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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】移動ロボット
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
B61B13/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020190572
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079386
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】北野 斉
(72)【発明者】
【氏名】坂上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田續 博一
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-193938(JP,A)
【文献】特開平08-225076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0223415(US,A1)
【文献】特表2020-502646(JP,A)
【文献】特開2018-176840(JP,A)
【文献】特開2017-081324(JP,A)
【文献】特開2011-126331(JP,A)
【文献】特開昭62-279166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
G05D 1/00- 1/87
B25J 5/00
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台に回転可能に取り付けられた複数の車輪と、
前記車輪を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御部材と、
前記駆動手段及び前記制御部材に給電する蓄電池と、
前記車台に取り付けられる外装部材を備えた移動ロボットにおいて、
前記車台及び前記外装部材を含む車両本体は、内部が防水区画と非防水区画とに区画され、
前記非防水区画には、前記駆動手段、前記制御部材を収容する制御箱及び前記蓄電池が配置されるとともに、前記車台の所定の位置に排水手段が形成され
前記防水区画は、前記制御箱のみによって区画されることを特徴とする移動ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の移動ロボットにおいて、
前記排水手段は、前記車台に形成される排水孔であることを特徴とする移動ロボット。
【請求項3】
請求項に記載の移動ロボットにおいて、
前記排水孔は、前記非防水区画の前記移動ロボットの進行方向の前後にそれぞれ形成されることを特徴とする移動ロボット。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の移動ロボットにおいて、
前記制御部材は、前記移動ロボットの進行方向前方に向けて取り付けられたカメラを含む画像処理部及び前記駆動手段を駆動制御する駆動制御部を収納する制御箱と、該制御箱の開口を閉塞する蓋部材を有し、
前記開口には、開口端に連続する切り欠き部が形成され、
前記切り欠き部は、前記蓋部材の縁部から垂下する軒部によって所定の隙間を介して閉塞されることを特徴とする移動ロボット。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の移動ロボットにおいて、
前記駆動手段は、前記車輪の車軸よりも高い位置に配置されることを特徴とする移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流倉庫や製造工場などで、商品や部品などの物品を自動で輸送する移動ロボットとして無人搬送車(Auto Guide Vehicle:AGV)が用いられている。
【0003】
このような移動ロボットは、予め定められた経路に沿って移動して物品を輸送する搬送車であって、種々の形態が知られている。例えば、特許文献1に記載されているように、本体が概略直方体形状をしており、本体の上部及び側面を被覆する第1のカバーと、当該第1のカバーの上面に積層されている第2のカバーとを備えた移動ロボットが知られている。
【0004】
