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  • 特許-印刷装置、印刷システムおよび印刷方法 図1
  • 特許-印刷装置、印刷システムおよび印刷方法 図2
  • 特許-印刷装置、印刷システムおよび印刷方法 図3
  • 特許-印刷装置、印刷システムおよび印刷方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/12 20060101AFI20241220BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241220BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241220BHJP
   B65H 20/02 20060101ALI20241220BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B65H20/12
B41J2/01 305
B41J2/21
B41J2/01 125
B65H20/02 Z
B65H27/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020155701
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049474
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】山下 真祐
(72)【発明者】
【氏名】平井 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】植村 亮太
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119609(JP,A)
【文献】特開2018-165001(JP,A)
【文献】特開2015-172450(JP,A)
【文献】特開昭57-175879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/12
B41J 2/01
B41J 2/21
B65H 20/02
B65H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録面と当該記録面の反対側の非記録面とを有する長尺帯状の印刷媒体の前記非記録面を巻き掛けて回転する第1駆動ローラおよび第2駆動ローラを含み、前記第2駆動ローラから前記第1駆動ローラへ前記印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記第2駆動ローラと前記第1駆動ローラとの間の前記印刷媒体の前記記録面に対向して、前記記録面にインクを吐出する第1印刷部と、
前記搬送部により一方側に搬送される前記印刷媒体の前記記録面に対向して前記記録面にインクを吐出する第2印刷部と
を備え、
前記第1駆動ローラは、前記第2駆動ローラから搬送されてきた前記印刷媒体を、前記記録面を上側に向けつつ水平に送り出し、
前記第1駆動ローラが前記印刷媒体を巻き掛ける角度は、前記第2駆動ローラが前記印刷媒体を巻き掛ける角度より小さく、
前記第1駆動ローラは、前記印刷媒体を吸引するサクションローラであり、
前記第1駆動ローラの径は、前記第2駆動ローラの径より大きく、
前記搬送部は、前記第2駆動ローラの前記一方側と反対側の他方側に配置されて前記印刷媒体を巻き掛けて回転する第3駆動ローラをさらに含み、前記第3駆動ローラから前記第2駆動ローラへ前記記録面を上側へ向けつつ前記印刷媒体を搬送し、
前記第2印刷部は、前記第3駆動ローラと前記第2駆動ローラとの間の前記印刷媒体の前記記録面に対向し、
前記搬送部は、前記第2駆動ローラから搬送されてきた前記印刷媒体を下方向に向けて搬送し、さらにその進行方向を前記他方側に変更して搬送することにより、前記印刷媒体の前記記録面と前記非記録面とを上下反転させるとともに前記印刷媒体を前記一方側から前記他方側に向けて搬送し、次いで、前記印刷媒体を上方向に向けて搬送し、さらにその進行方向を前記一方側に変更することにより、前記印刷媒体の前記記録面と前記非記録面とを再び上下反転させる動作を実行するとともに前記印刷媒体を前記他方側から前記一方側に向けて前記第1駆動ローラまで搬送し、
前記搬送部は、前記第2駆動ローラから前記第1駆動ローラまで、前記印刷媒体の前記非記録面に接触するローラのみによって前記印刷媒体を搬送し、
前記第1印刷部は、前記搬送部により再び上下反転される前記動作によって上側を向く前記記録面に対向する、印刷装置。
【請求項2】
前記第1印刷部は白色のインクを吐出し、前記第2印刷部は白色とは異なる色のインクを吐出する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第2駆動ローラは、前記印刷媒体を吸引するサクションローラである、請求項1ないし2のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項4】
吸引ブロワと、
前記吸引ブロワと前記第1駆動ローラとを接続する第1接続部と、
前記吸引ブロワと前記第2駆動ローラとを接続する第2接続部と
をさらに備え、
前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラは、前記吸引ブロワによる吸引によって発生した吸引力によって前記印刷媒体の前記非記録面を吸引する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置と、
前記印刷装置から搬送されてきた印刷媒体を乾燥させる乾燥部と
を備え、
前記乾燥部は、水平に配列されて前記印刷媒体に対向する複数のノズルを有する送風チャンバを備え、前記送風チャンバの前記ノズルから前記印刷媒体に気体を噴射することで前記印刷媒体を乾燥させる印刷システム。
【請求項6】
記録面と当該記録面の反対側の非記録面とを有する長尺帯状の印刷媒体の前記非記録面を巻き掛けて回転する第1駆動ローラおよび第2駆動ローラを含む搬送部によって、前記第2駆動ローラから前記第1駆動ローラへ前記印刷媒体を搬送する工程と、
前記第2駆動ローラと前記第1駆動ローラとの間の前記印刷媒体の前記記録面に対向する第1印刷部から、前記記録面にインクを吐出する工程と、
前記第2駆動ローラの一方側と反対側の他方側に配置されて前記印刷媒体を巻き掛けて回転する第3駆動ローラをさらに含む前記搬送部によって、前記第3駆動ローラから前記第2駆動ローラへ前記記録面を上側へ向けつつ前記印刷媒体を搬送する工程と、
