(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】クラウドプリントサービス連携による印刷システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241220BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241220BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
G06F3/12 365
G06F3/12 303
G06F3/12 387
B41J29/38 401
H04N1/00 127A
(21)【出願番号】P 2021065365
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山道 雅樹
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-097506(JP,A)
【文献】特開2012-190188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 29/38
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウドプリントサービスへ印刷ジョブを送信する第1の送信手段と、
前記印刷ジョブのデータサイズが前記クラウドプリントサービスがサポートする印刷ジョブのデータサイズの上限を超える場合に、アクセス可能なクラウドストレージに前記印刷ジョブの文書データを格納する文書データ格納手段と、
前記文書データ格納手段により格納した文書データへの参照形式の印刷ジョブを前記クラウドプリントサービスへ送信する第2の送信手段と
を有することを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
アクセス可能な前記クラウドストレージは、前記クラウドプリントサービスと同一のユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージであり、
前記文書データ格納手段は、前記クラウドストレージに、前記文書データと共に前記クラウドプリントサービスのユーザ情報を送信する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷システムであって、
アクセス可能な前記クラウドストレージは、前記クラウドプリントサービスとは異なるユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージであり、
前記文書データ格納手段は、前記クラウドストレージに、前記文書データと共に前記クラウドストレージのユーザ情報を送信する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷システムであって、
前記参照形式の印刷ジョブを受信した場合に、参照で示された前記文書データを前記クラウドプリントサービスから取得する取得手段と、
前記参照に基づき前記クラウドストレージから取得した文書データを印刷する印刷制御手段とをさらに有する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷システムであって、
前記クラウドストレージにより前記文書データを格納する前に、ユーザ認証を要求する手段を更に有する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
クラウドプリントサービスへ印刷ジョブを送信する第1の送信手段と、
前記印刷ジョブのデータサイズが前記クラウドプリントサービスがサポートする印刷ジョブのデータサイズの上限を超える場合、アクセス可能なクラウドストレージに前記印刷ジョブの文書データを送信する第2の送信手段と、
前記第2の送信手段により送信した文書データへの参照形式の印刷ジョブを前記クラウドプリントサービスへ送信する第3の送信手段と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理装置であって、
アクセス可能な前記クラウドストレージは、前記クラウドプリントサービスと同一のユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージサービスであり、
前記第2の送信手段は、前記文書データと共に、前記クラウドプリントサービスのユーザ情報を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の情報処理装置であって、
アクセス可能な前記クラウドストレージは、前記クラウドプリントサービスとは異なるユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージサービスであり、
前記第2の送信手段は、前記文書データと共に、前記クラウドストレージサービスのユーザ情報を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
