(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】空気調和システム及び伝送路推定方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20241220BHJP
F24F 11/50 20180101ALI20241220BHJP
【FI】
H04L27/26 320
H04L27/26 113
F24F11/50
(21)【出願番号】P 2020211196
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】那谷 和輝
(72)【発明者】
【氏名】小泉 吉秋
(72)【発明者】
【氏名】関戸 研司
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152426(JP,A)
【文献】特開2009-010929(JP,A)
【文献】特開2016-116205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288017(US,A1)
【文献】特開2009-094995(JP,A)
【文献】特開2020-065192(JP,A)
【文献】特開2008-143656(JP,A)
【文献】特開2012-256001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
F24F 11/54 - 11/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムであって、
伝送路推定の実行が必要か否かを判定する伝送路推定要否判定手段と、
前記伝送路推定要否判定手段によって伝送路推定の実行が必要と判定されると、前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する伝送路推定手段と、を備え、
前記伝送路推定要否判定手段は、前記室外機又は前記室内機のインバータ制御状態が変化した場合に伝送路推定の実行が必要と判定する、空気調和システム。
【請求項2】
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムであって、
伝送路推定の実行が必要か否かを判定する伝送路推定要否判定手段と、
前記伝送路推定要否判定手段によって伝送路推定の実行が必要と判定されると、前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する伝送路推定手段と、
前記室外機若しくは前記室内機のインバータ制御状態に変化が生じやすい時間帯を学習する学習手段と、を備え、
前記伝送路推定要否判定手段は、前記学習手段により得られた時間帯の範囲において設定された時刻になると伝送路推定の実行が必要と判定する、空気調和システム。
【請求項3】
室外機と、室内機と、リモコン装置とを備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムであって、
伝送路推定の実行が必要か否かを判定する伝送路推定要否判定手段と、
前記伝送路推定要否判定手段によって伝送路推定の実行が必要と判定されると、前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する伝送路推定手段と、を備え、
前記伝送路推定要否判定手段は、ユーザによる前記リモコン装置を介した操作によって空気調和に関する設定変更が行われた場合に伝送路推定の実行が必要と判定する、空気調和システム。
【請求項4】
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信されるとともに、前記室外機及び前記室内機の何れとも異なるインバータ機器と通信可能に接続される空気調和システムであって、
伝送路推定の実行が必要か否かを判定する伝送路推定要否判定手段と、
前記伝送路推定要否判定手段によって伝送路推定の実行が必要と判定されると、前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する伝送路推定手段と、を備え、
前記伝送路推定要否判定手段は、前記インバータ機器のインバータ制御状態が変化した場合に伝送路推定の実行が必要と判定する、空気調和システム。
【請求項5】
前記室外機が前記伝送路推定要否判定手段を備え、
前記室内機が前記伝送路推定手段を備える、請求項1から
4の何れか1項に記載の空気調和システム。
【請求項6】
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムが実行する伝送路推定方法であって、
前記室外機又は前記室内機のインバータ制御状態が変化した場合に前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する、伝送路推定方法。
【請求項7】
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムが実行する伝送路推定方法であって、
前記室外機若しくは前記室内機のインバータ制御状態に変化が生じやすい時間帯を学習し、
前記学習により得られた時間帯の範囲において設定された時刻になると前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する、伝送路推定方法。
【請求項8】
室外機と、室内機と、リモコン装置と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムが実行する伝送路推定方法であって、
