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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】安定な水性抗体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241220BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241220BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241220BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241220BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241220BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20241220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241220BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/26
A61P7/04
A61P43/00 111
C07K16/18 ZNA
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020188526
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2021088548
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】62/934,781
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/081,409
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-122328
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-122329
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジョセフ・クローリー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・リー・ドゥフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ジュノー
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527189(JP,A)
【文献】特開2017-105754(JP,A)
【文献】特表2021-517129(JP,A)
【文献】特表2015-528464(JP,A)
【文献】特開2016-138097(JP,A)
【文献】特表2018-527922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50mg/mLから250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、
10mMから40mMのヒスチジン緩衝液;
64mg/mLから106mg/mLのスクロース;
0.1mg/mLから0.3mg/mLのポリソルベート80(PS80);
0.038mg/mLから0.063mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)
を含む製剤であって、
ここで、
製剤は、5.2から6.4のpHを有し、
抗体は、(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);
ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):
(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含む、製剤。
【請求項2】
抗体の濃度が100mg/mL、115mg/mL、150mg/mL、または158mg/mLである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項4】
抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-122329の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされるVH配列、およびATCCアクセッション番号PTA-122328の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされるVL配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、および0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【請求項7】
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、および0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む製剤であって、ここで、抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【請求項8】
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、および0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む製剤であって、ここで、抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【請求項9】
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、および0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む製剤であって、ここで、抗体が、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【請求項10】
50mg/mLから250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、および0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む製剤であって、ここで、抗体が、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【請求項11】
50mg/mLから250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、および0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む製剤であって、ここで、抗体が、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【請求項12】
製剤が5±3℃で少なくとも24か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
製剤が、40℃/75%相対湿度(RH)で最大1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、または6か月間、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)による測定で、7%未満の高分子量種(HMMS)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
製剤が、40℃で最大1か月、2か月、または3か月間、SE-HPLCによる測定で、3%未満のHMMSを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
製剤が、40℃で最大1か月間、SE-HPLCによる測定で、2%未満のHMMSを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
対象の出血時間を短縮するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
対象の血液凝固における障害または出血性障害を治療または予防するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
対象の血友病A、BまたはCを治療または予防するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
対象のフォンウィルブランド病(vWD)を治療または予防するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
対象のTFPIの活性を低下させるための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
対象に皮下または静脈内投与される、請求項16~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
対象がヒトである、請求項16~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
対象における出血性障害の治療のための薬剤の製造のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項24】
対象における血友病A、B、またはCの治療のための薬剤の製造のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年11月13日に出願された米国仮出願第62/934,781号および2020年9月22日に出願された第63/081,409号の利益を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
この出願は、EFS-Webを介して電子的に提出されており、電子的に送信された.txt形式の配列表を含んでいる。この.txtファイルは、2020年10月13日に作成された42,550バイトのサイズの「PC72541A_Seq_Listing_ST25.txt」というファイル名の配列表を含んでいる。この.txtファイルに含まれる配列のリストは明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、抗体の医薬製剤の分野に関する。具体的には、本発明は、安定な液体抗体製剤およびその医薬調製物および使用に関する。
【背景技術】
【0004】
治療的または予防的使用を目的とした抗体製剤は、使用前の保管および輸送中の一定期間にわたる変性、脱アミド化、酸化または凝集の影響によるタンパク質の活性または構造上の完全性の喪失を防ぐために安定剤を必要とする。これらの問題は、治療的投与にしばしば望まれる高濃度の抗体において悪化する。多数の製剤オプションが利用可能であるが、1つのアプローチまたは系が全てのタンパク質に適しているわけではない(例えば、Wangら、J.Pharm Sci.96:1~26頁(2007年)を参照)。
【0005】
抗体製剤の開発における主な目標は、抗体、溶解性、安定性、およびその抗原結合の効力を維持することである。抗体が生物学的に活性を維持するためには、製剤は、抗体の抗原結合アミノ酸の少なくともコアのコンフォメーションの完全性を維持する必要がある。静脈内注射または皮下注射に使用する前に滅菌濾過を必要とし、投与経路を制限する溶液中の凝集体および微粒子を避けることも特に望ましい。塩、界面活性剤、pH、および糖などの張性剤は、凝集または変性の問題を克服するために使用され得る。タンパク質の変性と抗原結合活性の喪失を回避するために、抗体調製物の調合は、とりわけこれらの因子の注意深い選択を必要とする。したがって、溶液中の高濃度の生物活性抗体を安定に支持し、静脈内、眼内、硝子体内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、骨内、腹腔内、皮内または皮下注射を含む非経口投与に適した安定な水性抗体製剤が必要である。
【0006】
組織因子経路インヒビター(TFPI)抗体は、血友病AおよびBなどの血液凝固障害または出血性疾患の治療および予防に有用であることが示されている(例えば、US2017/0073428を参照)。液体抗体製剤は当技術分野で知られているが(例えば、WO2006/096491、WO2010/032220、WO2013/186719、US2009/0110681、US2017/0360929、およびUS2018/0000933を参照)、血液凝固障害または出血性疾患に苦しむ患者の医学的ニーズを満たすために、TFPI抗体の安定な水性製剤を提供する必要がある。
【0007】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、および特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照によりそのように組み込まれる。組み込まれた文献および同様な資料の1つまたは複数が、定義された用語、用語の使用法、説明された技法などを含むがこれらに限定されない点につき、本願と異なるか矛盾する場合、本願が優先される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US2017/0073428
【文献】WO2006/096491
【文献】WO2010/032220
【文献】WO2013/186719
【文献】US2009/0110681
【文献】US2017/0360929
【文献】US2018/0000933
【文献】米国特許第4,816,567号
【文献】WO99/58572
【文献】米国特許第5,807,715号
【文献】米国特許第5,866,692号
【文献】米国特許第6,331,415号
【文献】米国特許第5,530,101号
【文献】米国特許第5,693,761号
【文献】米国特許第5,693,762号
【文献】米国特許第5,585,089号
【文献】米国特許第6,180,370号
【文献】欧州特許公開第0519596号
【文献】PCT公開番号第WO99/58572号
【文献】英国特許出願第9809951.8号
【文献】米国特許第6,180,377号
【文献】米国特許第6,054、297号
【文献】米国特許第5,997,867号
【文献】米国特許第5,866,692号
【文献】米国特許第6,210,671号
【文献】米国特許第6,350,861号
【文献】PCT公開番号WO01/27160
【文献】PCT/IB2019/058597
【文献】US62/802,401
【文献】US62/744,481
【文献】WO2017/029583
【文献】WO2010/017196
【文献】WO2011/109452
【文献】WO2014/144577
【文献】WO2010/072687
【文献】WO2012/001087
【文献】WO2014/140240
【文献】WO2015/007880
【非特許文献】
【0009】
【文献】Wangら、J.Pharm Sci.96:1~26頁(2007年)
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【文献】Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987年)
【文献】Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998年)Plenum Press
【文献】Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993~1998年)J.Wiley and Sons
【文献】Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)
【文献】Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編)
【文献】Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987年)
【文献】Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987年)
【文献】PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編、1994年)
【文献】Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991年)
【文献】Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999年)
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【文献】Caceciら(1984年、Byte 9:340~362頁)
【文献】Wong&Lohman(1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428~5432頁)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
組織因子経路インヒビター(TFPI)抗体(抗TFPI抗体としても知られる)を含む、貯蔵寿命が延長された安定な水性医薬製剤が提供される。高TFPI抗体濃度を有する本発明の製剤は安定であり(例えば、低レベルの%HMMS(高分子量種)、%LMMS(低分子量種)、%フラグメント、および酸化を有する)、したがって、非経口投与に適していることが実証される。
【0011】
本明細書に開示および例示されるのは、組織因子経路インヒビター(TFPI)に結合する抗体(その抗原結合フラグメントを含む)の製剤である。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識または確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の態様(E)に包含されることが意図されている。
【0012】
E1.約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)に特異的に結合する抗体、緩衝液、ポリオール、界面活性剤、およびキレート剤を含む製剤であって、約5.0から約6.0のpHを有する製剤。
【0013】
E2.約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、緩衝液、ポリオール、界面活性剤、およびキレート剤を含む製剤であって、製剤が約5.0から約6.0のpHを有し、エピトープが配列番号2の番号付けに基づき残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む製剤。
【0014】
E3.緩衝液が、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、酢酸、リン酸塩、リン酸、アスコルビン酸塩、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸塩、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸塩および炭酸、コハク酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、グルコン酸塩、エデト酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、イミダゾール、トリス、リン酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、E1~E2のいずれか1つに記載の製剤。
【0015】
E4.緩衝液がヒスチジンである、E3に記載の製剤。
E5.緩衝液がコハク酸塩である、E3に記載の製剤。
E6.緩衝液の濃度が約0.1mMから約100mMである、E1~E5のいずれか1つに記載の水性製剤。
【0016】
E7.緩衝液の濃度が約1mMから約40mMまたは約10mMから約40mMである、E6に記載の製剤。
E8.緩衝液の濃度が約10mM、約20mMまたは約40mMである、E7に記載の製剤。
【0017】
E9.緩衝液の濃度が約20mMである、E8に記載の製剤。
E10.ポリオールが、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、グリセロール、ラクチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イノシトール、フルクトース、グルコース、マンノース、スクロース、ソルボース、キシロース、ラクトース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、水溶性グルカン、またはそれらの混合物からなる群から選択される、E1~E9のいずれか1つに記載の製剤。
【0018】
E11.ポリオールがスクロースまたはトレハロースである、E10に記載の製剤。
E12.ポリオールの濃度が約1mg/mLから約300mg/mLである、E1~E11のいずれか1つに記載の製剤。