第1の送信手段と文書データ格納手段と第2の送信手段とを有する印刷システムにおける印刷方法であって、
前記第1の送信手段が、クラウドプリントサービスへ印刷ジョブを送信し、
前記文書データ格納手段が、前記印刷ジョブのデータサイズが前記クラウドプリントサービスがサポートする印刷ジョブのデータサイズの上限を超える場合に、アクセス可能なクラウドストレージに前記印刷ジョブの文書データを格納し、
前記第2の送信手段が、前記文書データ格納手段により格納した文書データへの参照形式の印刷ジョブを前記クラウドプリントサービスへ送信する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項10】
コンピュータを、
クラウドプリントサービスへ印刷ジョブを送信する第1の送信手段と、
前記印刷ジョブのデータサイズが前記クラウドプリントサービスがサポートする印刷ジョブのデータサイズの上限を超える場合に、アクセス可能なクラウドストレージに前記印刷ジョブの文書データを送信する第2の送信手段と、
前記第2の送信手段により送信した文書データへの参照形式の印刷ジョブを前記クラウドプリントサービスへ送信する第3の送信手段と
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラウドプリントサービスにより提供される文書を印刷する印刷システム、その制御方法、およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クラウド経由で印刷ジョブを投入し、画像形成装置に印刷ジョブを送信するクラウドプリントサービス(CPS)が普及し始めている(例えば特許文献1を参照)。このような印刷システムでは、まず管理者が画像形成装置を、管理者が所属するクラウドプリントサービスのテナントへ登録する。管理者はテナントに所属するどのユーザに、画像形成装置の使用を許可させるかを設定する。ここで、テナントとはクラウド上に展開する1つのサービスシステムを意味する。
【0003】
画像形成装置の使用を許可されたユーザは、クライアント端末からクラウドプリントサービスへ文書データと印刷設定を含む印刷ジョブを投入する。クラウドプリントサービスは受信した印刷ジョブをストレージに保存する。画像形成装置はクラウドプリントサービスに保存された印刷ジョブを取得し、印刷する。印刷ジョブの取得方法はクラウドプリントサービスに対してプル印刷でもプッシュ印刷でもよい。
【0004】
クラウドプリントサービスとして、例えばGoogleCloudPrint(登録商標)、MicrosoftHybridCloudPrint(登録商標)、UniflowOnLine(登録商標)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-133489号公報 クラウドプリントサービスには多数の印刷ジョブが投入され保存されるため、印刷ジョブを大量に保持するためにサービス側のストレージ量が増大し運用コストも増大につながる。そのため、クラウドプリントサービスには1つの印刷ジョブあたりの容量制限を設けることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この容量制限により、クラウドプリントサービスを用いた大容量の印刷ジョブの実行が失敗することがある。印刷が失敗した場合、文書データがクライアント端末にあり、クライアント端末と画像形成装置が同一LANに存在しない場合、クライアント端末は大容量の印刷ジョブを印刷することができなくなってしまうという問題が発生する。
【0007】
本発明は上記従来例に鑑みてもので、クラウドプリントサービスの容量制限に関わらず印刷が可能な印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、本発明の第1の側面によれば、クラウドプリントサービスへ印刷ジョブを送信する第1の送信手段と、
前記印刷ジョブのデータサイズが前記クラウドプリントサービスがサポートする印刷ジョブのデータサイズの上限を超える場合に、アクセス可能なクラウドストレージに前記印刷ジョブの文書データを格納する文書データ格納手段と、
前記文書データ格納手段により格納した文書データへの参照形式の印刷ジョブを前記クラウドプリントサービスへ送信する第2の送信手段と
を有することを特徴とする印刷システムが提供される。
【0009】
また本発明の第2の側面によれば、クラウドプリントサービスへ印刷ジョブを送信する第1の送信手段と、
前記印刷ジョブが、前記クラウドプリントサービスの容量不足により失敗した場合に、アクセス可能なクラウドストレージに前記印刷ジョブの文書データを送信する第2の送信手段と、
前記第2の送信手段により送信した文書データへの参照形式の印刷ジョブを前記クラウドプリントサービスへ送信する第3の送信手段と
を有することを特徴とする情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラウドプリントサービスの容量制限に関わらず印刷が可能な印刷システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】クラウドプリントサービスおよびクライアント端末のハードウェア構成の一例を示す図
