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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020189567
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078697
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】二村 羊水
(72)【発明者】
【氏名】二井 瑛典
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0241030(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170101(US,A1)
【文献】特開2020-167330(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093427(WO,A1)
【文献】特開平11-345842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方側を向く主面を有する導電部材と、
前記主面に対向する複数のパッドを有する半導体素子と、
前記複数のパッドから前記厚さ方向の他方側に突出する複数の電極と、
導電性を有するとともに、前記導電部材と前記複数の電極とを接合する接合層と、を備え、
前記導電部材は、前記主面から凹む複数の凹部を有し、
前記接合層は、前記複数の凹部の各々に収容されており、
前記複数の電極は、前記複数の凹部に個別に挿入されており、
前記複数の凹部の各々は、前記厚さ方向において前記主面と同じ側を向く底面と、前記底面および前記主面につながる内側面と、により規定されており、
前記複数の電極の各々は、前記厚さ方向において前記主面と反対側を向き、かつ前記底面に対向する対向面と、前記対向面につながり、かつ前記内側面に対向する外側面と、を有し、
前記接合層は、前記底面、前記内側面、前記対向面および前記外側面に接しており、
前記接合層は、前記厚さ方向において前記主面と同じ側を向く端面を有し、
前記端面は、前記厚さ方向において前記主面を基準として前記底面が位置する側に、前記主面から離れており、
前記内側面は、前記接合層から露出する第1領域を含み、
前記外側面は、前記接合層から露出する第2領域を含み、
前記第1領域および前記第2領域の各々は、前記厚さ方向において前記主面と前記端面との間に位置する、半導体装置。
【請求項2】
前記内側面は、前記底面および前記主面の各々に対して傾斜している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の凹部の各々において、前記厚さ方向に対して直交する方向に沿った断面積は、前記主面から前記底面に向かうほど徐々に小である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の電極の各々は、前記対向面から凹む陥入部を有し、
前記接合層は、前記陥入部に入り込んでいる、請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接合層は、金属を含み、
前記金属の組成は、錫を含む、請求項1ないし4いずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接合層は、金属部および絶縁部を有し、
前記絶縁部の少なくとも一部は、樹脂を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属部は、焼結体である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁部は、空隙を含む、請求項6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属部の組成は、銀を含む、請求項6ないし8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電極の組成は、銅を含む、請求項5ないし9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記電極は、前記パッドの上に形成された主部と、前記主部を覆う副部と、を有し、
前記主部の組成は、銅を含み、
前記副部の組成は、パラジウムを含む、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記副部は、前記主部を覆う第1層と、前記第1層を覆う第2層と、を有し、
前記第1層の組成は、ニッケルを含み、
前記第2層の組成は、パラジウムを含む、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記主面に接するとともに、前記半導体素子、および前記複数の電極を覆う封止樹脂をさらに備え、
前記封止樹脂は、前記主面と前記半導体素子との間に介在する部分を含む、請求項1ないし12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記導電部材は、前記厚さ方向において前記主面とは反対側を向く裏面を有し、
前記裏面は、前記封止樹脂から露出している、請求項13に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フリップチップ実装により導電部材に接合された半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子がフリップ実装により導電部材(リードフレームなど)に接合された半導体装置が広く知られている。特許文献1には、そのような半導体装置の一例が開示されている。当該半導体装置においては、導電部材(特許文献1では引き出し配線)に半導体素子(特許文献1では半導体チップ)の複数の電極が接合層(特許文献1では導体バンプ)により接合されている。半導体素子の複数の電極は、導電部材に対向している。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体装置の接合層は、ハンダからなる。このため、半導体素子に構成された回路に応じて複数の電極の数を増加させた場合、接合層を介して複数の電極を導電部材に接合させる際、溶融した接合層により複数の電極に短絡が発生するおそれがある。さらに接合層には、半導体素子から発した熱の影響により熱応力が作用する。