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特許7607473携帯端末、測位方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】携帯端末、測位方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20241220BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/0969
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021038232
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138377
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】小幡 一智
(72)【発明者】
【氏名】酒村 一到
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
(72)【発明者】
【氏名】神野 智施
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115980(JP,A)
【文献】特開2006-349964(JP,A)
【文献】特開2014-048265(JP,A)
【文献】特開2014-203398(JP,A)
【文献】特開2004-184418(JP,A)
【文献】特開2013-029472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0205238(US,A1)
【文献】米国特許第06622083(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 99/00
G09B 29/00 - 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末であって、
移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得部と、
前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記携帯端末の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得部と、
前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得部と、
前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理部と、
を含むことを特徴とする携帯端末
【請求項2】
前記相対情報取得部は、前記携帯端末が前記移動体に固定保持された際の姿勢を前記相対姿勢として取得することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末
【請求項3】
前記移動体測位装置との通信を行う通信部を含み、
前記通信部は、前記携帯端末が前記移動体に対して固定保持された後に前記移動体に対して相対的に姿勢が変化した際に、前記移動体測位装置に対して、姿勢変化の直前の時点での前記移動体の位置及び向きを示す情報の送信要求を行うことを特徴とする請求項2に記載の携帯端末
【請求項4】
前記通信部は、前記携帯端末を前記移動体に対して固定保持するための保持部から前記携帯端末が離間した場合に、前記移動体測位装置に対して前記送信要求を行うことを特徴とする請求項3に記載の携帯端末
【請求項5】
前記保持部は、前記携帯端末が固定保持された状態で、前記携帯端末により読み取り可能な近距離無線通信タグを有し、
前記通信部は、前記保持部から前記携帯端末が離間したことで、前記近距離無線通信タグが読み取れなくなった場合に、前記移動体測位装置に対して前記送信要求を行うことを特徴とする請求項4に記載の携帯端末
【請求項6】
前記相対情報取得部は、前記携帯端末が有する撮像部により撮像された前記移動体の室内の画像に基づいて、当該撮像が行われた際の姿勢を前記相対姿勢として取得することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末
【請求項7】
衛星信号の受信が不可となる特定の施設又は地域のマップ情報が記憶されているメモリと、
前記移動体が前記特定の施設又は地域に駐停車したことを検知した場合に前記メモリから前記マップ情報を読み出すマップ取得部と、を含み、
前記自律航法処理部は、
加速度を検出する加速度センサと、
角速度を検出するジャイロセンサと、
前記基準位置及び前記基準姿勢を初期情報として用いて、前記加速度及び前記角速度に基づき前記携帯端末の現在位置を算出する現在位置算出部と、
前記マップ情報にて示されるマップ上に前記現在位置を示すマークを重畳させた画像をディスプレイに表示させる表示処理部と、を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載の携帯端末
【請求項8】
前記携帯端末の基準座標系における移動方向を検出することができるセンサと、
前記センサの出力に基づいて前記携帯端末の移動方向に関する移動方向情報を取得する移動情報取得部と、を含み、
前記相対情報取得部は、前記携帯端末が前記移動体と共に移動する際の前記移動方向情報に基づいて、前記移動体に対する前記携帯端末の前記相対姿勢を取得することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末
【請求項9】
前記センサは加速度を検出する加速度センサを含み、
前記相対情報取得部は、前記加速度の方向に基づいて特定した前記携帯端末の移動方向と、前記移動体の向きとが一致すると仮定して前記移動体に対する前記携帯端末の前記相対姿勢を取得することを特徴とする請求項に記載の携帯端末
【請求項10】
前記自律航法処理部は、前記移動体のイグニッションがオフされた際、または前記移動体の移動が停止した際に、前記移動体情報取得部で取得された前記移動体の位置及び向きと、前記相対情報取得部で取得された前記相対位置及び前記相対姿勢とに基づき前記基準情報取得部が算出した前記基準位置及び前記基準姿勢を、自律航法による測位の前記初期情報として用いることを特徴とする請求項8または9に記載の携帯端末