ユーザによる前記リモコン装置を介した操作によって空気調和に関する設定変更が行われた場合に前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する、伝送路推定方法。
【請求項9】
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信されるとともに、前記室外機及び前記室内機の何れとも異なるインバータ機器と通信可能に接続される空気調和システムが実行する伝送路推定方法であって、
前記インバータ機器のインバータ制御状態が変化した場合に前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する、伝送路推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和システム及び伝送路推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ回路によるノイズは、機種、設置環境、駆動部品(圧縮機、ファン等)の回転速度等により、その中心周波数、周波数帯等が変動する。従来、マルチキャリア信号によって通信する空気調和システムにおいて、知見により見出されたノイズの周波数変動幅におけるサブキャリアを通信に使用しないことで、通信異常の発生を抑制することが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この場合、実際にはノイズが発生していない、又はノイズの影響が小さい周波数帯におけるサブキャリアまで使用されないことになるため、通信速度を過度に低下させてしまうほか、予め想定した周波数帯以外の周波数で発生するノイズには対応できないという課題がある。
【0004】
これに対し、定期的に伝送路推定(チャネルエスティメーションとも呼ばれる。)を行い、伝送路のノイズ環境に合わせた最適なトーンマップ(各サブキャリアについて、使用有無、割り当てるビット数(即ち、変調方式)等の情報をまとめたもの)を決定する方法が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6702471号公報
【文献】国際公開第2012/014502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の伝送路推定による手法では、推定のための専用の通信フレームを用いて定期的に通信する必要があり、本来のデータ通信のトラフィックに影響を与え、通信速度の低下を招く懸念がある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、最適なトーンマップによりノイズの影響を低減しつつ、通信速度の低下を抑制できる空気調和システム及び伝送路推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る空気調和システムは、
室外機と、室内機と、を備え、前記室外機と前記室内機とがマルチキャリア信号によって通信する空気調和システムであって、
伝送路推定の実行が必要か否かを判定する伝送路推定要否判定手段と、
前記伝送路推定要否判定手段によって伝送路推定の実行が必要と判定されると、前記マルチキャリア信号のサブキャリア毎の信号品質を評価する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する伝送路推定手段と、を備え、
前記伝送路推定要否判定手段は、前記室外機又は前記室内機のインバータ制御状態が変化した場合に伝送路推定の実行が必要と判定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、最適なトーンマップによりノイズの影響を低減しつつ、通信速度の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における空気調和システムの全体構成を示す図
【
図2】実施の形態1における室外機のハードウェア構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態1における室内機のハードウェア構成を示すブロック図
【
図4】実施の形態1における室外機及び室内機がそれぞれ備える制御回路及び通信回路の機能構成を示すブロック図
【
図5】実施の形態1において、トーンマップ変更前のマルチキャリア信号の一例を示す図
【
図6】実施の形態1において、トーンマップ変更後のマルチキャリア信号の一例を示す図
【
図7】実施の形態1における空気調和システムが実行する伝送路推定処理の手順を示すフローチャート
【
図8】実施の形態2における室外機及び室内機がそれぞれ備える制御回路の機能構成を示すブロック図
【
図9】実施の形態3における空気調和システムの全体構成を示す図
【
図10】実施の形態3における室外機及び室内機がそれぞれ備える制御回路の機能構成を示すブロック図
【
図11】実施の形態4における空気調和システムの全体構成を示す図
【
図12】実施の形態4における室外機及び室内機がそれぞれ備える制御回路の機能構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における空気調和システム1の全体構成を示す図である。空気調和システム1は、例えば、ビル、店舗等の建物に設置され、当該建物内の空気調和を行うシステムであり、室外機2と、1又は複数の室内機3とを備える。空気調和システム1は、本開示に係る空気調和システムの一例である。
【0013】
室外機2と各室内機3とは、マルチキャリア信号によって通信するための通信線4に接続される。また、室外機2と各室内機3とは、冷媒を循環させるための図示しない冷媒配管を介して接続される。なお、マルチキャリア信号による通信が可能であれば、室外機2と各室内機3との通信が無線で行われる構成であってもよい。
