(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20241220BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20241220BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20241220BHJP
B60C 9/06 20060101ALI20241220BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B60C15/00 B
B60C9/22 C
B60C9/00 D
B60C9/06 M
B60C9/00 C
B60C9/00 G
B60C9/08 J
(21)【出願番号】P 2020194140
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 照平
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121868(JP,A)
【文献】特開平06-255305(JP,A)
【文献】特開2020-100301(JP,A)
【文献】特開2014-231279(JP,A)
【文献】特開2016-079548(JP,A)
【文献】特開2017-132393(JP,A)
【文献】特開2012-051480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00
B60C 9/22
B60C 9/00
B60C 9/06
B60C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアと、ビードコアの径方向外側に延びるビードフィラーと、を有する一対のビードと、
前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、
前記トレッドに配置されたベルトと、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に配置され、ベルト補強層コードを含むベルト補強層と、
複数本のカーカスコードを含み、前記一対のビードを折り返された少なくとも1つのカーカスプライと、を備え、
前記少なくとも1つのカーカスプライ
における前記カーカスコードは、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側
に配置される第1部分と、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向外側
に配置される第2部分と、を有し、
平面状に展開した状態で、前記第1部分はタイヤ幅方向に延びており、前記第2部分はタイヤ幅方向に対して傾斜して延びており、
前記ベルト補強層コードは、アラミド繊維を含む、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカーカスプライは、一端が前記ベルトのタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端が前記ビードを折り返された一対のプライ片を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルトはベルトコードを含み、前記ベルトコードは、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下の傾斜角で配置されている、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベルト補強層コードのタイヤ周方向に対する傾斜角は、前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角よりも小さく、かつ、前記ベルト補強層コードのタイヤ周方向に対する傾斜角と、前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角とのなす角度が、20°以上である、請求
項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ベルト補強層コードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードである、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドは、タイヤ幅方向に並んで設けられた複数の主溝を含むトレッドパターンを有し、
前記一対のプライ片における前記一端のうちの少なくとも一方は、前記トレッドパターンにおけるタイヤ幅方向の最も外側に配置された前記主溝である最外主溝のタイヤ幅方向内側の内壁よりも、タイヤ幅方向内側に位置する、請求項
2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記一対のプライ片における前記一端のうちの少なくとも一方は、前記トレッドパターンにおけるタイヤ幅方向中央に最も近い位置に配置された前記主溝である最内主溝のタイヤ幅方向外側の外壁よりも、タイヤ幅方向外側に位置する、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカーカスプライの前記カーカスコードは、タイヤ側面視において、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とのなす交差角度が、45°以上60°以下である、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記一対のビードの間に連続するように架け渡された第2のカーカスプライをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の空気入りタイヤにおいては、一対のビードの間の一対のサイドウォールおよびトレッドに、タイヤの骨格を形成するカーカスプライが埋設された構造が知られている。ビードは、タイヤがリムに装着される部分であることから、高い剛性を有することが求められる。例えば特許文献1には、サイドウォールおよびビードに補強用のコードを埋設することにより、サイドウォールおよびビードの剛性を向上させた空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気入りタイヤにおいては、軽量化によって転がり抵抗の低減が図られる。