(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241220BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241220BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20241220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J7/00 X
(21)【出願番号】P 2021057079
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 敏成
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 尚克
(72)【発明者】
【氏名】山本 明日香
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-327080(JP,A)
【文献】特開2002-017044(JP,A)
【文献】特開2010-022122(JP,A)
【文献】特開2015-188286(JP,A)
【文献】国際公開第2020/097677(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される電力線に接続され、前記電力線との間で電力の充放電を行う充放電装置と、前記電力線に接続される太陽光発電装置とを備え、前記電力線に電力負荷装置が接続されている電源システムであって、
前記充放電装置の充電電力及び放電電力が無いと仮定した場合に前記電力線から前記電力系統へ供給されると想定される逆潮流電力のうち、前記太陽光発電装置を起源とする特定逆潮流電力に関する情報を第1設定時間毎に取得し、前記充放電装置の充電残量に関する情報を第2設定期間毎に取得し、前記特定逆潮流電力に関する情報及び前記充電残量に関する情報を参照して、前記充放電装置に動作指令を行う逆潮流制御処理を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記逆潮流制御処理において、
過去の直近の前記特定逆潮流電力が、前記充電残量が多いほど大きくなる関係で定められている代表値より小さい場合、前記充放電装置に対して、その不足分に相当する不足電力を放電する放電モードで動作させる指示を行い、
過去の直近の前記特定逆潮流電力が前記代表値より大きい場合、その過剰分に相当する過剰電力を充電する充電モードで動作させる指示を行うように構成されている電源システム。
【請求項2】
前記代表値は、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる前記特定逆潮流電力の平均値を、前記充電残量が多いほど大きくなるように補正した値に決定される請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記代表値は、前記充電残量が多いほど大きくなり、且つ、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど小さくなる関係で定められている請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記代表値は、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる前記特定逆潮流電力の平均値を、前記充電残量が多いほど大きくなり、且つ、前記日没時刻を含む時間帯に近くなるほど小さくなるように補正した値に決定される請求項3に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に接続される電力線に接続され、電力線との間で電力の充放電を行う充放電装置と、電力線に接続される太陽光発電装置とを備え、電力線に電力負荷装置が接続されている電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置の太陽光出力電力は、例えば天候に応じて短時間の間に急激に増減する可能性がある。太陽光発電装置の太陽光出力電力が短時間の間に急激に増減した場合、電力系統への逆潮流電力又は電力系統からの受電電力が短期間の間に急激に増減する可能性が高い。
【0003】
但し、充放電装置が併設されている場合、太陽光発電装置の太陽光出力電力の減少に応じて充放電装置の放電電力を増加又は充電電力を減少させ、或いは、太陽光発電装置の太陽光出力電力の増加に応じて充放電装置の放電電力を減少又は充電電力を増加させることで、電力系統への逆潮流電力の増減幅を小さくできる可能性がある。
特許文献1(特開2016-140182号公報)には、太陽光発電電力の変動を蓄電池の放電電力によって平滑化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、太陽光発電装置の太陽光発電電力をリアルタイムで取得できない場合、例えば、設定期間毎でしか取得できない場合、太陽光発電電力についての情報を取得した時点で、既に太陽光発電電力が変動している可能性がある。そのため、太陽光発電装置の太陽光発電電力をリアルタイムで取得できないシステムでは、電力系統への逆潮流電力の増減幅が大きくなり過ぎる可能性がある。例えば、太陽光発電装置の太陽光発電電力が非常に小さいことを検知して、その後に充放電装置が大電力の放電を行った場合、その時点で太陽光発電装置の太陽光発電電力が大きくなっていれば、太陽光発電装置の太陽光発電電力と充放電装置の放電電力との合計である逆潮流電力が非常に大きくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力系統への逆潮流電力の増減幅が大きくなり過ぎることを抑制できる電源システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電源システムの特徴構成は、電力系統に接続される電力線に接続され、前記電力線との間で電力の充放電を行う充放電装置と、前記電力線に接続される太陽光発電装置とを備え、前記電力線に電力負荷装置が接続されている電源システムであって、
