IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許7607486ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置
<>
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図1
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図2
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図3
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図4
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図5
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図6
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図7
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図8
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図9
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図10
  • 特許-ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20241220BHJP
   G02B 13/16 20060101ALI20241220BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20241220BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/16
G03B21/00 D
G02B13/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021050782
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148913
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 賢
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095789(JP,A)
【文献】特開2017-102239(JP,A)
【文献】特開2019-174633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G03B 21/00 - 21/10
G03B 21/12 - 21/13
G03B 21/134 - 21/30
G03B 33/00 - 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなるズームレンズであって
前記第2光学系は縮小側結像面と共役な位置に中間像を形成し、
前記第1光学系は前記中間像を拡大側結像面に再結像させ、
前記第1光学系の光路上の最も拡大側にレンズを含み、
変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群とした場合、
前記ズームレンズは、6つのレンズ群からなり、
前記ズームレンズの最も拡大側のレンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定され、
前記第2光学系は、最も縮小側から拡大側へ光路に沿って順に連続して、正の屈折力を有する第2Aレンズ群と、正の屈折力を有する第2Bレンズ群と、負の屈折力を有する第2Cレンズ群と、正の屈折力を有する第2Dレンズ群と、屈折力を有する第2Eレンズ群とを含み、
変倍の際に、前記第2Bレンズ群、前記第2Cレンズ群、前記第2Dレンズ群、および前記第2Eレンズ群は、隣り合う群との光軸方向の間隔を変化させて光軸に沿って移動し、かつ前記第2Aレンズ群は、前記縮小側結像面に対して固定され、
前記第2Bレンズ群、前記第2Cレンズ群、前記第2Dレンズ群、および前記第2Eレンズ群のうちの1つは、開口数を決める開口絞りを有するレンズ群であり、
前記開口絞りを有するレンズ群は負の屈折力を有し、
前記開口絞りを有するレンズ群の焦点距離をfAp、
広角端における前記第2光学系の焦点距離をf2wとした場合、
0.1<f2w/fAp<2.1 (1)
で表される条件式(1)を満足するズームレンズ。
【請求項2】
広角端における前記開口絞りを有するレンズ群の位置と望遠端における前記開口絞りを有するレンズ群の位置との光軸方向の差をZAp、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
4<ZAp/|fw|<10 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記開口絞りを有するレンズ群に含まれる全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均をνApとした場合、
65<νAp (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項1又は2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
変倍の際、前記開口絞りの開口径は可変であり、
全変倍域にわたって前記ズームレンズの開口数が一定である請求項1から3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
-0.1<|fw|/f2w<0 (4)
で表される条件式(4)を満足する請求項1から4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記開口絞りを有するレンズ群の縮小側に前記開口絞りを有するレンズ群に隣接して配置された変倍の際に移動するレンズ群の焦点距離をfRとした場合、
-1.2<fR/fAp<-0.1 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項1から5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
広角端における前記ズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBfw、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
4<Bfw/|fw| (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項1から6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第1光学系は、広角端における前記第1光学系の最大の空気間隔より縮小側の光路上に、複数のフォーカス群を含み、