【0014】
室外機2は、本開示に係る室外機の一例である。
図2に示すように、室外機2は、駆動部品20と、インバータ回路21と、制御回路22と、通信回路23とを備える。駆動部品20は、例えば、冷媒を圧縮する圧縮機、外気を吸い込み、熱交換後の空気を屋外に送り出すファン等である。インバータ回路21は、駆動部品20を駆動させる回路である。
【0015】
制御回路22は、インバータ回路21及び通信回路23を制御する回路である。制御回路22は、何れも図示しないが、制御回路22を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)と、ファームウェアを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、インバータ回路21及び通信回路23を制御するためのプログラム及び当該プログラムの実行時に使用されるデータを記憶する補助記憶装置とを備える。補助記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される。
【0016】
通信回路23は、制御回路22からの指令に従い通信線4を介して他の機器(ここでは、各室内機3)とデータ通信するための回路であり、何れも図示しないが、通信回路23を統括的に制御するCPUと、通信用のファームウェアを記憶するROMと、CPUの作業領域として使用されるRAMとを備える。
【0017】
室内機3は、本開示に係る室内機の一例である。
図3に示すように、室内機3は、駆動部品30と、インバータ回路31と、制御回路32と、通信回路33とを備える。駆動部品30は、例えば、室内の空気を吸い込み、熱交換後の空気を室内に送り出すファンである。インバータ回路31は、駆動部品30を駆動させる回路である。
【0018】
制御回路32は、インバータ回路31及び通信回路33を制御する回路である。制御回路32は、何れも図示しないが、制御回路32を統括的に制御するCPUと、ファームウェアを記憶するROMと、CPUの作業領域として使用されるRAMと、インバータ回路31及び通信回路33を制御するためのプログラム及び当該プログラムの実行時に使用されるデータを記憶する補助記憶装置とを備える。補助記憶装置は、EEPROM、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される。
【0019】
通信回路33は、制御回路32からの指令に従い通信線4を介して他の機器(ここでは、室外機2)とデータ通信するための回路であり、何れも図示しないが、通信回路33を統括的に制御するCPUと、通信用のファームウェアを記憶するROMと、CPUの作業領域として使用されるRAMとを備える。
【0020】
続いて、室外機2が備える制御回路22及び通信回路23、並びに、室内機3が備える制御回路32及び通信回路33の機能について詳細に説明する。
図4に示すように、制御回路22と制御回路32は、何れも、通常制御部40と、伝送路推定要否判定部41とを備える。また、通信回路23と通信回路33は、何れも、通信制御部50と、送信部51と、受信部52とを備える。
【0021】
通常制御部40は、インバータ回路21(又はインバータ回路31)及び通信回路23(又は通信回路33)の一般的な動作を制御するための機能部である。伝送路推定要否判定部41は、本開示に係る伝送路推定要否判定手段の一例である。伝送路推定要否判定部41は、後述するトリガ条件の成立有無を判定することで、伝送路推定(チャネルエスティメーションとも呼ばれる。)の実行が必要か否かを判定する。伝送路推定要否判定部41は、伝送路推定の実行が必要と判定すると、通信回路23(又は通信回路33)に対して伝送路推定の実行を指示する。
【0022】
通信制御部50は、伝送路推定の実行制御、誤り訂正符号による通信データの符号化/復号化等を行う。送信部51は、通信制御部50からの入力データをトーンマップに基づき変調し、通信フレームを生成して送信する。受信部52は、受信した通信フレームからデータを抽出し、トーンマップに基づき復調して通信制御部50に出力する。
【0023】
詳細には、送信部51は、変調部510と、トーンマップ制御部511と、フレーム生成部512と、逆ウェーブレット変換部513とを備える。送信部51は、通信制御部50から入力された送信データを変調(例えば、PAM(Pulse Amplitude Modulation)変調)する。トーンマップ制御部511は、後述する伝送路推定によって決定されたトーンマップに基づきサブキャリア毎の変調方式(即ち、多値度)を通知することで変調部を制御する。
【0024】
フレーム生成部512は、変調部510により変調された直列データを周波数軸上の並列データに変換するとともに、既知の信号であるプリアンブル、パイロットシンボル(受信側で振幅と位相の変動を補償するための信号)を用いて通信フレームを生成する。逆ウェーブレット変換部513は、フレーム生成部512により生成された通信フレームを逆ウェーブレット(Wavelet)変換により時間軸上のデータとし、図示しないアナログ部(AFE(Analog Front End)・IC(Integrated Circuit)、D/A(Digital to Analog)変換器等)を介して送信する。
【0025】
