(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】シリンジ用の取り外し可能なボリュームインジケーター
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20241220BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20241220BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20241220BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/315
A61M25/10 540
(21)【出願番号】P 2020567934
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019035226
(87)【国際公開番号】W WO2019236485
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-25
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イラン・タミール
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アール・ビアラス
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0306318(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354787(US,A1)
【文献】特表2005-528143(JP,A)
【文献】特表2014-521446(JP,A)
【文献】国際公開第92/017221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ本体および前記シリンジ本体内に受け入れられたプランジャーを備えるシリンジ用のボリュームインジケーターであって、
インジケーター本体と、
窓部分であって、前記シリンジ本体内の前記シリンジプランジャーの一部が前記窓部分を通して見えるように前記インジケーター本体の厚みを貫通して延びており、前記窓部分に隣接する
膨張量インジケーターを備える、窓部分と
を具備し、
前記インジケーター本体は、第1の係合要素と第2の係合要素とを備え、
前記第1の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体の第1の突起と係合するように構成された開口であり、
前記第2の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体のリップから延びる第2の突起と係合するように構成された開口であり、
前記第1の係合要素と前記第2の係合要素とは、前記シリンジ本体の対応する突起と係合したとき、前記ボリュームインジケーターの回転を防止する
ボリュームインジケーター。
【請求項2】
前記膨張量インジケーターは、前記窓部分を少なくとも部分的に横切って延在する突起を備える、
請求項1に記載のボリュームインジケーター。
【請求項3】
前記膨張量インジケーターは、前記窓部分を横切って延在するバンドを備える、
請求項1に記載のボリュームインジケーター。
【請求項4】
前記インジケーター本体は少なくとも部分的に不透明である、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のボリュームインジケーター。
【請求項5】
前記窓部分は、前記インジケーター本体の第1の端部と、前記インジケーター本体の第2の端部との間に配置され、かつ、前記インジケーター本体の全長よりも短い距離にわたって延在する、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のボリュームインジケーター。
【請求項6】
アセンブリであって、
シリンジ本体とプランジャーとを備えるシリンジであって、前記シリンジ本体は、前記シリンジ本体の外面に第1の突起と第2の突起とを有し、前記第1の突起と前記第2の突起とは異なる形状を有する、シリンジと、
インジケーター本体と、その長さに沿った膨張量インジケーターを有する窓部分とを備えるボリュームインジケーターと
を備え、
前記インジケーター本体は、第1の係合要素と第2の係合要素とを備え、
前記第1の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体の第1の突起と係合するように構成された開口であり、
前記第2の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体のリップから延びる第2の突起と係合するように構成された開口であり、
前記第1の係合要素と前記第2の係合要素とは、前記シリンジ本体の対応する突起と係合したとき、前記ボリュームインジケーターの回転を防止する
アセンブリ。
【請求項7】
前記窓部分は、前記シリンジ本体内の前記プランジャーの一部が前記窓部分を通して見えるように構成される、
請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記ボリュームインジケーターが一方向にのみ前記シリンジに結合可能であるように、前記一つ以上の第1および第2の係合要素が前記シリンジ本体および前記インジケーター本体に配置される、
請求項6または7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記一つ以上の第1の係合要素は、前記一つ以上の第2の係合要素との締まりばめを形成するように構成されたテーパー状側面を有するポストである、請求項6ないし8のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記ボリュームインジケーターは、前記シリンジ本体に、取り外し可能にクリップで留まるように構成される、
請求項6ないし9のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記一つ以上の第1の係合要素は、前記一つ以上の第2の係合要素と係合して、前記シリンジに対する前記ボリュームインジケーターの回転運動を抑止するように構成される、
請求項6ないし10のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記一つ以上の第1の係合要素は、前記シリンジ本体の外面から延びる突起であり、かつ、前記一つ以上の第2の係合要素は、前記第1の係合要素と係合するサイズとされた切り欠きである、
請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
シリンジにボリュームインジケーターを配置するステップであって、前記シリンジは、シリンジ本体と、前記シリンジ本体内に受け入れられたプランジャーとを備え、かつ、前記ボリュームインジケーターは、インジケーター本体と、前記インジケーター本体上の
膨張量インジケーターとを備え、前記シリンジ本体は、第1の突起と第2の突起とを有し、前記インジケーター本体は、第1の係合要素と第2の係合要素とを備え、前記第1の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体の第1の突起と係合するように構成された開口であり、前記第2の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記第2の突起と係合するように構成された開口であり、前記第1の係合要素と前記第2の係合要素とは、前記シリンジ本体の対応する突起と係合したとき、前記ボリュームインジケーターの回転を防止する、ステップと、
前記シリンジ本体に、前記インジケーター本体上の
膨張量インジケーターの一つに対応する量の流体を充填するステップと、
前記シリンジを人工弁用の送達装置に流体的に接続するステップと
を含む、
方法。
【請求項14】
前記シリンジに前記ボリュームインジケーターを配置する行為は、前記シリンジ本体上の一つ以上の第1の係合要素を、前記インジケーター本体上の一つ以上の第2の係合要素と係合させることを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ボリュームインジケーターが前記シリンジ上に配置されたとき、前記インジケーター本体上の前記
膨張量インジケーターは前記シリンジ本体上の
膨張量インジケーターと整列しない、
請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ボリュームインジケーターはボリュームインジケーターのキットから選択される、
請求項13ないし請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記キット内の各ボリュームインジケーターは異なる公称弁サイズに対応する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記キットは、公称サイズが20mmの人工心臓弁に対応する第1のボリュームインジケーターと、公称サイズが23mmの人工心臓弁に対応する第2のボリュームインジケーターと、公称サイズが26mmの人工心臓弁に対応する第3のボリュームインジケーターと、公称サイズが29mmの人工心臓弁に対応する第4のボリュームインジケーターと、を含む、
請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
アセンブリであって、
シリンジに取り付けるための取り外し可能なボリュームインジケーターであって、インジケーター本体と、その長さに沿って間隔を置いて配置された膨張量インジケーターとを備え、前記インジケーター本体は、第1の係合要素と第2の係合要素とを備え、前記第1の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体の第1の突起と係合するように構成された開口であり、前記第2の係合要素は前記インジケーター本体を通って延び、前記シリンジ本体のリップから延びる第2の突起と係合するように構成された開口である、取り外し可能なボリュームインジケーターと、
