(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】配管検査装置、配管の検査方法及び配管検査装置の取付け方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20241220BHJP
【FI】
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2021048925
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 進
(72)【発明者】
【氏名】原田 肇
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-021061(JP,A)
【文献】特開2018-081046(JP,A)
【文献】国際公開第2020/096529(WO,A1)
【文献】特開平06-229845(JP,A)
【文献】特許第6792111(JP,B1)
【文献】特開平07-159145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 15/00-G01B 15/08
A61B 6/00-A61B 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外周側からX線を照射して検査を行う配管検査装置であって、
内部に前記配管が配置されるフレームと、
前記フレームの一方の端部に配置されるX線受光装置と、
前記フレームの他方の端部に配置され、前記X線受光装置と対向するX線発生器と、
前記フレームの中間部に配置され、前記配管に接して前記配管の外周面に沿って回転する複数のローラと、
を備え、
前記複数のローラは、
前記配管よりも一方の端部側に設けられる一対の第1ローラと、
前記配管よりも他方の端部側に設けられる一対の第2ローラと、
を有し、
前記第1ローラは、第1アームに回転可能に支持され、
前記第2ローラは、第2アームに回転可能に支持され、
前記第1ローラ同士及び前記第2ローラ同士の軸間距離が、前記第1アーム及び前記第2アームによって調整される、
配管検査装置。
【請求項2】
配管の外周側からX線を照射して検査を行う配管検査装置であって、
内部に前記配管が配置されるフレームと、
前記フレームの一方の端部に配置されるX線受光装置と、
前記フレームの他方の端部に配置され、前記X線受光装置と対向するX線発生器と、
前記フレームの中間部に配置され、前記配管に接して前記配管の外周面に沿って回転する複数のローラと、
を備え、
前記フレームは、天板と支柱とによって構成されたU字状の形状を有し、
前記支柱は、前記配管を、前記配管の軸直方向両側から挟むように設けられ、
前記支柱は、前記フレームにおける一方の端部側が前記天板に接続され、他方の端部側が前記X線発生器の取付部に取付けられる、
配管検査装置。
【請求項3】
前記フレームの中間部に配置され、前記配管に着脱自在に磁着する固定用磁石を備える、
請求項1
または2に記載の配管検査装置。
【請求項4】
前記フレームには、カウンターウエイトが設けられている、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の配管検査装置。
【請求項5】
前記ローラと、前記X線発生器は、前記フレームから取り外しが可能である、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の配管検査装置。
【請求項6】
前記配管の径に応じて、前記ローラの径及び前記フレームの長さを調整する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の配管検査装置。
【請求項7】
各構成部品が、前記配管の外周面から300mm以内の範囲に設けられている、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の配管検査装置。
【請求項8】
前記配管は、地下に施工され、周囲を掘削された配管であり、
前記検査は、前記配管の周溶接部の検査である、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の配管検査装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の配管検査装置を用いた配管の検査方法であって、
前記X線発生器と前記X線受光装置とを、前記配管の外周面に接する前記ローラを回転させることによって移動する、
配管の検査方法。
【請求項10】
前記配管の撮影時には、前記配管と、前記X線発生器及び前記X線受光装置とを、前記フレームの中間部に設けられた固定用磁石により固定する、
請求項
9に記載の配管の検査方法。
【請求項11】