受信部52は、ウェーブレット変換部520と、データ抽出部521と、伝送路推定部522と、復調部523とを備える。ウェーブレット変換部520は、図示せぬアナログ部(AFE・IC、A/D(Analog to Digital)変換器等)を介して受信した通信フレームを離散ウェーブレット変換により周波数軸上の並列データに変換する。データ抽出部521は、ウェーブレット変換部520により変換された周波数軸上の並列データを直列データに変換するとともに、通信フレームから受信データ(即ち、ペイロード)を抽出する。伝送路推定部522は、本開示に係る伝送路推定手段の一例であり、データ抽出部521により抽出された受信データを用いて後述する伝送路推定を実行し、トーンマップを決定する。復調部523は、データ抽出部521により抽出された受信データをトーンマップに基づき復調し、通信制御部50に出力する。
【0026】
続いて、室外機2と室内機3との協調により実現される伝送路推定について詳細に説明する。先ず、後述するトリガ条件が成立すると、送信側機器(室外機2及び室内機3の一方)は、受信側機器(室外機2及び室内機3の他方)宛てに伝送路推定を要求するための通信フレームであるRCE(Request Channel Estimation)フレームを送信する。
【0027】
RCEフレームは、フレームコントロールヘッダにてRCEフレームであることを明示するとともに、送信側機器と受信側機器との間で予め両者が認識している既知のCE(Channel Estimation)信号をペイロードに含む。
【0028】
受信側機器は、RCEフレームを受信すると、伝送路推定部522でCE信号の品質が評価され、サブキャリア毎のCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio;搬送波電力対(干渉波+雑音)電力比)が算出される。詳細には、既知のCE信号(+1あるいは-1)と実際の受信信号との電力誤差を算出し、この電力誤差の2乗平均した値が平均ノイズ量として算出される。伝送路推定部522は、算出したサブキャリア毎のCINRを予め定めた閾値(後述する第1の閾値、第2の閾値)と比較することでサブキャリア毎のCINRを評価する。
【0029】
伝送路推定部522は、サブキャリア毎のCINRの評価結果に基づいてトーンマップを決定する。ここで、トーンマップとは、各サブキャリアについて、使用有無(使用しないサブキャリアについてはマスクする)、割り当てるビット数(即ち、変調方式)、誤り訂正方式等の情報をまとめたものである。受信側機器は、以上のように決定したトーンマップをメモリに保存するとともに、当該トーンマップが格納されたCER(Channel Estimation Response)フレームを送信側機器に送信する。
【0030】
送信側機器は、CERフレームを受信すると、トーンマップを抽出し、当該CERフレームの送信元である受信側機器の機器IDと対応付けてメモリに保存する。機器IDは、空気調和システム1を構成する各機器(室外機2、室内機3等)を識別するためのID(identification)である。これにより、送信側機器と受信側機器との間でトーンマップを共通化することができる。受信側機器が複数存在する場合、送信側機器は、受信側機器毎のトーンマップを取得する。例えば、受信側機器が3台存在する場合(受信側機器A~C)、送信側機器は受信側機器A~Cそれぞれに対してRCEフレームを送信して、伝送路推定の要求を行い、受信側機器A~Cそれぞれからトーンマップを取得する。
【0031】
図5及び
図6を参照して、上記の伝送路推定によるトーンマップの変更について具体的に説明する。
図5は、トーンマップ変更前のマルチキャリア信号Sxにインバータ回路21又はインバータ回路31によるノイズ成分Nxが混入している状態を示している。マルチキャリア信号Sxにおいて、ノイズ成分Nxの周波数と重なるサブキャリアCmはCINRが悪い状態となる。
【0032】
図6は、トーンマップ変更後のマルチキャリア信号S1を示している。伝送路推定部522によりサブキャリアCmのCINRが第1の閾値より小さいと判定された結果、サブキャリアCmはマスクされ、通信に使用されなくなっている。また、CINRが第1の閾値以上であっても、第2の閾値(第1の閾値よりも大きい閾値)よりも小さいサブキャリアについても、CINRが悪化していると見なされる。具体的には、
図6では示されていないが、例えば、周波数軸上でサブキャリアCmと隣り合うサブキャリアCm-1及びCm+1の各々のCINRが、第1の閾値以上且つ第2の閾値未満である場合、ノイズ成分Nxによる影響を受けてCINRが悪化していると見なされ、各々のサブキャリアに含まれるビット数がトーンマップ変更前よりも少なくなる変調方式(多値度)に変更される。
【0033】
図7は、空気調和システム1によって実行される伝送路推定処理の手順を示すフローチャートである。以下の伝送路推定処理では、室外機2が、伝送路推定の実行の要否を判定し、室内機3に対して上述したRCEフレームの送信を行う。室外機2及び室内機3の何れをRCEフレームを送信する側(即ち、送信側機器)に設定するかについては任意の設計事項である。例えば、施工担当者、システム管理者等が、空気調和システム1における図示しないリモコン装置を操作して当該機器を送信側機器として設定できるようにしてもよいし、室外機2及び室内機3のそれぞれに設けられたスイッチを切り替えることで、当該機器を送信側機器として設定できるようにしてもよいし、室外機2及び室内機3のそれぞれに記憶される初期データを編集することで、当該機器を送信側機器として設定できるようにしてもよい。
【0034】
室内機3が室外機2に対してRCEフレームの送信を行う場合については、以下のフローチャートにおける各プロセスの動作において室外機2と室内機3を読み替えればよい。
【0035】
(ステップS101)
