IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-撮影装置 図1
  • 特許-撮影装置 図2
  • 特許-撮影装置 図3
  • 特許-撮影装置 図4
  • 特許-撮影装置 図5
  • 特許-撮影装置 図6
  • 特許-撮影装置 図7
  • 特許-撮影装置 図8
  • 特許-撮影装置 図9
  • 特許-撮影装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】撮影装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/63 20230101AFI20241220BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241220BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20241220BHJP
   G03B 19/12 20210101ALI20241220BHJP
   G03B 17/17 20210101ALI20241220BHJP
   B60R 1/00 20220101ALI20241220BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20241220BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20241220BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241220BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20241220BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H04N23/63
G03B15/00 V
G03B17/02
G03B19/12
G03B17/17
B60R1/00
H04N23/54
H04N23/55
H04N23/60 500
H04N23/50
H04N7/18 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021022133
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124392
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 直己
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-266740(JP,A)
【文献】特開2009-080003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/63
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 19/12
G03B 17/17
B60R 1/00
H04N 23/54
H04N 23/55
H04N 23/60
H04N 23/50
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画角によって規定される領域を撮影する撮影部と、
前記所定の画角に含まれる所定の位置に配置されて、前記所定の画角の外にある領域を前記撮影部に撮影させるリフレクタと、
前記リフレクタを介さずに撮影された第1画像と、前記リフレクタを介して撮影された第2画像と、を表示させる画像処理部と、を有し、
前記画像処理部は、1つの連続する画像であるように、前記第1画像と、反転及び移動の何れかを含む画像処理を行った前記第2画像と、を組み合わせて表示させる、
撮影装置。
【請求項2】
前記リフレクタは、前記所定の画角の縁部から所定の範囲の位置に配置される、請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記リフレクタは、外縁の少なくとも一部に、放射率又は反射率の異なる材料で構成される曲面部を有する、請求項1に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記曲面部は、断面がR形状である、請求項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記曲面部は、表面に凹凸が設けられている、請求項又はに記載の撮影装置。
【請求項6】
前記リフレクタは、凸面鏡である、請求項1から5のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記リフレクタの位置を制御するリフレクタ制御部を有し、