【
図3】画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図
【
図4】クラウドプリントの画像形成装置の登録処理のシーケンス図
【
図5】画像形成装置のサポート属性一覧の一例を示す図
【
図7】実施形態1における画像形成装置への印刷シーケンス図
【
図9】実施例1にて追加のアクセス許可を要求するためのユーザーインターフェースの一例を示す図
【
図11】実施例2にてエラー時の設定を行うためのユーザーインターフェースの一例を示す図
【
図13】実施例2における画像形成装置への印刷シーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
[実施形態1]
<ネットワーク構成>
図1は本発明の実施例における印刷システム或いは画像形成システム或いはクラウド印刷システムの構成を示すブロック図である。
図1において、クラウド総合サービス112には、クラウドプリントサービス(CPS)102とクラウドストレージサービス111とが含まれている。情報処理装置であるクライアント端末103~105は、CPS102とクラウドストレージサービス111に、インターネット等のネットワークを介して接続されている。クライアント端末103~105は、CPS102に対して印刷ジョブを投入することができる。画像形成装置101は印刷機構を有し、印刷制御を行う装置であって、インターネット等のネットワークを介してCPS102に接続されている。画像形成装置101はCPS102から印刷ジョブを取得し、印刷処理を実行することができる。上記各構成要素はインターネットにより通信可能に接続されている。
【0014】
クラウドストレージサービス111はオンラインのストレージサービスで、文書ファイルなどをオンライン上で管理可能なサービスを提供している。クラウドストレージサービスとして、例えばGoogle(登録商標) LLCのGoogleDriveやMicrosoft(登録商標)のOneDrive(登録商標)などが知られている。クラウド統合サービス112は、クラウドプリントサービス102や不図示のクラウドコミュニケーションサービスなどをまとめて提供しているサービスを指す。提供されるサービスのひとつにクラウドストレージサービス111がある。このようなサービス内に含まれる各種サービスに対しては、同一の認証情報(ユーザー名(ID)など)でアクセスが可能となる。クラウド統合サービス112としては、例えばGoogle LLCのG Suite(登録商標)やMicrosoft 365(登録商標)などが知られている。上記各構成要素はネットワークにより通信可能に接続されている。
【0015】
ここで、CSP102は、投入される印刷ジョブに対して容量の制限を設けている。容量を超えたサイズの印刷データを伴う印刷ジョブの投入が試みられたCSP102は、印刷ジョブの送信元のクライアント端末に対して容量制限を超えていることを通知する。また画像形成装置101は印刷装置或いはプリンタと呼ばれる単機能デバイスであっても、MFPや多機能複写機などと呼ばれる複合機能デバイスであってもよい。
【0016】
<CPSおよびクライアント端末のハードウェア構成>
図2は、CPS102およびクライアント端末103、104のハードウェア構成を示すブロック図である。CPU201は、接続される各デバイス(ROM、RAMなど)を直接あるいは間接的に制御し、本実施形態で説明する制御や手順を実現するためのプログラムを実行する。ROM202はBIOS等が格納してある不揮発メモリである。RAM(直接記憶装置)203は、CPU201のワーク領域として利用されたり、本発明を実現するためのソフトウェアモジュールをロードする為の一次記憶として利用されたりする。間接記憶装置204は、基本ソフトウェアであるOSやソフトウェアモジュールが記憶されているHDD(ハードディスクドライブ)、もしくはSSD(ソリッドステートドライブ)などである。直接記憶装置203と間接記憶装置204とをまとめて記憶部や記憶装置などと呼ぶことがある。入力部205はキーボードやポインティングデバイスなど、ユーザが入力を行うためのデバイスである。出力部206は例えばディスプレイが用いられる。通信部207は、たとえばLANなどのネットワークに接続するためのインターフェースである。
【0017】
<画像形成装置のハードウェア構成>
図3は、画像形成装置101のハードウェア構成を示す簡略図である。モジュール301から304については、
図2のモジュール201から204と同様の役割を行うモジュールである為説明は省略する。操作部305は、タッチ操作可能なディスプレイである。プリンタ部406は、通信部307を介して受信した印刷データをプリントするプリンタエンジンである。通信部307は、インターネットやオフィスのLANなどのネットワークに接続する為のネットワークインタフェースである。
【0018】
