(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241220BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241220BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J13/00 301A
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 170
(21)【出願番号】P 2021058689
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 明日香
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124022(JP,A)
【文献】特開2007-151371(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052824(WO,A1)
【文献】特開2002-291162(JP,A)
【文献】特開2008-271723(JP,A)
【文献】特開2007-159266(JP,A)
【文献】特開2018-152962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0024494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設のそれぞれに設置される電源装置と、複数の前記電源装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、電力系統に連系される電源部を備え、上限出力電力と下限出力電力との間で出力電力を調節できるように構成され、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置される前記電源装置及び前記電力系統の少なくとも一方から電力供給を受けるように構成され、
前記管理装置は、複数の前記電源装置のうち、出力電力を同じ前記施設に設置される前記電力負荷装置の負荷電力に追従させる追従運転を行う前記電源装置の台数である追従運転台数と、前記施設から前記電力系統へ電力が供給されるように、出力電力を前記管理装置から指令される所定値にする定値運転を行う前記電源装置の台数である定値運転台数とを調節する台数調節処理を行い、前記定値運転を行うと決定した前記電源装置に対して当該電源装置の出力電力を定める出力制御指令を送信し、前記追従運転を行うと決定した前記電源装置に対して前記追従運転を行うことを指令するように構成され、
前記管理装置は、前記台数調節処理において、複数の前記施設から前記電力系統へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が多いほど、前記定値運転台数を多くする電源管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、複数の前記施設のそれぞれについての、将来に前記施設から前記電力系統へ供給できると予測される逆潮流可能電力量に基づいて、複数の前記電源装置のうち、前記逆潮流可能電力量が多い前記電源装置を優先して前記定値運転を行う前記電源装置に決定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記施設は、前記逆潮流可能電力量を予測する予測装置を備え、
前記管理装置は、複数の前記施設のそれぞれの前記予測装置で予測された前記逆潮流可能電力量についての情報を受信するように構成されている請求項2に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、複数の前記施設のそれぞれから受信した、将来に予測される前記電力負荷装置の予測負荷電力及び前記電源装置の出力可能電力に基づいて、前記逆潮流可能電力量を予測するように構成されている請求項2に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記台数調節処理において、前記定値運転を行う前記電源装置が設置される前記施設のそれぞれでの前記逆潮流可能電力量の合計が、前記目標逆潮流電力量よりも設定値だけ多くなるように前記定値運転台数を決定する請求項2~4の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項6】
前記管理装置は、複数の前記電源装置のうち、出力上昇速度の大きい前記電源装置を優先して前記定値運転を行う前記電源装置に決定する請求項1~5の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項7】
前記管理装置は、前記台数調節処理を複数のタイミングで繰り返し行う請求項1~6の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池部を備える燃料電池装置。
【請求項9】
請求項1~7の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設のそれぞれに設置される電源装置と、複数の電源装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統には、従来から有る大規模な発電所だけでなく、住宅や事業所などの施設に設置された発電装置や充放電装置等の電源装置も接続されている。また、施設に設置された電力負荷装置も電力系統に接続されている。そして、電源装置及び電力負荷装置を用いて施設の受電点電力を増減させることで、電力系統での電力の需給バランス調整に貢献することができる。近年では、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念の下で、需要家の施設に設置された上述のような電源装置及び電力負荷装置などの需要家側エネルギーリソースの動作を制御することで、発電所と同等の機能を提供することが試みられている。
【0003】