前記リフレクタ制御部は、前記所定の画角の外にある領域を前記撮影部に撮影させる前記リフレクタの使用状態と、前記所定の画角の外にある領域を前記撮影部に撮影させない前記リフレクタの不使用状態と、を切り替える、請求項1からのいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記リフレクタと接続されて、前記リフレクタを前記所定の画角の範囲外から範囲内まで回転移動させるヒンジ部を有し、
前記リフレクタ制御部は、前記ヒンジ部による前記リフレクタの回転移動を制御することによって、前記リフレクタの位置を制御する、請求項に記載の撮影装置。
【請求項9】
前記リフレクタ制御部は、前記撮影装置が搭載される移動体が警告情報を受け取った場合に、前記リフレクタを前記使用状態にする、請求項又はに記載の撮影装置。
【請求項10】
前記リフレクタ制御部は、前記撮影装置が搭載される移動体が進行方向を変更する場合に、前記リフレクタを前記使用状態にする、請求項からのいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記リフレクタ制御部は、前記撮影装置が搭載される移動体の運転者からの指示があった場合に、前記リフレクタを前記使用状態にする、請求項から10のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項12】
前記撮影部によって撮影された画像に基づいて物体認識を行い、認識した物体の位置を予測する位置予測部を有し、
前記リフレクタ制御部は、前記位置予測部が予測した物体の位置が、前記所定の画角の外にある領域に含まれる場合に、前記リフレクタを前記使用状態にする、請求項から11のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項13】
前記リフレクタと接続されて、前記リフレクタが前記不使用状態の場合に、前記リフレクタを前記撮影装置が搭載される移動体の内部に収納する収納部を有する、請求項から12のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項14】
前記撮影部は、遠赤外線センサである、請求項1から13のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項15】
所定の画角によって規定される領域を撮影する撮影部と、
前記所定の画角に含まれる所定の位置に配置されて、前記所定の画角の外にある領域を前記撮影部に撮影させるリフレクタと、
前記リフレクタを介さずに撮影された第1画像と、前記リフレクタを介して撮影された第2画像と、を表示させる画像処理部と、を有し、
前記画像処理部は、1つの連続する画像であるように、前記第1画像と、反転及び移動の何れかを含む画像処理を行った前記第2画像と、を組み合わせて表示させる、
撮影装置を搭載する
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の移動体に撮影装置が搭載されることがある。車両は例えば自動車であって、撮影装置によって周辺領域を撮影して、その画像を運転者の安全確認のために表示装置に表示することができる。車載の撮影装置として、可視光領域の光を撮影するCMOSイメージセンサなどを備える可視光カメラだけでなく、遠赤外線を撮影する遠赤外線センサを備える遠赤外線カメラが使用されることがある(例えば特許文献1)。遠赤外線カメラは、熱源検出手段として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-058805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線カメラは、霧及び夜間などの視界が悪い状況において、可視光カメラの撮影範囲よりも遠方を撮影することができる。しかし、遠方を撮影するように設定されると、赤外線カメラの画角は狭くなり、死角が大きくなる。
【0005】
上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、通常死角となっている位置を観察できる撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る撮影装置は、
所定の画角によって規定される領域を撮影する撮影部と、
前記所定の画角の縁部から所定の範囲の位置に配置されて、前記所定の画角の外にある領域を前記撮影部に撮影させるリフレクタと、
前記リフレクタを介さずに撮影された第1画像と、前記リフレクタを介して撮影された第2画像と、を表示させる画像処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、通常死角となっている位置を観察できる撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る撮影装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、撮影装置の使用例を示す図である。
