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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】血栓除去デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20241220BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20241220BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20241220BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/14 512
A61M25/14 514
A61M25/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020160203
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053391
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】垂永 明彦
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0174355(US,A1)
【文献】特開2002-325846(JP,A)
【文献】特表2011-517424(JP,A)
【文献】特表2014-533131(JP,A)
【文献】特表2019-524346(JP,A)
【文献】特表2018-507037(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178197(WO,A1)
【文献】特開2015-181510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61M 25/14
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿うデバイスルーメンが形成された第一カテーテルと、
吸引ルーメンが前記軸方向に沿い形成されており、前記デバイスルーメンに挿通される第二カテーテルと、
前記デバイスルーメンを移動可能であり、前記デバイスルーメンの遠位開口から突出し前記第一カテーテルの径方向において外側に向かって拡張することで血栓を捕捉可能な拡張状態となる拡張部材と、
前記吸引ルーメンに挿通可能であり、前記血栓に物理的刺激を加えて破壊する第一破壊デバイスと、
を備え、
前記第一カテーテルは、周方向に伸縮性を有する伸縮部を、前記遠位開口が形成されている遠位側端部に有し、
前記拡張状態の前記拡張部材が前記遠位開口を通じて前記デバイスルーメン内に収容されるときに、前記遠位開口は、前記伸縮部が伸長することで拡張可能であり、
前記第二カテーテルは、
前記拡張部材を遠位側端部で支持しており、
前記デバイスルーメン内において前記軸方向に移動可能であり、
前記第二カテーテルの近位側端部には、当該吸引ルーメン内の吸引により前記拡張部材が捕捉する前記血栓を近位側へ吸引する吸引装置が接続されている血栓除去デバイス。
【請求項2】
前記デバイスルーメン内の前記第二カテーテルの外側に配置可能であり、前記第二カテーテルに物理的刺激を加えて前記血栓を破壊する第二破壊デバイスを更に備える請求項に記載の血栓除去デバイス。
【請求項3】
前記第一カテーテルの遠位側端部に設けられ、流体の供給により拡張可能なバルーンを更に備える請求項1又は2に記載の血栓除去デバイス。
【請求項4】
前記第一カテーテルの遠位側端部には、前記軸方向に沿って延在する、近位側端部よりも肉厚が薄い薄肉部が形成され、前記薄肉部に前記伸縮部が位置する請求項1からのいずれか一項に記載の血栓除去デバイス。
【請求項5】
前記伸縮部は、前記第一カテーテルの遠位側端部において、前記伸縮部が収縮状態である場合の遠位側端部における周長の50%以上80%以下の範囲を占めている請求項1からのいずれか1項に記載の血栓除去デバイス。
【請求項6】
前記軸方向における前記伸縮部の長さは、前記軸方向における前記拡張部材の長さより長い請求項1からのいずれか1項に記載の血栓除去デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血栓除去デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血栓除去デバイスとは、血管内に挿入し、血栓を体外に取り出す治療を行うための医療器具である。特許文献1には、経皮的血栓除去デバイスが記載されている。この経皮的血栓除去デバイスは、挿入具と除去具とを備えている。挿入具は、外側シースを備え、外側シースの近位端側に外側シース基部体を備えている。除去具は内側シースを備え、内側シースの後端側に内側シース基部体を備えている。外側シースの内側には内側シースが挿入される。内側シースの先端には展開可能な除去部材が設けられている。この経皮的血栓除去デバイスでは、除去部材の先端の径が外側シースの内径よりも拡張し、捕捉口の径が拡張することにより、除去部材の前方の血栓を捕捉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-319272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような血栓除去デバイスでは、血栓を取りこぼす場合があった。特に血栓が大きい場合に取りこぼしが起きやすく、また、体外への取り出しが困難となる場合があった。そのため、血栓を取りこぼすことなく体外に取り出すことのできる血栓除去デバイスの提供が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、血栓を取りこぼすことなく体外に取り出すことができる血栓除去デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る血栓除去デバイスは、
