(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
B41J2/335 101H
(21)【出願番号】P 2021071107
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】木本 智士
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014233(JP,A)
【文献】特開平10-181031(JP,A)
【文献】特開2004-198653(JP,A)
【文献】特開平05-042696(JP,A)
【文献】特開2001-063115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向を向く主面と、前記主面から突出し、かつ主走査方向に延びる凸部と、を有するとともに、半導体材料を含む基板と、
前記主走査方向に配列され、かつ前記凸部の上に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して形成された配線層と、を備え、
前記凸部は、前記厚さ方向を向き、かつ前記主面から離れて位置する頂面と、前記主面につながり、かつ副走査方向において互いに離れて位置するとともに、前記主面に対して傾斜した第1傾斜面および第2傾斜面と、を有し、
前記凸部の前記主走査方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部には、前記主面および前記第1傾斜面につながる第3傾斜面と、前記主面および前記第2傾斜面につながる第4傾斜面と、が形成されており、
前記第3傾斜面は、前記主面および前記第1傾斜面に対して傾斜しており、
前記第4傾斜面は、前記主面および前記第2傾斜面に対して傾斜している、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記第3傾斜面の面積は、前記第1傾斜面の面積よりも小さく、
前記第4傾斜面の面積は、前記第2傾斜面の面積よりも小さい、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づいており、
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づいている、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記頂面につながり、かつ前記頂面に対して傾斜しており、
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面は、前記頂面につながり、かつ前記頂面に対して傾斜している、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記頂面の周縁は、前記第1傾斜面との境界をなす第1縁と、前記第2傾斜面との境界をなす第2縁と、前記第3傾斜面との境界をなす第3縁と、前記第4傾斜面との境界をなす第4縁と、を含み、
前記第3縁は、前記主走査方向において前記第1縁に対して傾斜しており、
前記第4縁は、前記主走査方向において前記第2縁に対して傾斜している、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第3縁および前記第4縁は、前記主走査方向において前記第1縁および前記第2縁から離れるほど互いに近づいている、請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記凸部は、前記頂面につながり、かつ前記主面および前記頂面に対して傾斜した第5傾斜面および第6傾斜面を有し、
前記第5傾斜面は、前記副走査方向において前記第1傾斜面が位置する側に位置しており、
前記第6傾斜面は、前記副走査方向において前記第2傾斜面が位置する側に位置しており、
前記第5傾斜面および前記第6傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づいており、
前記主面に対する前記第5傾斜面の傾斜角は、前記主面に対する前記第1傾斜面の傾斜角よりも小さく、
前記主面に対する前記第6傾斜面の傾斜角は、前記主面に対する前記第2傾斜面の傾斜角よりも小さい、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面は、前記副走査方向において互いにつながっている、請求項3ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面の境界をなす稜線は、前記主面に対して傾斜している、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記厚さ方向に沿って視て、前記稜線は、前記頂面よりも前記主走査方向の外方に位置する、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記第3傾斜面の表面粗さは、前記第1傾斜面の表面粗さよりも大きく、
前記第4傾斜面の表面粗さは、前記第2傾斜面の表面粗さよりも大きい、請求項3ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記主面および前記凸部を覆う絶縁層をさらに備え、
前記絶縁層は、前記基板と前記抵抗体層との間に位置している、請求項1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線と、を含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線は、前記複数の発熱部に個別に導通している、請求項1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記複数の発熱部、および前記配線層を覆う保護層をさらに備える、請求項1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記基板は、前記厚さ方向において前記主面とは反対側を向く裏面を有し、
放熱部材をさらに備え、
前記裏面は、前記放熱部材に接合されている、請求項1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
厚さ方向において互いに反対側を向く第1面および第2面を有するとともに、半導体材料を含む基材において、前記第1面および前記第2面の上にマスク層を形成する工程と、
前記厚さ方向において前記第1面と同じ向きを向き、かつ前記第1面と前記第2面との間に位置する主面と、前記主面から突出する凸部と、を異方性エッチングにより前記基材に形成する工程と、
前記マスク層を除去する工程と、
前記凸部の上に主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を形成する工程と、
前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程と、を備え、
前記マスク層は、前記第1面の上に形成される第1マスク層と、前記第2面の上に形成される第2マスク層と、を含み、
前記第1マスク層は、前記主走査方向に延び、かつ前記第1面を覆う被覆部と、副走査方向において前記被覆部を間に挟んで位置し、かつ前記主走査方向に延びる2つの第1開口と、前記被覆部の前記主走査方向の端部の隣に位置し、かつ前記2つの第1開口につながる第2開口と、を有し、
前記2つの第1開口、および前記第2開口から前記第1面が露出する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記第1マスク層は、前記異方性エッチングに用いられるエッチング液に対して前記第2マスク層よりも溶解しやすい、請求項16に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記第1マスク層は、プラズマCVDにより形成され、