しかし、特許文献1に開示されるように補強用のコードを別部材として設けると、部品点数の増加に伴う重量の増大を招く。また、特許文献1には、トレッドの効果的な剛性向上については言及されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、重量の増大が抑えられつつ、ビードおよびトレッドの剛性向上がともに図られ、操縦安定性の向上を実現することができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコアと、ビードコアの径方向外側に延びるビードフィラーと、を有する一対のビードと、前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記トレッドに配置されたベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に配置され、ベルト補強層コードを含むベルト補強層と、複数本のカーカスコードを含み、前記一対のビードを折り返された少なくとも1つのカーカスプライと、を備え、前記少なくとも1つのカーカスプライは、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とにおいて、前記カーカスコードのタイヤ周方向となす角度が互いに異なり、前記ベルト補強層コードは、アラミド繊維を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重量の増大が抑えられつつ、ビードおよびトレッドの剛性向上がともに図られ、操縦安定性の向上を実現することができる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの、タイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る第1のカーカスプライ、ベルトおよびキャッププライ(ベルト補強層)の模式的な展開図である。
【
図3】一実施形態に係る第1のカーカスプライのカーカスコードの配置を示す模式的な側面図である。
【
図4】一実施形態の第1変形例に係る第1のカーカスプライおよびベルトの模式的な展開図である。
【
図5】一実施形態の第2変形例に係る第1のカーカスプライおよびベルトの模式的な展開図である。
【
図6】一実施形態の第3変形例に係る空気入りタイヤの、タイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図7】第3変形例に係る第1および第2のカーカスプライのカーカスコードの配置を示す模式的な側面図である。
【
図8】第3変形例に係る第1および第2のカーカスコードを模式的に示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤ1の構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、
図1では、右半分の断面を示す。
図1において、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0010】
なお、
図1の断面図は、タイヤ1を図示せぬ標準リムに装着して、規定内圧を充填した無負荷状態である通常内圧時のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。標準リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められたリムである。
【0011】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
なお、後述する
図6についても同様である。
【0012】
図1に示されるように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、トレッド30に配置されたベルト40と、ベルト40のタイヤ径方向内側において一対のビード10の間に配置されたカーカスプライである第1のカーカスプライ51と、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ60と、最もタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー70と、トレッド30および一対のサイドウォール20の外表面を構成する外層ゴム90と、を備える。
【0013】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備える。
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延出する、先端先細り形状のゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
チェーハー13およびリムストリップゴム14については、後述する。
【0014】
サイドウォール20は、第1のカーカスプライ51のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム部21を含む。サイドウォールゴム部21は、タイヤ1の外壁面を構成する。このサイドウォールゴム部21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0015】
トレッド30は、無端状のベルト40およびキャッププライ60と、トレッドゴム部31と、を備える。ベルト40は、第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ60は、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム部31は、キャッププライ60のタイヤ径方向外側に配置されている。
外層ゴム90は、トレッドゴム部31および一対のサイドウォールゴム部21を含んでいる。
【0016】
図2は、
図1において矢視II方向からトレッド30の外表面を構成するトレッドゴム部31を省略してタイヤ1を見たときの、周方向の一部を模式的に示す展開図である。すなわち、
