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特許7607423リソグラフィ装置の制御方法、リソグラフィ装置、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置の制御方法、リソグラフィ装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20241220BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
G03F9/00 H
H01L21/68 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020158969
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052530
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻川 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】本島 順一
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157262(WO,A1)
【文献】特開2015-138806(JP,A)
【文献】特開2002-313710(JP,A)
【文献】特開2001-266142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 9/00
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置の制御方法であって、
基板の計測領域を撮像部により撮像して画像を得る取得工程と、
前記得られた画像のエントロピーに関する評価値を算出する算出工程と、
前記算出された評価値が所定の基準を満たす場合に、前記画像の情報を基板の位置計測のための情報として登録する登録工程と、
を有し、
前記算出工程は、
前記画像を分割して得た複数の領域それぞれにおける画像のエントロピーを算出する工程と、
前記算出された各領域の画像のエントロピーに基づいて前記評価値を算出する工程と、
を含む、ことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
リソグラフィ装置の制御方法であって、
基板の計測領域を撮像部により撮像して画像を得る取得工程と、
前記得られた画像のエントロピーに関する評価値を算出する算出工程と、
前記算出された評価値が所定の基準を満たす場合に、前記画像の情報を基板の位置計測のための情報として登録する登録工程と、
を有し、
前記評価値は、前記画像に表されているパターンの分布の偏りおよび前記パターンの対称性の少なくともいずれかを評価するための値であ
前記算出工程は、
前記画像を分割して得た複数の領域それぞれにおける画像のエントロピーを算出する工程と、
前記算出された各領域の画像のエントロピーに基づいて前記評価値を算出する工程と、
を含む、ことを特徴とする制御方法。
【請求項3】
前記評価値は、前記画像の情報量、前記画像に表されているパターンの分布の偏り、前記パターンの対称性、の少なくともいずれかを評価するための値である、ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記評価値は、前記情報量を表す値である、前記算出された各領域の画像のエントロピーの合計を示す全体エントロピーを含む、ことを特徴とする請求項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記評価値は、前記偏りを表す値である、前記算出された各領域の画像のエントロピーの分散を示すエントロピー分散値を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の制御方法。
【請求項6】
前記評価値は、前記対称性を表す値である、前記画像の中心に対して対称な位置にある領域の画像のエントロピーの差分を含む、ことを特徴とする請求項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記評価値は、
前記情報量を表す値である、前記算出された各領域の画像のエントロピーの合計を示す全体エントロピーを含む項と、
前記偏りを表す値である、前記算出された各領域の画像のエントロピーの分散を示すエントロピー分散値を含む項と、
前記対称性を表す値である、前記画像の中心に対して対称な位置にある領域の画像のエントロピーの差分を含む項と、
を含む評価式を用いて算出される、ことを特徴とする請求項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記登録工程は、前記算出された評価値が所定の基準を満たす場合に、前記画像を基板の位置計測用のマークの画像として登録する、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記算出された評価値が前記所定の基準を満たさない場合に、前記複数の領域のそれぞれを更に分割して得た複数のサブ領域それぞれにおける画像のエントロピーを算出する工程と、