前記第2マスク層は、減圧CVDにより形成される、請求項17に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケイ素(シリコン)を含む材料からなる基板を備えるサーマルプリントヘッドが開示されている。当該サーマルプリントヘッドの基板は、主面と、主走査方向に延び、かつ主面から突出する凸部とを有する。特許文献1の
図6などに示すように、複数の発熱部は、凸部の上において主走査方向に配列されている。このような構成によれば、複数の発熱部が配置された凸部に記録媒体を的確に接触させることができるため、印字品質の向上が期待できる。さらに、当該サーマルプリントヘッドの基板は、比較的熱伝導率が高く、かつ窒化アルミニウムを含む材料からなる基板よりもコストが安いという利点を有する。しかし、当該サーマルプリントヘッドにおいては、凸部の主走査方向の端部に位置する当該凸部の端面が主面から切り立ったものとなる。このため、凸部の主走査方向の端部が尖鋭となりやすい。当該端部が尖鋭となると記録媒体に損傷が発生するおそれがあるため、改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は上述の事情に鑑み、基板の凸部の主走査方向の端部が尖鋭となることを抑制できるサーマルプリントヘッドおよびその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、厚さ方向を向く主面と、前記主面から突出し、かつ主走査方向に延びる凸部と、を有するとともに、半導体材料を含む基板と、前記主走査方向に配列され、かつ前記凸部の上に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して形成された配線層と、を備え、前記凸部は、前記厚さ方向を向き、かつ前記主面から離れて位置する頂面と、前記主面につながり、かつ副走査方向において互いに離れて位置するとともに、前記主面に対して傾斜した第1傾斜面および第2傾斜面と、を有し、前記凸部の前記主走査方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部には、前記主面および前記第1傾斜面につながる第3傾斜面と、前記主面および前記第2傾斜面につながる第4傾斜面と、が形成されており、前記第3傾斜面は、前記主面および前記第1傾斜面に対して傾斜しており、前記第4傾斜面は、前記主面および前記第2傾斜面に対して傾斜している。
【0006】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、厚さ方向において互いに反対側を向く第1面および第2面を有するとともに、半導体材料を含む基材において、前記第1面および前記第2面の上にマスク層を形成する工程と、前記厚さ方向において前記第1面と同じ向きを向き、かつ前記第1面と前記第2面との間に位置する主面と、前記主面から突出する凸部と、を異方性エッチングにより前記基材に形成する工程と、前記マスク層を除去する工程と、前記凸部の上に主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を形成する工程と、前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程と、を備え、前記マスク層は、前記第1面の上に形成される第1マスク層と、前記第2面の上に形成される第2マスク層と、を含み、前記第1マスク層は、前記主走査方向に延び、かつ前記第1面を覆う被覆部と、副走査方向において前記被覆部を間に挟んで位置し、かつ前記主走査方向に延びる2つの第1開口と、前記被覆部の前記主走査方向の端部の隣に位置し、かつ前記2つの第1開口につながる第2開口と、を有し、前記2つの第1開口、および前記第2開口から前記第1面が露出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドおよびその製造方法によれば、基板の凸部の主走査方向の端部が尖鋭となることを抑制できる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの平面図であり、保護層を透過している。
【
図2】
図2は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の部分拡大図であり、絶縁層、抵抗体層および配線層をさらに透過している。
【
図12】
図12は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図13】
図13は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図14】
図14は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図15】
図15は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図16】
図16は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する部分拡大平面図である。
【
図17】
図17は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する部分拡大平面図である。
【
図19】
図19は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する部分拡大平面図である。
【
図20】
図20は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図21】
図21は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図22】
図22は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図23】
図23は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図24】
図24は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図25】
図25は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部の製造工程を説明する断面図である。
【
図26】
図26は、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの要部の断面図である。
【
図29】
図29は、本開示の第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1~
図11に基づき、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA10について説明する。サーマルプリントヘッドA10は、後述するサーマルプリンタB10の主要部をなす。サーマルプリントヘッドA10は、要部および付随部により構成される。サーマルプリントヘッドA10の要部は、基板1、絶縁層21、抵抗体層3、配線層4および保護層5を備える。サーマルプリントヘッドA10の付随部は、配線基板71、放熱部材72、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、複数の第2ワイヤ75、封止樹脂76およびコネクタ77を備える。ここで、
図1においては、理解の便宜上、保護層5を透過し、かつ複数の第1ワイヤ74、複数の第2ワイヤ75、および封止樹脂76の図示を省略している。
図2および
図3においては、理解の便宜上、保護層5を透過している。
【0012】
ここで、説明の便宜上、サーマルプリントヘッドA10の主走査方向を「x方向」と呼ぶ。サーマルプリントヘッドA10の副走査方向を「y方向」と呼ぶ。基板1の厚さ方向を「z方向」と呼ぶ。z方向は、x方向およびy方向の双方に対して直交している。以下の説明において、「z方向に沿って視て」とは、「厚さ方向に沿って視て」を指す。
【0013】
サーマルプリントヘッドA10においては、
