(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】移動体監視装置、移動体監視方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20241220BHJP
G06V 20/58 20220101ALI20241220BHJP
【FI】
G08G1/01 D
G06V20/58
(21)【出願番号】P 2021026001
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】市野川 順平
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-78387(JP,A)
【文献】特開2016-99887(JP,A)
【文献】特開2003-123197(JP,A)
【文献】特開2019-91412(JP,A)
【文献】特開2016-91422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得する取得部と、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
前記判定する際に、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利
用する、
移動体監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記速度が第1閾値以上である場合、前記オフセット情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記速度が第1閾値未満である場合、前記姿勢情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定する、
請求項1記載の移動体監視装置。
【請求項3】
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得する取得部と、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
前記判定する際に、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利
用する、
移動体監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記車間距離が第2閾値以上である場合、前記オフセット情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記車間距離が第2閾値未満である場合、前記姿勢情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定する、
請求項3記載の移動体監視装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報を更に取得し、
前記判定部は、
前記判定する際に、前記速度が高い程、または前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利
用する、
請求項1記載の移動体監視装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記速度が第1閾値以上であり且つ前記車間距離が第2閾値以上である場合、前記オフセット情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記速度が第1閾値未満である場合、または前記車間距離が第2閾値未満である場合、前記姿勢情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定する、
請求項5記載の移動体監視装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記移動体のいる場所の天候を表す天候情報を更に取得し、
前記判定部は、
前記判定する際に、前記天候が悪天候である場合、前記天候が悪天候ではない場合よりも
、前記オフセット情報を優先的に利用する際の優先度合いを低めることにより、前記オフセット情報に対する前記姿勢情報の利用度合いを高
める、
請求項1から6のうちいずれか1項記載の移動体監視装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記移動体のいる道路の曲率に関する曲率情報を更に取得し、
前記判定部は、
前記判定する際に、前記曲率が第3閾値以上である場合、前記曲率が第3閾値未満である場合よりも
、前記オフセット情報を優先的に利用する際の優先度合いを高めることにより、前記姿勢情報に対する前記オフセット情報の利用度合いを高
める、
請求項1から7のうちいずれか1項記載の移動体監視装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記道路区画線の認識精度に関する精度情報を更に取得し、
前記判定部は、前記判定する際に、前記認識精度が第4閾値未満である場合、前記認識精度が第4閾値以上である場合よりも
、前記オフセット情報を優先的に利用する際の優先度合いを低めることにより、前記オフセット情報に対する前記姿勢情報の利用度合いを高める、
請求項1から8のうちいずれか1項記載の移動体監視装置。
【請求項10】
前記移動体から離れた場所に設置され、
前記取得部は、前記移動体に搭載された通信装置との間で行われる通信を介して、前記各情報を取得する、
請求項1から9のうちいずれか1項記載の移動体監視装置。
【請求項11】
前記移動体に搭載され、
前記取得部は、移動体内通信によって前記各情報を取得する、
請求項1から9のうちいずれか1項記載の移動体監視装置。
【請求項12】
コンピュータが、
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得し、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定し、
前記判定する際に、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利
用する、
移動体監視方法。
【請求項13】
コンピュータに、
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得させ、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定させ、
前記判定させる際に、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利
用させる、
プログラム。
【請求項14】
コンピュータが、
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得し、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定し、
前記判定する際に、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利
用する、
移動体監視方法。
【請求項15】
コンピュータに、
