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  • 特許-透明吸湿フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】透明吸湿フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241220BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241220BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241220BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20241220BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/32 E
B32B27/28 101
B65D83/04 D
B65D65/40 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020170626
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062541
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】安田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 遼
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 駿
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/085445(WO,A1)
【文献】特開2016-055639(JP,A)
【文献】特開2020-082625(JP,A)
【文献】特開2012-158718(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181793(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/029899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
B65D65/00-65/46
B65D83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、吸湿剤、及びHLB値5以下のエステル化合物を含有している、透明吸湿層、並びに
前記透明吸湿層の面にそれぞれ積層されている第一及び第二のスキン層
を有し、
前記熱可塑性樹脂が、極性基とエチレン単位とを含むポリエチレン系樹脂であり、
前記吸湿剤の、動的光散乱法により測定した粒子径D50が、1μm以下であり、かつ
前記第一及び第二のスキン層が、いずれも環状オレフィン系ポリマーを含有している、
透明吸湿フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン-ビニルアセテート共重合体である、請求項に記載の透明吸湿フィルム。
【請求項3】
前記吸湿剤が、動的光散乱法により測定した粒子径D50が300nm以下のゼオライトである、請求項1又は2に記載の透明吸湿フィルム。
【請求項4】
前記エステル化合物の含有率が、前記透明吸湿層の全質量を基準として、2.0~15.0質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明吸湿フィルム。
【請求項5】
前記エステル化合物が、炭素数2以上6以下のアルキレングリコールと炭素数15以上24以下の脂肪酸とのモノエステルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の透明吸湿フィルム。
【請求項6】
透明バリア性基材層、及び
前記透明バリア性基材層に積層されている、請求項1~のいずれか一項に記載の透明吸湿フィルム
を有する、ブリスター容器用積層体。
【請求項7】
内容物、
請求項に記載のブリスター容器用積層体で構成されており、かつポケットを有する、ブリスター容器、及び
前記ブリスター容器に接着されており、それによって、前記内容物を密封している、蓋材
を有する、内容物入りブリスターパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明吸湿フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料の分野においては、ゼオライトを吸湿剤として含む吸湿フィルムが用いられることがある。また、医薬品、電子部品、精密機械等の分野に使用されるフィルムとして、透明性と吸湿性とを有するフィルムが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均粒子径D50が300nm以下のゼオライト、エステル化合物、及び熱可塑性樹脂を含み、かつJIS K7105に準拠して吸湿前の100μmの厚みのフィルムにいて測定したときのヘイズが、25%以上80%以下である、吸湿樹脂組成物が開示されている。特許文献1には、この樹脂組成物を用いた吸湿フィルム、及びこの吸湿フィルムを、外スキン層と内スキン層との間に有する、吸湿積層体も開示されている。
【0004】
特許文献2には、第1バリアフィルム、第2バリアフィルム、及び吸収フィルムをこの順で含む、ブリスターパック用の透明積層体が開示されている。
【0005】
なお、特許文献3に記載のフィルムは、極めて高い透明性を有しており、有機ELの封止用フィルム等に有用である。
【0006】
なお、ナノ粒径のゼオライトの製造方法が特許文献4及び5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2020/085445号
【文献】特開2019-150987号公報
【文献】特開2018-100390号公報
【文献】特開2011-246292号公報
【文献】特開2013-49602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の透明積層体に、特許文献1の吸収フィルムを単純に組み込んで、吸湿層が透明である透明積層体を製造しようとした場合、透明積層体の製造の間、吸湿層が失活することがあった。また、この積層体を保管する際に、積層体同士が貼りつく(ブロッキング)ことがあった。