前記算出された各サブ領域のエントロピーに基づいて前記複数の領域それぞれのエントロピーに関する評価値を算出する工程と、
前記複数の領域のうち前記評価値が最大となる領域の中心が前記撮像部の視野中心に位置するように前記基板を保持するステージの位置を調整する工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1、乃至のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記算出された評価値が前記所定の基準を満たさない場合、前記算出工程において前記評価値を求める対象領域を前記画像の部分領域に変更する工程を更に有し、
前記部分領域に対して前記算出工程および前記登録工程が再び実行される、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
レチクルのデザイン領域を、それぞれが前記画像と同じまたそれより小さい複数の領域に分割し、前記分割された複数の領域それぞれにおける画像のエントロピーに関する評価値を算出する工程と、
前記算出された各領域の評価値に基づいて、前記デザイン領域における、マークとして登録されうるパターンを形成する位置を求める工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項12】
基板を保持する保持部と、
前記保持部によって保持された前記基板の計測領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部により得られた画像を処理する処理部と、を有し、
前記処理部は、前記画像のエントロピーに関する評価値を算出し、前記算出された評価値が所定の基準を満たす場合に、前記画像の情報を基板の位置計測のための情報として登録するように構成され、
前記処理部は、
前記画像を分割して得た複数の領域それぞれにおける画像のエントロピーを算出し、
前記算出された各領域の画像のエントロピーに基づいて前記評価値を算出する、
ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項13】
基板を保持する保持部と、
前記保持部によって保持された前記基板の計測領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部により得られた画像を処理する処理部と、を有し、
前記処理部は、前記画像のエントロピーに関する評価値を算出し、前記算出された評価値が所定の基準を満たす場合に、前記画像の情報を基板の位置計測のための情報として登録するように構成され、
前記評価値は、前記画像に表されているパターンの分布の偏りおよび前記パターンの対称性の少なくともいずれかを評価するための値であ
処理部は、
前記画像を分割して得た複数の領域それぞれにおける画像のエントロピーを算出し、
前記算出された各領域の画像のエントロピーに基づいて前記評価値を算出する、ように構成される、
ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項14】
請求項1または1に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板の加工を行う工程と、
を有し、前記加工が行われた前記基板から物品を製造する、ことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置の制御方法、リソグラフィ装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、任意のパターンをマークとして登録しておき、登録されたパターンを用いて基板の位置を計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-032521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マークとして登録されるパターンの形状が任意である場合、その形状によっては計測系のレンズ収差の影響により計測精度が低下しうる。特に、パターンの形状が計測中心に対して非対称に分布している場合、計測中心に対して等方性をもって広がるレンズ収差による歪みの影響を受ける。つまり、パターンの形状が計測中心に対して非対称である場合、パターンの一方の片側で発生する歪み量と他方の片側で発生する歪み量が異なる。そのため、送り込まれるパターンの位置によってパターンが歪む量が変わることになり、計測リニアリティが低下する。また、マークとして認識できるパターンの情報量が少ない場合、電気ノイズ等の影響を受け、計測再現性および計測リニアリティが共に低下する。
【0005】