人工心臓弁を移植するための送達装置であって、その遠位部分に取り付けられたバルーンを含む装置と
を備え、
前記シリンジは、前記シリンジの外面に設けられた第1の突起と第2の突起とを備え、前記第2の突起は前記シリンジのリップから延びており、
前記インジケーター本体の、前記第1の係合要素と前記第2の係合要素とは、前記第1の突起および前記第2の突起と係合するように構成されており、前記第1の係合要素は前記インジケーター本体を通って延びる開口であり、
前記第1の係合要素と前記第2の係合要素とは、前記シリンジ本体の対応する突起と係合したとき、前記ボリュームインジケーターの回転を防止する
アセンブリ。
【請求項20】
ある範囲の拡張直径内で拡張機能直径まで拡張可能である人工心臓弁をさらに備え、前記膨張量インジケーターは前記範囲の拡張直径に対応する、
請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
キットであって、
同じシリンジに取り付けるための少なくとも第1および第2の取り外し可能なボリュームインジケーターであって、各ボリュームインジケーターは、インジケーター本体と、その長さに沿って間隔を置いて配置された膨張量インジケーターとを備える、少なくとも第1および第2の取り外し可能なボリュームインジケーター
を備え、
前記第1のボリュームインジケーターの前記膨張量インジケーターは、第1の人工弁のある範囲の拡張直径に対応し、かつ、前記第2のボリュームインジケーターの前記膨張量インジケーターは、前記第1の人工弁よりも大きい第2の人工弁のある範囲の拡張直径に対応し、
前記インジケーター本体の各々は、前記シリンジの外面に設けられたシリンジ側係合要素と係合するように構成されている係合要素を備える
キット。
【請求項22】
前記キットは、第3のボリュームインジケーターと、第4のボリュームインジケーターとをさらに備える、
請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記第1の人工心臓弁および前記第2の人工心臓弁を移植するために使用することができる送達装置をさらに備え、前記装置は、その遠位部分に取り付けられたバルーンを備える、
請求項21または22に記載のキット。
【請求項24】
前記第1の人工心臓弁または前記第2の人工心臓弁をさらに備える、
請求項21ないし23のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンジ用の、特にバルーン拡張可能な人工心臓弁を膨張させるために使用されるシリンジのための取り外し可能なボリュームインジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
人工心臓弁は、心臓弁膜症を治療するために長年使用されてきた。天然の心臓弁(大動脈弁、肺弁、僧帽弁など)は、心臓血管系を通る適切な血液供給の順方向の流れを保証する上で重要な機能を果たす。これらの心臓弁は、先天性、炎症性または感染性の状態によって機能が低下する可能性がある。弁へのそのような損傷は、深刻な心血管障害または死につながる可能性がある。長年にわたり、そのような障害の決定的な治療は、開心術中の弁の外科的修復または交換であったが、そのような手術は多くの合併症を起こしやすい。従来の開心術に関連する欠点のために、経皮的で低侵襲の外科的アプローチが強い注目を集めている。一つの技術では、人工弁は、カテーテル法によって、はるかに侵襲性の低い手順で埋め込まれるように構成される。
【0003】
この技術では、人工弁は、捲縮状態で可撓性カテーテルの端部に取り付けられ、人工弁が移植部位に到達するまで、患者の血管を通って前進させられる。次に、カテーテル先端の人工弁は、人工弁が取り付けられているバルーンを膨らませることなどによって、欠陥のある天然弁の箇所で、その機能的なサイズへと拡張される。例えば、特許文献1および特許文献2は、カテーテル上で圧縮された状態で経皮的に導入されて、バルーン膨張によって、または自己拡張フレームまたはステントの利用によって所望の位置で拡張することができる折りたたみ可能な経カテーテル心臓弁を説明している。
【0004】
経カテーテル人工心臓弁は、典型的には、人工弁の弁尖が意図したように動作することができる機能的な拡張直径を一つだけ有する。バルーン拡張可能な人工弁の典型的な送達装置は、人工弁を移植部位に展開するために、膨張流体をバルーンに注入するために使用されるシリンジに流体的に接続することができる。バルーンは、通常、シリンジの固有ボリュームインジケーターに対応する所定量の流体で膨張するように設計または選択されている。これにより、ユーザーは、人工弁を機能的なサイズへと拡張するために必要な正確な量の流体をシリンジに充填することができる。
【0005】
より最近では、特許文献3に開示されているように、機能サイズの範囲内で拡張することができる経カテーテル人工心臓弁が開発された。そのような人工弁の移植のために、医師は、ある範囲の充填量から、選択された人工弁の直径に対応する膨張流体の適切な量を選択できなければならない。従来の膨張シリンジを使用すると、必要な量がシリンジに設けられたボリュームインジケーターの一つと一致しない場合には、医師が、人工弁を目的のサイズへと拡張するために必要な正確な量の膨張流体をシリンジに引き込むのは難しい場合がある。
【0006】
したがって、膨張シリンジを使用して、ある範囲の機能サイズ内の選択された機能サイズへと人工弁を拡張するために必要な膨張流体の量を正確に測定するための改善されたデバイスおよび方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5,411,522号明細書
【文献】米国特許第6,730,118号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0028310号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されているのは、主に、バルーンを膨張させて人工心臓弁を拡張するためのシリンジと共に使用されることを意図された取り外し可能なボリュームインジケーターの実施形態ならびにそれを使用するための方法である。必要なボリュームがシリンジの既存のボリュームマーキングのいずれとも一致しない場合、ボリュームインジケーターを使用して、正確な量の流体をシリンジ内に引き込むことができる。
【0009】
取り外し可能なボリュームインジケーターは、インジケーター本体と、このインジケーター本体の厚みを貫通して延在する窓部分とを含むことができ、インジケーター本体は、シリンジに取り外し可能にクリップで留まるように構成される。シリンジは、シリンジ本体およびシリンジ本体内に受け入れられたプランジャーを有することができ、ボリュームインジケーターの窓部分は、シリンジ本体内のシリンジプランジャーの一部が窓部分を通して見えるように構成することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターは、窓部分に隣接する膨張しるしをさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、膨張しるしは、窓部分を少なくとも部分的に横切って延在する突起を備えることができる。他の実施形態では、膨張しるしは、窓部分を横切って延在するバンドを備えることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、インジケーター本体は、少なくとも部分的に不透明にすることができる。例えば、インジケーター本体は、完全に不透明、半透明、またはパターン化することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、窓部分は、インジケーター本体の第1の端部とインジケーター本体の第2の端部との間に配置することができ、そしてインジケーター本体の全長よりも短い長さにわたって延在することができる。
【0013】
代表的な実施形態では、アセンブリは、シリンジおよびボリュームインジケーターを備える。シリンジは、シリンジ本体およびプランジャーを備えることができ、シリンジ本体は一つ以上の第1の係合要素を有する。ボリュームインジケーターは、インジケーター本体と、その長さに沿って膨張しるしを有する窓部分とを備えることができ、インジケーター本体は、第1の係合要素と係合するように構成された一つ以上の第2の係合要素を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、窓部分は、シリンジ本体内のプランジャーの一部が窓部分を通して見えるように構成される。いくつかの実施形態では、シリンジ本体はボリュームしるしを備えることができる。いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターがシリンジ上に配置されている場合、インジケーター本体上のボリュームしるしは、シリンジ本体上のボリュームしるしと整列しない。他の実施形態では、シリンジ本体はブランクであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターは、シリンジ本体に取り外し可能にクリップで留まるように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、一つ以上の第1および第2の係合要素は、ボリュームインジケーターを一方向にのみシリンジにクリップ留めできるように、シリンジ本体およびインジケーター本体上に配置される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターは、ユーザーが使用中にボリュームインジケーターを把持することを可能とするように構成された把持部分(例えば一つ以上の隆起部)をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、シリンジは、その近位端部に環状リップを備えることができる。ボリュームインジケーターの本体は、シリンジを使用して人工弁を膨らませるときに、ユーザーが隆起部をつかんでシリンジのプランジャーを押すことができるように、リップに当接することができる。プランジャーを押圧することでシリンジ/ボリュームインジケーターセンブリには遠位方向の力が加えられるが、これは、アセンブリの移動を防止するためにユーザーが対応する近位方向の力を加えることを要求する。力を加えている間のリップに対するボリュームインジケーターの当接は、ボリュームインジケーターがシリンジから外れるのを防止するのに役立つ。