接合層がハンダである場合、当該熱応力に起因した亀裂が発生しやすい。したがって、これらの対策を講じることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-85522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記事情に鑑み、複数の電極の短絡を防止しつつ、接合層における亀裂の発生を抑制することが可能な半導体装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される半導体装置は、厚さ方向の一方側を向く主面を有する導電部材と、前記主面に対向する複数のパッドを有する半導体素子と、前記複数のパッドから前記厚さ方向の他方側に突出する複数の電極と、を備え、前記導電部材は、前記主面から前記厚さ方向の前記他方側に凹む複数の凹部を有し、導電性を有し、かつ前記複数の凹部の内に配置された接合層をさらに備え、前記複数の電極は、前記複数の凹部に個別に挿入され、前記導電部材と前記複数の電極とが前記接合層によって接合されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる半導体装置およびその製造方法によれば、複数の電極の短絡を防止しつつ、接合層における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の平面図である。
図2図1に対応する半導体装置の平面図であり、封止樹脂を透過している。
図3図2に対応する半導体装置の平面図であり、半導体素子、複数の電極、および接合層をさらに透過している。
図4図1に示す半導体装置の底面図である。
図5図1に示す半導体装置の正面図である。
図6図1に示す半導体装置の背面図である。
図7図1に示す半導体装置の右側面図である。
図8図1に示す半導体装置の左側面図である。
図9図3のIX-IX線に沿う断面図である。
図10図3のX-X線に沿う断面図である。
図11図3のXI-XI線に沿う断面図である。
図12図3のXII-XII線に沿う断面図である。
図13図9の部分拡大図である。
図14図9の部分拡大図である。
図15図1に示す半導体装置の第1変形例の部分拡大断面図である。
図16図1に示す半導体装置の第2変形例の部分拡大断面図である。
図17】本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の部分拡大断面図である。
図18図17に示す半導体装置の変形例の部分拡大断面図である。
図19】本開示の第3実施形態にかかる半導体装置の部分拡大断面図である。
図20図19に示す半導体装置の変形例の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。添付図面の各々は模式的に描かれている。添付図面の各々は、省略された部分、および誇張された部分を含むことがある。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1図14に基づき、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置A10について説明する。半導体装置A10は、導電部材10、半導体素子20、複数の電極31、接合層32および封止樹脂40を備える。図1に示すように、半導体装置A10のパッケージ形式は、QFN(Quad Flat Non-Lead Package)である。半導体素子20は、フリップチップ型のLSIである。半導体素子20には、その内部にスイッチング回路212Aおよび制御回路212B(それぞれ詳細は後述)が構成されている。半導体装置A10においては、スイッチング回路212Aにより直流電力(電圧)が交流電力(電圧)に変換される。半導体装置A10は、たとえばDC/DCコンバータの回路を構成する一要素に用いられる。ここで、図2は、理解の便宜上、封止樹脂40を透過している。図3は、理解の便宜上、図2に対して半導体素子20、複数の電極31、および接合層32をさらに透過している。これらの図において、透過した半導体素子20および封止樹脂40の各々を想像線(二点鎖線)で示している。
【0012】
半導体装置A10の説明においては、導電部材10の厚さ方向zを「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。図1および図2に示すように、半導体装置A10は、厚さ方向zに沿って視て矩形状である。また、半導体装置A10の説明においては、便宜上、第2方向yにおいて複数の第2リード12(詳細は後述)が位置する側を「第2方向yの一方側」と呼ぶ。第2方向yにおいて複数の第1リード11(詳細は後述)が位置する側を「第2方向yの他方側」と呼ぶ。
【0013】
導電部材10は、図2に示すように、半導体素子20を搭載するとともに、半導体装置A10を配線基板に実装するための端子をなしている。図9図12に示すように、導電部材10は、その一部が封止樹脂40に覆われている。導電部材10は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く主面101および裏面102を有する。主面101は、厚さ方向zの一方側を向き、かつ半導体素子20に対向している。半導体素子20は、主面101に支持されている。主面101は、封止樹脂40に覆われている。裏面102は、厚さ方向zの他方側を向く。導電部材10は、単一のリードフレームから構成される。当該リードフレームは、たとえば、銅(Cu)または銅合金を含む材料からなる。導電部材10は、複数の第1リード11、複数の第2リード12および一対の第3リード13を含む。
【0014】
複数の第1リード11は、図3および図4に示すように、厚さ方向zに沿って視て第2方向yに延びる帯状である。複数の第1リード11は、第2方向yに沿って配列されている。半導体装置A10が示す例においては、複数の第1リード11は、第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの3つの端子により構成される。複数の第1リード11は、第2方向yの一方側から他方側に第1入力端子11A、出力端子11C、第2入力端子11Bの順に配列されている。第1入力端子11Aおよび第2入力端子11Bは、半導体装置A10において電力変換対象となる直流電力(電圧)が入力される。第1入力端子11Aは、正極(P端子)である。第2入力端子11Bは、負極(N端子)である。出力端子11Cからは、半導体素子20に構成されたスイッチング回路212Aにより電力変換された交流電力(電圧)が出力される。