前記X線発生器及び前記X線受光装置を、前記配管の周方向に所定の間隔ごとに移動させて前記配管の周溶接部を撮影する、
請求項
9又は
10に記載の配管の検査方法。
【請求項12】
フレームと、第1ローラと、第2ローラと、X線発生器と、を少なくとも備えた配管検査装置の配管への取付け方法であって、
前記第1ローラが設けられた前記フレームを前記配管に取付ける第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記フレームに前記第2ローラを取付ける第2ステップと、
前記第2ステップの後、前記フレームに前記X線発生器を取付ける第3ステップと、
を備える、
配管検査装置の取付け方法。
【請求項13】
前記配管検査装置は固定用磁石を更に備え、
前記第2ステップの後に、前記固定用磁石によって前記配管と前記フレームとを固定する固定ステップを備える、
請求項
12に記載の配管検査装置の取付け方法。
【請求項14】
前記第1ステップの前に、前記配管の周囲を掘削する掘削ステップを更に備える、
請求項
12又は
13に記載の配管検査装置の取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管検査装置、配管の検査方法及び配管検査装置の取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の検査に、放射線透過試験が用いられることがある。例えば、配管の厚さを測定するために、放射線を照射して透過量を測定する測定部が、配管に取付けられたベース部の周りを、制御部によって制御された駆動部によって移動する構造が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の構造においては、測定部が移動するためのベース部を配管に別途取付ける必要がある。このため、ベース部の着脱に手間を要する。また、測定部の移動には駆動部を用いているため、装置の構造が複雑であり、更に重量が大きいという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡素な構造かつ軽量な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る配管検査装置は、配管の外周側からX線を照射して検査を行う配管検査装置であって、内部に前記配管が配置されるフレームと、前記フレームの一方の端部に配置されるX線受光装置と、前記フレームの他方の端部に配置され、前記X線受光装置と対向するX線発生器と、前記フレームの中間部に配置され、前記配管に接して前記配管の外周面に沿って回転する複数のローラと、を備え、前記複数のローラは、前記配管よりも一方の端部側に設けられる一対の第1ローラと、前記配管よりも他方の端部側に設けられる一対の第2ローラと、を有し、前記第1ローラは、第1アームに回転可能に支持され、前記第2ローラは、第2アームに回転可能に支持され、前記第1ローラ同士及び前記第2ローラ同士の軸間距離が、前記第1アーム及び前記第2アームによって調整される。
また、本発明に係る配管検査装置は、配管の外周側からX線を照射して検査を行う配管検査装置であって、内部に前記配管が配置されるフレームと、前記フレームの一方の端部に配置されるX線受光装置と、前記フレームの他方の端部に配置され、前記X線受光装置と対向するX線発生器と、前記フレームの中間部に配置され、前記配管に接して前記配管の外周面に沿って回転する複数のローラと、を備え、前記フレームは、天板と支柱とによって構成されたU字状の形状を有し、前記支柱は、前記配管を、前記配管の軸直方向両側から挟むように設けられ、前記支柱は、前記フレームにおける一方の端部側が前記天板に接続され、他方の端部側が前記X線発生器の取付部に取付けられる。
【0007】
この発明によれば、配管に接する複数のローラが、配管の外周面に沿って回転する。これにより、ローラの回転に伴って、X線発生器とX線受光装置が配管の周方向に移動する。これにより、配管に別途ベース部等を取り付けることを必要とせず、配管検査装置を配管の周りに移動させることができる。
また、前記移動は、駆動部によらず、手動で行うことができる。このように、より構造を簡素にすることで、配管検査装置の軽量化を図ることができる。よって、例えば、工事現場において配管の溶接部を検査するために配管検査装置を用いる場合において、配管検査装置の設置及び検査の作業を容易に行うことができる。
【0008】
また、前記フレームの中間部に配置され、前記配管に着脱自在に磁着する固定用磁石を備えてもよい。
【0009】
この発明によれば、配管とフレームとは、固定用磁石によって固定される。これにより、安定した状態で配管にX線を照射することができる。よって、より安全かつ正確に検査を行うことができる。
【0010】
また、前記フレームには、カウンターウエイトが設けられていてもよい。
【0011】