前記充放電装置の充電電力及び放電電力が無いと仮定した場合に前記電力線から前記電力系統へ供給されると想定される逆潮流電力のうち、前記太陽光発電装置を起源とする特定逆潮流電力に関する情報を第1設定時間毎に取得し、前記充放電装置の充電残量に関する情報を第2設定期間毎に取得し、前記特定逆潮流電力に関する情報及び前記充電残量に関する情報を参照して、前記充放電装置に動作指令を行う逆潮流制御処理を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記逆潮流制御処理において、
過去の直近の前記特定逆潮流電力が、前記充電残量が多いほど大きくなる関係で定められている代表値より小さい場合、前記充放電装置に対して、その不足分に相当する不足電力を放電する放電モードで動作させる指示を行い、
過去の直近の前記特定逆潮流電力が前記代表値より大きい場合、その過剰分に相当する過剰電力を充電する充電モードで動作させる指示を行うように構成されている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、太陽光発電装置を起源とする特定逆潮流電力が増減しても、その特定逆潮流電力が代表値より小さい場合には充放電装置が放電モードで動作し、その特定逆潮流電力が代表値より大きい場合には充放電装置が充電モードで動作する。その結果、充放電装置及び太陽光発電装置から電力系統へ供給される逆潮流電力は、代表値に近い値になり、その増減幅が大きくなり過ぎることは抑制される。
更に、充電残量が多いほど代表値は大きくなり、充電残量が少ないほど代表値は小さくなるため、充電残量が多いほど充放電装置はその充電残量を増加させない傾向で動作し、充電残量が少ないほど充放電装置はその充電残量を減少させない傾向で動作する。その結果、充放電装置の充電残量が多くなり過ぎること及び少なくなり過ぎることを抑制できる。
【0009】
本発明に係る電源システムの別の特徴構成は、前記代表値は、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる前記特定逆潮流電力の平均値を、前記充電残量が多いほど大きくなるように補正した値に決定される点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる特定逆潮流電力の平均値を用いて代表値が決定されるので、代表値は実際の特定逆潮流電力と大きく乖離した値にはならない。
【0011】
本発明に係る電源システムの更に別の特徴構成は、前記代表値は、前記充電残量が多いほど大きくなり、且つ、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど小さくなる関係で定められている点にある。
ここで、前記代表値は、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる前記特定逆潮流電力の平均値を、前記充電残量が多いほど大きくなり、且つ、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど小さくなるように補正した値に決定されてもよい。
【0012】
上記特徴構成によれば、充電残量が多いほど代表値は大きくなり、充電残量が少ないほど代表値は小さくなる。そのため、充電残量が多いほど、特定逆潮流電力が代表値よりも小さくなる可能性が高いため、充放電装置が放電モードで動作する可能性が高くなる。また、充電残量が少ないほど、特定逆潮流電力は代表値よりも大きくなる可能性が高いため、充放電装置が充電モードで動作する可能性が高くなる。その結果、充放電装置の充電残量が多くなり過ぎること及び少なくなり過ぎることを抑制できる。
【0013】
また、日没後は太陽光発電装置の太陽光発電電力がゼロになるため、日没時刻を含む時間帯の前に、充放電装置の充電残量が大きくなっていることが好ましい。
本特徴構成では、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど代表値が小さくなるため、充放電装置が放電モードで動作する場合には放電電力は小さく、充放電装置が充電モードで動作する場合には充電電力は大きくなる。つまり、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど、充放電装置の充電残量が大きくなり、日没時刻以後に充放電装置の充電残量を活用できる機会が増加することを期待できる。
更に、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる特定逆潮流電力の平均値を用いて代表値が決定される場合、代表値は実際の特定逆潮流電力と大きく乖離した値にはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】充電残量に応じて決定される補正値を示すグラフである。
【
図7】電力線から電力系統へ供給される逆潮流電力のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】充放電装置の充電残量の推移を示すグラフである。
【
図9】充電残量及び時刻に応じて決定される補正値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係る電源システムについて説明する。
図1は、電源システムの構成を示す図である。図示するように、電源システムは、充放電装置10と、太陽光発電装置30と、制御装置7とを備える。加えて、本実施形態の電源システムは、燃料電池装置20も備える。