特許文献1(特開2018-125907号公報)には、複数の施設のそれぞれに設置される電源装置(電力資源101)と、複数の電源装置との間で通信を行うことができる管理装置(仮想発電中央装置103)とを備える電源管理システムが記載されている。そして、管理装置は、経済性や、電力負荷低減における需要家への影響度、電源装置の発動における信頼性、電源装置の故障可能性や稼働寿命の長期化、制御指令に対する電源装置の追従速度、電源装置の通信性能などの評価基準に基づいて、動作指令の対象とする電源装置を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池装置等の電源装置を定格出力で定値運転させ、負荷電力を上回った余剰電力を電力系統に逆潮流させ、その電力を電力会社が固定買取価格で買い取るような電源装置の運用が行われる場合がある。但し、電力会社は、市場価格が固定買取価格よりも安い場合には、必要な電力を市場で購入し、電源装置の出力を抑制して逆潮流電力を減少させることで、電力調達コストを低減させることができる。
【0006】
尚、市場で調達できる電力量の単位が例えば50kWhなどに定められている場合、電力会社は必要な電力量と全く同じ電力量を市場から調達できず、市場から調達できなかった分の不足電力量が発生する可能性がある。そして、市場から調達できなかった不足電力量は、電源装置からの逆潮流電力によって賄うことが必要になる。その場合、管理装置が、電源装置に対して動作指令を送信して、必要な逆潮流電力を供給させる必要があるが、電源装置に対する出力電力の指令は、例えば1分毎などの所定期間毎に行われるため、電源装置による出力変化が時間的に遅れて実行される可能性がある。
【0007】
このように、複数の電源装置に動作指令を与えて、それらから必要な逆潮流電力を得ようとする場合、管理装置からの指令に応じて電力系統に電力を逆潮流させる電源装置の台数が多くなると、十分な逆潮流電力を調達できるという利点がある。しかし、電力を逆潮流させる電源装置の台数が多くなると、電源装置の実際の出力電力が実際の負荷電力を上回った余剰電力である実際の逆潮流電力と指令時の目標逆潮流電力との誤差がその台数分だけ積み重なってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の電源装置から必要な逆潮流電力を確実に調達できる電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、複数の施設のそれぞれに設置される電源装置と、複数の前記電源装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、電力系統に連系される電源部を備え、上限出力電力と下限出力電力との間で出力電力を調節できるように構成され、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置される前記電源装置及び前記電力系統の少なくとも一方から電力供給を受けるように構成され、
前記管理装置は、複数の前記電源装置のうち、出力電力を同じ前記施設に設置される前記電力負荷装置の負荷電力に追従させる追従運転を行う前記電源装置の台数である追従運転台数と、前記施設から前記電力系統へ電力が供給されるように、出力電力を前記管理装置から指令される所定値にする定値運転を行う前記電源装置の台数である定値運転台数とを調節する台数調節処理を行い、前記定値運転を行うと決定した前記電源装置に対して当該電源装置の出力電力を定める出力制御指令を送信し、前記追従運転を行うと決定した前記電源装置に対して前記追従運転を行うことを指令するように構成され、
前記管理装置は、前記台数調節処理において、複数の前記施設から前記電力系統へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が多いほど、前記定値運転台数を多くする点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、複数の施設から電力系統へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が多いほど、施設から電力系統へ電力が供給されるように、出力電力を管理装置から指令される所定値にする定値運転を行う電源装置の台数である定値運転台数は多くなる。そのため、定値運転を行う電源装置から、十分な逆潮流電力量を調達できる。また、複数の施設から電力系統へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が少ないほど、定値運転を行う電源装置の台数である定値運転台数は少なくなる。そのため、電源装置の実際の出力電力が実際の負荷電力を上回った余剰電力である実際の逆潮流電力と指令時の目標逆潮流電力との誤差が発生するとしても、定値運転を行う電源装置の台数が少ないため、発生する誤差の数が少なくなる。その結果、複数の電源装置から必要な逆潮流電力量を確実に調達できる。
【0011】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記管理装置は、複数の前記施設のそれぞれについての、将来に前記施設から前記電力系統へ供給できると予測される逆潮流可能電力量に基づいて、複数の前記電源装置のうち、前記逆潮流可能電力量が多い前記電源装置を優先して前記定値運転を行う前記電源装置に決定する点にある。
ここで、前記施設は、前記逆潮流可能電力量を予測する予測装置を備え、
前記管理装置は、複数の前記施設のそれぞれの前記予測装置で予測された前記逆潮流可能電力量についての情報を受信するように構成されていてもよい。
また、前記管理装置は、複数の前記施設のそれぞれから受信した、将来に予測される前記電力負荷装置の予測負荷電力及び前記電源装置の出力可能電力に基づいて、前記逆潮流可能電力量を予測するように構成されていてもよい。
【0012】
上記特徴構成によれば、定値運転を行う電源装置が、予測される逆潮流可能電力量に基づいて決定されるので、必要な逆潮流電力量を調達できる可能性が高まる。
【0013】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記管理装置は、前記台数調節処理において、前記定値運転を行う前記電源装置が設置される前記施設のそれぞれでの前記逆潮流可能電力量の合計が、複数の前記施設から前記電力系統へ供給する必要がある目標逆潮流電力量よりも設定値だけ多くなるように前記定値運転台数を決定する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、定値運転を行っている電源装置が設けられる施設から電力系統へ目標逆潮流電力量が供給される可能性が更に高くなる。