図4に示すように、サーマルプリントヘッドA10の要部をなす基板1は、放熱部材72に接合されている。さらに、配線基板71は、y方向において基板1の隣に位置する。配線基板71は、基板1と同じく放熱部材72に固定されている。基板1の上には、抵抗体層3の一部をなし、かつx方向に配列された複数の発熱部31(詳細は後述)が形成されている。複数の発熱部31は、配線基板71に搭載された複数の駆動素子73により選択的に発熱する。複数の駆動素子73は、コネクタ77を介して外部から送信される印字信号にしたがって駆動する。
【0014】
さらに、本開示にかかるサーマルプリンタB10は、
図4に示すように、サーマルプリントヘッドA10と、プラテンローラ79とを備える。サーマルプリンタB10において、プラテンローラ79は、感熱紙などの記録媒体を送り出すローラ状の機構である。プラテンローラ79が記録媒体を複数の発熱部31に押し当てることにより、当該複数の発熱部31が当該記録媒体に印字を行う。サーマルプリンタB10においては、プラテンローラ79に代えて、ローラ状ではない機構を採用できる。当該機構は、平坦な面を有する。ここで、平坦な面には、小さい曲率を有する曲面が含まれる。サーマルプリンタB10においては、プラテンローラ79のようなローラ状の機構と、当該機構とを含めて「プラテン」と呼ぶ。ここで、説明の便宜上、
図4において記録媒体の供給元の側(
図4における右側)を「上流側」と呼ぶ。
図4において記録媒体の排出先の側(
図4における左側)を「下流側」と呼ぶ。
【0015】
基板1は、
図1に示すように、z方向に沿って視てx方向に延びる矩形状である。したがって、x方向が基板1の長辺方向に相当する。y方向が基板1の短辺方向に相当する。基板1は、半導体材料を含む。当該半導体材料は、ケイ素(Si)を組成とする単結晶材料を含む。
【0016】
図5に示すように、基板1は、z方向において互いに反対側を向く主面11および裏面12を有する。基板1の結晶構造に基づく主面11および裏面12の面方位は、ともに(100)面である。
図4に示すように、サーマルプリントヘッドA10においては、主面11がプラテンローラ79に対向し、かつ裏面12が配線基板71に対向する。
【0017】
図5に示すように、基板1は、凸部13を有する。凸部13は、主面11からz方向に突出している。
図1および
図2に示すように、凸部13は、x方向に延びている。
【0018】
図5および
図6に示すように、凸部13は、頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132を有する。頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132は、x方向に延びている。頂面130は、z方向を向き、かつ主面11から離れて位置する。頂面130は、主面11に平行である。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11および頂面130につながっている。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、y方向において互いに離れて位置する。第1傾斜面131は、上流側に位置する。第2傾斜面132は、下流側に位置する。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11に対して傾斜している。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11から頂面130に向かうほど互いに近づいている。主面11に対する第1傾斜面131および第2傾斜面132の各々の傾斜角αは、互いに等しい。
【0019】
図7に示すように、凸部13のx方向の両端部のうち少なくともいずれかには、第3傾斜面133および第4傾斜面134が形成されている。サーマルプリントヘッドA10においては、第3傾斜面133および第4傾斜面134は、当該両端部の各々に形成されている。第3傾斜面133は、主面11、第1傾斜面131および頂面130につながっている。第3傾斜面133は、主面11、第1傾斜面131および頂面130に対して傾斜している。第3傾斜面133の面積は、第1傾斜面131の面積よりも小さい。第4傾斜面134は、主面11、第2傾斜面132および頂面130につながっている。第4傾斜面134は、主面11、第2傾斜面132および頂面130に対して傾斜している。第4傾斜面134の面積は、第2傾斜面132の面積よりも小さい。
【0020】
図11に示すように、第3傾斜面133および第4傾斜面134は、主面11から頂面130に向かうほど互いに近づいている。主面11に対する第3傾斜面133の傾斜角β1と、主面11に対する第4傾斜面134の傾斜角β2との各々は、先述の傾斜角αよりも大きい。
【0021】
図10および
図11に示すように、第3傾斜面133の表面粗さは、第1傾斜面131の表面粗さよりも大きい。第4傾斜面134の表面粗さは、第2傾斜面132の表面粗さよりも大きい。
【0022】
図7に示すように、頂面130の周縁は、第1縁130A、第2縁130B、第3縁130Cおよび第4縁130Dを有する。第1縁130Aは、頂面130と第1傾斜面131との境界をなす。第2縁130Bは、頂面130と第2傾斜面132との境界をなす。第2傾斜面132は、第1傾斜面131に平行である。第3縁130Cは、第1縁130Aにつながり、かつ第3傾斜面133との境界をなす。第3傾斜面133は、x方向において第1縁130Aに対して傾斜している。第4縁130Dは、第2縁130Bにつながり、かつ第4傾斜面134との境界をなす。第4傾斜面134は、x方向において第2縁130Bに対して傾斜している。
【0023】
図7に示すように、頂面130の第3縁130Cおよび第4縁130Dは、x方向において頂面130の第1縁130Aおよび第2縁130Bから離れるほど互いに近づいている。第1縁130Aとは反対側に位置する第3縁130Cの端と、第2縁130Bとは反対側に位置する第4縁130Dの端とは、互いにつながっている。
【0024】
図7および
図9に示すように、第3傾斜面133および第4傾斜面134は、y方向において互いにつながっている。
図8に示すように、第3傾斜面133および第4傾斜面134の境界をなす稜線139は、主面11に対して傾斜している。
図7に示すように、z方向に沿って視て、稜線139は、頂面130よりもx方向の外方に位置する。
【0025】
絶縁層21は、
図5および
図6に示すように、基板1の主面11および凸部13を覆っている。絶縁層21により、基板1は、抵抗体層3および配線層4に対して電気絶縁されている。絶縁層21は、たとえば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を原材料とした二酸化ケイ素(SiO
2)からなる。絶縁層21の厚さの例は、1μm以上15μm以下である。
【0026】
抵抗体層3は、
図5および
図6に示すように、基板1の主面11および凸部13の上に形成されている。抵抗体層3は、絶縁層21に接している。これにより、サーマルプリントヘッドA10において、絶縁層21は、基板1と抵抗体層3との間に挟まれている。抵抗体層3は、たとえば窒化タンタル(TaN)からなる。抵抗体層3の厚さの例は、0.02μm以上0.1μm以下である。
【0027】
図2、
図3および
図6に示すように、抵抗体層3は、複数の発熱部31を含む。抵抗体層3において、複数の発熱部31は、配線層4から露出する部分である。複数の発熱部31に対して配線層4から選択的に通電されることによって、複数の発熱部31は、記録媒体を局所的に加熱する。複数の発熱部31は、x方向に配列されている。複数の発熱部31のうち、x方向において隣り合う2つの当該発熱部31は、互いに離れて位置する。複数の発熱部31は、絶縁層21に接して形成されている。サーマルプリントヘッドA10においては、複数の発熱部31は、基板1の凸部13の頂面130の上に形成されている。複数の発熱部31は、頂面130のy方向の中央に位置する。
図4に示すように、サーマルプリンタB10において、複数の発熱部31は、プラテンローラ79に対向している。
【0028】
配線層4は、
図5および