軸方向に沿うデバイスルーメンが形成された第一カテーテルと、
前記デバイスルーメンを移動可能であり、前記デバイスルーメンの遠位開口から突出し前記第一カテーテルの径方向において外側に向かって拡張することで血栓を捕捉可能な拡張状態となる拡張部材と、
を備え、
前記第一カテーテルは、周方向に伸縮性を有する伸縮部を、前記遠位開口が形成されている遠位側端部に有し、
前記拡張状態の前記拡張部材が前記遠位開口を通じて前記デバイスルーメン内に収容されるときに、前記遠位開口は、前記伸縮部が伸長することで拡張可能とされている。
【0007】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記デバイスルーメンに挿通される第二カテーテルを更に備え、
前記第二カテーテルは、
前記拡張部材を遠位側端部で支持しており、
前記デバイスルーメン内において前記軸方向に移動可能であってもよい。
【0008】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記第二カテーテルには吸引ルーメンが前記軸方向に沿い形成されており、前記第二カテーテルの近位側端部には、当該吸引ルーメン内の吸引により前記拡張部材が捕捉する前記血栓を近位側へ吸引する吸引装置が接続されていてもよい。
【0009】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記吸引ルーメンに挿通可能であり、前記血栓に物理的刺激を加えて破壊する第一破壊デバイスを更に備えてもよい。
【0010】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記デバイスルーメン内の前記第二カテーテルの外側に配置可能であり、前記第二カテーテルに物理的刺激を加えて前記血栓を破壊する第二破壊デバイスを更に備えてもよい。
【0011】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記第一カテーテルの遠位側端部に設けられ、流体の供給により拡張可能なバルーンを更に備えてもよい。
【0012】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記第一カテーテルは、ガイドワイヤが挿通されるワイヤルーメンが前記軸方向に沿い形成されており、
前記ワイヤルーメン部は、前記デバイスルーメンの外部に配置されてもよい。
【0013】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記第一カテーテルの遠位側端部には、前記軸方向に沿って延在する薄肉部が形成され、前記薄肉部に前記伸縮部が位置していてもよい。
【0014】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記伸縮部は、前記第一カテーテルの遠位側端部において、遠位側端部における周長の50%以上80%以下の範囲を占めていてもよい。
【0015】
本発明に係る血栓除去デバイスでは、更に、
前記軸方向における前記伸縮部の長さは、前記軸方向における前記拡張部材の長さより長くてもよい。
【発明の効果】
【0016】
血栓を取りこぼすことなく体外に取り出すことができる血栓除去デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】血栓除去デバイスの全体構成を説明する図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3図1のIII-III矢視断面図である。
図4図1のIV-IV矢視断面図である。
図5】拡張部材が伸縮部よりも近位側のデバイスルーメン内に位置する場合の第一シャフト先端部の側面図である。
図6】拡張部材が軸方向において伸縮部が延在する範囲のデバイスルーメン内に位置する場合の第一シャフト先端部の側面図である。
図7】拡張部がデバイスルーメン内から遠位側に露出した場合の第一シャフト先端部の側面図である。
図8】第一カテーテルの先端を血管内の血栓の近傍まで導入した状態の第一カテーテルの側面図である。
図9】第一カテーテルの先端を血管内の血栓の近傍でアンカリングした状態の第一カテーテルの側面図である。
図10】拡張部で血栓を捕捉している状態の第一カテーテルの側面図である。
図11】血栓を捕捉した拡張部がデバイスルーメン内に収容される途中の状態の説明図である。
図12】血栓を捕捉した拡張部をデバイスルーメン内に収容した状態の説明図である。
図13図12のXII-XII矢視断面図である。
図14】血栓除去デバイスが破壊デバイスを備えた場合の第一シャフトの断面図である。
図15】別の形態の第一シャフトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る血栓除去デバイスについて説明する。本実施形態に係る血栓除去デバイスは、血管内に挿入し、血栓を吸引除去する治療を行う医療器具である。
【0019】
〔第一実施形態〕
(全体構成の説明)