【請求項11】
前記携帯端末が前記移動体の外に移動したか否かを判定する移動体外判定手段を含み、
前記自律航法処理部は、前記携帯端末が移動体外に移動したと判定された場合に、その判定直前に前記移動体情報取得部で取得された前記移動体の位置及び向きと、前記相対情報取得部で取得された前記相対位置及び前記相対姿勢とに基づき、前記基準情報取得部が算出した前記基準位置及び前記基準姿勢を、自律航法による測位の前記初期情報として用いることを特徴とする請求項8または9に記載の携帯端末
【請求項12】
携帯端末により実行される測位方法であって、
移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得ステップと、
前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記携帯端末の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得ステップと、
前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得ステップと、
前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理ステップと、を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項13】
携帯端末に含まれる制御部が実行するプログラムであって、
移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得ステップと、
前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記携帯端末の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得ステップと、
前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得ステップと、
前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理ステップと、を前記制御部に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
携帯端末に含まれるコンピュータで読取可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータに、
移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得ステップと、
前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記移動体測位装置の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得ステップと、
前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得ステップと、
前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理ステップと、実行させるプログラムが格納されていることを特徴とする記憶媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の位置を推定する自律航法装置、自律航法装置における測位方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯端末には、自身に搭載されている加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等を利用した慣性航法により、衛星からの電波が届かない地域や施設内でも当該携帯端末の現在位置を測位することが可能な自律航法機能が備わっている。
【0003】
ところで、慣性航法によって地理座標系(緯度、経度)の位置を測位するためには、測位の基点となる地理座標系の初期位置を取得しておく必要がある。
【0004】
そこで、衛星からの電波が届かない施設内のある地点に、その地点の地理座標系の位置を初期位置として表す位置情報が記憶されているNFC(Near Field Communication)タグを設置しておき、このNFCタグから、初期位置を取得するようにした携帯端末が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-42246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の携帯端末で初期位置を取得する為には、自律航法機能を利用する施設内に、地理座標系の初期位置を表す情報が記憶されているNFCタグ等の外部デバイスを設置しておかなければならない。
【0007】
よって、このような外部デバイスが用意されていない施設又は地域では、慣性航法で用いる初期位置及び初期姿勢を取得することができないので、精度の高い現在位置の推定を行うことが困難になるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、例えば衛星電波が届かない施設又は地域において、地理座標系の初期位置及び初期姿勢を提供する為の専用の外部デバイスが用意されていなくても、自律航法による精度の高い位置測位等を行うことが可能な自律航法装置、自律航法装置の測位方法、プログラム及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、携帯端末であって、移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得部と、前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記携帯端末の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得部と、前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得部と、前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