(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインで多重ダウンシフトを実行するために路上走行車両を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/21 20060101AFI20241220BHJP
F16H 59/04 20060101ALI20241220BHJP
F16H 59/54 20060101ALI20241220BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F16H61/21
F16H59/04
F16H59/54
F16H61/68
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020158622
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】102019000017507
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ バローネ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ナンニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモ センセリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ マルコーニ
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158366(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第10328313(DE,A1)
【文献】特開2016-173177(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/21
F16H 59/04
F16H 59/54
F16H 61/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボアシストトランスミッション(7)を備えるドライブトレインで多重ダウンシフトを実行するために路上走行車両(1)を制御する方法であって、
前記路上走行車両(1)の減速の状態を検出すると同時に、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求を検出するステップと、
ドライバーの更なる操作に関係なく、前記路上走行車両(1)が減速している間に自律的に複数のダウンシフトを連続して実行するステップと、
を含む制御方法において、
前記複数のダウンシフトの全てに共通する単一のシフト時間間隔(Δt)の持続時間を決定するステップと、
前回のダウンシフトから正確に前記シフト時間間隔(Δt)が経過したときに最初のダウンシフトに続いて各ダウンシフトを実行するステップと、
を更に含み、
前記ドライブトレイン(6)に接続される内燃エンジン(4)の回転速度(ω
E)の過度の増大をダウンシフトが引き起こす場合にダウンシフトが遅延されることを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記最初のダウンシフトは、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出されるのと同じ時点(T
1)に実行される、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記シフト時間間隔(Δt)の前記持続時間は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点(T
1)の内燃エンジン(4)の回転速度(ω
E)に基づいて決定される、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記シフト時間間隔(Δt)の前記持続時間は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点(T
1)に前記サーボアシストトランスミッション(7)に噛み合わされるギアに基づいて決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記シフト時間間隔(Δt)の前記持続時間は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点(T
1)におけるブレーキペダル(23)の踏み込み度合いに基づいて決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記シフト時間間隔(Δt)の前記持続時間は、
前記複数のダウンシフトの全てのダウンシフトに関して常に一定のままである、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記複数のダウンシフトは、前記路上走行車両(1)の減速状態が終了するときに終了する、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記路上走行車両(1)の減速状態は、ブレーキペダル(23)の踏み込み度合いを決定することによって検出される、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
ドライバーがダウンパドルシフタ(25)を長時間にわたって押し続ける場合に多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される、請求項1から8のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項10】
多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点(T
1)の快適指数の値を決定するステップと、
前記快適指数に基づいてダウンシフトの実行速度を調整するステップと、