図1に示すように、本実施形態に係る血栓除去デバイス100(以下、デバイス100と記載する)は、その軸方向(延在方向)に沿いデバイスルーメン11(図2から図4参照)が形成された長尺状の部材である第一カテーテル1と、デバイスルーメン11に挿通される長尺状の部材である第二カテーテル2と、第二カテーテル2の先端部に支持されており、デバイスルーメン11を移動可能な筒状の拡張部材3と、第一カテーテル1の遠位側端部に固定されたバルーンBと、第一カテーテル1の近位側端部に対して接続されており、第一カテーテル1や第二カテーテル2の操作インタフェースであるカテーテルハブH(以下、ハブHと記載する)と、第二カテーテル2に接続された血栓の吸引装置Sと、を備えている。第一カテーテル1の遠位側端部の一部であって、デバイスルーメン11の壁部となる部分の一部は伸縮性を有する材料で形成された伸縮部5とされている。拡張部材3は、デバイスルーメン11の遠位開口から突出し、第一カテーテル1の径方向(以下、単に「径方向」と記載する。)において外側に向かって拡張することで、血栓を捕捉可能な拡張状態となる。第一カテーテル1は、周方向に伸縮性を有する伸縮部5を、遠位開口が形成されている遠位側端部に有する。そのため、血栓を捕捉している拡張状態の拡張部材3が遠位開口を通じてデバイスルーメン11内に収容されるときに、遠位開口は、伸縮部5が伸長することで拡張可能である。これにより、拡張状態の拡張部材3を、血栓を捕捉した状態のまま、第一カテーテル1のデバイスルーメン11内に引き込むことができる。そのため、拡張部材3で捕捉した血栓が血管内に飛び出し難くなり、血栓の取りこぼしが発生することを抑制できる。
【0020】
以下では、第一カテーテル1の軸方向と同じ方向を単に軸方向と記載する場合がある。なお、近位側とは、第一カテーテル1の軸方向において、デバイス100の使用時に体外に位置する側のことを言う。遠位側とは、第一カテーテル1の軸方向において、近位側とは逆の側である。遠位側とはすなわち、デバイス100の使用時に、体内に挿入される側のことを言う。
【0021】
第二カテーテル2には、その軸方向(第一カテーテル1の軸方向と同じ方向)に沿い吸引ルーメン21(図2から図4参照)が形成されている。吸引ルーメン21は吸引装置S(図1参照)に連通接続されている。第二カテーテル2は拡張部材3を遠位側端部で支持している。第二カテーテル2は、デバイスルーメン11内において軸方向に移動可能である。
【0022】
拡張部材3は、第二カテーテル2の軸方向の移動によりデバイスルーメン11を軸方向に移動可能である。拡張部材3は、その一部がデバイスルーメン11の遠位開口より遠位側に突出して露出する状態と、その全部がデバイスルーメン11内に収容される状態と、で第一カテーテル1に対して軸方向に相対移動可能である。換言すれば、拡張部材3は、デバイスルーメン11の内部と外部とに渡り、近位側と遠位側とに進退自在である。本実施形態の拡張部材3は、径方向外側に向かって拡張可能である。より具体的に、本実施形態の拡張部材3は、ストラットにより構成され、円筒状の外周を形作る網筒部である。拡張部材3としての網筒部は、その軸方向が第一カテーテル1の軸方向に沿うようにした状態で、第一カテーテル1の軸方向にデバイスルーメン11内を移動可能である。そして、拡張部材3としての網筒部は、その一部がデバイスルーメン11の遠位開口より遠位側に突出することで、その突出部が、径方向外側に向かって拡張可能となる。拡張部材3としての網筒部のうちデバイスルーメン11の遠位開口から突出する突出部は、径方向外側に拡張することで、その内径が、デバイスルーメン11の直径より大きくなる。換言すれば、拡張部材3としての網筒部の遠位端に位置する、血栓を捕捉する捕捉口の内径が、デバイスルーメン11の遠位開口の直径より大きくなる。そのため、拡張部材3の捕捉口を通じて血栓を捕捉し易くなる。
【0023】
デバイス100は、拡張部材3を第一カテーテル1のデバイスルーメン11の遠位開口から突出させることで、拡張部材3を拡張させる。そして、拡張部材3により血栓を捕捉し、血栓を捕捉した拡張部材3をデバイスルーメン11に再び収容することで、血栓を血管から除去することができる。第一カテーテル1は、伸縮部5の伸長によりデバイスルーメン11の遠位側端部の周長を長くし、その直径を拡張できる。これにより、デバイス100は、血栓を捕捉した拡張部材3の最大外径がデバイスルーメン11の遠位開口の直径よりも大きい場合であっても、デバイスルーメン11の遠位開口の直径を拡張させて拡張部材3をデバイスルーメン11に収容可能である。血栓は、例えば吸引ルーメン21を介して吸引装置S(図1参照)により近位側へ吸引されて体外に取り出される。血栓除去に関する詳細は後述する。
【0024】
(各部の説明)
図1に示すように、第一カテーテル1は、ナイロン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの高分子材料で形成された長尺状部材である。図1図2に示すように、第一カテーテル1の遠位側端部にはバルーンBが固定されている。図1及び図2に示すように、第一カテーテル1の遠位側端部の一部は、弾性体で形成された伸縮部5となっている。換言すれば、第一カテーテル1の遠位側端部の周方向の一部の領域は、弾性体で形成された伸縮部5となっている。図3図4に示すように、第一カテーテル1には、軸方向に沿う貫通孔としてデバイスルーメン11、ワイヤルーメン12、インフレーションルーメン13が形成されている。第一カテーテル1の先端部には、図1に示すように、X線電子写真による造影を可能とするマーカMを配置することができる。
【0025】