室外機2において、制御回路22は、伝送路推定を実行するための要件である後述のトリガ条件が成立しているか否かを判定する。トリガ条件が成立していない場合(判定結果;NO)、制御回路22は、引き続きトリガ条件が成立しているか否かの判定を行う。一方、トリガ条件が成立している場合(判定結果;YES)、空気調和システム1の処理は、ステップS102に移行する。
【0036】
(ステップS102)
室外機2において、制御回路22は、通信回路23に対して伝送路推定の実行を指示する。かかる指示を受けると、通信回路23は、伝送路推定を要求するための通信フレームであるRCEフレームを全室内機3に対して送信する。ここで、室外機2の通信回路23は、全室内機3に対してRCEフレームをブロードキャストで送信してもよいし、ユニキャストで順次送信してもよい。
【0037】
(ステップS103)
各室内機3において、通信回路33は、RCEフレームを受信し、受信したRCEフレームからCE信号を抽出する。
【0038】
(ステップS104)
ステップS103の処理に続き、通信回路33は、抽出したCE信号に基づいてサブキャリア毎のCINRを算出する。
【0039】
(ステップS105)
ステップS104の処理に続き、通信回路33は、算出したサブキャリア毎のCINRに基づいてトーンマップを決定する。
【0040】
(ステップS106)
ステップS105の処理に続き、通信回路33は、決定したトーンマップをメモリ(通信回路33が備える図示しないRAM)に格納する。
【0041】
(ステップS107)
また、通信回路33は、決定したトーンマップが格納されたCERフレームを室外機2に送信する。
【0042】
(ステップS108)
室外機2において、通信回路23は、CERフレームを受信し、受信したCERフレームから抽出したトーンマップを当該送信元の室内機3の機器IDと対応付けてメモリ(通信回路23が備える図示しないRAM)に格納する。以後、室外機2と当該室内機3との間の通信において、当該新たなトーンマップが使用される。
【0043】
(ステップS109)
ステップS108の処理に続き、通信回路23は、全ての室内機3からCERフレームを受信したか否かを判定する。全ての室内機3からCERフレームを受信した場合(判定結果;YES)、通信回路23は、制御回路22に対して伝送路推定の完了を通知し、その後、空気調和システム1の処理は、ステップS101に戻る。一方、何れかの室内機3からCERフレームを受信していない場合(判定結果;NO)、空気調和システム1の処理は、ステップS110に移行する。
【0044】
(ステップS110)
室外機2において、通信回路23は、CERフレームを受信していない全室内機3に対して、RCEフレームをユニキャストで順次送信する。その後、空気調和システム1の処理は、ステップS103に戻る。
【0045】
続いて、伝送路推定を実行するための要件であるトリガ条件について詳細に説明する。トリガ条件には、以下の第1要件及び第2要件が含まれ、何れかの要件に該当する場合に成立する。
【0046】
<第1要件>
第1要件は、室外機2と室内機3間の通信状態が悪化した場合である。通信状態は、例えば、通信速度、再送率、誤り率等であり、各々予め定めた閾値と比較することで判定される。例えば、通信速度が対応する閾値未満の場合、通信状態が悪化したと判定される。また、再送率、誤り率が、各々対応する閾値を超えた場合、通信状態が悪化したと判定される。なお、各閾値は任意の値に設定され得るが、厳しい値(例えば、再送率、誤り率では、より小さい値)に設定されると、伝送路推定の頻度が高くなってしまうため、やや緩めの値に設定されるのが望ましい。
【0047】
<第2要件>
第2要件は、インバータ制御状態が変化した場合である。インバータ制御状態とは、駆動部品20(又は駆動部品30)を駆動させるインバータ回路21(又はインバータ回路31)の駆動部品20(又は駆動部品30)に対する制御状態を指す。例えば、空気調和システム1において、設定温度の変更、風速の変更等が生じた場合に、圧縮機、ファンの回転数を変更させるため、インバータ制御状態に変化が生じる。
【0048】
なお、設定温度が変更されると、室外機2において、駆動部品20である圧縮機の回転数を目標回転数まで段階的に変更させるため、インバータ回路21の制御状態が段階的に変化する場合がある。この場合、インバータ制御状態が変化する度に、第2要件が生じたと判定すると、短時間で伝送路推定が繰り返し行われてしまうことになる。そこで、このような場合においては、インバータ回路21が圧縮機の回転数を目標回転数に変更した際に、インバータ制御状態が変化したと判定してもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態の空気調和システム1によれば、サブキャリア毎の信号品質の評価結果に基づいた最適なトーンマップによりマルチキャリア信号が生成され、室外機2と室内機3間の通信が行われる。このため、ノイズの影響を低減した通信が可能となる。
【0050】
また、通信状態が悪化した場合又はインバータ制御状態に変化が生じた場合に限定した適切なタイミングで伝送路推定を実行するため、伝送路推定の実行頻度が抑制され、結果として、空気調和システム1におけるデータ通信のトラフィックへの影響を低減でき、通信速度の低下を抑制できる。
【0051】
なお、伝送路推定要否判定部41は、第1要件及び第2要件の両方に該当する場合に、トリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0052】