【0009】
そこで、本発明では、製造時に失活せず、かつブロッキングが抑制された、透明吸湿フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉熱可塑性樹脂、及び吸湿剤を含有している、透明吸湿層、並びに
前記透明吸湿層の面にそれぞれ積層されている第一及び第二のスキン層
を有し、
前記吸湿剤の、動的光散乱法により測定した平均粒子径が、1μm以下であり、かつ
前記第一及び第二のスキン層が、いずれも環状オレフィン系ポリマーを含有している、
透明吸湿フィルム。
〈態様2〉前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂である、態様1に記載の透明吸湿フィルム。
〈態様3〉前記熱可塑性樹脂が、エチレン-ビニルアセテート共重合体である、態様2に記載の透明吸湿フィルム。
〈態様4〉前記吸湿剤が、平均粒子径D50が300nm以下のゼオライトである、態様1~3のいずれか一項に記載の透明吸湿フィルム。
〈態様5〉前記透明吸湿層が、HLB値5以下のエステル化合物を更に含有している、態様1~4のいずれか一項に記載の透明吸湿フィルム。
〈態様6〉前記エステル化合物の含有率が、前記透明吸湿層の全質量を基準として、2.0~15.0質量%である、態様5に記載の透明吸湿フィルム。
〈態様7〉前記エステル化合物が、炭素数2以上6以下のアルキレングリコールと炭素数15以上24以下の脂肪酸とのモノエステルである、態様5又は6に記載の透明吸湿フィルム。
〈態様8〉透明バリア性基材層、及び
前記透明バリア性基材層に積層されている、態様1~7のいずれか一項に記載の透明吸湿フィルム
を有する、ブリスター容器用積層体。
〈態様9〉内容物、
態様8に記載のブリスター容器用積層体で構成されており、かつポケットを有する、ブリスター容器、及び
前記ブリスター容器に接着されており、それによって、前記内容物を密封している、蓋材
を有する、内容物入りブリスターパック。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造時に失活せず、かつブロッキングが抑制された、透明吸湿フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の透明吸湿フィルムの側面断面図である。
図2図2は、本発明のブリスター容器用積層体の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《透明吸湿フィルム》
図1に示すように、本発明の透明吸湿フィルム10は、
熱可塑性樹脂、及び吸湿剤を含有している、透明吸湿層12、並びに
前記透明吸湿層の面にそれぞれ積層されている第一及び第二のスキン層14、14’
を有し、
前記吸湿剤の、動的光散乱法により測定した平均粒子径が、1μm以下であり、かつ
前記第一及び第二のスキン層14、14’が、いずれも環状オレフィン系ポリマーを含有している。
【0014】
ここで、本発明において、「透明」とは、例えば本発明の透明吸湿フィルムを包装材として用い、視認できる文字等の情報を有する内容物をこの包装材に密封したときに、この透明吸湿フィルムを通してこの情報を視認するのに十分に透明であることを意味するものである。具体的には、「透明」とは、例えば全光線透過率が、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%であり、かつヘイズ値が25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下であることを意味する。
【0015】
ここで、全光線透過率は、JIS K 7361に準拠して測定でき、ヘイズ値は、JIS K 7136に準拠して測定できる。
【0016】
平均粒子径が小さい吸湿剤、特に特許文献1で言及されている特定のゼオライトは、吸湿層の透明性をもたらすことができる。一方、かかる吸湿剤は、単位質量当たりの表面積が大きいので、樹脂に混錬して吸湿フィルムを製膜する時において失活することがあった。
【0017】
また、かかる吸湿剤を用いて吸湿フィルムを作製して保管する際に、隣接する吸湿フィルムが互いに貼りつくブロッキングが生じることがあった。また、吸湿剤を分散させるためのエステル化合物を透明吸湿層に加えた場合は、このブロッキングがより顕著に生じることとなる。
【0018】
これに対し、本発明者らは、上記の構成により、製造時に失活せず、かつブロッキングが抑制された、透明吸湿フィルムを提供することができることを見出した。
【0019】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0020】
〈透明吸湿層〉
透明吸湿層は、熱可塑性樹脂、及び吸湿剤を含有している。
【0021】
透明吸湿層は、HLBが5以下であるエステル化合物を更に含有していることが、分散性の観点から好ましい。その一方で、透明吸湿層がこのエステル化合物を含有している場合には、ブロッキングが生じやすくなることから、本発明の上記の構成が有用となる。
【0022】
透明吸湿層を構成する樹脂組成物の、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合のメルトフローレートは、0.3g/10min以上30g/10min以下である。これにより、Tダイ法又はインフレーション法によるフィルムへの成形が比較的容易となり、それによって、透明吸湿層の製造を容易にすることができる。このメルトフローレートは、0.5g/10min以上、1.0g/10min以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であってもよく、20g/10min以下、又は15g/10min以下、10g/10min以下、8.0g/10min以下、又は5.0g/10min以下であってもよい。例えば、このメルトフローレートは、0.5g/10min以上10g/10min以下であってもよい。
【0023】