を更に含む請求項1から9のいずれか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、その開示全体が参照により本願に組み入れられる2019年9月30日に出願されたイタリア特許出願第102019000017507号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインで多重ダウンシフトを実行するために路上走行車両を制御する方法に関する。
【0003】
本発明は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインにおいて有利な用途を見出し、このため、これについては、一般性を失うことなく、以下の説明で明確に言及する。
【背景技術】
【0004】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインは、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフトと、それぞれがそれぞれの主シャフトを内燃エンジンのドライブシャフトに接続するようになっている2つの同軸クラッチと、動きを駆動輪に伝達するとともにそれぞれがギアを形成するそれぞれのギアトレインによって主シャフトに結合され得る少なくとも1つの副シャフトとを備える。
【0005】
ギアシフト中、現在のギアが副シャフトを主シャフトに結合し、一方で、追従するギアが副シャフトを他の主シャフトに結合し、結果として、ギアシフトは、2つのクラッチを交差させることによって、すなわち、現在のギアに関連付けられるクラッチを開放することによって及び同時に追従するギアと関連付けられるクラッチを閉じることによって行われる。
【0006】
ドライバーがブレーキをかけている間に複数回ギアダウンして(実際には、ブレーキの最後に行われる)再始動時に想定し得る最大加速度を有するようにブレーキの終了時に(内燃エンジンの最大回転数に依存する)想定し得る最も低いギアと噛み合うことができるようにする機能(「シーケンシャルダウンシフト」と呼ばれる)がある。「シーケンシャルダウンシフト」として知られるこの機能は、ダウンシフトパドルシフタを長時間にわたって(つまり、所定の時間閾値を超える時間にわたって)押すことによってブレーキ中(つまり、ブレーキペダルが踏まれるとき)にドライバーによって起動され、前記ダウンシフトパドルシフタは、通常、1つの単一のダウンシフト(すなわち、現在のギアよりも低い新たなギアの噛み合い)を要求するために短い瞬間だけ押される。
【0007】
言い換えると、ドライバーは、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを制御するために、1つの単一のアップシフト(つまり、現在のギアよりも高く且つ現在のギアに隣接する新たなギアの噛み合い)を要求するために短く押されるアップシフトパドルシフタと、1つの単一のダウンシフト(つまり、現在のギアよりも低く且つ現在のギアに隣接する新たなギアの噛み合い)を要求するために短く押されるダウンシフトパドルシフタとに依存し得る。ブレーキ(明らかに長いブレーキ)中、ドライバーは、ブレーキペダルを踏み込んでいる間、ダウンシフトパドルシフタを連続して押して、ブレーキの終了時(つまり、ブレーキペダルが解放されるとき)に想定し得る最も低いギアが噛み合わされるようにブレーキの間に複数回自動的にギアダウンする「シーケンシャルダウンシフト」と呼ばれる機能を起動させることができる。
【0008】
「シーケンシャルダウンシフト」として知られる機能は、一般に、トラック上で疾走する際、直線コースの最後に、ドライバーが次のカーブへの準備に集中しながら理想的なギアの選択を処理するためにこの機能を求めることを選択するときに使用される。
【0009】
「シーケンシャルダウンシフト」と呼ばれる機能は、現在、内燃エンジンの回転速度に関して一連の閾値を設定し、そのため、内燃エンジンの回転速度が対応する回転速度閾値に達するたびにギアを自動的にシフトさせることを伴う。しかしながら、内燃エンジンに関して一連の回転速度閾値を生成するソフトウェアは、長く複雑な調整を必要とし、更に、「シーケンシャルダウンシフト」として知られる機能の動作モードは、通常、効果的ではあるが、それが「不自然」(つまり、ドライバーの期待に反する)であると分かる傾向があるドライバーによっては評価されない。
【0010】
「シーケンシャルダウンシフト」と呼ばれる機能の実装の幾つかの例は、特許出願である国際公開第2013153309号パンフレット及び欧州特許出願公開第2921746号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインにおいて多重ダウンシフトを実行するために路上走行車両を制御する方法を提供することであり、前記方法は、前記の欠点を被らず、同時に、実施が容易で経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に係る、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインで多重ダウンシフトを実行するために路上走行車両を制御する方法が提供される。
【0013】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を記載し、明細書本文の一体部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】本発明の制御方法にしたがって制御される、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを伴うドライブトレインを備える後輪駆動の路上走行車両の概略平面図である。
【