【0015】
図3に示すように、第1入力端子11Aは、第2方向yにおいて複数の第2リード12と出力端子11Cとの間に位置する。出力端子11Cは、第2方向yにおいて第1入力端子11Aと第2入力端子11Bとの間に位置する。第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々は、主部111および一対の側部112を含む。図3および図4に示すように、主部111は、第1方向xに延びている。複数の第1リード11において、半導体素子20は、主部111の主面101に支持されている。一対の側部112は、主部111の第1方向xの両端につながっている。図3図4図10および図11に示すように、一対の側部112の各々は、第1端面112Aを有する。第1端面112Aは、第1リード11の主面101および裏面102の双方につながり、かつ第1方向xを向く。第1端面112Aは、封止樹脂40から露出している。
【0016】
図3および図4に示すように、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々において、一対の側部112は第2方向yにくびれている。これにより、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々において、一対の第1端面112Aの各々の第2方向yの寸法は、主部111の第2方向yの寸法よりも小である。一対の側部112の第2方向yの両端は、封止樹脂40に接している。
【0017】
図3に示すように、第2入力端子11Bは、出力端子11Cよりも第2方向yの他方側に位置する。このため、第2入力端子11Bは、複数の第1リード11のうち第2方向yの他方側に位置する。第2入力端子11Bは、主部111、一対の側部112および複数の突出部113を含む。複数の突出部113は、主部111の第2方向yの他方側から突出している。隣り合う2つの突出部113の間には、封止樹脂40が充填されている。図9に示すように、複数の突出部113の各々は、副端面113Aを有する。副端面113Aは、第2入力端子11Bの主面101および裏面102の双方につながり、かつ第2方向yの他方側を向く。副端面113Aは、封止樹脂40から露出している。図7に示すように、複数の副端面113Aは、第1方向xに沿って所定の間隔で配列されている。
【0018】
図3および図4に示すように、複数の第1リード11の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。半導体装置A10が示す例においては、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々の裏面102の面積は、ともに等しい。第2入力端子11Bの裏面102の面積は、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々の裏面102の面積よりも大である。
【0019】
第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの各々において、半導体素子20が支持される主部111の主面101には、たとえば銀(Ag)めっきを施してもよい。さらに、第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの各々において、封止樹脂40から露出する裏面102、一対の第1端面112Aおよび複数の副端面113Aには、たとえば錫(Sn)めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0020】
複数の第2リード12は、図3に示すように、複数の第1リード11よりも第2方向yの一方側に位置する。複数の第2リード12のいずれか一つは、半導体素子20に構成された制御回路212Bの接地端子である。その他の複数の第2リード12の各々には、制御回路212Bを駆動させるための電力(電圧)、または制御回路212Bに伝達するための電気信号が入力される。図3図4および図9に示すように、複数の第2リード12の各々は、第2端面121を有する。第2端面121は、第2リード12の主面101および裏面102の双方につながり、かつ第2方向yの一方側を向く。第2端面121は、封止樹脂40から露出している。図8に示すように、複数の第2端面121は、第1方向xに沿って所定の間隔で配列されている。
【0021】
図3および図4に示すように、複数の第2リード12の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。なお、複数の第2リード12の裏面102の面積は、いずれも等しい。半導体素子20が支持される複数の第2リード12の裏面102には、たとえば銀めっきを施してもよい。さらに、封止樹脂40から露出する複数の第2リード12の裏面102および第2端面121には、たとえば錫めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル、パラジウム、金の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0022】
一対の第3リード13は、図3に示すように、第2方向yにおいて第1リード11(第1入力端子11A)と、複数の第2リード12との間に位置する。一対の第3リード13は、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の第3リード13の各々には、半導体素子20に構成された制御回路212Bに伝達するための電気信号などが入力される。図3図4および図12に示すように、一対の第3リード13の各々は、第3端面131を有する。第3端面131は、主面101および裏面102の双方につながり、かつ第1方向xを向く。第3端面131は、封止樹脂40から露出している。第3端面131は、複数の第1リード11の第1端面112Aとともに、第2方向yに沿って配列されている。
【0023】