このような移動ロボットによれば、移動ロボットの本体上方及び側方は第1及び第2のカバーによって二重にカバーされ、移動ロボットに水が落下しても、当該落下した水が内部に侵入してしまうことが防止され、移動ロボットの防水性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-126331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された移動ロボットは、移動ロボットが運搬するワークを洗浄した後、当該ワークの乾燥或いは水切りが不十分な場合に移動ロボット上に洗浄で用いた液体(例えば水)がワーク内に残存し、移動ロボットの移動やワークを反転する際に、移動ロボット上に水が落下してしまうことがあるという問題に対応するためになされた発明であり、屋根は施工されているが、壁は未だ施工されていない建築作業中の建築現場である半屋外で使用される際の雨水に対する防水性について考慮されておらず、このような建築現場では、移動ロボットを使用することができないという問題があった。
【0007】
このような半屋外の建築現場などでは、移動ロボットを使用すると、降雨などの影響によって移動ロボット自体に雨水が掛かることで不特定の方向から防水が必要となったり、建築現場にできた水溜まりを走行することで、車輪による水撥ねなどによって移動ロボット内に水が浸入する可能性があり、このような状況下で移動ロボットを使用する場合であっても防水性を高めたいという要望があった。しかし、このような不特定の方向に対する防水性を高めるためには、移動ロボット全体を密封構造にすることとなり、このような密封構造は移動ロボットのコスト上昇を招くばかりか、外装の脱着がし難くなることからメンテナンス性を低下させるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、半屋外で移動ロボットを使用した場合に雨が降っている状況や床面が濡れた環境でも使用することができる防水性を確保すると共に、移動ロボットのメンテナンスのために、外装部材を容易に取り外すことができるメンテナンス性を高めた移動ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明に係る移動ロボットは、車台に回転可能に取り付けられた複数の車輪と、前記車輪を駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御部材と、前記駆動手段及び前記制御部材に給電する蓄電池と、前記車台に取り付けられる外装部材を備えた移動ロボットにおいて、前記車台及び前記外装部材を含む車両本体は、内部が防水区画と非防水区画とに区画され、前記非防水区画には、前記駆動手段、前記制御部材を収容する制御箱及び前記蓄電池が配置されるとともに、前記車台の所定の位置に排水手段が形成され、前記防水区画は、前記制御箱のみによって区画されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る移動ロボットによれば、車台及び外装部材を含む車両本体は、内部が防水区画と非防水区画とに区画され、非防水区画には、車台の所定の位置に排水手段が形成されるので、床面が濡れた環境でも走行することができる防水性を確保することができるとともに、外装部材を容易に取り外すことが可能となり、メンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る移動ロボットの斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る移動ロボットの内部構造を示す分解図。
図3】本発明の実施形態に係る移動ロボットの制御部材の斜視図。
図4】本発明の実施形態に係る移動ロボットの制御部材の分解図。
図5】本発明の実施形態に係る移動ロボットの車台の平面図。
図6】本発明の実施形態に係る移動ロボットの内部構造を示す側面図。
図7】本発明の実施形態に係る移動ロボットの外装部材の分解図。
図8】本発明の実施形態に係る移動ロボットの車台の平面図。
図9図1のA部拡大図。
図10図1のB-B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る移動ロボットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの内部構造を示す分解図であり、図3は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの制御部材の斜視図であり、図4は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの制御部材の分解図であり、図5は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの車台の平面図であり、図6は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの内部構造を示す側面図であり、図7は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの外装部材の分解図であり、図8は、本発明の実施形態に係る移動ロボットの車台の平面図であり、図9は、図1のA部拡大図であり、図10は、図1のB-B断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る移動ロボット1は、図示しない台車などを牽引しながら走行する。台車には、運搬対象としての建築資材などが好適に載置される。移動ロボット1は、車台2に回転可能に取り付けられた複数の車輪3,4を有している。車輪3は、移動ロボット1の後輪を構成しており、後述する駆動手段10によって駆動力が伝達されることで駆動輪として動作する。また、駆動手段10によって左右の駆動輪の回転数を変更することで、進行方向を変更することができる。