前記複数のフォーカス群が互いの光軸方向の間隔を変化させて移動することにより合焦を行う請求項1からのいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
0.2<f2w/fAp<1.8 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
4.7<ZAp/|fw|<8 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項11】
70<νAp<90 (3-1)
で表される条件式(3-1)を満足する請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項12】
-0.06<|fw|/f2w<0 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項13】
-1<fR/fAp<-0.2 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項6に記載のズームレンズ。
【請求項14】
5<Bfw/|fw|<10 (6-1)
で表される条件式(6-1)を満足する請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項15】
光学像を出力するライトバルブと、
請求項1から14のいずれか1項に記載のズームレンズとを備え、
前記ズームレンズは、前記ライトバルブから出力された前記光学像をスクリーン上に投写する投写型表示装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか1項に記載のズームレンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置、又は撮像装置に適用可能なズームレンズとして、例えば下記特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載のレンズ系が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-102239号公報
【文献】特開2015-179270号公報
【文献】特開2019-095789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、中間像を形成する方式のズームレンズにおいて、変倍の際のFナンバーの変動を抑えながらも、広角であり、高倍率かつ高性能を有するズームレンズが求められている。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みなされたものであり、中間像を形成する方式のズームレンズにおいて、変倍の際のFナンバーの変動を抑えながらも、広角であり、高倍率かつ高性能を有するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術の一態様に係るズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、第2光学系は縮小側結像面と共役な位置に中間像を形成し、第1光学系は中間像を拡大側結像面に再結像させ、第1光学系の光路上の最も拡大側にレンズを含み、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群とした場合、第2光学系は、変倍の際に移動する複数のレンズ群を含み、上記変倍の際に移動する複数のレンズ群のうちの1つは、開口数を決める開口絞りを有するレンズ群であり、開口絞りを有するレンズ群は負の屈折力を有し、開口絞りを有するレンズ群の焦点距離をfAp、広角端における第2光学系の焦点距離をf2wとした場合、下記条件式(1)を満足する。
0.1<f2w/fAp<2.1 (1)
【0007】
上記態様のズームレンズは、下記条件式(1-1)を満足することが好ましい。
0.2<f2w/fAp<1.8 (1-1)
【0008】
上記態様のズームレンズは、広角端における開口絞りを有するレンズ群の位置と望遠端における開口絞りを有するレンズ群の位置との光軸方向の差をZAp、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、下記条件式(2)を満足することが好ましく、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。
4<ZAp/|fw|<10 (2)
4.7<ZAp/|fw|<8 (2-1)
【0009】
上記態様のズームレンズは、開口絞りを有するレンズ群に含まれる全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均をνApとした場合、下記条件式(3)を満足することが好ましく、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましい。
65<νAp (3)
70<νAp<90 (3-1)
【0010】
変倍の際、開口絞りの開口径は可変であり、全変倍域にわたってズームレンズの開口数が一定であることが好ましい。
【0011】
上記態様のズームレンズは、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfw、広角端における第2光学系の焦点距離をf2wとした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましい。
-0.1<|fw|/f2w<0 (4)
-0.06<|fw|/f2w<0 (4-1)
【0012】
上記態様のズームレンズは、開口絞りを有するレンズ群の焦点距離をfAp、開口絞りを有するレンズ群の縮小側に開口絞りを有するレンズ群に隣接して配置された変倍の際に移動するレンズ群の焦点距離をfRとした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
-1.2<fR/fAp<-0.1 (5)
-1<fR/fAp<-0.2 (5-1)
【0013】
上記態様のズームレンズは、広角端におけるズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBfw、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、下記条件式(6)を満足することが好ましく、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
4<Bfw/|fw| (6)
5<Bfw/|fw|<10 (6-1)
【0014】
上記態様のズームレンズは、6つのレンズ群からなり、ズームレンズの最も拡大側のレンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に縮小側結像面に対して固定され、ズームレンズの最も縮小側のレンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に縮小側結像面に対して固定されていることが好ましい。
【0015】