この発明によれば、フレームにはカウンターウエイトが設けられている。これにより、例えば、X線発生器とX線受光装置との間に生じる重量差をなくすことができる。よって、配管検査装置の重心をより配管の中心に近くすることができる。これらから、配管検査装置を配管の周方向に移動させる際に重さが偏ることを防ぎ、より安全な検査作業に寄与することができる。
【0012】
また、前記ローラと、前記X線発生器は、前記フレームから取り外しが可能であってもよい。
【0013】
この発明によれば、ローラと、X線発生器は、フレームから取り外しが可能である。これにより、配管検査装置は、配管の位置を移動させることなく、配管に取付けることができる。
【0014】
また、前記配管の径に応じて、前記ローラの径及び前記フレームの長さを調整してもよい。
【0015】
この発明によれば、配管の径に応じてローラの径及びフレームの長さを調整する。これにより、種々の径を有する配管に対してより幅広く対応することができる。
【0016】
また、各構成部品が、前記配管の外周面から300mm以内の範囲に設けられていてもよい。
【0017】
この発明によれば、各構成部品が、配管の外周面から300mm以内の範囲に設けられている。つまり、配管の外周面から300mmを超える範囲には、構成部品を有さない。これにより、配管検査装置を使用する現場において、配管の外周面から少なくとも300mm以上の領域を確保すれば、周辺に位置する物品に干渉することなく検査を行うことができる。
また、前記配管は、地下に施工され、周囲を掘削された配管であり、前記検査は、前記配管の周溶接部の検査であってもよい。
【0018】
また、本発明に係る配管の検査方法は、前記配管検査装置を用いた配管の検査方法であって、前記X線発生器と前記X線受光装置とを、前記配管の外周面に接する前記ローラを回転させることによって移動する。
【0019】
この発明によれば、X線発生器とX線受光装置とを、配管の外周面に接するローラを回転させることによって移動する。これにより、配管の外周面においてX線発生器及びX線受光装置の位置合わせを容易とすることができる。更に、移動に要する時間を短縮し、検査に要する時間を短縮することができる。
【0020】
また、前記配管の撮影時には、前記配管と、前記X線発生器及び前記X線受光装置とを、前記フレームの中間部に設けられた固定用磁石により固定してもよい。
【0021】
この発明によれば、配管の撮影時には、配管と、X線発生器及びX線受光装置とを、固定用磁石により固定する。これにより、配管の撮影時にX線発生器及びX線受光装置がぶれることを防ぐことができる。
【0022】
また、前記X線発生器及び前記X線受光装置を、前記配管の周方向に所定の間隔ごとに移動させて前記配管の周溶接部を撮影してもよい。
【0023】
この発明によれば、X線発生器及びX線受光装置を、配管の周方向に所定の間隔ごとに移動させて配管の周溶接部を撮影する。これにより、移動と撮影を複数回繰り返す必要がある周溶接部の検査において、スムーズに配管の周上におけるすべての角度から配管を撮影し、周溶接部の適正な検査結果を得ることができる。
【0024】
また、本発明に係る配管検査装置の取付け方法は、フレームと、第1ローラと、第2ローラと、X線発生器と、を少なくとも備えた配管検査装置の配管への取付け方法であって、前記第1ローラが設けられた前記フレームを前記配管に取付ける第1ステップと、前記第1ステップの後、前記フレームに前記第2ローラを取付ける第2ステップと、前記第2ステップの後、前記フレームに前記X線発生器を取付ける第3ステップと、を備える。
【0025】
また、前記配管検査装置は固定用磁石を更に備え、前記第2ステップの後に、前記固定用磁石によって前記配管と前記フレームとを固定する固定ステップを備えてもよい。
【0026】
この発明によれば、第2ステップの後に、固定用磁石によって配管とフレームとを固定する。これにより、第3ステップにおいてフレームと配管との位置がずれることを防ぐことができる。よって、第3ステップをより安全に行うことができる。
【0027】
また、前記第1ステップの前に、前記配管の周囲を掘削する掘削ステップを更に備えてもよい。
【0028】
この発明によれば、第1ステップの前に配管の周囲を掘削する掘削工程を備える。これにより、検査を行う際にX線発生器及びX線受光装置を位置合わせする目印を設けることで、より検査を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡素な構造かつ軽量な検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配管検査装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す配管検査装置において、配管が大径となった場合を示す変形例である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る配管検査装置の取付け工程において、フレームを配管に取付けた状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る配管検査装置の取付け工程において、配管に取付けたフレームに第2ローラを取付けた状態を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る配管検査装置によって、配管にX線を照射している状態を示す図である。