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得させ、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定させ、
前記判定させる際に、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利
用させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体監視装置、移動体監視方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、片側複数車線道路を走行している自車の走行車線を判定する車線判定装置であって、道路を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された画像から区画線を認識する区画線認識手段と、区画線認識手段により認識された区画線から撮像手段までの距離を繰り返し算出して自車の軌跡を算出する第一の軌跡算出手段と、自律航法に基づいて自車の軌跡を算出する第二の軌跡算出手段と、第一の軌跡算出手段により算出された第一の軌跡及び第二の軌跡算出手段により算出された第二の軌跡に基づいて自車の軌跡を算出する第三の軌跡算出手段と、第三の軌跡算出手段により算出された第三の軌跡に基づいて自車の走行している車線を判定する走行車線判定手段と、を備える車線判定装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の交通場面では、交通状況によって道路区画線を正確に認識できない場合が生じ得る。上記従来の技術では、そのような場合において車線変更の有無を正確に判定することができない場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、より正確に車線変更の有無を判定することが可能な移動体監視装置、移動体監視方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体監視装置、移動体監視方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る移動体監視装置は、移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得する取得部と、前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記判定部は、前記速度が第1閾値以上である場合、前記オフセット情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記速度が第1閾値未満である場合、前記姿勢情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0008】
(3):本発明の他の態様に係る移動体監視装置は、移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得する取得部と、前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記判定部は、前記車間距離が第2閾値以上である場合、前記オフセット情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記車間距離が第2閾値未満である場合、前記姿勢情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記取得部は、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報を更に取得し、前記判定部は、前記速度が高い程、また前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0011】
(6):上記(5)の態様において、前記判定部は、前記速度が第1閾値以上であり且つ前記車間距離が第2閾値以上である場合、前記オフセット情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記速度が第1閾値未満である場合、または前記車間距離が第2閾値未満である場合、前記姿勢情報に基づいて前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0012】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記取得部は、前記移動体のいる場所の天候を表す天候情報を更に取得し、前記判定部は、前記天候が悪天候である場合、前記天候が悪天候ではない場合よりも前記姿勢情報の利用度合いを高めて、前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0013】
(8):上記(1)から(7)のいずれかの態様において、前記取得部は、前記移動体のいる道路の曲率に関する曲率情報を更に取得し、前記判定部は、前記曲率が第3閾値以上である場合、前記曲率が第3閾値未満である場合よりも前記オフセット情報の利用度合いを高めて、前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0014】
(9):上記(1)から(8)のいずれかの態様において、前記取得部は、前記道路区画線の認識精度に関する精度情報を更に取得し、前記判定部は、前記認識精度が第4閾値未満である場合、前記認識精度が第4閾値以上である場合よりも前記姿勢情報の利用度合いを高めて、前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0015】
(10):上記(1)から(9)のいずれかの態様において、前記移動体から離れた場所に設置され、前記取得部は、前記移動体に搭載された通信装置との間で行われる通信を介して、前記各情報を取得するものである。
【0016】
(11):上記(1)から(9)のいずれかの態様において、前記移動体に搭載され、前記取得部は、移動体内通信によって前記各情報を取得するものである。
【0017】
(12):本発明の他の態様に係る移動体監視方法は、コンピュータが、移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得し、前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記判定する際に、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0018】
(13):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得させ、前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定させ、前記判定させる際に、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定させるものである。
【0019】
(14):本発明の他の態様に係る移動体監視方法は、コンピュータが、移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得し、前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定し、前記判定する際に、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定するものである。