【0015】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記管理装置は、複数の前記電源装置のうち、出力上昇速度の大きい前記電源装置を優先して前記定値運転を行う前記電源装置に決定する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、施設の電力負荷装置の負荷電力が増加するのに伴って逆潮流電力が低下した場合であっても、出力上昇速度の大きい電源装置が出力電力を素早く上昇させることで、適切な逆潮流電力量を供給し続けることができる。
【0017】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記管理装置は、前記台数調節処理を複数のタイミングで繰り返し行う点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、その時々で適切な台数の電源装置を定値運転で動作させることができる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池装置の特徴構成は、上記電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池部を備える点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、複数の電源装置から必要な逆潮流電力を確実に調達できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える燃料電池装置を提供できる。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る充放電装置の特徴構成は、上記電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、複数の電源装置から必要な逆潮流電力を確実に調達できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える充放電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示した図である。
【
図3】制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、燃料電池装置10及び電力負荷装置4が設けられる施設20と、管理装置30と、アグリゲーションコーディネーター40との関係を示した図である。
図2は、施設20の構成例を示す図である。電源管理システムは、複数の施設20のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置10と、複数の燃料電池装置10との間で施設20の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置30とを備える。
燃料電池装置10は、本発明の「電源装置」に対応する。本実施形態において、1台の管理装置30が管理する電源装置の台数は適宜設定可能である。
【0025】
管理装置30は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、VPP(Virtual Power Plant)サービス契約を締結した施設20に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30が制御する電力量を束ね、電気の取引市場等において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0026】
管理装置30は、複数の施設20から、燃料電池装置10の出力電力、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。尚、本実施形態で「電力負荷装置4の負荷電力」と記載する場合、施設20に設けられている全ての電力負荷装置4の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置30は、将来の所定の時間帯に各施設20から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター40に伝達する。この供出可能電力は、施設20の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。尚、本実施形態において「受電点電力を上げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を増加させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を減少させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0027】
例えば、施設20の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置10の出力電力を下げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設20の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置10の出力電力を上げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0028】
また、管理装置30は、自身が管理する複数の施設20におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設20から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設20の受電点電力の合計に相当する。
【0029】
アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30から受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場、卸電力市場、容量市場などの電力の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーター40は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置30に対して分配して伝達する。
【0030】
管理装置30は、アグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取った場合、その供給指令で指定された調整力等を各施設20に対して分配して伝達する。その結果、各施設20では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設20の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0031】
施設20には、電源装置としての燃料電池装置10と、電力負荷装置4とが設けられている。燃料電池装置10及び電力負荷装置4は、電力系統1に連系される電力線2に接続される。電力線2には、施設20の受電点電力を測定する電力メーター3が設置されている。尚、
図1及び
図2には、電源装置としての燃料電池装置10が1台設置されている例を示しているが、電源装置の設置台数は適宜変更可能である。
【0032】
電力メーター3で測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイ5及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0033】
電力負荷装置4は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設20に設置される燃料電池装置10及び電力系統1の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0034】
燃料電池装置10は、電力系統1に連系される電源部としての燃料電池部12と、燃料電池部12の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部11と、燃料電池部12及び電力変換部11の動作を制御する燃料電池制御部13と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14とを備える。また、燃料電池装置10は、燃料電池部12の燃料ガスである水素を生成する燃料改質装置を備えていてもよい。
【0035】
このように、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が燃料電池部12を備える燃料電池装置10を実現できる。
【0036】
燃料電池制御部13は、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置10から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0037】
燃料電池制御部13は、電力変換部11から電力線2に供給する出力電力についての情報及び電力測定部8での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置4の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。尚、電力測定部8での測定電力の符号がプラスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力測定部8での測定電力の符号がマイナスの場合は燃料電池装置10の出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0038】
燃料電池装置10は、施設20の利用者が燃料電池装置10に対する指令を行う場合に操作するリモコン7と接続されている。そして、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコン7及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0039】
上述したように、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信できる。そして、燃料電池装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。
【0040】
第2運転モードは、複数の燃料電池装置10において予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置10は、管理装置30から受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。
【0041】
例えば、燃料電池制御部13は、第2運転モードとして、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、第2運転モードとして、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0042】
図3は、制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
図3に示した例では、制御情報(出力制御指令)において、12時~15時の間が制御対象期間に指定されている。そのため、この燃料電池装置10は、12時~15時の制御対象期間は、第1運転モードで動作し、それ以外の非制御対象期間は、第2運転モードで動作する。
【0043】
次に、管理装置30が複数の燃料電池装置10に対して出力制御指令を送信して、燃料電池装置10を第1運転モードで動作させる場合について説明する。
本実施形態では、管理装置30は、複数の燃料電池装置10のうち、出力電力を同じ施設20に設置される電力負荷装置4の負荷電力に追従させる追従運転を行う燃料電池装置10の台数である追従運転台数と、施設20から電力系統1へ電力が供給されるように、出力電力を管理装置30から指令される所定値にする定値運転を行う燃料電池装置10の台数である定値運転台数とを調節する台数調節処理を行う。そして、管理装置30は、定値運転を行うと決定した燃料電池装置10に対してその燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する。また、管理装置30は、追従運転を行うと決定した燃料電池装置10に対して追従運転を行うことを指令する。