【0019】
E13.ポリオールの濃度が約1mg/mLから約120mg/mL、約50mg/mLから約120mg/mL、または約60mg/mLから約110mg/mLである、E12に記載の製剤。
【0020】
E14.ポリオールの濃度が約64mg/mL、約85mg/mL、または約106mg/mLである、E13に記載の製剤。
E15.ポリオールの濃度が約85mg/mLである、E1~E14に記載の製剤。
【0021】
E16.界面活性剤が、ポリソルベート、ポロキサマー、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイル-タウレートナトリウム、メチルオレイル-タウレート二ナトリウム、ジヒドロキシプロピルPEG5リノールアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、PEG3350、およびそれらの混合物からなる群から選択される、E1~E15のいずれか1つに記載の製剤。
【0022】
E17.界面活性剤がポリソルベート80である、E16に記載の製剤。
E18.界面活性剤の濃度が約0.01mg/mLから約10mg/mL、約0.05mg/mLから約5mg/mL、約0.1mg/mLから約1mg/mL、または約0.1mg/mlから約0.5mg/mLである、E1~E17のいずれか1つに記載の製剤。
【0023】
E19.界面活性剤の濃度が約0.1mg/ml、約0.2mg/mL、または約0.3mg/mLである、E18に記載の製剤。
E20.界面活性剤の濃度が約0.2mg/mLである、E19に記載の製剤。
【0024】
E21.製剤が界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を含まない、E1~E20のいずれか1つに記載の製剤。
E22.キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸5(DTPA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N-2-アセトアミド-2-イミノ二酢酸(ADA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル、N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、トランス-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、グルタミン酸、およびアスパラギン酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、N,N-ビス-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)およびN-(トリスヒドロキシメチルメチル)10グリシン(トリシン)、グリシルグリシン、デオキシコール酸ナトリウム、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン(トリエン)、エデト酸二ナトリウム二水和物(またはEDTA二ナトリウム二水和物またはEDTA二ナトリウム塩)、EDTAカルシウム、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、クエン酸一水和物、およびクエン酸三ナトリウム-二水和物、8-ヒドロキシキノレート、アミノ酸、ヒスチジン、システイン、メチオニン、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される、E1~E21のいずれか1つに記載の製剤。
【0025】
E23.キレート剤がエデト酸二ナトリウム二水和物である、E22に記載の製剤。
E24.キレート剤の濃度が約0.01mg/mLから約50mg/mL、約0.01mg/mLから約10mg/mL、約0.01からmg/mLから約1mg/mL、または約0.02mg/mLから約0.08mg/mLである、E1~E23のいずれか1つに記載の製剤。
【0026】
E25.キレート剤の濃度が約0.038mg/mL、約0.05mg/mL、または約0.063mg/mLである、E24に記載の製剤。
E26.キレート剤の濃度が約0.05mg/mLである、E25に記載の製剤。
【0027】
E27.製剤が約5.0から6.6または約5.2から6.4のpHを有する、E1~E26のいずれか1つに記載の製剤。
E28.製剤が約5.2、5.8または6.4のpHを有する、E27に記載の製剤。
【0028】
E29.製剤が約5.5または5.8のpHを有する、E27に記載の製剤。
E30.抗体がTFPIのクニッツドメイン1(K1)に結合しない、E1~E29のいずれか1つに記載の製剤。
【0029】
E31.エピトープが、配列番号2の番号付けに基づき、残基Cys106、Gly108、Cys130、Leu131、およびGly132をさらに含む、E2~E30のいずれか1つに記載の製剤。
【0030】
E32.エピトープが、配列番号2の番号付けに基づき、Asp102、Arg112、Tyr127、Gly129、Met134、およびGlu138をさらに含む、E2~E31のいずれか1つに記載の製剤。
【0031】
E33.エピトープが、配列番号2の番号付けに基づき、E100、E101、P103、Y109、T111、Y113、F114、N116、Q118、Q121、C122、E123、R124、F125、K126、およびL140を含まない、E2~E32のいずれか1つに記載の製剤。
【0032】
E34.エピトープが、配列番号2の番号付けに基づき、D31、D32、P34、C35、K36、E100、E101、P103、Y109、K126、およびG128を含まない、E2~E32のいずれか1つに記載の製剤。
【0033】
E35.抗体が、以下を含む重鎖可変領域(VH)を含む、E1~E34のいずれか1つに記載の製剤:
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)。
【0034】
E36.抗体が、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E35のいずれか1つに記載の製剤。
【0035】
E37.抗体が、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E36のいずれか1つに記載の製剤。
E38.抗体が、配列番号16のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E37のいずれか1つに記載の製剤。
【0036】
E39.抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E37のいずれか1つに記載の製剤。
E40.抗体が、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E37のいずれか1つに記載の製剤。
【0037】
E41.抗体が、以下を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、E1~E40のいずれか1つに記載の製剤:
(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)。
【0038】
E42.抗体が、配列番号11と少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含むVLを含む、E1~E41のいずれか1つに記載の製剤。
【0039】
E43.抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E1~E42のいずれか1つに記載の製剤。
E44.抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1~E43のいずれか1つに記載の製剤。
【0040】
E45.抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1~E43のいずれか1つに記載の製剤。
E46.抗体が、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1~E43のいずれか1つに記載の製剤。
【0041】
E47.抗体が、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1~E46のいずれか1つに記載の製剤。
E48.抗体が、以下を含む、E1~E47のいずれか1つに記載の製剤:
(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)。
【0042】
E49.抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E48に記載の製剤。
E50.抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-122329の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされるVH配列を含む、E1~E49のいずれか1つに記載の製剤。
【0043】
E51.抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-122328の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされるVL配列を含む、E1~E50のいずれか1つに記載の製剤。
【0044】
E52.抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-122329の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされる配列、およびATCCアクセッション番号PTA-122328の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされる配列を含む、E1~E51のいずれか1つに記載の製剤。
【0045】
E53.抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1~E52のいずれか1つに記載の製剤。
E54.抗体が、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E48に記載の製剤。
【0046】
E55.抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E54に記載の製剤。
E56.抗体が、配列番号20のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E48に記載の製剤。
【0047】
E57.抗体が、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E56に記載の製剤。
E58.抗体が、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1、E3~E29のいずれか1つに記載の製剤。
【0048】
E59.抗体が、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1、E3~E29のいずれか1つに記載の製剤。
E60.抗体が、少なくとも25時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも105時間、少なくとも110時間、少なくとも115時間、少なくとも120時間、または少なくとも125時間の血清半減期を有する、E1~E59のいずれか1つに記載の製剤。
【0049】
E61.抗体が、約5×10-7Mから約5×10-11Mの結合親和性(K)を有する、E1~E60のいずれか1つに記載の製剤。
E62.抗体が、静脈内バイオアベイラビリティと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95、または少なくとも99%の皮下(SC)バイオアベイラビリティを有する、E1~E61のいずれか1つに記載の製剤。
【0050】
E63.抗体の濃度が、約20mg/mL、25mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/ml、125mg/ml、150mg/mL、175mg/mL、200mg/ml、225mg/ml、または250mg/mLである、E1~E62のいずれか1つに記載の製剤。
【0051】
E64.約150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、約20mMのコハク酸塩またはヒスチジン緩衝液;約85mg/mLのスクロースまたはトレハロース;約0.2mg/mLのポリソルベート80またはポリソルベート20;約0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む水性製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、約5.5または5.8のpHを有する、製剤。
【0052】
E65.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【0053】
E66.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【0054】
E67.約50mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【0055】
E68.約50mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【0056】
E69.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、10mMのヒスチジン緩衝液、64mg/mLのスクロース、0.1mg/mLのポリソルベート80、0.038mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、6.4のpHを有する、製剤。
【0057】
E70.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、40mMのヒスチジン緩衝液、106mg/mLのスクロース、0.3mg/mLのポリソルベート80、0.063mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、5.2のpHを有する、製剤。
【0058】
E71.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、10mMのヒスチジン緩衝液、64mg/mLのスクロース、0.1mg/mLのポリソルベート80、0.038mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、5.2のpHを有する、製剤。
【0059】
E72.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【0060】
E73.製剤が、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を含まない、E72に記載の医薬製剤。
E74.製剤が、(例えば、約-20℃、約5℃、約25℃、または約40℃で)少なくとも約1か月、約3か月、約4か月、約6か月、約12か月、約24か月、約36か月、約48か月、または約60か月の貯蔵寿命を有する、E1~E73のいずれか1つに記載の製剤。
【0061】
E75.製剤が水性製剤である、E1~E74のいずれか1つに記載の製剤。
E76.製剤が医薬製剤である、E1~E75のいずれか1つに記載の製剤。
E77.出血時間を短縮する方法であって、それを必要とする対象に、E1~E76のいずれか1つに記載の治療有効量の製剤を投与するステップを含む方法。
【0062】
E78.血液凝固における障害または出血性障害を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、E1~E76のいずれか1つに記載の治療有効量の製剤を投与するステップを含む方法。
【0063】
E79.血友病A、BまたはCを治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、E1~E76のいずれか1つに記載の治療有効量の製剤を投与するステップを含む方法。
【0064】
E80.フォンウィルブランド病(vWD)を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、E1~E76のいずれか1つに記載の治療有効量の製剤を投与するステップを含む方法。
【0065】
E81.TFPIの活性を低下させる方法であって、それを必要とする対象に、E1~E76のいずれか1つに記載の治療有効量の製剤を投与するステップを含む方法。
E82.対象が、血液凝固における障害または出血性障害に罹患しているか、または罹患しやすい、E77~E81のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
E83.対象が、血友病A、B、またはCに罹患しているか、または罹患しやすい、E77~E82のいずれか1つに記載の方法。
E84.対象が、血友病AまたはBに罹患しているか、または罹患しやすい、E77~E83のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
E85.対象が、フォンウィルブランド病(vWD)に罹患しているか、または罹患しやすい、E77~E82のいずれか1つに記載の方法。
E86.対象が、血小板障害に罹患しているか、または罹患しやすい、E77~E82のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
E87.対象が、第VII因子欠乏症に罹患しているか、または罹患しやすい、E77~82のいずれか1つに記載の方法。
E88.対象が、第XI因子欠乏症に罹患しているか、または罹患しやすい、E77~E82のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
E89.凝固剤を対象に投与するステップをさらに含む、E77~E88のいずれか1つに記載の方法。
E90.凝固剤が、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、トラネキサム酸およびバイパス剤(例えば、FEIBA)からなる群から選択される、E89に記載の方法。
【0070】
E91.E77~E90のいずれか1つに記載の方法における、E1~E76のいずれか1つの製剤の使用。
E92.E77~E90のいずれか1つに記載の方法において使用するための、E1~E76のいずれか1つに記載の製剤。
【0071】
E93.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む、E77~E90のいずれかに記載の方法において使用するための製剤であって、ここで、抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【0072】
E94.150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物からなる医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、製剤。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本明細書に開示されるのは、組織因子経路インヒビター(TFPI)抗体を含む、延長された貯蔵寿命を有する安定な水性医薬製剤である。本出願は、ヒスチジン緩衝液を含み、pH5.8を有する製剤が、高濃度のTFPI抗体を安定して支持するという発見に基づいている。
【0074】
特に、pH5.8のヒスチジン緩衝水性製剤中に保存された抗TFPI抗体は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)を使用して%高分子量種(%HMMS)により評価した場合、低い分解レベルを有することが実証された(表1を参照)。例えば、5±3℃という意図された保管条件において、抗TFPI抗体は最大24か月間安定であり、分解はほとんどまたはまったく観察されなかった(%HMMSの範囲は0.5から0.9)。40℃/75%RHの熱ストレス保管条件では、いくらかの分解が観察されたが(%HMMSは1か月(すなわち、4週間)で0.9から1.2の範囲であり、3か月(すなわち、12週間)で1.5から2.4の範囲であった)、この分解は、抗VEGF抗体などの他のIgG1抗体で観察されたものよりも少ないものであった(表9を参照;US2018/0000933の表11から得られた抗VEGF抗体のデータ)。特に、40℃で1か月(すなわち、4週間)、pH5.8のヒスチジン緩衝製剤中に保存された抗VEGF抗体の高分子量種(%HMMS)の量は3.1(抗TFPI抗体の0.9から1.2と比較)であり、3か月間(すなわち、12週間)保存されたものは5.6(抗TFPI抗体の1.5から2.4と比較)であった。したがって、pH5.8のヒスチジン緩衝製剤は、抗VEGF抗体と比較して、分解を遅らせ、凝集体形成を減少させ、抗TFPI抗体の安定性を改善する。この結果は驚くべきものであり、予想外であった。