図3図4に示すように、デバイスルーメン11には拡張部材3及び第二カテーテル2が挿通される。デバイスルーメン11は、第一カテーテル1の遠位側における先端部である遠位側端部に形成された遠位開口を通じて外部に開口している。デバイスルーメン11は、遠位側端部に係止された遠位開口からハブH(図1参照)に渡り延在している。ハブHに設けられたポートなどを介して拡張部材3及び第二カテーテル2がデバイスルーメン11に挿通可能である。デバイスルーメン11の軸方向に直交する断面は、一例として円形状である。デバイスルーメン11の軸方向に直交する断面が円形状に形成されることで、後述する第二カテーテル2の摺動が滑らかになる。デバイスルーメン11の壁面(第一カテーテル1の内壁面)には親水性のコーティングを施すことが好ましい。これにより、後述する第二カテーテル2の摺動が更に滑らかになる。好適な親水性のコーティング剤としては、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート-ジメチルアクリルアミド(PGMA-DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0026】
ワイヤルーメン12には第一カテーテル1を血管内などで案内するためのガイドワイヤが挿通される。ワイヤルーメン12は、第一カテーテル1の遠位側端部に位置する遠位開口から、第一カテーテル1の近位側の基端部である近位側端部まで延在している。ワイヤルーメン12は、ハブH内の空間を介して外部に開口している。ワイヤルーメン12の軸方向に直交する断面は、一例として円形状である。
【0027】
インフレーションルーメン13は、バルーンBに流体を供給する流路である。なお、流体の一例は、X線電子写真用の造影剤を含有する生理食塩水である。インフレーションルーメン13は、バルーンBの内部空間に連通している。インフレーションルーメン13は、ハブHに渡り延在しており、ハブHに設けられたポートなどを介して流体の供給を受けることができる。インフレーションルーメン13の軸方向に直交する断面は、一例として円形状である。
【0028】
伸縮部5は例えばシリコーンゴムなどの高分子材料であって、伸縮性のある弾性体(いわゆるエラストマー、以下、単にエラストマーと記載する)で形成されている。これにより、伸縮部5は、周方向への伸長を伴う弾性変形が可能である。伸縮部5は、軸方向に沿い、第一カテーテル1の遠位側の端(以下、単に「遠位端」と記載する。)から近位側に延在している。図2に示すように、伸縮部5は、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の壁部の一部を形成している。伸縮部5の伸長により、デバイスルーメン11の遠位開口を拡張可能である。すなわち、デバイスルーメン11の遠位側端部の周長を長くする拡張が可能である。これにより、デバイスルーメン11の遠位側端部の最大の直径を大きくする拡張が可能とされている。またこれにより、デバイスルーメン11の断面積を増やす拡張が可能とされている。なお、本実施形態におけるデバイスルーメン11の周長とは、第一カテーテル1の軸方向に直交する断面における、デバイスルーメン11の孔の円周長のことである。また、本実施形態におけるデバイスルーメン11の遠位側端部の最大の直径、とは、第一カテーテル1の軸方向に直交する断面において、直線距離が最大となるデバイスルーメン11の壁面上の2点間に2点間の最大直線距離である。
【0029】
伸縮部5は、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の50%以上の範囲に亘り形成されている。本実施形態では一例として、伸縮部5は、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の60%の範囲に亘り、連続して形成されている。伸縮部5は、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の50%以上80%以下の範囲に亘り形成されると好適である。伸縮部5がこの範囲に設定されることで、デバイスルーメン11の遠位側端部において拡張可能な周長、最大直径及び断面積(以下、最大直径等、と記載する場合がある)を大きくしつつ、第一カテーテル1の遠位側端部の強度を保つことができる。軸方向における伸縮部5が延在する長さは、拡張部材3の軸方向の長さよりも長い。このようにすることで、拡張部材3の軸方向の全域を、デバイスルーメン11において、伸縮部5が設けられる軸方向の領域内に、収容することができる。
【0030】
バルーンBは、内部空間を有する袋体である。バルーンBは、インフレーションルーメン13から内部空間に流体を供給されて拡張可能である。バルーンBは、例えば、伸縮部5に対して第一カテーテル1の径方向における反対側の、第一カテーテル1の外表面に固定されている。また、バルーンBは、例えば、軸方向における伸縮部5の延在する範囲内に配置されている。バルーンBの拡張により、血管内において第一カテーテル1の位置を固定可能である。バルーンBは、いわゆるアンカーバルーンである。以下では、バルーンBの拡張により第一カテーテル1を血管内において位置を固定することを、単にアンカリングする、と記載する場合がある。
【0031】
図1及び図5から図7に示すように、第二カテーテル2は、例えばエラストマーで形成された長尺状部材である。第二カテーテル2は、伸縮部5よりも伸縮性が高く弾性力の小さいエラストマーで形成されることが好ましい。第二カテーテル2は、デバイスルーメン11内において軸方向に、デバイスルーメン11の壁部と摺動しながら移動可能である。