図1に示した例では、充放電装置10は、電力系統1に接続される電力線2の第1接続箇所4に接続され、太陽光発電装置30は電力線2の第2接続箇所5に接続され、燃料電池装置20及び電力負荷装置3は電力線2の第3接続箇所6に接続されている。
【0016】
充放電装置10は、電力系統1に接続される電力線2に接続され、電力線2との間で電力の充放電を行う。具体的には、充放電装置10は、充放電部12と、充放電部12への充電電力及び充放電部12からの放電電力を調節する電力変換部11と、電力変換部11の動作を制御する充放電制御部13と、充放電装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14とを備える。充放電部12は、例えば蓄電池等を備える。充放電制御部13は、所定の上限放電電力と上限充電電力との間で、電力線2への放電電力及び充電電力を調節できる。
【0017】
また、充放電装置10には、電力測定部8で測定される電力についての情報が伝達される。この電力測定部8で測定される電力は、電力系統1からの受電電力、或いは、電力系統1への逆潮流電力である。
【0018】
太陽光発電装置30は、太陽電池部32と、太陽電池部32の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部31と、電力変換部31の動作を制御する太陽光発電制御部33と、太陽光発電装置30で取り扱われる情報を記憶する記憶部34とを備える。太陽光発電制御部33は、電力変換部31の動作を制御することで、電力線2に供給される太陽光発電電力を調節できる。例えば、太陽光発電制御部33は、最大電力追従制御を行うように電力変換部31を動作させることもできる。
【0019】
燃料電池装置20は、燃料電池部22と、燃料電池部22の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部21と、燃料電池部22及び電力変換部21の動作を制御する燃料電池制御部23と、燃料電池装置20で取り扱われる情報を記憶する記憶部24とを備える。また、燃料電池装置20は、燃料電池部22の燃料ガスである水素を生成する燃料改質装置を備えていてもよい。
【0020】
燃料電池制御部23は、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置20から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部23は、燃料電池装置20の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。
【0021】
また、燃料電池装置20には、電力測定部9で測定される電力についての情報が伝達される。この電力測定部9で測定される電力は、例えば照明機器や空調機器などの住宅負荷等である電力負荷装置3の負荷電力から燃料電池装置20の出力電力を減算した電力になる。つまり、負荷電力が燃料電池装置20の出力電力よりも大きい場合には、電力測定部9で測定される電力の符号はプラスになり、負荷電力が燃料電池装置20の出力電力よりも小さい場合には、電力測定部9で測定される電力の符号はマイナスになり、負荷電力と燃料電池装置20の出力電力と同じ場合には、電力測定部9で測定される電力はゼロになる。そして、燃料電池制御部23は、燃料電池装置20の出力電力を、電力負荷装置3の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部23は、電力測定部9で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロになるように燃料電池装置20の出力電力を調節することで、電力負荷装置3の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0022】
制御装置7は、充放電装置10及び太陽光発電装置30及び燃料電池装置20との間で情報通信を行うことができる。本実施形態の場合、制御装置7は、電力測定部8で測定される逆潮流電力P1についての情報及び充放電装置10から電力線2に出力される放電電力P2についての情報を充放電装置10から取得し、太陽光発電装置30から電力線2に出力される太陽光発電電力P3についての情報を太陽光発電装置30から取得し、電力測定部9で測定される供給電力P4についての情報を燃料電池装置20から取得する。
【0023】
逆潮流電力P1は、放電電力P2と太陽光発電電力P3との合計から、供給電力P4を減算して導出される。つまり、P1=P2+P3-P4、となる。尚、本実施形態では、燃料電池装置20は、負荷追従運転、即ち、電力測定部9で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロになるように燃料電池装置20の出力電力を調節する運転を行っているため、P4=0である。
【0024】
制御装置7は、充放電装置10の充電電力及び放電電力が無いと仮定した場合に電力線2から電力系統1へ供給されると想定される逆潮流電力のうち、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力に関する情報を第1設定時間毎(例えば1分間毎など)に取得(即ち導出)する。本実施形態では、電力線2に太陽光発電装置30と燃料電池装置20とが接続されているため、充放電装置10の充電電力及び放電電力が無いと仮定した場合に電力線2から電力系統1へ供給されると想定される逆潮流電力は「P3-P4」となる。そして、P4が正の値の場合、即ち、燃料電池装置20を起源とする逆潮流電力が無い場合には、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力は「P3-P4」になる。それに対して、P4が負の値の場合、即ち、燃料電池装置20を起源とする逆潮流電力が有る場合には、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力は「P3」になる。そして、制御装置7は、充放電装置10の充電残量に関する情報を第2設定期間毎に取得し、特定逆潮流電力に関する情報及び充電残量に関する情報を参照して、充放電装置10に動作指令を行う逆潮流制御処理を行う。