第2光学系は、最も縮小側から拡大側へ光路に沿って順に連続して、正の屈折力を有する第2Aレンズ群と、正の屈折力を有する第2Bレンズ群と、負の屈折力を有する第2Cレンズ群と、正の屈折力を有する第2Dレンズ群と、屈折力を有する第2Eレンズ群とを含み、変倍の際に、第2Bレンズ群、第2Cレンズ群、第2Dレンズ群、および第2Eレンズ群は、隣り合う群との光軸方向の間隔を変化させて光軸に沿って移動し、かつ第2Aレンズ群は、縮小側結像面に対して固定されていることが好ましい。
【0016】
第1光学系は、広角端における第1光学系の最大の空気間隔より縮小側の光路上に、複数のフォーカス群を含み、複数のフォーカス群が互いの光軸方向の間隔を変化させて移動することにより合焦を行うことが好ましい。
【0017】
本開示の技術の別の態様に係る投写型表示装置は、光学像を出力するライトバルブと、上記態様のズームレンズとを備え、上記態様のズームレンズは、ライトバルブから出力された光学像をスクリーン上に投写する。
【0018】
本開示の技術のさらに別の態様に係る撮像装置は、上記態様のズームレンズを備えている。
【0019】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、およびプリズム等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。また、「レンズ群」は、レンズ以外にも、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、およびプリズム等のレンズ以外の光学要素を含んでもよい。
【0020】
本明細書において、「正の屈折力を有する~群」および「~群は正の屈折力を有する」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に「負の屈折力を有する~群」および「~群は負の屈折力を有する」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。非球面を含むレンズに関する屈折力の符号、曲率半径、および面形状は、特に断りが無い限り近軸領域のものを用いる。
【0021】
条件式で用いている値は、d線を基準とした場合の値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、中間像を形成する方式のズームレンズにおいて、変倍の際のFナンバーの変動を抑えながらも、広角であり、高倍率かつ高性能を有するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1のズームレンズに対応し、本開示の実施形態の一例のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図2】実施例1のズームレンズの各収差図である。
図3】実施例2のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図4】実施例2のズームレンズの各収差図である。
図5】実施例3のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図6】実施例3のズームレンズの各収差図である。
図7】一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図8】別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図9】さらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図10】一実施形態に係る撮像装置の正面側の斜視図である。
図11図10に示す撮像装置の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の技術に係る実施形態の一例について図面を参照して詳細に説明する。図1に本開示の一実施形態に係るズームレンズの広角端での光軸Zを含む断面における構成を示す。図1に示す構成例は、後述の実施例1に対応している。図1では、軸上光束Ka、および最大画角の光束Kbも合わせて示している。
【0025】
本実施形態のズームレンズは、投写型表示装置に搭載される投写光学系とすることもでき、また、撮像装置に搭載される撮像光学系とすることもできる。以下では、ズームレンズが投写光学系の用途で使用される場合を想定して説明する。
【0026】
図1では、ズームレンズが投写型表示装置に搭載されることを想定して、ズームレンズの縮小側に光学部材PPを配置した例を示している。光学部材PPは、フィルタ、カバーガラス、および色合成プリズム等を想定した部材である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0027】
また、図1には、ズームレンズが投写型表示装置に搭載されることを想定して、ライトバルブの画像表示面Simも示している。投写型表示装置においては、画像表示面Simで画像情報を与えられた光束が光学部材PPを介してズームレンズに入射され、ズームレンズにより不図示のスクリーン上に投写される。この場合、画像表示面Simが縮小側結像面に対応し、スクリーンが拡大側結像面に対応する。
【0028】
なお、本明細書の説明において、「拡大側」は光路上でのスクリーン側を意味し、「縮小側」は光路上での画像表示面Sim側を意味する。以下の説明では、説明が冗長になるのを避けるため、「拡大側から縮小側へ光路に沿って順に」を「拡大側から縮小側へ順に」と記すことがある。同様に、「縮小側から拡大側へ光路に沿って順に」を「縮小側から拡大側へ順に」と記すことがある。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第2光学系G2は縮小側結像面と共役な位置に中間像MIを形成する。第1光学系G1は中間像MIを拡大側結像面に再結像させる。図1の例では、中間像MIは第1光学系G1と第2光学系G2との間の光路に形成されている。図1の中間像MIは、その光軸Z上の位置を示すために光軸Z付近の一部のみを簡略的に点線で示したものであり、正確な形状を示すものではない。
【0030】
投写型表示装置においては、画像表示面Simに表示される画像の中間像MIを第2光学系G2が形成し、この中間像MIを第1光学系G1がスクリーンに投写して投写像を形成する。このように、中間像MIを形成する方式の光学系では、第1光学系G1のバックフォーカスを短縮できるとともに、第1光学系G1の拡大側のレンズ径を小さくすることが可能であり、全系の焦点距離を短くして広角化に適した構成とすることができる。
【0031】
一例として、図1の第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、ミラーR1と、レンズL1a~L1fと、ミラーR2と、レンズL1g~L1lとからなる。ミラーR1およびミラーR2は、光路を90度折り曲げる光路折り曲げ部材である。
【0032】
図1に示すように本実施形態のズームレンズは、第1光学系G1の光路上の最も拡大側にレンズを含む。本実施形態と異なり、最も拡大側にミラー等の反射部材を含む投写光学系では、光軸Z付近の光束はスクリーンに到達できないため結像に用いることができないが、本実施形態ではそのような不具合を回避することができる。
【0033】