【0075】
したがって、一つの側面において、提供されるのは、約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)抗体、緩衝液、ポリオール、界面活性剤、キレート剤を含む製剤であって、約5.0から約6.0のpHを有する製剤である。例えば、いくつかの態様において、提供されるのは、約15mg/mLから約250mg/mLのTFPI抗体(例えば、抗TFPI抗体)、約1mMから約40mMの緩衝液(例えば、ヒスチジン緩衝液)、約1mg/mLから約300mg/mLのポリオール(例えば、スクロース)、約0.01mg/mLから約10mg/mLの界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)、約0.01mg/mLから約50.0mg/mLのキレート剤(例えば、エデト酸二ナトリウム二水和物)を含む製剤であって、約5.0から約6.0のpHを有する製剤である。いくつかの態様において、抗体濃度は、約15mg/mLから約250mg/mLである。他の態様では、抗体濃度は、約100mg/mL、約115mg/mL、約150mg/mLまたは158mg/mLである。
【0076】
一般的技法
本発明の実施には、他に示されない限り、当技術分野の技術の範囲内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来的な技術を使用する。このような手法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989年)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984年)、Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998年)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987年);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998年)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993~1998年)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987年);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987年);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編、1994年);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991年);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999年);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997年);Antibodies(P.Finch、1997年);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988~1989年);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000年);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999年);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995年)などの文献で詳しく説明されている。
【0077】
定義
以下の用語は、特に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである:用語「単離された分子」または「精製された分子」(分子が例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である場合)は、その起源または派生源によって、(1)本来の状態でそれに付随する天然の関連成分と関連していない、(2)同じ種からの他の分子を実質的に含まない、(3)異なる種の細胞によって発現される、または(4)自然界においては生じない、分子である。したがって、化学的に合成された分子、またはそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞系で発現された分子は、その天然の関連成分から「単離」されていることになる。分子はまた、当技術分野で周知の精製技術を使用して単離することにより、天然関連成分を実質的に含まないようにされうる。分子の純度または均一性は、当技術分野で周知の多くの手段によってアッセイされうる。例えば、ポリペプチド試料の純度は、当技術分野で周知の技術を使用してポリペプチドを視覚化するために、ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルの染色を使用してアッセイされうる。特定の目的のために、HPLCまたは精製のための当技術分野で周知の他の手段を使用することによって、より高い分解能が提供されうる。
【0078】
本明細書で使用される場合、抗体に関連する「製剤」という用語は、抗体の生物学的活性が有効となることを可能にするような形態の抗体調製物を記述することが意図されている。
【0079】
「医薬組成物」または「医薬製剤」という用語は、薬学的に許容される担体/賦形剤と組み合わせた抗体の調製物を指す。本明細書で使用される場合、「水性製剤」は、成分として水を含む製剤を指す。
【0080】
「薬学的に許容される担体/賦形剤」(ビヒクル、添加剤)は、使用される有効成分の有効量を提供するために対象に安全に投与され得るものである。本明細書で使用される「賦形剤」または「担体」という用語は、薬物のための希釈剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤または安定剤として一般的に使用される不活性物質を指す。そのような担体を含む組成物は、周知の従来的な方法によって調合される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、1990年;およびRemington,The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing、2000年を参照)。本明細書で使用される場合、「希釈剤」という用語は、薬学的に許容される(ヒトへの投与に対して安全かつ非毒性の)溶媒を指し、本明細書に記載の製剤の調製に有用である。例示的な希釈剤は、滅菌水および注射用静菌水(BWFI)を含むが、これらに限定されない。
【0081】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、この用語は、完全なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、特に明記しない限り、特異的結合について完全な抗体と競合するその抗原結合フラグメント/部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の改変構成を包含する。抗原結合部分は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメおよびラクダ抗体)、相補性決定領域(CDR)を含むフラグメント、一本鎖可変フラグメント抗体(scFv)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NARおよびbis-scFv、およびポリペプチドへの特異的抗原結合を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(またはそれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、特定のクラスのものである必要はない。免疫グロブリンは、その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2といったサブクラス(アイソタイプ)にさらに分類されうる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元構成は、周知である。
【0082】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を単独で、または組み合わせで指す。当技術分野で知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって連結された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。特にCDRの外側(すなわち、フレームワーク領域内)のアミノ酸残基の置換を伴う対象可変領域のバリアントが望まれる場合、適切なアミノ酸置換、好ましくは保存的アミノ酸置換が、対象可変領域と同じカノニカルクラスのCDR1およびCDR2配列を含む他の抗体の可変領域と、対象可変領域とを比較することによって同定され得る(ChothiaおよびLesk、J Mol Biol 196(4):901~917頁、1987年)。
【0083】
特定の態様において、CDRの明確な描写および抗体の結合部位を含む残基の同定は、抗体の構造を解明すること、および/または抗体-リガンド複合体の構造を解明することによって達成される。特定の態様では、それは、X線結晶学などの当技術分野で知られている様々な技法のいずれかによって達成され得る。特定の態様では、CDR領域を特定または見積もるために、様々な分析方法が使用され得る。特定の態様では、CDR領域を特定または見積もるために、様々な分析方法が使用され得る。そのような方法の例は、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、コンタクト定義、およびコンフォメーション定義を含むが、これらに限定されない。
【0084】
Kabat定義は、抗体中の残基に番号を付けるための基準であり、通常、CDR領域を同定するために使用される。例えば、Johnson&Wu、2000、Nucleic Acids Res.、28:214~8頁を参照。Chothia定義は、Kabat定義に似ているが、Chothia定義は特定の構造ループ領域の位置を考慮に入れている。例えば、Chothiaら、1986年、J.Mol.Biol.、196:901~17頁;Chothiaら、1989年、Nature、342:877~83頁を参照。AbM定義は、抗体構造をモデル化するOxford Molecular Groupによって作成されたコンピュータープログラムの統合スイートを使用する。例えば、Martinら、1989年、Proc Natl Acad Sci(USA)、86:9268~9272頁;「AbMTM,A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies」、英国オックスフォード;Oxford Molecular,Ltd.を参照。AbM定義は、Samudralaら、1999年、PROTEINS,Structure,Function and Genetics Suppl.、3:194~198頁の「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined HierarchicalApproach」に記述されるものなどの知識データベースとab initio法の組み合わせを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。コンタクト定義は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。例えば、MacCallumら、1996年、J.Mol.Biol.、5:732~45頁を参照。本明細書においてCDRの「コンフォメーション定義」と呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定されうる。例えば、Makabeら、2008年、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166頁を参照。なお、他のCDR境界定義は、上記のアプローチの1つに厳密には従わない場合があり、特定の残基または残基のグループが抗原結合に有意に影響を与えないという予測または実験結果に照らして、短縮または延長され得るものの、それにもかかわらず、KabatのCDRの少なくとも一部とは重複するであろう。本明細書で使用される場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当技術分野で知られている任意のアプローチによって定義されるCDRを指しうる。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されたCDRを利用しうる。複数のCDRを含む任意の所与の態様について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、コンタクト、および/またはコンフォメーション定義のいずれに従って定義されてもよい。
【0085】
当技術分野で知られているように、抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を単独で、または組み合わせで指す。
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質である抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる天然に発生する可能性のある変異を除いて同一である抗体の集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられている。さらに、通常、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられている。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein,1975年、Nature 256:495頁によって最初に記述されたハイブリドーマ法によって作製されても、または米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法によって作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCaffertyら、1990年、Nature 348:552~554頁に記載されている技術を使用して生成されたファージライブラリーから単離されてもよい。
【0086】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、および/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムまたは部位特異的な突然変異誘発またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入される変異)を含みうる。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0087】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列はヒト抗体に由来する抗体など、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体を指すことが意図される。
【0088】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または他の抗体の抗原結合性サブ配列など)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されるCDRまたはフレームワーク配列にも見出されないが、抗体の性能をさらに洗練および最適化するために含まれる残基を含みうる。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。好ましいものは、WO99/58572に記載されているように修飾されたFc領域を有する抗体である。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体と比較して変更された1つまたは複数のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2、またはCDR H3)を有し、これらは、元の抗体の1つまたは複数のCDRに「由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。
【0089】
モノクローナル抗体をヒト化するための4つの一般的なステップがある。これらは:(1)出発抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予測されるアミノ酸配列の決定、(2)ヒト化抗体の設計、すなわち、ヒト化プロセス中に使用する抗体フレームワーク領域の決定、(3)実際のヒト化方法/技術、および(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号、第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;および第6,180,370号を参照されたい。
【0090】
げっ歯類V領域または改変されたげっ歯類V領域およびヒト定常ドメインに融合したそれらの関連する相補性決定領域(CDR)を有するキメラ抗体を含む、非ヒト免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を含む多くの「ヒト化」抗体分子が記述されている。例えば、Winterら、Nature 349:293~299頁(1991年)、Lobuglioら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220~4224頁(1989年),Shawら、J Immunol.138:4534~4538頁(1987年)、およびBrownら、Cancer Res.47:3577~3583頁(1987年)を参照。他の参考文献は、適切なヒト抗体定常ドメインとの融合の前に、ヒト支持フレームワーク領域(FR)に移植されたげっ歯類CDRを記載している。例えば、Riechmannら、Nature 332:323~327頁(1988年)、Verhoeyenら、Science 239:1534~1536頁(1988年)、およびJonesら、Nature 321:522~525頁(1986年)を参照。別の参考文献は、組換え的に修飾したげっ歯類フレームワーク領域によって支持されるげっ歯類CDRについて記載している。例えば、欧州特許公開第0519596号を参照。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおけるげっ歯類抗ヒト抗体分子の治療用途の期間と有効性を制限する、これらの部分に対する望ましくない免疫応答を最小限に抑えるように設計されている。例えば、抗体定常領域は、免疫学的に不活性となる(例えば、補体溶解を引き起こさない)ように改変され得る。例えば、PCT公開番号第WO99/58572号;英国特許出願第9809951.8号を参照。利用されうる他の抗体ヒト化方法は、Daughertyら、Nucl.Acids Res.19:2471~2476頁(1991年)および米国特許第6,180,377号;第6,054、297号;第5,997,867号;第5,866,692号;第6,210,671号;および第6,350,861号;およびPCT公開番号WO01/27160に開示されている。
【0091】
本明細書で使用される場合、「組換え抗体」という用語は、組換え法によって調製、発現、作出または単離されたあらゆる抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を遺伝子導入した動物(例えば、マウス)から単離された抗体、または組換えヒト抗体がin vitro変異誘発に供され得る、調製された抗体を含むことが意図される。
【0092】
「エピトープ」という用語は、抗体の1つまたは複数の抗原結合領域で抗体によって認識され、結合されることができる分子の部分を指す。エピトープはしばしば、アミノ酸や糖側鎖などの分子の表面群からなり、特定の3次元構造特性と特定の電荷特性を有している。いくつかの態様において、エピトープは、タンパク質エピトープであり得る。タンパク質エピトープは、直鎖状または立体構造的であり得る。直鎖状エピトープでは、タンパク質と相互作用性分子(抗体など)との間の相互作用の全てのポイントが、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直鎖状に生じる。「非直鎖状エピトープ」または「立体構造的エピトープ」は、エピトープに特異的な抗体が結合する抗原性タンパク質内の隣接しないポリペプチド(またはアミノ酸)を含む。本明細書で使用される「抗原性エピトープ」という用語は、当技術分野で周知の任意の方法、例えば、従来的なイムノアッセイによって決定される、抗体が特異的に結合できる抗原の一部として定義される。いったん抗原上の所望のエピトープが決定されれば、例えば、本明細書に記載の技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。あるいは、発見プロセス中に、抗体の生成および特徴付けによって、望ましいエピトープに関する情報が明らかにされうる。この情報から、次に、同じエピトープへの結合について、抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。これを達成するためのアプローチは、TFPIへの結合について、例えば、抗体が抗原への結合について競合する、互いに競合または交差競合する抗体を見つけるために、競合および交差競合試験を実施することである。