図2においては、ベルト41、42、第1のカーカスプライ51の後述する一対のプライ片51A、および、キャッププライ60が示されている。ベルト41、42は、タイヤ幅方向中央部に配置され、タイヤ幅方向の両側に配置される一対のプライ片51Aの一部を覆っている。キャッププライ60は、タイヤ幅方向中央部において、ベルト41、42を覆うとともに、一対のプライ片51Aの一部を覆っている。
図2においては、ベルト41、42を示すために、キャッププライ60は周方向にさらに破断して示している。
図2では、二点鎖線枠内において、広げられた状態のプライ片51Aの、周方向の一部が示されている。
図2においては、タイヤ幅方向Xを紙面左右方向として示し、タイヤ周方向を矢印S2で示している。
【0017】
本実施形態のベルト40は、内側のベルト41と外側のベルト42とを備えた2層構造である。
図2に示されるように、各ベルト41、42は、複数のベルトコード41g、42gをそれぞれ含むベルトである。ベルト40は、タイヤ1のトレッド30を補強する。ベルトコード41g、42gは、スチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のベルトコード41g、42gは、ゴムにより被覆されている。ベルト40を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド30と路面の接地状態が良くなる。なお、ベルト40においては、積層されるベルトは2層に限らない。
【0018】
キャッププライ60は、ベルト40を補強するベルト補強層である。キャッププライ60は、
図2に示されるように、複数のベルト補強層コード60gを含んでいる。ベルト補強層コード60gの材料としては、アラミド繊維を含むものが好ましい。また、本実施形態では、ベルト補強層コード60gは、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードであることがより好ましい。このようなハイブリッドコードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせて構成することができる。複数のベルト補強層コード60gは、ゴムにより被覆されている。キャッププライ60を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0019】
トレッドゴム部31は、通常走行時の踏面(路面との接地面)31aを構成する部材である。トレッドゴム部31の踏面31aには、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン32が設けられている。トレッドパターン32は、タイヤ幅方向に並ぶ複数の主溝32A、32Bを有する。なお、
図1に示す主溝32Aは、タイヤ幅方向の最も外側に配置された主溝である最外主溝32Aであり、主溝32Bは、タイヤ幅方向中央に最も近い位置に配置された最内主溝32Bである。
【0020】
第1のカーカスプライ51は、タイヤ1の骨格となる一対のプライ片51Aにより構成されている。第1のカーカスプライ51は、トレッド30のタイヤ幅方向中央部において不連続となる中抜き部50Hを有する。一対のプライ片51Aは、中抜き部50Hのタイヤ幅方向両側に配置される態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0021】
第1のカーカスプライ51の一対のプライ片51Aのそれぞれは、トレッド30に配置された中抜き部50H側の一端51aから、タイヤ径方向内側に延びるプライ本体部51cと、プライ本体部51cからビードコア11で折り返される屈曲部51dと、屈曲部51dからタイヤ径方向外側に延びる折り返し部51eと、を有する。
プライ本体部51c、屈曲部51dおよび折り返し部51eは連続している。プライ本体部51cは、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置され、折り返し部51eは、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。ビードコア11およびビードフィラー12以外の部分において、折り返し部51eはプライ本体部51cに重ね合わされている。屈曲部51dは、第1のカーカスプライ51において、タイヤ径方向の最も内側の部分を構成している。
【0022】
第1のカーカスプライ51を構成する一対のプライ片51Aは、
図2に示されるように、複数のカーカスコード51gを含んでいる。複数のカーカスコード51gは、タイヤ幅方向に対して傾斜して配置されている。複数のカーカスコード51gは、タイヤ周方向に一定の間隔で並んで配列されている。カーカスコード51gは、スチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコード51gは、ゴムにより被覆されている。
【0023】
図1に示されるように、第1のカーカスプライ51を構成する一対のプライ片51Aにおいて、一対の一端51aのうちの少なくとも一方は、トレッド30の最外主溝32Aにおけるタイヤ幅方向内側の内壁32cよりも、タイヤ幅方向内側に位置している。また、一対の一端51aのうちの少なくとも一方は、トレッド30の最内主溝32Bにおけるタイヤ幅方向外側の外壁32dよりも、タイヤ幅方向外側に位置している。
【0024】
一方、一対の折り返し部51eの他端51bは、一対のそれぞれのビードフィラー12の先端12bよりもタイヤ径方向外側に配置されている。好ましくは、他端51bは、ビードフィラー12の先端よりも10mm以上タイヤ径方向外側に配置されている(
図1において、d1≧10mm)。また、本実施形態では、他端51bは、タイヤ最大幅部分20aよりもタイヤ径方向内側に配置されている(
図1において、d2>0)。
【0025】
ビード10は、さらにチェーハー13およびリムストリップゴム14を有する。
チェーハー13は、屈曲部51dを含む第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。すなわち、チェーハー13は、タイヤ1のタイヤ径方向内側の端部において、第1のカーカスプライ51におけるプライ本体部51cのタイヤ幅方向内側の外面から、屈曲部51dのタイヤ径方向内側の外面を覆い、折り返し部51eのタイヤ幅方向外側の外面を覆っている。
【0026】