●クラウドプリントサービスへの画像形成装置の登録
図4は、クラウドプリントサービスへの画像形成装置の登録及び印刷の処理フローを示すシーケンス図である。まず、管理者が画像形成装置101をCPS102へ登録する。例えば、管理者が画像形成装置101の操作部から登録先のCPSを選択して「登録」ボタンを選択することで、登録作業が実行される。
【0019】
画像形成装置101は管理者からの登録実行を検知したら、S401においてCPS102に対して登録処理要求を送信する。登録処理のプロトコルはCPSで規定されているプロトコルに準拠するものとし、例えばPWG5100.22で規定されているRegister-Output-Deviceオペレーションなどを使用してもよい。登録処理要求を受信したCPS102は登録要求内容を確認し、S402において画像形成装置101に対して登録処理要求応答を送信する。登録処理要求内容に問題がなければ成功応答を行い、問題があれば失敗応答を行う。本実施形態では成功応答をしたものとして説明をする。次にS403において、画像形成装置101は自身がサポートする能力情報を含んだ能力通知をCPS102に対して送信する。能力通知は例えばPWG5100.18で規定されているUpdate-Output-Device-Attributesオペレーションなどを使用してもよい。
【0020】
本実施形態において、画像形成装置101がサポートする設定は例として
図5に示す。
図5は本実施形態ではIPP(Internet Printing Procotol)に基づく属性定義である。例えばIPPで定義されている「Print-color-mode-supported」という属性の取りうる値は「Auto」「Color」「Monochrome」の3種類である。それぞれに対応する印刷設定は、「カラーモード」設定となり、取りうる値は「自動」「カラー」「白黒」になるとする。「カラーモード」は印刷出力の色設定を選択できる設定であり、「カラー」を選択すればカラー出力に、「白黒」を選択すれば白黒出力に、「自動」を選択すれば画像形成装置の設定次第でカラーあるいは白黒で出力される。
【0021】
また、「Finishing-supported」という属性の取りうる値は数値であり、画像形成装置がサポートするフィニッシング情報に対応する数値が格納されている。例えば「20」は「Staple-top-left」に対応づけされており「22」は「Staple-top-right」に対応づけされていることを表す。これらの数値は印刷設定では「ホチキス設定」となり、取りうる値は「左上1か所」や「右上1か所」となる。
【0022】
document- format-supportedはとりうる値としてapplication/pdfやimage/pwg-rasterがある。これは画像形成装置が印刷時に受付可能な印刷ジョブの文書形式を示している。それぞれPDF、pwg-rasterというビットマップ形式をうけつけるということになる。
【0023】
reference-uri-schemes-supportedは、とりうる値としてhttp、https、ftp、ippが存在する。これは画像形成装置が印刷時に受付可能な印刷ジョブの文書データの指定方法としてURIによる場所指定をどの形式でサポートしているかを示している。
【0024】
画像形成装置101はこれらの属性をサポートする場合、S403において、能力登録パケットとして該当する属性がサポートされている内容を、能力通知としてCPS102に宣言する。画像形成装置101から能力通知を受信したCPS102は、S404において、受信した能力通知の内容を確認し、登録済の画像形成装置に能力情報の紐づけ処理を行う。ここまでの工程により、画像形成装置101がCSP102に登録された。
【0025】
●クラウドプリントサービスに登録された画像形成装置による印刷
次に、クライアント端末103で、印刷ジョブを送信するシーケンスについてS406からS414を用いて説明する。ここで説明するシーケンスは、CPS102が受け付け、保持している印刷ジョブを、画像形成装置により印刷する手順である。まずユーザはクライアント端末103の操作部からCPS102のプリンタの検索を実行する。ユーザからのプリンタ検索指示を検知したクライアント端末103はS406において、CPS102にプリンタ検索要求を送信する。プリンタ検索はCPS102に登録されている全プリンタを指定して検索する方法でも、特定のプリンタ名称や場所などによるフィルタ条件を用いて検索する方法でもよい。
【0026】
S407でクライアント端末103からの検索要求を受信したCPS102は、CPS102に登録済で検索要求に合致するプリンタ情報をクライアント端末103に送信する。CPS102からプリンタ一覧情報を受信したクライアント端末103は、S408において操作部にプリンタ一覧を表示する。S409においてユーザはプリンタ一覧のリストから所望のプリンタを選択する。プリンタ選択を検知したクライアント端末103は、S410において該当プリンタのより詳細なスペック(能力)を取得するためCPS102に対してプリンタ能力取得要求を送信する。プリンタ能力取得要求は例えばIPPのGet-Printer-Attributesオペレーションなどでもよい。プリンタ能力取得要求を受信したCPS102は、S411においてCPS102のプリンタ能力応答をクライアント端末103に送信する。これより、プリンタ能力応答を受信したクライアント端末103は、受信したプリンタスペックに基づいて印刷設定を表示したり、能力に合わせた印刷ジョブを生成したりすることが可能となる。