【0093】
「アンタゴニスト抗体」という用語は、標的に結合し、その標的の生物学的効果を防止または低減する抗体を指す。いくつかの態様において、この用語は、抗体が結合する標的、例えば、TFPIが生物学的機能を発揮するのを減少させる抗体を表し得る。
【0094】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で交換可能に使用される)抗体は、当技術分野でよく理解されている用語であり、そのような特異的または優先的結合を決定する方法もまた、当技術分野では周知である。分子は、代替の細胞または物質に対するよりも、特定の細胞または物質に対して、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間および/または、より高い親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体が他の物質に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間、結合する場合、それは標的に「特異的に結合」または「優先的に結合」する。例えば、TFPIエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他の配列に結合するよりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間、このエピトープ配列に結合する抗体である。また、この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合しても、しなくてもよいことも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的結合を(含んでもよいが)必ずしも要しない。一般には、必ずしもそうとは限らないが、結合への言及は優先的な結合を意味する。
【0095】
目的の分子に特異的に結合する抗体またはペプチドを選択するために、様々なアッセイ形式が使用されうる。例えば、固相ELISA免疫アッセイ、免疫沈降、Biacore(商標)(GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、KinExA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、Octet(商標)(ForteBio、Inc.、カリフォルニア州メンローパーク)およびウエスタンブロット分析は、抗原または受容体と特異的に反応する抗体、または同族のリガンドまたは結合パートナーと特異的に結合するそのリガンド結合部分を同定するために使用されうる多くのアッセイの一部である。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10倍超、さらにより典型的にはバックグラウンドの50倍超、より典型的にはバックグラウンドの100倍超、さらにより典型的にはバックグラウンドの500倍超、さらにより典型的にはバックグラウンドの1000倍超、そしてさらにより典型的にはバックグラウンドの10,000倍超となる。また、平衡解離定数(K)が7nM以下の場合、抗体は抗原に「特異的に結合」すると言われる。
【0096】
「結合親和性」という用語は、本明細書では、2つの分子、例えば、抗体またはそのフラグメントと抗原との間の非共有相互作用の強度の尺度として使用される。「結合親和性」という用語は、一価の相互作用(固有の活性)を説明するために使用される。
【0097】
一価の相互作用を介した2つの分子、例えば、抗体またはそのフラグメントと抗原との間の結合親和性は、解離定数(K)の決定によって定量化されうる。次に、Kは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(Biacore)を使用して、複合体の形成および解離の動力学を測定することによって決定され得る。一価複合体の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ、結合速度定数k(またはkon)および解離速度定数k(またはkoff)と呼ばれる。Kは、式K=k/kによって、kおよびkに関連付けられる。解離定数の値は、周知の方法によって直接的に決定することができ、例えば、Caceciら(1984年、Byte 9:340~362頁)に記載されているような方法によって、複雑な混合物についてさえ計算され得る。例えば、Kは、Wong&Lohman(1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428~5432頁)によって開示されたものなどのダブルフィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを使用して確立されうる。例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIA、およびフローサイトメトリー分析、および本明細書の他の箇所に例示される他のアッセイを含む、標的抗原に対する抗体などのリガンドの結合能力を評価するための他の標準的なアッセイが、当技術分野において知られている。抗体の結合動態および結合親和性はまた、例えばBiacore(商標)システムまたはKinExAを使用することにより、表面プラズモン共鳴(SPR)などの当技術分野で知られている標準的なアッセイによっても評価され得る。
【0098】
その標的に特異的に結合する抗体は、その標的に高い親和性で結合しうる、すなわち、上記のように低いKを示し、より低い親和性で他の非標的分子に結合しうる。例えば、抗体は、1×10-6M以上、より好ましくは1×10-5M以上、より好ましくは1×10-4M以上、より好ましくは1×10-3M以上、さらにより好ましくは1×10-2M以上のKで、非標的分子に結合しうる。本発明の抗体は、好ましくは、別の非TFPI分子への結合に対する親和性よりも少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、または10,000倍以上の親和性で、その標的に結合することができる。
【0099】
本明細書で使用される場合、抗体の「免疫特異的」結合は、抗体の抗原結合部位とその抗体によって認識される特異的抗原との間で起こる抗原特異的結合相互作用を指す(すなわち、抗体はELISAまたは他のイムノアッセイにおいてタンパク質と反応し、無関係のタンパク質とは検出可能に反応しない)。
【0100】
抗体に関して本明細書で使用される「競合する」という用語は、第一の抗体またはその抗原結合部分が、第二の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に類似した方法でエピトープに結合し、第一の抗体とその同族のエピトープとの結合の結果が、第二の抗体の非存在下での第一の抗体の結合と比較して、第二の抗体の存在下において検出可能に減少することを意味する。代替的に、第一の抗体の存在下において第二の抗体のそのエピトープへの結合も検出可能に減少する場合もあり得るが、そうである必要はない。すなわち、第一の抗体は、そのエピトープへの第二の抗体の結合を阻害することができるが、その第二の抗体は、そのそれぞれのエピトープへの第一の抗体の結合を阻害しない。しかしながら、各抗体が他の抗体とその同族のエピトープまたはリガンドとの結合を検出可能に阻害する場合、同程度、または多かれ少なかれ程度の差はあれ、抗体はそれぞれのエピトープの結合について互いに「交差競合」すると言われる。競合抗体と交差競合抗体の両方が本発明に包含される。そのような競合または交差競合が生じるメカニズム(例えば、立体障害、コンフォメーション変化、または共通のエピトープもしくはその一部への結合)に関係なく、当業者は、本明細書で提供される教示に基づいて、そのような競合および/または交差競合する抗体が、本明細書に開示される方法に包含され、有用となり得ることを認識するであろう。
【0101】
本明細書で使用される場合、「組織因子経路インヒビターまたはTFPI」という用語は、TFPIの活性の少なくとも一部を保持する任意の形態のTFPIおよびそのバリアントを指す。TFPIは、プロテアーゼインヒビターを含む多価クニッツドメインである。ヒト、マウス、カニクイザル、ウサギ、およびラットのTFPIの例示的な配列が表20に提供される。ヒトTFPIは、TFPI-αおよびTFPI-βの2つの主要な形態を有する細胞外糖タンパク質である。276アミノ酸のグリコシル化タンパク質(分子量43kD)であるTFPIアルファは、TFPIの最も大きな形態であり、3つのクニッツ様ドメインと塩基性カルボキシ末端領域からなる。選択的スプライシングは、クニッツドメイン1(K1)とクニッツドメイン2(K2)を含むが、クニッツドメイン3(K3)と塩基性領域を欠いた代替的なC末端部分を含むTFPI-βを生成する。TFPI-βは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーによる翻訳後修飾によって細胞膜に固定される。
【0102】
TFPIの主な標的は、凝固カスケードの開始段階における重要な因子であるプロテアーゼの第Xa因子(FXa)と第VIIa因子(FVIIa)である。生化学的分析は、K2がFXaのインヒビターである一方、K1がFVIIa-組織因子複合体を阻害することを明らかにしている。K3の役割は、直接的なプロテアーゼ阻害活性を持たないように見えることから、不明であるが、補因子プロテインSの認識部位として機能する可能性がある。TFPI-αに固有のC末端ドメインは、血小板表面上のプロトロンビナーゼの認識に関与している可能性がある。
【0103】
クニッツドメイン1(K1)は、配列番号2のアミノ酸残基26~76に対応し、クニッツドメイン2(K2)は、配列番号2の残基91~147に対応している。他のTFPIホモログ、アイソフォーム、バリアント、またはフラグメントからのK1およびK2ドメインが、配列番号2に対する配列アラインメントまたは構造アラインメントによって同定され得る。
【0104】
本開示のTFPIは、任意の適切な生物に由来しうる任意の天然に生じる形態のTFPIを含む。例えば、TFPIは、ヒト、マウス、ラット、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、またはブタのTFPIなど、哺乳動物のTFPIでありうる。特定の態様では、TFPIはヒトTFPIである。TFPIは、TFPIの成熟形態(すなわち、適切な細胞内で翻訳後プロセシングを受けたTFPIタンパク質)でありうる。そのような成熟TFPIタンパク質は、例えば、グリコシル化されていてもよい。
【0105】
本開示のTFPIは、天然に生じるTFPIに由来する任意の機能的フラグメントまたはバリアントを含む。TFPIの機能的フラグメントは、第Xa因子(FXa)を阻害する能力、FVIIa-組織因子複合体の活性を阻害する能力、および/または凝固または止血の負の調節因子として機能する能力など、TFPIの活性を保持するTFPIの任意の要素または部分であり得る。例えば、機能的フラグメントは、TFPIのK1ドメイン、K2ドメイン、またはK1ドメインとK2ドメインの両方などのクニッツドメインを含みうる。
【0106】
機能的バリアントは、天然に生じるTFPIと比較して、1つ以上の変異を含むが、それでも、第Xa因子(FXa)を阻害する能力、またはFVIIa-組織因子複合体の活性を阻害する能力などの天然に生じるTFPIの活性を保持し得る。例えば、バリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号7に記載された配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるといった、様々な程度の配列同一性を配列番号1、2、3、4、5、6、または7に対して有しうる。
【0107】
本発明のTPFIフラグメント、バリアント、アイソフォームおよびホモログは、本明細書に記載されるように、重要なエピトープ残基(TFPI-23およびTFPI-106抗体が使用される場合、Ile105、Arg107、およびLeu131など)を維持すべきである。さらに、TFPIは、TFPIのK2ドメインの5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上の表面アクセス可能残基を含みうる。表面アクセス可能残基は、40%を超える相対的アクセス可能性を有する残基である。
【0108】
例えば、TFPIのK2ドメイン(例えば、配列番号2を参照)の場合、以下のアミノ酸残基は、40%を超える相対的アクセス可能性を有している:94~95、98、100~110、118~121、123~124、131、134、138~142および144~145。TFPIは、これらの残基のうち5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上を含むTFPIのフラグメントなど、これらの残基のうち5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上を含みうる。
【0109】
TFPIにおける特定のアミノ酸残基の位置は、配列番号2(ヒトTFPIα K1K2K3)に従って番号付けられる。しかしながら、本発明は、配列番号2に限定はされない。他のTFPIホモログ、アイソフォーム、バリアント、またはフラグメントからの対応する残基は、当技術分野で知られている配列アラインメントまたは構造アラインメントに従って同定され得る。例えば、アラインメントは、手作業で、またはClustalW2もしくは「BLAST2Sequences」などの周知の配列アラインメントプログラムをデフォルトのパラメータを用いて使用して行われ得る。例えば、配列番号2のArg107は、マウスTFPI K1K2(配列番号4)のArg104に対応する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「TFPIアンタゴニスト抗体」(交換可能に「TFPI抗体」または「抗TFPI抗体」とも呼ばれる)は、TFPIに結合し、TFPIの生物学的活性および/またはTFPIシグナリングにより媒介される下流の経路を阻害することができる抗体を指す。TFPIアンタゴニスト抗体は、リガンド結合および/またはTFPIへの細胞応答の誘発などの、TFPIシグナル伝達によって媒介される下流の経路を含む、TFPIの生物学的活性を遮断、拮抗、抑制または低減する(有意にそうすることを含む)抗体を包含する。本発明の目的のために、「TFPIアンタゴニスト抗体」という用語は、以前に同定された全ての用語、タイトル、および機能状態および特徴を包含し、それにより、TFPI自体、TFPIの生物活性(その血液凝固のあらゆる側面を媒介する能力を含むがそれに限定されない)、または生物学的活性の結果が、意味のある程度に実質的に無効化、減少、または中和されることが明確に理解されるであろう。いくつかの態様において、TFPIアンタゴニスト抗体は、TFPIに結合し、TFPIが組織因子(TF)/第VIIa因子複合体に結合すること、および/またはその阻害を防止する。他の態様において、TFPI抗体は、TFPIに結合し、TFPIが第Xa因子に結合すること、および/またはその阻害を防止する。TFPIアンタゴニスト抗体の例は、本明細書中に提供されている。
【0111】
薬物、製剤、化合物、または医薬組成物の「有効量」は、標的となる病的状態の緩和または軽減などの臨床結果を含む、有益なまたは望ましい結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与で投与され得る。本発明の目的では、有効量の薬物、化合物、または医薬組成物は、標的とされる病的状態を治療、改善、またはその強度を低減するのに十分な量である。臨床的な文脈において理解されるように、有効量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つまたは複数の治療剤を投与する状況で考慮されてもよく、単一の薬剤は、1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて望ましい結果が達成されうるか、達成される場合、有効量で与えられると見なされうる。
【0112】
「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投与量および期間において有効な量を指し、これは、抗TFPI抗体の文脈においては、標的化された病的状態、例えば、血友病A、B、またはCなどの出血性障害の治療または予防的阻止を含む。投与量の値は、緩和されるべき状態の重症度によって変化しうることに留意されたい。任意の特定の対象について、特定の投与計画は、個々の必要性および組成物を投与する者または投与を監督する者の専門的判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載の投与範囲は例示的なものに過ぎず、特許請求された組成物の範囲または実施を制限することを意図するものではないことをさらに理解されたい。同様に、抗体または抗体部分の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、および体重などの因子、個体において所望される応答を誘発する抗体または抗体部分の能力、および抗体製剤の所望の投与経路に応じて変化しうる。治療有効量はまた、抗体または抗体部分の毒性または有害効果が、治療上の有益な効果によって凌駕される量でもある。
【0113】
抗TFPI抗体の治療有効量は、例えば、2019年10月9日に出願されたPCT/IB2019/058597(US62/802,401およびUS62/744,481に対する優先権を主張)に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、治療有効量は、約300mgの初期用量と、それに続く約150mgのその後の毎週(すなわち、週に1回)の用量を含む。いくつかの態様において、治療有効量は、約150mgの初期用量と、その後の約150mgの毎週(すなわち、週に1回)の用量を含む。いくつかの態様において、治療有効量は、約300mgの初期用量と、その後の約300mgの毎週(すなわち、週に1回)の用量を含む。いくつかの態様において、治療有効量は、約450mgの初期用量と、その後の毎週(すなわち、週に1回)の約450mgの用量を含む。
【0114】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、治療的処置と予防的または防止的手段の両方を指し、その目的は、標的となる病的状態(例えば、抗体による治療から利益が得られるであろう任意の状態)を予防または減速(軽減)することである。これは、問題となっている障害に哺乳動物をかかりやすくする病的状態を含む、慢性および急性の障害または疾患を含む。治療が必要な者は、すでにその状態にある者、その状態になりやすい者、またはその状態を予防する必要がある者を含む。本明細書で使用される場合、「治療」は、以下の1つまたは複数を含むがこれらに限定されない、有益なまたは所望される臨床結果を得るためのアプローチである:重症度の軽減、病的状態に関連する1つまたは複数の症状の緩和を含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、治療の目的のための「対象」または「個人」という用語は、任意の対象を含み、好ましくは、標的の病的状態(例えば、血友病)の治療を必要とする対象である。予防の目的では、対象は任意の対象であり、好ましくは、標的となる病的状態を発症するリスクがあるか、または発症する素因がある対象である。「対象」という用語は、生物、例えば、原核生物および真核生物を含むことが意図される。対象の例は、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物を含む。本発明の特定の態様では、対象はヒトである。
【0116】
本明細書で使用される場合、本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドのポリマー形態、またはいずれかの型のヌクレオチドの修飾形態を意味し、一本鎖および二本鎖の形態でありうる。「ポリヌクレオチド」または「核酸」配列は、特に明記しない限り、その相補体を包含する。本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」または「単離された核酸」という用語は、ゲノム、cDNA、または合成起源のポリヌクレオチド、またはそれらのいくつかの組み合わせを意味し、その起源または派生源のために、単離されたポリヌクレオチドは以下のうちの1つから3つを有する:(1)「単離されたポリヌクレオチド」が自然界に見出されるポリヌクレオチドの全部または一部に関連していない、(2)自然界においては連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されている、または(3)より大きな配列の一部として自然界においては生じない。