リムストリップゴム14は、チェーハー13および第1のカーカスプライ51の折り返し部51eの、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、サイドウォールゴム部21で覆われている。
【0027】
ビード10、サイドウォール20およびトレッド30において、第1のカーカスプライ51のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー70が設けられている。インナーライナー70は、トレッド30においては、第1のカーカスプライ51の内面および中抜き部50Hにおいてベルト40の内面を覆っている。また、インナーライナー70は、サイドウォール20においては、第1のカーカスプライ51の内面を覆っている。さらに、インナーライナー70は、ビード10においては、第1のカーカスプライ51およびチェーハー13の内面を覆っている。
インナーライナー70は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0028】
本実施形態においては、上述したように、トレッド30のベルト40は、内側のベルト41と外側のベルト42を備えた2層構造である。内側のベルト41は、第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、外側のベルト42は、内側のベルト41のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。本実施形態では、内側のベルト41のタイヤ幅方向の寸法は、外側のベルト42のタイヤ幅方向の寸法よりも大きい。内側のベルト41のタイヤ幅方向の端部41aは、外側のベルト42のタイヤ幅方向の端部42aよりも、タイヤ幅方向外側に位置している。
【0029】
キャッププライ60は、各端部41a、42aを含むベルト41、42全体を1枚で覆う幅広の部材である。本実施形態のキャッププライ60は1層であるが、2層以上配置されてもよい。
【0030】
本実施形態では、ベルト40のタイヤ幅方向外側の両端の部分と、第1のカーカスプライ51の折り返し部51eとの間に、無端状のゴム製パッド80が配置されている。パッド80の断面形状は、偏平な三角形状である。ベルト41、42のタイヤ径方向の端部41a、42aおよびキャッププライ60のタイヤ幅方向の端部60aのタイヤ幅方向の位置は、それぞれパッド80のタイヤ幅方向外側の端部80aとタイヤ幅方向内側の端部80bとの間の領域、つまりパッド80が存在する領域に位置している。なお、パッド80は省略されてもよい。
【0031】
図2に示されるように、ベルト41の構成要素である複数のベルトコード41gのタイヤ周方向に対する傾斜角θ1は、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下である(26°≦θ1≦33°)ことが好ましい。同様に、ベルト42の構成要素である複数のベルトコード42gのタイヤ周方向に対する傾斜角θ2は、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下である(26°≦θ2≦33°)ことが好ましい。すなわち、各ベルト41、42のベルトコード41g、42gは、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下の傾斜角で配置されていることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、ベルトコード41gは、タイヤ周方向に対して例えば30°の傾斜角で配置されている(θ1=30°)。同様に、ベルトコード42gは、タイヤ周方向に対して例えば30°の傾斜角で配置されている(θ2=30°)。ここで、傾斜角度θ1、θ2は、絶対値で示されている。そのため、図示の例では、ベルトコード41g、42gは、互いに交差するように配置されているが、傾斜角は同じ30°となっている。
【0033】
また、キャッププライ60のベルト補強層コード60gは、タイヤ周方向に沿っている。すなわち、補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角は0°である。このように補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角は、ベルトコード41g、42gのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1、θ2(=30°)よりも小さいことが好ましい。そして、ベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角(0°)と、ベルトコード41gのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1とのなす角度θ3、および、ベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角(0°)と、ベルトコード42gのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2とのなす角度θ4は、いずれも20°以上であることが好ましい。
【0034】
上述したように、
図2においては、二点鎖線枠内において、第1のカーカスプライ51が広げられて示されている。第1のカーカスプライ51は、タイヤ1に組付けられた状態では、折り返しラインWで折り返されている。すなわち、ビードコア11まわりに折り返されている。
【0035】
図3は、
図1において矢視III方向からサイドウォール20の外表面を構成するサイドウォールゴム部21を省略してタイヤ1を側面から見たときの図であって、第1のカーカスプライ51を構成するプライ片51Aの構成要素であるカーカスコード51gの配置図である。
図3においては、タイヤ周方向を矢印S2で示している。
【0036】
図2および
