位),
71e3 右鉛直部位(鉛直部位),72 側辺ヒータ(結露防止用ヒータ),
72a 鉛直部位(第1の鉛直部位),72b 第2の鉛直部位,
73 下辺ヒータ(結露防止用ヒータ),81 右内板(内板),82 左内板(内板),
83 第1固定部材(固定部材),84 第2固定部材(固定部材),85 頭部,
86 ネジ部,87 嵌合部,91 第1断熱体(断熱体),91a 嵌合孔,
92 第2断熱体(断熱体),92a 嵌合孔,93 第3断熱体(断熱体),
93a 嵌合孔,101 庫内温度センサ,P パッキン,S 合わせ目
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