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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/895 20060101AFI20241220BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241220BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241220BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61K8/895
A61K8/891
A61K8/06
A61Q17/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020151109
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045492
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】古川 亮
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭太
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047538(JP,A)
【文献】特表2016-523983(JP,A)
【文献】特表2015-510897(JP,A)
【文献】特開2018-168134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネート 0.1~10質量%と、
(B)シリコーンエラストマー 0.1~10質量%と、
(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤 0.01~10質量%と、
を含み、
前記(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤が、アルキル基含有ポリエーテル変性シリコーン、またはアルキル基含有ポリグリセリン変性シリコーンであり、
前記(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートに対する(B)シリコーンエラストマーの質量比が0.1~2である水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記(A)ジメチコジエチルベンザルマロネート以外の(D)油溶性紫外線吸収剤を組成物全量に対し8質量%以上含む請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤に対する前記(B)シリコーンエラストマーの質量比が0.5~10である請求項1または2記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化組成物は、肌に塗布した際に爽やかでしっとりした感触が得られることから、肌に直接適用される皮膚化粧料等の皮膚外用剤の基剤として広く用いられている。特に、水中油型乳化組成物には、塗布後の肌のべたつきやきしみの軽減、皮膚を柔軟化する効果があることから、シリコーンエラストマーが配合されている(例えば特許文献1や2)。
【0003】
ところで、ジメチコジエチルベンザルマロネートは、UV-B領域(ultraviolet-B:280~320nm)の紫外線吸収剤の一種であるが、他の紫外線吸収剤に比べて、紫外線防御能力が低く、その配合量を多くして高いSPF(sun protection factor)製品を目指す場合には、高配合によるきしみや油っぽさといった問題を有している。このような問題に鑑み、特許文献3には、ジメチコジエチルベンザルマロネートと2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]とを組み合わせて配合した日焼け止め化粧料に、特定構造の両末端シリコーン変性グリセリンを配合することで、高いSPFを有する製品を製造する場合であっても、優れた使用感が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/047196号
【文献】特許第5588164号
【文献】特許第5469319号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、シリコーンエラストマーを配合すると吸光度が低下することが知られている。今般、シリコーンエラストマーの分散に特定の界面活性剤を用いたところ、吸光度が飛躍的に向上し、さらにその分散体にジメチコジエチルベンザルマロネートを配合してみたところ、吸光度が相乗的に向上することを見出し本発明に至った。
【0006】
すわなち、本発明は上記知見に基づきなされたものであり、シリコーンエラストマーが配合されていても吸光度を向上させることが可能な水中油型乳化組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物は、
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートと、
(B)シリコーンエラストマーと、
(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤と、
を含むものである。
【0008】
本発明の水中油型乳化組成物は、(A)ジメチコジエチルベンザルマロネート以外の(D)油溶性紫外線吸収剤を組成物全量に対し8質量%以上含むことが好ましい。
【0009】
(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤に対する(B)シリコーンエラストマーの質量比は0.5~10であることが好ましい。
【0010】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートに対する(B)シリコーンエラストマーの質量比は0.1~2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化組成物は、
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートと、
(B)シリコーンエラストマーと、
(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤と、を含むので、シリコーンエラストマーが配合されていても吸光度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水中油型乳化組成物は、
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートと、
(B)シリコーンエラストマーと、
(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤と、
を含むものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
なお、以下において、POEはポリオキシエチレン、PEGはポリエチレングリコール、PPGはポリプロピレングリコールの略である。
【0013】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネート
本発明の水中油型乳化組成物に含まれるジメチコジエチルベンザルマロネートは常温で液状のシリコーン変性化合物で、ポリシリコーン-15とも呼ばれる。(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートは公知の紫外線吸収剤であり市販品を使用でき、例えば、「PARSOL SLX」(DSM Nutritional Products)が挙げられる。(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートの配合によって、さらに吸光度が相乗的に向上する作用機序は必ずしも明らかではないが、後述する(B)シリコーンエラストマーが構成する分子の穴に(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートが入り込むことで、(B)シリコーンエラストマーによる吸光度の低下を抑制することができるものと考えられる。
【0014】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートの配合量は、組成物全量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~8質量%、さらには0.5~5質量%であることが好ましい。組成物全量に対して0.1質量%以上であることで、吸光度をより向上させることができ、10質量%以下であることでより良好な使用性を確保することができる。