透明吸湿層を構成する樹脂組成物の、JIS K7136に準拠して吸湿前の100μmの厚みのフィルムにして測定したときのヘイズは、25%以下であることが好ましく、20%以下、又は15%以下であってもよい。例えば、ヘイズは、3%以上25%以下、又は5%以上20%以下であってもよい。このような範囲であれば、包装容器等として用いた場合に内部をはっきりと確認できる程度の透明性をフィルムに与えることができる。
【0024】
透明吸湿層は、平均粒子径D50が100nm以下の、Al、Si、Ti、及びZrから選択される1種以上の元素の酸化物(ゼオライトを除く)を含有していてもよく、又は含有していなくてもよい。かかる酸化物の含有率は、例えば5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、又は0質量%であってよい。
【0025】
(熱可塑性樹脂)
吸湿層を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド非環状オレフィンポリマー、及び環状オレフィンポリマーを用いることができる。
【0026】
ポリオレフィンとしては、環状オレフィン系ポリマー、及び非環状オレフィン系ポリマーが挙げられる。
【0027】
環状オレフィン系ポリマーは、環状オレフィン部分を有するポリマーである。より具体的には、スキン層に関して下記に言及する。
【0028】
非環状オレフィン系ポリマーは、環状オレフィン部分を有しないポリマーである。非環状オレフィン系ポリマーとしては、環状オレフィン部分を有しないポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0029】
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0030】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0032】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0033】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂としては、中でも、ポリエチレン系樹脂、特に、カルボン酸基、カルボン酸エステル基等の極性基とエチレン単位とを含むポリエチレン系樹脂を用いることが、ゼオライト及びエステル化合物の親和性の観点からから好ましい。
【0035】
極性基とエチレン単位とを含むポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-ビニルアセテート共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体等を用いることができ、特にエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)を用いることが、ゼオライト及びエステル化合物の親和性の観点からから特に好ましい。
【0036】
エチレン-ビニルアセテート共重合体におけるビニルアセテートの含有率は、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってよく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。エチレン-ビニルアセテート共重合体におけるビニルアセテートの含有率は、例えば5質量%以上50質量%以下、又は20質量%以上40質量%以下であってよい。
【0037】
(吸湿剤)
吸湿剤は、動的光散乱法により測定した平均粒子径D50が、1μm以下である吸湿剤である。かかる吸湿剤としては、ゼオライト、シリカゲル等の物理吸湿剤、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等の化学吸湿剤等を用いることができる。
【0038】
ここで、平均粒子径D50は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、無作為に選択した100個の粒子の長軸を測定し、その個数基準の粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。吸湿剤の平均粒子径D50は、組成物に透明性を与える観点から、1μm以下、800nm以下、500nm以下、又は300nm以下であって、より好ましくは100nm以下である。吸湿剤の平均粒子径D50は、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、130nm以下、100nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、又は50nm以下であってよい。吸湿剤の平均粒子径D50は、5nm以上、10nm以上、20nm以上、又は30nm以上であってよい。例えば、吸湿剤の平均粒子径D50は、5nm以上100nm以下、又は20nm以上80nm以下であってもよい。
【0039】
ゼオライト中のSiとAlとの原子比(Si/Al)の値は任意であり、例えば、1以上、2以上、3以上、5以上、10以上、又は15以上であってよく、例えば、80以下、60以下、50以下、40以下、又は30以下であってよい。
【0040】
本発明で用いられるゼオライトとしては、吸湿性の観点から、親水性であることが好ましく、特にNa-A型ゼオライトを使用することが好ましい。
【0041】
本発明で用いられるゼオライトは、例えば、特許文献4及び5に記載のような方法によって製造することができる。そのようなゼオライトを、特許文献3に記載のように、かさ密度を調整して用いてもよい。
【0042】
ゼオライトは、例えば、下記式(1)で表される原料ゼオライトを、下記式(2)で表されるシリケート又はアルミノシリケートを含有する水溶液に分散させ、再結晶させることにより、得ることができる。
aM O・bSiO・Al・cMeO (1)
{式(1)中、Mはアルカリ金属原子、水素原子、又はアンモニウムイオンであり、Meはアルカリ土類金属イオン原子、aは0.01~1であり、bは1~80であり、cは0~1である。}
dM O・eAl・fSiO・gHO (2)
{式(2)中、比d/gは0.00035~0.02000であり、比e/gは0~0.00025であり、f/gは0.0001~0.025である。}
【0043】