【0018】
いくつかの実施形態では、シリンジは、一つ以上の第3の係合要素をさらに備えることができ、ボリュームインジケーターは、ボリュームインジケーターがシリンジに対して回転運動するのが抑止されるように、一つ以上の第3の係合要素と係合するように構成された一つ以上の第4の係合要素をさらに備えることができる。
【0019】
別の代表的な実施形態では、アセンブリは、シリンジおよびボリュームインジケーターを含む。シリンジは、シリンジ本体およびプランジャーを含むことができ、シリンジ本体は第1の係合要素を有する。ボリュームインジケーターは、インジケーター本体と、その長さに沿った膨張しるしを有する窓部分とを備えることができる。インジケーター本体は第1の係合要素と係合するように構成された第2の係合要素を備える。いくつかの実施形態では、第1の係合要素はシリンジの外面から延びる突起であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の係合要素は、この突起と係合するように構成された開口であってもよい。シリンジ本体は第3の係合要素をさらに含むことができ、ボリュームインジケーターは、ボリュームインジケーターがシリンジ本体に対して回転運動するのを抑制するために第3の保持要素と係合するように構成された第4の係合要素をさらに備えることができる。
【0020】
別の代表的な実施形態では、シリンジと共にボリュームインジケーターを使用する方法は、シリンジにボリュームインジケーターを配置するステップであって、シリンジはシリンジ本体およびシリンジ本体内に受け入れられたプランジャーを備えると共にボリュームインジケーターはインジケーター本体と、このインジケーター本体上のボリュームしるしとを備えるステップと、シリンジ本体にインジケーター本体のボリュームしるしの一つに対応する量の流体を充填するステップと、シリンジを人工弁用の送達装置に流体的に接続するステップとを備えることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、シリンジにボリュームインジケーターを配置する行為は、シリンジ本体上の一つ以上の第1の係合要素を、インジケーター本体上の一つ以上の第2の係合要素と係合させることを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記方法は、送達装置の遠位端部と、送達装置の遠位端部に取り付けられたバルーン上に半径方向に圧縮された状態で取り付けられた人工心臓弁とを患者の体内に挿入することをさらに備えることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記方法は、人工弁を選択された移植領域に配置するために、送達装置の遠位端部および半径方向に圧縮された人工弁を患者の血管系を通して前進させるステップと、シリンジのプランジャーを作動させて流体をバルーン内に注入し、これによってバルーンを膨らませ、人工心臓弁を半径方向に拡張するステップとを備えることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁は、ある範囲の拡張直径内で拡張機能直径まで拡張することができ、シリンジ本体を充填する行為は、上記範囲の拡張直径内の選択された拡張直径まで人工心臓弁を拡張するために必要な充填量を選択することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターがシリンジ上に配置された場合、インジケーター本体上のボリュームしるしは、シリンジ本体上のボリュームしるしと整列させられない。
【0026】
いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターは、ボリュームインジケーターのキットから選択される。いくつかの実施形態では、キット内の各ボリュームインジケーターは、異なる公称バルブサイズに対応する。いくつかの実施形態では、キットは、20mmの公称サイズを有する人工心臓弁に対応する第1のボリュームインジケーターと、23mmの公称サイズを有する人工心臓弁に対応する第2のボリュームインジケーターと、公称サイズが26mmの人工心臓弁に対応する第3のボリュームインジケーターと、公称サイズが29mmの人工心臓弁に対応する第4のボリュームインジケーターとを含む。
【0027】
別の代表的な実施形態では、アセンブリは、シリンジに取り付けるための取り外し可能なボリュームインジケーターであって、インジケーター本体と、その長さに沿って間隔を置いて配置された膨張しるしとを備えるボリュームインジケーターと、人工心臓弁を移植するための送達装置であって、その遠位部分に取り付けられたバルーンを備える送達装置とを具備する。
【0028】
いくつかの実施形態では、アセンブリは、ある範囲の拡張直径内で拡張機能直径まで拡張可能である人工心臓弁をさらに備えることができ、膨張しるしは、この範囲の拡張直径に対応する。
【0029】
別の代表的な実施形態では、キットは、同じシリンジに取り付けるための少なくとも第1および第2の取り外し可能なボリュームインジケーターであって、各ボリュームインジケーターは、インジケーター本体およびその長さに沿って間隔を置いて配置された膨張しるしを備える、少なくとも第1および第2の取り外し可能なボリュームインジケーターを備えることができ、第1のボリュームインジケーターの膨張しるしは、第1の人工弁のある範囲の拡張直径に対応し、かつ、第2のボリュームインジケーターの膨張しるしは、第1の人工弁よりも大きい第2の人工弁のある範囲の拡張直径に対応する。いくつかの実施形態では、キットは、第3のボリュームインジケーターおよび第4のボリュームインジケーターをさらに備えることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、キットは、第1の人工心臓弁および第2の人工心臓弁を移植するために使用できる送達装置をさらに備えることができ、装置は、その遠位部分に取り付けられたバルーンを備える。いくつかの実施形態では、キットは、第1の人工心臓弁および/または第2の人工心臓弁をさらに備えることができる。
【0031】
本開示のさまざまな新機軸は、組み合わせてまたは別々に使用することができる。この要約は、以下の詳細な説明でさらに説明される簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供されている。この要約は、特許請求された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではない。本開示の上述およびその他の目的、特徴および利点は、添付の図を参照してなされる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】人工心臓弁を移植するための送達装置の代表的な実施形態の側面図である。
【
図2】人工心臓弁の代表的な実施形態の斜視図である。
【
図3】一実施形態による、送達装置のバルーンを膨張させるために使用することができるシリンジの代表的な実施形態の斜視図である。
【
図4A】シリンジに取り付けることができる異なるボリュームインジケーターの正面図である。
【
図4B】シリンジに取り付けることができる異なるボリュームインジケーターの正面図である。
【
図4C】シリンジに取り付けることができる異なるボリュームインジケーターの正面図である。
【
図5】
図4Aのボリュームインジケーターの端面図である。
【
図6】
図3のシリンジの本体上に配置した状態で示された、
図4Aのボリュームインジケーターの斜視図である。
【
図7】
図3のシリンジに配置されたボリュームインジケーターの実施形態の斜視図である。
【
図8】
図3のシリンジに配置されたボリュームインジケーターの実施形態の正面図である。
【
図9】シリンジ本体に取り付けられた状態で示されたボリュームインジケーターの別の実施形態の斜視図である。
【
図10】
図9のボリュームインジケーターの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特定の実施形態では、患者の血管系を介して人工経カテーテル心臓弁を移植するための送達アセンブリは、バルーンに半径方向に捲縮された人工弁を半径方向に拡張する目的で送達装置のバルーンを膨張させるためのシリンジを含む。バルーンは、送達装置のシャフトの遠位端部に取り付けることができる。バルーンおよび捲縮された人工弁は、イントロデューサーシースを介して患者の血管系に挿入することができ、バルーンおよび捲縮された人工弁が体内の適切な位置に到達すると、人工弁を治療部位(例えば天然の大動脈弁)で拡張させることができる。
【0034】
図1は、図示の人工心臓弁10などの人工心臓弁を送達するように構成された、一実施形態に係る送達装置100を示す。人工心臓弁10は、例えば、天然の大動脈弁に移植されるように構成された人工大動脈弁であってもよいが、他の実施形態では、人工弁10は、心臓の他の天然の弁(天然の僧帽弁、三尖弁または肺弁)のいずれかに移植することができる。送達装置100は、概して、ハンドル102と、ハンドル102から遠位方向に延びる第1の細長いシャフト104と、ハンドル102から遠位方向にかつ第1のシャフト104を通って同軸状に延びる第2の細長いシャフト106とを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のシャフト104は、患者の血管系を通して送達装置を操縦する際に使用するための調整可能な曲率を有する操縦可能なガイドカテーテルとして構成することができる。例えば、第1のシャフト104は、操縦可能な遠位セクション110を含むことができ、その曲率は、患者の血管系を通してデバイスを案内するのを助けるために、オペレータによって調整することができる。ステアリングまたはプルワイヤ(図示せず)は、シャフト104を通って延在することができ、そして遠位セクション110に沿った位置に固定された遠位端部と、ハンドル102上の、図示のノブ112などの調整機構に動作可能に接続された近位端部とを有することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1のシャフト104および第2のシャフト106は、患者の体内の移植部位での人工弁10の送達および位置決めを容易にするために、互いに対して(軸方向および/または回転方向に)移動することができる。ハンドル102は、シャフト104,106間の相対運動を生み出すための調整機構を含むことができる。例えば、ハンドルは、第2のシャフト106に動作可能に接続されると共に、第1のシャフト104に対する近位および遠位方向の第2のシャフト106の軸方向運動を生み出すように構成されたスライド可能な調整ノブ114を含むことができる。