【
図7】
図6において、X線を照射する向きを変更した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る配管検査装置100を説明する。
図1に示すように、配管検査装置100は、フレーム10と、X線受光装置20と、X線発生器30と、ローラ40と、固定用磁石50と、カウンターウエイト60と、を備える。
配管検査装置100は、配管Pに取付けることで、主に配管Pの周溶接部Lを検査するために用いられる(後述する)。
【0032】
フレーム10は、配管検査装置100の各構成部品を支持する部材である。本実施形態において、フレーム10には、例えば、アルミニウムが好適に用いられる。フレーム10は、天板10tと、支柱10sと、を備える。
天板10tは、フレーム10の一方の端部に設けられている。天板10tには、X線受光装置20が設けられる(後述する)。
【0033】
支柱10sは、天板10tを支持する。支柱10sは、天板10tの四隅に、天板10tに対し垂直に設けられた棒状の部材である。支柱10sは、
図1、
図2に示すように、検査対象となる配管Pを、配管Pの軸直方向両側から挟むように設けられる。
支柱10sは、フレーム10における一方の端部側が天板10tに接続され、他方の端部側がX線発生器30の取付部31に取付けられる(後述する)。また、支柱10sの中間部には、ローラ40及び固定用磁石50が設けられる(後述する)。
このように、フレーム10は、天板10tと支柱10sとによって構成されたU字状の形状を有する。
【0034】
X線受光装置20は、X線発生器30(後述する)の発するX線をデジタル信号に変換することで画像化する。これにより、配管Pの内部の状態を画像化することで検査を行う。以下において、前記画像化を、撮影と称することがある。
本実施形態において、X線受光装置20には、公知のFPD(フラットパネルディテクタ)が好適に用いられる。上述のように、X線受光装置20は、天板10tに設けられる。また、X線受光装置20には、不図示の電源ケーブルによって給電されている。
【0035】
X線発生器30は、X線受光装置20へ向けてX線を照射する役割を有する。X線発生器30には、公知のX線発生装置が好適に用いられる。
また、X線発生器30は、取付部31を有する。取付部31は、
図1に示すような板状の部材であってもよいし、その他形状であってもよい。X線発生器30は、取付部31によって、フレーム10の他方の端部に固定される。また、X線発生器30には、不図示の電源ケーブルによって給電されている。
【0036】
上述のように、X線受光装置20は、フレーム10の一方の端部に設けられた天板10tに取付けられている。また、X線発生器30は、フレーム10の他方の端部に、取付部31によって取付けられている。つまり、
図2に示すように、X線受光装置20とX線発生器30は、配管Pを挟んで互いに対向するように設けられている。
【0037】
ローラ40は、フレーム10の中間部に複数配置される円柱状の回転部材である。ローラ40の中心軸は、配管Pの中心軸と平行に設けられている。また、ローラ40は、配管Pに直接接する。この状態でローラ40が回転することで、配管検査装置100が、配管Pの周りを移動する。また、本実施形態において、ローラ40には駆動部を有さない。これにより、ローラ40は、手動で回転が可能である。本実施形態において、ローラ40には、たとえば、硬質ウレタンが好適に用いられる。ローラ40は、第1ローラ41と、第2ローラ42と、を備える。
【0038】
第1ローラ41は、フレーム10の支柱10sの中間部において、配管Pよりも一方の端部側に一対に設けられる。
図2に示すように、第1ローラ41は、支柱10sに対して、天板10t及び第1アーム41aを介して取付けられている。また、第1ローラ41は、天板10tのみに取付けられていてもよいし、支柱10sのみに取付けられていてもよい。
第1アーム41aは、支柱10sと第1ローラ41との間を接続する部材であり、任意の形状を有する。第1アーム41aは、第1ローラ41を回転可能に支持する。第1アーム41aは、配管検査装置100に取付けられる配管Pの径に対応して位置及び大きさを調整可能である。
【0039】