項12に記載の発明は、携帯端末により実行される測位方法であって、移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得ステップと、前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記携帯端末の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得ステップと、前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得ステップと、前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項13に記載の発明は、携帯端末に含まれる制御部が実行するプログラムであって、移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得ステップと、前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記携帯端末の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得ステップと、前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得ステップと、前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理ステップと、を前記制御部に実行させることを特徴とする。
【0012】
請求項14に記載の発明は、携帯端末に含まれるコンピュータで読取可能な記憶媒体であって、前記コンピュータに、移動体に搭載される移動体測位装置から前記移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する移動体情報取得ステップと、前記移動体の室内に前記携帯端末が位置する際の、前記移動体に対する前記移動体測位装置の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する相対情報取得ステップと、前記移動体情報及び前記相対情報に基づいて、前記携帯端末の基準位置及び基準姿勢を算出する基準情報取得ステップと、前記基準姿勢及び前記基準位置を初期情報として用いた自律航法による測位処理を実行する自律航法処理ステップと、実行させるプログラムが格納されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自律航法システムの概要を示す図である。
図2】端末ホルダの外観を概略的に表す斜視図である。
図3】携帯端末の構成を示すブロック図である。
図4】位置測位制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5】表示制御ルーチンを示すフローチャートである。
図6】位置測位制御ルーチンの他の一例を示すフローチャートである。
図7図6に示す位置測位制御ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
図8】位置測位制御ルーチンの他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る自律航法装置としての携帯端末10を含む自律航法システム100の概要を示す図である。
【0016】
自律航法システム100は、携帯型の自律航法装置である携帯端末10と、移動体としての車両Mに搭載されている車両測位装置20及び端末ホルダ30と、を含む。
【0017】
携帯端末10は、例えば、加速度センサ及びジャイロセンサを含み、これらセンサの検出結果に基づき自身の位置及び移動方向を測位する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)の機能を備えた、スマートフォン等の携帯型の情報端末である。携帯端末10は、慣性計測に基づく自律航法を実行可能であると共に、衛星からの電波に基づく衛星航法により、自己位置を測位可能である。すなわち、携帯端末10は、衛星航法が実行可能な場合は衛星航法により自己位置を測位し、衛星航法が実行不能な場合は自律航法により自己位置を推定する。
【0018】
携帯端末10が、自律航法により自己位置を推定するためには、推定の基点となる携帯端末10の地理座標系の初期位置と携帯端末10の初期姿勢を取得しておく必要がある。本実施例における携帯端末10は、当該推定の基点となる初期位置及び初期姿勢を、車載ナビゲーション装置である車両測位装置20により取得された車両Mの位置及び向きを示す車両情報に基づいて取得する。
【0019】
車両測位装置20は、車両Mの地理座標系での位置及び向きを測位する測位装置であり、例えば、測位部21、衛星受信器23、IMU25及び車速センサ27を含む。
【0020】
IMU25は、車両Mの加速度を検出する加速度センサ及び車両Mの角速度を検出するジャイロセンサを含む慣性計測装置である。IMU25は、加速度センサ及びジャイロセンサの検出結果に基づき車両Mの走行時の加速度や移動方向を示す慣性情報を取得する。IMU25は、取得した慣性情報を測位部21に供給する。
【0021】
車速センサ27は、例えば、車両Mの車速パルス又は車輪速から当該車両Mの走行速度を示す速度情報を検出し、これを測位部21に供給する。
【0022】
衛星受信器23は、例えばGPS(Global Positioning System)衛星やQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)衛星等から送信された位置測位用の衛星信号を受信する衛星アンテナを含む。衛星受信器23は、受信した衛星信号を測位部21に供給する。
【0023】
測位部21は、衛星受信器23から衛星信号を受けている間は、当該衛星信号に基づき、地理座標系における車両Mの位置(緯度、経度、高度)及び向き(方位)を測位することで、当該車両Mの位置及び向きを示す車両情報を取得する。尚、衛星信号の受信が不可となった場合には、測位部21は、受信不可となった直前に取得した車両情報を初期情報として用いた、慣性情報及び速度情報に基づく自律航法測位を行うことで、上記した車両情報を継続して取得する。なお、測位部21は、例えばマップマッチング機能を有し、車両Mの位置(緯度、経度、高度)を車両走行が可能な領域(例えば道路又は施設内の駐車場等)に引き込む補正を行うことで、正確な車両情報を取得することができる。