【0037】
膨張可能なバルーン116は、バルーンカテーテルと呼ばれ得る第2のシャフト106の遠位端部に沿って取り付けることができる。
図1に示されるように、人工弁10は、患者の血管系内に送達するために、バルーン116の周りに半径方向に捲縮させることができる。人工弁10が所望の移植部位(例えば天然の大動脈弁内)に到達すると、バルーンを膨張させて、周囲の組織に抗して人工弁を半径方向に拡張することができる。
【0038】
送達装置100は、ハンドル102から延びる近位ポート118を含むことができる。近位ポート118は、膨張流体をバルーン116に送達するために、送達装置の長手方向に延びる流体通路と流体連絡している。ハンドル102はサイドアーム120をさらに含むことができ、これは、例えば、ハンドル102によって画定される管腔と流体的に連絡する内部通路を有するフラッシュチューブであってもよい。フラッシュチューブは、当該フラッシュチューブがシャフト106および/またはシャフト104によって画定される内部通路とつながるシール部材において、あるいはシール部材に隣接して終端してもよい。
【0039】
近位ポート118は、バルーン116を膨張させ、任意選択で内側および外側バルーンカテーテルシャフト間の空間を洗い流すために流体源(例えば生理食塩水で満たされたシリンジ、
図3参照)に流体的に接続可能な流体通路によって形成されてもよい。したがって、近位ポート118の流体通路は、バルーン116を膨張させて人工弁10を展開するために、流体源からの流体が流体通路を通り、シャフト間の空間を通り、そしてバルーン内へと流動することができるように、第1および第2のシャフト間の環状空間と流体接続状態となることができる。代替実施形態では、近位ポート118は、流体源からバルーン116へと膨張流体を送達するための流体通路として機能する第2のシャフト106の管腔と連通状態となることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、近位ポート118は、(例えば医師による手動操作によって)開位置と閉位置との間で動作可能なコック(図示せず)をさらに含むことができる。コックが開位置にあるとき、流体源からの流体は流体通路内に流れ込むことができ、コックが閉位置にあるとき、流体源からの流体は流体通路に流れ込むのが妨げられる。
【0041】
第1および第2のシャフト104,106は、いくつか例を挙げると、ナイロン、編組ステンレス鋼ワイヤ、またはポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標)として市販されている)などのさまざまな適切な材料のいずれかから形成することができる。シャフトは、その長さに沿ったシャフトの柔軟性を変えるために、異なる材料から形成された長手方向セクションを有することができる。第2のシャフト106は、ガイドワイヤとの滑り摩擦を最小限に抑えるために、テフロン(登録商標)から形成された内側ライナーまたは内層を有することができる。
【0042】
送達装置100および送達装置を使用して人工弁を送達し展開するための方法に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許出願公開第2017/0065415号明細書中に見出すことができる。本明細書に開示されるデバイスを用いて人工心臓弁に移植するために使用することができる送達装置の他の例は、米国特許第8,568,472号および米国特許第9,061,119号に記載されている。
【0043】
図2を参照すると、人工心臓弁10は、ステントまたはフレーム12と、フレームによって支持されかつ人工弁を通る血流を調節するように構成された弁構造体14とを備える。いくつかの実施形態では、人工弁10は、天然の大動脈弁に移植されるように構成され、例えば、上記の送達装置100を使用して体内に移植することができる。フレーム12は、バルーン116の膨張時に、人工弁が、捲縮された半径方向に圧縮された形態(
図1)から半径方向に拡張された形態(
図2)へと拡張する際にフレーム12が塑性拡張するように、ステンレス鋼、ニッケルベースの合金(例えば、ニッケル-コバルト-クロム合金)、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの塑性拡張可能な材料から構成されてもよい。
【0044】
弁構造体14は、フレームの内側に取り付けられた複数のリーフレット16を備えることができる。各リーフレット16の対向面は、隣接するリーフレットと対になって、弁構造体の交連18を形成することができる。交連18は、補強部材20を介してフレームに取り付けることができる。人工弁10はまた、フレームの外側に取り付けられたシーリング部材22を含むことができる。シーリング部材22は、人工弁を周囲の組織に対してシールし、弁周囲の漏出を防止または最小化するのを助けるように構成される。リーフレット16は、ウシ心膜組織(または他の供給源からの心膜組織)などの天然組織、またはさまざまな布または非布材料(例えばポリウレタン)のいずれかなどの合成材料を含む、さまざまな適切な生体適合性材料のいずれかから製造することができる。補強部材20およびシーリング部材22は、望ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)布などの布材料でできているが、非布材料および天然組織も使用することができる。人工弁10のさらなる詳細は、米国特許出願公開第2018/0028310号明細書に開示されている。本明細書に開示されたデバイスおよび方法のいずれかを使用して展開することができる他のタイプの人工心臓弁は、米国特許第7,510,575号、第7,993,394号および第9,393,110号明細書に記載されている。
【0045】
特定の実施形態では、人工弁10は、ある範囲の拡張直径内の外径を有する拡張状態へと半径方向に拡張することができる。これにより、医師は、人工弁10を、その中に人工弁が移植される天然の弁輪の直径に厳密に対応するサイズまで拡張することができる。例えば、一つの特定の実施形態では、23mmの「公称」サイズを有する人工弁10を、約21.5mmから約23.3mmまでの直径範囲内の直径へと拡張することができる。本明細書で使用される場合、人工弁の「公称」サイズは、拡張状態の人工弁の外径に対応する近似値である。人工弁の拡張直径のサイズ範囲には、通常、補綴値の公称サイズが含まれる。通常、必ずしもそうとは限らないが、人工弁の公称サイズは、拡張された直径のサイズ範囲の上限を規定するか、あるいはサイズ範囲の上限に近い。
【0046】
人工心臓弁10が所望の移植位置に配置されると、医師は、適切な量の膨張流体をバルーン116に導入して、人工弁が天然の弁輪を過度に拡張することなく天然の心臓弁の弁輪と確実に係合する所望の直径まで、人工弁を半径方向に拡張させることができる。
図3は、膨張流体をバルーン116に注入するために使用できるシリンジ126の一例を示している。いくつかの実施形態では、人工弁10の最終直径は、既知の技術を使用して、天然の弁輪を測定することによって事前に決定することができる。他の実施形態では、人工弁の最終的な直径は、移植処置中に、例えば、人工弁が拡張されているときに決定することができる。シリンジ126は、以下でさらに説明するように、医師が人工弁を所望の最終直径まで拡張するのに必要な流体の量をより正確に選択しまたは測定することを可能にするボリュームインジケーター200(
図4A~4C)を装備することができる。
【0047】
図3を参照すると、図示の実施形態では、シリンジ126は、膨張流体を収容するための内部チャンバーを有する円筒形シリンジ本体128を有することができる。シリンジ本体128は、直径D
1、第1の端部130および第2の端部132を有する。シリンジ126は、本体128の第1の端部130から延びる導管144(例えば医療グレードの可撓性ポリマーチューブ)を含むことができる。本体128の第1の端部130は、本体128の内部チャンバーを導管144の隣接する端部と流体的に接続する開口によって形成することができる。送達装置100を患者の体内に導入する前に、導管144の反対側の端部(図示せず)を、送達装置の近位ポート118に流体的に接続することができる。例えば、導管144は、回転するルアーコネクタを使用して、近位ポート118に接続することができる。
【0048】
シリンジ126は、本体128の内部チャンバー内へと延びるシャフト136と、このシャフト136の一端に取り付けられ、本体128の内部チャンバー内に配置されたプランジャーヘッド138(
図8)と、シャフト136の他端に取り付けられたプランジャハンドル140とを備えたプランジャー134をさらに備えることができる。本体128の第2の端部132は、プランジャー134のシャフト136がそれを通って延びる開口を有することができる。圧力計150をシリンジ本体128に取り付けることができ、それを、流体がシリンジから送達装置内に排出されているときの膨張流体の圧力を測定するために使用することができる。
【0049】