図3および図4に示すように、一対の第3リード13の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。半導体素子20が支持される一対の第3リード13の主面101には、たとえば銀めっきを施してもよい。さらに、封止樹脂40から露出する一対の第3リード13の裏面102および第3端面131には、たとえば錫めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえば、ニッケル、パラジウム、金の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0024】
図3、および図9図12に示すように、導電部材10は、複数の凹部14を有する。複数の凹部14は、導電部材10の主面101から厚さ方向zに凹んでいる。図13および図14に示すように、複数の凹部14の各々は、底面141および内側面142を有する。底面141は、厚さ方向zにおいて主面101と同じ側を向く。底面141は、厚さ方向zにおいて主面101と、導電部材10の裏面102との間に位置する。内側面142は、底面141および主面101につながっている。半導体装置A10においては、内側面142は、底面141に対して直立している。
【0025】
半導体素子20は、図9図12に示すように、導電部材10(複数の第1リード11、複数の第2リード12、および一対の第3リード13)に、複数の電極31、および接合層32を介したフリップチップ実装により接合されている。複数の電極31の各々と、接合層32とは、接合部を構成する。半導体素子20は、封止樹脂40に覆われている。図13および図14に示すように、半導体素子20は、素子本体21、複数のパッド22および表面保護膜23を有する。
【0026】
素子本体21は、半導体素子20の主要部をなす。図13および図14に示すように、素子本体21は、基板211、半導体層212およびパッシベーション膜213を有する。
【0027】
図13および図14に示すように、基板211は、その下方において半導体層212、パッシベーション膜213、複数の電極31、および表面保護膜23を支持している。基板211は、半導体材料からなる。当該半導体材料は、たとえばケイ素(Si)または炭化ケイ素(SiC)を主成分としている。基板211の厚さは、たとえば100μm以上300μm以下である。
【0028】
図9図12に示すように、半導体層212は、厚さ方向zにおいて基板211に対して導電部材10の主面101に対向する側に位置する。半導体層212は、基板211の上に積層されている。半導体層212は、ドープされる元素量の相違に基づく複数種類のp型半導体およびn型半導体を含む。半導体層212には、スイッチング回路212Aと、スイッチング回路212Aに導通する制御回路212Bとが構成されている。スイッチング回路212Aは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などである。半導体装置A10が示す例においては、スイッチング回路212Aは、高電圧領域(上アーム回路)と低電圧領域(下アーム回路)との2つの領域に区分されている。各々の領域は、1つのnチャンネル型のMOSFETにより構成されている。制御回路212Bは、スイッチング回路212Aを駆動させるためのゲートドライバや、スイッチング回路212Aの高電圧領域に対応するブートストラップ回路などが構成されるとともに、スイッチング回路212Aを正常に駆動させるための制御を行う。なお、半導体層212には、配線層(図示略)が構成されている。当該配線層により、スイッチング回路212Aと制御回路212Bとは、相互に導通している。
【0029】
図13および図14に示すように、パッシベーション膜213は、半導体層212の下面を覆っている。パッシベーション膜213は、電気絶縁性を有する。パッシベーション膜213は、たとえば、半導体層212の下面に接する酸化ケイ素膜(SiO2)と、当該酸化ケイ素膜に積層された窒化ケイ素膜(Si34)とにより構成される。パッシベーション膜213には、厚さ方向zに貫通する複数の開口213Aが設けられている。
【0030】
図13および図14に示すように、複数のパッド22は、導電部材10の主面101に対向している。複数のパッド22は、素子本体21の半導体層212に接して配置されている。これにより、複数のパッド22の各々は、半導体層212のスイッチング回路212A、および半導体層212の制御回路212Bのいずれかに導通している。複数のパッド22の各々は、その組成にアルミニウム(Al)または銅を含む。その他の複数のパッド22の各々の構成として、半導体層212から下方に銅、ニッケル、パラジウムの順に積層された複数の金属層でもよい。複数のパッド22の各々は、素子本体21のパッシベーション膜213に接している。複数のパッド22の各々の一部は、パッシベーション膜213の開口213Aから露出している。
【0031】
図13および図14に示すように、表面保護膜23は、素子本体21のパッシベーション膜213を覆っている。表面保護膜23は、パッシベーション膜213、および複数のパッド22に接している。半導体装置A10においては、複数の電極31の各々は、表面保護膜23から離れている。本構成と異なり、複数の電極31の各々が、表面保護膜23に接する構成でもよい。表面保護膜23は、電気絶縁性を有する。表面保護膜23は、たとえばポリイミドを含む材料からなる。
【0032】
複数の電極31は、図13および図14に示すように、半導体素子20の複数のパッド22に形成されている。複数の電極31は、厚さ方向zにおいて複数のパッド22に対して半導体素子20の素子本体21とは反対側に突出している。図9図12に示すように、複数の電極31は、導電部材10の複数の凹部14に個別に挿入されている。半導体装置A10においては、複数の電極31の各々の組成は、銅を含む。
【0033】
複数の電極31の各々は、半導体素子20の複数のパッド22のいずれかを介して半導体層212のスイッチング回路212A、および半導体層212の制御回路212Bのいずれかに導通している。複数の電極31の各々は、接合層32を介して導電部材10に接合されている。複数の電極31は、複数の第1電極31A、および複数の第2電極31Bを含む。複数の第1電極31Aの各々は、半導体層212のスイッチング回路212Aに導通し、かつ複数の第1リード11のいずれかに接合されている。複数の第2電極31Bの各々は、半導体層212の制御回路212Bに導通し、かつ複数の第2リード12、および一対の第3リード13のいずれかに接合されている。
【0034】
図13および図14に示すように、複数の電極31の各々は、対向面311および外側面312を有する。対向面311は、複数の凹部14のいずれかの底面141に対向している。外側面312は、対向面311につながり、かつ複数の凹部14のいずれかの内側面142に対向している。