前記第3駆動ローラと前記第2駆動ローラとの間の前記印刷媒体の前記記録面に対向する第2印刷部が、前記搬送部により前記一方側に搬送される前記印刷媒体の前記記録面に対向して前記記録面にインクを吐出する工程と、
を備え、
前記第1駆動ローラは、前記第2駆動ローラから搬送されてきた前記印刷媒体を、前記記録面を上側に向けつつ水平に送り出し、
前記第1駆動ローラが前記印刷媒体を巻き掛ける角度は、前記第2駆動ローラが前記印刷媒体を巻き掛ける角度より小さく、
前記第1駆動ローラは、前記印刷媒体を吸引するサクションローラであり、
前記第1駆動ローラの径は、前記第2駆動ローラの径より大きく、
前記搬送部は、前記第2駆動ローラから搬送されてきた前記印刷媒体を下方向に向けて搬送し、さらにその進行方向を前記他方側に変更して搬送することにより、前記印刷媒体の前記記録面と前記非記録面とを上下反転させるとともに前記印刷媒体を前記一方側から前記他方側に向けて搬送し、次いで、前記印刷媒体を上方向に向けて搬送し、さらにその進行方向を前記一方側に変更することにより、前記印刷媒体の前記記録面と前記非記録面とを再び上下反転させる動作を実行するとともに前記印刷媒体を前記他方側から前記一方側に向けて前記第1駆動ローラまで搬送し、
前記搬送部は、前記第2駆動ローラから前記第1駆動ローラまで、前記印刷媒体の前記非記録面に接触するローラのみによって前記印刷媒体を搬送し、
前記第1印刷部は、前記搬送部により再び上下反転される前記動作によって上側を向く前記記録面に対向する、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動ローラによって印刷媒体を搬送しつつ印刷部からインクを吐出することで画像を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の印刷装置では、上側から印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドの両側に駆動ローラが配置されており、駆動ローラは印刷媒体を巻き掛けつつ回転することで印刷媒体を搬送する。こうして2本の駆動ローラの間で搬送される印刷媒体にインクジェットヘッドがインクを吐出することで、印刷媒体に画像が印刷される。また、この印刷装置は、アンダーヒータやアフターヒータといったヒータを内蔵しており、これらのヒータによって印刷媒体を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017/138436
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、印刷媒体に吐出されるインクの量が多いと、印刷装置に内蔵するヒータによって印刷媒体を十分に乾燥させることが難しくなる。そこで、印刷装置とは別に乾燥装置を設けて、印刷装置から搬出された印刷媒体を乾燥装置によって乾燥させるシステムが考えられる。ただし、このようなシステムにおいては、インクジェットヘッドといった印刷部の両側に配置される2本の駆動ローラのうち、後段の駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度を確保できないという事情がある。
【0005】
つまり、後段の駆動ローラから送り出される印刷媒体は、印刷装置から乾燥装置へと搬送される。そのため、後段の駆動ローラから水平に印刷媒体を送り出せることが好適となる。なぜなら、乾燥装置で印刷媒体に沿ってヒータを配置するにあたって、ヒータを傾けることなく水平に配置できるため、乾燥装置を鉛直方向にコンパクトに構成できるからである。また、かかる事情は、乾燥以外の工程(例えば、裁断等)を行うシステムにおいても同様に起こり得る。かかる事情から、後段の駆動ローラへの印刷媒体の巻き掛け角度を大きくできず、当該駆動ローラによって印刷媒体を安定的に搬送することが難しかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、印刷部からインクを吐出された印刷媒体を駆動ローラによって水平に送り出す構成において、当該駆動ローラによって印刷媒体を安定的に搬送可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷装置は、記録面と当該記録面の反対側の非記録面とを有する長尺帯状の印刷媒体の非記録面を巻き掛けて回転する第1駆動ローラおよび第2駆動ローラを含み、第2駆動ローラから第1駆動ローラへ印刷媒体を搬送する搬送部と、第2駆動ローラと第1駆動ローラとの間の印刷媒体の記録面に対向して、記録面にインクを吐出する第1印刷部とを備え、第1駆動ローラは、第2駆動ローラから搬送されてきた印刷媒体を、記録面を上側に向けつつ水平に送り出し、第1駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度は、第2駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度より小さく、第1駆動ローラは、印刷媒体を吸引するサクションローラであり、第1駆動ローラの径は、第2駆動ローラの径より大きい。
【0008】
本発明に係る印刷方法は、記録面と当該記録面の反対側の非記録面とを有する長尺帯状の印刷媒体の非記録面を巻き掛けて回転する第1駆動ローラおよび第2駆動ローラによって、第2駆動ローラから第1駆動ローラへ印刷媒体を搬送する工程と、第2駆動ローラと第1駆動ローラとの間の印刷媒体の記録面に対向する第1印刷部から、記録面にインクを吐出する工程とを備え、第1駆動ローラは、第2駆動ローラから搬送されてきた印刷媒体を、記録面を上側に向けつつ水平に送り出し、第1駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度は、第2駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度より小さく、第1駆動ローラは、印刷媒体を吸引するサクションローラであり、第1駆動ローラの径は、第2駆動ローラの径より大きい。
【0009】
このように構成された本発明(印刷装置および印刷方法)では、第2駆動ローラから第1駆動ローラへ搬送される印刷媒体に対して印刷部からインクを吐出することで、印刷媒体に画像が印刷される。こうして画像が印刷された印刷媒体は、第1駆動ローラによって水平に送り出される。そのため、印刷装置から搬出された印刷媒体に処理を行う装置(例えば、乾燥装置)を鉛直方向にコンパクトに構成することができる。また、第1駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度は、第2駆動ローラが印刷媒体を巻き掛ける角度より小さく、第1駆動ローラへの印刷媒体の巻き掛け角度が小さく抑えられている。こうして第1駆動ローラへ到る印刷媒体の傾きが小さく抑えられている。