【0044】
つまり、管理装置30が行った台数調節処理により定値運転を行うことが決定された燃料電池装置10は、出力制御指令で指定された出力電力を出力する運転を行う。それに対して、管理装置30が行った台数調節処理により追従運転を行うことが決定された燃料電池装置10は、その施設20において、燃料電池制御部13が、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、出力電力を電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行う。
【0045】
管理装置30は、以上のような台数調節処理、及び、定値運転を行うと決定した燃料電池装置10に対して出力電力を定める出力制御指令を送信すること、及び、追従運転を行うと決定した燃料電池装置10に対して追従運転を行うことを指令することを、複数のタイミングで繰り返し行う。つまり、定値運転を行う燃料電池装置10の出力電力は、管理装置30による出力制御指令によって上記タイミング毎に決定され、追従運転を行う燃料電池装置10の出力電力は、その施設20におけるローカル制御で、電力負荷装置4の負荷電力に追従するように決定される。
【0046】
次に、台数調節処理について具体的に説明する。
管理装置30は、台数調節処理において、複数の施設20から電力系統1へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が多いほど、定値運転台数を多くする。例えば、管理装置30は、予め、台数調節処理の対象となる、複数の施設20に設けられる燃料電池装置10を記憶しておき、且つ、目標逆潮流電力量とその場合の定値運転台数との関係を記憶しておく。そして、管理装置30は、目標逆潮流電力量が決まった場合、上記関係に基づいて、定値運転台数を決定する。
【0047】
このように、複数の施設20から電力系統1へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が多いほど、施設20から電力系統1へ電力が供給されるように出力電力を管理装置30から指令される所定値にする定値運転を行う燃料電池装置10の台数である定値運転台数は多くなる。そのため、定値運転を行う燃料電池装置10から、十分な逆潮流電力量を電力系統1に供給させることができる。また、複数の施設20から電力系統1へ供給する必要がある目標逆潮流電力量が少ないほど、定値運転を行う燃料電池装置10の台数である定値運転台数は少なくなる。そのため、燃料電池装置10の実際の出力電力が実際の負荷電力を上回った余剰電力である実際の逆潮流電力と指令時の目標逆潮流電力との誤差が発生するとしても、定値運転を行う燃料電池装置10の台数が少ないため、発生する誤差の件数が少なくなる。その結果、複数の燃料電池装置10から必要な逆潮流電力量を確実に調達できる。
【0048】
また、管理装置30は、複数の施設20のそれぞれについての、将来に施設20から電力系統1へ供給できると予測される逆潮流可能電力量に基づいて、台数調節処理の対象となる複数の燃料電池装置10のうち、逆潮流可能電力量が多い燃料電池装置10を優先して定値運転を行う燃料電池装置10に決定する。
【0049】
逆潮流可能電力量は、各施設20又は管理装置30で予測される。例えば、各施設20に設けられるリモコン7は、自身に搭載される演算処理機能及び情報記憶機能などを用いて、燃料電池装置10の上限出力電力から電力負荷装置4の現在の負荷電力を減算して導出される余剰電力を決定する。そして、リモコン7は、その余剰電力が継続的に発生すると仮定して、将来に施設20から電力系統1へ供給できると予測される逆潮流可能電力量を決定する。そして、リモコン7は、その施設20の逆潮流可能電力量を管理装置30に送信する。つまり、この場合、施設20は、逆潮流可能電力量を予測する予測装置(即ち、上記リモコン7)を備え、管理装置30は、複数の施設20のそれぞれの予測装置で予測された逆潮流可能電力量についての情報を受信するように構成される。
【0050】
或いは、管理装置30が、各施設20のリモコン7から、その施設20の電力負荷装置4の現在の負荷電力についての情報を受信し、それぞれの施設20の燃料電池装置10の上限出力電力を考慮して、将来に各施設20から電力系統1へ供給できると予測される逆潮流可能電力量を決定してもよい。つまり、この場合、管理装置30は、複数の施設20のそれぞれから受信した、将来に予測される電力負荷装置4の予測負荷電力及び燃料電池装置10の出力可能電力に基づいて、逆潮流可能電力量を予測するように構成されている。
【0051】
〔本実施形態の台数調節処理の具体例〕
管理装置30が、200戸の施設20の各燃料電池装置10と通信を行ってそれらの燃料電池装置10の管理を行う構成において、時刻12:00~時刻12:30の30分間での目標逆潮流電力量が10kWhの場合を考える。
【0052】
管理装置30は、時刻12:00の時点又はその前の時点で、各施設20の電力負荷装置4の負荷電力と、各施設20の燃料電池装置10の上限出力電力とを考慮して、将来の30分間(即ち、上記所定期間)に、各施設20から電力系統1へ供給できると予測される逆潮流可能電力量を導出する。この例の場合、200戸の施設20のそれぞれに設置された200台の燃料電池装置10による逆潮流可能電力量が全て、その30分間で0.1kWhであるとする。つまり、時刻12:00~時刻12:30の30分間で各施設20から電力系統1へ供給できると予測される逆潮流可能電力量の合計は20kWhであり、目標逆潮流電力量の10kWhよりも大きい。
【0053】
〔時刻12:00の時点又はその前の時点で行われる台数調節処理〕
管理装置30は、時刻12:00の時点又はその前の時点で、目標逆潮流電力量と定値運転台数との関係に基づいて、例えば、追従運転を行う燃料電池装置10の追従運転台数を100台に設定し、それぞれが30分間で0.1kWhの逆潮流電力量を電力系統1に供給する定値運転を行う燃料電池装置10の定値運転台数を100台に設定して、そのような出力制御指令を送信する。その結果、定値運転を行う燃料電池装置10が設けられる100戸の施設20から想定通りの逆潮流電力量(即ち、それぞれ30分間で0.1kWh)が電力系統1に供給されれば、30分間での目標逆潮流電力量(10kWh)は達成されるはずである。