一例として、図1の第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2a~L2hと、開口絞りStと、レンズL2i~L2nとからなる。レンズL2aは第2Aレンズ群G2Aを構成する。レンズL2b~L2dは第2Bレンズ群G2Bを構成する。レンズL2e~L2hおよび開口絞りStは第2Cレンズ群G2Cを構成する。レンズL2iは第2Dレンズ群G2Dを構成する。レンズL2j~L2mは第2Eレンズ群G2Eを構成する。なお、本開示の技術では、変倍の際に隣り合う群との光軸Z方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群としている。レンズ群は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成であってもよい。
【0034】
図1に示すように、第2光学系G2は変倍の際に移動する複数のレンズ群を含む。この構成によれば、第2光学系G2のみで変倍を行うことが可能になるため、第2光学系G2のリレー倍率変化、すなわち中間像MIのサイズの変化によって変倍を行うことが可能になる。これによって、光学系の構成を簡素化することができる。また、変倍の際に移動するレンズを、第1光学系G1に比べて小径化しやすい第2光学系G2のレンズにすることによって、駆動系の負担を軽減し、装置の小型化を図ることができる。
【0035】
一例として図1の例では、第2光学系G2のレンズ群のうち、第2Bレンズ群G2B、第2Cレンズ群G2C、第2Dレンズ群G2D、および第2Eレンズ群G2Eが、変倍の際に隣り合う群との光軸Z方向の間隔を変化させて移動する。
【0036】
第2光学系G2の変倍の際に移動する複数のレンズ群のうちの1つは、開口数を決める開口絞りStを有するレンズ群であるように構成される。レンズ系の開口数を決めるレンズ群を変倍の際に移動する群とすることによって、全系の小型化が容易となる。以下では説明の便宜上、第2光学系G2の開口絞りStを有するレンズ群をApレンズ群と呼ぶことにする。図1の例では、第2Cレンズ群G2CがApレンズ群に対応する。
【0037】
Apレンズ群は、負の屈折力を有するレンズ群であるように構成される。一般に、ズーム倍率が大きいと各レンズ群の移動量が大きくなるため、広角端と望遠端とにおける球面収差および像面湾曲等の各収差のバランスが大幅に劣化しやすくなる。一方、光学的に開口絞りSt近傍に配置されたレンズを含むApレンズ群は、広角側の像面湾曲の補正、特にサジタル像面の湾曲の補正に大きな効力を有するレンズ群である。像面湾曲を望遠側まで含めてバランスを取る場合、Apレンズ群に負の屈折力を持たせることによって、望遠側も含めた大きな補正作用を持たせたレンズ群として効果を発揮することが可能となり、広角端と望遠端との収差バランスの劣化をより小さくすることができる。上記事情から、Apレンズ群に負の屈折力を持たせることによって、高倍率化に伴う収差変動の抑制が容易となる。Apレンズ群が負の屈折力を有し、さらにズームレンズが以下に述べる条件式(1)を満足する場合は、変倍の際のFナンバーの変動を抑制しつつ、高倍率化と収差補正とを両立させることが容易となる。
【0038】
Apレンズ群の焦点距離をfAp、広角端における第2光学系G2の焦点距離をf2wとした場合、ズームレンズは、下記条件式(1)を満足することが好ましい。一般に、変倍の際に開口絞りStを有するレンズ群が移動すると、変倍に伴うFナンバーの変動が発生しやすくなる。条件式(1)は、変倍に伴うFナンバーの変動を抑えつつ、高倍率化するための条件式である。条件式(1)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、第2光学系G2内でApレンズ群の屈折力が弱くなり過ぎないため、Apレンズ群の変倍の際の移動量を抑えることができる。これによって、レンズ全長の増大を抑制でき、また、広角端から望遠端へ変倍した際のFナンバーの変動を抑制することができる。条件式(1)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第2光学系G2内でApレンズ群の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍に伴う球面収差および軸上色収差等の諸収差の変動を抑えることができるので、高倍率化に有利となる。より良好な特性を得るためにはズームレンズは、下記条件式(1-1)を満足することがより好ましい。
0.1<f2w/fAp<2.1 (1)
0.2<f2w/fAp<1.8 (1-1)
【0039】
広角端におけるApレンズ群の位置と望遠端におけるApレンズ群の位置との光軸Z方向の差をZAp、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、ズームレンズは下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、高倍率化が容易となる。条件式(2)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、Apレンズ群の変倍の際の移動量を抑えることができるため、変倍の際のFナンバーの変動を抑制することができる。より良好な特性を得るためにはズームレンズは、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。
4<ZAp/|fw|<10 (2)
4.7<ZAp/|fw|<8 (2-1)
【0040】
Apレンズ群に含まれる全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均をνApとした場合、ズームレンズは下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、軸上色収差を補正することが容易となる。より良好な特性を得るためにはズームレンズは、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましい。条件式(3-1)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、レンズ材料の価格を抑えることができるので低コスト化に有利となる。
65<νAp (3)
70<νAp<90 (3-1)
【0041】
変倍の際、Apレンズ群が含む開口絞りStの開口径は可変であり、全変倍域にわたってズームレンズの開口数が一定であることが好ましい。すなわち、全変倍域にわたってズームレンズの開口数が一定となるように、開口絞りStは、変倍の際に開口径を変化させることが可能な可変絞りであることが好ましい。このような可変絞りにすることによって、広角端から望遠端へ変倍した際のFナンバーの増大を防止できるため、望遠端での明るさ低下を抑制できる。
【0042】
広角端におけるズームレンズの焦点距離をfw、広角端における第2光学系G2の焦点距離をf2wとした場合、ズームレンズは下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、第2光学系G2の負の屈折力が強くなり過ぎないため、第1光学系G1の正の屈折力も強くなり過ぎることがないので、第1光学系G1から第2光学系G2へ向かう軸外主光線の光軸Zに対する角度が大きくなるのを抑えることができる。これによって、第2光学系G2内の拡大側のレンズの大径化を抑制することができ、また、像面湾曲の補正に有利となる。条件式(4)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第2光学系G2の負の屈折力を確保できるため、第1光学系G1内の縮小側のレンズの大径化を抑制することができる。より良好な特性を得るためにはズームレンズは、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましい。