【0117】
本明細書における「約」の付いた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた態様を含む(そして記述する)。例えば、「約X」に言及している記述は、「X」の記述を含む。数値範囲は、範囲を定義する数値を含んでいる。一般的に言えば、「約」という用語は、変数の示された値と、示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)または示された値の10%以内のいずれか大きい方の範囲内である変数のあらゆる値を指す。
【0118】
本発明の側面または態様がマーカッシュ形式または他の択一的な群の観点から記述される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、群の各要素を個別に、また、主群の全ての可能な下位群を包含し、1つまたは複数の群の要素を欠いた主群も包含する。本発明はまた、特許請求された発明における群の要素のいずれか1つまたは複数の明示的な除外も想定している。
【0119】
本発明の要素またはその好ましい態様を導入する際、冠詞「a(一つの)」、「an(一つの)」、「the(前記)」および「said(前記)」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味することが意図される。「comprising(含む)」、「comprise(含む)」、「comprises(含む)」、「including(含む)」および「having(有する)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在しうることを意味する。態様が「comprising(含む)」という言葉で本明細書において記載されている場合は常に、「consisting of(からなる)」および/または「consisting essentially of(から本質的になる)」の観点で記載される類似の態様もまた提供されることが理解される。
【0120】
特に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含め、本明細書が優先するものとする。文脈によって別段要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0121】
例示的な方法および材料が本明細書において記載されるが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料もまた、本発明の実施または試験に使用され得る。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0122】
抗TFPI抗体製剤
本出願は、ヒスチジン緩衝液を含み、pH5.8を有する製剤が、抗VEGF抗体などの他のIgG1抗体と比較して、抗TFPI抗体の分解を遅らせ、凝集体形成を減少させ、安定性を改善するという驚くべき予想外の観察に基づいている。
【0123】
したがって、一つの側面において、本明細書において提供されるのは、約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)抗体、緩衝液、ポリオール、界面活性剤、キレート剤を含む製剤であって、約5.0から約6.0のpHを有する製剤である。いくつかの態様において、製剤は、約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、緩衝液、ポリオール、界面活性剤、キレート剤を含む製剤であって、製剤が約5.0から約6.0のpHを有し、エピトープが配列番号2の番号付けに基づき、残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む製剤である。本明細書に記載の製剤は、(例えば、約-70℃、約-20℃、約5℃、約25℃または約40℃において)好ましくは少なくとも約1か月、約4か月、約6か月、約12か月、約24か月、約36か月、約48か月、または約60か月の長期にわたる貯蔵寿命を有する。
【0124】
いくつかの態様では、製剤は、少なくとも1つのTFPIアンタゴニスト抗体(すなわち、抗TFPI抗体)を含む。例示的なTFPIアンタゴニスト抗体は、WO2017/029583、WO2010/017196、WO2011/109452、WO2014/144577、WO2010/072687、WO2012/001087、WO2014/140240、およびWO2015/007880に記載されているものを含むが、これらに限定されず、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
いくつかの態様では、TFPIアンタゴニスト抗体は、TFPI 106(PF-06741086としても知られる)、TFPI-23、TFPI-107、コンシズマブ(mAb-2021、hz4F36としても知られる)、2A8および2A8-200(例えば、US20170073428を参照)からなる群から選択される。
【0126】
いくつかの態様では、2つ以上の抗体が存在しうる。少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれ以上の異なる抗体が存在し得る。一般に、2つ以上の異なる抗体は、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する。1つまたは複数の抗体はまた、抗体の有効性を増強および/または補完するのに役立つ他の薬剤と組み合わせても使用され得る。
【0127】
いくつかの態様では、抗体は、組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合し、そのエピトープは、配列番号2の番号付けに基づき、残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含んでいる。いくつかの態様において、抗TFPI抗体は、TFPIのクニッツドメイン1(K1)には結合しない。いくつかの態様では、エピトープは、配列番号2の番号付けに基づき、残基Cys106、Gly108、Cys130、Leu131、およびGly132をさらに含む。いくつかの態様において、エピトープは、配列番号2の番号付けに基づき、Asp102、Arg112、Tyr127、Gly129、Met134、およびGlu138をさらに含む。いくつかの態様では、エピトープは、配列番号2の番号付けに基づき、E100、E101、P103、Y109、T111、Y113、F114、N116、Q118、Q121、C122、E123、R124、F125、K126、およびL140を含まない。いくつかの態様では、エピトープは、配列番号2の番号付けに基づき、D31、D32、P34、C35、K36、E100、E101、P103、Y109、K126、およびG128を含まない。
【0128】
いくつかの態様において、抗体は、以下を含む重鎖可変領域(VH)を含む:
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)。
【0129】
いくつかの態様において、抗体は、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0130】
いくつかの態様において、抗体は、以下を含む軽鎖可変領域(VL)を含む:
(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1)、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2)、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)。
【0131】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号11と少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0132】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0133】
いくつかの態様では、抗体は以下を含む:
(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、および
(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0134】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0135】
本発明の例示的な抗体は、2015年7月22日に米国20110-2209バージニア州マナサス市ユニバーシティブールバード10801のアメリカンタイプカルチャーコレクションに寄託された。ATCCアクセッション番号PTA-122329を有するプラスミドベクターmAb-TFPI-106VHは、抗体TFPI-106の重鎖可変領域をコードするDNAインサートを含み、また、ATCCアクセッション番号PTA-122328を有するプラスミドベクターmAb-TFPI-106VLは、抗体TFPI-106の軽鎖可変領域をコードするDNAインサートを含んでいる。
【0136】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0137】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号20のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0138】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0139】
いくつかの態様では、抗体は、少なくとも25時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも105時間、少なくとも110時間、少なくとも115時間、少なくとも120時間、または少なくとも125時間の血清半減期を有する。いくつかの態様において、抗体は、少なくとも25時間、少なくとも29時間、または少なくとも30時間の血清半減期を有する。いくつかの態様において、抗体は、少なくとも29時間の血清半減期を有する。いくつかの態様において、抗体は、少なくとも30時間の血清半減期を有する。いくつかの態様において、抗体は、少なくとも115時間、少なくとも120時間、または少なくとも125時間の血清半減期を有する。
【0140】
いくつかの態様では、抗体は、約5×10-7Mから約5×10-11Mの結合親和性(K)を有する。いくつかの態様では、抗体は、約1×10-8Mから約1×10-10M(0.1から10nm)のKを有する。いくつかの態様では、抗体は、1nM以下、500pM以下、250pM以下、200pM以下、100pM以下、50pM以下、20pM以下、または10pM以下のKを有する。いくつかの態様では、抗体は、低pM範囲(すなわち、100pM以下)のKを有さない。いくつかの側面において、Kは表面プラズモン共鳴によって測定される。いくつかの側面において、表面プラズモン共鳴は、Biacoreを使用して測定されうる。いくつかの側面において、SPRは、捕捉された抗体と液相のヒトTFPIを用いて、Biacoreを使用して測定されうる。
【0141】
いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも10%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも15%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも20%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも25%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも27%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも30%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも35%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも40%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも50%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも60%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも70%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも80%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも90%でありうる。いくつかの側面において、抗体の皮下バイオアベイラビリティは、静脈内バイオアベイラビリティと比較して少なくとも99%でありうる。
【0142】
抗体は、約0.1mg/mLから約250mg/mL、約15mg/mLから250mg/mL、約20mg/mLから約175mg/mL、または約25mg/mLから約160mg/mLまでの範囲の濃度で製剤中に存在しうる。例えば、いくつかの態様において、抗体の濃度は、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、約5mg/mL、約5.5mg/mL、約6mg/mL、約6.5mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約8.5mg/mL、約9mg/mL、約9.5mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、約30mg/mL、約31mg/mL、約32mg/mL、約33mg/mL、約34mg/mL、約35mg/mL、約36mg/mL、約37mg/mL、約38mg/mL、約39mg/mL、約40mg/mL、約41mg/mL、約42mg/mL、約43mg/mL、約44mg/mL、約45mg/mL、約46mg/mL、約47mg/mL、約48mg/mL、約49mg/mL、約50mg/mL、約51mg/mL、約52mg/mL、約53mg/mL、約54mg/mL、約55mg/mL、約56mg/mL、約57mg/mL、約58mg/mL、約59mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約101mg/mL、約102mg/mL、約102.5mg/mL、約103mg/mL、約103.5mg/mL、約104mg/mL、約104.5mg/mL、約105mg/mL、約105.5mg/mL、約106mg/mL、約106.5mg/mL、約107mg/mL、約107.5mg/mL、約108mg/mL、約108.5mg/mL、約109mg/mL、約109.5mg/mL、約110mg/mL、約111mg/mL、約112mg/mL、約113mg/mL、約114mg/mL、約115mg/mL、約116mg/mL、約117mg/mL、約118mg/mL、約119mg/mL、約120mg/mL、約121mg/mL、約122mg/mL、約123mg/mL、約124mg/mL、約125mg/mL、約126mg/mL、約127mg/mL、約128mg/mL、約129mg/mL、約130mg/mL、約131mg/mL、約132mg/mL、約133mg/mL、約134mg/mL、約135mg/mL、約136mg/mL、約137mg/mL、約138mg/mL、約139mg/mL、約140mg/mL、約141mg/mL、約142mg/mL、約143mg/mL、約144mg/mL、約145mg/mL、約146mg/mL、約147mg/mL、約148mg/mL、約149mg/mL、約150mg/mL、約151mg/mL、約152mg/mL、約153mg/mL、約154mg/mL、約155mg/mL、約156mg/mL、約157mg/mL、約158mg/mL、約159mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mL、約210mg/mL、約220mg/mL、約230mg/mL、約240mg/mL、または約250mg/mLである。いくつかの態様において、製剤中の抗体の濃度は、約100mg/mL、約115mg/mL、約150mg/mL、または約158mg/mLである。いくつかの態様では、製剤中の抗体の濃度は、150mg/mLである。いくつかの態様では、製剤中の抗体の濃度は155mg/mLである。いくつかの態様では、製剤中の抗体の濃度は、158mg/mLである。
【0143】
本発明によれば、緩衝液(例えば、ヒスチジンまたはコハク酸緩衝液)は、注射の際の痛みまたはアナフィラキシー様副作用のリスクを低減するために生理学的pHに近いpHを製剤に提供し、また、増強された抗体の安定性および凝集、酸化および断片化に対する耐性を提供する。
【0144】
緩衝液は、例えば、酢酸塩、コハク酸塩(例えば、コハク酸二ナトリウム六水和物)、グルコン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、酢酸、リン酸塩、リン酸、アスコルビン酸塩、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸塩、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸塩および炭酸、コハク酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、グルコン酸塩、エデト酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、イミダゾール、トリス、リン酸塩、およびそれらの混合物であり得るが、これらに限定はされない。いくつかの態様では、緩衝液はヒスチジンまたはコハク酸塩である。いくつかの態様において、コハク酸緩衝液は、コハク酸二ナトリウム六水和物(塩基性形態)および/またはコハク酸またはそれらの混合物を含む。好ましくは、緩衝液はヒスチジンであり、ヒスチジン緩衝液は、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン一塩酸塩(L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物および/またはL-ヒスチジン塩酸塩一水和物とも呼ばれる)またはそれらの混合物を含む。
【0145】
緩衝液の濃度は、約0.1ミリモル(mM)から約100mMの範囲であり得る。好ましくは、緩衝液の濃度は、約0.5mMから約50mM、さらに好ましくは約1mMから約30mM、より好ましくは約1mMから約25mMである。好ましくは、緩衝液の濃度は、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、または約100mMである。いくつかの態様において、緩衝液は、約20mMの濃度のヒスチジンである。いくつかの態様において、緩衝液は、約20mMの濃度のコハク酸塩である。
【0146】
緩衝液の濃度はまた、約0.01mg/mLから約30mg/mL、約0.1mg/mLから約5mg/mL、または約0.5mg/mLから約4mg/mLの範囲でもあり得る。例えば、緩衝液の濃度は、約0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.03mg/mL、約0.04mg/mL、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mL、約0.10mg/mL、0.11mg/mL、0.12mg/mL、0.13mg/mL、約0.14mg/mL、約0.15mg/mL、約0.16mg/mL、約0.17mg/mL、0.18mg/mL、0.19mg/mL 約0.20mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、約1.0mg/mL、約2.0mg/mL、約3.0mg/mL、約4.0mg/mL、約5.0mg/mL、約6.0mg/mL、約7.0mg/mL、約8.0mg/mL、約9.0mg/mL、約10.0mg/mL、約11.0mg/mL、約12.0mg/mL、約13.0mg/mL、約14.0mg/mL、約15.0mg/mL、約16.0mg/mL、約17.0mg/mL、約18.0mg/mL、約19.0mg/mL、約20mg/mL、約21.0mg/mL、約22.0mg/mL、約23.0mg/mL、約24.0mg/mL、約25.0mg/mL、約26.0mg/mL、約27.0mg/mL、約28.0mg/mL、約29.0mg/mL、または約30mg/mLである。いくつかの態様では、製剤は、約0.5~5.0mg/mLのヒスチジン緩衝液を含む。いくつかの態様では、緩衝液は、約0.1~1.5mg/mLのL-ヒスチジンおよび約1~3mg/mLのL-ヒスチジン一塩酸塩を含むヒスチジン緩衝液である。いくつかの態様では、緩衝液は、1.12mg/mLのL-ヒスチジンおよび2.67mg/mLのL-ヒスチジン一塩酸塩を含むヒスチジン緩衝液である。いくつかの態様では、緩衝液は、約0.5~5.0mg/mLのコハク酸二ナトリウム六水和物および約0.1~1.0mg/mLのコハク酸を含むコハク酸緩衝液である。いくつかの態様では、緩衝液は、約4.08mg/mLのコハク酸二ナトリウム六水和物および約0.58mg/mLのコハク酸を含むコハク酸緩衝液である。いくつかの態様では、緩衝液は、約2.362mg/mLのコハク酸を含むコハク酸緩衝液である。