【0054】
尚、管理装置30が、時刻12:00の時点又はその前の時点で、30分間で0.05kWhの逆潮流電力量を電力系統1に供給する定値運転を行う燃料電池装置10の定値運転台数を200台に設定し、追従運転を行う燃料電池装置10の追従運転台数を0台に設定して、そのような出力制御指令を送信することも可能である。ところが、本実施形態の台数調節処理ではそのようなことは行わない。
【0055】
〔時刻12:15の時点又はその前の時点で行われる台数調節処理〕
本実施形態では、管理装置30は、時刻12:00~時刻12:30の30分間で台数調節処理を複数回繰り返し行う。例えば、1回目は上述した時刻12:00の時点又はその前の時点で行われる台数調節処理であり、2回目は時刻12:15の時点又はその前の時点に行われる台数調節処理である。
【0056】
・台数調節処理例1
時刻12:15の時点で時刻12:00~時刻12:15の間での実際の逆潮流電力量が4kWhであった場合又は時刻12:15の前の時点で時刻12:00~時刻12:15の間の逆潮流電力量が4kWhであると予測される場合、残りの15分間での目標逆潮流電力量は6kWhになる。そして、管理装置30は、時刻12:15の時点又はその前の時点で、目標逆潮流電力量と定値運転台数との関係に基づいて、例えば、追従運転を行う燃料電池装置10の追従運転台数を80台に設定し、それぞれが残り15分間で0.05kWhの逆潮流電力量を電力系統1に供給する定値運転を行う燃料電池装置10の定値運転台数を120台に設定して、そのような出力制御指令を送信する。その結果、定値運転を行う燃料電池装置10が設けられる120戸の施設20から想定通りの逆潮流電力量(即ち、それぞれ15分間で0.05kWh)が電力系統1に供給されれば、15分間での目標逆潮流電力量(6kWh)は達成されるはずである。
【0057】
・台数調節処理例2
時刻12:00~時刻12:15の間での実際の逆潮流電力量が6kWhであった場合、残りの15分間での目標逆潮流電力量は4kWhになる。そして、管理装置30は、時刻12:15の時点又はその前の時点で、目標逆潮流電力量と定値運転台数との関係に基づいて、例えば、追従運転を行う燃料電池装置10の追従運転台数を120台に設定し、それぞれが残り15分間で0.05kWhの逆潮流電力量を電力系統1に供給する定値運転を行う燃料電池装置10の定値運転台数を80台に設定して、そのような出力制御指令を送信する。その結果、定値運転を行う燃料電池装置10が設けられる80戸の施設20から想定通りの逆潮流電力量(即ち、それぞれ15分間で0.05kWh)が電力系統1に供給されれば、15分間での目標逆潮流電力量(4kWh)は達成されるはずである。
【0058】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の電源管理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、電源装置が備える電源部が燃料電池部12を備える例を説明したが、電源部は電力を出力できる他の装置であってもよい。例えば、電源部が、蓄電池などの充放電部を備える装置であってもよい。その場合、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が充放電部を備える充放電装置が実現される。
或いは、電源部は、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備える装置などであってもよい。
【0059】
<2>
上記実施形態において、管理装置30は、台数調節処理において、定値運転を行う燃料電池装置10が設置される施設20のそれぞれでの逆潮流可能電力量の合計が、複数の施設20から電力系統1へ供給する必要がある目標逆潮流電力量よりも設定値だけ多くなるように定値運転台数を決定してもよい。
【0060】
例えば、上述した例の時刻12:00の時点又はその前の時点で、管理装置30は、追従運転を行う燃料電池装置10の追従運転台数を80台に設定し、それぞれが30分間で0.1kWhの逆潮流電力量を電力系統1に供給する定値運転を行う燃料電池装置10の定値運転台数を120台に設定して、そのような出力制御指令を送信してもよい。この場合、定値運転を行う燃料電池装置10が設置される施設20のそれぞれでの逆潮流可能電力量の合計が12kWhになり、複数の施設20から電力系統1へ供給する必要がある目標逆潮流電力量である10kWhよりも2kWh(設定値の一例)だけ多くなるように定値運転台数が決定されている。
【0061】
<3>
上記実施形態において、逆潮流可能電力量が多い燃料電池装置10を優先して、定値運転を行う燃料電池装置10に決定する例を説明したが、他の決定規則に則って、定値運転を行う燃料電池装置10を決定してもよい。例えば、管理装置30は、複数の燃料電池装置10のうち、出力上昇速度の大きい燃料電池装置10を優先して定値運転を行う燃料電池装置10に決定してもよい。この場合、出力上昇速度の大きい電源装置が出力電力を素早く上昇させることで、適切な逆潮流電力を供給し続けることができる。
【0062】
<4>
上記実施形態では、出力電力、負荷電力、受電点電力、制御対象期間の長さなどについて具体的な数値を例示して説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
【0063】
<5>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、複数の電源装置から必要な逆潮流電力を確実に調達できる電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 電力系統
2 電力線
3 電力メーター
4 電力負荷装置
5 ゲートウェイ
6 ルーター
7 リモコン
8 電力測定部
10 燃料電池装置(電源装置)
11 電力変換部
12 燃料電池部(電源部)
13 燃料電池制御部
14 記憶部
20 施設
30 管理装置
40 アグリゲーションコーディネーター