【0010】
しかも、本発明では、第1駆動ローラはサクションローラである。そのため、第1駆動ローラの回転を印刷媒体にしっかりと伝えることができる。さらに、第1駆動ローラの径は、第2駆動ローラの径よりも大きい。このように、第1駆動ローラの径を大きくすることで、第1駆動ローラに対する印刷媒体の巻き掛け角度が小さいにも関わらず、第1駆動ローラと印刷媒体とが接触する面積を確保でき、第1駆動ローラの回転を印刷媒体により確実に伝えることができる。その結果、第1駆動ローラによって印刷媒体を安定的に送り出すことができる。このように本発明では、印刷部からインクを吐出された印刷媒体を駆動ローラによって水平に送り出す構成において、当該駆動ローラによって印刷媒体を安定的に搬送することが可能となっている。
【0011】
また、搬送部により一方側に搬送される印刷媒体の記録面に対向して記録面にインクを吐出する第2印刷部をさらに備え、搬送部は、第2駆動ローラの一方側と反対側の他方側に配置されて印刷媒体を巻き掛けて回転する第3駆動ローラをさらに含み、第3駆動ローラから第2駆動ローラへ記録面を上側へ向けつつ印刷媒体を搬送し、第2印刷部は、第3駆動ローラと第2駆動ローラとの間の印刷媒体の記録面に対向するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第2印刷部で画像が印刷された印刷媒体が、第2駆動ローラによって第1印刷部へ向けて搬送される。この際、第2駆動ローラへの印刷媒体の巻き掛け角度は大きいため、印刷媒体は、第2駆動ローラによって安定的に搬送されつつ第1印刷部へと向かう。したがって、第1印刷部は、このように安定的に搬送される印刷媒体に対してインクを吐出することで画像を印刷することができる。これによって、第2印刷部で画像が印刷された印刷媒体に対する、第1印刷部による画像の印刷を安定して実行することが可能となる。
【0012】
また、搬送部は、第2駆動ローラから搬送されてきた印刷媒体を下方向に向けて搬送し、さらにその進行方向を他方側に変更して搬送することにより、印刷媒体の記録面と非記録面とを上下反転させるとともに印刷媒体を一方側から他方側に向けて搬送し、次いで、印刷媒体を上方向に向けて搬送し、さらにその進行方向を一方側に変更することにより、印刷媒体の記録面と非記録面とを再び上下反転させるとともに印刷媒体を他方側から一方側に向けて第1駆動ローラまで搬送し、搬送部は、第2駆動ローラから第1駆動ローラまで、印刷媒体の非記録面に接触するローラのみによって印刷媒体を搬送し、第1印刷部は、搬送部により再び上下反転されて上側を向く記録面に対向するように、印刷装置を構成してもよい。
【0013】
かかる構成では、第2駆動ローラから第1駆動ローラに到るまでに、搬送部は、印刷媒体を2回上下反転させ、第1印刷部は、2回の上下反転を経て上側を向く記録面にインクを吐出して画像を印刷する。したがって、第2印刷部による印刷から第1印刷部による印刷までの間には、2回の上下反転を実行できるだけの距離が確保されており、第2印刷部で印刷された画像がある程度乾燥した状態で、第1印刷部による画像の印刷を実行できる。そのため、第2印刷部から吐出されたインクが、第1印刷部から吐出されたインクに混ざり合うのを抑制できる。しかも、第2駆動ローラから第1駆動ローラに到るまでに、印刷媒体の記録面に接触する部材が存在しないため、第2印刷部で印刷された画像を乱すことがない。これによって、第2印刷部で印刷された画像を良好に保ちつつ、第1印刷部による画像の印刷を実行できる。
【0014】
また、第1印刷部は白色のインクを吐出し、第2印刷部は白色とは異なる色のインクを吐出するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第2印刷部で印刷した画像に対して、第1印刷部により白色の背景を印刷することができる。
【0015】
また、第2駆動ローラは、印刷媒体を吸引するサクションローラであるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第2駆動ローラは、第1印刷部へ向けて印刷媒体をより安定的に搬送することができる。
【0016】
また、吸引ブロワと、吸引ブロワと第1駆動ローラとを接続する第1接続部と、吸引ブロワと第2駆動ローラとを接続する第2接続部とをさらに備え、第1駆動ローラおよび第2駆動ローラは、吸引ブロワによる吸引によって発生した吸引力によって印刷媒体の非記録面を吸引するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第1駆動ローラ第2駆動ローラとで吸引ブロワを共通化することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0017】
本発明に係る印刷システムは、上記の印刷装置と、印刷装置から搬送されてきた印刷媒体を乾燥させる乾燥部とを備え、乾燥部は、水平に配列されて印刷媒体に対向する複数のノズルを有する送風チャンバを備え、送風チャンバのノズルから印刷媒体に気体を噴射することで印刷媒体を乾燥させる。したがって、印刷部からインクを吐出された印刷媒体を駆動ローラによって水平に送り出す構成において、当該駆動ローラによって印刷媒体を安定的に搬送することが可能となっている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、印刷部からインクを吐出された印刷媒体を駆動ローラによって水平に送り出す構成において、当該駆動ローラによって印刷媒体を安定的に搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
図2図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
図3】サクションローラである各駆動ローラに対して設けられた吸引機構を模式的に示す図。
図4】白印刷部の両側で印刷媒体を支持する2個の駆動ローラと印刷媒体との関係を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。図1に示すように、印刷システム1は、水平方向Xに配列された印刷装置3および乾燥装置6を備える。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送する。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0021】