図3図3は、リフレクタの回転移動を説明するための図である。
図4図4は、リフレクタの回転移動を説明するための図である。
図5図5は、所定の画角で撮影された画像を例示する図である。
図6図6は、第1画像と第2画像を含む画像を例示する図である。
図7図7は、第1画像と第2画像の表示例を示す図である。
図8図8は、第1画像と第2画像の別の表示例を示す図である。
図9図9は、リフレクタの曲面部の例を示す図である。
図10図10は、本開示の一実施形態に係る撮影装置の撮影方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の一実施形態に係る撮影装置10の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る撮影装置10は、移動体1に搭載されて、移動体1の周辺領域などを撮影し、安全走行のために撮影した画像を表示させる。ここで、移動体1は、車両、船舶、航空機を含む。車両は、自動車及び産業車両を含むが、これに限られず、鉄道車両及び生活車両を含めてよい。自動車は、乗用車、トラック、バス、二輪車及びトロリーバス等を含むがこれに限られず、道路上を走行する他の車両を含んでよい。本実施形態において、移動体1は自動車であるとして説明する。撮影装置10は、いわゆる車載カメラ装置である。
【0010】
撮影装置10は、移動体1の種々の場所に設置されてよい。本実施形態において、撮影装置10は、フロントバンパー、車体外装のルーフライン又はこれらのいずれかの近傍に配置されて、通常、移動体1の進行方向(以下、「前方」という)を含む周辺領域を撮影することができる。ここで、撮影装置10の数は本実施形態のように1つであってよいが、複数であってよい。
【0011】
撮影装置10は、撮影部11と、リフレクタ12と、ヒンジ部13と、収納部14と、リフレクタ制御部15と、画像処理部16と、位置予測部17と、を備える。撮影装置10の各構成要素の詳細については後述する。また、図1は一例であって、撮影装置10が図1に示される構成要素の全てを備えなくてよいし、図1に示されない構成要素をさらに備えてよい。
【0012】
撮影装置10は、移動体1に搭載される他の装置(以下、「外部装置」という)と必要な情報を送受信する。本実施形態において、外部装置は、表示装置20、通信装置30、ECU40及び入力装置50を含む。
【0013】
表示装置20は、撮影装置10が撮影した画像を表示する装置である。また、表示装置20は、安全走行のために注意喚起する画像を表示してよい。表示装置20は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどであってよい。ここで、表示装置20は専用の装置でなくてよい。例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)又はナビゲーション装置などの運転支援装置の表示部が表示装置20として機能してよい。
【0014】
通信装置30は、路上の物及び人を観察する路側機4から、安全運転支援情報を受け取る装置である。路側機4は、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)を構成する装置であってよい。安全運転支援情報は、例えば移動体1に歩行者3、対向車2及び障害物などが接近していることを示す警告情報を含む。通信装置30は、通信回路と、アンテナとで構成されてよい。通信装置30は、例えばITSに割り当てられている700MHz帯を使用して無線通信を行ってよい。また、通信装置30は、例えば無線LAN(Local Area Network)を用いて無線通信を行ってよい。
【0015】
ECU40(Electronic Control Unit)は、移動体1の走行を制御する電子制御装置である。撮影装置10は、移動体1の走行に関する情報をECU40から取得することができる。撮影装置10とECU40とは、例えばCAN(Controller Area Network)で接続されてよい。
【0016】
入力装置50は、移動体1の運転者が撮影装置10を操作するための装置である。入力装置50は、例えば押しボタンなどを有する物理スイッチであってよい。また、入力装置50は、表示装置20と一体化されたタッチパネルディスプレイであってよい。このとき、移動体1の運転者は、タッチパネルディスプレイに表示されたボタンに接触することによって、撮影装置10を操作する信号を出力させてよい。
【0017】
撮影装置10は、表示装置20、通信装置30、ECU40及び入力装置50と共に、移動体1に搭載される撮影システムを構成してよい。
【0018】
以下、撮影装置10の各構成要素の詳細が説明される。
【0019】
撮影部11は、所定の画角によって規定される領域を撮影する。ここで、図2は撮影装置10の使用例を示す図である。図2の例において、角度αが所定の画角に対応する。本実施形態において、撮影部11は、遠赤外線センサである。遠赤外線センサは、波長が3μm~1000μmの赤外線を検出するセンサである。遠赤外線センサは、霧、夜間、逆光及び視界が悪い環境においても、熱源である物体を検出することができる。