本発明は、例えば、基板の位置計測の精度向上に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、リソグラフィ装置の制御方法であって、基板の計測領域を撮像部により撮像して画像を得る取得工程と、前記得られた画像のエントロピーに関する評価値を算出する算出工程と、前記算出された評価値が所定の基準を満たす場合に、前記画像の情報を基板の位置計測のための情報として登録する登録工程と、を有し、前記算出工程は、前記画像を分割して得た複数の領域それぞれにおける画像のエントロピーを算出する工程と、前記算出された各領域の画像のエントロピーに基づいて前記評価値を算出する工程と、を含む、ことを特徴とする制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、基板の位置計測の精度向上に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】露光装置の構成を示す図。
図2】基板のレイアウトを示す図。
図3】マーク登録処理のフローチャート。
図4】マーク登録工程のフローチャート。
図5】エントロピー評価値算出工程のフローチャート。
図6】画像の領域分割の例を示す図。
図7】領域のサブ領域への分割の例を示す図。
図8】基板ステージの駆動量の決定工程を説明する図。
図9】本実施形態で使用する領域縮小レイアウト図
図10】マーク登録工程のフローチャート。
図11】レチクルのデザイン領域に基づく領域分割の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
本発明は、原版のパターンを基板に形成するリソグラフィ装置に関するものである。以下では、本発明がリソグラフィ装置の一例である露光装置に適用された例を説明する。ただし、リソグラフィ装置は露光装置に限らず、他のリソグラフィ装置であってもよい。例えば、リソグラフィ装置は、荷電粒子線で基板(の上の感光剤)に描画を行う描画装置であってもよい。あるいは、リソグラフィ装置は、基板上のインプリント材を型で成形して基板にパターンを形成するインプリント装置であってもよい。
【0011】
図1は、実施形態に係る露光装置の構成を示す図である。また、図2は、図1の露光装置によって処理される基板Wのレイアウトを示す図である。図2において、基板Wにはマトリクス状に配列された複数のショット領域が形成されている。所定の1つのショット領域には、基板Wの位置計測用のマークとして登録されうるパターンを有する計測領域RAが形成されている。また、所定の他の1つのショット領域には、基板Wの位置計測用のマークとして登録されうるパターンを有する計測領域RBが形成されている。基板Wの外周部の一部には、メカプリアライメントにおいて使用されるノッチNが形成されている。なお、ノッチNのかわりに、オリエンテーションフラットが形成されていてもよい。
【0012】
図1において、レチクルステージRSは、原版(マスク)であるレチクルRを保持して移動するステージである。照明光学系Iは、レチクルステージRSによって保持されたレチクルRを照明する。レチクルRには、基板Wに転写すべきパターン(例えば回路パターン)が描画されている。投影光学系Pは、レチクルRのパターンを基板Wに投影する。
【0013】
基板搬送部WFは、装置に対して基板Wの搬入および搬出を行う。メカプリアライメントユニットMAは、基板WのノッチNを検出して基板Wの位置および回転角の少なくとも一方を調整するプリアライメントを行う。基板ステージSTGは、基板Wを保持して移動する保持部である。基板ステージSTGの上には、基板Wを保持するチャックCHが設置されている。アライメントスコープASは、ハーフミラーMと撮像部Cとを含みうる。照明部LIからの光は、ハーフミラーMで反射されて基板Wを照明する。基板Wで反射された光は、ハーフミラーMを介して撮像部Cに入射する。撮像部Cは、入射した光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する。画像信号は処理部IPに転送される。
【0014】
処理部IPは、アライメントスコープASにより取得された画像に基づき、例えばテンプレートマッチング技術を用いてマーク位置計測を行う。処理部IPは、不図示のCPUおよびメモリMEM1を含むコンピュータ装置でありうる。制御部MCは、露光処理に関して各部を統括的に制御する。例えば、制御部MCは、処理部IPからの位置計測上方に基づいて、基板ステージSTGを駆動し、基板Wの位置合わせを行い、レチクルRのパターンを投影光学系Pを介して基板Wを露光する露光処理を実行する。制御部MCは、不図示のCPUおよびメモリMEM2を含むコンピュータ装置でありうる。なお、処理部IPと制御部MCとは別々の装置として構成されていてもよいし、処理部IPの機能と制御部MCの機能とが1つのコンピュータ装置によって実現されていてもよい。
【0015】
図3図5のフローチャートを参照して、実施形態におけるマーク登録処理について説明する。S31では、基板Wが基板搬送部WFによって露光装置内に搬入され、メカプリアライメントユニットMAの上に置かれる。メカプリアライメントユニットMAは、基板WのノッチNを検出することによって基板Wの位置または回転角を調整するメカプリアライメントを行う。S32では、基板搬送部WFによって基板Wが基板ステージSTGのチャックCHの上に載置される。チャックCHは、載置された基板Wを例えば真空吸引によって保持する。
【0016】
S33では、制御部MCは、基板ステージSTGを制御して基板Wの計測領域RAの中心座標をアライメントスコープASの視野中心に送り込む。
【0017】