印刷装置3は、繰出ロール11から巻取ロール12へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に対してインクジェット方式で水性インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に画像を印刷する。かかる印刷装置3の構成の詳細は、図2等を用いて後述する。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、印刷装置3から乾燥装置6へ向けて水平方向Xに搬送される。
【0022】
乾燥装置6は乾燥炉60を備え、繰出ロール11から巻取ロール12への搬送に伴って印刷装置3から搬出された印刷媒体Mを乾燥させる。乾燥炉60内には、水平方向Xに配列された2個の上段送風ユニット61uと、これら上段送風ユニット61uの下側で水平方向Xに配列された2個の中段送風ユニット61mと、これら中段送風ユニット61mの下側で水平方向Xに配列された2個の下段送風ユニット61lとが具備されている。
【0023】
印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、2個の上段送風ユニット61uを水平方向Xに通過した後に、1対のローラ62によって2個の中段送風ユニット61mへ向けて折り返される。続いて、印刷媒体Mは、2個の中段送風ユニット61mを水平方向Xに通過した後に、1対のエアターンバー63によって2下段送風ユニット61lに向けて折り返される。さらに、印刷媒体Mは、2個の下段送風ユニット61lを水平方向Xに通過した後に、乾燥装置6の外部へ搬出される。
【0024】
上段送風ユニット61uは、水平方向Xに通過する印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟むように配置された2個の送風チャンバ64を有する。各送風チャンバ64は、水平方向Xに配列された複数のノズル65を有し、各ノズル65から温風(60度以上の気体)を印刷媒体Mへ噴射する。こうして、印刷媒体Mは、上下に設けられた2個の送風チャンバ64の間を通過しつつ、これら送風チャンバ64のノズル65から噴射された温風によって乾燥される。また、中段送風ユニット61mおよび下段送風ユニット61lのそれぞれも、上段送風ユニット61uと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む2個の送風チャンバ64を有する。
【0025】
ちなみに、上段送風ユニット61uの具体的構成はここの例に限られない。例えば、上段送風ユニット61uの上下の送風チャンバ64のうち下側の送風チャンバ64に代えて、水平方向Xに配列された複数のローラを設けてもよい。かかる構成では、複数のローラによって印刷媒体Mの裏面M2を下側から支持しつつ、上側の送風チャンバ64から印刷媒体Mの表面M1に温風を噴射できる。
【0026】
図2図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。図2では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は印刷装置3から乾燥装置6へ向う側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0027】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)の吐出ヘッド321を有する。複数の吐出ヘッド321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数の吐出ヘッド321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0028】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一の吐出ヘッド331を有する。吐出ヘッド331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33の吐出ヘッド331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0029】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口しており、印刷媒体Mは搬入口311から筐体31内に搬入される。これに対して、搬送部4は、搬入部41を有する。搬入部41は、カラー印刷部32より下方において水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ411を有し、搬入口311から搬入された印刷媒体Mを複数のローラ411によって支持しつつ、他方側X2から一方側X1へ向けて搬送する。
【0030】
また、搬送部4は、搬入部41の一方側X1に設けられた上昇搬送部42を有する。上昇搬送部42は、カラー印刷部32の外側(一方側X1)において鉛直方向Zに配列された複数のローラ421を有する。この上昇搬送部42は、複数のローラ421のうち下端に位置するローラ421によって、搬入部41から搬送されてきた印刷媒体Mを上側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を一方側X1から上側に変更してから、当該印刷媒体Mを複数のローラ421によって支持しつつ上方へ搬送する。
【0031】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32の上方に設けられた上方搬送部43を有する。上方搬送部43は、カラー印刷部32の上方において水平方向Xの一方側X1から他方側X2へ配列された複数のローラ431を有する。この上方搬送部43は、複数のローラ431のうち一方側X1の端に位置するローラ431によって、上昇搬送部42から搬送されてきた印刷媒体Mを他方側X2へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を上側から他方側X2に変更してから、当該印刷媒体Mを複数のローラ431によって支持しつつ他方側X2へ搬送する。
【0032】
また、搬送部4は、上方搬送部43の他方側X2に設けられた下降搬送部44を有する。下降搬送部44は、カラー印刷部32の外側(他方側X2)において鉛直方向Zに配列された複数のローラ441を有する。この下降搬送部44は、複数のローラ441のうち上端に位置するローラ441によって、上方搬送部43から搬送されてきた印刷媒体Mを下側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を他方側X2から下側へ変更してから、当該印刷媒体Mをローラ441によって支持しつつ下方へ搬送する。この下降搬送部44が有する複数のローラ441のうち、上端のローラ441はカラー印刷部32の各吐出ヘッド321より上側に位置し、下端のローラ441はカラー印刷部32の各吐出ヘッド321より下側に位置する。つまり、下降搬送部44は、カラー印刷部32の上方から下方へ印刷媒体Mを搬送する。