【0015】
車輪4は、移動ロボット1の前輪を構成しており、車輪3の駆動に伴って回転自在に取り付けられている。また、図10に示すように、車輪4は、車台2に対して鉛直方向に延びる旋回軸周りに旋回可能な旋回部材80を介して取り付けられており、車輪3によって移動ロボット1の進行方向が変更された場合には、当該進行方向に沿った角度に適宜旋回することで、円滑に移動ロボット1の方向転換を行うことができる。さらに、車輪4は、緩衝部材81を介して旋回部材80に取り付けられており、走行経路に段差がある場合であっても、当該段差を乗り越えることによる衝撃を吸収し、走行中の移動ロボット1の姿勢を安定させることができる。
【0016】
また、図1に示すように、車台2には、外装部材40が取り付けられており、車両本体を構成している。外装部材40は、天井部材41,側面部材42,正面部材43及び背面部材44とから構成されている。天井部材41の前方には、移動ロボット1の走行を知らせる警告灯5が取り付けられており、図示しないスピーカから生じる音声とともに走行中に周囲に移動ロボット1の存在を告知することができる。
【0017】
天井部材41の後方には、移動ロボット1の予め設定された走行パターンなどを選択可能な操作パネル6が取り付けられており、上述した警告灯5及び操作パネル6は、保護枠7,8に保護されている。保護枠7,8は、警告灯5及び操作パネル6を衝撃などから保護できればどのような形態でも構わないが、例えば図1に示すようにパイプ部材を組み合わせて保護枠7,8を構成すると好適である。
【0018】
さらに、天井部材41には、非常停止ボタン9が取り付けられており、移動ロボット1の緊急停止を任意に行うことができる。非常停止ボタン9は、本実施形態に係る移動ロボット1は、二カ所に取り付けられている。
【0019】
また、本実施形態に係る移動ロボット1の車台2には、移動ロボット1の運搬時に図示しない運搬ベルトを挿通可能な運搬部71が取り付けられており、当該運搬部71によって車重が大きい場合であっても容易に移動ロボット1の運搬を行うことができる。
【0020】
図2に示すように、車台2は、車台2の前方に配置された制御部材収容部72,車台2の後方に配置された駆動手段収容部73、制御部材収容部72及び駆動手段収容部73の間に配置された蓄電池収容部74を備えている。なお、車台2及び外装部材40を含む車両本体の内部は、上述した駆動手段収容部73,制御部材収容部72及び駆動手段収容部73とを含む非防水区画と水などの侵入を防止する防水構造を有する制御部材20内部の防水区画とに区画されている。
【0021】
制御部材収容部72は、車輪4の上方に配置されており、外周が壁部75で覆われて区画されて、外部からの水などが容易に侵入しないように構成されている。また、図8に示すように、制御部材収容部72の底部には、排水孔23が形成されており、万が一、水などが制御部材収容部72内に侵入した場合でも当該排水孔23から排水することが可能となっている。なお、排水孔23は、車幅方向に延びる細長い長方形状の貫通孔であり、車幅方向に沿った長辺は、断面視において、制御部材収容部72の床面から制御部材収容部72外に向かって他方の長辺に向かって傾斜する斜面が形成されている。この一対の斜面によって、制御部材収容部72に侵入した水を外部に排出しやすくすると共に、当該排水孔23を介して車輪4側から制御部材収容部72へ水が浸入することを防止している。
【0022】
また、制御部材収容部72には、制御部材20が取り付けられている。図3に示すように、制御部材20は、カメラ61,カメラ61で撮影した画像を処理する画像処理部並びに駆動手段10を駆動制御する駆動制御部などが収容された制御箱21と、該制御箱21の開口を閉塞する蓋部材22とを備えている。
【0023】
図4に示すように、制御箱21は、上部が開口した有底箱状部材であって、略コ字状に形成された制御箱本体27と、一対の側壁26とを接合して構成されている。なお、制御箱本体27と一対の側壁26との接合は、シール座金を介してボルト締めされていると好適であり、必要に応じて、制御箱本体27と一対の側壁26の間に従来周知のシール材を介在させても構わない。