また、伝送路推定要否判定部41は、第1要件及び第2要件とは別に、例えば、空気調和システム1の立ち上がり時など、トーンマップの初期化を目的とした適切なタイミングで伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、最後に伝送路推定を実行してから長時間(例えば3時間以上)経過した場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0053】
(実施の形態2)
続いて、本開示の実施の形態2について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図8は、実施の形態2における室外機2及び室内機3がそれぞれ備える制御回路22及び制御回路32の機能構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態における通信回路23及び通信回路33の機能構成は、実施の形態1と同様である。
【0055】
図8に示すように、制御回路22と制御回路32は、何れも、通常制御部40と、伝送路推定要否判定部41Aと、学習部42とを備える。通常制御部40は、インバータ回路21(又はインバータ回路31)及び通信回路23(又は通信回路33)の一般的な動作を制御するための機能部である。
【0056】
伝送路推定要否判定部41Aは、本開示に係る伝送路推定要否判定手段の一例である。伝送路推定要否判定部41Aは、実施の形態1の伝送路推定要否判定部41と同様、伝送路推定を実行するための要件であるトリガ条件(第1要件、第2要件)の成立有無を判定することで、伝送路推定の実行が必要か否かを判定する。
【0057】
学習部42は、本開示に係る学習手段の一例である。学習部42は、室外機2と室内機3との間の通信状態が悪化しやすい時間帯又は室外機2若しくは室内機3のインバータ制御状態に変化が生じやすい時間帯を実測により学習する。学習部42は、学習結果として、学習した時間帯を示す時間帯データを出力する。
【0058】
本実施の形態では、トリガ条件には、さらに、第3要件として、学習部42が出力する時間帯データに基づく伝送路推定の実行時刻の到来が含まれる。伝送路推定の実行時刻は、時間帯データが示す時間帯に含まれる時刻であり、伝送路推定要否判定部41Aによって任意の条件の下で設定される。例えば、伝送路推定の実行時刻は、学習された時間帯の開始時刻であってもよいし、当該開始時刻から予め定めた時間経過後の時刻であってもよい。
【0059】
伝送路推定要否判定部41Aは、第1要件~第3要件の内の何れかの要件に該当する場合にトリガ条件が成立したとし、伝送路推定の実行が必要と判定し、通信回路23(又は通信回路33)に対して伝送路推定の実行を指示する。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態の空気調和システム1によれば、サブキャリア毎の信号品質の評価結果に基づいた最適なトーンマップによりマルチキャリア信号が生成され、室外機2と室内機3間の通信が行われる。このため、ノイズの影響を低減した通信が可能となる。
【0061】
また、通信状態が悪化した場合、インバータ制御状態に変化が生じた場合又は通信状態が悪化しやすい時間帯若しくはインバータ制御状態に変化が生じやすい時間帯に限定した適切なタイミングで伝送路推定を実行するため、伝送路推定の実行頻度が抑制され、結果として、空気調和システム1におけるデータ通信のトラフィックへの影響を低減でき、通信速度の低下を抑制できる。
【0062】
なお、伝送路推定要否判定部41Aは、第1要件~第3要件における2要件以上に該当する場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0063】
また、伝送路推定要否判定部41Aは、第1要件~第3要件とは別に、例えば、空気調和システム1の立ち上がり時など、トーンマップの初期化を目的とした適切なタイミングで伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、最後に伝送路推定を実行してから長時間(例えば3時間以上)経過した場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0064】
(実施の形態3)
続いて、本開示の実施の形態3について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図9は、実施の形態3における空気調和システム1Aの全体構成を示す図である。空気調和システム1Aは、実施の形態1の空気調和システム1と同様、例えば、ビル、店舗等の建物に設置され、当該建物内の空気調和を行うシステムであり、室外機2と、1又は複数の室内機3Aと、リモコン装置5を備える。空気調和システム1Aは、本開示に係る空気調和システムの一例である。
【0066】
室外機2と各室内機3Aとは、マルチキャリア信号によって通信するための通信線4に接続される。また、室外機2と各室内機3Aとは、冷媒を循環させるための図示しない冷媒配管を介して接続される。なお、マルチキャリア信号による通信が可能であれば、室外機2と各室内機3Aとの通信が無線で行われる構成であってもよい。
【0067】
本実施の形態における室外機2のハードウェア構成成は、実施の形態1の室外機2と同様である(
図2参照)。室内機3Aは、本開示に係る室内機の一例であり、実施の形態1の室内機3と同様のハードウェア構成(
図3参照)を包含し、さらに、リモコン装置5と専用の通信線6を介して通信するための図示しない通信回路を備える。
【0068】