【0147】
いくつかの態様では、ポリオールは、例えば、限定はされないが、約600kD未満(例えば、約120から約400kDの範囲)の分子量を有し得、糖(例えば、還元および非還元性糖またはそれらの混合物、糖類または炭水化物)、糖アルコール、糖酸、または塩またはそれらの混合物を含む複数のヒドロキシル基を含む。非還元糖の例は、スクロース、トレハロース、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定はされない。いくつかの態様において、ポリオールは、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、グリセロール、ラクチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イノシトール、またはそれらの混合物である。他の態様では、ポリオールは、例えば、限定はされないが、単糖、二糖または多糖、あるいは前述のいずれかの混合物であり得る。糖類または炭水化物は、例えば、限定はされないが、フルクトース、グルコース、マンノース、スクロース、ソルボース、キシロース、ラクトース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、水溶性グルカン、またはそれらの混合物であり得る。
【0148】
いくつかの態様では、ポリオールは、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、グリセロール、ラクチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イノシトール、フルクトース、グルコース、マンノース、スクロース、ソルボース、キシロース、ラクトース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、水溶性グルカン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの態様では、ポリオールは、スクロースまたはトレハロースである。いくつかの態様では、ポリオールはスクロースである。
【0149】
製剤中のポリオールの濃度は、約1mg/mLから約300mg/mL、約1mg/mLから約200mg/mL、または約1mg/mLから約120mg/mLの範囲である。好ましくは、製剤中のポリオールの濃度は、約50mg/mLから約120mg/mL、約60mg/mLから約110mg/mL、または約80mg/mLから約90mg/mLである。例えば、製剤中のポリオールの濃度は、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、約5mg/mL、約5.5mg/mL、約6mg/mL、約6.5mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約8.5mg/mL、約9mg/mL、約9.5mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、約30mg/mL、約31mg/mL、約32mg/mL、約33mg/mL、約34mg/mL、約35mg/mL、約36mg/mL、約37mg/mL、約38mg/mL、約39mg/mL、約40mg/mL、約41mg/mL、約42mg/mL、約43mg/mL、約44mg/mL、約45mg/mL、約46mg/mL、約47mg/mL、約48mg/mL、約49mg/mL、約50mg/mL、約51mg/mL、約52mg/mL、約53mg/mL、約54mg/mL、約55mg/mL、約56mg/mL、約57mg/mL、約58mg/mL、約59mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約81mg/mL、約82mg/mL、約83mg/mL、約84mg/mL、約85mg/mL、約86mg/mL、約87mg/mL、約88mg/mL、約89mg/mL、約90mg/mL、約91mg/mL、約92mg/mL、約93mg/mL、約94mg/mL、約95mg/mL、約96mg/mL、約97mg/mL、約98mg/mL、約99mg/mL、約100mg/mL、約101mg/mL、約102mg/mL、約103mg/mL、約104mg/mL、約105mg/mL、約106mg/mL、約107mg/mL、約108mg/mL、約109mg/mL、約110mg/mL、約111mg/mL、約112mg/mL、約113mg/mL、約114mg/mL、約115mg/mL、約116mg/mL、約117mg/mL、約118mg/mL、約119mg/mL、約120mg/mL、約121mg/mL、約122mg/mL、約123mg/mL、約124mg/mL、約125mg/mL、約126mg/mL、約127mg/mL、約128mg/mL、約129mg/mL、約130mg/mL、約131mg/mL、約132mg/mL、約133mg/mL、約134mg/mL、約135mg/mL、約136mg/mL、約137mg/mL、約138mg/mL、約139mg/mL、約140mg/mL、約141mg/mL、約142mg/mL、約143mg/mL、約144mg/mL、約145mg/mL、約146mg/mL、約147mg/mL、約148mg/mL、約149mg/mL、または約150mg/mLである。
【0150】
いくつかの態様では、ポリオールは、約1mg/mLから約300mg/mL、約1mg/mLから約200mg/mL、または約1mg/mLから約120mg/mLの濃度のスクロースである。好ましくは、製剤中のスクロースの濃度は、約50mg/mLから約120mg/mL、約60mg/mLから約110mg/mL、または約80mg/mLから約90mg/mLである。いくつかの態様では、製剤中のスクロースの濃度は約85mg/mLである。いくつかの態様では、製剤中のスクロースの濃度は約84mg/mLである。いくつかの態様では、製剤中のスクロースの濃度は約90mg/mLである。いくつかの態様では、ポリオールは、約84mg/mLまたは約85mg/mLまたは約90mg/mLの濃度のトレハロースである。
【0151】
本発明において使用される界面活性剤は、液体抗体製剤の表面張力を変化させ得る。特定の態様では、界面活性剤は、液体抗体製剤の表面張力を低下させる。さらに他の態様では、界面活性剤は、製剤中のいずれかの抗体の安定性の改善に寄与し得る。界面活性剤はまた、製剤化された抗体の凝集も低減させ(例えば、輸送および貯蔵中)、かつ/または製剤中の微粒子の形成も最小限に抑え、かつ/または吸着(例えば、容器への吸着)も低減させ得る。例えば、界面活性剤はまた、凍結/解凍サイクル中およびその後の抗体の安定性も改善させ得る。界面活性剤は、例えば、ポリソルベート、ポロキサマー、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノレアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイル-タウレートナトリウム、メチルオレイル-タウレート二ナトリウム、ジヒドロキシプロピルPEG5塩化リノールアンモニウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの混合物であり得るが、これらに限定はされない。界面活性剤は、例えば、限定はされないが、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、PEG3350およびそれらの混合物であり得る。
【0152】
界面活性剤の濃度は、一般に、約0.01mg/mLから約10mg/mL、約0.01mg/mLから約5.0mg/mL、約0.01mg/mLから約2.0mg/mL、約0.01mg/mLから約1.5mg/mL、約0.01mg/mLから約1.0mg/mL、約0.01mg/mLから約0.5mg/mL、約0.01mg/mLから約0.4mg/mL、約0.01mg/mLから約0.3mg/mL、約0.01mg/mLから約0.2mg/mL、約0.01mg/mLから約0.15mg/mL、約0.01mg/mLから約0.1mg/mL、約0.01mg/mLから約0.05mg/mL、約0.1mg/mLから約1mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、または約0.1mg/mLから約0.3mg/mLの範囲である。さらに好ましくは、界面活性剤の濃度は、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.08mg/mL、約0.09mg/mL、約0.1mg/mL、約0.15mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、または約1mg/mLである。
【0153】
いくつかの態様において、ポリソルベートは、約0.1mg/mLから約0.3mg/mLの範囲の濃度、例えば、0.2mg/mLのポリソルベート80である。
本発明において使用されるキレート剤は、本発明の製剤における還元酸素種の形成を低下させ、酸性種(例えば、脱アミド化)の形成を低下させ、抗体凝集を低下させ、かつ/または抗体断片化を低下させ、かつ/または抗体酸化を低下させる。例えば、キレート剤は、金属イオンに対して少なくとも1つの結合(例えば、共有結合、イオン結合、またはその他)を形成し、そうでなければ不安定性を促進しうる種と錯体を形成する安定剤として作用する多座配位子であり得る。
【0154】
いくつかの態様において、キレート剤は、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシアミノカルボン酸、N-置換グリシン、2-(2-アミノ-2-オキソクチル)アミノエタンスルホン酸(BES)、デフェロキサミン(DEF)、クエン酸、ナイアシンアミド、およびデオキシコレートおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。いくつかの態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸5(DTPA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N-2-アセトアミド-2-イミノ二酢酸(ADA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル、N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、トランス-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、グルタミン酸、およびアスパラギン酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、N,N-ビス-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)およびN-(トリスヒドロキシメチルメチル)10グリシン(トリシン)、グリシルグリシン、デオキシコール酸ナトリウム、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン(トリエン)、エデト酸二ナトリウム二水和物(またはEDTA二ナトリウム二水和物またはEDTA二ナトリウム塩)、EDTAカルシウム、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、クエン酸一水和物、およびクエン酸三ナトリウム-二水和物、8-ヒドロキシキノレート、アミノ酸、ヒスチジン、システイン、メチオニン、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの態様では、キレート剤は、エデト酸二カリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、およびエデト酸カリウム、またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない、EDTAの塩からなる群から選択され;デフェロキサミン(DEF)の適切な塩は、メシル酸デフェロキサミン(DFM)である。本発明で使用されるキレート剤は、可能な場合には、化合物の遊離酸または遊離塩基形態または塩形態として、また、化合物または対応する塩の無水、溶媒和または水和形態として存在し得る。
【0155】
いくつかの態様では、キレート剤はEDTAである。いくつかの態様では、キレート剤はEDTAの塩である。いくつかの態様では、キレート剤はエデト酸二ナトリウム二水和物である。
【0156】
キレート剤の濃度は、一般に、約0.01mg/mLから約50mg/mL、約0.1mg/mLから約10.0mg/mL、約5mg/mLから約15.0mg/mL、約0.01mg/mLから約1.0mg/mL、約0.02mg/mLから約0.5mg/mL、約0.025mg/mLから約0.075mg/mLの範囲である。さらに好ましくは、キレート剤の濃度は、一般に、約0.01mMから約2.0mM、約0.01mMから約1.5mM、約0.01mMから約0.5mM、約0.01mMから約0.4mM、約0.01mMから約0.3mM、約0.01mMから約0.2mM、約0.01mMから約0.15mM、約0.01mMから約0.1mM、約0.01mMから約0.09mM、約0.01mMから約0.08mM、約0.01mMから約0.07mM、約0.01mMから約0.06mM、約0.01mMから約0.05mM、約0.01mMから約0.04mM、約0.01mMから約0.03mM、約0.01mMから約0.02mM、約0.02から、または約0.05mMから約0.01mMの範囲である。好ましくは、キレート剤の濃度は、約0.01mg/mL、約0.02mg/mL、約0.025mg/mL、約0.03mg/mL、約0.04mg/mL、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.075mg/mL、約0.08mg/mL、約0.09mg/mL、約0.10mg/mL、または約0.20mg/mLであり得る。さらに好ましくは、キレート剤の濃度は、約0.025mg/mL、約0.03mg/mL、約0.035mg/mL、約0.04mg/mL、約0.045mg/mL、約0.05mg/mL、約0.055mg/mL、約0.06mg/mL、約0.065mg/mL、約0.07mg/mL、または約0.075mg/mLである。最も好ましくは、キレート剤の濃度は約0.05mg/mLである。
【0157】
いくつかの態様において、キレート剤は、約0.05mg/mLの濃度のエデト酸二ナトリウム二水和物である。いくつかの態様では、キレート剤は、約0.05mg/mLの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0158】
いくつかの態様では、pHは、約pH5.0から約6.6の範囲、好ましくは約pH5.0から6.5または約5.0から6.0の間、最も好ましくはpH5.2から5.8の間であり得る。いくつかの態様では、本発明の製剤のpHは、約pH5.2、5.3、5.4、5.5、または5.6のいずれか1つと約pH6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8または5.7のいずれか1つとの間から選択される範囲内であり得る。いくつかの態様において、pHは、約pH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4または7.5のいずれかのpH値から選択され得る。いくつかの態様では、pHはpH5.8+/-0.5であり、いくつかの態様では、pHはpH5.8+/-0.3である。
【0159】
いくつかの態様では、製剤は防腐剤を含み得る。好ましくは、防腐剤は、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルトニウム、フェノキシエタノールおよびメチルパラベンから選択される。
【0160】
防腐剤の濃度は、一般に、約0.001mg/mLから約50mg/mL、約0.005mg/mLから約15.0mg/mL、約0.008mg/mLから約12.0mg/mL、または約0.01mg/mLから約10.0mg/mLの範囲である。好ましくは、防腐剤の濃度は、約0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mL 約1.0mg/mL、2.0mg/mL、3.0mg/mL、約4.0mg/mL、約5.0mg/mL、約6.0mg/mL、約7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mL 約9.1mg/mL、約9.2mg/mL、9.3mg/mL、9.4mg/mL、9.5mg/mL、9.6mg/mL、9.7mg/mL、9.8mg/mL、9.9mg/mL、10.0mg/mLであり得る。最も好ましくは、防腐剤の濃度は、約0.1mg/mLまたは9.0mg/mLである。
【0161】
いくつかの態様では、製剤は防腐剤を含まない。
いくつかの態様において、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローン抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc、ScFvなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、一本鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質(例えば、ドメイン抗体)、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有修飾抗体を含む、必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の改変された構成からなる群から選択され得る。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他の起源のもの(キメラまたはヒト化抗体を含む)でありうる。いくつかの態様において、抗体はヒトのものである。好ましくは、抗体は単離され、さらに好ましくは、それは実質的に純粋である。抗体が抗体フラグメントである場合、これは好ましくは、元の抗体の機能的特徴、すなわち、リガンド結合および/またはアンタゴニストもしくはアゴニスト活性を保持している。
【0162】
いくつかの態様において、抗体重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgEなどの任意の型の定常領域;およびIgG1、lgG2、IgG3、IgG4などの任意のアイソタイプに由来しうる。好ましくは、抗体はIgG1抗体である。
【0163】
本発明のさらなる側面によれば、以下を含むか、またはそれらからなる製剤が提供される:約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)抗体;約1mMから約100mMの緩衝液;約1mg/mLから約300mg/mLのポリオール;約0.01mg/mLから約10mg/mLの界面活性剤;約0.01mg/mLから約50.0mg/mLのキレート剤;ここで、製剤は、約5.0から約6.0のpHを有する。いくつかの態様では、抗体は、(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの態様では、抗TFPI抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの態様において、抗TFPI抗体は、TFPI-106(PF-06741086またはマルスタシマブとしても知られる)である。いくつかの態様において、緩衝液はヒスチジン緩衝液であり、ポリオールはスクロースまたはトレハロースであり、界面活性剤はポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)であり、かつ/またはキレート剤はEDTAまたはエデト酸二ナトリウム二水和物である。いくつかの態様では、緩衝液はヒスチジン緩衝液であり、ポリオールはスクロースであり、界面活性剤はポリソルベート80であり、そしてキレート剤はエデト酸二ナトリウム二水和物である。
【0164】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗TFPI抗体薬剤物質の製剤は、エチレン酢酸ビニル単一材料(EVAM)製品の接触面を備えた滅菌エチレン酢酸ビニル(EVA)バッグ中に保存されうる。いくつかの態様では、本明細書に開示される抗TFPI抗体薬剤物質の製剤は、滅菌された高密度ポリエチレンボトル(HDPE)中に保存されうる。いくつかの態様では、本明細書に開示される抗TFPI抗体薬剤物質の製剤は、ステンレス鋼容器中に保存されうる。いくつかの態様では、本明細書に開示される抗TFPI抗体医薬品の製剤は、滅菌されたバイアルまたはプレフィルドシリンジ(PFS)中に保存されうる。いくつかの態様において、本明細書に開示される抗TFPI抗体医薬品の製剤は、プレフィルドペン(PFP)中に保存されうる。