【0033】
さらに、搬送部4は、上方搬送部43の下方で且つ下降搬送部44の一方側X1に設けられたカラー搬送部45を有する。このカラー搬送部45は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1に配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ451を有し、下降搬送部44から搬送されてきた印刷媒体Mは、複数のローラ451によってカラー印刷部32の下方に支持される。このように、カラー搬送部45の複数のローラ451は、下降搬送部44から搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触することで印刷媒体Mを下方から支持しつつ、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する。そして、カラー印刷部32は、カラー搬送部45によってその表面M1に沿って搬送される印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出する。
【0034】
この際、カラー搬送部45によって搬送される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、当該印刷媒体Mの裏面M2は下方を向く。詳述すると、印刷媒体Mは、その表面M1が上方を向いた状態で搬入口311から搬入されて、搬入部41によって他方側X2から一方側X1へ向けて搬送される。搬入部41を通過した印刷媒体Mは、上昇搬送部42および上方搬送部43によって上下反転された状態で、上方搬送部43によって一方側X1から他方側X2へ向けて搬送される。そのため、上方搬送部43によって搬送される印刷媒体Mの表面M1は下方を向く。上方搬送部43を通過した印刷媒体Mは、下降搬送部44およびカラー搬送部45によって上下反転された状態で、カラー搬送部45によって他方側X2から一方側X1へ向けて搬送される。そのため、カラー搬送部45によって搬送される印刷媒体Mの表面M1は上方を向く。
【0035】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向において、カラー搬送部45の上流側に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mの表面M1を巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462は、ローラ461との間に印刷媒体Mを挟むことでローラ461に印刷媒体Mを押圧するニップローラである。また、ローラ463は、印刷媒体Mに付与された張力を検出する張力センサを有する従動ローラであり、駆動ローラ461から搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2を巻き掛ける。駆動ローラ461および従動ローラ463は、後述するように、印刷媒体Mのテンションを調整する機能を果たす。
【0036】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二度上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、カラー搬送部45の一方側X1で鉛直方向Zに配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ471、472を有する。ローラ471、472のうち、上端のローラ471は、印刷媒体Mの裏面M2を巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。この駆動ローラ471は、カラー搬送部45から搬送されてきた印刷媒体Mを下側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を一方側X1から下側へ変更する。また、ローラ471、472のうち、下端のローラ472は、印刷媒体Mに付与された張力を検出する張力センサを有する従動ローラであり、印刷媒体Mの裏面M2を巻き掛ける。この従動ローラ472は、駆動ローラ471から搬送されてきた印刷媒体Mを他方側X2へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を下側から他方側X2へ変更する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ471、472によって印刷媒体Mが上下反転されて、印刷媒体Mの裏面M2が上方を向くとともに、印刷媒体Mの表面M1が下方を向く。駆動ローラ471およびローラ472は、後述するように、印刷媒体Mのテンションを調整する機能を果たす。
【0037】
また、反転搬送部47は、カラー搬送部45の下方で且つローラ472の他方側X2に設けられた複数のローラ473を有する。複数のローラ473は、水平方向Xの一方側X1から他方側X2に配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ473によって、裏面M2が上方を向いた状態の印刷媒体Mが一方側X1から他方側X2へ向けて搬送される。
【0038】
さらに、反転搬送部47は、複数のローラ473および下降搬送部44の他方側X2に設けられた複数のローラ474、475、476を有する。これらローラ474~476は、鉛直方向Zの下側から上側へ配列され、印刷媒体Mの裏面M2に接触する。複数のローラ474~476のうち、下端のローラ474は、複数のローラ473から搬送されてきた印刷媒体Mを上側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を他方側X2から上側へ変更し、上端のローラ476は、ローラ475を経由してローラ474から搬送されてきた印刷媒体Mを一方側X1へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を上側から一方側X1へ変更する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ474~476によって印刷媒体Mが上下反転されて、印刷媒体Mの表面M1が上方を向くとともに、印刷媒体Mの裏面M2が下方を向く。
【0039】