【0024】
このように、車両測位装置20は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)による衛星航法と、自律航法との組み合わせによるハイブリット航法を採用した車載ナビゲーション装置である。
【0025】
更に、車両測位装置20は、例えばBluetooth(登録商標)規格に準拠した無線通信機能を備えている。これにより、車両測位装置20は、例えば、車両Mの駐停車(例えば、イグニッションオフ)時、又は携帯端末10からのリクエスト時に、測位部21が測位した車両情報(車両Mの位置及び向き)を携帯端末10に無線送信する。なお、無線通信機能としては、Bluetooth(登録商標)規格以外の他の規格、例えばIEEE802.11通信規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)機能を採用し、インターネット接続網に接続可能となっていてもよい。この際、例えば車両Mの停車時に測位部21が測位した車両Mの位置及び方位を示す車両情報を、インターネット接続網を介して車両情報を保存するサーバ(図示せず)に送信し、携帯端末10が当該サーバにインターネット網を介して接続するようにしてもよい。すなわち、車両測位装置20と携帯端末10とが、外部のサーバ装置を介して接続されるようにしてもよい。また、上記した車両測位装置20及び携帯端末10間の通信を無線通信ではなく、例えばユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)等の配線を経由した有線通信を行うようにしても良い。
【0026】
端末ホルダ30は、車両Mのダッシュボード、センターコンソール又はフロントガラスに設置され、携帯端末10を所定の姿勢で且つ着脱自在に載置及び保持する。
【0027】
図2は、端末ホルダ30の外観を概略的に表す斜視図である。
【0028】
端末ホルダ30は、支持部31、稼働アーム32、及びホルダ本体部33を有する。支持部31の下面には、車両Mのダッシュボード、センターコンソール又はフロントガラス等の表面に固定されるパッド(図示せず)が設けられており、その上面に稼働アーム32の一端が結合されている。
【0029】
ホルダ本体部33は、背板33a、側板33b、33c、及び底板33dを有する。背板33aの裏面には稼働アーム32の他端が結合されている。背板33aの四辺のうちの右側辺及び左側辺には、携帯端末10を両サイドから挟んで保持する為の側板33b及び33cが形成されており、その底辺には、携帯端末10が載置される底板33dが形成されている。
【0030】
すなわち、端末ホルダ30は、携帯端末10を載置及び保持する保持部(33)と、当該保持部を車両Mの室内(ダッシュボード、センターコンソール、フロントガラス等)に固定設置する為の支持機構部(31、32)と、を有する。尚、保持部(33)は、携帯端末10を、所定の姿勢、例えばその裏面の向く方向が車両Mの向きと一致する姿勢(所定姿勢)で載置及び固定保持する。
【0031】
また、背板33aには、端末検知センサCSが設置されている。
【0032】
端末検知センサCSとしては、例えば、携帯端末10から無線給電を受けて動作し、携帯端末10の通信部に情報を送信する、近距離無線(Near Field Communication)規格に準拠したICタグ(以下、近距離無線タグとも呼ぶ)を採用する。
【0033】
携帯端末10は、携帯端末10がホルダ本体部33に一旦保持された後に、当該ホルダ本体部33から離間された際に、自律航法による測位の基点となる地理座標系の基準位置(緯度、経度、高度)及び基準姿勢を示す基準情報を取得し、当該基準情報を自律航法での初期情報として用いた自律航法処理を実行する。これにより、携帯端末10は、衛星からの電波が届かない施設又は地域内において地理座標系で表される現在位置の測位を実現する。
【0034】
図3は、携帯端末10の構成のうちから、基準情報の取得及び自律航法処理を行うのに必要となる構成を抜粋して示すブロック図である。
【0035】
携帯端末10は、システムバス11に接続されている記憶部12、制御部13、通信部14、出力部15、IMU(Inertial Measurement Unit)16、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用した測位を行う衛星測位部17、及び撮像部18からなる機能ブロックを含む。
【0036】
記憶部12は、例えばハードディスク装置、SSD(solid state drive)、フラッシュメモリ等からなり、オペレーティングシステムや、後述する位置測位制御及び表示制御等を含む各種制御を担うプログラムが記憶されている。尚、記憶部12に記憶されているプログラムは、インターネット等の情報通信網、或いはコンピュータが読み取り可能な半導体、磁気ディスク又は光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で、携帯端末10に提供されたものである。
【0037】
また、記憶部12には、例えば衛星アンテナを基点とした端末ホルダ30の相対位置、つまり端末ホルダ30に保持されている携帯端末10の車両内での相対位置と、当該携帯端末10の車両Mの向きに対する相対姿勢と、を示す相対情報が予め記憶されている。尚、携帯端末10が端末ホルダ30に保持された際に、携帯端末10の裏面の向く方向が車両Mの前方方向と等しくなるような姿勢(所定姿勢)で保持される場合は、携帯端末10の車両Mに対する相対姿勢は車両Mの前方方向と同一として表され、携帯端末10の裏面の向く方向が車両Mの前方方向に対して傾いた姿勢で保持される場合は、携帯端末10の車両Mに対する相対姿勢は当該傾きで表される。
【0038】
更に、記憶部12には、道路、駐車場及び各種施設が表示されている地図を表す通常のマップ情報と共に、衛星信号の受信が不可となる特定の施設又は地域内の地図を表す特定マップ情報等が記憶されている。なお、上記した各種プログラム、通常マップ情報及び特定マップ情報は、例えば、サーバ装置等からインターネットを介して取得しても良いし、或いはコンピュータ読み取り可能な光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ等の記録媒体から読み取られたものであっても良い。