【0035】
接合層32は、図13および図14を示すように、導電部材10の複数の凹部14の内に配置されている。導電部材10と複数の電極31とが接合層32によって接合されている。接合層32は、導電性を有する。半導体装置A10においては、接合層32は、金属を含む。当該金属の組成は、錫を含む。接合層32は、たとえば鉛フリーハンダである。
【0036】
図13および図14に示すように、接合層32は、導電部材10の複数の凹部14の底面141と、複数の電極31の対向面311とに接している。さらに接合層32は、複数の凹部14の内側面142と、複数の電極31の外側面312とに接している。複数の電極31の各々の高さhは、複数の凹部14の各々の深さdよりも大である。
【0037】
封止樹脂40は、図9図12に示すように、導電部材10の主面101に接するとともに、半導体素子20、および複数の電極31を覆っている。封止樹脂40は、主面101と半導体素子20との間に介在する部分を含む。図5図8に示すように、封止樹脂40は、頂面41、底面42、一対の第1側面431、および一対の第2側面432を有する。封止樹脂40は、たとえば、黒色のエポキシ樹脂を含む材料からなる。
【0038】
図9図12に示すように、頂面41は、厚さ方向zにおいて導電部材10の主面101と同じ側を向く。図5図8に示すように、底面42は、頂面41とは反対側を向く。図4に示すように、底面42から、複数の第1リード11の裏面102、複数の第2リード12の裏面102、および一対の第3リード13の裏面102が露出している。
【0039】
図7および図8に示すように、一対の第1側面431は、頂面41および底面42の双方につながり、かつ第1方向xを向く。一対の第1側面431は、第2方向yにおいて互いに離間している。図10図12に示すように、一対の第1側面431の各々から、複数の第1リード11の第1端面112Aと、第3リード13の第3端面131とが、第1側面431と面一となるように露出している。
【0040】
図5および図6に示すように、一対の第2側面432は、頂面41、底面42および一対の第1側面431のいずれにもつながり、かつ第2方向yを向く。一対の第2側面432は、第1方向xにおいて互いに離間している。図9に示すように、第2方向yの一方側に位置する第2側面432から、複数の第2リード12の第2端面121が、第2側面432と面一となるように露出している。第2方向yの他方側に位置する第2側面432から、第2入力端子11B(第1リード11)の複数の副端面113Aが、第2側面432と面一となるように露出している。
【0041】
<第1変形例>
次に、図15に基づき、半導体装置A10の変形例である半導体装置A11について説明する。ここで、図15の断面位置は、図13の断面位置と同一である。
【0042】
図15に示すように、半導体装置A11は、接合層32の構成が半導体装置A10の当該構成と異なる。半導体装置A11においては、接合層32は、金属部32Aおよび絶縁部32Bを含む。金属部32Aは、焼結金属粒子の結合体、すなわち焼結体である。当該焼結体の組成は、銀を含む。当該焼結体は、大気圧下で金属粒子を焼成したものである。この他、金属部32Aは、焼成されていない金属粒子でもよい。当該金属粒子の組成は、銀を含む。絶縁部32Bは、接合層32から金属部32Aを除いた部分である。絶縁部32Bの少なくとも一部は、樹脂を含む。当該樹脂は、バインダとして合成樹脂を含む材料からなる。当該合成樹脂は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。当該樹脂のヤング率は、金属部32Aのヤング率よりも小である。絶縁部32Bは、樹脂のみからなる場合と、樹脂および空隙が混在する場合とがある。絶縁部32Bの体積は、接合層32の全体の体積の15%以上35%以下である。
【0043】
<第2変形例>
次に、図16に基づき、半導体装置A10の変形例である半導体装置A12について説明する。ここで、図16の断面位置は、図13の断面位置と同一である。
【0044】
図16に示すように、半導体装置A12は、接合層32の構成が半導体装置A10の当該構成と異なる。半導体装置A12においては、接合層32は、はみ出し部321を有する。はみ出し部321は、導電部材10の複数の凹部14の外に位置する。はみ出し部321は、複数の電極31の外側面312と、導電部材10の主面101とに接している。
【0045】
次に、半導体装置A10の作用効果について説明する。
【0046】
半導体装置A10は、主面101から厚さ方向zに凹む複数の凹部14を有する導電部材10と、半導体素子20の複数のパッド22から厚さ方向zに突出する複数の電極31とを備える。複数の電極31は、複数の凹部14に個別に挿入されている。半導体装置A10は、導電性を有し、かつ複数の凹部14の内に配置された接合層32をさらに備える。導電部材10と複数の電極31とが接合層32によって接合されている。本構成をとることにより、半導体装置A10の製造工程のうち接合層32を介して複数の電極31を導電部材10に接合する工程において、接合層32が導電部材10の主面101に沿って拡がることが抑制されるため、複数の電極31の短絡が防止される。さらに、複数の凹部14の各々において、接合層32は、導電部材10と複数の電極31とに拘束された状態となるため、半導体素子20から発した熱に起因した接合層32の熱ひずみが低減される。これにより、接合層32における亀裂の発生を抑制できる。したがって、半導体装置A10によれば、複数の電極31の短絡を防止しつつ、接合層32における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
接合層32は、導電部材10の複数の凹部14の底面141と、複数の電極31の対向面311とに接している。さらに接合層32は、複数の凹部14の内側面142と、複数の接合層32の外側面312とに接している。これにより、導電部材10に対する複数の電極31の接合強度の向上を図ることができる。
【0048】
半導体装置A11においては、接合層32は、金属部32Aおよび絶縁部32Bを有する。金属部32Aは、焼結体である。絶縁部32Bの少なくとも一部は、樹脂を含む。この場合において、絶縁部32Bのヤング率を金属部32Aのヤング率よりも小に設定することによって、半導体素子20から発した熱に起因した金属部32Aに作用する熱応力を効果的に低減することができる。このことは、金属部32Aにおける亀裂の発生抑制に寄与する。