【0020】
(15):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得させ、前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定させ、前記判定させる際に、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定させるものである。
【発明の効果】
【0021】
(1)~(15)の態様によれば、より正確に車線変更の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】各実施形態に係る移動体監視装置100の使用環境の一例を示す図である。
【
図3】移動体監視装置100の構成の一例を示す図である。
【
図4】対象車両Mの速度が低い場合のカメラ10の撮像画像の一例を示す図である。
【
図5】対象車両Mの速度が高い場合のカメラ10の撮像画像の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態の移動体監視装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態の移動体監視装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態の移動体監視装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係る移動体監視装置100Aの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の移動体監視装置、移動体監視方法、およびプログラムの実施形態について説明する。本発明における移動体とは、四輪車両や二輪車両、マイクロモビリティ、ロボット等である。以下の説明において移動体は四輪車両であるものとする。
【0024】
[全体構成]
図1は、各実施形態に係る移動体監視装置100の使用環境の一例を示す図である。移動体監視装置100は、対象車両から離れた場所に設置され、対象車両と通信する。
図1では、対象車両M(1)と対象車両M(2)の2台の対象車両を示しており、対象車両M(1)が認識する(後述)道路区画線をCL-1、CL-2で示している。図中の矢印は各車両の進行方向を示している。このように、移動体監視装置100は、同時に複数台が存在しうる対象車両から情報を取得し、対象車両が車線変更したか否かを判定する。以下、いずれの対象車両あるいは前走車両であるかを区別しない場合、括弧以下の符号を省略して「対象車両M」、「前走車両mA」のように表記する。対象車両Mは「移動体」の一例であり、前走車両mAは「前走移動体」の一例である。前走車両mAは、対象車両Mと同じ車線上で対象車両Mの直前に居る車両であり、「直前」とは、間に他の車両が存在しないことを意味する。対象車両Mは、無線通信によってネットワークNWにアクセスし、移動体監視装置100と通信する。ネットワークNWは、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)などを含む。移動体監視装置100の判定結果は、地図の作成に用いられたり、車線ごとの交通量の監視に用いられたりするが、この点について制約は無く、移動体監視装置100の判定結果が如何なる用途に用いられてもよい。
【0025】
<第1実施形態>
[対象車両]
図2は、対象車両Mの構成の一例を示す図である。対象車両Mは、手動運転車両であってもよいし、自動運転車両であってもよい。対象車両Mには、例えば、カメラ10と、画像認識装置12と、車両センサ20と、レーダ装置30と、GPS(Global Positioning System)受信機40と、通信装置50とが搭載される。
【0026】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、対象車両Mの前方を撮像可能な任意の場所、例えば、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し対象車両Mの前方を撮像する。
【0027】
画像認識装置12は、カメラの撮像画像に基づき、撮像画像における道路区画線の位置を認識する。そして、撮像画像平面における位置と、上空から見た想定平面における位置との変換処理などを経て、対象車両Mの代表点と道路区画線との距離を導出する。対象車両Mの代表点とは、重心、前端部中心、前端部の左右端、後輪軸中心など、任意に定義される。通常、道路区画線は車両の左右に二つ存在するため、画像認識装置は、それぞれの道路区画線との距離を導出してもよい。画像認識装置12は、道路区画線の認識処理における認識精度(尤度、信頼度)を自ら導出し、認識精度を表す精度情報を出力してもよい。画像認識装置12は、自動運転制御などの車両制御を行う制御装置の一機能であってもよい。画像認識装置12の処理の詳細については種々の手法が公知となっているため説明を省略する。
【0028】
車両センサ20は、対象Mの鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、対象車両の基準面(水平面を想定した面)に対する姿勢を検出する方位センサ、速度を検出する速度センサ、加速度を検出する加速度センサなどを含む。
【0029】
レーダ装置30は、対象車両Mの前方にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置30は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。レーダ装置30は、前走車両mAと対象車両Mとの車間距離を検出して出力する。車間距離を検出して出力する機能は、カメラ10および画像認識装置12によって実現されてもよい。
【0030】
GPS受信機40は、GPS衛星から受信した信号に基づいて、対象車両Mの位置を特定する。GPS受信機40に代えて他の種類のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機が対象車両Mに搭載されてもよい。
【0031】
通信装置50は、(1)画像認識装置12により導出された道路区画線との距離を表すオフセット情報および道路区画線の認識に関する精度情報、(2)ヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報、(3)速度センサにより検出された速度を表す速度情報、(4)対象車両Mの位置情報などを上記各構成から取得し、取得した情報をネットワークNWを介して移動体監視装置100に送信する。通信装置50は、上記各構成から各種制御装置を介して情報を取得してもよい。
【0032】
[移動体監視装置]
図3は、移動体監視装置100の構成の一例を示す図である。移動体監視装置100は、例えば、通信部110と、取得部120と、判定部130と、記憶部150とを備える。判定部130は、第1判定部132と、第2判定部134とを備える。取得部120と判定部130のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。記憶部150には、例えば地図情報152が格納されている。地図情報152は、道路をノードとリンクの形式で表現し、更に車線情報、曲率情報、勾配情報などがリンクに付随して記述されたものである。