また、反転搬送部47は、上方搬送部43の上方で且つローラ476の一方側X1に配置されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ477を有する。ローラ477は、ローラ476から搬送されてきた印刷媒体Mを、他方側X2から一方側X1へ向けて搬送する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ477によって、表面M1が上方を向いた状態の印刷媒体Mが他方側X2から一方側X1へ向けて搬送される。
【0040】
このように、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0041】
こうして、反転搬送部47は、印刷媒体Mの裏面M2に接触して当該裏面M2を巻き掛けつつ回転するローラ471~477のみによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを二度上下反転させる。すなわち、反転搬送部47は、ローラやエアターンバーといった支持部材を印刷媒体Mの表面M1側に全く設けることなく、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを二度上下反転させることができる。
【0042】
また、搬送部4は、上方搬送部43の上方で且つ反転搬送部47のローラ477より一方側X1に設けられた白搬送部48を有する。この白搬送部48はローラ481を有し、反転搬送部47のローラ477から搬送されてきた印刷媒体Mは、ローラ481によって白印刷部33の下方に支持される。このように、白搬送部48のローラ481は、反転搬送部47のローラ477から搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触することで印刷媒体Mを下方から支持しつつ、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する。そして、白印刷部33は、白搬送部48によってその表面M1に沿って搬送される印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出する。
【0043】
さらに、搬送部4は、上方搬送部43より上方で且つ白搬送部48の一方側X1に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491、492、493を有する。これらローラ491~493それぞれの上端は水平方向Xに平行に並び、印刷媒体Mの裏面M2に接触する。これらローラ491~493は、印刷媒体Mを水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ向けて水平に搬送する。特に、駆動ローラ491は、ローラ481から搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2を巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。一方、筐体31の一方側X1の側壁では、搬出口312が開口する。したがって、印刷媒体Mは、搬出部49によって水平方向Xに平行に搬送されつつ、搬出口312から搬出される。
【0044】
このように、搬送部4は、カラー搬送部45に進入してから二度上下反転して搬出口312に到る印刷媒体Mを支持する支持部材を、印刷媒体Mの表面M1側には有さず、印刷媒体Mの裏面M2側にのみ有する。
【0045】
また、印刷装置3は、筐体31内に配置されたプレ乾燥部34を備える。プレ乾燥部34は、鉛直方向Zにおいて、搬入部41と反転搬送部47との間に配置される。このプレ乾燥部34は、反転搬送部47の複数のローラ473によって一方側X1から他方側X2へ向かって搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル341を有する。各ノズル341は、複数のローラ473によって搬送される印刷媒体Mの表面M1に下方から対向し、この印刷媒体Mの表面M1に室温のエアを下方から噴射する。つまり、カラー印刷部32からカラーインクが吐出された印刷媒体Mの表面M1が、プレ乾燥部34によって乾燥される。なお、このプレ乾燥部34は、必ずしも搬入部41と反転搬送部47との間に限られるものではなく、反転搬送部47によって搬送されている印刷媒体Mの表面M1に対してエア噴射できる位置関係を採りうる限り、プレ乾燥部34が配置される位置は制限されるものではない。すなわち、印刷媒体Mの表面にカラー印刷部32で、カラーインクが吐出された後、白印刷部33で白インクが、印刷媒体Mの表面M1に吐出される前の間に印刷媒体Mの表面M1に対してエア噴射できるように、このプレ乾燥部34を配置することができる。ただし、搬入部41と反転搬送部47との間に、このプレ乾燥部34を配置すれば、反転搬送部47の下方のスペースを、プレ乾燥部の配置スペースとして活用でき、水平方向において印刷装置の小型化を図ることができるというメリットがある。
【0046】
さらに、印刷装置3は、筐体31内に配置された上方乾燥部35を備える。上方乾燥部35は搬出部49の上方に配置される。この上方乾燥部35は、搬出部49によって他方側X2から一方側X1へ向かって搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル351を有する。各ノズル351は、搬出部49によって搬送される印刷媒体Mの表面M1に上方から対向し、この印刷媒体Mの表面M1に室温のエアを上方から噴射する。つまり、白印刷部33から白インクが吐出された印刷媒体Mの表面M1が、上方乾燥部35によって乾燥される。
【0047】
上述のように、搬送部4は、3本の駆動ローラ461、471、491を有し、印刷媒体Mはこれらの順に搬送される。また、駆動ローラ461と駆動ローラ471との間の印刷媒体Mに対してカラー印刷部32の各吐出ヘッド321が上方から対向し、他方側X2の駆動ローラ461から一方側X1の駆動ローラ471へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に各吐出ヘッド321がインクを吐出する。さらに、駆動ローラ471と駆動ローラ491との間で印刷媒体Mの表面M1および裏面M2の上下反転が2回実行され、駆動ローラ491に到る前の印刷媒体Mの表面M1は上方を向く。こうして、駆動ローラ471と駆動ローラ491との間で上方を向く印刷媒体Mの表面M1に対して、白印刷部33の吐出ヘッド331が上方から対向する。そして、駆動ローラ471から駆動ローラ491へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に吐出ヘッド331がインクを吐出する。