S34で、処理部IPは、マーク登録工程を実行する。図4に、S34におけるマーク登録工程の詳細フローチャートが示されている。S401で、制御部MCは、照明部LIを点灯させて基板Wを照明する。これにより、撮像部Cは基板の計測領域RAを撮像して画像(パターン画像)を得ることができる。具体的には、基板Wで反射された光は、アライメントスコープASに入射し、ハーフミラーMを介して撮像部Cへ到達する。撮像部Cは、入射した光を撮像素子で捉えてパターン画像の画像信号を生成する。画像信号は処理部IPに転送され、例えばメモリMEM1に記憶される。
【0018】
S402で、処理部IPは、得られた画像のエントロピーに関する評価値を算出する工程(算出工程)を実行する。図5に、S402における算出工程の詳細フローチャートが示されている。S51で、処理部IPは、画像の領域分割を設定する。ここでは、例えば図6に示すように、画像が複数の領域(例えば4つの領域)に分割される。ただし、分割される領域の数は4つに限定されるものではない。
【0019】
ここで、以降の工程で用いられる数式のセットを示す。ただし、領域iにおけるエントロピーをEi、領域内での輝度値kの発生確率をPkとする。
【0020】
【数1】
【0021】
S52で、処理部IPは、以下に示す式(1)および式(2)を用いて、各領域の画像のエントロピーの合計を示す全体エントロピーEsumを求める。ここでは、図6に示すように画像を4つの領域に分割しているから、iは1~4の値をとる。また、輝度値kは、8bit階調を想定して0~255の値をとるが、kの範囲はこれに限定されない。全体エントロピーEsumは画像全体の情報量を表し、Esumが大きいほど全体の情報量が多いことを示す。
【0022】
S53では、処理部IPは、式(1)を用いて、領域ごとの画像エントロピーEiを求める。S54では、処理部IPは、式(3)、式(4)を用いて、各領域の画像のエントロピーの分散を示すエントロピー分散値Evarを求める。エントロピー分散値Evarは、画像に表されているパターンの分布の偏りを表し、エントロピー分散値Evarが小さいほどパターンが均等な(偏りがない)分布となっていることを示す。
【0023】
S55およびS56では、処理部IPは、複数の領域のうち画像の中心に対して対称な位置にある領域の画像のエントロピーの差分を求める。例えば、S55では、処理部IPは、式(5)、式(6)、式(9)を用いて、上側領域(図6の領域1,2)と下側領域(図6の領域3,4)とのエントロピー差分値Ediff1を求める。エントロピー差分値Ediff1が小さいほど、上側領域と下側領域のパターンの対称性が高い。S56では、処理部IPは、式(7)、式(8)、式(10)を用いて、左側領域(図6の領域1,3)と右側領域(図6の領域2,4)とのエントロピー差分値Ediff2を求める。エントロピー差分値Ediff2が小さいほど、左側領域と右側領域のパターンの対称性が高い。
【0024】
S57では、処理部IPは、S52~S56で算出された、全体エントロピーEsum、エントロピー分散値Evar、エントロピー差分値Ediff1およびEdiff2を式(11)に適用することにより、エントロピー評価値Etotalを求める。評価式である式(11)の右辺第1項は、全体エントロピーEsumが高いほど評価値は高まることを表している。上記したように、全体エントロピーEsumは、パターン画像全体の情報量を表している。情報量が多いほど計測精度が高まる(マークの本数が多くなることと等価)ことから、全体エントロピーEsumが高いほど評価値は高まる。式(11)の右辺第2項は、エントロピー分散値Evarが小さいほど評価値が高まることを表している。エントロピー分散値Evarが小さいほど、パターンが均等な(偏りがない)分布となり、計測系の収差の影響が小さくなる。式(11)の右辺第3項および第4項はそれぞれ、エントロピー差分値Ediff1およびEdiff2が小さいほどパターンの対称性が高いことを示し、評価値が高まる。
【0025】
以上でS402におけるサブプロセスが完了する。
【0026】
図4に戻り、S403で、処理部IPは、S402で算出されたエントロピー評価値Etotalが所定の基準を満たすか否かを判定する。例えば、処理部IPは、S402で算出されたエントロピー評価値Etotalが所定の閾値以上であるかどうかを判定する。エントロピー評価値Etotalが閾値以上である場合、処理部IPは、S404に進み、S401で得られた画像の情報を基板の位置計測のための情報として登録する。「画像の情報」とは、画像そのものでもよいし、画像の特徴量であってもよい。また、画像の情報には、基板における当該画像の位置の情報が含まれていてもよい。ここでは、処理部IPは、S401で得られた画像を基板上の計測領域RAのマーク画像として登録する。登録された画像は、例えば制御部MCのメモリMEM2に記憶される。
【0027】
図3に戻り、S35で、制御部MCは、基板ステージSTGを制御して基板Wの計測領域RBの中心座標をアライメントスコープASの視野中心に送り込む。その後、S36で、計測領域RBに対するマーク登録工程を実行する。このマーク登録工程は、上述したS34のマーク登録工程と同様の処理となるため、説明は省略する。
【0028】