【0033】
通信部110は、ネットワークNWにアクセスするためのネットワークカードなどの通信インターフェースである。
【0034】
取得部120は、通信部110を介して対象車両Mから各種情報を取得し、RAM(Random Access Memory)などのワーキングメモリに格納する。また、取得部120は、天候情報を配信しているサーバ(不図示)から対象車両Mの位置における天候情報を取得してもよい。天候情報は、対象車両Mに設けられた雨量センサや照度センサの検出値を対象車両Mから受信することで取得されてもよい。取得部120は、地図情報152を参照し、対象車両Mの位置における道路の曲率を取得してもよい。
【0035】
判定部130は、オフセット情報と姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。判定部130は、以下に説明するように、対象車両Mの速度が高い程、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定し、対象車両Mの速度が低い程、姿勢情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。
【0036】
例えば、判定部130は、対象車両Mの速度VMが第1閾値Th1以上である場合、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定する。このとき、第1判定部132が判定を行う。第1判定部132は、例えば、対象車両Mと道路区画線との距離DL(二つの距離があるが、小さい方を採用するものとする)がゼロに近づいてマイナスになった(あるいは車線の切り替わりに伴って左右反対側の距離DLとしてゼロ近辺の値が取得された)場合に、対象車両Mが車線変更を行ったと判定する。
【0037】
判定部130は、対象車両Mの速度VMが第1閾値Th1未満である場合、姿勢情報に基づいて対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。このとき、第2判定部134が判定を行う。ここでは、姿勢情報は角速度(ヨーレート)であるものとする。第2判定部134は、例えば、対象車両Mの角速度の累積値から求められる、直進走行軌跡(角速度が略ゼロであった区間の走行軌跡をいう)に対する方位角を時系列に求め、方位角と速度から対象車両Mの道路幅方向の移動量を求め、道路幅方向の移動量が、例えば一般的な車線幅(例えば4[m]程度に設定される)の1/2を超えた場合に、対象車両Mが車線変更を行ったと判定する。姿勢情報が方位角の情報である場合、その方位角を直接的に使用すればよい。第1閾値Th1は、例えば30[km/h]程度の値である。この数値はあくまで例示であり、本発明の権利範囲を限定するものでは無い。
【0038】
なお、判定部130は、例えば、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量と、オフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量(例えば一般的な車線幅の1/2から距離DLを差し引いて求められる)との加重和を求め、加重和が一般的な車線幅の1/2を超えた場合に、対象車両Mが車線変更したと判定するようにしてもよい。その場合、姿勢情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例として、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を大きくし、オフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を小さくすることが挙げられる。その逆に、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例として、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を小さくし、オフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を大きくすることが挙げられる。
【0039】
道路区画線が十分な精度で認識されているのであれば、距離DLに基づいて車線変更の有無を判定した方が正確であり、信頼度の高い判定結果を得ることができる。しかしながら、対象車両Mの速度が低い場合、交通量が多いことが推定され、従って前走車両mAと対象車両Mとの車間距離DAMが短くなっていることが推定され、更に対象車両Mの前方に他車線から他車両が割り込んで来る頻度も高くなっている。この結果、カメラ10の画角の大部分に前走車両mAが映りこむため道路区画線が十分に撮像されない可能性が高くなる。
図4は、対象車両Mの速度が低い場合のカメラ10の撮像画像の一例を示す図である。図示するように、特に左側の道路区画線が十分に認識できない状態となっている。これに対して、対象車両Mの速度が高い場合には、道路区画線が十分に認識できる可能性が高い。
図5は、対象車両Mの速度が高い場合のカメラ10の撮像画像の一例を示す図である。実施形態の判定部130では、対象車両Mの速度VMが第1閾値Th1以上である場合にオフセット情報に基づいて車線変更の有無を判定し、そうでない場合に姿勢情報に基づいて車線変更の有無を判定することで、いずれの場合でも判定精度の低下を抑制することができる。
【0040】
判定部130は、天候情報の示す天候が悪天候である場合、姿勢情報を優先的に利用して、或いは天候が悪天候で無い場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。悪天候とは、雨天、降雪などである。例えば、判定部130は、天候情報の示す天候が悪天候である場合、第1閾値Th1を、より大きい値に変更することで、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、道路区画線の認識精度が低下する悪天候時に、姿勢情報を優先的に利用して(すなわち、天候が悪天候で無い場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて)判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。姿勢情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例として、前述したように、例えば加重和に基づいて判定を行うことを前提に、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を天候が悪天候で無い場合の係数よりも大きくし、これに代えて或いはこれに追加してオフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を天候が悪天候で無い場合の係数よりも小さくすることが挙げられる。また、加重和に基づいて判定を行うことを前提に、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数をオフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数よりも大きくすることが挙げられる。