【0020】
安全走行のための物体検出を目的とする撮影装置10の撮影部11は、前方にある遠方(例えば100m以上)の物体を検出するために、角度αが18°、30°又は60°に設定されることがある。図2の例において、例えば移動体1の前方に位置する対向車2が所定の画角(角度α)によって規定される領域に含まれるが、歩行者3はその領域の外(死角)にある。ここで、移動体1が左折する場合に、移動体1の左側に位置する歩行者3を撮影部11が検出できれば、移動体1の運転者は撮影画像を見ることによって歩行者3にも注意を向けることができる。以下に説明するように、本実施形態に係る撮影装置10では、歩行者3のような死角に位置する物体も撮影可能である。
【0021】
リフレクタ12は反射板である。リフレクタ12は、所定の画角の縁部から所定の範囲の位置に配置される。本実施形態において、リフレクタ12は遠赤外線を反射する反射部120と、外縁の少なくとも一部に設けられる曲面部121と、を有して構成される(図9参照)。本実施形態において、リフレクタ12の反射部120の材質はアルミであるが、これに限定されず、高い反射率で遠赤外線を反射するものであればよい。
【0022】
ヒンジ部13は、リフレクタ12と接続されて、リフレクタ12を所定の画角の範囲外から範囲内まで回転移動させる。本実施形態において、上記のリフレクタ12が配置される所定の範囲は、ヒンジ部13によってリフレクタ12が回転移動可能な範囲である。ヒンジ部13は、リフレクタ12と接続されて、リフレクタ12の回転移動の中心となる回転軸と、回転軸を回転させる駆動部と、で構成されてよい。駆動部は、例えばモータであって、リフレクタ制御部15の制御に従って回転軸を回転させる。
【0023】
図3及び図4は、リフレクタ12の回転移動を説明するための図である。図3及び図4における歩行者3と移動体1に搭載された撮影装置10との位置関係は図2と同じである。本実施形態において、ヒンジ部13の回転軸は、撮影部11の所定の画角の縁部に沿った位置にある。図3の例において、リフレクタ12の全体は所定の画角の範囲外にあって、リフレクタ12で反射された光が撮影部11に入射することがない。つまり、図3は、所定の画角の外にある領域を撮影部11に撮影させないリフレクタ12の不使用状態を示す。図4の例において、リフレクタ12は所定の画角の範囲内にあって、リフレクタ12で反射された光が撮影部11に入射する。図4の例では、通常は撮影部11の左側の死角に位置する歩行者3の像が、リフレクタ12によって反射されて、撮影部11の右側に入射される。つまり、図4は、所定の画角の外にある領域を撮影部11に撮影させるリフレクタ12の使用状態を示す。ここで、図4の例において、撮影部11の左側には、リフレクタ12の不使用状態の場合と同様に、所定の画角によって規定される領域の左側の像が入射される。換言すれば、リフレクタ12が使用状態になると、撮影部11の右側に、所定の画角によって規定される領域の右側の像に代えて、リフレクタ12で反射された左側の死角に位置する物体の像が入射される。ここで、リフレクタ12で反射された光が入射するのは、最大で撮影部11の右半分である。リフレクタ12で反射された光が撮影部11に入射する面積は、リフレクタ12の位置に応じて変化する。リフレクタ12は、例えば図4の矢印で示される範囲で任意の場所に位置することができる。
【0024】
本実施形態において、リフレクタ12の反射部120は平面であるが、曲面であってよい。例えば、リフレクタ12が凸面鏡である場合に、平面の場合よりも広い範囲の像を、撮影部11の右側に入射させることができる。また、本実施形態において、リフレクタ12は、撮影部11から10cm程度離れた位置に配置されるが、例えばリフレクタ12の幅(短手方向の長さ)に応じて、撮影部11からさらに近く又は遠くに配置されてよい。
【0025】
ここで、撮影部11自体を駆動機構によって移動させて、光軸方向を変化させることによって死角に位置する物体を撮影する手法がある。しかし、撮影部11自体を移動させると、耐久性の問題が生じる。特に移動体1に装着される場合に、撮影部11の可動部分には走行中の振動及び風圧が加わる。そのため、本実施形態のように、リフレクタ12の反射像を用いることが好ましい。
【0026】
収納部14は、リフレクタ12と接続されて、リフレクタ12が不使用状態の場合に、リフレクタ12を移動体1の内部に収納する。収納部14は、例えばピニオンギア及びモータなどを備えて構成されてよいが、これに限定されない。収納部14は、不使用状態のリフレクタ12に、移動体1の走行による風圧などがかからないようにして、リフレクタ12の劣化を抑制する。
【0027】