【0049】
半導体装置A11において、接合層32の絶縁部32Bの体積は、接合層32の全体の体積の15%以上35%以下であることが好ましい。これにより、接合層32の金属部32Aに作用する熱応力の低減効果が十分に発揮される。一方、絶縁部32Bの体積が接合層32の全体の体積の15%未満である場合においては、金属部32Aに作用する熱応力の低減効果が発揮され難くなる。他方、絶縁部32Bの体積が接合層32の全体の体積の35%を超える場合においては、接合層32の電気抵抗が増加する要因となるため好ましくない。
【0050】
半導体装置A12においては、接合層32は、はみ出し部321を有する。はみ出し部321は、導電部材10の複数の凹部14の外に位置する。はみ出し部321は、複数の電極31の外側面312と、導電部材10の主面101とに接している。はみ出し部321が存在することによって、導電部材10の複数の凹部14の内には接合層32が充填されていることとなる。このことは、導電部材10に対する複数の電極31の接合状態が良好であることを意味する。さらにはみ出し部321の大きさを適宜調整することによって、複数の電極31の短絡を確実に防止することができる。
【0051】
半導体装置A10は、導電部材10の主面101に接するとともに、半導体素子20、および複数の電極31を覆う封止樹脂40をさらに備える。封止樹脂40は、主面101と半導体素子20との間に介在する部分を含む。これにより、半導体装置A10の絶縁耐圧の向上を図ることができる。本構成をなすためには、図13および図14に示すように、複数の電極31の各々の高さhは、導電部材10の複数の凹部14の各々の深さdよりも大であることが好ましい。これにより、厚さ方向zにおいて主面101と半導体素子20との間に隙間が確実に設けられるためである。また、複数の凹部14は、半導体装置A10の製造の際、導電部材10に対して複数の電極31の位置がずれることを抑制するための手段となる。
【0052】
複数の電極31の各々は、ボンディングワイヤよりも長さが小であり、かつ横断面積が大である。このため、第1リード11と、半導体素子20の複数のパッド22とをボンディングワイヤにより接続させた場合と比較して、第1リード11とスイッチング回路212Aとの間における寄生抵抗を低減させることができる。寄生抵抗が低減されると、スイッチング回路212Aにおけるオン抵抗およびノイズが低減されるという効果が得られる。
【0053】
半導体素子20の素子本体21の半導体層212には、スイッチング回路212Aが構成されている。スイッチング回路212Aには、複数の電極31の少なくともいずれかが導通している。一方、導電部材10に含まれ、かつ複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第1リード11の裏面102は、封止樹脂40の底面42から露出している。これにより、半導体装置A10の使用の際、スイッチング回路212Aの駆動により半導体素子20から発生した熱を、効率よく外部に放熱させることができる。
【0054】
複数の第1リード11の各々は、第1方向xに延びる主部111と、主部111の第1方向xの両端につながる一対の側部112を有する。一対の側部112の各々は、第1方向xを向き、かつ封止樹脂40の第1側面431から露出する第1端面112Aを有する。一対の第1端面112Aの各々は、第1側面431と面一である。第2方向yにおいて、一対の第1端面112Aの各々の寸法bは、主部111の裏面102の寸法Bよりも小である。これにより、一対の第1端面112Aの各々の面積を、従来のQFNの半導体装置におけるこれらの面積よりも小とすることができる。このため、半導体装置A10の製造において、ブレードダイシングによる個片化を行った際、一対の第1端面112Aにおける金属バリの発生が抑制される。金属バリの発生が抑制されると、配線基板に対する半導体装置A10の実装性の向上を図ることができる。
【0055】
図3および図4に示すように、複数の第1リード11(第1入力端子11Aおよび出力端子11C)の各々において、一対の側部112は第2方向yにくびれている。これにより、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々において、一対の第1端面112Aの各々の第2方向yの寸法は、主部111の第2方向yの寸法よりも小である。一対の側部112の第2方向yの両端は、封止樹脂40に接している。本構成をとることにより、複数の第1リード11が封止樹脂40の一対の第1側面431から抜け出すことを防止できる。
【0056】
第2入力端子11Bは、主部111の第2方向yの他方側から突出する複数の突出部113を含む。複数の突出部113の各々は、第2方向yを向く副端面113Aを有する。複数の副端面113Aは、第2方向yの他方側に位置する封止樹脂40の第2側面432から露出している。これにより、第2入力端子11Bは、第2方向yの他方側において封止樹脂40に接する構成となる。したがって、第2入力端子11Bが第2方向yの他方側に位置する第2側面432から抜け出すことを防止できる。
【0057】
複数の第1リード11の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。これにより、複数の第1リード11は、厚さ方向zの裏面102が向く側において封止樹脂40に接する構成となる。したがって、複数の第1リード11が封止樹脂40の底面42から抜け出すことを防止できる。さらに、複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第1リード11の各々の主面101の面積を、より広く確保することができる。これにより、複数の第1リード11に接合される複数の電極31の個数を、より増加させることが可能である。
【0058】
導電部材10は、複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第2リード12をさらに含む。複数の第2リード12の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。したがって、先述した第1リード11の主面101および裏面102の関係と同様に、複数の第2リード12が封止樹脂40の底面42から抜け出すことを防止できる。さらに、複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第2リード12の各々の面積を、より確保することができる。これにより、複数の第2リード12に接合される複数の電極31の個数を、より増加させることが可能である。