第2ローラ42は、フレーム10の支柱10sの中間部において、配管Pよりも他方の端部側に一対に設けられる。第2ローラ42は、支柱10sに対して、第2アーム42aを介して取付けられている。
第2アーム42aは、支柱10sと第2ローラ42との間を接続する部材であり、任意の形状を有する。第2アーム42aは、第2ローラ42を回転可能に支持する。第2アーム42aは、配管検査装置100に取付けられる配管Pの径に対応して位置及び大きさを調整可能である(後述する)。
上述のように、第1ローラ41及び第2ローラ42は、それぞれフレーム10の支柱10sに一対に設けられ、それぞれ配管Pと接している。つまり、配管Pは、ローラ40によって計4か所支持される。
【0040】
固定用磁石50は、配管Pと配管検査装置100とを磁力により固定する。これにより、配管PにX線を照射して内部の状態を撮影する際に、配管Pと配管検査装置100との位置がぶれることを防ぐ役割を有する。固定用磁石50は、
図2に示すように、支柱10sにおける第1ローラ41と第2ローラ42との間に、固定部材51によって取付けられる。また、固定用磁石50は、配管Pを径方向の両側から挟むように、一対に設けられている。
【0041】
固定用磁石50はスイッチを有し、前記スイッチのオン及びオフを切り替えることで、磁力を発生させたり、前記磁力を作用しなくしたりすることができる。つまり、固定用磁石50は、配管Pに着脱自在に磁着することができる。
また、固定用磁石50に磁力を発生させたときは、固定用磁石50は配管Pに接し、磁力が作用していない状態のときは、配管Pと固定用磁石50との間に隙間が設けられる。つまり、固定用磁石50は、固定部材51によって支柱10sに取付けられた状態において、配管Pの径方向に直線移動が可能である。
【0042】
本実施形態において、固定用磁石50は、例えば、公知のマグネットホルダが好適に用いられる。より具体的には、固定用磁石50として、例えば、カネテック株式会社製のマグネットホルダ台(例えば型番:MB-PB)、又は、ノガ・ウォーターズ株式会社製のオンオフマグネット(例えば型番:DG0036)等を好適に用いることができる。これにより、配管検査装置100を移動させる際には固定用磁石50のスイッチをオフにした状態で移動させ、配管PをX線撮影する際には固定用磁石50のスイッチをオンにすることで固定する。
【0043】
カウンターウエイト60は、配管検査装置100が配管Pに取付けられた状態において、配管検査装置100の重心が配管Pの中心軸と一致するように調整する錘である。本実施形態においてはX線発生器30よりもX線受光装置20の方が軽量であることから、
図1に示すように、カウンターウエイト60は、例えば、X線受光装置20とともに天板10tに設けられる。つまり、本実施形態において、カウンターウエイト60は、例えば、X線受光装置20とX線発生器30との重量差を調整するために設けられる。これにより、配管Pの周囲を配管検査装置100が安定して移動できるようにする役割を有する。
【0044】
本実施形態に係る配管検査装置100について、検査対象となる配管Pの径は下記の通りである。すなわち、口径100A(約100mm)、口径150A(約150mm)、口径200A(約200mm)、口径300A(約300mm)の物が主な対象となる。
【0045】
更に、検査対象となる配管Pの口径と、各ローラ40の軸間距離及び各ローラ40の外径との関係によっては、配管Pが配管検査装置100の他の構成部品と干渉することがある。
【0046】
このため、配管Pの口径に対して、配管検査装置100における各構成部品を対応させる必要がある。例えば、第1ローラ41同士及び第2ローラ42同士の軸間距離は、第1アーム41a及び第2アーム42aによって調整される。このとき、第1アーム41a及び第2アーム42aに伸縮機能を備えることによって調整してもよいし、第1アーム41a及び第2アーム42aをそれぞれ対応した形状のものに交換することによって調整してもよい。
【0047】
第1ローラ41と第2ローラ42との軸間距離は、支柱10sにおける第1ローラ41及び第2ローラ42の取付け位置によって調整される。例えば、支柱10sに第1アーム41a及び第2アーム42aの取り付け位置を複数設けてもよいし、支柱10sの上を第1アーム41a及び第2アーム42aが摺動可能な構造としてもよい。
【0048】
本実施形態に係る配管検査装置100は、例えば、排水管の工事現場において、地下に施工した配管Pの周溶接部Lの検査を行う際に好適に用いられる。よって、検査を行う際には周囲に十分な領域を確保することが難しいことがある。このため、各構成部品が、配管Pの外周面から300mm以内の範囲に設けられていることが好ましい。つまり、配管Pの外周面から300mmを超える範囲には、構成部品を有さないことが好ましい。
【0049】