【0041】
判定部130は、対象車両Mのいる道路の曲率が第3閾値Th3以上である場合、オフセット情報を優先的に利用して、或いは曲率が第3閾値Th3未満である場合よりもオフセット情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。例えば、判定部130は、対象車両Mのいる道路の曲率が第3閾値以上である場合、第1閾値Th1を、より小さい値に変更することで、姿勢情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、対象車両Mの姿勢に基づく判定が難しくなるカーブ路においては、オフセット情報を優先的に利用して(すなわち、道路の曲率が所定値未満である場合よりもオフセット情報の利用度合いを高めて)判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。オフセット情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例として、前述したように、例えば加重和に基づいて判定を行うことを前提に、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を道路の曲率が第3閾値Th3未満である場合の係数よりも小さくし、これに代えて或いはこれに追加してオフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を道路の曲率が第3閾値Th3未満である場合の係数よりも大きくすることが挙げられる。また、加重和に基づいて判定を行うことを前提に、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数をオフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数よりも小さくすることが挙げられる。
【0042】
判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満である場合、姿勢情報を優先的に利用して、或いは認識精度が第4閾値Th4以上である場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。例えば、判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満である場合、第1閾値Th1を、より大きい値に変更することで、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、道路区画線の認識精度が低下している場合に、姿勢情報を優先的に利用して(すなわち、認識精度が所定値以上である場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて)判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。姿勢情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例として、前述したように、例えば加重和に基づいて判定を行うことを前提に、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を認識精度が第4閾値Th4以上の場合の係数よりも大きくし、これに代えて或いはこれに追加してオフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数を認識精度が第4閾値Th4以上の場合の係数よりも小さくすることが挙げられる。また、加重和に基づいて判定を行うことを前提に、姿勢情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数をオフセット情報に基づく対象車両Mの横移動量に乗算する係数よりも大きくすることが挙げられる。
【0043】
図6は、第1実施形態の移動体監視装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定周期で繰り返し実行される。
【0044】
まず、判定部130が、第1閾値Th1をデフォルト値に設定する(ステップS100)。次に、取得部120が、対象車両Mから各種情報を取得する(ステップS102)。
【0045】
次に、判定部130が、天候情報の示す天候が悪天候であるか否かを判定する(ステップS104)。天候情報の示す天候が悪天候であると判定した場合、判定部130は、第1閾値Th1を、より大きい値に変更する(ステップS106)。
【0046】
次に、判定部130は、対象車両Mの居る道路の曲率が第3閾値Th3以上であるか否かを判定する(ステップS108)。対象車両Mの居る道路の曲率が第3閾値Th3以上であると判定した場合、判定部130は、第1閾値Th1を、より小さい値に変更する(ステップS110)。
【0047】
次に、判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満であるか否かを判定する(ステップS112)。精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満であると判定した場合、判定部130は、第1閾値Th1を、より大きい値に変更する(ステップS114)。
【0048】
次に、判定部130は、対象車両Mの速度が第1閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップS116)。対象車両Mの速度が第1閾値Th1以上であると判定した場合、第1判定部132が、オフセット情報に基づいて車線変更の有無を判定する(ステップS118)。ステップS116において否定的な判定結果が得られた場合、第2判定部134が、姿勢情報に基づいて車線変更の有無を判定する(ステップS120)。
【0049】
以上説明した第1実施形態によれば、対象車両Mに搭載されたカメラ10の撮像画像に基づき認識された対象車両Mと道路区画線との距離を表すオフセット情報と、対象車両Mに搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、対象車両Mの速度を表す速度情報とを取得する取得部120と、オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定する判定部130と、を備え、判定部130は、対象車両Mの速度が高い程、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定するため、より正確に車線変更の有無を判定することができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態において、対象車両Mの通信装置50は、(1)画像認識装置12により導出された道路区画線との距離を表すオフセット情報および道路区画線の認識に関する精度情報、(2)ヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報、(3)前走車両mAと対象車両Mとの車間距離を表す車間距離情報、(4)対象車両Mの位置情報などを上記各構成から取得し、取得した情報をネットワークNWを介して移動体監視装置100に送信する。通信装置50は、上記各構成から各種制御装置を介して情報を取得してもよい。