【0059】
〔第2実施形態〕
図17に基づき、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置A20について説明する。本図において、先述した半導体装置A10の同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図17の断面位置は、図13の断面位置と同一である。
【0060】
半導体装置A20は、複数の電極31の構成が先述した半導体装置A10の当該構成と異なる。
【0061】
図17に示すように、複数の電極31の各々は、主部313および副部314を有する。主部313は、半導体素子20のパッド22の上に形成されている。主部313の組成は、銅を含む。副部314は、主部313を覆っている。副部314は、第1層314Aおよび第2層314Bを有する。第1層314Aは、主部313を覆っている。第1層314Aの組成は、ニッケルを含む。第2層314Bは、第1層314Aを覆っている。第2層314Bの組成は、パラジウムを含む。副部314は、第1層314Aおよび第2層314Bから構成される場合の他、単一の金属層から構成される場合でもよい。この場合において、当該金属層の組成は、パラジウムおよびニッケルのいずれかを含む。
【0062】
<変形例>
次に、図18に基づき、半導体装置A20の変形例である半導体装置A21について説明する。ここで、図18の断面位置は、図13の断面位置と同一である。
【0063】
図18に示すように、半導体装置A21は、導電部材10の複数の凹部14の構成が半導体装置A20の当該構成と異なる。半導体装置A21においては、複数の凹部14の各々は、被覆層143を有する。被覆層143は、複数の凹部14の各々の内において導電部材10を覆う金属層である。複数の凹部14の各々において、底面141および内側面142は、被覆層143の表面をなしている。被覆層143は、単一の金属層、または複数の金属層からなる。被覆層143が単一の金属層からなる場合は、当該金属層の組成は、パラジウムおよびニッケルのいずれかを含む。被覆層143が複数の金属層からなる場合は、被覆層143の構成は、導電部材10を覆い、かつニッケルを組成に含む金属層と、当該金属層を覆い、かつパラジウムを組成に含む金属層とからなる。
【0064】
次に、半導体装置A20の作用効果について説明する。
【0065】
半導体装置A20は、主面101から厚さ方向zに凹む複数の凹部14を有する導電部材10と、半導体素子20の複数のパッド22から厚さ方向zに突出する複数の電極31とを備える。複数の電極31は、複数の凹部14に個別に挿入されている。半導体装置A10は、導電性を有し、かつ複数の凹部14の内に配置された接合層32をさらに備える。導電部材10と複数の電極31とが接合層32によって接合されている。したがって、半導体装置A20によっても、複数の電極31の短絡を防止しつつ、接合層32における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0066】
半導体装置A20においては、複数の電極31の各々は、半導体素子20のパッド22の上に形成された主部313と、主部313を覆う副部314とを有する。主部313の組成は、銅を含む。副部314の組成は、パラジウムを含む。本構成をとることにより、半導体装置A20の製造工程のうち接合層32を介して複数の電極31を導電部材10に接合する工程において、主部313に作用する熱衝撃が副部314により低減される。これにより、主部313の保護を図ることができる。さらに、接合層32の組成が錫を含む場合、複数の電極31に対する接合層32の濡れ性が良好なものとなる。これにより、接合層32に対する複数の電極31の接触面積が十分に確保されたものとなる。本作用をより効果的に発揮するためには、副部314が、主部313を覆い、かつ組成にニッケルを含む第1層314Aと、第1層314Aを覆い、かつ組成にパラジウムを含む第2層314Bを有する構成であることが好ましい。
【0067】
半導体装置A21においては、導電部材10の複数の凹部14の各々は、被覆層143を有する。本構成をとることにより、半導体装置A20の製造工程のうち接合層32を介して複数の電極31を導電部材10に接合する工程において、導電部材10に作用する熱衝撃を低減することができる。これにより、導電部材10の保護を図ることができる。さらに、接合層32の組成が錫を含む場合、導電部材10に対する接合層32の濡れ性が良好なものとなる。これにより、接合層32に対する導電部材10の接触面積が十分に確保されたものとなる。
【0068】
〔第3実施形態〕
図19に基づき、本開示の第3実施形態にかかる半導体装置A30について説明する。本図において、先述した半導体装置A10の同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図19の断面位置は、図13の断面位置と同一である。
【0069】
半導体装置A30は、導電部材10の複数の凹部14の構成が先述した半導体装置A10の当該構成と異なる。
【0070】
図19に示すように、導電部材10の複数の凹部14の各々において、内側面142は、底面141、および導電部材10の主面101の各々に対して傾斜している。このため、内側面142の面積は、半導体装置A10の複数の凹部14の各々の面積よりも大である。複数の凹部14の各々の厚さ方向zに対して直交する方向に沿った断面積は、主面101から底面141に向かうほど徐々に小である。
【0071】
<変形例>
次に、図20に基づき、半導体装置A30の変形例である半導体装置A31について説明する。ここで、図20の断面位置は、図13の断面位置と同一である。
【0072】
図20に示すように、半導体装置A31は、複数の電極31の構成が半導体装置A30の当該構成と異なる。半導体装置A31においては、複数の電極31の各々は、陥入部315を有する。陥入部315は、対向面311から厚さ方向zにおいて半導体素子20が位置する側に凹んでいる。接合層32は、陥入部315に接している。
【0073】
次に、半導体装置A30の作用効果について説明する。