上記式(1)中のbは、例えば、2~60又は20~80であってよい。cは、例えば、0.01~1であってよい。上記式(2)における比d/gは、例えば、0.003~0.010であってよい。比e/gは、例えば、0又は0.000003~0.000250であってよい。比f/gは、例えば、0.0001~0.0160又は0.006~0.025であってよい。
【0044】
上記式(1)の原料ゼオライトとしては、例えば、NaSiAlO、NaSi12AlO26、NHSi19AlO40等を用いることができる。上記式(2)のシリケートとしては、例えば、0.292NaO・hSiO・55.5HO(h=0.400、0.650、0.800、又は1.00)、iNaO・0.650SiO・55.5HO(i=0.165又は0.55)等を用いることができる。上記式(2)のアルミノシリケートとしては、例えば、405NaO・jAl・kSiO・29,900HO((j,k)=(1,23)、(1,51)、(2,23)、又は(2,51))等を用いることができる。
【0045】
ゼオライトとしては、上記のようにして得られたものに、イオン交換若しくは粉砕又はこれらの双方を施した後に使用に供してもよい。
【0046】
透明吸湿層におけるゼオライトの含有量は、3.0質量%以上45質量%以下であり、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。例えば、ゼオライトの含有量は、10質量%以上45質量%以下、又は30質量%以上45質量%以下であってもよい。
【0047】
(エステル化合物)
透明吸湿層は、HLB値5以下のエステル化合物を含む。エステル化合物は、乳化剤等として用いられるような化合物を用いることができ、本発明で用いられるゼオライトと熱可塑性樹脂との混合を可能にする。
【0048】
HLB値は、親水性か親油性化を示し指標である。エステル化合物のHLB値が5以下であるということは、該エステル化合物の親油性が高いことを意味し、例えば、消泡剤、又はエマルジョンの乳化剤として使用される領域の数値である。
【0049】
エステル化合物のHLB値は、4.5以下、4.0以下、又は3.5以下であってよく、2.0以上、2.5以上、又は3.0以上であってよい。例えば、エステル化合物のHLB値は、2.0以上5.0以下、又は2.5以上4.5以下であってもよい。
【0050】
エステル化合物としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸とのモノエステル化合物である。多価アルコールは、例えば、グリセリン、アルキレングリコール等であってよい。脂肪酸は、例えば、炭素数12以上24以下の、飽和又は不飽和の脂肪酸であってよい。
【0051】
エステル化合物としては、特に、炭素数2以上6以下のアルキレングリコールと炭素数15以上24以下の脂肪酸とのモノエステルであってよい。上記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等であってよい。上記と炭素数15以上24以下の脂肪酸は、飽和又は不飽和であってよく、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等であってよい。
【0052】
エステル化合物は、具体的には例えば、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノベヘネート等であってよい。
【0053】
透明吸湿層におけるエステル化合物の含有率は、透明吸湿層の全質量を基準として、2.0質量%以上15質量%以下であり、2.5質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってもよく、12質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、又は6.0質量%以下であってもよい。例えば、エステル化合物の含有率は、2.5質量%以上12質量%以下、又は3.0質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0054】
〈スキン層〉
第一及び第二のスキン層は、吸湿層の面にそれぞれ積層されている層である。これらのスキン層は、いずれも環状オレフィン系ポリマーを含有している。
【0055】
環状オレフィン系ポリマーの含有量は、スキン層の質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であることが、吸湿剤の失活を抑制する観点から好ましく、また100質量%、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下であることが、吸湿性を良好にする観点から好ましい。
【0056】
第一及び第二のスキン層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であることができ、また300μm以下、200μm以下、100μm以下、80μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。第一及び第二のスキン層の厚さは、同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
(環状オレフィン系ポリマー)
環状オレフィン系ポリマーは、環状オレフィン部分を有するポリマーであり、環状オレフィンポリマー、及び/又はα-オレフィン-環状オレフィンコポリマーであることができる。
【0058】
本発明において、環状オレフィンポリマー(COP)を構成するモノマーとしては、例えば、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等のビニルシクロアルカン及びこれらの誘導体、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクテン等のモノシクロアルケン及びこれらの誘導体、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ-4-エン、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]ペンタデカ-3-エン、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]ヘキサデカ-3-エン、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカ-4-エン等の多環式アルカン及びこれらの誘導体、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0059】