【0051】
第2実施形態において、判定部130は、オフセット情報と姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。判定部130は、以下に説明するように、前走車両mAと対象車両Mの車間距離が長い程、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定し、前走車両mAと対象車両Mの車間距離が短い程、姿勢情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。
【0052】
例えば、判定部130は、前走車両mAと対象車両Mの車間距離DAMが第2閾値Th2以上である場合、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定する。このとき、第1判定部132が判定を行う。第1判定部132は、例えば、対象車両Mと道路区画線との距離DL(二つの距離があるが、小さい方を採用するものとする)がゼロに近づいてマイナスになった(あるいは車線の切り替わりに伴って左右反対側の距離DLとしてゼロ近辺の値が取得された)場合に、対象車両Mが車線変更を行ったと判定する。
【0053】
判定部130は、前走車両mAと対象車両Mの車間距離DAMが第2閾値Th2未満である場合、姿勢情報に基づいて対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。このとき、第2判定部134が判定を行う。ここでは、姿勢情報は角速度(ヨーレート)であるものとする。第2判定部134は、例えば、対象車両Mの角速度の累積値から求められる、直進走行軌跡(角速度が略ゼロであった区間の走行軌跡をいう)に対する方位角を時系列に求め、方位角と速度から対象車両Mの道路幅方向の移動量を求め、道路幅方向の移動量が、例えば一般的な車線幅(例えば4[m]程度に設定される)の1/2を超えた場合に、対象車両Mが車線変更を行ったと判定する。姿勢情報が方位角の情報である場合、その方位角を直接的に使用すればよい。第2閾値Th2は、例えば10[m]程度の値である。この数値はあくまで例示であり、本発明の権利範囲を限定するものでは無い。
【0054】
上記の処理の趣旨に関しては、第1実施形態で説明した通りである。
【0055】
判定部130は、天候情報の示す天候が悪天候である場合、姿勢情報を優先的に利用して、或いは天候が悪天候で無い場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。悪天候とは、雨天、降雪などである。例えば、判定部130は、天候情報の示す天候が悪天候である場合、第2閾値Th2を、より大きい値に変更することで、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、道路区画線の認識精度が低下する悪天候時に、姿勢情報を優先的に利用して判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。姿勢情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例については第1実施形態と同様である。
【0056】
判定部130は、対象車両Mのいる道路の曲率が第3閾値Th3以上である場合、オフセット情報を優先的に利用して、或いは曲率が第3閾値Th3未満である場合よりもオフセット情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。例えば、判定部130は、対象車両Mのいる道路の曲率が第3閾値以上である場合、第2閾値Th2を、より小さい値に変更することで、姿勢情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、対象車両Mの姿勢に基づく判定が難しくなるカーブ路においては、オフセット情報を優先的に利用して判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。オフセット情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例については第1実施形態と同様である。
【0057】
判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満である場合、姿勢情報を優先的に利用して、或いは認識精度が第4閾値Th4以上である場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。例えば、判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満である場合、第2閾値Th2を、より大きい値に変更することで、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、道路区画線の認識精度が低下している場合に、姿勢情報を優先的に利用して判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。姿勢情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例については第1実施形態と同様である。
【0058】
図7は、第2実施形態の移動体監視装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定周期で繰り返し実行される。
【0059】
まず、判定部130が、第2閾値Th2をデフォルト値に設定する(ステップS200)。次に、取得部120が、対象車両Mから各種情報を取得する(ステップS202)。
【0060】
次に、判定部130が、天候情報の示す天候が悪天候であるか否かを判定する(ステップS204)。天候情報の示す天候が悪天候であると判定した場合、判定部130は、第2閾値Th2を、より大きい値に変更する(ステップS206)。
【0061】
次に、判定部130は、対象車両Mの居る道路の曲率が第3閾値Th3以上であるか否かを判定する(ステップS208)。対象車両Mの居る道路の曲率が第3閾値Th3以上であると判定した場合、判定部130は、第2閾値Th2を、より小さい値に変更する(ステップS210)。
【0062】
次に、判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満であるか否かを判定する(ステップS212)。精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満であると判定した場合、判定部130は、第2閾値Th2を、より大きい値に変更する(ステップS214)。
【0063】
次に、判定部130は、前走車両mAと対象車両Mとの車間距離DAMが第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS216)。
【0064】
ステップS216において肯定的な判定結果が得られた場合、第1判定部132が、オフセット情報に基づいて車線変更の有無を判定する(ステップS218)。ステップS216において否定的な判定結果が得られた場合、第2判定部134が、姿勢情報に基づいて車線変更の有無を判定する(ステップS220)。