【0032】
図2から図4に示すように、第二カテーテル2には、軸方向に沿う貫通孔として吸引ルーメン21が形成されている。吸引ルーメン21の軸方向に直交する断面は、一例として円形状である。これにより、後述する血栓91の吸引を行いやすくなる。吸引ルーメン21の壁面としての第二カテーテル2の内壁面には血栓を溶解する血栓溶解薬としての薬効を有する薬剤のコーティングを施すことが好ましい。これにより、吸引ルーメン21内で血栓91を溶解させて、後述する血栓91の吸引を行いやすくなる。このような薬剤としては、ヘパリン、EDTA-2K、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ワーファリン、ウロキナーゼ等が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、第二カテーテル2の先端部には、図1から図3及び図5から図7に示すように、拡張部材3が埋設された拡張部23が形成されている。すなわち本実施形態では、第二カテーテル2は、拡張部材3を壁内に埋設した状態で拡張部材3を支持している。なお、拡張部23は吸引ルーメン21の壁部を兼ねている。すなわち、拡張部23は筒状である。
【0034】
拡張部材3は、例えば金属のストラットなどである線材30(図3参照)で形成された網状かつ筒状の部材である。線材30としては例えば、チタン系合金のバネ材を用いることができる。チタン系合金のバネ材としては、ニッケルチタン合金を例示できる。
【0035】
拡張部材3は、上記のように第二カテーテル2の壁内に埋設されることで、線材30、特に線材30の端面の角張った角部の接触によりデバイスルーメン11の壁面や血管を損傷することを防止できる。
【0036】
本実施形態において、拡張部材3は、伸縮部5よりも近位側のデバイスルーメン11内では、血栓を捕捉している状態及び血栓を捕捉していない状態のいずれの状態においても、弾性変形により収縮した状態で収容される。また、拡張部材3は、デバイスルーメン11内の伸縮部5が設けられている位置で、血栓を捕捉していない状態では、弾性変形により収縮された状態で収容される。これに対して、拡張部材3は、デバイスルーメン11の遠位開口から突出すると、復元力によって径方向に拡張する。つまり、本実施形態の筒状の拡張部材3は、自己のバネ弾性による復元力により、内径が拡張するように拡張可能となるように形成されている。本実施形態では、拡張部材3は、内径と共に外径も拡張する。以下では拡張部材3の内径及び外径を包括して直径と記載する場合がある。また、以下では、拡張部材3が自己のバネ弾性による復元力により直径が拡張することを、単に自己拡張と記載する場合がある。
【0037】
図6に示すように、拡張部材3が軸方向において、伸縮部5が延在する範囲のデバイスルーメン11内に位置する場合、拡張部材3は、伸縮部5の伸長によりデバイスルーメン11の内径が拡張する範囲内において自己拡張を許容される。但し、伸縮部5は、自己拡張型の拡張部材3の復元力のみでは伸長しない程度の弾性率を有している。伸縮部5は、拡張部材3が血栓を捕捉している状態で、軸方向において伸縮部5が延在する範囲のデバイスルーメン11内に位置する血栓回収時において伸長し、デバイスルーメン11の内径を拡張する。
【0038】
図6図7に示すように、拡張部材3の自己拡張に伴って、第二カテーテル2の拡張部23も、直径が拡張するように拡張する。これにより、吸引ルーメン21の遠位端である拡張部23の遠位開口の直径が拡張し、第二カテーテル2による大きな血栓の捕捉が可能となる。すなわち、本実施形態の拡張部材3は拡張部23を介して血栓を捕捉する。
【0039】
(使用方法の説明)
次に、デバイス100の使用方法を説明する。
【0040】
ガイドワイヤ及び挿入シースを患者の血管9内に挿入した後、第一カテーテル1を、遠位側から挿入シースを介して血管内に挿入する。そして、図8に示すように、エックス線電子写真などの造影によりマーカMの位置を目安にして第一カテーテル1の先端を血栓91の近傍まで導入する。図9に示すように、第一カテーテル1の先端が血栓91の近傍に達したら、バルーンBを拡張させて第一カテーテル1をアンカリングする。
【0041】
次に、第一カテーテル1のデバイスルーメン11内に第二カテーテル2を挿入(図1及び図5参照)する。そして、デバイスルーメン11で第二カテーテル2を案内し、拡張部材3が包埋された拡張部23をデバイスルーメン11の遠位側端部まで導入する(図6参照)。更に、図10に示すように、拡張部23を血栓91の近傍に導入して拡張部23内に血栓91を捕捉する。
【0042】
図10に示すように、拡張部23は、デバイスルーメン11の外部に露出した際に拡張部材3の自己拡張により直径を拡張される。デバイスルーメン11に収容された状態よりも直径が拡張された拡張部23は、デバイスルーメン11の直径よりも大きな血栓91を捕捉することができる。すなわち、大きな血栓91であっても取りこぼすことなく捕捉できる。
【0043】
拡張部23で血栓91を捕捉した後、第二カテーテル2を近位側に牽引して拡張部23をデバイスルーメン11内に収容する。これにより、血栓91は血管9から除去される。ここで、拡張部23がデバイスルーメン11の直径よりも大きな血栓91を捕捉しており、血栓91による立体障害で拡張部23を容易に収縮させることができない場合もあり得る。この場合であっても、伸縮部5の伸長によりデバイスルーメン11の直径を拡張させることができるため、図11図12図13に示すように、デバイスルーメン11の直径を拡張させて拡張部23をデバイスルーメン11内に収容することができる。デバイスルーメン11の直径を拡張させて拡張部23をデバイスルーメン11内に収容するためには、例えば第二カテーテル2を近位側にやや強く牽引すればよい。これにより、拡張した拡張部23で伸縮部5を押し広げるように伸長させてデバイスルーメン11の直径を拡張させつつ、拡張した拡張部23をデバイスルーメン11内に収容することができる。