シリンジ把持部分142は、本体の第2の端部132に対して取り付けることができ、そしてそれを通ってプランジャシャフト136が延びる中央開口を含むことができる。したがって、使用中、医師は、本体128内のプランジャーヘッド138の位置を調整するために、片手でシリンジ把持部分142を把持し、他方の手でプランジャー134のハンドル140を把持することができる。医師は、プランジャー134をシリンジ本体128から引き離すことにより(これによって本体の内部チャンバー内に流体が引き込まれる)、所望の量の膨張流体でシリンジ本体を満たすことができる(導管144が別の膨張流体源に流体的に接続されていると仮定する)。代替的に、膨張流体を本体の第2の端部132の開口を経て注ぐことができるように、プランジャー134をシリンジ本体128から完全に取り外すことによって膨張流体をシリンジ本体内に導入することができる。医師は、プランジャー134をシリンジ本体の内部チャンバー内にさらに押し込むことによって、流体をシリンジ本体128から押し出すことができる。
【0050】
シリンジ本体128は、ユーザーが膨張流体の量および本体内のプランジャーヘッド138の位置を見ることができるように、透明または少なくとも半透明であってもよい。いくつかの実施形態では、シリンジ本体の外面は、ユーザーが本体128内の膨張流体の量を測定することを可能にする一連のマーキングまたは測定しるし146を備えることができる。他の実施形態では、シリンジは、測定しるしを完全に欠くことができる(例えば、それはブランクシリンジであってもよい)。
図3に示されるように、図示の実施形態では、測定しるし146は、(シリンジ本体の出口である)本体128の第1の端部130に隣接する最小値に対応するボリュームマーキングおよび本体の第2の端部132に隣接する最大値に対応するボリュームマーキングを伴って配置される。このようにして、ユーザーが、プランジャハンドル140を引くことによって供給源から導管144を介してシリンジ本体128内に流体を引き込むとき、ユーザーは、プランジャーヘッド138を流体の望ましい量に対応するボリュームマーキングと位置合わせすることによって、所定量の流体をシリンジ本体128内に引き込むことができる。
【0051】
シリンジ本体128は、本体の外面から外向きに突出する一つ以上の第1の係合要素148をさらに備えることができる。各係合要素148は、図示されるように小さな円筒形の突起であってもよいが、係合要素は、他の実施形態では、断面に関して、さまざまなそれ以外の形状(例えば、正方形、長方形、三角形、楕円および/またはそれらの組み合わせ)のいずれかを有することができる。いくつかの実施形態では、一つ以上の第1の係合要素148は、シリンジ本体128の長さに沿って互いに離間することができる複数の第1の係合要素を備えることができる。他の実施形態では、一つ以上の第1の係合要素148は単一の係合要素であってもよい。特定の実施形態では、単一の第1の係合要素148は、シリンジの第1の端部130に配置されてもよく、その表面(例えば
図9に示される配向で上向きの表面)から外向きに延びることができる。
【0052】
特定の実施形態では、シリンジ126は、シリンジ本体上に一つ以上の第1の係合要素148を含むように改変された、Atrion Medical(アラバマ州アラブ)から入手可能なモデルQL38シリンジからなる。
【0053】
既知の送達システムは、典型的には、シリンジ本体128上のボリュームインジケーター146の一つに対応する所定量の流体で膨張させられるバルーンを使用して拡張される一つの機能的拡張直径のみを有する人工弁を備えている(通常、流体の量は整数である)。これにより、ユーザーは処置に必要な正確な量の流体をシリンジに充填できる。だが、人工弁に複数の機能的拡張直径があり、代わりに、ある範囲の拡張直径内で拡張させることができる場合、必要なボリュームが二つのボリュームマーキング146の間にある場合には人工弁を所望のサイズへと拡張させるために必要な正確な量の膨張流体をシリンジ本体内に引き込むことがユーザーにとって難しいことがある。
【0054】
図4A~4Cは、シリンジ126などのシリンジで使用するための取り外し可能なボリュームインジケーター200a,200b,200cのセットの代表的な実施形態を示す。取り外し可能なボリュームインジケーターは、必要なボリュームがシリンジの既存のボリュームマーキングのいずれとも一致しない場合に、正確な量の流体をシリンジに引き込むために使用できる。説明を容易にするために、参照番号200は、各ボリュームインジケーター200a,200b,200cに共通の特徴を説明するときに使用される。各ボリュームインジケーター200は、インジケーター本体内に形成された窓部分204を有するインジケーター本体202を備えることができる。いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーターは、シリンジ本体128上の一つ以上の対応する第1の係合要素148と嵌合することができる一つ以上の第2の係合要素206をさらに備えることができる。
【0055】
図4A~4Cに示されるように、各ボリュームインジケーター200は、公称人工弁サイズに対応することができる。いくつかの実施形態では、単一のボリュームインジケーターは、対応するサイズの人工弁および/または適切な送達装置と共にパッケージ化され、かつ/または販売されてもよい。他の実施形態では、2つ以上のボリュームインジケーターは、アセンブリまたはキットを形成することができ、キットのボリュームインジケーターは、エンドユーザへの供給のために一緒にパッケージ化することができる。いくつかの実施形態では、キットは、送達装置、人工弁、シリンジ、および/またはこれらの要素の任意の組み合わせをさらに含むことができる。例示的なキットは、二つ以上のボリュームインジケーター200、送達装置100、および人工弁10を含むことができる。代替的に、人工弁10は、二つの以上のボリュームインジケーターおよび送達装置を含むキットとは別個に包装および販売することができる。キットは、同じ送達装置で使用できる、さまざまな公称バルブサイズの数に等しい数のボリュームインジケーターを含むことができる。別の例示的なアセンブリは、三つのボリュームインジケーター200および送達装置100を含むことができる。さらに別の例示的なアセンブリは、二つ以上のボリュームインジケーター200およびシリンジ126を含むことができる。
【0056】
移植処置の間、医師は、例えば、キット内の複数のボリュームインジケーター200にアクセスし、適切なサイズの人工弁に対応する適切なボリュームインジケーターを選択することができる。さまざまなボリュームインジケーターにより、医師によって最終的に選択された人工弁10のサイズに関係なく、単一のシリンジ126を移植処置のために使用することができる。各ボリュームインジケーター200は、対応する公称人工心臓弁サイズを示すために、ラベル付け、マーク付け、色付けおよび/またはパターン化することができる。図示の実施形態では、各ボリュームインジケーターは、対応する人工弁の公称直径を示す成形されたエンボス208を有する。他の実施形態では、ボリュームインジケーター200は、例えば、パッド印刷、レーザー彫刻、またはその他のマーキング方法を使用してラベル付けすることができる。
【0057】
ここで
図4Aを参照すると、インジケーター本体202は長さL
1を有することができ、ボリュームインジケーター200がシリンジ126上に配置されるときに、シリンジ本体128の測定しるし146の少なくとも一部をカバーするようにサイズ設定されてもよい(そのような測定しるしが存在する場合)。特定の実施形態では、本体202は、シリンジ本体128の全長またはシリンジ本体128の実質的全長を延ばし、シリンジ本体128上の測定しるし146の全てをカバーする。いくつかの実施形態では、インジケーター本体202は、シリンジ126の測定しるし146が完全に隠されるか、部分的に隠されるか、さもなければ最小化されるように、不透明または実質的に不透明であってもよい。したがって、ボリュームインジケーター200は、医師がシリンジ本体128上の測定しるし146を、ボリュームインジケーター200自体によって示されるボリュームと混同することを防ぐのに役立つ。ボリュームインジケーターがブランクシリンジと共に使用される他の実施形態では、ボリュームインジケーターは、不透明、透明、実質的に透明、または半透明であってもよい。
【0058】
図5に示されるように、インジケーター本体202は、シリンジ本体128に取り外し可能にクリップで留まることが、すなわち「スナップ」嵌合できるように、幅W
1の開口を有するC字形の断面を有することができる。開口の幅W
1は、シリンジ本体128が開口を通過できるようにするために本体202がわずかに変形または拡張するように、シリンジ本体128の直径D
1よりもわずかに小さくてもよい。開口の幅W
1は、シリンジ本体128をボリュームインジケーター200内に保持するのを助けることができる。特定の実施形態では、インジケーター本体202は、インジケーター本体202がシリンジ本体128の外面に対して、緊密嵌めあるいはとまり嵌めを形成するように、シリンジ本体の外径D
1と同じか、わずかに小さい内径D
2を有することができる。
【0059】
再び
図4A~4Cを参照すると、いくつかの実施形態では、一つ以上の第2の係合要素206(例えば、
図4A~4Cに示される実施形態では三つ)は、シリンジ本体128から延びる対応する第1の係合要素148と嵌合するように構成することができる(例えば
図3参照)。図示の実施形態に示されるように、一つ以上の第2の係合要素206は、インジケーター本体202の縁部に沿って形成されかつ一つ以上の第1の係合要素148を受け入れるように成形されたC字形の切り欠きであってもよい。さらに、一つ以上の係合要素206は、対応する第1の係合要素との解放可能な接続部を形成するように構成することができる。
【0060】
例えば、