-0.1<|fw|/f2w<0 (4)
-0.06<|fw|/f2w<0 (4-1)
【0043】
Apレンズ群の縮小側の光路にApレンズ群に隣接して、変倍の際に移動するレンズ群が配置されている場合、ズームレンズは下記条件式(5)を満足することが好ましい。以下では説明の便宜上、Apレンズ群の縮小側の光路にApレンズ群に隣接して配置された変倍の際に移動するレンズ群をRレンズ群と呼ぶことにする。図1の例では、第2Bレンズ群G2BがRレンズ群に対応する。条件式(5)では、Apレンズ群の焦点距離をfAp、Rレンズ群の焦点距離をfRとしている。条件式(5)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、Apレンズ群に対するRレンズ群の相対的な屈折力の絶対値が小さくなり過ぎないため、レンズ全長の大型化を抑制できる。条件式(5)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、Apレンズ群に対するRレンズ群の相対的な屈折力の絶対値が大きくなり過ぎないため、変倍の際の諸収差、特に非点収差の補正に有利となる。より良好な特性を得るためにはズームレンズは、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
-1.2<fR/fAp<-0.1 (5)
-1<fR/fAp<-0.2 (5-1)
【0044】
広角端におけるズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBfw、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、ズームレンズは下記条件式(6)を満足することが好ましい。Bfwは、広角端におけるズームレンズの最も縮小側のレンズ面から縮小側結像面までの光軸Z上の空気換算距離である。条件式(6)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、適切な長さのバックフォーカスを確保することができるため、色合成プリズム等を配置することが容易になる。条件式(6)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、バックフォーカスも含めた全系の大型化を抑制できる。より良好な特性を得るためにはズームレンズは、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
4<Bfw/|fw| (6)
5<Bfw/|fw|<10 (6-1)
【0045】
第1光学系G1は、広角端における第1光学系G1の最大の空気間隔より縮小側の光路上に、複数のフォーカス群を含み、これら複数のフォーカス群は互いの光軸Z方向の間隔を変化させて移動することにより合焦を行うことが好ましい。合焦の際に複数のフォーカス群を移動させることによって、合焦の際の収差変動を抑制することが容易になる。一例として図1のズームレンズは、2つのフォーカス群を含む。図1の例では、第1のフォーカス群はレンズL1dとレンズL1eとからなり、第2のフォーカス群はレンズL1fからなる。図1では、各フォーカス群の左側にそれぞれ両矢印を示している。
【0046】
図1に示すように、第2光学系G2は、最も縮小側から拡大側へ光路に沿って順に連続して、正の屈折力を有する第2Aレンズ群G2Aと、正の屈折力を有する第2Bレンズ群G2Bと、負の屈折力を有する第2Cレンズ群G2Cと、正の屈折力を有する第2Dレンズ群G2Dと、屈折力を有する第2Eレンズ群G2Eとを含むことが好ましい。そして、変倍の際に、第2Bレンズ群G2B、第2Cレンズ群G2C、第2Dレンズ群G2D、および第2Eレンズ群G2Eは、隣り合う群との光軸Z方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動し、かつ第2Aレンズ群G2Aは、縮小側結像面に対して固定されていることが好ましい。第2Eレンズ群G2Eは、正の屈折力を有するレンズ群でもよく、負の屈折力を有するレンズ群でもよい。
【0047】
第2光学系G2を上記構成にすることによって、各群は以下の作用効果を奏することができる。すなわち、第2Aレンズ群G2Aは、縮小側のテレセントリック性を保ちつつ、変倍の際の収差変動を少なくすることが容易になる。第2Bレンズ群G2B、第2Cレンズ群G2C、および第2Dレンズ群G2Dは、主な変倍作用を担うことができる。第2Eレンズ群G2Eは、像面の位置の補正に寄与することができる。
【0048】
図1では、変倍の際に移動する各レンズ群の下には広角端から望遠端への変倍の際の概略的な移動方向をそれぞれ矢印で示し、変倍の際に固定されている各レンズ群の下にはそれぞれ接地記号を示している。図1の例の第1光学系G1およびレンズL2nは、変倍の際に縮小側結像面に対して固定されているため、図1では、第1光学系G1およびレンズL2nをまとめて括弧で括り、その下に接地記号を示している。
【0049】
ズームレンズは、6つのレンズ群からなることが好ましい。そして、ズームレンズの最も拡大側のレンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に縮小側結像面に対して固定されていることが好ましい。ズームレンズの最も縮小側のレンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に縮小側結像面に対して固定されていることが好ましい。最も拡大側のレンズ群が変倍の際に固定されていることによって、変倍してもレンズ全長の変動のないレンズ構成とすることができる。最も縮小側のレンズ群が変倍の際に固定されていることによって、縮小側のテレセントリック性を保ちつつ、変倍の際の収差変動を少なくすることが容易になる。図1の例では、ズームレンズの最も拡大側のレンズ群は、第1光学系G1と、レンズL2nとからなり、ズームレンズの最も縮小側のレンズ群は、第2Aレンズ群G2Aである。
【0050】
上記構成および図1に示す例は、本開示のズームレンズの一例である。本開示のズームレンズの第1光学系G1および第2光学系G2に含まれるレンズの枚数、並びに、第2光学系G2の各レンズ群に含まれるレンズの枚数は、図1に示す例と異なる枚数にすることも可能である。
【0051】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。なお、可能な条件式の範囲としては、式の形式で記載された条件式に限定されず、好ましい、およびより好ましいとされた条件式の中から下限と上限とを任意に組み合わせて得られる範囲を含む。
【0052】