【0015】
(B)シリコーンエラストマー
本発明の水中油型乳化組成物に含まれるシリコーンエラストマー(架橋型シリコーン)は、特に限定されるものではないが、ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(ポリシリコーン11)、ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマーからなる群より選択される1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0016】
本発明の水中油型乳化組成物を調製するに際しては、シリコーンエラストマーを、常温で液状の油分で膨潤した膨潤物の形態で配合することが好ましい。これにより、架橋型シリコーンの分散性および安定性がさらに向上する。
膨潤に用いられる液状油分としては、例えば液状シリコーン油、液状炭化水素油、液状エステル油、液状高級脂肪酸などが挙げられ、特に、常温(25℃)で低粘度、例えば、100mPa・s以下の液状油分が好ましい。好ましい粘度範囲は、1~100mPa・sである。
好ましい配合形態であるシリコーンエラストマーの液状油膨潤物において、架橋型シリコーンと液状油の混合の比率は質量比で、5:95~40:60が好適である。液状油膨潤物がこの質量比の範囲にあることで、水中油型乳化組成物の調製がより好適となる。
【0017】
シリコーンエラストマーの液状油膨潤物は、市販されているものを用いることも可能であり、市販品の例としては、以下のようなものが挙げられる。
ジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、9040シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、デカメチルシクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%)、9041シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は16%)、9045シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、デカメチルシクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12.5%)、EL-8040IDシリコーンオーガニックブレンド(ジメチコンクロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は16%)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は4~10%)、KSG-16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-1610((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、メチルトリメチコンの混合物で架橋物は15~20%)(以上、信越化学工業社製)、GRANSIL GCM(ポリシリコーン-11とオクタメチルシク ロテトラシロキサンの混合物で架橋物は約6%)、GRANSIL GCM-5(ポリシ リコーン-11とデカメチルシクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約6%)、GR ANSIL IDS(ポリシリコーン-11とイソデカンの混合物で架橋物は約7%)、 GRANSIL DMG-3(ポリシリコーン11とジメチコン3mPa・sの混合物で、架橋物は約12%)、GRANSIL DMG-6(ポリシリコーン-11とジメチコン6mPa・sの混合物 で架橋物は約18%)、GRANSIL DMG-20(ポリシリコーン-11とジメチ コン20mPa・sの混合物で架橋物は約25%)、GRANSIL DMG-50(ポ リシリコーン-11とジメチコン50mPa・sの混合物で架橋物は約26%)、GRA NSIL PM(ポリシリコーン-11とフェニルトリメチコンの混合物で架橋物は約2 0%)、GRANSIL ININ(ポリシリコーン-11とイソノナン酸イソノニルの 混合物で架橋物は約15%)(以上、GRANT社製)等が挙げられる。
【0019】
ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-18A((ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの混合物で架橋物は10~20%)(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0020】
ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-41((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は25~30%)、KSG-42((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-43((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、トリオクタノインの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-44((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0021】
アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、VELVESIL 125(アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約12.5%)、VELVESIL Plus(アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサン、PEG/PPG-20/23ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は約20%)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0022】
セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、VELVESIL DM(セテアリルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は約17%)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。部分架橋型ポリエーテル変性シリコーンとジメチルポリシロキサンとの混合物としてはKSG-210(固形分20~30%)、フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン等の環状フッ素含有シリコーンとの混合物としてはKSG -51(固形分15~25%)、部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーンとジメチルポリシロキサンの混合物としてはKSG-710(固形分20~25%)(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0023】
アルキル基含有架橋型ポリエーテル変性シリコーンとしては、ミネラルオイル・PEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-310」;信越化学工業社製)、イソドデカン・PEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-320」;信越化学工業社製)、トリオクタノイン・PEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-330」;信越化学工業社製)、スクワラン・PEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマー・PEG-10ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-340」;信越化学工業社製)、ジメチコン・(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KSG360Z」;信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0024】
アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーンとしては、ミネラルオイル・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-810」;信越化学工業社製)、イソドデカン・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-820;信越化学工業社製」)、トリオクタノイン・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-830」;信越化学工業社製)、スクワラン・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-840」;信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0025】
シリコーンエラストマーの配合量は、組成物全量に対し0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~8質量%、さらには2~7質量%であることが好ましい。配合量が0.1質量%以上であることでより塗布後の肌のべたつきやきしみの軽減、皮膚を柔軟化する効果が得られ、10質量%以下であることで、組成物の安定性をより確保することができる。
【0026】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートに対する(B)シリコーンエラストマーの質量比((B)成分/(A)成分)は0.1~2であることが好ましく、より好ましくは0.12~1.95、さらには0.15~1.8であることが好ましい。質量比(B)/(A)が0.1以上であることでよりべたつきのない滑らかな使用性となり、2以下であることで吸光度をより向上させることができる。
【0027】
(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤
本発明の水中油型乳化組成物に含まれる(C)ジメチコン主鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するHLB8以下の界面活性剤(以下、単に(C)成分ともいう)としては、アルキル基含有ポリエーテル変性シリコーン、アルキル基含有ポリグリセリン変性シリコーン等を好適に挙げることができる。(C)成分の配合によって吸光度が飛躍的に向上する作用機序は必ずしも明らかではないが、(B)シリコーンエラストマーの分散が向上することが関係していると考えている。
【0028】
アルキル基含有ポリエーテル変性シリコーンとしては、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:シリコーンSC0928SL(信越化学工業社製)、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン:ABIL EM180(ゴールドシュミット社製)等が挙げられる。
【0029】
アルキル基含有ポリグリセリン変性シリコーンとしては、ラウリルポリグリセリル-3 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KF-6105」;信越化学工業社製)、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3(市販品としてシリコーンKF-6109(信越化学工業社製))等が挙げられる。
【0030】
(C)成分の配合量は、組成物全量に対し0.01~1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.03~0.9質量%、さらには0.05~0.8質量%であることが好ましい。配合量が0.01質量%以上であることでより吸光度を向上させることができ、1質量%以下であることで、べたつきをより低減することができる。
【0031】
(C)成分に対する(B)シリコーンエラストマーの質量比((B)成分/(C)成分)は0.5~10であることが好ましく、より好ましくは0.55~9、さらには0.6~8であることが好ましい。質量比(B)/(C)が0.5以上であることでべたつきをより低減することができ、10以下であることでより吸光度を向上させることができる。
【0032】
(D)油溶性紫外線吸収剤
油溶性紫外線吸収剤は、従来から化粧料に使用されているものであればよく特に限定されない。例えば、メトキシケイヒ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ベンゾイル誘導体、カンファー誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、トリアジン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体およびベンゾフェノン誘導体が挙げられる。油溶性紫外線吸収剤は、必要に応じて1種または2種以上の組み合わせで配合することができる。
【0033】
メトキシケイヒ酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメートまたはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(例えば「パルソールMCX」;ホフマン-ラ・ロシュ社)、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」;ハーマン・アンド・レイマー社)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどが例示される。
【0034】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(「ユーソレックス(Eusolex)HMS」;ロナ/EMインダストリーズ社)、エチルヘキシルサリチレート(サリチル酸オクチル、例えば「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」;ハーマン・アンド・レイマー社)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば「ディピサル(Dipsal)」;スケル社)、TEAサリチラート(例えば「ネオ・ヘリオパンTS」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0035】
ベンゾイル誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」)などが例示される。
【0036】
カンファー誘導体としては、テレフタリリデン-3,3’-ジカンフル-10,10’-ジスルフォン酸塩、4-メチルベンジリデンカンファーなどが例示される。
【0037】
パラアミノ安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば「エスカロール507」;ISP社)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば「ユビナールP25」;BASF社)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば「ユビナールAプラス」)などが例示される。
【0038】
トリアジン誘導体としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(例えば「チノソーブ(Tinosorb)S」;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社)、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン(例えば「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」;シグマ3 V社)、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
【0039】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば「ユビナールN539T」;BASF社)などが例示される。