図3に示されるように、本実施形態では、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gは、直線状であり、タイヤ幅方向に対して傾斜して配置されている。このように配置することで、カーカスコード51gが折り返しラインWで折り返されると、折り返し前のカーカスコード51gの延在方向と、折り返し後のカーカスコード51gの延在方向とは、タイヤ径方向に対して互いに逆の方向となる。すなわち、第1のカーカスプライ51は、折り返し前のビードフィラー12のタイヤ幅方向内側の部分と、折り返し後のビードフィラー12のタイヤ幅方向外側の部分とにおいて、カーカスコード51gのタイヤ周方向となす角度が、互いに異なっている。カーカスコード51gの、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側の延在方向の傾斜角と、タイヤ幅方向外側の延在方向の傾斜角は同じである。これにより、
図3に示されるように、タイヤ側面視においてカーカスコード51gは、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とで交差するように配置される。好ましくは、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とのなすタイヤ側面視における交差角度θ5は、45°以上60°以下である。45°未満であればタガ効果(剛性を高める効果)が十分でなく、60°より大きければ重量増加量が大きくなってしまう。
【0037】
以上説明した本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11と、ビードコア11の径方向外側に延びるビードフィラー12と、を有する一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、トレッド30に配置されたベルト40と、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置され、ベルト補強層コード60gを含むベルト補強層としてのキャッププライ60と、複数本のカーカスコード51gを含み、一対のビード10を折り返された少なくとも1つの第1のカーカスプライ51と、を備え、第1のカーカスプライ51は、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とにおいて、カーカスコード51gのタイヤ周方向となす角度が互いに異なり、ベルト補強層コード60gは、アラミド繊維を含む。
【0039】
本実施形態では、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gが、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とにおいてタイヤ周方向となす角度が互いに異なるため、タガ効果が生じてビード10の剛性が向上する。ビード10の剛性向上は、補強層等の他の部材を設けることによらないため、重量の増大が抑えられる。また、キャッププライ60のベルト補強層コード60gがアラミド繊維を含むことにより、キャッププライ60を含むトレッド30の剛性が向上する。これらの結果、操縦安定性が向上する。
【0040】
(2)本実施形態に係るタイヤ1において、第1のカーカスプライ51は、一端51aがベルト40のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端51bがビード10を折り返された一対のプライ片51Aを含んでいる。
【0041】
これにより、軽量化およびそれに伴う転がり抵抗の低減と、剛性向上に伴う操縦安定性の向上との両立が図られる。
【0042】
(3)本実施形態に係るタイヤ1においては、ベルト40を構成する各ベルト41、42は、ベルトコード41g、42gをそれぞれ含み、ベルトコード41g、42gは、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下の傾斜角で配置されていることが好ましい。
【0043】
ベルトコード41g、42gをタイヤ周方向に沿って(タイヤ周方向に対して0°の傾斜角で)配置すると、剛性が最も高くなり、傾斜角が大きくなるほど剛性が低下する。本実施形態では、ベルトコード41g、42gの傾斜角をタイヤ周方向に対して26°以上33°以下の範囲に設定することにより、適度な剛性に伴う操縦安定性と、柔軟性による乗り心地の良さとを、バランスよく得ることができる。
【0044】
(4)本実施形態に係るタイヤ1においては、キャッププライ60のベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角は、ベルト41、42のベルトコード41g、42gのタイヤ周方向に対する傾斜角よりも小さく、かつ、ベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角と、ベルトコード41g、42gのタイヤ周方向に対する傾斜角とのなす角度が、20°以上であることが好ましい。
【0045】
これにより、適度な剛性に伴う操縦安定性と、柔軟性による乗り心地の良さとを、バランスよく得ることができる。
【0046】
(5)本実施形態に係るタイヤ1においては、キャッププライ60のベルト補強層コード60gは、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードであることが好ましい。
【0047】
これにより、キャッププライ60によるベルト40の補強効果ならびに耐久性がより向上し、中抜き部50Hが設けられることによって軽量化されたタイヤ1においても、剛性向上に伴う走行時の操縦安定性をより向上させることができる。また、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードは、ゴムとの接着性に優れ、ベルト補強層コード60gがトレッドゴム部31から分離するセパレーションが抑制される。
【0048】
(6)本実施形態に係るタイヤ1において、トレッド30は、タイヤ幅方向に並んで設けられた複数の主溝32A、32Bを含むトレッドパターン32を有し、第1のカーカスプライ51の、一対のプライ片51Aにおける一対の中抜き部50H側の一端51aのうちの少なくとも一方は、トレッドパターン32におけるタイヤ幅方向の最も外側に配置された最外主溝32Aのタイヤ幅方向内側の内壁32cよりも、タイヤ幅方向内側に位置することが好ましい。
【0049】