【0027】
S412において、ユーザの印刷ボタンを押下する。印刷実行を指示する操作を検知したクライアント端末103はS413において、CPS102に対して印刷実行指示を送信する。印刷実行指示は例えばIPPのPrint-Jobオペレーションなどが挙げられる。
図6は印刷設定で「カラー」、「左側2か所綴じ」を指定され、印刷ジョブの文書形式がPDFとなっている印刷実行指示のパケット例である。本図のDocument Contentには文書データの実体が格納されている。
【0028】
次にCPS102は、S414においてクライアント端末103から受信した印刷実行要求を解析し、印刷ジョブ(文書データと印刷設定属性を含む)を自身のストレージに保存する。
【0029】
続いて、ステップS414におけるCPS102による印刷ジョブの保存の成功可否による後続の処理フローを、保存成功、失敗それぞれの場合に分けて説明する。保存失敗の理由には、たとえばCSP102が定めたデータ量の上限を、クライアント端末103から受信したデータ量が超えたことが含まれる。以降、CSP102が定めたデータ量の上限を超えて印刷ジョブの保存が失敗することを、サイズ上限エラーやサイズ上限エラーの発生と呼ぶこともある。
【0030】
<保存成功時の印刷処理フロー>
保存が成功した場合には、S415においてCPS102は画像形成装置101に対して印刷ジョブが投入されたことを通知する。
図4ではCPS102から画像形成装置101に対してPUSH通知で通知しているが、画像形成装置101からCPS102に対してイベント有無を問い合わせするPULL通知でもよい。通知には例えばIPPのGet-Notificationオペレーションなどを使用する。CPS102に印刷ジョブが存在することを検知した画像形成装置101は、S416においてCPS102に対して印刷ジョブ取得要求を行う。印刷ジョブ取得要求は例えばIPPのFeteh-Jobオペレーションなどを使用する。
【0031】
印刷ジョブ取得要求を受信したCPS102は、S417において、自身のストレージに保存されている印刷ジョブを応答する。これより画像形成装置101はS418において指定された印刷ジョブ属性に基づき印刷を実行する。そして、ステップS419にて画像形成装置101は印刷の完了通知をCPS102に通知する。印刷の完了通知を受けたCPS102は、ステップS420にてステップS414で保存した印刷ジョブの削除を行う。続けてステップS421で、CPS102は印刷ジョブの完了通知をクライアント端末103に通知する。
【0032】
一方、ステップS414で印刷ジョブの保存に失敗した場合には、失敗した原因(例えばデータ量の上限越え)を示すエラーコードとともに、印刷ジョブの失敗通知をクライアント端末103に通知する(S422)。この通知以降の手順を、
図7を参照して説明する。
【0033】
<サイズ上限エラー発生時の印刷処理フロー>
図7を用いて、CPS102によるS414における印刷ジョブの保存が、印刷ジョブのデータ量が既定の上限を超えたために失敗した場合の処理フローについて説明する。
【0034】
S422で印刷ジョブが失敗したという通知を受けたクライアント端末103は、S701で通知内に含まれるエラーコードを参照し、失敗原因がサイズ上限の超過か否かを判定する。ここでは、エラーコードがサイズ上限の超過を示している場合を例に説明する。失敗原因がサイズ上限の超過以外である場合、エラーに応じた動作を行い、処理を終了する。
【0035】
サイズ上限の超過が原因で印刷ジョブの保存に失敗した場合、クライアント端末103では、S702にてS411で取得したプリンタ能力情報を参照する。そしてプリンタ能力情報に基づいて、画像形成装置101がクラウドストレージ111への文書データの参照形式の印刷ジョブに対応しているか否かを判定する。例えばIPPで定義されている
図5に示すreference-uri-schemes-supportedを参照し、サポートしている指定方法の種類を取得する。さらに、クラウドストレージサービス111への参照方法として合致しているかを判別し、合致しているものがあれば対応していると判定する。ここでは、「https」がreference-uri-schemes-supportedの値として存在し、クラウドストレージサービス111のファイルへもhttps形式のURIで参照可能であるとする。
【0036】
続けてS703でクライアント端末103はクラウドストレージサービス111への読み取り/書き込み権限について追加のアクセス許可を要求する。そして、