ここで、1種類の各構成部品によって配管Pの口径に幅広く対応しようとすると、各構成部品が必要以上に大きくなることがある。このため、1種類の構成部品によって対応可能な配管Pの口径の範囲を狭くし、必要に応じて構成部品を交換することがより好ましい。表1に、配管Pの口径と各構成部品との関係について示す。
【0050】
【0051】
表1に示すように、天板10tと、固定用磁石50と、X線受光装置20と、X線発生器30については、1種類のもので対応可能である。これに対し、支柱10sの長さと、ローラ40の外径については、配管Pの口径に応じて部品を交換することで調整することが好ましい。また、表1に示すように、支柱10sは配管Pの4種類の口径に合わせて2種類の部材で対応するのに対し、ローラ40の外径は各口径に合わせて4種類設けられている。このように、設定する構成部品の種類を必要最小限とすることで、全体として必要な部品点数を抑える。
また、大口径の配管Pに対応するときは、
図3に示すように、支柱10sの一方の端部に拡張部材10eを設け、支柱10sの軸直方向の間隔を広げてもよい。
【0052】
つぎに、作業現場における配管検査装置100の配管Pへの取付方法について、
図4、
図5、
図2を用いて説明する。
(掘削ステップ)
後述の第1ステップの際に、配管Pの周囲を掘削する。これは、例えば、配管Pへ配管検査装置100を取付ける際や、検査時に配管Pの周りを配管検査装置100が移動する際の目印を設けるための、いわゆるケガキの作業である。これにより、配管検査装置100の取付けや、配管検査装置100による配管Pの検査の作業を効率化する。
【0053】
(第1ステップ)
まず、
図4に示すように、配管Pに、X線受光装置20、第1ローラ41、固定用磁石50が取付けられたフレーム10を配置する。このとき、2か所の第1ローラ41が確実に配管Pに接していることを確認する。
【0054】
(第2ステップ)
第1ステップの後、
図5に示すように、フレーム10の支柱10sに、フレーム10の他方の端の側から、第2ローラ42を取付ける。一対の第1ローラ41と、一対の第2ローラ42によって、配管Pを挟むように取り付ける。このとき、2か所の第2ローラ42が確実に配管Pに接していることを確認する。
【0055】
(固定ステップ)
第2ステップの後、固定用磁石50のスイッチをオンにすることによって、配管Pとフレーム10とを固定する。これにより、後述の第3ステップの作業の安全性を確保する。
【0056】
(第3ステップ)
第2ステップの後、
図2に示すように、フレーム10の支柱10sの他方の端部に、X線発生器30を取付ける。このときX線発生器30の取付部31と支柱10sの他方の端部とは、例えば、ボルト締結によって固定されることが好ましい。
これらの工程により、配管検査装置100が配管Pに固定される。
【0057】
つぎに、本実施形態に係る配管検査装置100を用いた配管Pの検査方法について説明する。上述のように、本実施形態に係る配管検査装置100は、工事現場において地下等に施工された配管Pの周溶接部Lを検査する際に用いられることから、配管Pは施工現場に固定された状態で行う。このため、固定された配管Pの周りを配管検査装置100が回転するように移動することで検査を行う。また、本実施形態において、配管検査装置100の移動は手動により行われる。
【0058】
まず、
図6に示すように、上述の工程によって配管検査装置100が配管Pに取付けられた状態で、X線発生器30によって、配管Pの外周側から配管Pに向けてX線を照射する。このとき、固定用磁石50のスイッチをオンにすることで、配管検査装置100と配管Pとを固定した状態とする。
照射されたX線は、配管Pを挟んで対向する位置に設けられたX線受光装置20によって感知され、画像化される。これにより、配管Pの周溶接部LがX線撮影されることで、配管Pの内部の状態を目視にて確認する。
【0059】
任意の箇所においての配管Pの撮影が終わったら、固定用磁石50のスイッチをオフにする。これにより、配管Pに固定された配管検査装置100を、配管Pの周方向において手動で移動可能とする。
このようにして、
図7に示すように、配管検査装置100を手動によって任意の角度に移動する。その後、固定用磁石50のスイッチをオンにすることで、再び配管検査装置100を配管Pに固定する。この状態で、再び上述の撮影を行う。
【0060】
配管Pの周上において配管検査装置100を移動する間隔は、JIS規格(JIS Z 3110(2017))に基づいて設定し、さらに、必要に応じて(例えば配管Pの口径に応じて)X線受光装置20の有効撮像長さに基づいて設定することが好ましい。
例えば、配管Pが口径300Aの場合で、重ね代を両端に10mm程度設けて配管Pの全周を10分割で撮影する場合には、有効な撮影幅を100mmに設定できる。これをもとに、X線受光装置20の、配管Pの周方向における寸法が130mmである場合を考える。この場合は、撮影した画像の重ね代を、両端に15mm設け、有効な撮影幅を最大100mmとする。これをもとに、配管検査装置100の移動間隔を100mmとする。