リモコン装置5は、本開示に係るリモコン装置の一例である。リモコン装置5は、ユーザから空調に係る操作を受け付けるためのユーザインタフェースであり、何れも図示しないが、通信線6を介して室内機3Aと通信するための通信インタフェースと、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスと、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力デバイスと、リモコン装置5を統括的に制御するCPUと、ROMと、RAMと、EEPROM、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリとを備える。
【0069】
ユーザがリモコン装置5を介して空調に関する操作(例えば、設定温度の変更、風速の変更等)を行うと、かかる操作に基づく通信フレームが、室内機3Aに送信され、当該通信フレームで示される操作内容が室内機3Aから室外機2に通知される。これにより、空気調和システム1Aは、ユーザの操作内容に従った動作を行う。
【0070】
図10は、実施の形態3における室外機2及び室内機3がそれぞれ備える制御回路22及び制御回路32の機能構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態における通信回路23及び通信回路33の機能構成は、実施の形態1と同様である。
【0071】
図10に示すように、制御回路22と制御回路32は、何れも、通常制御部40と、伝送路推定要否判定部41Bとを備える。通常制御部40は、インバータ回路21(又はインバータ回路31)及び通信回路23(又は通信回路33)の一般的な動作を制御するための機能部である。
【0072】
伝送路推定要否判定部41Bは、本開示に係る伝送路推定要否判定手段の一例である。伝送路推定要否判定部41Bは、伝送路推定を実行するための要件である下記のトリガ条件の成立有無を判定することで、伝送路推定の実行が必要か否かを判定する。
【0073】
本実施の形態では、トリガ条件には、実施の形態1と同様の第1要件が含まれるとともに、さらに、第4要件が含まれる。第4要件は、ユーザによるリモコン装置5を介した操作によって空気調和に関する設定変更(設定温度の変更、風速の変更等)が行われた場合である。空気調和に関する設定変更が行われると、インバータ回路21(又はインバータ回路31)のインバータ制御状態に変化が生じる。
【0074】
伝送路推定要否判定部41Bは、第1要件及び第4要件の内の何れかの要件に該当する場合にトリガ条件が成立したとし、伝送路推定の実行が必要と判定し、通信回路23(又は通信回路33)に対して伝送路推定の実行を指示する。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態の空気調和システム1Aによれば、サブキャリア毎の信号品質の評価結果に基づいた最適なトーンマップによりマルチキャリア信号が生成され、室外機2と室内機3A間の通信が行われる。このため、ノイズの影響を低減した通信が可能となる。
【0076】
また、通信状態が悪化した場合又は空気調和に関する設定変更が行われた場合に限定した適切なタイミングで伝送路推定を実行するため、伝送路推定の実行頻度が抑制され、結果として、空気調和システム1Aにおけるデータ通信のトラフィックへの影響を低減でき、通信速度の低下を抑制できる。
【0077】
なお、伝送路推定要否判定部41Bは、第1要件及び第4要件の両方に該当する場合に、トリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0078】
また、伝送路推定要否判定部41Bは、第1要件及び第4要件とは別に、例えば、空気調和システム1Aの立ち上がり時など、トーンマップの初期化を目的とした適切なタイミングで伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、最後に伝送路推定を実行してから長時間(例えば3時間以上)経過した場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0079】
また、室外機2とリモコン装置5とが専用の通信線6を介して接続される構成であってもよいし、リモコン装置5が通信線4に接続される構成であってもよい。
【0080】
また、制御回路22及び制御回路32のそれぞれが、実施の形態2の学習部42をさらに備え、伝送路推定要否判定部41Bは、第1要件、第3要件及び第4要件の内の何れかの要件に該当する場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、第1要件、第3要件及び第4要件における2要件以上に該当する場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0081】
(実施の形態4)
続いて、本開示の実施の形態4について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図11は、実施の形態4における空気調和システム1Bの全体構成を示す図である。空気調和システム1Bは、実施の形態1の空気調和システム1と同様、例えば、ビル、店舗等の建物に設置され、当該建物内の空気調和を行うシステムであり、室外機2Aと、1又は複数の室内機3とを備える。空気調和システム1Bは、本開示に係る空気調和システムの一例である。
【0083】
室外機2Aと各室内機3とは、マルチキャリア信号によって通信するための通信線4に接続される。また、室外機2Aと各室内機3とは、冷媒を循環させるための図示しない冷媒配管を介して接続される。なお、マルチキャリア信号による通信が可能であれば、室外機2Aと各室内機3との通信が無線で行われる構成であってもよい。
【0084】
室外機2Aは、本開示に係る室外機の一例であり、実施の形態1の室外機2と同様のハードウェア構成(