図9のような追加のアクセス許可の承諾(すなわちユーザ認証)をユーザにとるためのダイアログボックスを表示する。ダイアログボックス901では、追加で行うアクセス許可に関する情報として、例えば現在のユーザ名、アクセスを要求しているアプリケーション名、要求しているアクセス権の種類が表示される。本図では、上述のように、ユーザの管理するファイルへのアクセス権を追加で要求する内容となっている。ユーザはアクセス許可を承諾する場合には、承諾ボタン903を押下(あるいはタッチ)し、承諾しない場合はキャンセルボタン902を押下する。承諾ボタン903が押下されることで、アクセス権を要求したアプリケーションにアクセス権が付与され、S704にてアクセストークンがクラウドストレージサービス111よりクライアント端末103に応答される。S703では、たとえば必要なユーザ情報あるいはアカウント情報(ユーザ名およびパスワードなど)があれば、それも併せて送信する。
【0037】
アクセス権の承諾(アクセストークン)を得たクライアント端末103はS705では、クラウドストレージサービス111にたいしてファイルの保存先のルートパスの取得要求を通知する。ルートパスの取得要求を受けたクラウドストレージサービス111はS706でルートパスを応答する。ルートパスとしては、例えばhttps形式の場合、https://my.cloudstrage/personal/username/Documentsなどとなる。ここで、ユーザにクラウドストレージサービス111へのアクセス権がないような場合には、ルートパスがなしの状態で応答されることとなる。その場合は、本印刷処理フローは中止となる。ここでは、アクセス権があり、上述したようなルートパスが応答されたものとする。
【0038】
ルートパス応答を受けたクライアント端末103は、S707にて、印刷対象の文書データの保存先のURIの生成を行い、クライアント端末103は文書データをクラウドストレージサービス111の保存先URIにアップロードする。保存先のURIは、ルートパスをベースとして既存のファイルが存在しないものであればなんでもよい。たとえば、https://my.cloudstrage/personal/username/Documents/Printdocument1.pdfなどとなる。
【0039】
S708では、クライアント端末103は印刷ジョブの文書データを参照形式に変更し、さらに画像形成装置101がクラウドストレージサービス111の文書データを取得可能にするためのアクセス情報(たとえばアクセストークン)を印刷ジョブに追加する。S709で、クライアント端末103は印刷ジョブをCPS102へ送信し、印刷実行を指示する。印刷実行指示は例えば文書データの参照形式対応可能なIPPのPrint-URIオペレーションなどが挙げられる。
図8は印刷設定で「カラー」、「左側2か所綴じ」を指定され、印刷ジョブの文書形式がPDFとなっている印刷実行指示のパケット例である。本図の文書データは、
図8の印刷ジョブ中のDocument URIにて示された保存先に参照形式で格納されている。またこの印刷ジョブには、アクセストークンが同梱されている。
【0040】
次に印刷ジョブを受信したCPS102は、S710においてクライアント端末103から受信した印刷実行要求を解析し、印刷ジョブ(文書データは含まれない)を自身のストレージに保存する。
【0041】
続いて、S711においてCPS102は画像形成装置101に対して印刷ジョブが投入されたこと(印刷ジョブイベント)を通知する。本図ではCPS102から画像形成装置101に対してPUSH通知で通知しているが、画像形成装置101からCPS102に対してイベント有無を問い合わせするPULL通知でもよい。通知には例えばIPPのGet-Notificationオペレーションなどを使用する。CPS102に印刷ジョブが存在することを検知した画像形成装置101は、S712においてCPS102に対して印刷ジョブ取得要求を行う。印刷ジョブ取得要求は例えばIPPのFeteh-Jobオペレーションなどを使用する。印刷ジョブ取得要求を受信したCPS102は、S713において、自身のストレージに保存されている印刷ジョブを応答する。
【0042】
これより画像形成装置101はS714において印刷ジョブを解析し、文書データが参照形式であることから文書データの格納先のURIを取得する。S715で、画像形成装置101は、文書データの格納先のURIに存在する文書データを要求する。ここでは文書データの格納先のURIであるので、画像形成装置101は、クラウドストレージ111に対して取得要求する。このとき取得要求と共に印刷ジョブ内に含まれるアクセストークンを送信する。アクセストークンと共に取得要求を受けたクラウドストレージ111は、S716で文書データを画像形成装置101に送信する。
【0043】
S717にて文書データ応答を受けた画像形成装置101はS713において指定された印刷ジョブ属性およびS716で送信された文書データに基づき印刷を実行する。そして、ステップS718にて画像形成装置101は印刷の完了通知をCPS102に通知する。印刷の完了通知を受けたCPS102は、ステップS719にて保存した印刷ジョブの削除を行う。続けてS720にて印刷ジョブの完了通知をクライアント端末103に通知する。印刷の完了通知を受けたクライアント端末103は、S721にてクラウドストレージ111に対して文書データの削除要求を通知する。文書データの削除要求を受けたクラウドストレージサービス111は文書データの削除を行う。