【0024】
また、制御箱21の開口には、当該開口と連続する切り欠き部24が形成されている。当該切り欠き部24は、制御部材20内部と蓄電池30や駆動手段10を接続する配線、並びに制御箱21の外部に取り付けられた障害物センサ62,63,レーザレンジファインダ64及び接触センサ65などの各種センサの配線を制御部材20内に引き込むために設けられている。なお、切り欠き部24を開口と連続するように形成することで、切り欠き部24の位置が制御部材20の高い位置とすることができ、制御部材20内に水が侵入することを防止すると共に、制御部材20内に引き込まれる配線を適度にたるませることで、配線を伝って水が浸入することを防止している。
【0025】
蓋部材22は、側方端が下方に垂下するように曲げられた軒部25を有しており、蓋部材22の前後方向(本実施形態に係る移動ロボット1の進行方向)の長さが、制御箱21の開口よりも長く形成されており、制御箱21に取り付けた状態では、制御箱21から水平方向に突出するように庇状に構成されており、当該蓋部材22によって切り欠き部24から制御部材20への水等の侵入を防止している。
【0026】
また、軒部25が切り欠き部24に引き込まれる配線が通る程度の隙間を介して切り欠き部24を閉塞しているので、制御部材20の防水性を高めている。このような防水構造を有することで、制御部材20の内部は、防水区画として区画されており、制御部材20の外郭部材である制御箱21によって、制御部材20内部の防水区画と制御部材収容部72を含む非防水区画とを区画している。
【0027】
制御部材20は、カメラ61によって走行経路に設置された識別標識を撮影し、当該識別標識の指示に沿って駆動手段10を制御する。制御部材20の構成は、従来周知の種々の画像処理手段並びに駆動制御手段を適用することが可能であり、例えば、画像処理を行う演算部や識別標識に対応する指示内容並びに警告用の音声信号などを記憶する記憶媒体などを備えると好適である。
【0028】
障害物センサ62,63は、走行経路に障害物が存在する場合に、当該障害物を検知することができれば、どのような形式のセンサを用いても構わないが、例えば、光学式の近接センサなどが好適に用いられる。なお、制御部材20の前方中央部分には、メイン障害物センサ62が取付けられ、制御部材20の両側部には、補助障害物センサ63,63が一対取り付けられている。
【0029】
さらに、図2に示すように、制御部材収容部72の下方には、車輪4の前方を覆うようにセンサパネル76が取り付けられており、センサパネル76には、移動ロボット1の進行方向を走査するレーザレンジファインダ64が取り付けられ、センサパネル76の下端には、移動ロボット1の前方に突出するように接触センサ65が取り付けられている。レーザレンジファインダ64は、障害物センサ62,63と同様に、走行経路に障害物が存在する場合に、当該障害物を検知する。また、接触センサ65は、障害物センサ62,63やレーザレンジファインダ64で検知することができなかった障害物が接触した場合に移動ロボット1の走行を停止することができる。
【0030】
駆動手段収容部73は、車輪3の上方に配置されており、駆動モータ11が駆動ベルト12を介して車輪3に駆動力を伝達している。駆動モータ11及び駆動ベルト12は、左右の車輪3,3に対して一組ずつ設けられており、左右の車輪3の回転数を変更することで、移動ロボット1の進行方向を変えることができる。なお、左右の車輪3のいずれか一方のみを回転させて信地旋回を行っても構わないし、回転方向を逆に回転させて移動ロボット1の方向を転換することも可能である。
【0031】
また、図5及び6に示すように、駆動モータ11は、回転軸11aが車輪3の回転軸よりも高い位置に配置された駆動手段保持部13に収容されており、駆動手段保持部13は、駆動手段保護枠14によって覆うことで、車輪3の回転に伴って跳ね上げられた水が非防水区画である駆動手段収容部73へ侵入した場合に当該水が駆動モータ11にかかることを防止している。このように、駆動モータ11は、回転軸11aが車輪3の回転軸よりも高い位置に配置された駆動手段保持部13に収容されているので、非防水区画である駆動手段収容部73に水が浸入した場合であっても、当該水の侵入による駆動手段10の故障の発生を防止している。なお、駆動モータ11は、後述する蓄電池30によって給電される電力で駆動することができればどのような駆動モータを用いても構わないが、例えば、ブラシレスモータやステッピングモータなどが好適に用いられる。
【0032】
さらに、駆動ベルト12は、従来周知の種々の駆動ベルトを用いることができ、ゴムに補強繊維など組み合わせた複合素材からなるフラットベルトや歯付きベルトなどが好適に用いられる。
【0033】