【0025】
具体的には、制御装置7は、逆潮流制御処理において、過去の直近の特定逆潮流電力が、充電残量が多いほど大きくなる関係で定められている代表値より小さい場合、充放電装置10に対して、その不足分に相当する不足電力を放電する放電モードで動作させる指示を行い、過去の直近の特定逆潮流電力が代表値より大きい場合、その過剰分に相当する過剰電力を充電する充電モードで動作させる指示を行う。
【0026】
〔放電モード〕
図2及び
図3は、充放電装置10が放電モードで動作する場合を模式的に描いた図である。図示するように、制御装置7は、1分間毎に、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力を決定して記憶している。図中では、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力のことを、「太陽光発電電力分」と記載している。本実施形態ではP4=0であるため、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力は、太陽光発電電力P3になる。そして、制御装置7は、上記第2設定期間毎の逆潮流制御処理タイミングになると代表値を決定する。制御装置7は、代表値を、過去の直近での、所定の算出期間(例えば60分間など)に含まれる特定逆潮流電力の平均値を、充電残量が多いほど大きくなるように補正した値に決定する。
図2及び
図3において、逆潮流制御処理タイミングよりも時間的に前に棒グラフで示しているのは、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力であり、制御装置7は、それらの値から特定逆潮流電力の平均値を導出する。
【0027】
図4は、充電残量に応じて決定される補正値を示すグラフである。制御装置7は、代表値を、特定逆潮流電力の平均値から補正値を減算して、即ち、「代表値=特定逆潮流電力の平均値-補正値」という計算式で導出する。図示するように、充電残量:SOC(state of charge)が大きくなるほど、補正値は小さくなるように定められている。つまり、充電残量が大きくなるほど、代表値は大きくなる。例えば、
図2及び
図3に示す特定逆潮流電力の平均値は同じ値であるが、
図2の場合は充電残量が多いため補正値が小さく、
図3の場合は充電残量が少ないため補正値は大きい。そのため、代表値は、
図2に示す例(即ち、充電残量が多い場合)の方が、
図3に示す例よりも大きくなる。
【0028】
そして、制御装置7は、時刻t0で示す過去の直近の特定逆潮流電力が、代表値より小さいため、充放電装置10に対して、その不足分に相当する不足電力を放電する放電モードで動作させる指示を行う。
図2に示す場合、充電残量が多いため、充放電装置10に指示される放電電力が大きくなる。それに対して、
図3に示す場合、充電残量が少ないため、充放電装置10に指示される放電電力が小さくなる。
【0029】
〔充電モード〕
図5及び
図6は、充放電装置10が充電モードで動作する場合を模式的に描いた図である。
図5及び
図6に示す特定逆潮流電力の平均値は同じ値であるが、
図5の場合は充電残量が多いため補正値が小さく、
図6の場合は充電残量が少ないため補正値は大きい。そのため、代表値は、
図5に示す例(即ち、充電残量が多い場合)の方が、
図6に示す例よりも大きくなる。
【0030】
そして、制御装置7は、時刻t0で示す過去の直近の特定逆潮流電力が、代表値より大きいため、充放電装置10に対して、その過剰分に相当する過剰電力を充電する充電モードで動作させる指示を行う。
図5及び
図6では、逆潮流制御処理タイミングの後の充放電装置10の充電電力により、太陽光発電電力分(特定逆潮流電力)の一部が充電されている状態を示している。逆潮流制御処理タイミングの後の太陽光発電電力分において、破線で示している部分が充放電装置10で充電される電力分である。
図5に示す場合、充電残量が多いため、充放電装置10に指示される充電電力が小さくなる。それに対して、
図6に示す場合、充電残量が少ないため、充放電装置10に指示される充電電力が大きくなる。
【0031】
図7は、電力線2から電力系統1へ供給される逆潮流電力のシミュレーション結果を示すグラフである。尚、図中では、5分移動平均値を示している。
例1は、充放電装置10及び燃料電池装置20を設置せず、太陽光発電装置30と電力負荷装置3とを設置した場合の逆潮流電力である。つまり、例1では、太陽光発電装置30の太陽光発電電力が電力負荷装置3の負荷電力よりも大きい場合に、その余剰電力が電力系統1に逆潮流される。
例2は、燃料電池装置20を設置せず、太陽光発電装置30と充放電装置10と電力負荷装置3とを設置した場合の逆潮流電力である。また、充放電装置10は、太陽光発電装置30の太陽光発電電力が電力負荷装置3の負荷電力よりも大きい場合に充放電装置10がその余剰電力を全て充電し、太陽光発電電力が負荷電力よりも小さい場合に充放電装置10がその不足電力を全て放電するように設定されている。尚、充放電装置10の充電残量が上限値になると余剰電力の充電は停止され、電力系統1に逆潮流される。
例3は、上述した逆潮流制御処理を制御装置7が行っている場合の逆潮流電力である。
【0032】