リフレクタ制御部15は、リフレクタ12の位置を制御する。本実施形態において、リフレクタ制御部15は、ヒンジ部13によるリフレクタ12の回転移動を制御することによって、リフレクタ12の位置を制御する。このことによって、リフレクタ制御部15は、リフレクタ12の使用状態(図4参照)と、リフレクタ12の不使用状態(図3参照)と、を切り替えることができる。また、リフレクタ制御部15は、リフレクタ12が不使用状態の場合に、収納部14にリフレクタ12を収納させる。
【0028】
本実施形態において、リフレクタ制御部15は、最初に不使用状態に設定したリフレクタ12を、所定の条件が満たされることに応じて使用状態に切り替える。本実施形態において、リフレクタ制御部15は、視界が悪い場合に(移動体1の運転者の目視による確認が難しい場合に)、所定の条件が満たされるか否かを判定する。リフレクタ制御部15は、例えば撮影部11によって撮影された画像に基づいて、視界が悪いか否かを判定してよい。以下に順に説明するように、本実施形態において、所定の条件は複数の条件を含む。
【0029】
リフレクタ制御部15は、移動体1が警告情報を受け取った場合に、リフレクタ12を使用状態にする。具体的に述べると、リフレクタ制御部15は、通信装置30を介して、路側機4から歩行者3、対向車2及び障害物などが接近していることを示す警告情報を受け取ると、リフレクタ12を使用状態にする。リフレクタ制御部15は、警告情報に基づいて、接近している歩行者3、対向車2及び障害物などの位置を計算し、その位置がリフレクタ12の反射像に含まれるように、リフレクタ12の位置を制御してよい。
【0030】
リフレクタ制御部15は、移動体1が進行方向を変更する場合に、リフレクタ12を使用状態にする。具体的に述べると、リフレクタ制御部15は、ECU40から取得する移動体1のウィンカーに関する情報及び舵角情報に基づいて、移動体1が左折すると判定した場合に、リフレクタ12の位置を変更する。
【0031】
リフレクタ制御部15は、移動体1の運転者からの指示があった場合に、リフレクタ12を使用状態にする。具体的に述べると、運転者が入力装置50のボタンを押したり、接触したりすることによって生成された信号を、入力装置50から取得した場合に、リフレクタ制御部15は、リフレクタ12を使用状態にする。
【0032】
リフレクタ制御部15は、位置予測部17が予測した物体の位置が、所定の画角の外にある領域に含まれる場合に、リフレクタ12を使用状態にする。位置予測部17が位置を予測する物体は、例えば障害物である。リフレクタ制御部15は、障害物の予測される位置がリフレクタ12の反射像に含まれるように、リフレクタ12の位置を制御してよい。位置予測部17の詳細については後述する。
【0033】
画像処理部16は、撮影部11によって撮影された画像に画像処理を実行し、画像処理が実行された画像を表示装置20に表示させる。ここで、図5は、撮影部11によって所定の画角で撮影された画像60の例であって、前方からの対向車2が含まれている。しかし、図5に示される画像60には、死角に位置する歩行者3は含まれていない。リフレクタ12が不使用状態の場合に、画像処理部16は、図5のような画像60のデータを受け取る。図6は、リフレクタ12が使用状態の場合に、撮影部11によって撮影された画像60の例である。図6に示される画像60は、リフレクタ12を介さずに撮影された第1画像601と、リフレクタ12を介して撮影された第2画像602と、を含む。第2画像602には、歩行者3が含まれている。リフレクタ12が使用状態の場合に、画像処理部16は、図6のような画像60のデータを受け取る。
【0034】
画像処理部16は、リフレクタ12が使用状態の場合に、第1画像601と、画像処理を行った第2画像602と、を組み合わせて、表示装置20に表示させる。図7は、画像処理部16が表示装置20に表示させる画像60の例である。画像処理部16は、反転を含む画像処理を第2画像602に実行してよい。このような画像処理によって、リフレクタ12による像の左右反転が解消される。
【0035】
画像処理部16は、1つの連続する画像であるように、第1画像601と、反転及び移動を含む画像処理を行った第2画像602と、を組み合わせて表示させてよい。図8は、画像処理部16が表示装置20に表示させる画像60の別の例である。画像処理部16は、反転に加えて、第2画像602を第1画像601の左側に移動させる画像処理を第2画像602に対して実行してよい。画像処理部16は、第2画像602が第1画像601と連続するように、さらに拡大縮小及び座標変換などの画像処理を第2画像602に対して実行してよい。このような画像処理によって、移動体1の運転者は、目視の場合と同じように、通常死角に位置する物体を確認することができる。
【0036】
ここで、画像処理部16は、画像処理の対象である第2画像602を他の画像から区別する必要がある。本実施形態において、リフレクタ12が外縁の少なくとも一部に、反射部120とは放射率又は反射率が異なる材料で構成される曲面部121を有することによって、第1画像601と第2画像602との境界に、境界線61を生じさせることができる。画像処理部16は、境界線61によって、正しく第2画像602を認識することができる。