図6に示すように、抵抗体層3に接して形成されている。配線層4は、抵抗体層3の複数の発熱部31に通電するための導電経路をなしている。配線層4の電気抵抗率は、抵抗体層3の電気抵抗率よりも小である。配線層4は、たとえば銅(Cu)からなる金属層である。配線層4の厚さの例は、0.3μm以上2.0μm以下である。この他、配線層4は、抵抗体層3の上に積層されたチタン(Ti)層と、当該チタン層の上に積層された銅層との2つの金属層からなる構成でもよい。この場合のチタン層の厚さの例は、0.1μm以上0.2μm以下である。
図1に示すように、配線層4は、基板1の主面11の周縁から離れて位置する。
【0029】
図2に示すように、配線層4は、共通配線41、および複数の個別配線42を含む。共通配線41は、抵抗体層3の複数の発熱部31に対して下流側に位置する。複数の個別配線42は、複数の発熱部31に対して上流側に位置する。
図3に示すように、z方向に沿って視て、共通配線41と複数の個別配線42とに挟まれた抵抗体層3の複数の領域が、複数の発熱部31である。
【0030】
図2および
図3に示すように、共通配線41は、基部411、および複数の延出部412を有する。y方向において、基部411は、抵抗体層3の複数の発熱部31から最も離れて位置する。基部411は、z方向に沿って視てx方向に延びる帯状である。複数の延出部412は、y方向において基板1の凸部13に対向する基部411の端部から、複数の発熱部31に向けて延びる帯状である。複数の延出部412は、x方向に沿って配列されている。複数の延出部412の各々の一部は、凸部13の第2傾斜面132の上に形成されている。共通配線41においては、基部411から複数の延出部412を介して複数の発熱部31に電流が流れる。
【0031】
図2および
図3に示すように、複数の個別配線42の各々は、基部421および延出部422を有する。y方向において、基部421は、抵抗体層3の複数の発熱部31から最も離れて位置する。複数の個別配線42の基部421は、x方向に対して千鳥配置となるように等間隔で配列されている。
【0032】
図2および
図3に示すように、延出部422は、y方向において基板1の凸部13に対向する基部421の端部から、複数の発熱部31に向けて延びる帯状である。複数の個別配線42の延出部422は、x方向に沿って配列されている。複数の個別配線42の各々の延出部422は、凸部13の第1傾斜面131の上に形成されている。複数の個別配線42の各々においては、複数の発熱部31のいずれかから延出部422を介して基部421に電流が流れる。z方向に沿って視て、複数の発熱部31の各々は、複数の個別配線42の延出部422のいずれかと、共通配線41の複数の延出部412のいずれかとに挟まれている。
図2および
図3に示す配線層4、および複数の発熱部31の構成は一例である。本開示における配線層4、および複数の発熱部31の構成は、
図2および
図3に示す構成に限定されない。
【0033】
保護層5は、
図5に示すように、基板1の主面11の一部と、抵抗体層3の複数の発熱部31、および配線層4とを覆っている。保護層5は、電気絶縁性を有する。保護層5は、ケイ素をその組成に含む。保護層5は、たとえば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素(Si
3N
4)および炭化ケイ素(SiC)のいずれからなる。あるいは、保護層5は、これらの物質のうち複数種類からなる積層体でもよい。保護層5の厚さの例は、1.0μm以上10μm以下である。サーマルプリンタB10において、記録媒体は、
図4に示すプラテンローラ79により複数の発熱部31を覆う保護層5の領域に押し当てられる。
【0034】
図5に示すように、保護層5は、配線開口51を有する。配線開口51は、z方向に保護層5を貫通している。配線開口51から、複数の個別配線42の基部421と、複数の個別配線42の延出部422の各々の一部とが露出している。
【0035】
配線基板71は、
図4に示すように、y方向において基板1の隣に位置する。
図1に示すように、z方向に沿って視て、複数の個別配線42は、y方向において抵抗体層3の複数の発熱部31と、配線基板71との間に位置する。z方向に沿って視て、配線基板71の面積は、基板1の面積よりも大である。さらに、z方向に沿って視て、配線基板71は、x方向を長手方向とする矩形状である。配線基板71は、たとえばPCB基板である。配線基板71には、複数の駆動素子73、およびコネクタ77が搭載されている。
【0036】
放熱部材72は、
図4に示すように、基板1の裏面12と対向している。裏面12は、放熱部材72に接合されている。配線基板71は、ねじなどの締結部材により放熱部材72に固定されている。サーマルプリントヘッドA10の使用時において、抵抗体層3の複数の発熱部31から発生した熱の一部は、基板1を介して放熱部材72に伝導される。放熱部材72に伝導された熱は、外部へと放熱される。放熱部材72は、たとえばアルミニウム(Al)からなる。
【0037】
複数の駆動素子73は、
図1および
図4に示すように、電気絶縁性を有するダイボンディング材(図示略)を介して配線基板71の上に搭載されている。複数の駆動素子73の各々は、種々の回路が構成された半導体素子である。複数の駆動素子73の各々には、複数の第1ワイヤ74の各々の一端と、複数の第2ワイヤ75の各々の一端とが接合されている。複数の第1ワイヤ74の他端は、複数の個別配線42の基部421に対して個別に接合されている。複数の第2ワイヤ75の各々の他端は、配線基板71に設けられ、かつコネクタ77に導通する配線(図示略)に接合されている。これにより、印字信号、制御信号、および抵抗体層3の複数の発熱部31に供給される電圧が、外部からコネクタ77を介して複数の駆動素子73に入力される。複数の駆動素子73は、これらの電気信号に基づき、複数の個別配線42に電圧を選択的に印加させる。これにより、複数の発熱部31が選択的に発熱する。
【0038】
封止樹脂76は、
図4に示すように、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75と、基板1および配線基板71の各々の一部とを覆っている。封止樹脂76は、電気絶縁性を有する。封止樹脂76は、たとえばアンダーフィルに用いられる黒色かつ軟質の合成樹脂である。この他、封止樹脂76は、黒色かつ硬質の合成樹脂でもよい。
【0039】
コネクタ77は、
図1および
図4に示すように、配線基板71のy方向の一端に搭載されている。コネクタ77は、サーマルプリンタB10に接続される。コネクタ77は、複数のピン(図示略)を有する。当該複数のピンの一部は、配線基板71において、複数の第2ワイヤ75が接合された配線(図示略)に導通している。さらに、当該複数のピンの別の一部は、配線基板71において、共通配線41の基部411に導通する配線(図示略)に導通している。
【0040】
次に、
図12~
図25に基づき、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の一例について説明する。ここで、
図12~
図15、および
図20~
図25の断面位置は、サーマルプリントヘッドA10の要部を示す
図5の断面位置と同一である。
【0041】
最初に、
図12~
図14に示すように、基材81にマスク層89を形成する。基材81は、半導体材料からなる。当該半導体材料は、ケイ素を組成とする単結晶材料を含む。基材81は、シリコンウエハである。z方向に対して直交する方向において、複数の基板1にそれぞれ相当する領域が複数個連なったものが、基材81に相当する。基材81は、第1面81Aおよび第2面81Bを有する。第1面81Aおよび第2面81Bは、z方向において互いに反対側を向く。基材81の結晶構造に基づく第1面81Aおよび第2面81Bの面方位は、ともに(100)面である。マスク層89は、第1面81Aの上に形成される第1マスク層891と、第2面81Bの上に形成される第2マスク層892とを含む。
【0042】
まず、