図4Bに示されるように、第2の係合要素206aおよび206cは、対応する第1の係合要素148とスナップ嵌合接続部を形成するように構成することができ、一方、第2の係合要素206bは、対応する第1の係合要素148と嵌合するように成形できるが、対応する第1の係合要素148とのスナップ嵌合あるいは他のタイプの確実な接続部を形成しない。各第2の係合要素206a,206cは、対応する第1の係合要素148の周りに配置されるように構成された二つの弧状の湾曲可能なアーム230を備えることができる。アーム230は、対応する第1の係合要素148がアームの自由端の間に挿入され、次に第1の係合要素148が完全にアームの間に配置された際にその元の形状へと戻るときに、互いに離れるように撓むようなサイズおよび形状とされる。スナップ嵌合接続部は、ボリュームインジケーター200をシリンジ本体128に対して固定するのを助け、そしてシリンジ本体に対するボリュームインジケーターの移動を防ぐ。代替実施形態では、第2の係合要素の全てまたは第2の係合要素のうちの一つのみが、対応する第1の係合要素とスナップ嵌合接続部を形成するように構成できることに留意されたい。
【0061】
図示の実施形態では、第2の係合要素206は、対応する形状の円筒形の第1の係合要素148を受け入れるように構成されたC字形の切り欠きであるが、他の実施形態では、第2の係合要素206は、第1の係合要素148と嵌合するように構成された、さまざまなサイズおよび形状(例えば、円形、長方形、楕円形など)のいずれかを有していてもよいことにも留意されたい。
【0062】
さらに、代替実施形態では、第2の係合要素206の一つ以上は、(例えば、スナッピング、クリッピング、または第1の係合要素を第2の係合要素内にあるいはそれを経て挿入することにより)それぞれの第1の係合要素148と解放可能な接続部を形成するように構成された、インジケーター本体202に形成された開口であってもよい。そのような実施形態の例について、
図9および
図10を参照して、以下でより詳細に説明する。
【0063】
図4Cを参照すると、いくつかの実施形態では、一つ以上の第2の係合要素206は、インジケーター本体202の長さに沿って互いに離間させて配置することができる。いくつかの実施形態では、一つ以上の第2の係合要素206の二つ以上は、互いに同一直線上に配置されてもよい。隣接する係合要素206間の距離は、ボリュームインジケーター200が一方向でのみシリンジ本体128に接続され得るように変化することができ、シリンジ本体へのボリュームインジケーターの誤った取り付けによる誤測定を防止する。例えば、図示の実施形態では、第2の係合要素206aおよび206bは、第1の距離X
1の間隔で配置され、第2の係合要素206bおよび206cは、第2の距離X
2の間隔で配置される。第1および第2の距離X
1およびX
2は互いに異なっていてもよい。例えば、X
1は、
図4Cに示されるように、X
2よりも大きくてもよい。シリンジ本体128上の第1の係合要素148は、対応して間隔を空けることができる。図示の実施形態では、係合要素148,206は、ボリュームインジケーター200がシリンジ本体128上にのみ配置され、サイズインジケーター208がシリンジ本体の第2の端部132に向けられ得るように、互いに間隔を置いて配置される。
【0064】
窓部分204は、インジケーター本体202内に形成することができ、長さL
2にわたって延在することができ、ここで、L
2はインジケーター本体L
1の長さよりも短い。再び
図4Aを参照すると、いくつかの実施形態では、長さL
2は、インジケーター本体の長さL
1の大部分よりも短くてもよい(すなわち長さL
1の50%未満)。したがって、図示の実施形態の窓部分204(これは以下で説明する膨張しるし214を含む)は、シリンジの総ボリューム容量よりもはるかに少ない特定の範囲のボリュームを測定するために使用される。しかしながら、代替実施形態では、窓部分204(および対応するしるし214)は、長さL
1の50%より大きいか、あるいは長さL
1に実質的に等しい長さL
2にわたって延在することができる。窓部分は、ボリュームインジケーターがシリンジ本体に配置されたときにシリンジ本体128の第1の端部130の近くに配置されるように構成された第1の端部210と、ボリュームインジケーターがシリンジ本体に配置されたときにシリンジ本体128の第2の端部132の近くに配置されるように構成された第2の端部212とを有することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、
図4~10に示されるように、窓部分204は、プランジャー134の一部(例えばヘッド138)が窓部分を通して見えるように、インジケーター本体202を通って完全に延びる開口または孔であってもよい。他の実施形態では、窓部分204は、プランジャー134の一部が窓を通して見えるように構成された透明、半透明または乳白色の材料から形成された本体202の一部分であってもよい。
【0066】
窓部分204は、特定の人工弁の直径の範囲内で、人工心臓弁を選択された直径へと拡張するのに必要な流体の量に対応する膨張しるし214をさらに備えることができる。膨張しるし214は、人工心臓弁を異なる直径へと拡張するために必要な流体の量を医師に視覚的に示す一連のマーキングまたは突起であってもよい。公称直径23mmの人工弁と共に使用するためのボリュームインジケーター200aでは、膨張しるしは、例えば、弁をそれぞれ22.5mm、23mm、そして23.5mmの直径へと拡張するのに必要な流体のボリュームに対応することができる。公称直径26mmの人工弁と共に使用するためのボリュームインジケーター200bでは、膨張しるしは、例えば、弁をそれぞれ直径24.5mm、25.8mm、そして27mmへと拡張するのに必要な流体のボリュームに対応することができる。公称直径29mmの人工弁と共に使用するためのボリュームインジケーター200cでは、膨張しるしは、例えば、弁をそれぞれ27.5mm、28.8mm、そして30.0mmの直径へと拡張するのに必要な流体のボリュームに対応することができる。公称直径が21mmの人工弁で使用するための例示的なボリュームインジケーターでは、膨張しるしは、例えば、弁をそれぞれ直径20.5mm、21mm、そして21.5mmへと拡張するのに必要な流体のボリュームに対応することができる。
【0067】
図4A~4Cに示されるように、各インジケーター200a,200b,200cの窓部分204は、対応する人工弁の公称サイズおよび直径範囲に応じて、インジケーター本体202の長さに沿った異なる位置に配置することができる。窓部分の位置は、それぞれの異なる公称サイズの人工弁を、対応する範囲の直径へと拡張するために使用されるシリンジのボリュームの範囲に対応することができる。ボリュームインジケーター200間のこの変動性により、同じシリンジ126を各ボリュームインジケーターと共に、したがって各人工弁と共に使用することができる。他の実施形態では、窓部分204は、各ボリュームインジケーター200について同じ位置に配置することができ、膨張しるし114は、窓204の長さに沿って、対応する人工弁の公称サイズおよび直径範囲に応じて、異なる位置に配置することができる。窓部分204内のボリュームしるし210の位置は、ある範囲の直径に対応する、それぞれの異なる公称サイズの人工弁を拡張するために使用される、ある範囲のシリンジボリュームに対応することができる。
【0068】
ここで
図4Bを参照すると、図示の実施形態では、膨張しるし214は、窓部分204の両辺218,220から内側に延びる三角形の突起216である。各突起は、図示されるように、窓部分の幅を部分的に横切って延びることができる。他の実施形態では、膨張しるしは、窓部分204の幅全体にわたって延びることができる。言い換えれば、しるしは、窓部分の長さに沿って間隔を置いて配置された複数のバンドを含むことができ、各バンドは、窓部分の一方の辺218から他方の辺220まで延びる。さらに他の実施形態では、膨張しるしは、窓部分の辺218,220の切り欠きであってもよい。膨張しるし214は、医師が正しい量の流体がシリンジ本体内に含まれているかどうかを迅速かつ容易に評価できるように、各インジケーターに対応する人工心臓弁の直径を示すために、マーク付け(例えば番号付け)、色付けおよび/またはパターン化することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、膨張しるしは、金属、プラスチックおよび/または他の材料から作ることができる。いくつかの実施形態では、膨張しるしは、窓部分と一体的に形成することができる。代替的に、膨張しるしを別個に形成し、溶着、接着剤および/またはネジなどの機械的手段などによって、製造プロセスの後半で接合することができる。窓部分がインジケーター本体の透明部分である実施形態では、膨張しるしは、窓部分と一体的に形成された、着色および/またはパターン化された、透明または半透明のバンドであってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、膨張しるしは、弁固有の情報(例えば、シリンジ内の流体の量または各指示マークに関する展開された弁の直径)を伝達するマーキングを含むことができる。これらのマーキングは、例えば、成形エンボス加工、パッド印刷、レーザー彫刻、または他のマーキング方法を使用して形成することができる。
【0071】
一つの特定の実施形態では、膨張しるし214は、窓の第1の端部210から第2の端部212まで、順次、ますます大きな直径サイズを示すことができる。例えば、ここで
図7を参照すると、公称直径23mmを有するバルブと共に使用するためのボリュームインジケーター200は、21.5mmの直径に対応する第1の膨張インジケーター214aと、直径22.7mmに対応する第2の膨張インジケーター214bと、23.3mmの直径に対応する第3の膨張インジケーター214cとを有することができる。
【0072】
使用時、
図7のボリュームインジケーター200がシリンジ上に置かれるとき、医師は、例えば、プランジャー134のプランジャーヘッド138の端面150が選択された直径サイズに対応する膨張インジケーター214と整列するまで、(例えば導管144が流体源に接続された状態でプランジャー134を引っ張ることによって)シリンジを満たしてもよい。他の実施形態では、シリンジは、プランジャーヘッド138上のOリングを、選択された直径サイズに対応する膨張インジケーター210と整列させることによって満たされてもよい。このように整列させられると、シリンジ本体は、人工弁10を選択された直径サイズへと拡張するために必要な量の流体を内部に保持する。例えば、人工弁を22.7mmの直径へと拡張するために、医師は、プランジャー134のプランジャーヘッド138が第2の膨張インジケーター214bと整列するまでシリンジを満たすことができる。次に、以下でより詳細に説明するように、人工弁を拡張させることができる。流体の量を測定するために使用されるプランジャーヘッド138の部分と整列させられたとき、ボリュームしるし214が膨張に必要なボリュームを提供する位置に配置されている限り、プランジャーヘッド138の任意の部分を使用して、人工弁を選択されたサイズへと膨張させるのに必要な流体の量を測定できることに留意されたい。