【0037】
図9は、リフレクタ12の曲面部121の例を示す図である。図9において、上の図がリフレクタ12の一部を示す平面図であって、下の図が対応する断面図である。境界線61は、リフレクタ12の曲面部121における反射光によって生成される。本実施形態において、曲面部121は断面がR形状である。断面がR形状であることによって、リフレクタ12の位置によらずに境界線61の幅がほぼ一定になる。このことによって、画像処理部16は、画像60における境界線61を容易に検出することができる。
【0038】
本実施形態において、曲面部121の材料はガラスであるが、これに限定されない。放射率(又は吸収率)が低いと、反射率が高いため、リフレクタ12の反射部120の材料として適している。上記のように、本実施形態における反射部120の材料であるアルミは、遠赤外線の波長域において、放射率が4~9%である。曲面部121の材料であるガラスは、遠赤外線の5μm以上の波長域において、吸収率が非常に高いため、吸収体として振る舞う。そのため、曲面部121における反射は、反射部120における反射と大きく異なり、明確な境界線61を生成することができる。別の例として、曲面部121の材料は、銅酸化物(放射率78%)、アスファルト(放射率90~98%)又はコンクリート(放射率94%)などであってよい。
【0039】
ここで、曲面部121の表面に細かい凹凸が設けられることによって、表面で反射する光の量を調整して、境界線61を目立たせることが可能である。また、本実施形態において、曲面部121はリフレクタ12の全ての外縁に設けられているが、一部の外縁に設けられていてよい。例えば、曲面部121は、境界線61が第1画像601との間に生じるように、リフレクタ12の長手方向の外縁の一方にだけ設けられてよい。
【0040】
位置予測部17は、撮影部11によって撮影された画像に基づいて物体認識を行い、認識した物体が障害物などである場合に、その位置を予測する。物体認識は、画像に含まれている物体を識別して、その物体が何であるかを認識する処理である。物体認識は、公知の手法を用いてよく、例えば事前学習済みのディープラーニングモデルが用いられてよい。
【0041】
位置予測部17は、障害物を認識した場合に、例えば撮影時間が異なる複数の画像を用いて、障害物の座標、移動体1との実際の位置関係、大きさ、移動速度及び移動方向などを計算し、障害物の位置を予測する。本実施形態において、位置予測部17は、予測される障害物の位置の情報をリフレクタ制御部15に出力する。
【0042】
ここで、撮影装置10は1つ以上のプロセッサを含んで構成されてよい。プロセッサは、特定の処理に特化した専用のプロセッサ及び特定のプログラムを読み込むことによって特定の機能を実行する汎用のプロセッサを含んでよい。専用のプロセッサには、DSP(Digital Signal Processor)及び特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)が含まれてよい。プロセッサには、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)が含まれてよい。PLDには、FPGA(Field-Programmable Gate Array)が含まれてよい。撮影装置10は、1つ又は複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)及びSiP(System In a Package)のいずれかを含んでよい。プロセッサは、種々の処理のためのプログラム及び演算中の情報を記憶する1又は複数のメモリを含んでよい。メモリは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリが含まれる。
【0043】
撮影装置10のリフレクタ制御部15、画像処理部16及び位置予測部17は、ハードウェアモジュールであってよく、ソフトウェアモジュールであってよい。リフレクタ制御部15、画像処理部16及び位置予測部17が実行する処理は、撮影装置10を構成する少なくとも1つのプロセッサによって実行されてよい。リフレクタ制御部15、画像処理部16及び位置予測部17の処理は、複数のプロセッサによって分散して実行されてよいし、単一のプロセッサによって実行されてよい。
【0044】
図10は、本実施形態に係る撮影装置10の撮影方法を例示するフローチャートである。撮影装置10は、以下に説明する処理を、非一時的なコンピュータ可読媒体に記録されたプログラムを読み込んで実行するように構成されてよい。非一時的なコンピュータ可読媒体は、磁気記憶媒体、光学記憶媒体、光磁気記憶媒体及び半導体記憶媒体を含むがこれらに限られない。磁気記憶媒体は、磁気ディスク、ハードディスク及び磁気テープを含む。光学記憶媒体は、CD(Compact Disc)、DVD及びブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標) Disc)等の光ディスクを含む。半導体記憶媒体は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)及びフラッシュメモリを含む。