一例として、本開示のズームレンズの好ましい一態様は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第2光学系G2は縮小側結像面と共役な位置に中間像MIを形成し、第1光学系G1は中間像MIを拡大側結像面に再結像させ、第1光学系G1の光路上の最も拡大側にレンズを含み、変倍の際に隣り合う群との光軸Z方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群とした場合、第2光学系G2は、変倍の際に移動する複数のレンズ群を含み、上記の変倍の際に移動する複数のレンズ群のうちの1つは、開口数を決める開口絞りStを有するレンズ群であり、開口絞りStを有するレンズ群は負の屈折力を有し、上記条件式(1)を満足するズームレンズである。
【0053】
次に、本開示の技術に係るズームレンズの実施例について説明する。なお、各実施例の断面図に付された参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明および図面の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。従って、異なる実施例の図面において共通の参照符号が付されていても、必ずしも共通の構成ではない。
【0054】
[実施例1]
実施例1のズームレンズのレンズ構成と光束の断面図は図1に示しており、その構成および図示方法は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1と第2光学系G2との間の光路に中間像MIが形成されている。
【0055】
第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、ミラーR1と、レンズL1a~L1fと、ミラーR2と、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、第2Aレンズ群G2Aと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eと、レンズL2nとからなる。第2Aレンズ群G2AはレンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2BはレンズL2b~L2dからなる。第2Cレンズ群G2CはレンズL2e~L2hおよび開口絞りStからなる。第2Dレンズ群G2DはレンズL2iからなる。第2Eレンズ群G2EはレンズL2j~L2mからなる。
【0056】
変倍の際、第2Bレンズ群G2B、第2Cレンズ群G2C、第2Dレンズ群G2D、および第2Eレンズ群G2Eは、隣り合う群との光軸Z方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動し、かつ第2Aレンズ群G2A、レンズL2n、および第1光学系G1は縮小側結像面に対して固定されている。実施例1のズームレンズは6つのレンズ群からなる。
【0057】
実施例1のズームレンズは2つのフォーカス群を有する。第1のフォーカス群は、レンズL1dとレンズL1eとが接合された接合レンズからなる。第2のフォーカス群は、レンズL1fの単レンズからなる。合焦の際、第1のフォーカス群と第2のフォーカス群は光軸Z方向の相互間隔を変化させて移動する。
【0058】
実施例1のズームレンズについて、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bに、諸元および可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため基本レンズデータを表1Aおよび表1Bの2つの表に分けて示している。表1Aには第1光学系G1を示し、表1Bには第2光学系G2および光学部材PPを示す。基本レンズデータでは、ミラーR1およびミラーR2の記載を省略している。
【0059】
表1Aおよび表1Bは以下のように記載されている。Snの列には、最も拡大側の面を第1面とし縮小側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示す。Rの列には、各面の曲率半径を示す。Dの列には、各面とその縮小側に隣接する面との光軸Z上の面間隔を示す。Ndの列には、各構成要素のd線に対する屈折率を示す。νdの列には、各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0060】
表1Aおよび表1Bでは、拡大側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、縮小側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1Bでは開口絞りStに相当する面の面番号の欄に面番号と(St)という語句を記載している。表1BのDの最下欄の値は表中の最も縮小側の面と画像表示面Simとの間隔である。表1Bでは、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の拡大側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0061】
表2に、ズームレンズについて、ズーム倍率Zr、焦点距離の絶対値|f|、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、および変倍の際の可変面間隔をd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表2では、広角端状態、中間焦点距離状態、および望遠端状態における各値をそれぞれWIDE、MIDDLE、およびTELEの列に示している。
【0062】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表3において、Snの行には非球面の面番号を示し、KAおよびAm(m=3、4、5、・・・20)の行には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸Zに垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸Zからレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0063】
以下の表および後述の収差図は全て、ズームレンズの焦点距離の絶対値が1.0になるように規格化された場合のデータである。また、以下に示す各表では予め定められた桁でまるめた数値を記載している。
【0064】
【表1A】
【0065】
【表1B】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
図2に、実施例1のズームレンズの各収差図を示す。図2では、「WIDE」と付した上段に広角端における各収差図を示し、「MIDDLE」と付した中段に中間焦点距離状態における各収差図を示し、「TELE」と付した下段に望遠端状態における各収差図を示す。図2では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図では「FNo.=」の後にFナンバーの値を示す。その他の収差図では「ω=」の後に最大半画角の値を示す。図2には、拡大側結像面から第1光学系G1までの光軸Z上の距離が149.9の場合のデータを示す。