図12に示すように、第2マスク層892を形成する。第2マスク層892の形成にあたっては、減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)により基材81の表面全体を覆う窒化ケイ素の薄膜、および二酸化ケイ素の薄膜のいずれかを形成する。その後、フッ化水素酸(HF)を用いたウエットエッチングにより基材81の第1面81Aを覆う当該薄膜を除去する。これにより、第2マスク層892が形成される。
【0043】
次いで、
図13および
図14に示すように、第1マスク層891を形成する。第1マスク層891の形成にあたっては、
図13に示すように、プラズマCVDにより基材81の第1面81Aの全体を覆う窒化ケイ素の薄膜、および二酸化ケイ素の薄膜のいずれかを形成する。プラズマCVDにより基材81を覆う薄膜を形成する温度は、減圧CVDにより基材81を覆う薄膜を形成する温度よりも低い。その後、
図14に示すように、リソグラフィパターニングと、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)とにより、第1面81Aを覆う薄膜の一部を除去する。これにより、第1マスク層891が形成される。
【0044】
図16は、基材81の第1面81Aの上に第1マスク層891を形成した後の状態を示している。
図16に示すように、第1マスク層891は、被覆部891A、2つの第1開口891B、および第2開口891Cを有する。被覆部891Aは、x方向に延び、かつ第1面81Aを覆っている。2つの第1開口891Bは、y方向において被覆部891Aを間に挟んで位置し、かつx方向に延びている。第2開口891Cは、被覆部891Aのx方向の端部の隣に位置し、かつ2つの第1開口891Bにつながっている。2つの第1開口891B、および第2開口891Cから第1面81Aが露出する。
【0045】
次いで、
図15に示すように、異方性エッチングにより主面11および凸部13を基材81に形成した後、マスク層89を除去する。主面11は、z方向において基材81の第1面81Aと同じ向きを向くとともに、第1面81Aと、基材81の第2面81Bとの間に位置する。凸部13は、主面11からz方向に突出し、かつx方向に延びている。主面11および凸部13は、第1マスク層891の2つの第1開口891Bと、第1マスク層891の第2開口891Cとから露出した第1面81Aに対して異方性エッチングを行うことにより、基材81に主面11および凸部13が形成される。異方性エッチングに用いられるエッチング液は、たとえば水酸化カリウム(KOH)水溶液である。その後、フッ化水素酸を用いたウエットエッチングによりマスク層89を除去する。以上により、主面11および凸部13が基材81に形成される。さらに、第2面81Bは、基板1の裏面12となる。第1マスク層891の被覆部891Aに覆われていた第1面81Aの領域が、凸部13の頂面130となる。凸部13が異方性エッチングにより形成されるため、主面11に対する凸部13の第1傾斜面131および第2傾斜面132の各々の傾斜角αは互いに等しくなる。
【0046】
図17および
図18は、異方性エッチングにより主面11および凸部13を基材81に形成した後であり、かつマスク層89を除去する前の基材81の状態を示している。第1マスク層891の2つの第1開口891Bから露出した第1面81Aに対して異方性エッチングを行うことにより、凸部13の第1傾斜面131および第2傾斜面132が形成される。第1マスク層891の第2開口891Cから露出した第1面81Aに対して異方性エッチングを行うことにより、凸部13の第3傾斜面133および第4傾斜面134が形成される。この際、第3傾斜面133および第4傾斜面134の上に位置する第1マスク層891の被覆部891Aの部分が除去される。さらに、凸部13の頂面130の一部が第1マスク層891から露出する。これは、当該部分が異方性エッチングに用いられるエッチング液に溶解したためである。窒化ケイ素の薄膜、および二酸化ケイ素の薄膜は、減圧CVDで形成する場合よりもプラズマCVDで形成する場合の方が当該エッチング液に溶解しやすくなる。したがって、第1マスク層891は、当該エッチング液に対して第2マスク層892よりも溶解しやすい。
図18に示すように、第3傾斜面133および第4傾斜面134の各々の表面粗さは、第1傾斜面131および第2傾斜面132の各々の表面粗さよりも大きくなる。
図18においては、本図に示す断面よりも背後に位置する第3傾斜面133および第4傾斜面134をそれぞれ複数点の領域で示している。
【0047】
図19も、異方性エッチングにより主面11および凸部13を基材81に形成した後であり、かつマスク層89を除去する前の基材81の状態を示している。しかし、第1マスク層891の製造方法が、
図17に示す第1マスク層891の製造方法と異なる。第1マスク層891は、第2マスク層892と同じく減圧CVDにより形成される。これにより、第1マスク層891は、
図17に示す第1マスク層891よりもエッチング液に溶解しにくくなる。このため、凸部13の第3傾斜面133および第4傾斜面134の上に位置する第1マスク層891の被覆部891Aの部分が除去されない。したがって、第1マスク層891の性質が第2マスク層892の性質と同等であっても、凸部13に第3傾斜面133および第4傾斜面134が形成される。
【0048】
次いで、
図20に示すように、基材81の主面11および凸部13を覆う絶縁層21を形成する。絶縁層21は、プラズマCVDによりオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を原料ガスとして形成された二酸化ケイ素の薄膜を複数回にわたって積層させることによって形成される。
【0049】
次いで、
図21~
図23に示すように、抵抗体層3および配線層4を形成する。抵抗体層3は、x方向に配列された複数の発熱部31を含む。配線層4は、複数の発熱部31に導通する。さらに、配線層4を形成する工程では、共通配線41、および複数の個別配線42を形成する工程を含む。基材81において、共通配線41は、
図13に示す抵抗体層3の複数の発熱部31に対してy方向の一方側に位置する。基材81において、複数の個別配線42は、
図13に示す複数の発熱部31に対してy方向の他方側に位置する。
【0050】
まず、
図21に示すように、基材81の主面11および凸部13の上に抵抗体膜82を形成する。抵抗体膜82は、絶縁層21の全面を覆うように形成される。抵抗体膜82は、スパッタリング法により窒化タンタルの薄膜を絶縁層21に積層させることによって形成される。
【0051】
次いで、
図22に示すように、抵抗体膜82の全面を覆う導電層83を形成する。導電層83は、スパッタリング法により銅の薄膜を複数回にわたって抵抗体膜82に積層させることによって形成される。この他、導電層83の形成にあたっては、スパッタリング法によりチタンの薄膜を抵抗体膜82に積層させた後、当該チタンの薄膜に対してスパッタリング法により銅の薄膜を複数回にわたって積層させる手法を採ってもよい。
【0052】
次いで、
図23に示すように、導電層83に対してリソグラフィパターニングを施した後、導電層83の一部を除去する。当該除去は、硫酸(H
2SO
4)および過酸化水素(H
2O
2)の混合溶液を用いたウエットエッチングにより行われる。これにより、共通配線41、および複数の個別配線42が、抵抗体膜82に接して形成される。あわせて、基材81の凸部13の頂面130の上に形成された抵抗体膜82の領域が配線層4から露出する。その後、抵抗体膜82および配線層4に対してリソグラフィパターニングを施した後、抵抗体膜82の一部を除去する。当該除去は、反応性イオンエッチングにより行われる。これにより、抵抗体層3が、基材81の主面11および凸部13の上に形成される。基材81の頂面130の上には、複数の発熱部31が現れる。
【0053】
次いで、
図24に示すように、基材81の主面11の一部と、抵抗体層3の複数の発熱部31、および配線層4を覆う保護層5を形成する。保護層5は、プラズマCVDにより窒化ケイ素の薄膜を積層させることによって形成される。
【0054】
次いで、
図25に示すように、z方向に貫通する配線開口51を保護層5に形成する。配線開口51は、保護層5に対してリソグラフィパターニングを施した後、保護層5の一部を除去することにより形成される。当該除去は、反応性イオンエッチングにより行われる。これにより、配線開口51から複数の個別配線42の一部(