【0074】
半導体装置A30は、主面101から厚さ方向zに凹む複数の凹部14を有する導電部材10と、半導体素子20の複数のパッド22から厚さ方向zに突出する複数の電極31とを備える。複数の電極31は、複数の凹部14に個別に挿入されている。半導体装置A10は、導電性を有し、かつ複数の凹部14の内に配置された接合層32をさらに備える。導電部材10と複数の電極31とが接合層32によって接合されている。したがって、半導体装置A30によっても、複数の電極31の短絡を防止しつつ、接合層32における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0075】
半導体装置A30においては、導電部材10の複数の凹部14の内側面142は、複数の凹部14の底面141と、導電部材10の主面101との各々に対して傾斜している。これにより、接合層32に対する導電部材10の接触面積が増加するため、導電部材10に対する複数の電極31の接合強度をより向上させることができる。複数の凹部14の各々の厚さ方向zに対して直交する方向の断面積は、主面101から底面141に向かうほど徐々に小である。これにより、接合層32に作用する熱応力が分散されるとともに、厚さ方向zに沿った当該熱応力の流れがより円滑なものとなる。このことは、より効果的な接合層32における亀裂の発生抑制に寄与する。
【0076】
半導体装置A31においては、複数の電極31の各々は、対向面311から厚さ方向zに凹む陥入部315を有する。接合層32は、陥入部315に接している。これにより、接合層32に対する複数の電極31の接触面積が増加するため、導電部材10に対する複数の電極31の接合強度をさらに向上させることができる。さらに、接合層32には、複数の電極31に対する投錨効果(アンカー効果)が発生する。このことは、導電部材10に対する複数の電極31の接合強度の向上に寄与する。
【0077】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0078】
本開示によって提供される半導体装置の技術的構成について、以下に付記する。
[付記1]
厚さ方向の一方側を向く主面を有する導電部材と、
前記主面に対向する複数のパッドを有する半導体素子と、
前記複数のパッドから前記厚さ方向の他方側に突出する複数の電極と、を備え、
前記導電部材は、前記主面から前記厚さ方向の前記他方側に凹む複数の凹部を有し、
導電性を有し、かつ前記複数の凹部の内に配置された接合層をさらに備え、
前記複数の電極は、前記複数の凹部に個別に挿入され、
前記導電部材と前記複数の電極とが前記接合層によって接合されている、半導体装置。
[付記2]
前記凹部は、前記厚さ方向において前記主面と同じ側を向く底面を有し、
前記電極は、前記底面に対向する対向面を有し、
前記接合層は、前記底面および前記対向面に接している、付記1に記載の半導体装置。
[付記3]
前記凹部は、前記底面および前記主面につながる内側面を有し、
前記電極は、前記対向面につながり、かつ前記内側面に対向する外側面を有し、
前記接合層は、前記内側面および前記外側面に接している、付記2に記載の半導体装置。
[付記4]
前記内側面は、前記底面および前記主面の各々に対して傾斜している、付記3に記載の半導体装置。
[付記5]
前記凹部の前記厚さ方向に対して直交する方向に沿った断面積は、前記主面から前記底面に向かうほど徐々に小である、付記4に記載の半導体装置。
[付記6]
前記電極は、前記対向面から前記厚さ方向の前記一方側に凹む陥入部を有し、
前記接合層は、前記陥入部に接している、付記3ないし5のいずれかに記載の半導体装置。
[付記7]
前記接合層は、金属を含み、
前記金属の組成は、錫を含む、付記1ないし6いずれかに記載の半導体装置。
[付記8]
前記接合層は、金属部および絶縁部を有し、
前記絶縁部の少なくとも一部は、樹脂を含む、付記1ないし6のいずれかに記載の半導体装置。
[付記9]
前記金属部は、焼結体である、付記8に記載の半導体装置。
[付記10]
前記絶縁部は、空隙を含む、付記8または9に記載の半導体装置。
[付記11]
前記金属部の組成は、銀を含む、付記8ないし10のいずれかに記載の半導体装置。
[付記12]
前記電極の組成は、銅を含む、付記7ないし11のいずれかに記載の半導体装置。
[付記13]
前記電極は、前記パッドの上に形成された主部と、前記主部を覆う副部と、を有し、
前記主部の組成は、銅を含み、
前記副部の組成は、パラジウムを含む、付記12に記載の半導体装置。
[付記14]
前記副部は、前記主部を覆う第1層と、前記第1層を覆う第2層と、を有し、
前記第1層の組成は、ニッケルを含み、
前記第2層の組成は、パラジウムを含む、付記13に記載の半導体装置。
[付記15]
前記主面に接するとともに、前記半導体素子、および前記複数の電極を覆う封止樹脂をさらに備え、
前記封止樹脂は、前記主面と前記半導体素子との間に介在する部分を含む、付記1ないし14のいずれかに記載の半導体装置。
[付記16]
前記導電部材は、前記厚さ方向において前記主面とは反対側を向く裏面を有し、
前記裏面は、前記封止樹脂から露出している、付記15に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0079】
A10,A20,A30:半導体装置
10:導電部材
101:主面
102:裏面
11:第1リード
11A:第1入力端子
11B:第2入力端子
11C:出力端子
111:主部
112:側部
112A:第1端面
113:突出部
113A:副端面
12:第2リード
121:第2端面
13:第3リード
131:第3端面
14:凹部
141:底面
142:内側面
143:被覆層
20:半導体素子
21:素子本体
211:基板
211A:基面
212:半導体層
212A:スイッチング回路
212B:制御回路
213:パッシベーション膜
213A:開口
22:パッド
23:表面保護膜
31:電極
31A:第1電極
31B:第2電極
311:対向面
312:外側面
313:主部
314:副部
314A:第1層
314B:第2層
315:陥入部
32:接合層
32A:金属部
32B:絶縁部
321:はみ出し部
40:封止樹脂
41:頂面
42:底面
431:第1側面
432:第2側面
h:高さ
d:深さ
z:厚さ方向
x:第1方向
y:第2方向
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