本発明において、α-オレフィン-環状オレフィンコポリマー(COC)とは、α-オレフィン部分と環状オレフィン部分とを共重合させたものを意味する。
【0060】
ここで、本発明において、コポリマーとは、2種以上のモノマーから成るコポリマーを意味する。
【0061】
α-オレフィン部分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1ーペンテン、4-メチル-ペンテン、3-メチル-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン等、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0062】
環状オレフィン部分としては、環状オレフィンポリマーについて挙げたモノマーが挙げられる。
【0063】
オレフィン-環状オレフィンコポリマーのうち、α-オレフィン部分に由来する構造単位は、10mol%以上、20mol%以上、30mol%以上、40mol%以上、又は50mol%以上であることができ、また95mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、70mol%以下、又は60mol%以下であることができる。
【0064】
《ブリスター容器用積層体》
図2に示すように、ブリスター容器用積層体100は、
透明バリア性基材層20、及び
透明バリア性基材層20に積層されている、上記の透明吸湿フィルム10
を有する。
【0065】
上記の構成を有するブリスター容器用積層体に、内容物を入れるためのポケットを形成することにより、ブリスター容器を製造することができる。ポケットを成形する際の成形方法としては、平板式空圧成形法、プラグアシスト圧空成形法、ドラム式真空成型法、プラグ成形法等が挙げられる。この中でも、粘度平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレン樹脂製の先端部が丸い円柱状の棒(プラグ材)を用いたプラグ成形法が、ポケットを形成するためには好ましい。かかる手段を用いて、スキン層側が凹となるようにしてポケットを成形することができる。
【0066】
〈透明バリア性基材層〉
透明バリア性基材層は、透明性及びバリア性を有する基材である。
【0067】
透明バリア性基材層としては、例えばバリア性樹脂層を用いることができる。バリア性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば上記の環状オレフィンポリマー、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリクロロテトラフルオロエチレン(PCTFE)等を用いることができる。
【0068】
また、図2に示すように、透明バリア性基材層20は、透明バリア層22及び透明基材樹脂層24を有する層であってもよい。この場合、透明バリア層と透明基材樹脂層との間には、接着層が存在していてもよい。
【0069】
(透明バリア層)
透明バリア層としては、透明であり、かつ外部からの水分や有機ガス及び無機ガスが透明吸湿層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかる透明バリア層としては、例えばシリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロテトラフルオロエチレンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。また、上記のバリア性樹脂層を、透明バリア層として用いることもできる。
【0070】
透明バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コーティング膜を用いる場合、透明バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、ブリスター容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0071】
透明バリア層としてバリア性樹脂層を用いる場合、透明バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、ブリスター容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0072】
(透明基材樹脂層)
透明基材樹脂層としては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。この樹脂層は、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。また、この樹脂層は、透明バリア層の片面又は両面に存在していても良い。この樹脂層により、透明バリア層を保護することができる。
【0073】
ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミドとしては、吸湿層に関する記載を参照できる。
【0074】
透明基材樹脂層としては、なかでもポリ塩化ビニル、及び/又はポリプロピレン系樹脂を用いることが、成形性及び剛性を両立する観点から好ましい。
【0075】
透明基材樹脂層の厚さは、10μm以上、20μm以上、30μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、120μm以上、150μm以上、180μm以上、又は200μm以上であることが、バリア層を良好に保護する観点から好ましく、また300μm以下、280μm以下、250μm以下、又は220μm以下であることが、ブリスター容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0076】
《内容物入りブリスターパック》
本発明の内容物入りブリスターパックは、
内容物、