【0044】
このように、本実施形態では、クライアント端末103に存在するCPS102容量制限を超える文書データを印刷する場合には、クラウド統合サービス112に含まれるクラウドストレージサービス111に文書データを格納することで印刷を可能としている。利用するクラウドストレージサービス111は、CPS102と同一のユーザ情報で利用可能なサービスである。
【0045】
これにより、印刷可能な文書データの量に上限が設けられているクラウドプリントサービスを利用して、上限を超える量の文書データを印刷することができる。利用するクラウドストレージサービスに対するユーザのアクセス権を、画像形成装置に付与することで印刷を行うため、ユーザは通常の印刷手順に加えて、画像形成装置に対してアクセス許可を付与することを承認するだけでよい。
【0046】
[実施形態2]
<別のユーザ情報を必要とするクラウドストレージサービスとの連携>
実施形態1では、クラウド統合サービス112の中にCPS102およびクラウドストレージサービス111が存在する構成であり、同一のユーザ情報(あるいはアカウント情報)を使用できた。しかしながらクラウドプリントサービスとクラウドストレージサービスが独立して提供されており、ユーザ情報も異なる場合も存在する。本実施形態では、CPS102とは異なるユーザ情報を必要とするクラウドストレージサービスと連携し、クライアント端末103に存在するCPS102容量制限を超える文書データを印刷する場合の処理について説明する。これにより任意のクラウドストレージサービスと組み合わせてクライアント端末103に存在するCPS102容量制限を超える文書データを印刷することが可能となる。
【0047】
<ネットワーク構成>
図10は本発明の実施例におけるシステム構成を示すブロック図である。
図1に示した構成にクラウドストレージサービス111のみが追加された構成となっている。クラウドストレージサービス111はオンラインのストレージサービスで、文書ファイルなどをオンライン上で管理可能なサービスを提供している。実施形態1と異なり、CPS102とクラウドストレージサービス111は同一クラウド統合サービスではなく、アクセスのためにそれぞれ異なるユーザ情報を必要とする。上記各構成要素はネットワークにより通信可能に接続されている。
【0048】
図11は本実施例におけるクライアント端末103で動作するプログラムが表示するサイズ上限発生時に関する設定ダイアログ1100の一例を示す図である。チェックボックス1101には、印刷時にCPS102のサイズ上限エラーが発生した場合、別のクラウドストレージに印刷ジョブの文書データを格納して印刷するか否かを設定する。コンボボックス1102は、文書データ格納先のクラウドストレージを選択するためのコンボボックスである。ユーザ名1103、パスワード1104は、それぞれ1102で選択したクラウドストレージへの接続に使用するユーザ名とパスワードである。本図で設定した内容は、
図12で示すような例えばXMLの形式で設定ファイル1200としてクライアント端末103のHDD204に保存される。クライアント端末103で動作するプログラムはHDD204に保存されている上記設定ファイルをHDD204から取得し、RAM203に読み込むことで参照する。上述のチェックボックス1101の設定が、クラウドストレージ利用タグ1201に保持される。チェックボックス1101をONにするとCPS102でサイズ上限エラーが発生した時に別のクラウドストレージを使用することを意味するYESが記録される。オフであればNOが記録される。ストレージ名タグ1202には、格納先コンボボックス1102で選択したクラウドストレージ名、ユーザ名タグ1203にはユーザ名1103、パスワードタグ1204にはパスワード1104が保持される。なお、パスワード1104については暗号化状態で記録され、読み込み時には復号して参照する。なおコンボボックス1102には、予めクラウドストレージのURIと紐付けて登録されたクラウドストレージ名のリストが表示され、その中から選択されてよい。
【0049】
図13を用いて、実施形態2におけるCPS102への印刷ジョブを送信し、CPSがジョブを保存する際に失敗した場合の処理フローについて説明する。なお、本図は
図7と同様に
図4のS414におけるジョブの保存に失敗した際の通知(S422)以降の処理フローを示しており
図7と同一のステップ番号は同一の処理を示す。またステップS705以降の手順は
図7と同一のであるので省略する。
【0050】
S701でクライアント端末103は、CPS102からの通知内に含まれるエラーコードを参照する。失敗原因がサイズ上限の超過であった場合に、S1301では、クライアント端末103は、