【0048】
この際、駆動ローラ461、471、491のそれぞれは、従動ローラ463、472それぞれの張力センサが検出した印刷媒体Mの張力に応じた速度で回転することで、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの張力を全体に渡って所定の目標張力に調整する。これによって、印刷媒体Mに適切な張力を与えつつ、カラーインクおよび白インクを印刷媒体Mに吐出することができる。
【0049】
また、駆動ローラ471および駆動ローラ491は、印刷媒体Mを吸引するサクションローラである。これによって、駆動ローラ471、491は、吸引力によって印刷媒体Mに回転を的確に伝えて、印刷媒体Mを駆動できる。これに対応して、搬送部4は、各駆動ローラ471、491の内部を吸引するための吸引機構を有する(図3)。
【0050】
図3はサクションローラである各駆動ローラに対して設けられた吸引機構を模式的に示す図である。吸引機構5は、吸引ブロワ51と、吸引ブロワ51に取り付けられた共通配管52と、共通配管52と駆動ローラ471とを接続する分岐配管53と、共通配管52と駆動ローラ491とを接続する分岐配管54とを有する。
【0051】
吸引ブロワ51が共通配管52を吸引すると、分岐配管53を介して駆動ローラ471(サクションローラ)の内部が吸引される。その結果、駆動ローラ471の周面で開口する複数の吸引孔に負圧が与えられ、この負圧によって駆動ローラ471の周面に発生した吸引力により、印刷媒体Mが駆動ローラ471に吸引される。
【0052】
同様に、吸引ブロワ51が共通配管52を吸引すると、分岐配管54を介して駆動ローラ491(サクションローラ)の内部が吸引される。その結果、駆動ローラ491の周面で開口する複数の吸引孔に負圧が与えられ、この負圧によって駆動ローラ491の周面に発生した吸引力により、印刷媒体Mが駆動ローラ491に吸引される。
【0053】
図4は白印刷部の両側で印刷媒体Mを支持する2個の駆動ローラと印刷媒体との関係を模式的に示す側面図である。図4の「前段の駆動ローラ471」の欄に示すように、駆動ローラ471は、印刷媒体Mの裏面M2に接しつつ、巻き掛け角度θ471で印刷媒体Mを巻き掛ける。ここで、巻き掛け角度θ471は、駆動ローラ471の回転軸が延びる方向(鉛直方向Zおよび水平方向Xに直交する方向)から見て、駆動ローラ471の周面と印刷媒体Mとの接触範囲が当該回転軸の周りになす角度である。この駆動ローラ471は径R471を有する。
【0054】
また、図4の「後段の駆動ローラ491」の欄が示すように、駆動ローラ491は、印刷媒体Mの裏面M2に接しつつ、巻き掛け角度θ491で印刷媒体Mを巻き掛ける。ここで、巻き掛け角度θ491は、駆動ローラ491の回転軸が延びる方向(鉛直方向Zおよび水平方向Xに直交する方向)から見て、駆動ローラ491の周面と印刷媒体Mとの接触範囲が当該回転軸の周りになす角度である。この駆動ローラ491は径R491を有する。
【0055】
図4に示すように、印刷媒体Mに対する駆動ローラ491の巻き掛け角度θ491は、印刷媒体Mに対する駆動ローラ471の巻き掛け角度θ471より小さい。例えば、巻き掛け角度θ471は約39度であるのに対して、巻き掛け角度θ491は12度~14度であり、巻き掛け角度θ491は、巻き掛け角度θ471の1/2倍以下あるいは1/3倍以下に設定できる。
【0056】
上述の通り、吐出ヘッド331は、印刷装置3に設けられた複数の吐出ヘッド321、331のうち、印刷媒体Mに対するインクの吐出を最後に実行する。そして、吐出ヘッド331からインクを吐出された印刷媒体Mは、駆動ローラ491によって搬出口312から搬出される。つまり、吐出ヘッド331は、複数の吐出ヘッド321、331のうち、駆動ローラ491の直前で印刷媒体Mへインクを吐出する吐出ヘッドである。これに対して、巻き掛け角度θ491を小さくすることで、駆動ローラ491の前後における印刷媒体Mの傾きが抑えられている。その結果、駆動ローラ491から水平に印刷媒体Mを送り出しつつ、駆動ローラ491の直前の吐出ヘッド331の傾きを抑えることが可能となっている。
【0057】
つまり、駆動ローラ491は、搬出口312へ向けて水平方向Xに平行に印刷媒体Mを送り出す。このように駆動ローラ491から搬出口312に到る印刷媒体Mは、水平方向Xに平行に保たれる。一方、印刷媒体Mに対する駆動ローラ491の巻き掛け角度θ491が小さいことから、駆動ローラ491に到る直前の印刷媒体Mの水平方向Xに対する傾きが小さい。そのため、この印刷媒体Mに対向する吐出ヘッド331の傾きも小さく抑えることができる。その結果、吐出ヘッド331から印刷媒体Mへのインクの吐出方向の鉛直方向Zに対する傾きを抑えることができる。
【0058】
一方、駆動ローラ491の径R491は、駆動ローラ471の径R471より大きい。例えば、径R491は300mmであるのに対して、径R471は150mmであり、径R491は径R471の2倍以上にできる。このように、大きな径R491の駆動ローラ491を用いることで、駆動ローラ491の巻き掛け角度θ491が小さいにも関わらず、駆動ローラ491と印刷媒体Mとが接触する面積を確保することができる。
【0059】
以上に示す印刷装置3では、駆動ローラ471(第2駆動ローラ)から駆動ローラ491(第1駆動ローラ)へ搬送される印刷媒体Mに対して白印刷部33(第1印刷部)からインクを吐出することで、印刷媒体Mに画像が印刷される。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、駆動ローラ491によって搬出口312へ向けて水平に送り出される。そのため、印刷装置3から搬出された印刷媒体Mに処理を行う装置(例えば、乾燥装置6)を鉛直方向Zにコンパクトに構成することができる。また、駆動ローラ491が印刷媒体Mを巻き掛ける角度θ491は、駆動ローラ471が印刷媒体Mを巻き掛ける角度θ471より小さく、駆動ローラ491への印刷媒体Mの巻き掛け角度θ491が小さい。これによって、駆動ローラ491へ到る印刷媒体Mの傾きが小さく抑えられている。その結果、印刷媒体Mに対向する白印刷部33のインク吐出面を水平に近く保つことができ、白印刷部33のインク吐出面をインクが流下してインク吐出面内で固化するような不具合を抑制することができる。
【0060】