図3】多重ダウンシフトの実行中の2つのクラッチ及びドライブシャフトの回転速度の時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、数字1は、全体として、2つの前従動(すなわち、非駆動)輪2と2つの後駆動輪3とを備える路上走行車両(特に、自動車)を示す。前方位置には、ドライブトレイン6によって駆動輪3に伝達されるトルクを生成するドライブシャフト5を備える内燃エンジン4がある。ドライブトレイン6は、後輪駆動アセンブリに配置されるデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7と、ドライブシャフト5をデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の入力に接続するトランスミッションシャフト8とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、トレインのような態様でセルフロック差動装置9に接続され、セルフロック差動装置9からは一対のアクスルシャフト10が延び、各アクスルシャフト10は駆動輪3と一体である。
【0016】
路上走行車両1は、エンジン4を制御するエンジン4の制御ユニット11と、ドライブトレイン6を制御するドライブトレイン6の制御ユニット12と、バスライン13とを備え、バスライン13は、例えばCAN(カー・エリア・ネットワーク)プロトコルにしたがって製造され、路上走行車両1全体に延びるとともに、2つの制御ユニット11,12が互いに通信できるようにする。言い換えると、エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、バスライン13に接続され、したがって、バスライン13を介して送信されるメッセージによって互いに通信できる。更に、エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、専用の同期ケーブル14によって互いに直接に接続可能であり、専用の同期ケーブル14は、バスライン13によって引き起こされる遅延を伴うことなく、ドライブトレイン6の制御ユニット12からエンジン4の制御ユニット11へ信号を直接に送信できる。或いは、同期ケーブル14がなくてもよく、また、2つの制御ユニット11,12間の全ての通信がバスライン13を使用してやりとりされてもよい。
【0017】
図2によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフト15を備える。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、それぞれがそれぞれの主シャフト15をトランスミッションシャフト8の介在により内燃エンジン4のドライブシャフト5に接続するようになっている2つの同軸クラッチ16を備え、各クラッチ16は、オイルバスクラッチであり、そのため、圧力制御され(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16内のオイルの圧力によって決定される)、別の実施形態によれば、各クラッチ16は、乾式クラッチであり、したがって、位置制御される(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16の可動要素の位置によって決定される)。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0018】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、ローマ数字で示される7つの前進ギア(第1のギアI、第2のギアII、第3のギアIII、第4のギアIV、第5のギアV、第6のギアVI、及び、第7のギアVII)と後進ギア(Rで示される)とを有する。主シャフト15及び副シャフト17は複数のギアトレインによって互いに機械的に結合され、各ギアトレインは、それぞれのギアを形成するとともに、主シャフト15に取り付けられる主ギアホイール18と、副シャフト17に取り付けられる副ギアホイール19とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の正確な動作を可能にするために、全ての奇数ギア(第1のギアI、第3のギアIII、第5のギアV、第7のギアVII)が同じ主シャフト15に結合され、一方、全ての偶数ギア(第2のギアII、第4のギアIV、及び、第6のギアVI)は他方の主シャフト15に結合される。
【0019】
各主ギアホイール18は、常に主シャフト15と一体に回転するようにそれぞれの主シャフト15にスプライン結合されるとともに、それぞれの副ギアホイール19と恒久的に噛み合い、一方、各副ギアホイール19は、副シャフト17に遊動態様で装着される。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は4つの同期装置20を備え、各同期装置は、副シャフト17と同軸に装着され、2つの副ギアホイール19間に配置されるとともに、2つのそれぞれの副ギアホイール19を副シャフト17に対して二者択一的に取り付けるべく(すなわち、2つのそれぞれの副ギアホイール19が副シャフト17と角度的に一体になるようにするべく)動作されるように設計される。言い換えると、各同期装置20は、副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく一方向に移動され得る、或いは、他の副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく他方向に移動され得る。
【0020】
デュアルクラッチトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0021】
図1によれば、路上走行車両1は、ドライバーのための運転位置を確保する乗員室を備え、運転位置は、シート(図示せず)と、ステアリングホイール21と、アクセルペダル22と、ブレーキペダル23と、2つのパドルシフタ24,25とを備え、2つのパドルシフタ24,25はデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7を制御してステアリングホイール21の両側に接続される。アップシフトパドルシフタ24は、アップシフト(すなわち、現在のギアよりも高く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作され、一方、ダウンシフトパドルシフタ25は、ダウンシフト(すなわち、現在のギアよりも低く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作される。