図11のサイズ上限エラー発生時に関する設定ダイアログで設定した設定ファイル1200を参照する。そして、設定ファイル1200の設定内容に基づいて外部のクラウドサービスを使用するかどうかを判定する。設定値が「YES」であれば使用するものと判定される。続けて、クライアント端末103は、S1302にて接続先のクラウドストレージ名、ユーザ名、パスワードをそれぞれ取得する。S702で、クライアント端末103は、S411で取得したプリンタ能力情報を参照して文書データを参照形式の印刷ジョブが対応可能と判定された場合に、S1303でクラウドストレージサービス111に対してログイン処理を行う。ここでは、S1302で取得したユーザ名、パスワードをクライアント端末103がクラウドストレージサービス111に送信して自動的にログインしている。これに対して、ユーザ名とパスワードをユーザに入力させるダイアログを表示し、ログインさせてもよい。クラウドストレージサービス111は、ログインを受け付けると、S1304にて、クライアント端末103にアクセストークンを送付する。
【0051】
本処理以降については、
図7と同様であり、文書データをクラウドストレージサービス111にアップロードし、印刷ジョブ内の文書データを参照形式の状態で印刷実行を指示することで、CPS102でサイズ上限エラーが発生した時でも印刷を実現する。
【0052】
本実施形態の構成をとることで、クラウドプリントサービスの容量不足発生時に任意のクラウドストレージサービスと組み合わせて印刷を実行することが可能となる。さらに、同一のユーザ情報でアクセスできるクラウドストレージがなくとも、利用可能なクラウドストレージがあれば印刷が可能となる。
【0053】
また、実施形態1のように同一のユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージサービスを優先的に使用し、存在しない場合のみ、実施形態2のように別の任意のクラウドストレージサービスを使用するようにしてもよい。このためには、たとえば
図11のダイアログボックス1100において、たとえば同一のユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージサービスを優先する旨のチェックボックスを設けておく。そしてそのチェックがされている場合には、コンボボックス1102には、同一のユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージサービスに限って表示する。これにより、CPSと同一のユーザ情報でアクセス可能なクラウドストレージサービスを優先的に利用できる。もちろん方法はこれに限らない。たとえばステップS702の直後に、クライアント端末が該当するクラウドストレージサービスの有無を判定し、あればS703に進んでもよい。この場合、該当するクラウドストレージサービスがなければ、ユーザにクラウドストレージサービスの指定とログイン情報の入力を促し、入力に応じたクラウドストレージサービスを利用してS1303以降を実行してもよい。
【0054】
[変形例]
上述の実施形態では、印刷ジョブを送信し、その結果の通知内容に含まれるエラーコードを判定することでサイズ上限エラーとなるどうかを判定する場合を例示した。一方、CPS102が処理可能な印刷ジョブの上限サイズが事前に取得可能な場合もある。この場合、クライアント端末は、ジョブを送信する前に、印刷ジョブのデータサイズとCPS102が処理可能な印刷ジョブのサイズや処理可能なファイルサイズを比較することでサイズ上限エラーが発生するかどうかを判定してもよい。この場合、例えばIPPで定義されているサポートされるジョブの上限サイズを意味するjob-k-octets-supported属性の情報をCPS102から取得しておく。続けて送信すべき印刷ジョブのサイズがCPS102から取得した上限サイズより大きい場合にはサイズ上限エラーが発生すると判定する。またサイズ上限を超過するかどうかの判定に使用する情報は、PWG5100.16で定義されているpdf-k-octets-supported属性の情報であってもよい。当該情報は受け入れ可能なPDFファイルの上限サイズを示している。
【0055】
また、当該事前に取得した上限サイズを示す情報に基づき判定を行う場合、印刷ジョブの生成後に生成された実際の印刷ジョブのサイズと、上限サイズを比較するように構成することができる。また、生成中の印刷ジョブのサイズを監視し、上限サイズを超えたタイミングでサイズ上限エラーが発生すると判定するように構成してもよい。更には、印刷対象となる文書ファイルや描画データのサイズ等から印刷ジョブのサイズを予測し、当該予測値と上限サイズを比較するように構成することもできる。
【0056】
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0057】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0058】
101 画像形成装置、102 クラウドプリントサービス(CPS)、103 クライアント端末、111 クラウドストレージサービス