【0040】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば「ユビナール400」;BASF社)、ベンゾフェノン-2(例えば「ユビナールD50」;BASF社)、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン(例えば「ユビナールM40」;BASF社)、ベンゾフェノン-4(例えば「ユビナールMS40」;BASF社)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば「ヘリソーブ(Helisorb)11」;ノルクアイ社)、ベンゾフェノン-8(例えば「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」;アメリカン・シアナミド社)、ベンゾフェノン-9(例えば「ユビナールDS-49」;BASF社)、ベンゾフェノン-12などが例示される。
【0041】
本発明において、(D)油溶性紫外線吸収剤の配合量は、組成物全量に対して8質量%以上であることが好ましく、より好ましくは9~20質量%、さらには10~18質量%であることが好ましい。(D)油溶性紫外線吸収剤の配合量は、組成物全量に対して8質量%以上であるで、紫外線防御能をより高めることができる。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は、通常の化粧料や医薬部外品に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。他の任意成分としては、限定するものではないが、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、合成エステル油、シリコーン油などの油分、粉末成分、色剤、保湿剤、水性増粘剤、分散剤、防腐剤、香料、各種薬剤等が挙げられる。
【0043】
液体油脂としては、例えば、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0044】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0045】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、カポックロウ、サトウキビロウ、ラウリン酸ヘキシル、ホホバロウ、セラックロウ、POEコレステロールエーテル等が挙げられる。
【0046】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリデセン等が挙げられる。
【0047】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0048】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘ
キシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0049】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
上記の各油分は、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0050】
粉末成分としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の紫外線散乱剤、タルク、マイカ、カオリン等の体質顔料、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ナイロン粉末等のポリマー粉末等が挙げられる。
【0051】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、トレハロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0052】
水性増粘剤としては、例えば、サクシノグリカン、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、セルロースガム、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等が挙げられる。
【0053】
本発明の水中油型乳化組成物は、例えば、油相を構成する成分と水相を構成する成分とを別々に混合し、水相に油相を加えて乳化するなどといった、水中油型乳化組成物(化粧料)の常法に従って製造することができる。
【0054】
本発明の水中油型乳化組成物は、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ババロア状等のさまざまな剤型の化粧料として提供されうる。
また、本発明の水中油型乳化組成物は、スキンケア化粧料、日焼け止め化粧料、色剤を配合した化粧料、ファンデーション、化粧下地、BBクリームとして提供することができる。
【実施例
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0056】
(実施例1~3および比較例1~3)
下記表1に示す処方で水中油型乳化組成物を作製し、作製した組成物について、以下の基準で評価した。
【0057】
(ピークトップ値)
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各例の組成物(サンプル)を2mg/cmの量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後に、形成された塗膜の吸光度を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて吸光度を測定した。無塗布のプレートをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出し、吸光度の最大値ピークをピークトップ値とした。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:無塗布の透過率
【0058】
<吸光度(Abs)積算値の測定>
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各例の組成物(サンプル)を2mg/cmの量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後に、形成された塗膜の吸光度を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて測定した。無塗布のプレートをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出し、280nm~400nmにおける測定値を積算し、吸光度積算値を求めた。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:無塗布の透過率
【0059】
処方および評価結果を表1に示す。なお、表に示す成分のうち、主だったものの市販品名を以下に示す。
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-C30))クロスポリマー:PEMULEN TR-2(Lubrizol Advanced Materials,Inc.製)・(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー:ARISTOFLEX HMB(クラリアントGMBH社製)
・ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3:シリコーンKF-6109(信越化学工業社製)
・ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:シリコーンSC0928SL(信越化学工業社製)
・セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン:ABIL EM180(ゴールドシュミット社製)
・ラウリルベタイン:アノンBL-SF(日油株式会社製)
・ポリシリコーン-11/ジメチコン(3CS):Gransil DMG-3((GRANT INDUSTRIES社製)
・ジメチコジエチルベンザルマロネート:パルソールSLX(DSM Nutritional Products社製)
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、実施例の水中油型乳化組成物はシリコーンエラストマーが配合されていても吸光度のピークトップ値、積算値ともに高かった。一方、(C)成分を含まない比較例1や(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートを含まない比較例2や3では吸光度のピークトップ値、積算値が優位に低下した。特に、比較例3はサンケア化粧品に有用であるとして最も使用されているオクトクリレンを増量しても実施例のピークトップ値、積算値には及ばなかった。