図5に示す複数の個別配線42の基部421、および複数の個別配線42の延出部422の各々の一部)が露出する。複数の個別配線42の各々の一部であり、かつ配線開口51から露出する部分は、たとえばワイヤボンディングにより複数の第1ワイヤ74が個別に接合される基部421をなす。配線開口51から露出する複数の個別配線42の各々の部分(基部421を含む)には、めっきにより金などの金属層を積層してもよい。
【0055】
次いで、x方向およびy方向に沿って基材81を厚さ方向に切断する。これにより得られた個片が、基板1を含むサーマルプリントヘッドA10の要部となる。基材81の切断装置の一例としてダイシングソーが挙げられる。基材81の切断線は、基材81の凸部13から離れた位置に設定する。これにより、切断装置の刃が凸部13に接触しないようにする。
【0056】
次いで、配線基板71に複数の駆動素子73、およびコネクタ77を搭載する。次いで、基板1の裏面12、および配線基板71を放熱部材72に接合させる。次いで、配線基板71に対して複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75の接合を行う。最後に、基板1および配線基板71に対して、駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75を覆う封止樹脂76の形成を行う。以上の工程を経ることによって、サーマルプリントヘッドA10が得られる。
【0057】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作用効果について説明する。
【0058】
サーマルプリントヘッドA10は、主面11および凸部13を有するとともに、半導体材料を含む基板1を備える。凸部13は、頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132を有する。凸部13のx方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部には、第3傾斜面133および第4傾斜面134が形成されている。第3傾斜面133は、主面11および第1傾斜面131に対して傾斜している。第4傾斜面134は、主面11および第2傾斜面132に対して傾斜している。これにより、凸部13のx方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部に位置し、かつ主面11、第1傾斜面131および第2傾斜面132につながる凸部13の端面は、第3傾斜面133および第4傾斜面134により構成される。当該端面は、y方向およびz方向に沿って主面11から切り立ったものではなく、主面11、第1傾斜面131および第2傾斜面132に対して傾斜したものとなる。したがって、サーマルプリントヘッドA10によれば、凸部13のx方向の端部が尖鋭となることを抑制できる。
【0059】
サーマルプリントヘッドA10の製造においては、主面11および凸部13を異方性エッチングにより基材81に形成する工程の前に、基材81の第1面81Aおよび第2面81Bの上にマスク層89を形成する工程を備える。マスク層89は、第1面81Aの上に形成される第1マスク層891と、第2面81Bの上に形成される第2マスク層892とを含む。第1マスク層891は、被覆部891A、2つの第1開口891B、および第2開口891Cを有する。2つの第1開口891B、および第2開口891Cから第1面81Aが露出する。これにより、頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132に加えて、第3傾斜面133および第4傾斜面134を有する凸部13を形成することができる。
【0060】
第1マスク層891は、異方性エッチングに用いられるエッチング液に対して第2マスク層892よりも溶解しやすい。これにより、
図16に示すように、凸部13の第3傾斜面133および第4傾斜面134の上に位置する第1マスク層891の被覆部891Aの部分が異方性エッチングにより除去される。これにより、主面11および凸部13を基材81に形成した後、マスク層89をより効率よく除去することができる。
【0061】
凸部13の第3傾斜面133および第4傾斜面134は、主面11から凸部13の頂面130に向かうほど互いに近づいている。さらに第3傾斜面133および第4傾斜面134は、頂面130につながっており、かつ頂面130に対して傾斜している。これにより、頂面130に対する第3傾斜面133および第4傾斜面134の各々の交差角は、ともに鈍角となる。これにより、第3傾斜面133および第4傾斜面134と頂面130との境界をなす第3縁130Cおよび第4縁130Dが尖鋭となることを抑制できる。
【0062】
凸部13の頂面130において、第3縁130Cは、x方向において第1縁130Aに対して傾斜している。第4縁130Dは、x方向において第2縁130Bに対して傾斜している。さらに第3縁130Cおよび第4縁130Dは、x方向において第1縁130Aおよび第2縁130Bから離れるほど互いに近づいている。これにより、頂面130のx方向の端部の面積は、抵抗体層3の複数の発熱部31からx方向に離れるほど徐々に小さくなる。このため、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体のx方向の端部の接触面積がより小さくなる。このことは、サーマルプリントヘッドA10への接触に起因した記録媒体の損傷抑制につながる。
【0063】
基板1に含まれる半導体材料は、ケイ素を組成とする単結晶材料を含む。これにより、基板1の熱伝導率を比較的大(約170W/(m・K))としつつ、基板1のコストを縮減することができる。
【0064】
基板1は、主面11からz方向に突出する凸部13を有する。抵抗体層3の複数の発熱部31は、凸部13の上に形成されている。これにより、
図4に示す記録媒体への印字の際、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体の接触面積を最小限に抑えつつ、複数の発熱部31からの熱を記録媒体に伝えることができる。これにより、記録媒体への印字の品質の向上が図られる。
【0065】
サーマルプリントヘッドA10は、抵抗体層3の複数の発熱部31、および配線層4の両者を覆う保護層5をさらに備える。これにより、複数の発熱部31、および配線層4が保護層5により保護されるとともに、サーマルプリントヘッドA10の使用の際、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体の接触がより円滑になる。
【0066】
サーマルプリントヘッドA10は、放熱部材72をさらに備える。基板1の裏面12は、放熱部材72に接合されている。これにより、サーマルプリントヘッドA10の使用時において、複数の発熱部31から発した熱の一部を、基板1および放熱部材72を介して速やかに外部に放出させることができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
図26および
図27に基づき、本開示の第5実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA20について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図26の断面位置は、サーマルプリントヘッドA10の要部を示す
図5の断面位置と同一である。
【0068】
サーマルプリントヘッドA20においては、グレーズ層22をさらに備えることが、サーマルプリントヘッドA10と異なる。
【0069】
グレーズ層22は、
図26および
図27に示すように、凸部13の頂面130と、絶縁層21との間に位置する。グレーズ層22は、たとえば非晶質ガラスを含む。このため、グレーズ層22は、ガラスを含む材料からなる。グレーズ層22の線膨張係数は、基板1の線膨張係数と同程度である。