図7から分かるように、充放電装置10を設置していない例1の場合、逆潮流電力は急激に増減している。また、例2の場合、時刻11時前に充放電装置10の充電残量が上限値に到達すると、充放電装置10が充電を停止するため、逆潮流電力が急激に増加している。また、充放電装置10の充電残量が上限値に到達した後は、充放電装置10は余剰電力を充電しないため、例1及び例2の逆潮流電力は同様の変化を示す。例3の場合、1日を通して逆潮流電力に急激な変動は見られない点で好ましい。つまり、電力系統1への逆潮流電力の増減幅が大きくなることを抑制できている。
【0033】
図8は、
図7に示した例2における充放電装置10の充電残量の推移と、
図7に示した例3における充放電装置10の充電残量の推移とを示すグラフである。図示するように、例3の場合も、充電残量は十分に大きな値になっており、充放電装置10からの給電能力は十分に確保されている。
【0034】
以上のように、太陽光発電装置30を起源とする特定逆潮流電力が増減しても、その特定逆潮流電力が代表値より小さい場合には充放電装置10が放電モードで動作し、その特定逆潮流電力が代表値より大きい場合には充放電装置10が充電モードで動作する。その結果、充放電装置10及び太陽光発電装置30から電力系統1へ供給される逆潮流電力は、代表値に近い値になり、その増減幅が大きくなり過ぎることは抑制される。更に、充放電装置10の充電残量が多いほど代表値は大きくなり、充電残量が少ないほど代表値は小さくなるため、充電残量が多いほど充放電装置10はその充電残量を増加させない傾向で動作し、充電残量が少ないほど充放電装置10はその充電残量を減少させない傾向で動作する。その結果、充放電装置10の充電残量が多くなり過ぎること及び少なくなり過ぎることを抑制できる。
【0035】
<第2実施形態>
第2実施形態の電源システムは、代表値の決定手法が上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の電源システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
本実施形態でも、制御装置7は、逆潮流制御処理において、過去の直近の特定逆潮流電力が、充電残量が多いほど大きくなる関係で定められている代表値より小さい場合、充放電装置10に対して、その不足分に相当する不足電力を放電する放電モードで動作させる指示を行い、過去の直近の特定逆潮流電力が代表値より大きい場合、その過剰分に相当する過剰電力を充電する充電モードで動作させる指示を行う。
【0037】
本実施形態において、代表値は、充電残量が多いほど大きくなり、且つ、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど小さくなる関係で定められている。具体的には、制御装置7は、代表値を、過去の直近での、所定の算出期間に含まれる特定逆潮流電力の平均値を、充電残量が多いほど大きくなり、且つ、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど小さくなるように補正した値に決定する。制御装置7は、日没時刻を含む時間帯を予め記憶している。本実施形態では、「日没時刻を含む時間帯」として、日没時刻そのものを採用している。
【0038】
図9は、充電残量及び時刻に応じて決定される補正値を示すグラフである。図示するように、充電残量:SOC(state of charge)が少なくなり、且つ、日没時刻に近くなるほど、補正値は大きくなるように定められている。そして、充電残量が同じであるならば、日没時刻に最も近い「13時から日没」までの期間が最も補正値が大きく、日没時刻から最も遠い「日没~24時、翌日の0時~10時」までの期間が最も補正値が小さくなる。そして、制御装置7は、代表値を、特定逆潮流電力の平均値から補正値を減算して、即ち、「代表値=特定逆潮流電力の平均値-補正値」という計算式で導出する。つまり、充電残量が大きくなるほど代表値は大きくなり、日没時刻に近くなるほど代表値は小さくなる。
【0039】
このように、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど代表値が小さくなるため、充放電装置10が放電モードで動作する場合には放電電力は小さく、充放電装置10が充電モードで動作する場合には充電電力は大きくなる。つまり、日没時刻を含む時間帯に近くなるほど、充放電装置10の充電残量が大きくなり、日没時刻以後に充放電装置10の充電残量を活用できる機会が増加することを期待できる。
【0040】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、電源システムの構成について具体例を挙げて説明したが、それらの構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、電源システムが燃料電池装置20を備える例を説明したが、電源システムが燃料電池装置20を備えていなくてもよい。
【0041】
<2>
上記実施形態では、補正値の例を幾つか示したが、それらは例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。例えば、
図4及び
図9には、充放電装置10の充電残量に応じて補正値が連続的に決定される例を説明したが、例えば、充電残量0%以上30%未満の場合は補正値Aを適用し、充電残量30%以上60%未満の場合は補正値Bを適用し、充電残量60%以上100%未満の場合は補正値Cを適用するというように、充放電装置10の充電残量に応じて補正値が段階的に決定されてもよい。
【0042】
<3>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、電力系統への逆潮流電力の増減幅が大きくなり過ぎることを抑制できる電源システムに利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 電力系統
2 電力線
3 電力負荷装置
7 制御装置
10 充放電装置
30 太陽光発電装置