図2参照)を包含し、さらに、インバータ機器7と専用の通信線8を介して通信するための図示しない通信回路を備える。また、本実施の形態における室内機3のハードウェア構成成は、実施の形態1の室内機3と同様である(
図3参照)。
【0085】
インバータ機器7は、何れも図示しないが、駆動部品と、当該駆動部品を駆動させるインバータ回路と、当該インバータ回路を制御する制御回路とを備えた機器であり、例えば、換気装置、給湯機等である。インバータ機器7は、自機のインバータ制御状態に変化が生じると、その旨を室外機2Aに通知する。
【0086】
図12は、実施の形態4における室外機2A及び室内機3がそれぞれ備える制御回路22及び制御回路32の機能構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態における通信回路23及び通信回路33の機能構成は、実施の形態1と同様である。
【0087】
図12に示すように、制御回路22と制御回路32は、何れも、通常制御部40と、伝送路推定要否判定部41Cとを備える。通常制御部40は、インバータ回路21(又はインバータ回路31)及び通信回路23(又は通信回路33)の一般的な動作を制御するための機能部である。
【0088】
伝送路推定要否判定部41Cは、本開示に係る伝送路推定要否判定手段の一例である。伝送路推定要否判定部41Cは、伝送路推定を実行するための要件である下記のトリガ条件の成立有無を判定することで、伝送路推定の実行が必要か否かを判定する。
【0089】
本実施の形態では、トリガ条件には、実施の形態1と同様の第1要件及び第2要件が含まれるとともに、さらに、第5要件が含まれる。第5要件は、インバータ機器7のインバータ制御状態が変化した場合である。
【0090】
伝送路推定要否判定部41Cは、第1要件、第2要件及び第5要件の内の何れかの要件に該当する場合にトリガ条件が成立したとし、伝送路推定の実行が必要と判定し、通信回路23(又は通信回路33)に対して伝送路推定の実行を指示する。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態の空気調和システム1Bによれば、サブキャリア毎の信号品質の評価結果に基づいた最適なトーンマップによりマルチキャリア信号が生成され、室外機2Aと室内機3間の通信が行われる。このため、ノイズの影響を低減した通信が可能となる。
【0092】
また、通信状態が悪化した場合、空気調和システム1Bにおけるインバータ制御状態に変化が生じた場合又はインバータ機器7のインバータ制御状態が変化した場合に限定した適切なタイミングで伝送路推定を実行するため、伝送路推定の実行頻度が抑制され、結果として、空気調和システム1Bにおけるデータ通信のトラフィックへの影響を低減でき、通信速度の低下を抑制できる。
【0093】
なお、伝送路推定要否判定部41Cは、第1要件、第2要件及び第5要件における2要件以上に該当する場合に、トリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0094】
また、伝送路推定要否判定部41Cは、第1要件、第2要件及び第5要件とは別に、例えば、空気調和システム1Bの立ち上がり時など、トーンマップの初期化を目的とした適切なタイミングで伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、最後に伝送路推定を実行してから長時間(例えば3時間以上)経過した場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0095】
また、室内機3とインバータ機器7とが専用の通信線8を介して接続される構成であってもよいし、インバータ機器7が通信線4に接続される構成であってもよい。室内機3とインバータ機器7とが通信線8を介して接続される場合、インバータ機器7からのインバータ制御状態に変化が生じた旨の通知は、室内機3を介して室外機2Aにも通知されるものとする。
【0096】
また、制御回路22及び制御回路32のそれぞれが、実施の形態2の学習部42をさらに備え、伝送路推定要否判定部41Cは、第1要件~第3要件及び第5要件の内の何れかの要件に該当する場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、第1要件~第3要件及び第5要件における2要件以上に該当する場合に、トリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0097】
あるいは、伝送路推定要否判定部41Cは、第1要件、第4要件及び第5要件の内の何れかの要件に該当する場合にトリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよいし、第1要件、第4要件及び第5要件における2要件以上に該当する場合に、トリガ条件が成立し、伝送路推定の実行が必要と判定してもよい。
【0098】
本開示は、上記の各実施の形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B 空気調和システム、2,2A 室外機、3,3A 室内機、4,6,8 通信線、5 リモコン装置、7 インバータ機器、20,30 駆動部品、21,31 インバータ回路、22,32 制御回路、23,33 通信回路、40 通常制御部、41,41A,41B,41C 伝送路推定要否判定部、50 通信制御部、51 送信部、52 受信部、510 変調部、511 トーンマップ制御部、512 フレーム生成部、513 逆ウェーブレット変換部、520 ウェーブレット変換部、521 データ抽出部、522 伝送路推定部、523 復調部