これにより、高い剛性を確保できる。すなわち、トレッド30の主溝32Aは凹形状を有するため、タイヤ1の加硫成形の際には金型から押圧されて形成され、したがって、最外主溝32Aの内壁32cよりもタイヤ幅方向内側にプライ片51Aの一端51aを配置することで、加硫成形の際に金型からの押圧力を受けてプライ片51Aを強固に保持できる。その結果、剛性の向上、およびそれに伴う操縦安定性の向上を図ることができる。
【0050】
(7)本実施形態に係るタイヤ1において、第1のカーカスプライ51の、一対のプライ片51Aにおける中抜き部50H側の一対の一端51aのうちの少なくとも一方は、トレッドパターン32におけるタイヤ幅方向中央に最も近い位置に配置された最内主溝32Bのタイヤ幅方向外側の外壁32dよりも、タイヤ幅方向外側に位置することが好ましい。
【0051】
これにより、プライ片51Aの一端部は、タイヤ幅方向において、タイヤ幅方向に並ぶ主溝32Aと主溝32Bとの間に位置するため、上述の加硫成形の際にプライ片51Aが強固に保持される。その結果、剛性の向上、およびそれに伴う操縦安定性の向上を図ることができる。
(8)本実施形態に係るタイヤ1においては、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gは、タイヤ側面視において、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側とのなす交差角度が、45°以上60°以下であることが好ましい。
【0052】
これにより、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gによってビード10およびサイドウォール20の剛性が向上し、剛性の向上に伴って操縦安定性を向上させることできる。
【0053】
また、本実施形態では、プライ片51Aの中抜き部50H側の一端51aが折り返し部51e側の他端51bよりもタイヤ幅方向内側に位置するため、他端51bをプライ片51A自体に貼り付けることができ、安定したカーカスプライ11の配置を実現することができる。
【0054】
また、本実施形態では、プライ片51Aの他端51bは、ビードフィラー12の先端12bよりもタイヤ径方向外側に配置されている。具体的には、プライ片51Aの他端51bは、ビードフィラー12の先端12bよりも10mm以上タイヤ径方向外側に配置されている。したがって、タイヤ側面視において、ビードフィラー12の先端12bよりもタイヤ径方向外側においてカーカスコード51gの延在方向が異なる領域を一定以上確保できる。その結果、一定以上のタガ効果を発生させることができ、タガ効果による剛性の向上とそれに伴う操縦安定性の向上を実現できる。
また、プライ片51Aの他端51bは、タイヤ最大幅部分20aよりもタイヤ径方向内側に配置されている。したがって、第1のカーカスプライ51の折り返し部51eの長さを一定以下に抑制できるため、第1のカーカスプライ51の大きさを一定以下に抑制することができ、軽量化を図ることができる。
【0055】
次に、上記実施形態に係るタイヤ1に関する第1~第3変形例を説明する。
なお、以下の説明では上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略し、上記実施形態との相違点のみを説明する。
【0056】
(第1変形例)
図4を参照して、空気入りタイヤ1の第1変形例を説明する。
図4は、
図2と同様に、トレッドゴム部31を省略してタイヤ1を外表面側から見たときのタイヤ1の周方向の一部を模式的に示す展開図であり、ここではキャッププライ60の図示を省略している。
図4においても、二点鎖線枠内に、ビードコア11に沿った折り返しラインWで折り返される第1のカーカスプライ51を、広げた状態で示している。
図4においては、タイヤ幅方向Xを紙面左右方向として示し、タイヤ周方向を矢印S2で示している。
なお、
図5も同様である。
【0057】
第1変形例では、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gの配置が上記実施形態とは異なっている。第1変形例では、1本に相当するカーカスコード51gは、タイヤ幅方向に延びる第1部分51g1と、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる第2部分51g2と、を有している。第1部分51g1および第2部分51g2は、ともに直線状であり、それぞれ折り返しラインWを横断するように配置されている。
【0058】
第1変形例では、折り返しラインWで折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置される第1部分51g1と、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置される第2部分51g2とは、タイヤ周方向となす角度が互いに異なり、タイヤ側面視において互いに交差するように配置される。
【0059】
第1変形例のように、カーカスコード51gの配置角度は、必ずしも一定でなくてもよい。すなわち、カーカスコード51gは、2つ以上に分離し、それらが異なる角度をもって配置されてもよい。
【0060】
(第2変形例)
図5を参照して、空気入りタイヤ1の第2変形例を説明する。
【0061】
第2変形例では、カーカスプライ51のカーカスコード51gの配置が上記実施形態および第1変形例とは異なっている。第2変形例では、カーカスコード51gは、完全に直線状ではなく、曲線状の第3部分51g3を有している。具体的には、1本に相当するカーカスコード51gは、第1変形例と同様のタイヤ幅方向に延びる第1部分51g1と、第1変形例と同様にタイヤ幅方向から傾斜して延びる第2部分51g2と、第1部分51g1と第2部分51g2とを接続する曲線状の第3部分51g3と、を有している。
【0062】
第2変形例では、折り返しラインWで折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置される第1部分51g1と、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置される第2部分51g2とは、タイヤ周方向となす角度が互いに異なり、タイヤ側面視において互いに交差するように配置される。
【0063】
第2変形例のように、連続する1つのカーカスコード51gの形状は、必ずしも直線状でなくてもよい。すなわち、カーカスコード51gは、曲線状の部分を有してもよい。
【0064】
(第3変形例)