【0065】
以上説明した第2実施形態によれば、対象車両Mに搭載されたカメラ10の撮像画像に基づき認識された対象車両Mと道路区画線との距離を表すオフセット情報と、対象車両Mに搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、対象車両Mと同じ車線において対象車両Mの直前を走行する前走車両mAと対象車両Mとの車間距離を表す車間距離情報とを取得する取得部120と、オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定する判定部130と、を備え、判定部130は、前走車両mAと対象車両Mの車間距離が長い程、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定するため、より正確に車線変更の有無を判定することができる。
【0066】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について説明する。第3実施形態において、対象車両Mの通信装置50は、(1)画像認識装置12により導出された道路区画線との距離を表すオフセット情報および道路区画線の認識に関する精度情報、(2)ヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報、(3)速度センサにより検出された速度を表す速度情報、(4)前走車両mAと対象車両Mとの車間距離を表す車間距離情報、(5)対象車両Mの位置情報などを上記各構成から取得し、取得した情報をネットワークNWを介して移動体監視装置100に送信する。通信装置50は、上記各構成から各種制御装置を介して情報を取得してもよい。
【0067】
第3実施形態において、判定部130は、オフセット情報と姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。判定部130は、以下に説明するように、対象車両Mの速度が高い程、また前走車両mAと対象車両Mの車間距離が長い程、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定し、対象車両Mの速度が低い程、また前走車両mAと対象車両Mの車間距離が短い程、姿勢情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。
【0068】
例えば、判定部130は、対象車両Mの速度VMが第1閾値Th1以上であり且つ前走車両mAと対象車両Mの車間距離DAMが第2閾値Th2以上である場合、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定する。このとき、第1判定部132が判定を行う。第1判定部132は、例えば、対象車両Mと道路区画線との距離DL(二つの距離があるが、小さい方を採用するものとする)がゼロに近づいてマイナスになった(あるいは車線の切り替わりに伴って左右反対側の距離DLとしてゼロ近辺の値が取得された)場合に、対象車両Mが車線変更を行ったと判定する。
【0069】
判定部130は、対象車両Mの速度VMが第1閾値Th1未満である場合、または前走車両mAと対象車両Mの車間距離DAMが第2閾値Th2未満である場合、姿勢情報に基づいて対象車両Mが車線変更したか否かを判定する。このとき、第2判定部134が判定を行う。ここでは、姿勢情報は角速度(ヨーレート)であるものとする。第2判定部134は、例えば、対象車両Mの角速度の累積値から求められる、直進走行軌跡(角速度が略ゼロであった区間の走行軌跡をいう)に対する方位角を時系列に求め、方位角と速度から対象車両Mの道路幅方向の移動量を求め、道路幅方向の移動量が、例えば一般的な車線幅(例えば4[m]程度に設定される)の1/2を超えた場合に、対象車両Mが車線変更を行ったと判定する。姿勢情報が方位角の情報である場合、その方位角を直接的に使用すればよい。第1閾値Th1は、例えば30[km/h]程度の値であり、第2閾値Th2は、例えば10[m]程度の値である。これらの数値はあくまで例示であり、本発明の権利範囲を限定するものでは無い。
【0070】
上記の処理の趣旨については、第1実施形態で説明した通りである。
【0071】
判定部130は、天候情報の示す天候が悪天候である場合、姿勢情報を優先的に利用して、或いは天候が悪天候で無い場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。悪天候とは、雨天、降雪などである。例えば、判定部130は、天候情報の示す天候が悪天候である場合、第1閾値Th1と第2閾値Th2のうち一方または双方を、より大きい値に変更することで、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、道路区画線の認識精度が低下する悪天候時に、姿勢情報を優先的に利用して判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。姿勢情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例については第1実施形態と同様である。
【0072】
判定部130は、対象車両Mのいる道路の曲率が第3閾値Th3以上である場合、オフセット情報を優先的に利用して、或いは曲率が第3閾値Th3未満である場合よりもオフセット情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。例えば、判定部130は、対象車両Mのいる道路の曲率が第3閾値以上である場合、第1閾値Th1と第2閾値Th2のうち一方または双方を、より小さい値に変更することで、姿勢情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、対象車両Mの姿勢に基づく判定が難しくなるカーブ路においては、オフセット情報を優先的に利用して判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。オフセット情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例については第1実施形態と同様である。
【0073】
判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満である場合、姿勢情報を優先的に利用して、或いは認識精度が第4閾値Th4以上である場合よりも姿勢情報の利用度合いを高めて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定してもよい。例えば、判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満である場合、第1閾値Th1と第2閾値Th2のうち一方または双方を、より大きい値に変更することで、オフセット情報に基づいて移動体が車線変更したか否かを判定しにくくする。これによって、道路区画線の認識精度が低下している場合に、姿勢情報を優先的に利用して判定を行うことになり、判定精度の低下を抑制することができる。姿勢情報の利用度合いを高めて対象車両Mが車線変更したか否かを判定することの他の例については第1実施形態と同様である。