【0165】
本発明のさらなる側面によれば、以下を含むか、またはそれらからなる製剤が提供される:約100mg/mL、約110mg/mL、約115mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約158mg/mL、約160mg/mL、または約200mg/mLの組織因子経路インヒビター抗体(例えば、ヒト抗TFPI抗体);約1mMから約100mMの緩衝液;約1mg/mLから約300mg/mLのポリオール;約0.01mg/mLから約10mg/mLの界面活性剤;約0.01mg/mLから約1.0mg/mLのキレート剤;ここで、製剤は、約5.0から約6.0のpHを有する。いくつかの態様では、抗体は、(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの態様において、抗TFPI抗体は、TFPI-106(PF-06741086またはマルスタシマブとしても知られる)である。
【0166】
本発明のさらなる側面によれば、以下を含むか、またはそれらからなる製剤が提供される:約50mg/mLから約160mg/mLの組織因子経路インヒビター抗体(例えば、ヒト抗TFPI抗体);約20mMの緩衝液;約1mg/mLから約120mg/mLのポリオール;約0.1mg/mLから約0.3mg/mLの界面活性剤;約0.025mg/mLから約0.075mg/mLのキレート剤;ここで、製剤は、約5.0から約6.0のpHを有する。いくつかの態様では、抗体は、(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの態様では、抗TFPI抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの態様において、抗TFPI抗体は、TFPI-106(PF-06741086またはマルスタシマブとしても知られる)である。いくつかの態様では、緩衝液はヒスチジン緩衝液であり、ポリオールはスクロースであり、キレート剤はエデト酸二ナトリウム二水和物であり、かつ/または界面活性剤はポリソルベート80である。いくつかの態様では、抗体の濃度は、100mg/mL、115mg/mL、150mg/mLまたは158mg/mLである。
【0167】
いくつかの態様では、以下を含むか、またはそれらからなる水性製剤が提供される:約150mg/mLの組織因子経路インヒビター抗体(例えば、ヒト抗TFPI抗体);約20mMのヒスチジン緩衝液;約85mg/mLのスクロース;約0.2mg/mLのポリソルベート80;約0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物;ここで、製剤は約5.8のpHを有する。いくつかの態様では、抗体は、(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの態様では、抗TFPI抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの態様では、抗TFPI抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、抗TFPI抗体は、TFPI-106(PF-06741086またはマルスタシマブとしても知られる)である。
【0168】
いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、(例えば、-20℃、5℃、25℃、または40℃において)少なくとも約1か月、約3か月、約6か月、約12か月、約18か月、約24か月、約30か月、約36か月、約42か月、約48か月または約60か月以上の貯蔵寿命を有する。例えば、いくつかの態様では、本発明の製剤は、(例えば、-20℃、5℃、25℃、または40℃において)少なくとも約1か月、約3か月、約6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月、25か月、26か月、27か月、28か月、29か月、30か月、31か月、32か月、33か月、34か月、35か月、36か月、37か月、38か月、39か月、40か月、41か月、42か月、43か月、44か月、45か月、46か月、47か月、48か月、49か月、50か月、51か月、52か月、53か月、54か月、55か月、56か月、57か月、58か月、59か月、または60か月の貯蔵寿命を有する。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、5±3℃で少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する。
【0169】
いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、40℃/75%RHで最大1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、または6か月、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約7%未満のHMMSを有する。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、40℃で最大1か月、2か月、または3か月、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約3%未満のHMMSを有する。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、40℃で最大1か月、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約2%未満のHMMSを有する。
【0170】
いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、5±3℃で最大24か月、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約2%未満のHMMSを有する。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、5±3℃で最大1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、12か月、18か月または24か月、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約1%未満のHMMSを有する。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、5±3℃で最大24か月、(例えば、還元キャピラリーゲル電気泳動による測定で)約2%未満のフラグメントを有する。
【0171】
特に明記しない限り、本明細書に列挙されている濃度は、周囲条件、すなわち、25℃、大気圧における濃度である。
抗TFPI抗体製剤の使用方法
本明細書に記載の製剤は、治療的処置方法を含むが、それに限定されない様々な用途において有用である。治療方法は、本発明の製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0172】
本発明の製剤の例示的な治療用途は、それを必要とする対象における出血時間の短縮、血液凝固の障害または血液障害(例えば、血友病A、血友病B、血友病C、フォンウィルブランド病(vWD)、第VII因子欠乏症、第VIII因子、第IX因子、または第XI因子欠乏症)の治療または予防、血小板減少症の治療または予防、および血小板障害(血小板の機能または数の障害)の治療または予防を含む。本明細書に記載の製剤はまた、止血不能の出血(例えば、外傷および出血性脳卒中などの適応症における止血不能の出血)を治療するためにも使用されうる。本明細書に記載の製剤は、予防的処置(例えば、手術前の出血を処置または予防するため)にも使用されうる。
【0173】
特に、本明細書に記載の製剤は、凝固の欠陥もしくは欠如または凝固障害を治療するために使用され得る。例えば、本明細書に記載の製剤は、TFPIとFXaとの相互作用を低減または阻害するために、またはTF/FVIIa/FXa活性のTFPI依存的阻害を低減するために使用されうる。
【0174】
したがって、いくつかの態様では、対象は、以下のような血液凝固の障害または血液障害に罹患しているか、または罹患しやすい:いくつかの態様において、対象は、血友病A、BまたはCに罹患しているか、または罹患しやすい。いくつかの態様において、対象は、血友病AまたはBに罹患しているか、または罹患しやすい。いくつかの態様において、対象は、血友病Aに罹患しているか、または罹患しやすく、凝固第VIII因子に対する中和抗体(すなわち、インヒビター)を有している。いくつかの態様において、対象は、血友病Bに罹患しているか、または罹患しやすく、凝固第IX因子に対する中和抗体(すなわち、インヒビター)を有している。いくつかの態様において、対象は、血友病Cに罹患しているか、または罹患しやすく、凝固第XI因子に対する中和抗体(すなわち、インヒビター)を有している。いくつかの態様では、対象は、フォンウィルブランド病(vWD)に罹患しているか、または罹患しやすい。いくつかの態様では、対象は、血小板障害に罹患しているか、または罹患しやすい。いくつかの態様では、対象は、第VII因子欠乏症に罹患しているか、または罹患しやすい。いくつかの態様では、対象は、第XI因子欠乏症に罹患しているか、または罹患しやすい。
【0175】
本明細書に記載のTFPIアンタゴニスト抗体または抗原結合部分を含む製剤は、凝固剤と組み合わせて使用されうる。本発明は、凝固剤と本発明の製剤との別々の、同時の、または連続的な投与を提供する。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、凝固剤をさらに含む。凝固剤の例は、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、トラネキサム酸およびバイパス剤(例えば、抗インヒビター凝固剤複合体またはFEIBA)を含むが、これらに限定されない。
【0176】
いくつかの態様では、出血時間を短縮するための薬剤を製造するための本発明の製剤の使用が提供される。
いくつかの態様において、本発明の製剤は、対象の血流中、筋肉中、組織中、脂肪中、または内臓中に直接投与され得る。非経口投与に適した手段は、静脈内、眼内、硝子体内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、骨内、皮内および皮下を含む。非経口投与に適した器具は、ニードル(マイクロニードル、マイクロプロジェクション、可溶性ニードルおよび他の微細孔形成技術を含む)インジェクター、無針インジェクターおよび注入技術を含む。いくつかの態様において、本発明の製剤は、対象に静脈内投与または皮下投与される。いくつかの態様において、本発明の製剤は、対象に皮下投与される。いくつかの態様において、本発明の製剤は、対象に静脈内投与される。
【0177】
いくつかの態様において、本発明の製剤の投与パターンは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、15週間に1回、20週間に1回、25週間に1回、または26週間に1回の用量の製剤の投与を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の製剤は、1か月に1回、2か月に1回、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、または6か月に1回投与される。いくつかの態様において、本明細書に記載の製剤は、毎日または毎週(すなわち、週に1回)投与される。この治療法の進行は、従来的な技術およびアッセイによって容易にモニターされる。投与計画は、時間とともに変化し得る。
【0178】
いくつかの態様において、本明細書に記載の製剤は、約300mgの初期抗体用量で投与され、その後、それに続く毎週(すなわち、週に1回)約150mgの用量で投与される。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、約150mgの抗体用量で毎週(すなわち、週に1回)投与される。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、約300mgの抗体用量で毎週(すなわち、週に1回)投与される。いくつかの態様では、本明細書に記載の製剤は、約450mgの抗体用量で毎週(すなわち、週に1回)投与される。
【0179】
本発明の目的のために適切な薬剤の投与量は、使用する抗体、治療される疾患の種類と重症度、薬剤が予防目的と治療目的のどちらで投与されるか、以前の治療、患者の病歴と薬剤に対する反応、および主治医の裁量に依存するであろう。通常、臨床医は、望ましい結果を達成する投与量に達するまで、薬剤を投与する。投与量は経験的に決定されうる。
【0180】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲を限定することを意図するものでは決してない。実際、本明細書中に示され、記述されているものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の説明から当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲内に収まるであろう。
【0181】
実施例
【実施例1】
【0182】
抗TFPI抗体の安定性試験
この実施例は、高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル、バイアル、およびプレフィルドシリンジ中における抗TFPI抗体を含む製剤の安定性を示す。
【0183】
100mg/mL、115mg/mL、および150mg/mLの抗TFPI抗体をpH5.8の20mMヒスチジン、85mg/mLスクロース、0.05mg/mLエデト酸二ナトリウム二水和物、0.2mg/mLポリソルベート80中に調製した。この実施例において、使用される抗TFPI抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有している。
【0184】
115mg/mLの抗TFPI抗体をHDPEボトルに充填し、-20±5℃および5±3℃で少なくとも3か月(すなわち、12週間)保管した。
100mg/mLおよび150mg/mLの抗TFPI抗体をI型ガラスバイアルに充填し、コーティングされたストッパーで密封し、アルミニウムシールで蓋をして、5±3℃、25℃/60%相対湿度(RH)、および40℃/75%相対湿度(RH)で、少なくとも3か月間(すなわち、12週間)、逆向きにして保管した。さらに、150mg/mLの抗TFPI抗体も2.25mLおよび1mLのI型ガラスプレフィルドシリンジ(PFS)に充填し、コーティングされたプランジャーストッパーで栓をして、5±3℃、25℃/60%RH、および40℃/75%RHで、少なくとも3か月間(すなわち、12週間)、水平の向きにして保管した。
【0185】
次に、タンパク質分解をモニターするために日常的に使用される品質属性についてサンプルを分析した。例えば、分析は、高分子量種(HMMS)を評価するためのサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)、純度と断片化を評価するための還元および非還元キャピラリーゲル電気泳動(CGE)、ならびに酸性種、塩基性種、主要種などの電荷の不均一性を評価するためのイメージキャピラリー等電点電気泳動(iCE)からなっていた。また、分析は、阻害アッセイを使用した抗TFPI抗体の相対的効力の評価も含んでいた。
【0186】
公定法および非公定法を含む特定の分析手順を使用して、抗TFPI抗体の特性、純度、および相対的効力を評価した。分析手順の説明を以下に示す。結果は表1~8にまとめられている。
【0187】
外観(透明度および着色):現行のヨーロッパ薬局方の手順、Ph.Eur.2.2.1およびPh.Eur.2.2.2にそれぞれ従って、透明度と着色について薬剤物質を評価する。
【0188】
pH:現行のUSP手順<791>に従って、薬剤物質のpHを分析する。
UVによるタンパク質濃度:分光光度計を使用し、280nmでの吸光度を用いて、試験サンプルの濃度を決定する。濃度の計算には、PF-06741086(以下に示す)の比吸収係数または吸収率(a280)を使用する。
a280 = 1.45mL mg-1 cm-1
イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCE):電荷の不均一性を評価するために、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCE)法を使用する。iCEは、電界の影響下で両性電解質によって生成されるpH勾配の電荷差に基づきタンパク質種を分離し、生成物の電荷の不均一性をモニターするために使用される。タンパク質電荷種は、DC電圧下でキャピラリー内に集束し、キャピラリー全体のイメージングにより280nmにおいて検出される。
【0189】
サイズ排除HPLC(SE-HPLC):SE-HPLC法は、生成物の純度を決定するために使用される。試験サンプルを希釈し、サイズ排除カラムに注入する。高分子量種(HMMS)とモノマーの含有量は、全てのタンパク質関連ピークの総面積の割合として報告される。
【0190】
還元キャピラリーゲル電気泳動(CGE):この方法は、還元タンパク質の純度を決定するために使用される。サンプルをSDSで変性させ、還元剤の存在下で加熱する。タンパク質は重鎖と軽鎖に還元され、ふるい分け媒体を含むキャピラリーで電気泳動的に分離され、UV分光法を使用して検出される。分離は、分離された重鎖と軽鎖およびサイズが合致する不純物の定量を可能とする。純度は、重鎖と軽鎖の合計の割合として報告される。
【0191】
非還元キャピラリーゲル電気泳動(CGE):この方法は、完全なタンパク質の純度を決定するために使用される。サンプルをSDSで変性させ、アルキル化剤の存在下で加熱する。タンパク質は、ふるい分け媒体を含むキャピラリーで電気泳動的に分離され、UV分光法を使用して検出される。分離は、分離された完全なIgGおよびサイズが合致する不純物の定量を可能とする。純度はIgGの割合として報告される。
【0192】
リシルエンドプロテイナーゼ(Lys-C)マッピング:この方法は、メチオニン残基を含むFcペプチドに局在する抗TFPI抗体中の酸化率を決定するために使用される。リシルエンドプロテイナーゼ(Lys-C)を使用して、抗TFPI抗体のサンプルをペプチド断片へと消化する。得られたペプチド断片を逆相HPLCによって分離する。Fc-ペプチドと酸化されたFc-ペプチドの分離は、抗TFPI抗体の酸化率を測定し、モニターすることを可能とする。
【0193】
阻害アッセイによる生物活性:阻害アッセイ法は、PF-06741086のin vitro生物活性を評価するために使用される。阻害アッセイは、PF-06741086がTFPI:FXa複合体の形成を阻害して、遊離のヒト凝固因子Xa(FXa)の増加をもたらすことができ、ひいては、凝固活性に利用可能な遊離のFXaをもたらすことを示す。
【0194】
TFPIはマイクロタイタープレートに加えられる。PF-06741086参照物質の希釈液と試験サンプルをマイクロタイタープレートに加えて、抗体がその標的に結合できるようにする。次に、FXaをマイクロタイタープレートに追加し、PF-06741086により結合しておらず、TFPI:FXa複合体を形成する、利用可能なTFPIに結合させる。遊離のFXaは、発色基質のスペクトロザイムFXaを使用して検出する。基質添加後、比色反応を分光光度法で測定する。
【0195】
データ分析の方法は、非線形曲線フィッティングおよび標準曲線とサンプル曲線との間の平行関係の評価を含む。サンプルの力価は、平行曲線間のIC50のシフトから決定される。PF-06741086あたりの単位で表されるサンプルの比活性は、1ミリグラム(mg)の参照物質に割り当てられた単位数を相対力価の値に掛けることによって計算される。
【0196】
【表1】
【0197】
【表2】
【0198】
【表3】
【0199】
【表4】
【0200】
【表5】
【0201】
【表6】
【0202】
【表7】
【0203】
【表8】
【0204】
この試験のデータは、高濃度(100mg/mL~150mg/mL)の抗TFPI抗体が、20mMヒスチジン、85mg/mLスクロース、0.05mg/mLエデト酸二ナトリウム二水和物、0.2mg/mLポリソルベート80、pH5.8の製剤中で安定であることを示している。結果はまた、異なる容器/閉鎖系(HDPEボトル、バイアル、PFS)が、抗TFPI抗体の安定性に影響を与えないことも示している。
【0205】
この試験では、5±3℃の意図された保管条件、25℃/60%RHの加速保管条件、および40℃/75%RHの熱ストレス保管条件を評価した。5±3℃の長期保管条件では、抗TFPI抗体は、最大24か月間安定であることが示され、製品の品質属性に有意差は観察されなかった。
【0206】
25℃/60%RHで3か月後、および40℃/75%RHで1か月後には、%HMMSにわずかな増加が観察される。40℃/75%RHで3か月後には、分解が観察されたが、その規模は、抗VEGF抗体などの他のIgG1抗体で見られるものよりも小さい。表9は、抗TFPI抗体と抗VEGF抗体に関する40℃/75%RHのデータにおける%HMMSを比較している。各抗体の%HMMSを定量するために、適格な製品に固有のSE-HPLC法が使用された。