【0044】
上記のごとく、軸方向における伸縮部5が延在する長さは、拡張部材3の軸方向の長さよりも長く形成されている。これにより、図12に示すように、拡張部23の遠位側端部がデバイスルーメン11に完全に収容されて、拡張部23の遠位側端部がデバイスルーメン11の遠位側の開口よりも近位側に位置している場合に、デバイスルーメン11の遠位側の開口近傍の直径が、伸縮部5の収縮により収縮してもとの大きさに戻り、デバイスルーメン11における拡張部23の近傍の直径よりも小さくなる。これにより、拡張部23で捕捉した血栓91が、デバイスルーメン11の遠位側の開口から漏れ出ることが抑制される。
【0045】
拡張部23をデバイスルーメン11内に収容した後の、デバイス100における血栓91の体外への取り出し方法は、複数の方法を取り得る。以下ではデバイス100における血栓91の体外への取り出し方法の一例及びその後の治療の修了までの処置について説明する。
【0046】
(血栓取り出し方法の例1)
吸引ルーメン21を介して吸引装置S(図1参照)で吸引し、血栓91を近位側へ吸引して体外に取り出すことができる。血栓91が吸引装置Sの吸引力で容易に変形、崩壊などして容易に吸引ルーメン21を通過することができる場合には好適な方法である。
【0047】
血栓91を吸引により体外に取り出した後、バルーンBを縮小させてアンカリングを解除する。バルーンBが縮小した後、第一カテーテル1及び第二カテーテル2を体外へ引き抜く。そして、ガイドワイヤ及び挿入シースを体外へ引き抜き、止血等を行い、治療を終了する。
【0048】
(血栓取り出し方法の例2)
血栓91が吸引装置Sの吸引力で容易に変形、崩壊などしない場合には、吸引装置Sでの吸引に先立って、以下の方法を実行して血栓91を変形、崩壊させると良い場合がある。すなわち、第二カテーテル2を強く牽引する。これにより、血栓91で拡張した拡張部23を伸縮部5よりも近位側のデバイスルーメン11に引き込む。この引き込みにより、拡張部23及び拡張部材3はデバイスルーメン11の壁部に規制されて押しつぶされるように収縮する。拡張部23の収縮により、血栓91が押しつぶされて、変形、崩壊する。この変形、崩壊により、血栓91が吸引装置Sの吸引力で容易に吸引ルーメン21を通過することができるようになれば、血栓91を近位側へ吸引して体外に取り出すことができる。
【0049】
なお、第二カテーテル2を強く牽引して血栓91で拡張した拡張部23を伸縮部5よりも近位側のデバイスルーメン11に引き込んでいくと、デバイスルーメン11の遠位側端部の直径は、伸縮部5の収縮により遠位側から順に収縮していく。すなわち、デバイスルーメン11の遠位側端部は、伸縮部5の延在する領域の全体に亘り元の直径に戻る。そのため、血栓91で拡張した拡張部23を伸縮部5よりも近位側のデバイスルーメン11に引き込んで血栓91を変形、崩壊させる際に、デバイスルーメン11の遠位側の開口から血栓91が漏れ出ることが抑制される。
【0050】
血栓91を吸引により体外に取り出した以後は、血栓取り出し方法の例1の場合と同様である。
【0051】
(血栓取り出し方法の例3)
第二カテーテル2を強く牽引して血栓91で拡張した拡張部23を伸縮部5よりも近位側のデバイスルーメン11に引き込んでも、吸引装置Sの吸引力で容易に吸引ルーメン21を通過することができる程度に血栓91が変形、崩壊しない場合は、以下の方法を取り得る。すなわち、第二カテーテル2をそのままデバイスルーメン11から体外に引き抜いて、血栓91を体外に取り出すことができる。
【0052】
血栓91を体外に取り出した後、バルーンBを縮小させてアンカリングを解除する。バルーンBが縮小した後、第一カテーテル1を体外へ引き抜く。そして、ガイドワイヤ及び挿入シースを体外へ引き抜き、止血等を行い、治療を終了する。
【0053】
(血栓取り出し方法の例4)
第二カテーテル2を強く牽引しても、血栓91で拡張した拡張部23を伸縮部5よりも近位側のデバイスルーメン11に引き込めない場合、又は、第二カテーテル2をそのままデバイスルーメン11から体外に引き抜けない場合は、バルーンBを縮小させてアンカリングを解除する。バルーンBが縮小した後、第二カテーテル2と共に第一カテーテル1を体外に引き抜いて、血栓91を体外に取り出すことができる。
【0054】
第一カテーテル1を体外へ引き抜いた後、ガイドワイヤ及び挿入シースを体外へ引き抜き、止血等を行い、治療を終了する。
【0055】
〔第一実施形態の変形例〕
上記第一実施形態の変形例を説明する。
【0056】
上記第一実施形態では、デバイス100における血栓91の体外への取り出し方法として血栓取り出し方法の例1から4を説明した。第一実施形態で説明したデバイス100は、更に、デバイスルーメン11内で血栓を破壊する破壊デバイスを備えることもできる。
【0057】