図27に示すように、グレーズ層22は、z方向において頂面130が向く側に膨出している。グレーズ層22のz方向の寸法Hは、グレーズ層22のy方向の中央において最も大である。
【0070】
次に、
図28に基づき、サーマルプリントヘッドA20の製造方法の一例について説明する。ここで、
図25の断面位置は、サーマルプリントヘッドA10の要部を示す
図5の断面位置と同一である。
【0071】
先述のサーマルプリントヘッドA10の要部の製造工程のうち、
図15~
図19に示す基材81に主面11および凸部13を形成した上でマスク層89を除去する工程を経た後、
図28に示すように、グレーズ層22を凸部13の頂面130に接して形成する。グレーズ層22は、流動体であるグレーズ材料を頂面130に供給した後、当該グレーズ材料を焼成することにより形成される。当該グレーズ材料は、たとえばディスペンサにより吐出される。当該グレーズ材料は、非晶質ガラスなどのガラスを含む。当該グレーズ材料は、複数回にわたった重ね塗布をしてもよい。当該グレーズ材料の供給方法の他の例として、スクリーンを用いて当該グレーズ材料を頂面130に印刷する方法が挙げられる。グレーズ層22を形成した後は、先述のサーマルプリントヘッドA10の要部の製造工程のうち
図20~
図25に示す工程と同様の工程を経ることによりサーマルプリントヘッドA20が得られる。
【0072】
次に、サーマルプリントヘッドA20の作用効果について説明する。
【0073】
サーマルプリントヘッドA20は、主面11および凸部13を有するとともに、半導体材料を含む基板1を備える。凸部13は、頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132を有する。凸部13のx方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部には、第3傾斜面133および第4傾斜面134が形成されている。第3傾斜面133は、主面11および第1傾斜面131に対して傾斜している。第4傾斜面134は、主面11および第2傾斜面132に対して傾斜している。したがって、サーマルプリントヘッドA20によっても、凸部13のx方向の端部が尖鋭となることを抑制できる。さらに、サーマルプリントヘッドA20は、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0074】
サーマルプリントヘッドA20は、凸部13の頂面130と、絶縁層21との間に位置するグレーズ層22をさらに備える。グレーズ層22は、z方向において頂面130が向く側に膨出している。本構成をとることにより、凸部13の形成規模を抑制しつつ、サーマルプリントヘッドA20に対する記録媒体の接触面積をより小さくすることができる。さらに、グレーズ層22は、複数の発熱部31から発した熱を蓄える効果を発揮する。したがって、サーマルプリントヘッドA20によれば、印字エネルギー効率の改善を図りつつ、複数の発熱部31によりなされる記録媒体への印字の品質を向上させることができる。
【0075】
〔第3実施形態〕
図29および
図30に基づき、本開示の第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA30について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図29の断面位置は、サーマルプリントヘッドA10の要部を示す
図5の断面位置と同一である。
【0076】
サーマルプリントヘッドA30においては、基板1の凸部13の構成と、抵抗体層3の複数の発熱部31の構成とが、サーマルプリントヘッドA10の当該構成と異なる。
【0077】
図29および
図30に示すように、凸部13は、第5傾斜面135および第6傾斜面136を有する。第5傾斜面135および第6傾斜面136は、凸部13の頂面130につながり、かつ基板1の主面11、および頂面130に対して傾斜している。第5傾斜面135は、y方向において凸部13の第1傾斜面131が位置する側に位置する。第6傾斜面136は、y方向において凸部13の第2傾斜面132が位置する側に位置する。第5傾斜面135および第6傾斜面136は、主面11から頂面130に向かうほど互いに近づいている。
【0078】
図30に示すように、主面11に対する第5傾斜面135および第6傾斜面136の各々の傾斜角γは、互いに等しい。第5傾斜面135の傾斜角γは、主面11に対する第1傾斜面131の傾斜角αよりも小さい。第6傾斜面136の傾斜角γは、主面11に対する第2傾斜面132の傾斜角αよりも小さい。第5傾斜面135および第6傾斜面136は、サーマルプリントヘッドA10の製造にかかる
図15に示す工程と
図20に示す工程との間に次の工程を行うことにより形成することができる。この工程は、頂面130と第1傾斜面131との境界と、頂面130と第2傾斜面132との境界とに、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いたウエットエッチングを施すものである。
【0079】
図30に示すように、抵抗体層3の複数の発熱部31は、凸部13の頂面130、第6傾斜面136および第2傾斜面132の上に形成されている。この他、複数の発熱部31は、凸部13の頂面130、第5傾斜面135および第1傾斜面131の上に形成される構成でもよい。
【0080】
次に、サーマルプリントヘッドA30の作用効果について説明する。
【0081】
サーマルプリントヘッドA30は、主面11および凸部13を有するとともに、半導体材料を含む基板1を備える。凸部13は、頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132を有する。凸部13のx方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部には、第3傾斜面133および第4傾斜面134が形成されている。第3傾斜面133は、主面11および第1傾斜面131に対して傾斜している。第4傾斜面134は、主面11および第2傾斜面132に対して傾斜している。したがって、サーマルプリントヘッドA30によっても、凸部13のx方向の端部が尖鋭となることを抑制できる。さらに、サーマルプリントヘッドA30は、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0082】
サーマルプリントヘッドA30においては、凸部13は、第5傾斜面135および第6傾斜面136を有する。第5傾斜面135および第6傾斜面136は、凸部13の頂面130につながり、かつ基板1の主面11、および頂面130に対して傾斜している。第5傾斜面135の傾斜角γは、主面11に対する第1傾斜面131の傾斜角αよりも小さい。第6傾斜面136の傾斜角γは、主面11に対する第2傾斜面132の傾斜角αよりも小さい。本構成をとることにより、凸部13に沿って形成された配線層4の一部の形状が、より滑らかなものとなる。あわせて、凸部13に沿って形成された配線層4において、配線パターンの欠損や断線などの発生が抑制される。
【0083】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0084】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドおよびその製造方法の技術的構成について、以下に付記する。
[付記1]
厚さ方向を向く主面と、前記主面から突出し、かつ主走査方向に延びる凸部と、を有するとともに、半導体材料を含む基板と、
前記主走査方向に配列され、かつ前記凸部の上に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して形成された配線層と、を備え、
前記凸部は、前記厚さ方向を向き、かつ前記主面から離れて位置する頂面と、前記主面につながり、かつ副走査方向において互いに離れて位置するとともに、前記主面に対して傾斜した第1傾斜面および第2傾斜面と、を有し、
前記凸部の前記主走査方向の両端部のうち少なくともいずれかの端部には、前記主面および前記第1傾斜面につながる第3傾斜面と、前記主面および前記第2傾斜面につながる第4傾斜面と、が形成されており、