【0045】
撮影装置10のリフレクタ制御部15は、リフレクタ12を不使用状態にする(ステップS1)。
【0046】
撮影装置10の撮影部11は、所定の画角で画像60(図5参照)を撮影する。撮影装置10の画像処理部16は、所定の画角の画像60を表示装置20に表示させる(ステップS2)。
【0047】
撮影装置10のリフレクタ制御部15は、撮影部11によって撮影された画像に基づいて、視界が悪いか否かを判定する。撮影装置10は、視界が悪くない場合に(ステップS3のNo)、ステップS1の処理に戻る。撮影装置10は、視界が悪い場合に(ステップS3のYes)、ステップS4の処理に進む。
【0048】
撮影装置10のリフレクタ制御部15は、移動体1が警告情報を受け取った場合に(ステップS4のYes)、リフレクタ12を使用状態にする(ステップS8)。撮影装置10は、移動体1が警告情報を受け取っていない場合に(ステップS4のNo)、ステップS5の処理に進む。
【0049】
撮影装置10のリフレクタ制御部15は、移動体1が進行方向を変更する場合に(ステップS5のYes)、リフレクタ12を使用状態にする(ステップS8)。撮影装置10は、移動体1が進行方向を変更しない場合に(ステップS5のNo)、ステップS6の処理に進む。
【0050】
撮影装置10のリフレクタ制御部15は、移動体1の運転者からの指示があった場合に(ステップS6のYes)、リフレクタ12を使用状態にする(ステップS8)。撮影装置10は、移動体1の運転者からの指示がない場合に(ステップS6のNo)、ステップS7の処理に進む。
【0051】
撮影装置10のリフレクタ制御部15は、位置予測部17が予測した物体の位置が、所定の画角の外にある領域に含まれる場合に(ステップS7のYes)、リフレクタ12を使用状態にする(ステップS8)。撮影装置10は、位置予測部17が予測した物体の位置が、所定の画角の領域に含まれる場合に(ステップS7のNo)、ステップS1の処理に戻る。
【0052】
リフレクタ12が使用状態の場合に、撮影装置10の撮影部11は、第1画像601と第2画像602とを含む画像60(図6参照)を撮影する。撮影装置10の画像処理部16は、第1画像601と第2画像602とを表示装置20に表示させる(ステップS9)。このとき、撮影装置10の画像処理部16は、1つの連続する画像であるように、第1画像601と、反転及び移動を含む画像処理を行った第2画像602と、を組み合わせて表示させてよい。撮影装置10は、ステップS1の処理に戻る。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る撮影装置10は、上記の構成によって通常死角となっている位置を観察できる。本実施形態に係る撮影装置10は、撮影部11自体を駆動する駆動機構を備える手法と比べて、耐久性の問題が生じないという利点を有する。また、本実施形態に係る撮影装置10は、リフレクタ12が曲面部121を有することによって、リフレクタ12の位置によらずほぼ一定の幅を有する境界線61を生じさせて、画像処理の対象である第2画像602を他の画像から区別することができる。
【0054】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0055】
上記の実施形態において、視界が悪いことが、リフレクタ12を使用状態に切り替える所定の条件を判断する前提となっていた。しかし、リフレクタ制御部15は、視界が悪いか否かに関係なく、上記の所定の条件が満たされるかを判断して、満たされる場合にリフレクタ12を使用状態に切り替えてよい。また、撮影装置10は、収納部14及び位置予測部17の少なくとも一方を有しない構成であってよい。
【0056】
上記の実施形態において、撮影装置10は左車線を走行する移動体1に搭載されて、左折の場合に死角となっている位置の物体を観察するとして説明した。しかし、本開示の内容は、右車線を走行する移動体1に対しても、右折の場合についても、上記と同様に適用される。
【符号の説明】
【0057】
1 移動体
2 対向車
3 歩行者
4 路側機
10 撮影装置
11 撮影部
12 リフレクタ
13 ヒンジ部
14 収納部
15 リフレクタ制御部
16 画像処理部
17 位置予測部
20 表示装置
30 通信装置
40 ECU
50 入力装置
60 画像
61 境界線
120 反射部
121 曲面部
601 第1画像
602 第2画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10