図14に示すように、デバイス100(図1参照)は、例えばチタン合金などの線材や棒状、又は板状の部材で形成された第一破壊デバイス81を備えてもよい。第一破壊デバイス81は、吸引ルーメン21に挿通して用いる。具体的には、第一破壊デバイス81により、吸引ルーメン21内の血栓91を突き刺したり、押しつぶしたり、切断したり、振動を加えたりするなど、血栓91に物理的刺激を加えることで血栓91を破壊する。これにより、上記の血栓取り出し方法の例1や血栓取り出し方法の例2の方法で血栓91を変形、崩壊させることができない場合でも、血栓91を吸引装置Sで吸引可能とすることができる。図14では、線材である第一破壊デバイス81によって血栓91を押しつぶすようにして破壊する様子を例示している。
【0058】
また、図14に示すように、デバイス100(図1参照)は、例えばバルーンや線材、鋏状部材などの第二破壊デバイス82を備えてもよい。第二破壊デバイス82は、デバイスルーメン内の第二カテーテル2の外側に配置される。第二破壊デバイス82は、第二カテーテル2を変形させたり第二カテーテル2に振動を加えたりするなどの物理的刺激を加えるものであればよい。第二カテーテル2の変形や第二カテーテル2に加えられた振動のような物理的刺激を、第二カテーテル2を介して吸引ルーメン21内の血栓91に加えることで血栓91を破壊することができる。図14では、バルーンである第二破壊デバイス82で第二カテーテル2を外部から押圧して変形せしめ、これにより吸引ルーメン21内の血栓91を押しつぶすようにして破壊する様子を例示している。なお、第二破壊デバイス82がバルーンである場合、例えば流体を供給することで拡張させて第二カテーテル2を外部から押圧することができる。第二破壊デバイス82が針金であれば、押し付けるようにして第二カテーテル2を押圧することができる。第二破壊デバイス82が鋏状部材であれば、第二カテーテル2を挟んで押圧すればよい。
【0059】
第一破壊デバイス81や第二破壊デバイス82はそれぞれ単独で用いてもよいし、図14に示すように、同時に用いてもよい。図14では、第一破壊デバイス81と第二破壊デバイス82とを同時に用い、更に、第一破壊デバイス81と第二破壊デバイス82とで血栓91を挟み込むようにして血栓91を破壊する様子を示している。
【0060】
以上のようにして、血栓を取りこぼすことなく体外に取り出すことができる血栓除去デバイスを提供することができる。
【0061】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、伸縮部5は、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の60%の範囲に渡り、連続して形成されている場合を説明した。また、伸縮部5は、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の50%以上80%以下の範囲に亘り形成されると好適であることを説明した。そして、伸縮部5がこの範囲に設定されることで、デバイスルーメン11の遠位側端部が拡張可能な最大直径等を大きくしつつ、第一カテーテル1の遠位側端部の強度を保つことができることを説明した。しかし、伸縮部5がこの範囲に設定されることは必須ではない。
【0062】
伸縮部5が、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の80%を超える範囲に亘り形成される場合であっても、第一カテーテル1の遠位側端部の強度を保つ工夫を別途行えば足りる。強度を保つ工夫の一例として、第一カテーテル1の遠位側端部に、軸方向に延在するリブなどの補強部材を設けることが挙げられる。
【0063】
図15に示すように、伸縮部5が、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の50%未満の範囲に限られて形成されている場合であってもデバイスルーメン11の遠位側端部の直径の拡張は可能である。なお、伸縮部5が、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の50%未満の範囲に限られて形成される場合は、デバイスルーメン11の径方向において、伸縮部5を第一カテーテル1の外周面よりもやや内側に寄せて配置すると良い。このような配置により、デバイスルーメン11の直径の拡張がより容易となるため好ましい。
【0064】
(2)上記実施形態では、伸縮部5の伸長により、デバイスルーメン11の遠位側端部の最大直径等が拡張可能とされている場合を説明した。これに加えて、図15に示すように、第一カテーテル1の遠位側端部に、軸方向に沿って延在する薄肉部15を形成してもよい。伸縮部5は、この薄肉部15が延在する範囲と同じ軸方向における範囲内に位置してよい。薄肉部15は、第一カテーテル1の内壁部に形成された例えば軸方向に沿う凹部や切れ込みのような、肉厚の薄い部分として形成することができる。薄肉部15は、第一カテーテル1において他の部分よりも肉厚が薄く変形しやすい。そのため、伸縮部5が伸縮する際に、薄肉部15を支点として第一カテーテル1の壁部が容易に折れ曲がる。これにより、デバイスルーメン11の遠位側端部の最大直径等の拡張が容易になる。
【0065】
薄肉部15の形成は、伸縮部5が、第一カテーテル1において、デバイスルーメン11の周長の50%未満の範囲に限られて形成されている場合に特に有益である。このように伸縮部5を形成した範囲が十分大きく取られていない場合、又は、伸縮部5を形成する範囲を十分大きく取ることができない場合であっても、薄肉部15を形成することにより、デバイスルーメン11の遠位側端部の最大直径等の拡張を容易とすることができる。
【0066】