【0039】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)13A、ROM(Read Only Memory)13B、RAM(Random Access Memory)13C等により構成される。そして、CPU13Aが、ROM13Bや記憶部12に記憶されている各種プログラムを読み出し、それを実行することで、携帯端末10の現在位置の測位や、現在位置を示す地図画像の表示等を実現する。
【0040】
通信部14は、例えばBluetooth(登録商標)規格で無線通信可能な通信装置である。また、通信部14は、近距離無線タグの情報を読み取り可能なリーダー装置を含んでいても良い。通信部14は、車両Mに搭載されている車両測位装置20、及び端末ホルダ30の端末検知センサCS等と通信可能となっている。尚、車両測位装置20は、車両Mのイグニッション状態、及びシフトレバーのポジション等の車両Mの駐停車状態を示す情報である駐停車状態情報を車両Mから取得可能である。
【0041】
通信部14は、携帯端末10が端末ホルダ30に保持される状態において、端末検知センサCSである近距離無線タグの情報を読み取り可能である。通信部14は、携帯端末10が端末ホルダ30から離間されて近距離無線タグの情報を読み取れなくなった際に、車両測位装置20に対して車両情報を要求する車両情報要求信号を送信すると共に、当該車両測位装置20から送信された車両情報を含む車両情報信号を受信し、これを制御部13に供給する。更に、通信部14は、車両測位装置20との通信により、車両Mの駐停車状態情報を車両測位装置20から取得し、制御部13に供給する。
【0042】
なお、車両測位装置20がインターネット接続網を介してサーバに車両情報を送信する場合、通信部14は、IEEE802.11通信規格に準拠した通信装置であってもよい。また、この際、通信部14は、周囲のアクセスポイントを経由してインターネットに接続し、所定のサーバから車両情報を取得してもよい。更に、通信部14は、電気通信事業者が提供するWAN(Wide Area Network)を介してインターネットに接続可能な機能を備えていても良い。
【0043】
出力部15は、例えばディスプレイ15A及びスピーカ15B等の情報出力装置からなり、制御部13から供給された画像信号及び音声信号に基づく画像表示及び音声出力を行う。例えば、携帯端末10の位置(緯度、経度、高度)を示すマークが重畳された地図画像を表す画像信号が供給された場合、ディスプレイ15Aは、この地図画像を表示することで、携帯端末10の所持者に現在位置を知らせる。
【0044】
IMU16は、加速度センサ16A及びジャイロセンサ16Bを含む慣性計測装置である。加速度センサ16Aは、携帯端末10の移動に伴い当該携帯端末10に掛かる3次元座標の3軸の各方向での加速度を検出する。ジャイロセンサ16は、携帯端末10の回転角速度を検出する。IMU16は、加速度センサ16A及びジャイロセンサ16Bの検出結果(加速度、角速度)に基づき、携帯端末10に掛かる移動又は回転角等を示す慣性情報を取得し、これを制御部13に供給する。
【0045】
衛星測位部17は、例えばGPS衛星やQZSS衛星等から送信された位置測位用の衛星信号を受信する衛星アンテナを含み、受信した衛星信号に基づき、地理座標系における携帯端末10の位置(緯度、経度、高度)及び向き(方位)を測位する。衛星測位部17は、測位した車両Mの位置(緯度、経度、高度)を表す端末位置信号を制御部13に供給する。
【0046】
撮像部18は、携帯端末10に搭載された、例えば、カメラ等の撮像装置である。撮像部18は、撮像した画像を制御部13に送信する。
【0047】
制御部13は、ユーザ操作による位置測位実行指令を受けると、携帯端末10の地理座標系の位置を測位する為の位置測位制御を担うプログラムを記憶部12から読み出し、当該位置測位制御を実行する。
【0048】
図4は、制御部13が実行する位置測位制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0049】
図4において、制御部13は、端末検知センサCSとしての近距離無線タグの情報を読み取れなくなったか否かを判定、つまり携帯端末10が端末ホルダ30に保持されている状態から離間したか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、ステップS11において、制御部13は、携帯端末10が端末ホルダ30によって車両Mに固定保持された後に、当該車両Mに対する相対的な姿勢が変化したか否かを判定する。ステップS11において、携帯端末10が端末ホルダ30から離間していないと判定された場合、制御部13は、この位置測位制御ルーチンを抜けて一旦、メインフロー(図示せぬ)の処理に戻り、その後、例えば所定期間毎に当該位置測位制御ルーチンを実行する。
【0050】
ステップS11において、端末ホルダ30に保持されていた携帯端末10が当該端末ホルダ30から離間したと判定された場合、制御部13は、車両情報を要求する車両情報要求信号を車両測位装置20に送信させるべく通信部14を制御する(ステップS12)。すなわち、制御部13は、携帯端末10が端末ホルダ30によって車両Mに固定保持された後に、当該車両Mに対する相対的な姿勢が変化したと判定した場合に、車両情報要求信号を車両Mに搭載されている車両測位装置20に送信させるのである。
【0051】
次に、制御部13は、通信部14が車両情報信号を受信したか否かの判定(ステップS13)を、当該車両情報信号を受信するまで行う。
【0052】
ステップS13において、車両情報信号を受信したと判定した場合、制御部13は、受信した車両情報信号にて示される車両情報(地理座標系での車両Mの位置及び向き)をRAM13Cに記憶する(ステップS14)。
【0053】