【0022】
(ドライバーがブレーキペダル23に作用することに起因して)路上走行車両1が減速しているとともにドライバーがダウンシフトパドルシフタ25を長時間にわたって(つまり、所定の時間閾値を超える時間にわたって)押圧した状態に保つときであって、前記ダウンシフトパドルシフタが通常は短い瞬間にわたって押されて1つの単一のダウンシフトを要求するとき、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、ドライバーがブレーキをかけている間に複数回ギアダウンして(実際には、ブレーキの最後に行われる)再始動時に想定し得る最大加速度を有するようにブレーキの終了時に(内燃エンジン4の最大回転数に依存する)想定し得る最も低いギアと噛み合うことができるようにする(「シーケンシャルダウンシフト」と呼ばれる)機能を起動させる。「シーケンシャルダウンシフト」として知られるこの機能は、路上走行車両1の減速が中断されるまで(つまり、ドライバーがブレーキペダル23を踏み込むのを止めるまで)複数のダウンシフトの連続的な自動実行(つまり、ドライバーの操作を伴わない)を決定する。
【0023】
言い換えると、ドライバーは、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7を制御するために、1つの単一のアップシフト(つまり、現在のギアよりも高く且つ現在のギアに隣接する新たなギアの噛み合い)を要求するために短く押されるアップシフトパドルシフタと24、1つの単一のダウンシフト(つまり、現在のギアよりも低く且つ現在のギアに隣接する新たなギアの噛み合い)を要求するために短く押されるダウンシフトパドルシフタ25とに依存し得る。ブレーキ(明らかに長いブレーキ)中、ドライバーは、ブレーキペダル23を踏み込んでいる間、ダウンシフトパドルシフタ25を連続して押して、ブレーキの終了時(つまり、ブレーキペダル23が解放されるとき)に想定し得る最も低いギアが噛み合わされるようにブレーキの間に複数回自動的にギアダウンする「シーケンシャルダウンシフト」と呼ばれる機能を起動させることができる。
【0024】
「シーケンシャルダウンシフト」として知られる機能は、一般に、トラック上で疾走する際、直線コースの最後に、ドライバーが次のカーブへの準備に集中しながら理想的なギアの選択を処理するためにこの機能を求めることを選択するときに使用される。
【0025】
ドライブトレイン6の制御ユニット12は、(例えば、ブレーキシステムの油圧回路内のブレーキ流体の圧力を検出することにより、ブレーキペダル23の踏み込みの程度を決定することによって)路上走行車両1の減速の状態を検出すると同時に、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求を検出し(ドライバーがダウンシフトパドルシフタ25を長時間にわたって押圧した状態に保つ場合)、したがって、前述の両方の条件が生じる場合、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、ドライバーの更なる操作に関係なく、路上走行車両1が減速している間に自律的に複数のダウンシフトを連続して実行する。特に、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、複数のダウンシフトの全てに共通する1つの単一のシフト時間間隔Δtの持続時間を決定する(すなわち、前記単一のシフト時間間隔Δtは複数のダウンシフトの全てのダウンシフトに対して同じ方法で適用される)とともに、前記シフト時間間隔Δtが前回のダウンシフトから正確に経過したときに最初のダウンシフトに続いて各ダウンシフトを実行する。
【0026】
好ましい実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出されるのと同じ時点T
1(
図3に示される)に最初のダウンシフトを実行するとともに、シフト時間間隔Δtが前回のダウンシフトから正確に経過するたびに(最初のダウンシフトに続いて)他の全てのダウンシフトを実行し、このようにして、全てのダウンシフトは、同じシフト時間間隔Δt(常に一定、つまり、常に同じである)だけ時間に関して互いから等間隔に隔てられる。すなわち、シフト時間間隔Δtの持続時間は、互いに前後して実行される全てのダウンシフトに関して常に一定のままである。
【0027】
明らかに、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、路上走行車両1の減速状態が終了したとき、すなわち、ドライバーがブレーキペダル23を解放することによりブレーキを終了したときに、複数のダウンシフトを決定する。
【0028】
ダウンシフトが内燃エンジン4の回転速度ωEの過度の増大を引き起こす虞がある場合(すなわち、ダウンシフトによって内燃エンジン4の回転速度ωEが許容される最大速度を超える虞がある場合)にドライブトレイン6の制御ユニット12がダウンシフトを遅延させること、すなわち、必要に応じて、内燃エンジン4の回転速度ωEを過度の増大を引き起こすことなくダウンシフトを実行できるまでダウンシフトが遅延されることに留意すべきである。
【0029】
好ましい実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点T1における内燃エンジン4の回転速度ωEに基づいて、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点T1にデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7に噛み合わされるギアに基づいて、及び/又は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点T1におけるブレーキペダル23の踏み込み度合いに基づいて、シフト時間間隔Δtの持続時間を決定する。
【0030】