次に、図4のS403において、エントロピー評価値Etotalが閾値以上でない(すなわち所定の基準を満たさない)と判定された場合について説明する。この場合、処理はS405に進む。S405で、処理部IPは、図6の領域1を、図7に示すように更に4つのサブ領域1-1,1-2,1-3,1-4に分割し、図5のフローチャートに従い各サブ領域の画像のエントロピーを算出し、領域1のエントロピー評価値を求める。なお、図7の例では各領域を更に4つのサブ領域に分割しているが、分割数はこれに限定されない。その後、S406、S407、S408で、処理部IPは、領域2,3,4についても同様にエントロピー評価値を求める。
【0029】
S409で、制御部MCは、S405~S408で求めたエントロピー評価値に基づいて基板ステージSTGの駆動量を決定する。例えば、制御部MCは、S405~S408で求めたエントロピー評価値が最大となる領域を選択する。図8には、図7に対応する画像の分割レイアウトが示されている。図8において、画像の横方向の画素数をXPIX、縦方向の画素数をYPIXとする。ここで一例として、図6の領域4のエントロピー評価値が最大となった場合を想定する。この場合、図8において、領域4の中心OFSが画像中心ORG(アライメントスコープAS(撮像部C)の視野中心)に送り込むための駆動量は、Δ(1/4)XPIX、Δ(1/4)YPIXとすることができる。
【0030】
S410で、制御部MCは、S409で決定された駆動量、基板ステージSTGを駆動する。こうして、エントロピー評価値が最大となる領域の中心が撮像部Cの視野中心に位置するように基板ステージSTGの位置が調整される。
【0031】
その後、処理はS401に戻り、再度同様の工程でマーク画像登録を行う。これによりエントロピー評価値を最大化する画像の領域を決定することができる。
【0032】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態では、図3のマーク登録工程(S34、S36)の詳細フローを図4に示したが、図4の代替例を図10に示す。
【0033】
図10のS1001、S1002、S1003、S1004はそれぞれ、図4のS401、S402、S403、S404と同様である。図10において、S1003でエントロピー評価値Etotalが閾値以上でないと判定された場合、処理はS1005に進む。S1005では、処理部IPは、エントロピー評価値Etotalを求める対象領域を、図9に示すように、オリジナルの画像の領域OARの部分領域MARに変更する。その後、処理はS1002に戻る。S1002では、処理部IPは、図5のフローに従い、部分領域MARにおける領域1~4についてエントロピー評価値を求める。その後、S403で、このエントロピー評価値が閾値以上となれば、S404で、部分領域MARの画像がマーク画像として登録される。登録された画像は、例えば制御部MCのメモリMEM2に記憶される。
【0034】
<第3実施形態>
図11には、レチクルR内の、基板に露光されるべき回路パターン等のパターンが形成されたデザイン領域が示されている。ここで、レチクルRのデザイン領域のX方向の寸法をRXNM、Y方向の寸法をRYNMとし、撮像部Cによって撮像される画像のX方向の寸法をXNM、YNMとする。処理部IPは、レチクルRのデザイン領域を、それぞれが画像の寸法XNM、YNMと同じあるいはそれより小さい、複数の領域に分割し、それぞれの分割領域においてエントロピー評価値を算出する。その後、処理部IPは、算出された各領域のエントロピー評価値に基づいて、デザイン領域における、マークとして登録されうるパターンを形成する位置を求める。例えば、処理部IPは、各分割領域について、エントロピー評価値が閾値以上であるか否かを判定する。エントロピー評価値が閾値以上である場合、その分割領域は、レチクルRのデザイン領域のうち計測に適した領域であり、マークとして登録されうるパターンの形成に適した領域であると判断される。
【0035】
これにより、レチクルRのデザイン領域上の計測に適した位置(マークとして登録されうるパターンを形成するのに適した位置)を予め求めることができる。
【0036】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態における物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記のリソグラフィ装置(露光装置やインプリント装置、描画装置など)を用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、かかる工程でパターンが転写された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0037】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0038】
W:基板、R:レチクル、MA:メカプリアライメントユニット、STG:基板ステージ、CH:チャック、AS:アライメントスコープ、IP:処理部、MC:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11