図6~
図8を参照して、空気入りタイヤ1の第3変形例を説明する。
【0065】
図6に示される第3変形例においては、第1のカーカスプライ51と、第2のカーカスプライ52と、を含んでいる。第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51のように中抜き部50Hは有しておらず、一対のビード10の間に架け渡されている。
【0066】
第2のカーカスプライ52は、トレッド30において第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向内側に配置され、中抜き部50Hに配置されるセンター部52aを有している。第2のカーカスプライ52は、センター部52aから、サイドウォール20に沿ってタイヤ径方向内側に延びるプライ本体部52cと、ビードコア11の周囲で折り返される屈曲部52dと、屈曲部52dから、タイヤ径方向外側に延びる折り返し部52eと、を有する。折り返し部52eは、第1のカーカスプライ51(プライ片51Aの折り返し部51e)とほぼ同じ長さを有する。したがって、折り返し部52eの端部52bは、第1のカーカスプライ51の他端51bと、タイヤ径方向の位置がほぼ同じである。
なお、第2のカーカスプライ52の折り返し部52eの長さは、これに制限されない。
【0067】
図7は、
図3と同様に、サイドウォールゴム部21を省略してタイヤ1を側面から見たときの図であって、第1のカーカスプライ51を構成するプライ片51Aの構成要素である複数のカーカスコード51gと、第2のカーカスプライ52の構成要素である複数のカーカスコード52gを示している。
図7においては、タイヤ周方向を矢印S2で示している。
【0068】
図8は、第1のカーカスプライ51および第2のカーカスプライ52を、それぞれ
図2と同様に二点鎖線枠内において部分的に示している。
図8に示されるように、複数のカーカスコード51gおよび複数のカーカスコード52gは、それぞれ周方向に一定の間隔で配置されている。
【0069】
第3変形例では、
図7および
図8に示されるように、中抜きプライである第1のカーカスプライ51(プライ片51A)の複数のカーカスコード51gは、全長にわたりタイヤ幅方向と平行に直線状に延びている。一方、第2のカーカスプライ52の複数のカーカスコード52gは、全長にわたりタイヤ幅方向に対して傾斜して直線状に延びている。
【0070】
タイヤ側面視において、第1のカーカスプライ51におけるカーカスコード51gの、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置される側と、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置される側との交差角度は、0°以上5°以下が好ましい。ここでは、カーカスコード51gはタイヤ幅方向と平行であるため、その交差角度は0°である。一方、タイヤ側面視において、第2のカーカスプライ52におけるカーカスコード52gの、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置される側と、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置される側との交差角度は、45°以上60°以下が好ましい。したがって、この形態でのカーカスコード51gとカーカスコード52gとの交差角度(
図7でθ6)は、22.5°以上30°以下(22.5°≦θ6≦30°)となる。
【0071】
(9)第3変形例に係るタイヤ1においては、一対のビード10の間に連続するように架け渡された第2のカーカスプライ52をさらに備えている。
【0072】
これにより、カーカスプライが第1のカーカスプライ51のみからなる上記実施形態に比べて、カーカスプライの数が増加したことにより剛性が向上するため、操縦安定性をより向上させることができる。
【0073】
なお、第3変形例のように、2つ以上のカーカスプライを備える形態においては、第2のカーカスプライ52は、少なくとも、第2変形例および第3変形例で示したように、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側とタイヤ幅方向外側との領域で、タイヤ周方向となす角度が互いに異なる態様であればよい。
なお、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gがタイヤ幅方向に対して傾斜して配置され、第2のカーカスプライ52のカーカスコード52gがタイヤ幅方向に沿って配置されていてもよい。あるいは、第1のカーカスプライ51のカーカスコード51gと第2のカーカスプライ52のカーカスコード52gの双方が、タイヤ幅方向に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0074】
なお、上記第3変形例において、第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51と同様に、中抜き部を有していてもよい。
【0075】
以上、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
例えば、カーカスプライを3つ以上備え、そのうちの少なくとも1つが、一端がベルト40のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端がビード10を折り返された一対のプライ片を含むもの(中抜き部を有するもの)であり、少なくとも1つが、一対のビード10の間に連続するように架け渡されたもの(中抜き部を有さないもの)であってよい。
【符号の説明】
【0076】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 ビード
11 ビードコア
12 ビードフィラー
20 サイドウォール
30 トレッド
32 トレッドパターン
32A 最外主溝(主溝)
32B 最内主溝(主溝)
32c 内壁
32d 外壁
40、41、42 ベルト
41g、42g ベルトコード
51 第1のカーカスプライ(カーカスプライ)
51A プライ片
51a プライ片の一端
51g カーカスコード
52 第2のカーカスプライ
60 キャッププライ(ベルト補強層)
60g ベルト補強層コード