しかも、駆動ローラ491はサクションローラである。そのため、駆動ローラ491の回転を印刷媒体Mにしっかりと伝えることができる。さらに、駆動ローラ491の径R491は、駆動ローラ471の径R471よりも大きい。このように、駆動ローラ491の径R491を大きくすることで、駆動ローラ491による印刷媒体Mの巻き掛け角度θ491が小さいにも関わらず、駆動ローラ491と印刷媒体Mとが接触する面積を確保でき、駆動ローラ491の回転を印刷媒体Mにより確実に伝えることができる。その結果、駆動ローラ491によって印刷媒体Mを安定的に送り出すことができる。このように本実施形態では、白印刷部33からインクを吐出された印刷媒体Mを駆動ローラ491によって水平に送り出す構成において、当該駆動ローラ491によって印刷媒体Mを安定的に搬送することが可能となっている。
【0061】
また、搬送部4により一方側X1に搬送される印刷媒体Mの表面M1(記録面)に対向して表面M1にインクを吐出するカラー印刷部32(第2印刷部)が具備されている。搬送部4は、駆動ローラ471の他方側X2に配置された駆動ローラ461(第3駆動ローラ)を有し、駆動ローラ461は印刷媒体Mを巻き掛けて回転する。そして、駆動ローラ461から駆動ローラ471へ表面M1を上側へ向けつつ印刷媒体Mが搬送され、カラー印刷部32は、駆動ローラ461と駆動ローラ471との間の印刷媒体Mの表面M1に対向する。かかる構成では、カラー印刷部32で画像が印刷された印刷媒体Mが、駆動ローラ471によって白印刷部33へ向けて搬送される。この際、駆動ローラ471への印刷媒体Mの巻き掛け角度θ471は大きいため、印刷媒体Mは、駆動ローラ471によって安定的に搬送されつつ白印刷部33へと向かう。したがって、白印刷部33は、このように安定的に搬送される印刷媒体Mに対してインクを吐出することで画像を印刷することができる。これによって、カラー印刷部32で画像が印刷された印刷媒体Mに対する、白印刷部33による画像の印刷を安定して実行することが可能となる。
【0062】
また、駆動ローラ471から駆動ローラ491に到るまでに、搬入部41は、印刷媒体Mを2回上下反転させ、白印刷部33は、2回の上下反転を経て上側を向く表面M1にインクを吐出して画像を印刷する。したがって、カラー印刷部32による印刷から白印刷部33による印刷までの間には、2回の上下反転を実行できるだけの距離が確保されており、カラー印刷部32で印刷された画像がある程度乾燥した状態で、白印刷部33による画像の印刷を実行できる。そのため、カラー印刷部32から吐出されたインクが、白印刷部33から吐出されたインクに混ざり合うのを抑制できる。しかも、駆動ローラ471から駆動ローラ491に到るまでに、印刷媒体Mの表面M1に接触する部材が存在しないため、カラー印刷部32で印刷された画像を乱すことがない。これによって、カラー印刷部32で印刷された画像を良好に保ちつつ、白印刷部33による画像の印刷を実行できる。
【0063】
また、白印刷部33は白色のインクを吐出し、カラー印刷部32は白色とは異なる色のインクを吐出する。かかる構成では、カラー印刷部32で印刷した画像に対して、白印刷部33により白色の背景を印刷することができる。
【0064】
また、駆動ローラ471は、印刷媒体Mを吸引するサクションローラである。かかる構成では、駆動ローラ471は、白印刷部33へ向けて印刷媒体Mをより安定的に搬送することができる。
【0065】
また、印刷装置3は、駆動ローラ471および駆動ローラ491を吸引する吸引機構5を備える。この吸引機構5は、吸引ブロワ51と、吸引ブロワ51と駆動ローラ491とを接続する共通配管52および分岐配管54(第1接続部)と、吸引ブロワ51と駆動ローラ471とを接続する分岐配管53および共通配管52(第2接続部)とを備える。そして、駆動ローラ491および駆動ローラ471は、は、吸引ブロワ51による吸引によって発生した吸引力によって印刷媒体Mの裏面M2を吸引する。こうして、駆動ローラ491と駆動ローラ471とで吸引ブロワ51を共通化することができ、印刷装置3の構成の簡素化が図られている。
【0066】
以上に説明した実施形態では、印刷システム1が本発明の「印刷システム」の一例に相当し、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、カラー印刷部32が本発明の「第2印刷部」の一例に相当し、白印刷部33が本発明の「第1印刷部」の一例に相当し、搬送部4が本発明の「搬送部」の一例に相当し、駆動ローラ461が本発明の「第3駆動ローラ」の一例に相当し、駆動ローラ471が本発明の「第2駆動ローラ」の一例に相当し、駆動ローラ491が本発明の「第1駆動ローラ」の一例に相当し、吸引ブロワ51が本発明の「吸引ブロワ」の一例に相当し、共通配管52および分岐配管54が本発明の「第1接続部」の一例に相当し、共通配管52および分岐配管53が本発明の「第2接続部」の一例に相当し、乾燥装置6が本発明の「乾燥部」の一例に相当し、送風チャンバ64が本発明の「送風チャンバ」の一例に相当し、印刷媒体Mが本発明の「印刷媒体」の一例に相当し、表面M1が本発明の「記録面」の一例に相当し、裏面M2が本発明の「非記録面」の一例に相当し、一方側X1が本発明の「一方側」の一例に相当し、他方側X2が本発明の「他方側」の一例に相当する。
【0067】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、印刷媒体Mを印刷装置3から搬出する駆動ローラ491の直前の吐出ヘッド331から吐出するインクは白インクに限られない。
【0068】
また、駆動ローラ471から駆動ローラ491へ印刷媒体Mを搬送するための具体的な構成は上記の例に限られない。したがって、駆動ローラ471から駆動ローラ491までの間において、2回の上下反転を印刷媒体Mに実行することは必須ではない。
【0069】
また、駆動ローラ471はサクションローラである必要はない。
【0070】
また、印刷装置3において吐出するインクの種類は水性インクに限られない。
【0071】
また、印刷装置3から搬出された印刷媒体Mに実行される処理は乾燥装置6による乾燥に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、インクジェット方式で印刷媒体Mにインクを吐出する印刷装置の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…印刷システム
3…印刷装置
32…カラー印刷部(第2印刷部)
33…白印刷部(第1印刷部)
4…搬送部
461…駆動ローラ(第3駆動ローラ)
471…駆動ローラ(第2駆動ローラ)
491…駆動ローラ(第1駆動ローラ)
51…吸引ブロワ
52…共通配管(第1接続部、第2接続部)
53…分岐配管(第2接続部)
54…分岐配管(第1接続部)
6…乾燥装置(乾燥部)
64…送風チャンバ
M…印刷媒体
M1…表面(記録面)
M2…裏面(非記録面)
X1…一方側
X2…他方側
図1
図2
図3
図4