【0073】
別の実施形態では、ボリュームインジケーター上の膨張しるしは、順次、窓204の第2の端部212から第1の端部210まで、ますます大きくなる直径サイズを示すか、あるいはそれに対応することができる。シリンジ本体全体が膨張流体で満たされていると仮定すると、各インジケーターは、人工弁を選択された直径へと拡張するためにシリンジ126の第2の端部132から始まって、シリンジ本体から排出されるであろう流体の量に対応することができる。例えば、
図8を参照すると、公称直径23mmを有する人工弁と共に使用するためのボリュームインジケーターは、21.5mmの直径に対応する第1の膨張インジケーター222a、22.7mmの直径に対応する第2の膨張インジケーター222b、そして23.3mmの直径に対応する第3の膨張インジケーター222cを有することができる。
【0074】
いくつかの実施形態(例えば
図9参照)では、ボリュームインジケーター200の本体202は、使用中、ユーザーによるボリュームインジケーター200の把持状態を向上させるように構成された把持部分、例えば、複数の間隔を置いて配置された隆起226をさらに備えることができる。シリンジは、シリンジ本体128の第2の端部132に環状リップ156を備えることができる。ボリュームインジケーター200の本体202は、ボリュームインジケーター200の近位端部228がリップ156に当接するような長さL
1を有することができる。シリンジを使用して人工弁を膨張させる間、ユーザーは、ボリュームインジケーター200の隆起226を把持し、シリンジ126のプランジャー136を押し下げることができる。プランジャー136を押すことで、シリンジ/ボリュームインジケーターセンブリに遠位方向の力が加えられるが、この操作は、アセンブリの移動を防止するために、ユーザーが対応する近位方向の力を加えることを必要とする。近位および遠位方向の力の作用中の、シリンジ126のリップ156に対するボリュームインジケーター200の近位端部228の当接は、ボリュームインジケーター200がシリンジ126から外れるのを抑制するのに役立つ。
【0075】
使用中、
図8のボリュームインジケーター200がシリンジ126上に配置されると、(例えば上記方法を使用して)シリンジ本体128を流体で完全に満たすことができる。人工弁を拡張するために、いったんシリンジが送達装置に結合されると、医師は、プランジャー134のプランジャーヘッド138の端面150が、選択された直径に対応する膨張インジケーターと整列させられるまで、シリンジのプランジャー134を(例えば、それをシリンジ本体に押し込むことによって)作動させ、これによって人工弁を選択された直径へと拡張するために必要な量の流体を移動させることができる。例えば、人工弁を直径21.5mmへと拡張させるために、医師は、シリンジを完全に満たし、シリンジを送達装置100に流体的に接続し、人工弁を所望の移植部位に送達し、そしてプランジャーヘッド138の端面150が膨張インジケーター222aに到達するまでプランジャーを作動させることができる。これにより、人工弁は選択された直径へと拡張される。人工弁のさらなる(例えば直径21.5mmから22.7mmへの)拡張が必要な場合には、プランジャーを、以下で詳細に説明するように、さらに作動させることができる。
【0076】
患者の心臓に人工心臓弁を移植するための一つの特定の方法において、医師は、特定の患者の解剖学的ばらつきに対応するサイズとされた拡張された直径範囲を有する人工心臓弁10を選択することができる(例えば、人工弁が埋め込まれる天然の弁輪に最も近い公称サイズを選択する)。必要に応じて、従来技術および/またはデバイスを使用して、適切なサイズの人工心臓弁の選択を容易にするために人工心臓弁が埋め込まれる天然の心臓弁輪のサイズを測定することができる。いったん人工弁のサイズが選択されると(例えば、21mmの弁、23mmの弁、26mmの弁、または29mmの弁)、医師は、その人工弁の直径範囲に対応する膨張しるし214を有する対応するボリュームインジケーター200を選択することができる。
【0077】
ここで
図6を参照すると、選択されたボリュームインジケーター200は、(例えば、カバーをシリンジ本体にクリップ留めまたはスナップ嵌合することによって)シリンジ本体128上に配置することができる。ボリュームインジケーターの第2の係合要素206は、シリンジ本体128の第1の係合要素148と係合して、それと解放可能な接続部を形成することができ、これによってボリュームインジケーターをシリンジ本体の所定の位置に保持する。いったんボリュームインジケーター200がシリンジ126に取り付けられると、医師はシリンジ本体128を膨張流体(例えば生理食塩水)で満たすことができる。
【0078】
膨張流体のボリュームがシリンジ本体の第1の端部130から測定される実施形態では、充填中、プランジャーヘッド138の端面150は、選択された膨張弁直径に対応する選択された膨張インジケーター214と整列させることができる(例えば
図7参照)。このようにして、シリンジ本体は、人工心臓弁10を選択された直径へと膨張させるのに必要な適切な量の流体で満たされる。この時点で、ボリュームインジケーター200をシリンジから取り外すか、または処置の残りの間、その場所に保持することができる。
【0079】
いったん充填されると、シリンジ126は、チューブ144を近位ポート118に接続することなどによって、近位ポート118において送達装置100のハンドル102に流体的に結合することができる。人工心臓弁10は、送達装置100の遠位端部上のバルーン116上に捲縮状態で取り付けることができる。送達装置100を使用して人工心臓弁10を移植する代表的な方法は、以下のように進めることができる。送達装置の遠位端部は(人工弁10と共に)、例えば、大腿動脈の切開を介して、患者の血管系に導入することができる。送達装置100の遠位端部は(人工弁10と共に)、大腿動脈および大動脈を通って本来の大動脈弁に向かって前進させることができる。いったん人工心臓弁10が所望の移植位置(典型的には天然の大動脈弁輪内)に配置されると、人工心臓弁を展開することが(例えば放射状に拡張することが)できる。移植処置に関する追加の詳細は、例えば、米国特許出願公開第2017/0065415号明細書に記載されている。
【0080】
人工弁10を展開するために、医師は、シリンジ内の流体の総量が送達装置の流体通路を通ってバルーン116内に流れ、それを膨張させ、人工弁10を選択された直径へと展開するように、シリンジ126のプランジャー134を押し下げることができる。
【0081】
図8を参照すると、膨張流体のボリュームがシリンジ本体128の第2の端部132から測定される実施形態では、シリンジ本体は、例えば、プランジャー134のプランジャーヘッド138が第2の端部132に配置されるように流体で完全に満たすことができる。このようにして、シリンジ本体は、人工弁10を人工弁の直径の範囲内の直径サイズのそれぞれへと順次膨張させるのに十分な流体で満たされる。完全に満たされると、シリンジ126は送達装置のハンドルに流体的に結合することができ、そして人工弁10は、上記のように、所望の移植位置まで前進させることができる。
【0082】
人工心臓弁10が所望の移植位置に到達すると、プランジャーを、プランジャーヘッド138の表面150が第1の直径を示す膨張インジケーター222aと整列するまで押し下げることによって、人工弁を、例えば、上記範囲内の第1の直径(例えば上記範囲内の最小直径)へと展開することができる。次に、医師は、天然の弁輪内での人工弁の適合性を評価することができる。人工弁のさらなる拡張が必要な場合、人工弁は、例えば、プランジャーヘッド138の端面150が第2の直径を示す膨張インジケーター222bと整列するまでプランジャーを押し下げることによって、人工弁を、例えば、上記範囲内の第2の直径へと拡張することができる。このプロセスは、人工弁が天然の弁輪に最適な直径に拡張されるまで、必要に応じて繰り返すことができる。例えば、人工弁10は、望ましくは、最小限の弁周囲漏出しか伴わずに、あるいはそれを全く伴わずに、そして天然の弁輪を過度に拡張および破裂させることなく、人工弁を周囲組織に圧接して所定の位置に固定するのに十分な直径まで拡張される。
【0083】
ここで、
図9および10を参照すると、いくつかの実施形態では、ボリュームインジケーター200は、このボリュームインジケーター200の本体202を通って延びる開口として構成された一つ以上の第2の係合要素206(例えば図示の実施形態では一つ)を使用してシリンジ126にクリップ留めるすることができる。シリンジ126は、シリンジ本体128の表面から延在し、第2の係合要素206と係合するように構成された一つ以上の第1の係合要素148(例えば、図示の実施形態では一つ)を有することができる。第2の係合要素206は、例えば、ボリュームインジケーター200の本体202を通って延びる円形の開口であってもよく、第1の係合要素148は、例えば、シリンジ本体128の表面から延びる円筒形の突起であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、