図2に示すように、蓄電池収容部74は、車輪3,4の間に配置されると共に、制御部材収容部72及び駆動手段収容部73よりも地表に近い位置に配置されている。これにより、比較的重量の重い蓄電池30を車台2の低い位置に搭載することで、移動ロボット1の低重心化を図っている。
【0034】
また、蓄電池30は、図5に示すように、蓄電池収容部74の左右に振り分けて一対設けられており、蓄電池30の間には、充電器31が配置されている。なお、蓄電池30の端子は、蓄電池30の上部に位置するように配置されるので、非防水区画である蓄電池収容部74に水が侵入した場合であっても、水による短絡を防止することができる。
【0035】
蓄電池30は、従来周知の二次電池が好適に用いられ、例えば、リチウムイオン蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池などが好適に用いられる。さらに、蓄電池収容部74の底面には、排水孔33が形成され、蓄電池収容部74に侵入した水を移動ロボット1の外部へ排水することが可能となっている。排水孔33は、底面との角部に面取りが施されており、この面取りによって、蓄電池収容部74に侵入した水を外部に排出しやすくすると共に、当該排水孔33を介して車台2の下方から蓄電池収容部74へ水が浸入することを防止している。
【0036】
制御部材20は、制御部材収容部72の両側面及び前面の壁部75から所定の間隔を有して配置されている。なお、制御部材20は、壁部75の前面側に形成された位置決め部75aに当接している。また、蓄電池30は、蓄電池収容部74の中央側に配置されることで、蓄電池収容部74の両側面から所定の間隔を有して配置されており、駆動手段10は、駆動手段収容部73の両側面及び後端から所定の間隔を有して配置されている。このように制御部材20,駆動手段10及び蓄電池30が車台2の外縁部から所定の間隔を有して配置されているので、車台2の側方から衝撃が加わった場合であっても、当該衝撃が駆動手段10,制御部材20及び蓄電池30に伝搬することを防止することができる。また、車台2の外周から間隔を有して制御部材20、蓄電池30及び駆動手段10が配置されているので、外装部材40の隙間から水が浸入した場合であっても、これらの部材に水がかかることを防止している。
【0037】
図6に示すように、車台2は、駆動手段収容部73及び制御部材収容部72のそれぞれの角部の四隅に取り付けられた複数の支柱部材51と蓄電池収容部74に取り付けられた中央支持部材52とからなる支持部50が取り付けられている。
【0038】
支柱部材51は、棒状の部材であり、一端に車台2に螺合可能な雄ネジ部が形成され、他端に天井部材41が取り付けられる雌ネジ部が形成されている。支柱部材51は、天井部材41の外周縁部に取り付けられるように、車台2の外周縁に沿って複数配置されている。
【0039】
図2に示すように、中央支持部材52は、一対の脚部55を備えた門状部材であり、一対の脚部55の上端を連絡する取付部56を備えている。なお、脚部55の下端は、蓄電池収容部74の補強枠32に取り付けられる。
【0040】
図7に示すように、外装部材40は、天井部材41,一対の側面部材42,正面部材43及び背面部材44とを有している。天井部材41は、支持部50に支持される平板部材である。天井部材41の外周縁には、所定の間隔で配置された爪部41aが下方に垂下して形成されている。
【0041】
側面部材42は、車台2の側面を閉塞するように、制御部材収容部72,蓄電池収容部74及び駆動手段収容部73の側面形状と略同一の形状を有する側面部材本体45を有し、側面部材本体45の下端に形成される車台取付部42a,正面部材43に取付けられるように側面部材本体45の一端から屈曲して形成された正面部材取付部42b,背面部材44に取り付けられるように側面部材本体45の他端から屈曲して形成された背面部材取付部42dが形成されている。なお、正面部材取付部42bには、補助障害物センサ63に対応する位置にセンサ孔42cが形成されている。
【0042】
正面部材43及び背面部材44は、平板部材であって、正面部材43には、制御部材20のカメラ61及びメイン障害物センサ62に対応する位置にそれぞれカメラ孔43a及び障害物センサ孔43bが形成されている。さらに、背面部材44には、充電器31などの配線や移動ロボット1の後端に形成された操作パネルを取り付ける開口44aが形成されている。
【0043】
図1に示すように、側面部材42は、蓄電池収容部74の外壁に車台取付部42aを介して取り付けられている。また、正面部材43と正面部材取付部42b並びに背面部材44と背面部材取付部42dとがそれぞれ接合されて、外装部材40の外周面を構成している。なお、支柱部材51と側面部材42は、互いに接合されていない。
【0044】