想定し得る実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、そのメモリ内に、内燃エンジン4の回転速度ωEに基づいて、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7に噛み合わされるギアに基づいて、及び、ブレーキペダル23の踏み込み度合いに基づいてシフト時間間隔Δtの持続時間を与えるマップを有する。
【0031】
一例として、シフト時間間隔Δtの持続時間は、ブレーキペダル23の高い度合いの踏み込みの場合にはコンマ3~4秒となり、ブレーキペダル23の低い度合いの踏み込みの場合にはコンマ10~12秒となり得る。
【0032】
好ましいが拘束力のない実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、多重ダウンシフトに関するドライバーの要求が検出される時点T1における快適指数(「CMFidx」として知られる)の値を決定し、したがって、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、快適指数の値に基づいてダウンシフトの実行速度を調整し、つまり、ドライバーが快適さを気にかけていることを快適指数が示す場合には、ダウンシフトがよりゆっくりと(スムーズに)実行され、そのため、より小さい縦振動が引き起こされ、一方、ドライバーが快適さを気にかけていないことを快適指数が示す場合には、ダウンシフトがより迅速に(突然に)実行され、そのため、より大きな縦振動が引き起こされる。例えば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、ドライバーによって制御されるセレクタ(「ハンドレバー」としても知られる)の位置に基づいて快適指数の値を決定して、所望の運転スタイルのタイプを示すことができる。
【0033】
図3は、(長時間の)ブレーキ中の多重ダウンシフトの一例を示す。
【0034】
時点T1において、(ブレーキペダル23を既に踏み込んでいる)ドライバーは、ダウンシフトパドルシフタ25を押すとともに、それを長時間にわたって押し続け、したがって、時点T1において、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、最初のダウンシフトを実行する(時点T1を発端として、内燃エンジン4の回転速度ωEがクラッチ16Bの回転速度ωBからクラッチ16Aの回転速度ωAに変化することに留意すべきである)とともに、シフト時間間隔Δtの持続時間を計算する。
【0035】
時点T2(時点T1からシフト時間間隔Δtだけ正確に離れている)において、ドライブトレイン6の制御ユニット12は第2のダウンシフトを自律的に(つまり、ドライバーの更なるコマンドを伴うことなく)実行する(時点T2を発端として、内燃エンジン4の回転速度ωEがクラッチ16Aの回転速度ωAからクラッチ16Bの回転速度ωBに変化することに留意すべきである)。
【0036】
時点T3(時点T2からシフト時間間隔Δtだけ正確に離れている)において、ドライブトレイン6の制御ユニット12は第3のダウンシフトを自律的に(つまり、ドライバーの更なるコマンドを伴うことなく)実行する(時点T3を発端として、内燃エンジン4の回転速度ωEがクラッチ16Bの回転速度ωBからクラッチ16Aの回転速度ωAに変化することに留意すべきである)。
【0037】
時点T4(時点T3からシフト時間間隔Δtだけ正確に離れている)において、ドライブトレイン6の制御ユニット12は第4のダウンシフトを自律的に(つまり、ドライバーの更なるコマンドを伴うことなく)実行する(時点T4を発端として、内燃エンジン4の回転速度ωEがクラッチ16Aの回転速度ωAからクラッチ16Bの回転速度ωBに変化することに留意すべきである)。
【0038】
時点T5(時点T4からシフト時間間隔Δt未満だけ離れているため、実際には行われないダウンシフトにとって早すぎる)において、ドライバーはブレーキペダル23を解放し(つまり、ブレーキ段階を終了する)、したがって、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、路上走行車両1の減速状態が終了するため、複数のダウンシフトを終了する。
【0039】
路上走行車両1のドライブトレイン6が単一クラッチサーボアシストトランスミッションを備えているときでさえ、大きな変更を伴うことなく、先に開示されたことを適用できる。
【0040】
本明細書中に記載される実施形態は、この理由で本発明の保護の範囲を越えることなく、互いに組み合わせられ得る。
【0041】
前述の制御方法は様々な利点を有する。
【0042】
まず第一に、前述の制御方法は、シフト時間間隔Δtの持続時間を与える法則を比較的簡単に且つ迅速な態様で決定して設定できるため、調整段階を大幅に削減及び簡略化できるようにする。
【0043】
更に、前述の制御方法は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7をそれらを「自然」であると見なすドライバーによって一般に認められる(つまり、ドライバーの期待に対応する)方法で制御する。
【0044】
最後に、前述の制御方法は、その実行が限られた記憶空間と低い計算能力とを必要とするため、実施するのが簡単で経済的である。
【符号の説明】
【0045】
1 路上走行車両
2 前輪
3 後輪
4 エンジン
5 ドライブシャフト
6 ドライブトレイン
7 トランスミッション
8 トランスミッションシャフト
9 差動装置
10 アクスルシャフト
11 エンジン制御ユニット
12 ドライブトレイン制御ユニット
13 バスライン
14 同期ケーブル
15 主シャフト
16 クラッチ
17 副シャフト
18 主ギアホイール
19 副ギアホイール
20 同期装置
21 ステアリングホイール
22 アクセルペダル
23 ブレーキペダル
24 アップシフトパドルシフタ
25 ダウンシフトパドルシフタ
ωE 回転速度
ωA 回転速度
ωB 回転速度
T1 時点
T2 時点
T3 時点
T4 時点
T5 時点
Δt 時間間隔