図10に示されるように、第1の係合要素148は、第2の係合要素206との締まりばめ(例えば圧入または摩擦嵌合)を形成するように構成されたテーパー状外面152を有することができる。これは、ボリュームインジケーター200がシリンジ本体128に対して移動またはスライドするのが抑制されるように第1および第2の係合要素148,206が相互緊密嵌めあるいはとまり嵌めを形成することを保証する。テーパー状面152は、(例えば製造公差のために)第2の係合要素206がわずかに大きい場合でさえ、第1および第2の係合要素148,206間に緩みまたは滑りが存在しないことを保証し、これによって、シリンジ126に沿った軸方向の、ボリュームインジケーター200の、したがって膨張しるし114の正確な配置を保証する。これは、ボリュームインジケーターの誤った配置に基づく不正確な測定を防止するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、第1の係合要素148のテーパー化の代わりに、またはそれに加えて、第2の係合要素206は、テーパー状開口として構成することができる。
【0085】
再び
図9を参照すると、いくつかの実施形態では、シリンジ本体128は、シリンジ本体128の表面から延在し、例えば、シリンジ本体128の第2の端部132に沿って配置された一つ以上の追加の係合要素154をさらに備えることができる。ボリュームインジケーター200は、係合要素154と係合するように構成された一つ以上の対応する追加の係合要素224を備えることができる。係合要素154,224の係合は、ボリュームインジケーターがシリンジ本体にクリップ留めされたときに、ボリュームインジケーター200がシリンジ本体128に対して回転動作するのを抑制することができる。図示されるように、係合要素224は、リップ156に隣接するインジケーター本体202の近位縁に沿って形成されたU字形の切り欠きであってもよく、係合要素154は、リップ156から延びる対応するU字形の突起を備えていてもよい。
【0086】
図示の実施形態では、係合要素224は、シリンジ本体128の対応するU字形の係合要素154を受け入れるように構成されたU字形の切り欠き開口であるが、他の実施形態では、一つ以上の第2の係合要素224は、対応する形状の一つ以上の係合要素154と嵌合するように構成された、さまざまなサイズおよび形状(例えば、円形、長方形、三角形など)のいずれかを有していてもよいことに留意されたい。
【0087】
いくつかの実施形態では、係合要素154,224を整列させることにより、係合要素148,206が互いに係合するように配置されるように、ボリュームインジケーター200はシリンジ126上で整列させられる。これにより、ユーザーは、ボリュームインジケーター200を正しい方向でシリンジ126に迅速かつ容易にクリップ留めすることができる。
【0088】
図9の実施形態における窓部分204は、
図6の実施形態における窓部分204よりも長い。したがって、
図9の実施形態における窓部分の対向する縁部210,212は、
図6の実施形態よりも、ボリュームしるし210から離れて配置される。これは、縁部210,212がボリュームしるしとして使用されることを意図されていないときに、ユーザーが対向する縁部210,212の一つを使用して流体を測定することを回避するのに役立ち得る。特定の実施形態では、窓部分204の長さL
2は、ボリュームしるし214と、対向する縁部210,212との間の間隔を最大化するために、インジケーター本体の長さL
1の大部分よりも長くてもよい。しかしながら、代替実施形態では、インジケーターは、一方または両方の縁部210,212が、人工弁を所望のサイズへと拡張するための流体の量を測定するためのボリュームしるしとして機能するように配置されるように製造することができる。
【0089】
近位ポート118がコックを含む実施形態では、プランジャー134を作動させる前に、医師は、流体源からの流体がコックを通って、送達装置100の流体通路内へと流れることができるように、閉位置から開位置へとコックを作動させることができる。
【0090】
開示された実施形態は、一般に、天然大動脈弁に人工心臓弁を移植するための送達装置および方法に関するが、開示された実施形態は、心臓の任意の位置または体の他の場所に補綴デバイスを移植するために使用できることを理解されたい。さらに、開示された実施形態は、一般に、補綴デバイスの経大腿送達に関係するが、開示された実施形態は、例えば、経心尖処置、経大動脈処置、経鎖骨下処置、経橈骨処置または経中隔処置での使用に適合できることを理解されたい。
【0091】
一般的な考慮事項
この説明のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点および新規の特徴が本明細書に記載されている。開示された方法、デバイスおよびシステムは、決して限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独でおよび相互のさまざまな組み合わせおよび部分組み合わせで、さまざまな開示された実施形態の全ての新規で非自明な特徴および態様に向けられている。方法、デバイスおよびシステムは、特定の態様、特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、開示された実施形態は、任意の一つ以上の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。
【0092】
開示された実施形態のいくつかの動作は、都合の良い提示のために特定の連続した順序で説明されるが、この説明の方法は、以下に述べる特定の言語によって特定の順序が必要とされない限り、再配列を含むことを理解されたい。例えば、順次的に記述された操作は、場合によっては、再配列されるか、あるいは同時に実行されてもよい。さらに、簡単にするために、添付の図は、開示された方法を他の方法と組み合わせて使用することができるさまざまな方法を示していない場合がある。さらに、説明では、開示された方法を説明するために「提供する」または「達成する」などの用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の操作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の操作は、特定の実装によって異なることがあり、それは当業者によって容易に識別可能である。
【0093】
本明細書に記載の全ての特徴は、互いに独立しており、構造的に不可能である場合を除いて、本明細書に記載の他の任意の特徴と組み合わせて使用することができる。例えば、ボリュームインジケーターは、
図9~10に示されるような第1および第2の係合要素148,206と組み合わせて、窓部分204を備えることができる。別の実施形態では、ボリュームインジケーターは、
図4A~4Cに示されるような第1および第2の係合要素148,206と組み合わせて、
図9~10に示されるような窓部分204を備えることができる。
【0094】
本出願および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「ある」、「一つの」および「その」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形を含む。さらに、「~を含む」という用語は「~からなる」を意味する。さらに、「結合された」および「関連付けられた」という用語は、一般に、電気的、電磁的および/または物理的に(例えば機械的または化学的に)結合またはリンクされていることを意味し、特定の反対の言葉がない結合あるいは関連付けられたアイテム間の中間要素の存在を排除しない。
【0095】
本出願の文脈において、「下側」および「上側」という用語は、それぞれ「流入」および「流出」という用語と交換可能に使用される。したがって、例えば、バルブの下端はその流入端であり、バルブの上端はその流出端である。
【0096】
本明細書で使用される場合、「近位」という用語は、ユーザーに近く、移植部位から遠く離れたデバイスの位置、方向または部分を指す。本明細書で使用される場合、「遠位」という用語は、ユーザーから遠く離れ、移植部位に近いデバイスの位置、方向または部分を指す。したがって、例えば、デバイスの近位運動は、ユーザーに向かうデバイスの運動であり、一方、デバイスの遠位運動は、ユーザーから離れるデバイスの運動である。 「長手方向」および「軸方向」という用語は、特に明確に規定されていない限り、近位および遠位方向に延びる軸を指す。
【0097】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例示された実施形態は、好ましい例にすぎず、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを認識されたい。開示の範囲は特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0098】
10 人工弁
12 フレーム
14 弁構造体
16 リーフレット
18 交連
20 補強部材
22 シーリング部材
100 送達装置
102 ハンドル
104 第1のシャフト
106 第2のシャフト
110 遠位セクション
112 ノブ
114 調整ノブ
114b 第2の膨張インジケーター
116 バルーン
118 近位ポート
120 サイドアーム
122a 第1の膨張インジケーター
122b 第2の膨張インジケーター
126 シリンジ
128 シリンジ本体
130 第1の端部
132 第2の端部
134 プランジャー
136 プランジャシャフト
138 プランジャーヘッド
140 プランジャハンドル
142 シリンジ把持部分
144 導管
146 測定しるし
148 第1の係合要素
150 端面
152 テーパー状面
154 係合要素
156 環状リップ
200 ボリュームインジケーター
200a ボリュームインジケーター
200b ボリュームインジケーター
200c ボリュームインジケーター
202 インジケーター本体
204 窓部分
206 第2の係合要素
206a 第2の係合要素
206b 第2の係合要素
206c 第2の係合要素
208 サイズインジケーター(エンボス)
210 第1の端部
212 第2の端部
214 膨張インジケーター
214a 第1の膨張インジケーター
214b 第2の膨張インジケーター
214c 第3の膨張インジケーター
216 突起
218 辺
220 辺
222a 膨張インジケーター
222b 膨張インジケーター
222c 第3の膨張インジケーター
224 第2の係合要素
226 隆起
228 近位端部
230 アーム