図6に示すように、天井部材41は、支柱部材51及び中央支持部材52に取付けられており、駆動手段10,制御部材20及び蓄電池30と所定の間隔を有して配置されている。このように天井部材41が駆動手段10,制御部材20及び蓄電池30と所定の間隔を有して配置されているので、天井部材41に外部から衝撃が加わった場合であっても、当該衝撃が駆動手段10,制御部材20及び蓄電池30に伝搬することを防止することができる。また、天井部材41から間隔を有して制御部材20、蓄電池30及び駆動手段10が配置されているので、外装部材40の隙間から水が浸入した場合であっても、これらの部材に水が掛かることを防止している。
【0045】
また、図8に示すように、本実施形態に係る移動ロボット1の車台2は、排水手段として制御部材収容部72の底面に形成された排水孔23及び蓄電池収容部74の底面に形成された排水孔33を有している。制御部材収容部72に形成された排水孔23は、制御部材収容部72の進行方向の前後左右にそれぞれ配置され、合計4つ形成されている。また、蓄電池収容部74に形成された排水孔33は、進行方向の後方の左右にそれぞれ配置され、合計2つ形成されている。このように、排水孔23,33が本実施形態に係る移動ロボット1の進行方向に沿って形成されているので、移動ロボット1の走行に伴って、制御部材収容部72及び蓄電池収容部74に侵入した水を排水孔23,33へ移動させて排水を促進している。
【0046】
また、図9に示すように、側面部材42の天井部材41と近接する上端部は、天井部材41に対して所定の隙間を有して配置されている。また、天井部材41は、側面部材42に対して、側面視で外方に突出するように形成されており、側面部材42に対して庇状に配置されている。この庇状に配置された天井部材41によって、天井部材41と側面部材42との間の隙間から水が浸入することを防止している。なお、天井部材41と側面部材42の上端部との間の隙間を有しているので、側面部材42に外部から衝撃が加わった場合でも、側面部材42のみが変形することで、当該衝撃が天井部材41に伝搬することを防止することができ、側面部材42が変形することで、衝撃を吸収して、衝撃が制御部材20などの内部部品に伝搬することを防止することができる。さらに、天井部材41と側面部材42との間に隙間を有しているので、これらの外装部材40を車台2から取り外すことが容易となり、本実施形態に係る移動ロボット1のメンテナンス性を高めることができる。
【0047】
また、図10に示すように、天井部材41に形成された爪部41aは、側面部材42の上端縁と対向するように配置されているので、外部からの衝撃によって側面部材42が変形した場合でも、爪部41aに当接することで、変形量が大きくなることを防止し、側面部材42の変形によって制御部材20などの内部部品に衝撃が伝搬することを防止している。
【0048】
このように、本実施形態に係る移動ロボット1によれば、水の侵入によって故障する可能性のある制御部材20,蓄電池30の端子及び駆動手段10などの内部部品に水が浸入しないように、車台2の高い位置に配置すると共に、車台2の外周縁から間隔を有して配置し、水の侵入の可能性のある隙間には、庇状形状や軒部などによって防水性を高めているので、床面が濡れた環境でも走行することができる防水性を確保すると共に、移動ロボットに外部から衝撃が加わった場合であっても、当該衝撃によって内部の部材が損傷することなく、外装部材の修理を容易に行うことができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、支持部50として、支柱部材51と中央支持部材52を用いた場合について説明を行ったが、中央支持部材52を支柱部材51と同一の部材を用いても構わないし、中央支持部材52自体を省略しても構わない。
【0050】
また、本実施形態に係る移動ロボット1は、制御部材20に備えるカメラ61によって走行経路に置かれた識別標識を撮影し、識別標識に従って走行する場合について説明を行ったが、走行経路の床に設置された金属線や磁気テープを読み取って走行を行う誘導方式を採用しても構わないし、建屋内の壁や柱に反射板を取り付け、レーザーの反射を用いて自己位置推定を行い自律走行する方式などを採用しても構わない。
【0051】
また、方向転換の方法として、左右の車輪3の回転数を変更する場合について説明を行ったが、前輪の車輪4を操舵可能に取り付けることで、方向転換を行うように構成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1 移動ロボット, 2 車台, 3,4 車輪, 10 駆動手段, 20 制御部材,21 制御箱, 22 蓋部材,23,33 排水孔, 24 切り欠き部, 30 蓄電池, 40 外装部材, 41 天井部材, 42 側面部材, 50 支持部材, 72 制御部材収容部, 73 駆動手段収容部, 74 蓄電池収容部。
図1
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図10