このとき、上述の掘削ステップは、配管Pの周上に、100mm間隔で目印を設けることが好ましい。
【0061】
また、周溶接部Lを撮影するときは、公知の二重壁片面撮影方法又は公知の二重璧両面撮影方法に従って撮影する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る配管検査装置100によれば、配管Pに接する複数のローラ40が、配管Pの外周面に沿って回転する。これにより、ローラ40の回転に伴って、X線発生器30とX線受光装置20が配管Pの周方向に移動する。これにより、配管Pに別途ベース部等を取り付けることを必要とせず、配管検査装置100を配管Pの周りに移動させることができる。
また、前記移動は、駆動部によらず、手動で行うことができる。このように、より構造を簡素にすることで、配管検査装置100の軽量化を図ることができる。よって、例えば、工事現場において配管Pの溶接部を検査するために配管検査装置100を用いる場合において、配管検査装置100の設置及び検査の作業を容易に行うことができる。
【0063】
また、配管Pとフレーム10とは、固定用磁石50によって固定される。これにより、安定した状態で配管PにX線を照射することができる。よって、より安全かつ正確に検査を行うことができる。
【0064】
また、フレーム10にはカウンターウエイト60が設けられている。これにより、例えば、X線発生器30とX線受光装置20との間に生じる重量差をなくすことができる。よって、配管検査装置100の重心をより配管Pの中心に近くすることができる。これらから、配管検査装置100を配管Pの周方向に移動させる際に重さが偏ることを防ぎ、より安全な検査作業に寄与することができる。
【0065】
また、ローラ40と、X線発生器30は、フレーム10から取り外しが可能である。これにより、配管検査装置100は、配管Pの位置を移動させることなく、配管Pに取付けることができる。
【0066】
また、配管Pの径に応じてローラ40の径及びフレーム10の長さを調整する。これにより、種々の径を有する配管Pに対してより幅広く対応することができる。
【0067】
また、各構成部品が、配管Pの外周面から300mm以内の範囲に設けられている。つまり、配管Pの外周面から300mmを超える範囲には、構成部品を有さない。これにより、配管検査装置100を使用する現場において、配管Pの外周面から少なくとも300mm以上の領域を確保すれば、周辺に位置する物品に干渉することなく検査を行うことができる。
【0068】
また、X線発生器30とX線受光装置20とを、配管Pの外周面に接するローラ40を回転させることによって移動する。これにより、配管Pの外周面においてX線発生器30及びX線受光装置20の位置合わせを容易とすることができる。更に、移動に要する時間を短縮し、検査に要する時間を短縮することができる。
【0069】
また、配管Pの撮影時には、配管Pと、X線発生器30及びX線受光装置20とを、固定用磁石50により固定する。これにより、配管Pの撮影時にX線発生器30及びX線受光装置20がぶれることを防ぐことができる。
【0070】
また、X線発生器30及びX線受光装置20を、配管Pの周方向に所定の間隔ごとに移動させて配管Pを撮影する。更に、間隔は、X線受光装置20の有効撮像長さに基づいて設定する。これにより、配管Pの周上におけるすべての角度から配管Pを撮影し、より正確な検査結果を得ることができる。
【0071】
また、第2ステップの後に、固定用磁石50によって配管Pとフレーム10とを固定する。これにより、第3ステップにおいてフレーム10と配管Pとの位置がずれることを防ぐことができる。よって、第3ステップをより安全に行うことができる。
【0072】
また、第1ステップの前に配管Pの周囲を掘削する掘削工程を備える。これにより、検査を行う際にX線発生器30及びX線受光装置20を位置合わせする目印を設けることで、より検査を効率的に行うことができる。
【0073】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態に係る配管検査装置100を用いて、配管Pの周溶接部以外の場所を検査してもよい。
また、固定用磁石50は、一対に設けられていなくてもよい。例えば、1つの固定用磁石50が、天板10tと配管Pとの間に設けられていてもよい。
また、配管Pの口径と各構成部品との関係は、表1に示す以外の組み合わせとしてもよい。
【0074】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 フレーム
20 X線受光装置
30 X線発生器
40 ローラ
41 第1ローラ
42 第2ローラ
50 固定用磁石
60 カウンターウエイト
100 配管検査装置
P 配管