次に、制御部13は、記憶部12に記憶されている相対情報、つまり車両内での携帯端末10の相対位置、及び車両の向きに対する携帯端末10の相対姿勢を表す相対情報を記憶部12から読み出し、これをRAM13Cに書き込む(ステップS15)。ここでの相対情報とは、携帯端末10が端末ホルダ30によって車両Mに固定保持された際における車両内での携帯端末10の相対位置、及び車両の向きに対する携帯端末10の相対姿勢を示すものであって、ユーザ操作等により予め記憶部12に記憶させておいたものである。
【0054】
次に、制御部13は、RAM13Cに記憶されている車両情報及び相対情報に基づき、携帯端末10の地理座標系での基準位置及び基準姿勢を示す基準情報を取得する(ステップS16)。ここで、車両情報にて示される車両の位置(緯度、経度、高度)とは、厳密には衛星受信器23が設置されている位置であり、相対情報にて示される相対位置とは、当該衛星受信器23を基点とした携帯端末10の相対位置である。よって、これら車両の位置と相対位置とにより、携帯端末10の地理座標系での位置を表す基準位置が求まる。また、携帯端末10は、端末ホルダ30に載置及び固定保持された状態で、車両Mと同一の方向に移動する。よって、車両情報にて示される地理座標系での車両の向き(方位)と、相対情報にて示される携帯端末10の車両の向きに対する相対姿勢とにより、携帯端末10の地理座標系での姿勢を表す基準姿勢が求まる。
【0055】
次に、制御部13は、ステップS16で求めた基準位置及び基準姿勢を自律航法の初期情報として用いた自律航法処理を実行する(ステップS17)。すなわち、制御部13は、地理座標系で表される基準位置及び基準姿勢を初期情報として用いて、IMU16の加速度センサ16A及びジャイロセンサ16Bの検出結果に基づき、携帯端末10の移動後の位置を逐次算出する(自律航法処理)。なお、ステップS17において、衛星測位部17による衛星測位が可能な場合は、自律航法に代えて衛星航法による現在位置の測位を行うようにしてもよい。
【0056】
ここで、制御部13は、その現在位置を知らせる画像をディスプレイ15Aに表示させる表示制御を担うプログラムを記憶部12から読み出し、自律航法または衛星航法の実行中において、所定期間毎にその表示制御を実行する。
【0057】
図5は、制御部13が実行する表示制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0058】
図5において、先ず、制御部13は、駐停車状態情報に基づき車両Mが駐停車しているか否かを判定する(ステップS171)。ステップS171において車両Mが駐停車していると判定した場合、制御部13は、記憶部12に記憶されている各種マップ情報のうちから、ステップS17の測位で取得した現在位置が含まれるマップ情報を検索する(ステップS172)。
【0059】
次に、制御部13は、検索したマップ情報が通常マップ情報であるか否かを判定する(ステップS173)。
【0060】
ステップS173にて通常マップ情報であると判定した場合、制御部13は、当該通常マップ情報にて示される地図上に、上記した現在位置を示すマークを重畳した地図画像をディスプレイ15Aに表示させる(ステップS174)。
【0061】
また、ステップS173において通常マップ情報ではないと判定した場合、制御部13は、特定マップ情報にて示される地図上に、上記した現在位置を示すマークを重畳した地図画像をディスプレイ15Aに表示させる(ステップS175)。
【0062】
上記したステップS174、S175の終了後、又は上記したステップS171において車両Mが駐停車していないと判定した場合、この表示制御ルーチンを抜けて図4に示すステップS17の自律航法処理の実行に移る。
【0063】
このように、実施例1による携帯端末10は、車両Mに搭載されている車両測位装置20(ナビゲーション装置)から、この車両測位装置20で測位された地理座標系の位置(緯度、経度、高度)及び車両Mの向きを示す車両情報を取得する(S12~S14)。更に、車両Mに設置した端末ホルダ30に携帯端末10を所定の姿勢(例えば、携帯端末10の裏面を車両Mの向きと同一方向に向けた姿勢)で保持させておくことで、車両Mの位置に対する携帯端末10の相対位置及び相対姿勢を表す相対情報を得る。次に携帯端末10は、取得した車両情報及び相対情報に基づき、携帯端末10の地理座標系の位置を基準位置(初期位置)として算出すると共に、当該基準位置での携帯端末10の姿勢を基準姿勢(初期姿勢)として算出する(S16)。そして、携帯端末10は、これら基準位置及び基準姿勢を初期情報として用いた自律航法処理を実行する(S17)ことで、携帯端末10の現在位置を測位する。
【0064】
よって、例えば携帯端末10を端末ホルダ30に保持させた状態で車両Mが衛星からの電波が届きにくい屋内駐車場内を走行した後に任意の駐車位置に駐停車した場合、この駐車位置で携帯端末10を端末ホルダ30から離間させると、携帯端末10は、衛星信号による測位が不能な場合でも比較的高精度な測位が可能な車両Mの車載ナビゲーション装置から当該車両Mの地理座標系の位置及び向きを示す車両情報を取得する。そして、携帯端末10は、当該車両情報と、車両Mの位置及び向きに対する携帯端末10の相対位置及び相対姿勢とに基づき、自律航法による測位の基点となる基準位置(初期位置)及び基準姿勢(初期姿勢)を示す初期情報を求める。
【0065】
したがって、携帯端末10によれば、衛星電波が届かない施設又は地域において、上記した初期情報を提供する為の専用の外部デバイスが用意されていなくても、比較的高精度な初期情報を用いた自律航法により、その施設又は地域内において精度の高い現在位置の測位を行うことが可能となる。
【0066】
尚、上記実施例では、携帯端末10がホルダ本体部33から離間することで近距離無線タグの情報を読み取れなくなった場合に、当該携帯端末10から車両情報要求信号を送信することで車両測位装置20に車両情報の要求をおこなっている。
【0067】
しかしながら、携帯端末10がホルダ本体部33に保持されていることを検知する端末検知センサCSが、ホルダ本体部33に保持されていた携帯端末10が当該ホルダ本体部33から離間したことを検知した際に、車両測位装置20に対して車両情報の要求をおこなってもよい。この場合、例えば、端末検知センサCSを光電センサ及び通信回路とし、携帯端末10がホルダ本体部33に一旦保持された後に、当該ホルダ本体部33から離間したことを検知した場合に、端末検知センサCSの通信回路が携帯端末10に通知を行い、この通知を受けた携帯端末10が、車両測位装置20に対して車両情報を要求するようにしてもよい。