前記第3傾斜面は、前記主面および前記第1傾斜面に対して傾斜しており、
前記第4傾斜面は、前記主面および前記第2傾斜面に対して傾斜している、サーマルプリントヘッド。
[付記2]
前記第3傾斜面の面積は、前記第1傾斜面の面積よりも小さく、
前記第4傾斜面の面積は、前記第2傾斜面の面積よりも小さい、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記3]
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づいており、
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づいている、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記4]
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記頂面につながり、かつ前記頂面に対して傾斜しており、
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面は、前記頂面につながり、かつ前記頂面に対して傾斜している、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記5]
前記頂面の周縁は、前記第1傾斜面との境界をなす第1縁と、前記第2傾斜面との境界をなす第2縁と、前記第3傾斜面との境界をなす第3縁と、前記第4傾斜面との境界をなす第4縁と、を含み、
前記第3縁は、前記主走査方向において前記第1縁に対して傾斜しており、
前記第4縁は、前記主走査方向において前記第2縁に対して傾斜している、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記6]
前記第3縁および前記第4縁は、前記主走査方向において前記第1縁および前記第2縁から離れるほど互いに近づいている、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記7]
前記凸部は、前記頂面につながり、かつ前記主面および前記頂面に対して傾斜した第5傾斜面および第6傾斜面を有し、
前記第5傾斜面は、前記副走査方向において前記第1傾斜面が位置する側に位置しており、
前記第6傾斜面は、前記副走査方向において前記第2傾斜面が位置する側に位置しており、
前記第5傾斜面および前記第6傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づいており、
前記主面に対する前記第5傾斜面の傾斜角は、前記主面に対する前記第1傾斜面の傾斜角よりも小さく、
前記主面に対する前記第6傾斜面の傾斜角は、前記主面に対する前記第2傾斜面の傾斜角よりも小さい、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記8]
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面は、前記副走査方向において互いにつながっている、付記3ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記9]
前記第3傾斜面および前記第4傾斜面の境界をなす稜線は、前記主面に対して傾斜している、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記10]
前記厚さ方向に沿って視て、前記稜線は、前記頂面よりも前記主走査方向の外方に位置する、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記11]
前記第3傾斜面の表面粗さは、前記第1傾斜面の表面粗さよりも大きく、
前記第4傾斜面の表面粗さは、前記第2傾斜面の表面粗さよりも大きい、付記3ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記12]
前記主面および前記凸部を覆う絶縁層をさらに備え、
前記絶縁層は、前記基板と前記抵抗体層との間に位置している、付記1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記13]
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線と、を含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線は、前記複数の発熱部に個別に導通している、付記1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記14]
前記複数の発熱部、および前記配線層を覆う保護層をさらに備える、付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記15]
前記基板は、前記厚さ方向において前記主面とは反対側を向く裏面を有し、
放熱部材をさらに備え、
前記裏面は、前記放熱部材に接合されている、付記1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記16]
厚さ方向において互いに反対側を向く第1面および第2面を有するとともに、半導体材料を含む基材において、前記第1面および前記第2面の上にマスク層を形成する工程と、
前記厚さ方向において前記第1面と同じ向きを向き、かつ前記第1面と前記第2面との間に位置する主面と、前記主面から突出する凸部と、を異方性エッチングにより前記基材に形成する工程と、
前記マスク層を除去する工程と、
前記凸部の上に主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を形成する工程と、
前記複数の発熱部に導通する配線層を前記抵抗体層に接して形成する工程と、を備え、
前記マスク層は、前記第1面の上に形成される第1マスク層と、前記第2面の上に形成される第2マスク層と、を含み、
前記第1マスク層は、前記主走査方向に延び、かつ前記第1面を覆う被覆部と、副走査方向において前記被覆部を間に挟んで位置し、かつ前記主走査方向に延びる2つの第1開口と、前記被覆部の前記主走査方向の端部の隣に位置し、かつ前記2つの第1開口につながる第2開口と、を有し、
前記2つの第1開口、および前記第2開口から前記第1面が露出する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記17]
前記第1マスク層は、前記異方性エッチングに用いられるエッチング液に対して前記第2マスク層よりも溶解しやすい、付記16に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記18]
前記第1マスク層は、プラズマCVDにより形成され、
前記第2マスク層は、減圧CVDにより形成される、付記17に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【符号の説明】
【0085】
A10,A20:サーマルプリントヘッド
B10:サーマルプリンタ
1:基板
11:主面
12:裏面
13:凸部
130:頂面
130A:第1縁
130B:第2縁
130C:第3縁
130D:第4縁
131:第1傾斜面
132:第2傾斜面
133:第3傾斜面
134:第4傾斜面
135:第5傾斜面
136:第6傾斜面
139:稜線
21:絶縁層
22:グレーズ層
3:抵抗体層
31:発熱部
4:配線層
41:共通配線
411:基部
412:延出部
42:個別配線
421:基部
422:延出部
5:保護層
51:配線開口
71:配線基板
72:放熱部材
73:駆動素子
74:第1ワイヤ
75:第2ワイヤ
76:封止樹脂
77:コネクタ
79:プラテンローラ
81:基材
81A:第1面
81B:第2面
82:抵抗体膜
83:導電層
89:マスク層
891:第1マスク層
891A:被覆部
891B:第1開口
891C:第2開口
892:第2マスク層
α,β1,β2,γ:傾斜角