【0069】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、図示方法、および焦点距離の絶対値が1.0になるように規格化されている点は、特に断りが無い限り以下の実施例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0070】
[実施例2]
実施例2のズームレンズのレンズ構成と光束の断面図を図3に示す。実施例2のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1と第2光学系G2との間の光路に中間像MIが形成されている。
【0071】
第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、ミラーR1と、レンズL1a~L1fと、ミラーR2と、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、第2Aレンズ群G2Aと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eと、レンズL2nとからなる。第2Aレンズ群G2AはレンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2BはレンズL2b~L2dからなる。第2Cレンズ群G2CはレンズL2e~L2hおよび開口絞りStからなる。第2Dレンズ群G2DはレンズL2iからなる。第2Eレンズ群G2EはレンズL2j~L2mからなる。
【0072】
変倍の際、第2Bレンズ群G2B、第2Cレンズ群G2C、第2Dレンズ群G2D、および第2Eレンズ群G2Eは、隣り合う群との光軸Z方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動し、かつ第2Aレンズ群G2A、レンズL2n、および第1光学系G1は縮小側結像面に対して固定されている。実施例2のズームレンズは6つのレンズ群からなる。
【0073】
実施例2のズームレンズは2つのフォーカス群を有する。第1のフォーカス群は、レンズL1dとレンズL1eとが接合された接合レンズからなる。第2のフォーカス群は、レンズL1fの単レンズからなる。合焦の際、第1のフォーカス群と第2のフォーカス群は光軸Z方向の相互間隔を変化させて移動する。
【0074】
実施例2のズームレンズについて、基本レンズデータを表4Aおよび表4Bに、諸元および可変面間隔を表5に、非球面係数を表6に、拡大側結像面から第1光学系G1までの光軸Z上の距離が149.9の場合の各収差図を図4に示す。
【0075】
【表4A】
【0076】
【表4B】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】

[実施例3]
実施例3のズームレンズのレンズ構成と光束の断面図を図5に示す。実施例3のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1と第2光学系G2との間の光路に中間像MIが形成されている。
【0079】
第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、ミラーR1と、レンズL1a~L1fと、ミラーR2と、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、第2Aレンズ群G2Aと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eとからなる。第2Aレンズ群G2AはレンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2BはレンズL2b~L2dからなる。第2Cレンズ群G2CはレンズL2e~L2hおよび開口絞りStからなる。第2Dレンズ群G2DはレンズL2iからなる。第2Eレンズ群G2EはレンズL2j~L2nからなる。
【0080】
変倍の際、第2Bレンズ群G2B、第2Cレンズ群G2C、第2Dレンズ群G2D、および第2Eレンズ群G2Eは、隣り合う群との光軸Z方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動し、かつ第2Aレンズ群G2A、および第1光学系G1は縮小側結像面に対して固定されている。実施例3のズームレンズは6つのレンズ群からなる。
【0081】
実施例3のズームレンズは2つのフォーカス群を有する。第1のフォーカス群は、レンズL1dとレンズL1eとが接合された接合レンズからなる。第2のフォーカス群は、レンズL1fの単レンズからなる。合焦の際、第1のフォーカス群と第2のフォーカス群は光軸Z方向の相互間隔を変化させて移動する。
【0082】
実施例3のズームレンズについて、基本レンズデータを表7Aおよび表7Bに、諸元および可変面間隔を表8に、非球面係数を表9に、拡大側結像面から第1光学系G1までの光軸Z上の距離が149.9の場合の各収差図を図6に示す。
【0083】
【表7A】
【0084】
【表7B】
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
表10に実施例1~3のズームレンズの条件式(1)~(6)の対応値を示す。表10にはd線を基準とした場合の値を示す。
【0088】
【表10】
【0089】
以上のデータからわかるように、実施例1~3のズームレンズは、広角端での最大全画角が125度以上であり、広い画角を有し、ズーム倍率が1.5倍以上あり、高い倍率を有し、全変倍域でのFナンバーが2.5以下の値で一定であり、各収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0090】
次に、本開示の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。図7は、本開示の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図7に示す投写型表示装置100は、本開示の実施形態に係るズームレンズ10と、光源15と、各色光に対応したライトバルブとしての透過型表示素子11a~11cと、色分解のためのダイクロイックミラー12、13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、コンデンサレンズ16a~16cと、光路を偏向するための全反射ミラー18a~18cとを有する。なお、図7では、ズームレンズ10は概略的に図示している。また、光源15とダイクロイックミラー12の間にはインテグレーターが配されているが、図7ではその図示を省略している。
【0091】
光源15からの白色光は、ダイクロイックミラー12、13で3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解された後、それぞれコンデンサレンズ16a~16cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型表示素子11a~11cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム14により色合成された後、ズームレンズ10に入射する。ズームレンズ10は、透過型表示素子11a~11cにより変調された変調光による光学像をスクリーン105上に投写する。