上記のブリスター容器用積層体で構成されており、かつポケットを有する、ブリスター容器、及び
前記ブリスター容器に接着されており、それによって、前記内容物を密封している、蓋材
を有する。
【0077】
蓋材は、接着層を介してブリスター容器に接着されていてもよく、又はブリスター容器に融着されていてもよい。
【0078】
〈内容物〉
内容物は、ブリスター容器のポケット内に密封されている内容物である。かかる内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であれば限定されるものではなく、薬剤の他、食品、化粧品、衛生用品、医療機器、医療器具、電子部品等を挙げることができる。また、薬剤としては、医薬品製剤の他、洗浄剤、農薬、試薬等を含む。
【0079】
特に、内容物が、視認されることが好ましい内容物、例えば服用期限等の文字情報が付されている医薬品製剤等である場合には、本発明の構成がより有益となる。
【0080】
〈ブリスター容器〉
ブリスター容器は、上記のブリスター容器用積層体で構成されており、かつポケットを有する。
【0081】
かかるブリスター容器は、例えば上記のブリスター容器用積層体に、内容物を入れるためのポケットを形成することにより製造することができる。ポケットを成形する際の成形方法としては、平板式空圧成形法、プラグアシスト圧空成形法、ドラム式真空成型法、プラグ成形法等が挙げられる。この中でも、粘度平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレン樹脂製の先端部が丸い円柱状の棒(プラグ材)を用いたプラグ成形法が、ポケットを形成するためには好ましい。
【0082】
〈蓋材〉
蓋材は、ブリスター容器に接着されており、それによって、内容物を密封している。蓋材は、例えば、基材樹脂層、バリア層を有していてよい。また、蓋材は、ブリスター容器と接着する面に易剥離性層を有していてもよい。また、蓋材は、全体として透明であってもよく、又は透明でなくてもよい。
【0083】
かかる蓋材としては、例えば市販のプレス・スルー・パッケージ(PTP)用の蓋材を用いることができる。
【実施例
【0084】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0085】
《透明吸湿フィルムの作製》
〈実施例1〉
多層Tダイ製膜機による共押出成形により、透明スキン層、透明吸湿層、及び透明スキン層がこの順で配置されるようにして、2種3層のフィルムを作製した。透明スキン層としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)70質量部に環状オレフィンコポリマー(COC)30質量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を用いた。透明吸湿層としては、エチレン-ビニルアセテート共重合体(EVA)(EV150、三井デュポン・ポリケミカル株式会社)68質量部、Na-A型ゼオライト(ナノゼオライト、平均粒子径D50:50nm)28質量部、及びエステル化合物(プロピレングリコールモノベヘネート、HLB値3.4)4質量部をバンバリーミキサーで160℃の温度で10分間溶融混練して作製した樹脂組成物を用いた。各層の厚さは、透明スキン層10μm、透明吸湿層40μm、透明スキン層10μmとした。
【0086】
〈実施例2~4及び比較例1~2〉
各層の構成を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~2のフィルムを作製した。なお、表1で言及している物質の詳細は以下のとおりである:
LDPE:低密度ポリエチレン
ゼオライト4A:モレキュラーシーブ4A、ユニオン昭和社、平均粒子径1μm超
【0087】
《評価》
〈失活率〉
作製した各フィルムを10cm角にカットし、初期質量を測定した。次いで、これを温度23℃相対湿度50%RHの環境に一定時間放置し、再び重量を測定し、増加した重量を飽和吸湿量で割って失活率を算出した。
【0088】
〈耐ブロッキング性〉
作製したフィルムを2枚切り出し、これらのフィルムのスキン層側を重ね、上から1kg/1cmの力で押しつけた。次いで、上側のフィルムを持ち上げたときに下側のフィルムが持ち上がるか否かを観察することにより、フィルムの耐ブロッキング性を評価した。評価基準は以下のとおりである:
〇:フィルムが持ち上がらなかった。
×:フィルムが持ち上がった。
【0089】
〈ヘイズ〉
作製した各フィルムの透明性を評価するため、これらについて、ヘイズメーターを用いてヘイズ値を測定した。
【0090】
〈成形性〉
作製した各フィルムを、ドライラミネート接着剤を用いてPVC/PVDC基材とラミネートして、ブリスターパック用積層体を作製した。次いで、この積層体を、100℃又は140℃のホットプレート上で1分間加熱した後、プレス機により直径13mmφ、深さ5.25mmのポケット部を形成して、ブリスター容器を作製した。評価基準は以下のとおりである:
〇:成型後のポケットにおいて、亀裂、白濁等の外観異常が見られなかった。
×:成型後のポケットにおいて、亀裂、白濁等の外観異常が見られた、又は成型時にブリスターパック用積層体の破断が生じた。
【0091】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から、吸湿層がナノゼオライトを含有しており、かつスキン層が環状オレフィン系ポリマーを含有している実施例1~4のフィルムでは、失活率、耐ブロッキング性、及びヘイズがいずれも良好であったことが理解できよう。また、これらの透明吸湿フィルムを用いて得たブリスター容器は、成形性が良好であった。
【0094】
これに対し、スキン層が環状オレフィン系ポリマーを含有していない比較例1のフィルムでは、ヘイズが良好であった一方で、失活率及び耐ブロッキング性が良好ではなかった。
【0095】
また、吸湿層がゼオライト4Aを含有しており、かつスキン層が環状オレフィン系ポリマーを含有していない比較例2のフィルムでは、失活率及び耐ブロッキング性は良好であった一方で、ヘイズが良好ではなかった。
【符号の説明】
【0096】
10 透明吸湿フィルム
12 透明吸湿層
14、14’ スキン層
20 透明バリア性基材層
22 透明バリア層
24 透明基材樹脂層
100 ブリスター容器用積層体
図1
図2