【0207】
【表9】
【0208】
分解は見られるものの、抗TFPI抗体は、pH5.8の20mMヒスチジン、85mg/mLスクロース、0.05mg/mLエデト酸二ナトリウム二水和物、0.2mg/mLポリソルベート80の製剤中において、25℃/60%RHで最大24か月間、また、40℃/75%RHで12か月間、活性を維持する。
【実施例2】
【0209】
抗TFPI抗体の製剤ロバスト性安定性試験
この実施例は、標的製剤(対照製剤)中における150mg/mLの抗TFPI抗体、および高もしくは低賦形剤レベルおよびpHで製剤化された抗TFPI抗体の安定性を例証する。評価した製剤は表10に示されている。各成分の濃度は、分析試験により確認した。この実施例において、使用される抗TFPI抗体(TFPI-106)は、配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有している。
【0210】
【表10】
【0211】
製剤は、5±3℃の意図された保管条件、25℃/60%RHの加速保管条件、および40℃/75%RHの熱ストレス保管条件で6か月間保管された。次に、本明細書に記載の方法を使用して、タンパク質分解をモニターするために日常的に使用される品質属性についてサンプルを分析した。例えば、分析は、高分子量種(HMMS)を評価するためのサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)、純度と断片化を評価するための還元および非還元キャピラリーゲル電気泳動(CGE)、ならびに酸性種、塩基性種、主要種などの電荷の不均一性を評価するためのイメージキャピラリー等電点電気泳動(iCE)からなっていた。また、分析は、阻害アッセイを使用した抗TFPI抗体の相対的効力の評価も含んでいた。公定法および非公定法を含む特定の分析手順を使用して、抗TFPI抗体の特性、純度、および相対的効力を評価した。結果は表11~19にまとめられている。
【0212】
【表11】
【0213】
【表12】
【0214】
【表13】
【0215】
【表14】
【0216】
【表15】
【0217】
【表16】
【0218】
【表17】
【0219】
【表18】
【0220】
【表19】
【0221】
表11~19に示され、以下に説明されるデータは、高賦形剤もしくは低賦形剤またはpHレベルのいずれかを含む抗TFPI抗体製剤が、いずれのリアルタイム安定性条件下でも6か月後に安定であることを示している。
【0222】
外観
2~8℃および25℃で6か月間保管した後(表18)、ほとんどの製剤(A~E)で、色、透明度、および可視粒子に有意な変化は観察されなかった。2~8℃および25℃で6か月間保管した後、PS80を含まない製剤Fでは可視微粒子の有意な増加が観察された。
【0223】
40℃で6か月間保管した後、全ての製剤(A~F)で溶液の色に有意な変化が観察された。この結果は、以前の安定性試験に基づき、加速ストレス条件で保管した場合に予想されるものである。これらの効果は、標的製剤と比較して、より高い賦形剤濃度を含む製剤CおよびEで最も顕著であった。溶液の透明度に大きな変化は観察されなかった。製剤A~Eの場合、時折、可視粒子が観察されたが、これらはサンプルの取り扱いに起因する可能性がある。40℃で6か月後、PS80を含まない製剤Fで可視粒子の有意な増加が観察されたが、その増加は2~8℃および25℃の保管条件よりも急激ではないことがみとめられた。この所見は、PS80を医薬品製剤に含めることの重要性を強調している。
【0224】
pH
2~8℃、25℃、および40℃で6か月間保管した後(表11)、全ての製剤(A~F)でpHの有意な変化は観察されなかった。
【0225】
UVによるタンパク質濃度
2~8℃、25℃、および40℃で6か月間保管した後(表12)、タンパク質濃度は150mg/mL±15mg/mLの仕様内にとどまっていた。ほとんどの製剤および保管条件で、タンパク質濃度のわずかな増加が観察されたが、これは、アッセイのばらつきに起因する可能性がある。
【0226】
サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)
2~8℃で6か月間保管した後(表13)、全ての製剤(A~F)で%HMMSおよび%モノマーに有意な変化は観察されなかった。低分子量種に対応するピークは、2~8℃における保管中に、全ての製剤にわたって一貫した観察が得られない点が注目された。
【0227】
25℃で6か月間保管した後、%HMMSと%LMMSの両方で1~2%のわずかな増加と、それに対応する%モノマーの減少が全ての製剤(A~F)で観察された。全ての%HMMSの結果が、5%の受け入れ基準を下回ったままであった。
【0228】
40℃で6か月間保管した後、%HMMSと%LMMSの有意な増加と、それに対応する%モノマーの減少が全ての製剤(A~F)で観察された。製剤B(低賦形剤/高pH)およびC(高賦形剤/低pH)は、%モノマーの最大の減少、約20%を示した。これらの結果は、以前の安定性試験に基づく加速ストレス条件において予想されるものである。
【0229】
非還元キャピラリーゲル電気泳動(nrCGE)
2~8℃で6か月間保管した後(表14)、%IgG、%フラグメント、および%その他には、全ての製剤(A~F)で有意な変化は観察されなかった。
【0230】
25℃で6か月間保管した後、全ての製剤(A~F)で2~3%のフラグメントのわずかな増加とそれに対応する%IgGの減少が観察された。%その他に有意な変化は観察されなかった。
【0231】
40℃で6か月間の保存後には、全ての製剤(A~F)で、25%を超えるフラグメントの有意な増加とそれに対応する%IgGの減少が観察された。30%超という%フラグメントの最大の増加は、製剤B(低賦形剤/高pH)およびC(高賦形剤/低pH)で観察された。この結果は、SE-HPLCの結果と一致している。%その他のわずかな増加が、全ての製剤で観察された。
【0232】
還元キャピラリーゲル電気泳動(rCGE)
2~8℃で6か月間保管した後(表15)、%重鎖+軽鎖(HC+LC)、%フラグメント、および%その他には、全ての製剤(A~F)で有意な変化は観察されなかった。
【0233】
25℃で6か月間保管した後、全ての製剤(A~F)で1~2%のフラグメントのわずかな増加とそれに対応する%HC+LCの減少が観察された。製剤BおよびEについてのみ、1%のその他のわずかな増加が観察された。
【0234】
40℃で6か月間の保存後には、全ての製剤(A~F)で、およそ10%のフラグメントの有意な増加とそれに対応する%HC+LCの減少が観察された。%フラグメントの最大の増加は、製剤C(高賦形剤/低pH)で観察された。ほとんどの製剤(A、C、D、およびF)は、その他の2~3%のわずかな増加を示した。対照的に、製剤BおよびEでは、7~8%の%その他の有意な増加が観察された。
【0235】
等電点キャピラリー電気泳動(iCE)
2~8℃で6か月間保管した後(表16)、%酸性のわずかな増加とそれに対応する%主要種の減少が全ての製剤(A~F)で観察されたが、%塩基性種の有意な変化は観察されなかった。
【0236】
25℃で6か月間保管した後、全ての製剤で10~20%の酸性種の有意な増加とそれに対応する%主要種の減少が観察された。ほとんどの製剤にわたって、塩基性種の2~3%のわずかな増加が観察された。高pH製剤のBおよびEは、%酸性種の最大の増加である約18%を示した。この所見は、他に詳細に記述されているアスパラギンの脱アミド化のpH依存性によって説明されうる。
40℃で6か月間保管した後、全ての製剤で約60%の酸性種の有意な増加とそれに対応する%主要種の減少が観察された。%酸性種の最大の増加は、製剤Eで観察されたが、これは、アスパラギン脱アミド化のpH依存性によって説明されうる。T=0とT=6か月のサンプルを比較すると、全ての製剤において%塩基性種の正味の減少が観察された。
【0237】
メチオニン酸化
2~8℃で6か月間保管した後(表17)、%MetOxの有意な変化は、全ての製剤(A~F)で観察されなかった。25℃で6か月間保管した後、全ての製剤(A~F)で1~2%のMetOxのわずかな増加が観察された。40℃で6か月間保管した後には、全ての製剤で、約10%のMetOXの有意な増加が観察された。約20%という%MetOXの最大の増加は、製剤C(高賦形剤/低pH)で観察された。
【0238】
阻害バイオアッセイ
2~8℃および25℃で6か月間保管した後(表19)、全ての製剤で、相対力価の有意な変化は観察されなかった。40℃で6か月間保管した後、製剤A、C、D、およびEで相対力価の低下傾向が観察されたが、全ての結果が許容基準内にとどまっていた。
【0239】
したがって、分解が観察されるものの、抗TFPI抗体は、全ての製剤において、25℃/60%RHの加速保管条件、および40℃/75%RHの熱ストレス保管条件において6か月間活性を維持する(表19)。
【0240】
撹拌試験
撹拌試験は、1mLの製剤A~Fを1mLの固定針を有する長いシリンジに充填することによって行った。次に、シリンジに48時間の撹拌ストレスをかけた。撹拌試験は、シリンジを水平方向に配置し、300rpmに設定したオービタルシェーカーを使用して撹拌して、周囲室温(約22℃)で実施した。時間ゼロ(T0)の対照は、振盪ストレスに曝されていなかった。
【0241】
300rpmで48時間撹拌した後、全ての製剤(A~F)において、SE-HPLC、nrCGE、rCGE、iCE、およびメチオニン酸化による有意な変化は観察されなかった。PS80を含まない製剤Fで可視粒子の有意な増加が観察され、DP製剤におけるPS80の重要性が確認された。ほとんどの製剤(A~E)で、外観の変化は観察されなかった。
【0242】
結論
この試験の目的は、設計領域を確立し、製品の品質が製剤組成と撹拌の変動に対してロバストであることを実証することであった。2~8℃の意図された保管温度において、6か月の保管後、ほとんどの製剤(A~E)について、製剤の変動性はDPの安定性に最小限の影響しか与えなかった。PS80を含まない製剤(F)では、可視粒子および顕微鏡で見える視粒子の有意な増加が観察され、DP製剤におけるPS80の重要性が確認された。25℃と40℃では、製品品質の変化が25℃で3か月、40℃では1か月から観察されたが、これは、以前の安定性試験に基づき、加速ストレス条件下において予想されることである。40℃での保管の結果は、タンパク質凝集が設計領域の隅(BおよびC)で最大に達し、また、脱アミド化が高pH(BおよびE)で最大に達することを示唆している。PS80を含まない製剤Fを除いて、全ての製剤が撹拌ストレスに対するロバスト性を示した。これらの結果は、プロセスで予想される範囲外の賦形剤レベルの変動に対するDPのロバスト性を示している。評価された製剤は、標的賦形剤レベルを含む製剤(対照製剤A)と同等であり、よって、製剤のロバスト性を示している。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、緩衝液、ポリオール、界面活性剤、およびキレート剤を含む製剤であって、製剤が約5.0から約6.0のpHを有し、エピトープが、配列番号2の番号付けに基づき、残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、製剤。
[態様2]
緩衝液がヒスチジンまたはコハク酸緩衝液である、態様1に記載の製剤。
[態様3]
緩衝液の濃度が約0.1mMから約100mMである、態様1または2に記載の製剤。
[態様4]
ポリオールがスクロースである、態様1~3のいずれか一項に記載の製剤。
[態様5]
ポリオールの濃度が約1mg/mLから約300mg/mLである、態様1~4のいずれか一項に記載の製剤。
[態様6]
界面活性剤がポリソルベートである、態様1~5のいずれか一項に記載の製剤。
[態様7]
ポリソルベートがポリソルベート80(PS80)である、態様6に記載の製剤。
[態様8]
界面活性剤の濃度が約0.01mg/mLから約10mg/mLである、態様1~7のいずれか一項に記載の製剤。
[態様9]
キレート剤がエデト酸二ナトリウム二水和物またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、態様1~8のいずれか一項に記載の製剤。
[態様10]
キレート剤の濃度が約0.01mg/mLから約1.0mg/mLである、態様1~9のいずれか一項に記載の製剤。
[態様11]
抗体が、
(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに
(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含む、態様1~10のいずれか一項に記載の製剤。
[態様12]
抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、態様1~11のいずれか一項に記載の製剤。
[態様13]
抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-122329の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされるVH配列、およびATCCアクセッション番号PTA-122328の下で寄託されたプラスミド中に存在するインサートによってコードされるVL配列を含む、態様1~12のいずれか一項に記載の製剤。
[態様14]
抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、態様1~13のいずれか一項に記載の製剤。
[態様15]
約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、
約1mMから約40mMの緩衝液;
約1mg/mLから約120mg/mLのポリオール;
約0.01mg/mLから約1mg/mLの界面活性剤;
約0.01mg/mLから約1.0mg/mLのキレート剤
を含む製剤であって、
ここで、
製剤は、約5.0から約6.0のpHを有し、
エピトープは、配列番号2の番号付けに基づき、残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、製剤。
[態様16]
約15mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、
約1mMから約40mMの緩衝液;
約1mg/mLから約120mg/mLのポリオール;
約0.01mg/mLから約1mg/mLの界面活性剤;
約0.01mg/mLから約1.0mg/mLのキレート剤
を含む製剤であって、
ここで、
製剤は、約5.0から約6.0のpHを有し、
抗体は、(i)以下を含む重鎖可変領域(VH):(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR-H1);(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2);および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3);ならびに(ii)以下を含む軽鎖可変領域(VL):(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR-L1);(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2);および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、製剤。
[態様17]
抗体の濃度が約100mg/mL、約115mg/mL、約150mg/mL、または約158mg/mLである、態様1~16のいずれか一項に記載の製剤。
[態様18]
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、製剤が、5.8のpHを有する、医薬製剤。
[態様19]
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、医薬製剤。
[態様20]
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、医薬製剤。
[態様21]
150mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、医薬製剤。
[態様22]
約50mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、医薬製剤。
[態様23]
約50mg/mLから約250mg/mLの組織因子経路インヒビター(TFPI)のクニッツドメイン2(K2)中のエピトープに特異的に結合する抗体、20mMのヒスチジン緩衝液、85mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、0.05mg/mLのエデト酸二ナトリウム二水和物を含む医薬製剤であって、ここで、抗体が、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、製剤が、5.8のpHを有する、医薬製剤。
[態様24]
製剤が5±3℃で少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する、態様1~23のいずれか一項に記載の製剤。
[態様25]
製剤が、40℃/75%RHで最大1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、または6か月間、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約7%未満のHMMSを有する、態様1~23のいずれか一項に記載の製剤。
[態様26]
製剤が、40℃で最大1か月、2か月、または3か月間、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約3%未満のHMMSを有する、態様1~23のいずれか一項に記載の製剤。
[態様27]
製剤が、40℃で最大1か月間、(例えば、サイズ排除HPLCによる測定で)約2%未満のHMMSを有する、態様1~23のいずれか一項に記載の製剤。
[態様28]
出血時間を短縮する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の態様1~27のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む方法。
[態様29]
血液凝固における障害または出血性障害を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の態様1~27のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む方法。
[態様30]
血友病A、BまたはCを治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、
治療有効量の態様1~27のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む方法。
[態様31]
フォンウィルブランド病(vWD)を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の態様1~27のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む方法。
[態様32]
TFPIの活性を低下させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の態様1~27のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む方法。
[態様33]
製剤が対象に皮下または静脈内投与される、態様28~32のいずれか一項に記載の方法。
[態様34]
対象がヒトである、態様28~33のいずれか一項に記載の方法。
[態様35]
対象における出血性障害の治療のための薬剤の製造のための、態様1~27のいずれか一項に記載の製剤の使用。
[態様36]
対象における血友病A、B、またはCの治療のための薬剤の製造のための、態様1~27のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【0243】
【表20-1】
【0244】
【表20-2】
【0245】
【表20-3】
【0246】
【表20-4】
【0247】
【表20-5】
【0248】
上記の個々のセクションで言及されている本発明の様々な特徴および態様は、適宜、必要な変更を加えて、他のセクションに適用される。したがって、あるセクションにおいて特定されている特徴は、適宜、他のセクションで特定されている特徴と組み合わせられうる。特許、特許出願、論文、教科書、および引用された配列アクセッション番号を含む、本明細書で引用された全ての参考文献、およびそこに引用された参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組み込まれた文献および同様な資料の1つまたは複数が、定義された用語、用語の使用法、説明された技法などを含むがこれらに限定されない点につき、本願と異なるか矛盾する場合、本願が優先される。
【配列表】
0007607437000001.app