薄肉部15は、第一カテーテル1の径方向外側の外壁部に形成してもよいし、第一カテーテル1におけるデバイスルーメン11の壁部である第一カテーテル1の内壁部に形成してもよい。薄肉部15は、第一カテーテル1におけるデバイスルーメン11の壁部に形成すると、デバイスルーメン11の遠位側端部の最大直径等の拡張がより容易となるため好ましい。
【0067】
図15では、薄肉部15を、第一カテーテル1におけるデバイスルーメン11の壁部に一対(二つ)形成されている場合を示している。しかし薄肉部15は、一対又は二つ形成される場合に限られない。薄肉部15は一つでもよいし、三つ以上形成されてもよい。
【0068】
(3)上記実施形態では、拡張部材3が第二カテーテル2の壁内に埋設されて支持されており、拡張部23が形成されている場合を説明した。しかし、拡張部材3は第二カテーテル2の壁内に埋設されて支持される場合に限られない。拡張部23は、拡張部材3が第二カテーテル2の外周面に固定されたものであってもよいし、拡張部材3が吸引ルーメン21の壁面に固定されたものであってもよい。換言すれば、拡張部材3が第二カテーテル2の外周面や、その吸引ルーメン21の壁面に固定して支持されてもよい。
【0069】
拡張部材3を第二カテーテル2の壁内に埋設しない場合、拡張部23は、図15に示すように、内部に吸引ルーメン21が形成されている第二カテーテル2の外周面に拡張部材3を固定して形成することが好ましい。内部に吸引ルーメン21が形成されている第二カテーテル2の外周面に拡張部材3を配置すれば、吸引ルーメン21の開口径や断面積を大きくすることができるためである。吸引ルーメン21の開口径や断面積を大きくすれば、より大きな血栓の吸引が可能となる。
【0070】
なお、拡張部材3を第二カテーテル2の壁内に埋設しない場合は、線材30の線材の端部は面取りなどにより角部を除去しておくことが好ましい。これにより、線材30の線材の端部の擦れなどの接触によりデバイスルーメン11の内壁や血管を損傷するリスクを低減できる。角部の除去の一例として、線材30の線材の端部を丸く形成する場合が挙げられる。
【0071】
また、拡張部材3を第二カテーテル2の壁内に埋設しない場合は、線材30の線材の側面は、なめからに形成しておくとよい。これにより、線材30の線材の側面の擦れなどの接触によりデバイスルーメン11の内壁や血管を損傷するリスクを低減できる。側面を滑らかにする場合の一例として、線材30の線材の延在方向に直交する断面を長円形や楕円形などの円形や、角部を面取りした矩形とする場合が挙げられる。図15では、線材30の線材の延在方向に直交する断面を長円形にした場合を例示して図示している。
【0072】
(4)上記実施形態では、第一カテーテル1には軸方向に沿う貫通孔としてデバイスルーメン11、ワイヤルーメン12、インフレーションルーメン13が形成されている場合を説明した。しかし、ワイヤルーメン12やインフレーションルーメン13は、デバイスルーメン11内に配置した、又は第一カテーテル1に沿わせて配置した管の内部空間として形成することもできる。ワイヤルーメン12やインフレーションルーメン13を管の内部空間として形成する場合は、第一カテーテル1に沿わせて配置した管の内部空間として形成するほうが好ましい。これにより、デバイスルーメン11の内部空間を大きくすることができる。これにより第二カテーテル2を太くするなどして吸引ルーメン21の直径を大きくして血栓を吸引しやすくすることができる。
【0073】
(5)上記実施形態では、拡張部材3が自己のバネ弾性による復元力により直径が拡張する自己拡張可能なものである場合を例示して説明した。しかし、拡張部材3は、自己拡張可能である場合に限られない。拡張部材3は、例えばハブ6を介した外部からの動力の供給により拡張するものであってもよい。例えば、線材30を関節部分を介して連結させて拡張部材3を形成し、拡張部材3の筒内部に流体等の供給により拡張可能なバルーンを配置する。そして、バルーンの拡張により拡張部材3を筒の内側から押し広げて拡張するようにしてもよい。なお、拡張部材3の拡張後はバルーンを収縮させてよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、拡張部材3が、第二カテーテル2の先端部に支持されており、デバイスルーメン11を軸方向に移動可能であることを説明した。そして、デバイス100は、拡張部材3を第一カテーテル1のデバイスルーメン11の遠位開口から突出させることで、拡張部材3を拡張させ、そして、拡張部材3により血栓を捕捉し、血栓を捕捉した拡張部材3をデバイスルーメン11に再び収容することで、血栓を血管から除去することができることを説明した。しかし、拡張部材3は、第二カテーテル2の先端部に支持されていることを要しない。換言すれば、デバイス100において第二カテーテル2は必須ではなく、拡張部材3を有していればよい。
【0075】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、バルーンカテーテルに適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 :第一カテーテル
2 :第二カテーテル
3 :拡張部材
5 :伸縮部
9 :血管
11 :デバイスルーメン
12 :ワイヤルーメン
13 :インフレーションルーメン
15 :薄肉部
21 :吸引ルーメン
23 :拡張部
30 :線材
81 :第一破壊デバイス
82 :第二破壊デバイス
91 :血栓
100 :デバイス(血栓除去デバイス)
B :バルーン
H :ハブ(カテーテルハブ)
M :マーカ
S :吸引装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15