【0068】
また、この際、ホルダ本体部33に設置されている通信回路から直接、車両測位装置20に対して車両情報要求信号を送信するようにしても良い。つまり、端末検知センサCSにより携帯端末10の離間が検知された場合に、当該通信回路が、車両測位装置20に車両情報要求信号を送信するのである。
【0069】
また、携帯端末10において周辺の明るさを検知すべく設けられている光センサを利用することで、当該携帯端末10がホルダ本体部33から離間したことを検知することも可能である。この際、携帯端末10がホルダ本体部33から離間したことを当該光センサによって検知した場合に、当該携帯端末10は、車両情報要求信号を車載ナビゲーション装置(20)に送信する。かかる構成によれば、ホルダ本体部33には端末検知センサCSが不要となる。
【実施例2】
【0070】
また、上記した実施例1では、車両Mに設置した端末ホルダ30に携帯端末10を載置及び保持させておくことで、車両Mの地理座標系の位置に対する携帯端末10の相対位置及び相対姿勢を取得できるようにしている。
【0071】
しかしながら、車両M内において、端末ホルダ30以外の場所、例えば空き座席の上、或いは乗員の服又は鞄の中に携帯端末10が存在する状態でも携帯端末10の相対姿勢を取得することが可能である。
【0072】
図6は、かかる点に鑑みて為された位置測位制御ルーチンの他の一例を示すフローチャートである。
【0073】
尚、図6に示す位置測位制御ルーチンでは、図4に示すステップS11を削除し、ステップS15に代えてステップS201~S204を採用したものである。この際、図6に示す位置測位制御ルーチンにおけるステップS12~S14、S16及びS17については、図4に示すものと同一である。
【0074】
すなわち、図6において、先ず、制御部13は、ステップS12~S14を実行することで車両情報を取得する。ステップS14の実行後、制御部13は、加速度センサ16Aにて検出された加速度に基づき、携帯端末10における基準座標系での携帯端末10の移動方向を特定する(ステップS201)。
【0075】
次に、制御部13は、車両Mと共に携帯端末10が移動していると仮定して、すなわち当該特定した移動方向と上記した車両情報にて示される車両の前方方向(すなわち進行方向)とが一致すると仮定して、車両Mに対する携帯端末10の相対姿勢を取得する(ステップS202)。
【0076】
次に、制御部13は、当該相対位置及び相対姿勢を表す相対情報をRAM13Cに書き込む(ステップS203)。
【0077】
次に、制御部13は、車両Mの駐停車状態情報に基づき車両Mが駐停車している状態かを判定する(ステップS204)。
【0078】
ステップS204において、車両Mが駐停車していないと判定した場合、制御部13は、この位置測位制御ルーチンを抜けて一旦、メインフロー(図示せず)の処理に戻り、その後、例えば所定期間毎に位置測位制御ルーチンを実行する。
【0079】
一方、ステップS204において車両Mが駐停車していると判定した場合、制御部13は、ステップS16の実行に移る。すなわち、制御部13は、RAM13Cに記憶されている、駐停車直前に取得した車両情報及び相対情報に基づき、携帯端末10の地理座標系での基準位置及び基準姿勢を示す基準情報を取得する(ステップS16)。
【0080】
そして、制御部13は、取得した基準位置及び基準姿勢を自律航法の初期情報として用いて、前述した自律航法処理を実行する(ステップS17)。なお、ステップS17において、衛星測位部17による衛星測位が可能な場合は、自律航法に代えて衛星航法による現在位置の測位を行うようにしてもよい。
【0081】
尚、図6に示す一例では、車両Mの駐停車をトリガとして基準情報の取得処理(S16)及び自律航法処理(S17)を実行しているが、携帯端末10が車両Mの外に移動したときに基準情報の取得処理(S16)及び自律航法処理(S17)を実行しても良い。
【0082】
図7は、かかる点に鑑みて為された、図6に示す位置測位制御ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【0083】
尚、図7は、図6に示す位置測位制御ルーチンの変形例であり、ステップS204に代えてステップS304を採用した点を除く他の各ステップは図6に示す各ステップと同一である。そこで、以下に、ステップS304の動作のみ説明する。
【0084】
制御部13は、携帯端末10が車両Mの外に移動したか否かを判定する(ステップS304)。例えば、制御部13は、通信部14を介して車両Mに搭載されているスマートエントリーシステム(図示せず)において車両Mから無線送信されるポーリング信号を受信し、このポーリング信号が受信不可な状態に推移したときに携帯端末10が車両Mの外に移動したと判定する。
【0085】
上記したように、図6図7に示す位置測位制御ルーチンでは、先ず、車両Mと共に移動する携帯端末10の基準座標系における移動方向を検出可能なセンサ、つまり加速度センサ16Aの出力結果により、携帯端末10の移動方向に関する移動方向情報を取得する(S201)。そして、車両Mの駐停車(すなわち移動の停止)またはイグニッションオフの直前、若しくは携帯端末10が車両Mの外に移動する直前に取得した携帯端末10の移動方向情報に基づき、車両Mに対する携帯端末10の相対姿勢を取得する(S202)。
【0086】
また、図6図7に示す実施例では、車両情報の取得(S12~S14)を、相対情報を取得(S15、S201~S203)する前に実施しているが、相対情報を取得した後に車両情報の取得を行うようにしても良い。
【実施例3】
【0087】
また、上記した実施例1では、車両Mに設置した端末ホルダ30に携帯端末10を載置及び保持させておくことで、車両Mの地理座標系の位置に対する携帯端末10の相対位置及び相対姿勢を取得できるようにしている。
【0088】
しかしながら、携帯端末10の撮影操作を実行するにより、車両M内において任意のタイミングで携帯端末10の相対姿勢を取得することが可能である。
【0089】
図8は、かかる点に鑑みて為された位置測位制御ルーチンの他の一例を示すフローチャートである。
【0090】