【0074】
図8は、第3実施形態の移動体監視装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定周期で繰り返し実行される。
【0075】
まず、判定部130が、第1閾値Th1と第2閾値Th2をデフォルト値に設定する(ステップS300)。次に、取得部120が、対象車両Mから各種情報を取得する(ステップS302)。
【0076】
次に、判定部130が、天候情報の示す天候が悪天候であるか否かを判定する(ステップS304)。天候情報の示す天候が悪天候であると判定した場合、判定部130は、第1閾値Th1と第2閾値Th2のうち一方または双方を、より大きい値に変更する(ステップS306)。
【0077】
次に、判定部130は、対象車両Mの居る道路の曲率が第3閾値Th3以上であるか否かを判定する(ステップS308)。対象車両Mの居る道路の曲率が第3閾値Th3以上であると判定した場合、判定部130は、第1閾値Th1と第2閾値Th2のうち一方または双方を、より小さい値に変更する(ステップS310)。
【0078】
次に、判定部130は、精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満であるか否かを判定する(ステップS312)。精度情報の示す認識精度が第4閾値Th4未満であると判定した場合、判定部130は、第1閾値Th1と第2閾値Th2のうち一方または双方を、より大きい値に変更する(ステップS314)。
【0079】
次に、判定部130は、対象車両Mの速度が第1閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップS316)。対象車両Mの速度が第1閾値Th1以上であると判定した場合、判定部130は、前走車両mAと対象車両Mとの車間距離DAMが第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS318)。
【0080】
ステップS316とS318の双方において肯定的な判定結果が得られた場合、第1判定部132が、オフセット情報に基づいて車線変更の有無を判定する(ステップS320)。ステップS316とS318の少なくともいずれかにおいて否定的な判定結果が得られた場合、第2判定部134が、姿勢情報に基づいて車線変更の有無を判定する(ステップS322)。
【0081】
以上説明した第3実施形態によれば、対象車両Mに搭載されたカメラ10の撮像画像に基づき認識された対象車両Mと道路区画線との距離を表すオフセット情報と、対象車両Mに搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、対象車両Mの速度を表す速度情報と、対象車両Mと同じ車線において対象車両Mの直前を走行する前走車両mAと対象車両Mとの車間距離を表す車間距離情報とを取得する取得部120と、オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、対象車両Mが車線変更したか否かを判定する判定部130と、を備え、判定部130は、対象車両Mの速度が高い程、また前走車両mAと対象車両Mの車間距離が長い程、オフセット情報を優先的に利用して対象車両Mが車線変更したか否かを判定するため、より正確に車線変更の有無を判定することができる。
【0082】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について説明する。第1~第3実施形態では、移動体監視装置100は、対象車両Mから離れた場所に設置され、対象車両Mに搭載された通信装置50との間で行われる通信を介して、オフセット情報、姿勢情報、速度情報、車間距離情報その他の情報を取得するものとした。これに対し、第2実施形態では、移動体監視装置100Aは、対象車両Mに搭載され、車両内通信によってオフセット情報、姿勢情報、速度情報、車間距離情報、その他の情報を取得する。
【0083】
図9は、第4実施形態に係る移動体監視装置100Aの構成の一例を示す図である。移動体監視装置100Aは、対象車両Mに搭載され、通信部110Aは車両内ネットワークに接続するための通信インターフェース(例えばCANトランシーバなど)である。天候情報に関して、移動体監視装置100Aは、例えば、対象車両Mの通信装置(第1実施形態における通信装置50のような構成)を用いて、天候情報を配信しているサーバ(不図示)から対象車両Mの位置における天候情報を取得してもよいし、対象車両Mに設けられた雨量センサや照度センサの検出値に基づいて推定してよい。道路の曲率に関して、自身が保持する地図情報152を参照して取得してもよいし、カメラ10の撮像画像における道路区画線の分布(曲がり度合い)に基づいて算出してもよい。第4実施形態に係る移動体監視装置100Aの各構成要素は、第1~第3実施形態のいずれかと同様の処理を行う。
【0084】
第4実施形態に係る移動体監視装置100Aによる判定結果は、例えば、対象車両Mに搭載された運転支援装置や自動運転制御装置に提供され、自動車線変更の完了を判定するために用いられてよい。また、移動体監視装置100Aによる判定結果がネットワークNWを介してクラウドサーバに送信され、第1実施形態と同様に地図の作成や車線ごとの交通量の監視に用いられてもよい。
【0085】
以上説明した第4実施形態によれば、第1~第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0086】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体の速度を表す速度情報とを取得し、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定し、
前記判定する際に、前記速度が高い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定する、
ように構成されている、移動体監視装置。
【0087】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することもできる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
移動体に搭載されたカメラの撮像画像に基づき認識された前記移動体と道路区画線との距離を表すオフセット情報と、前記移動体に搭載されたヨーレートセンサまたは方位センサの検出値に基づく姿勢情報と、前記移動体と同じ車線において前記移動体の直前を走行する前走移動体と前記移動体との車間距離を表す車間距離情報とを取得し、
前記オフセット情報と前記姿勢情報とのうち少なくとも一方に基づいて、前記移動体が車線変更したか否かを判定し、
前記判定する際に、前記車間距離が長い程、前記オフセット情報を優先的に利用して前記移動体が車線変更したか否かを判定する、
ように構成されている、移動体監視装置。
【0088】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 カメラ
12 画像認識装置
20 車両センサ
30 レーダ装置
40 GPS受信機
50 通信装置
100、100A 移動体監視装置
110、110A 通信部
120 取得部
130 判定部
132 第1判定部
134 第2判定部
150 記憶部
152 地図情報