【0092】
図8は、本開示の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図8に示す投写型表示装置200は、本開示の実施形態に係るズームレンズ210と、光源215と、各色光に対応したライトバルブとしてのDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)素子21a~21cと、色分解および色合成のためのTIR(Total Internal Reflection)プリズム24a~24cと、照明光と投写光を分離する偏光分離プリズム25とを有する。なお、図8ではズームレンズ210を概略的に図示している。また、光源215と偏光分離プリズム25の間にはインテグレーターが配されているが、図8ではその図示を省略している。
【0093】
光源215からの白色光は、偏光分離プリズム25内部の反射面で反射された後、TIRプリズム24a~24cにより3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ対応するDMD素子21a~21cに入射して変調され、再びTIRプリズム24a~24cを逆向きに進行して色合成された後、偏光分離プリズム25を透過して、ズームレンズ210に入射する。ズームレンズ210は、DMD素子21a~21cにより変調された変調光による光学像をスクリーン205上に投写する。
【0094】
図9は、本開示のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図9に示す投写型表示装置300は、本開示の実施形態に係るズームレンズ310と、光源315と、各色光に対応したライトバルブとしての反射型表示素子31a~31cと、色分離のためのダイクロイックミラー32、33と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34と、光路偏向のための全反射ミラー38と、偏光分離プリズム35a~35cとを有する。なお、図9では、ズームレンズ310は概略的に図示している。また、光源315とダイクロイックミラー32の間にはインテグレーターが配されているが、図9ではその図示を省略している。
【0095】
光源315からの白色光はダイクロイックミラー32、33により3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ偏光分離プリズム35a~35cを経て、各色光光束それぞれに対応する反射型表示素子31a~31cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、ズームレンズ310に入射する。ズームレンズ310は、反射型表示素子31a~31cにより変調された変調光による光学像をスクリーン305上に投写する。
【0096】
図10および図11は、本開示の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ400の外観図である。図10は、カメラ400を正面側から見た斜視図を示し、図11は、カメラ400を背面側から見た斜視図を示す。カメラ400は、交換レンズ48が取り外し自在に装着され、かつミラーレスタイプの一眼形式のデジタルカメラである。交換レンズ48は、本開示の実施形態に係るズームレンズ49を鏡筒内に収納したものである。
【0097】
カメラ400はカメラボディ41を備え、カメラボディ41の上面にはシャッターボタン42および電源ボタン43が設けられている。また、カメラボディ41の背面には、操作部44、操作部45、および表示部46が設けられている。表示部46は、撮像された画像および撮像される前の画角内にある画像を表示する。
【0098】
カメラボディ41の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント47が設けられ、マウント47を介して交換レンズ48がカメラボディ41に装着される。
【0099】
カメラボディ41内には、交換レンズ48によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子(不図示)、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路(不図示)、およびその生成された画像を記録するための記録媒体(不図示)などが設けられている。カメラ400では、シャッターボタン42を押すことにより静止画又は動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0100】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術について説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0101】
また、本開示の技術に係る投写型表示装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、光束分離又は光束合成に用いられる光学部材、およびライトバルブは、種々の態様の変更が可能である。ライトバルブは、光源からの光を画像表示素子により空間変調して、画像データに基づく光学像として出力する態様に限定されず、自発光型の画像表示素子から出力された光自体を、画像データに基づく光学像として出力する態様であってもよい。自発光型の画像表示素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子が2次元配列された画像表示素子が挙げられる。
【0102】
また、本開示の技術に係る撮像装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、ミラーレスタイプ以外のカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ、および映画撮影用カメラ等、種々の態様とすることができる。
【符号の説明】
【0103】
10、49、210、310 ズームレンズ
11a~11c 透過型表示素子
12、13、32、33 ダイクロイックミラー
14、34 クロスダイクロイックプリズム
15、215、315 光源
16a~16c コンデンサレンズ
18a~18c、38 全反射ミラー
21a~21c DMD素子
24a~24c TIRプリズム
25、35a~35c 偏光分離プリズム
31a~31c 反射型表示素子
41 カメラボディ
42 シャッターボタン
43 電源ボタン
44、45 操作部
46 表示部
47 マウント
48 交換レンズ
100、200、300 投写型表示装置
105、205、305 スクリーン
400 カメラ
G1 第1光学系
G2 第2光学系
G2A 第2Aレンズ群
G2B 第2Bレンズ群
G2C 第2Cレンズ群
G2D 第2Dレンズ群
G2E 第2Eレンズ群
Ka 軸上光束
Kb 最大画角の光束
L1a~L1l、L2a~L2n レンズ
MI 中間像
PP 光学部材
R1 ミラー
R2 ミラー
Sim 画像表示面
St 開口絞り
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11