尚、図8に示す位置測位制御ルーチンでは、図4に示すステップS11に代えてステップS301、S302を採用したものである。この際、図8に示す位置測位制御ルーチンにおけるステップS12~S17については、図4に示すものと同一である。
【0091】
すなわち、図8において、先ず、制御部13は、ユーザ操作により撮像部18で撮像された車両Mの室内画像を取得する(ステップS301)。ステップS301において、制御部13は、ユーザ操作による位置測位実行指令を受けると、車両Mの室内から常に視認可能な予め設定された対象物(例えば、ステアリングやダッシュボート等)を撮像する旨の指示画像をディスプレイ15Aに表示させるか、又は音声メッセージをスピーカ15Bより出力させ、ユーザ操作により撮像された車両Mの室内画像を取得する。
【0092】
次に、制御部13は、ステップS301において取得された室内画像を解析することで、撮像が行われた際の携帯端末10の車両Mに対する相対位置及び相対姿勢を示す相対情報を取得する(ステップS302)。例えば、携帯端末10の記憶部12には、予め既知の複数の相対位置及び相対姿勢から車両Mの室内から常に視認可能な予め設定された対象物(例えば、ステアリングやダッシュボート等)を撮像した複数の参照画像が記憶されている。制御部13は、取得した室内画像中と参照画像中の特徴点の配置及びサイズ比とを比較し、参照画像の有する相対位置及び相対姿勢からのずれ量を算出し、参照画像の有する相対位置及び相対姿勢に当該算出したずれ量を補正することにより、携帯端末10の車両Mに対する正確な相対位置及び相対姿勢を示す相対情報を取得する。そして、取得された相対情報は記憶部12に記憶される。
【0093】
その後、実施例1と同様に、ステップS12~ステップS14を実行することで、制御部13は、車両測位装置20から車両Mの位置及び向きを示す車両情報を受信して、RAM13Cに記憶する。次に、ステップS15において、制御部13は、記憶部12に記憶されている相対情報を記憶部12から読み出し、これをRAM13Cに書き込む。そして、ステップS16において、制御部13は、RAM13Cに記憶されている車両情報及び相対情報に基づき、携帯端末10の地理座標系での基準位置及び基準姿勢を示す基準情報を取得し、ステップS17において、基準情報が示す基準位置及び基準姿勢を自律航法の初期情報として用いた自律航法処理を実行する。
なお、実施例3においても実施例1と同様に、ステップS17において、衛星測位部17による衛星測位が可能な場合は、自律航法に代えて衛星航法による現在位置の測位を行うようにしてもよい。
【0094】
この様に実施例3においては、車両Mの室内に携帯端末10が位置する際に、乗員が携帯端末10により車両Mの室内から常に視認可能な予め設定された対象物を撮像することにより、携帯端末10の制御部13は、当該撮像時における、携帯端末10の車両Mに対する相対位置及び相対姿勢を特定し、これを相対情報として取得することができる。このため、例えば衛星からの電波が届きにくい屋内駐車場内に車両Mが駐停車した場合に、車両Mの乗員が必要に応じて任意のタイミングで携帯端末10により車両Mの室内画像を撮影することで、携帯端末10が自律航法を行うための正確な基準位置及び基準姿勢を取得することができる。
【0095】
尚、上記した実施例1~3では、携帯端末10の地理座標系における位置測位処理を、記憶部12に記憶されているプログラム(図4図8に示す位置測位制御及び表示制御)を実行することで実現しているが、当該位置測位処理をハードウェアで実現するようにしても良い。
【0096】
また、これら実施例1~3では、車両Mに搭載されている車両測位装置20から車両情報を取得しているが、当該車両Mとしては特に4輪の普通乗用車に限定されるものではない。例えば、車両Mとしては、オートバイやバス、或いは工事用車両等の移動体であっても良い。
【0097】
要するに、自律航法装置としての携帯端末10は、以下の移動体情報取得部、相対情報取得部、基準情報取得部、及び自律航法処理部を含むものであれば良い。
【0098】
移動体情報取得部(S12~S14)は、ナビゲーション装置(20)から移動体の位置及び向きを示す移動体情報を取得する。相対情報取得部(S15、S201a、S201~S203、S301、S302)は、移動体の室内に自律航法装置(10)が位置する際の当該移動体に対する自律航法装置の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報を取得する。基準情報取得部(S16)は、上記移動体情報及び相対情報に基づいて、自律航法装置の基準位置及び基準姿勢を算出する。自律航法処理部(16)は、上記基準姿勢及び基準位置を自律航法の初期情報として用いた自律航法処理を実行する。
【0099】
また、自律航法装置(10)は、移動体が特定の施設又は地域に駐停車したことを検知した場合に、その施設又は地域のマップ情報を取得するマップ取得部(S171~S173、S175)と、マップ情報にて示されるマップ上に、自律航法処理で取得した現在位置を示すマークを重畳させた画像をディスプレイ(15A)に表示させる表示処理部(S176)を含む。
【0100】
よって、かかる構成によれば、自律航法装置は、移動体に搭載されているナビゲーション装置から、当該移動体の地理座標系の位置及び向きを示す移動体情報を取得する。そして、当該移動体情報と、移動体の位置及び向きに対する自律航法装置の相対位置及び相対姿勢とに基づき、自律航法による測位の基点となる基準位置(初期位置)及び基準姿勢(初期姿勢)を示す初期情報を得る。
【0101】
これにより、衛星電波が届かない施設又は地域において、上記した初期情報を提供する為の専用の外部デバイスが用意されていなくても、移動体の位置及び向きを示す移動体情報と、移動体に対する自律航法装置の相対姿勢及び相対位置を示す相対情報とに基づく初期情報を用いた自律航法により、その施設又は地域内で精度の高い現在位置の測位を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0102】
10 携帯端末
13 制御部
14 通信部
16 IMU
17 衛星測位部
18 撮像部
21 測位部
30 端末ホルダ
100 自律航法システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8