(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】フィルム用収容箱及びフィルム収容体
(51)【国際特許分類】
B65D 25/52 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
B65D25/52 E
(21)【出願番号】P 2021076592
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】礒田 奈央子
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232774(JP,A)
【文献】特開平9-12034(JP,A)
【文献】特開2015-182816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/52
B65D 5/72- 5/76
B65D 85/67-85/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムが巻回された巻回体を収容可能で、前板、底板、後板、及び側板を有し、上面が開口した収容部と、
前記収容部の上面の開口を開閉可能な蓋板と、当該蓋板から前記収容部の前板側に延出し閉時に前板の少なくとも一部を覆う掩蓋片とを有する蓋部と、を備えた、フィルム用収容箱であって、
蓋板、掩蓋片、底板、後板のうちの少なくとも1か所の表面に、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ動摩擦係数が0.30以下である領域を有する、フィルム用収容箱。
【請求項2】
前記領域における、ISO 25178で規定するコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が13μm以上である、請求項1に記載のフィルム用収容箱。
【請求項3】
前記領域における、ISO 25178で規定する最小自己相関長さSalの値が300μm以下である、請求項1又は2に記載のフィルム用収容箱。
【請求項4】
前記巻回体が、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム用収容箱に収容された、フィルム収容体。
【請求項5】
前記フィルムの触覚接触子との静摩擦係数が2.0以上である、請求項4に記載のフィルム収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フィルム用収容箱及びフィルム収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理、あるいは皿などの食器を料理ごと包むラップフィルムが広く用いられている。ラップフィルムは、典型的には、長尺の筒状の芯にロール状に巻かれて(巻回体)、細長い直方体状のフィルム用収容箱に収容される。
【0003】
フィルム用収容箱は、巻回体を収容可能で上面が開口した収容部と、収容部の上面の開口を開閉する蓋部を有している。収容部は、前板、底板、後板及び側板等で構成され、蓋部は、収容部の上面の開口を覆う蓋板と、蓋板から前板側に延出される掩蓋片と、掩蓋片の先端に設けられた切断刃等で構成されている。
【0004】
そして、ラップフィルムを使用する際には、ユーザは、例えばフィルム用収容箱を左手で持ち、左手で蓋部を開け、その後右手でラップフィルムを摘んで引き出す。この際、巻回体が収容部内で回転し、ラップフィルムが巻回体から剥離してフィルム用収容箱の外部に引き出される。そして、ユーザは、必要な長さのラップフィルムを引き出した後に、蓋部を左手で閉め、切断刃を使用してラップフィルムを切断し、その後切り離したラップフィルムを食器等に使用する。
【0005】
ところで、上述のようにラップフィルムを使用する際には、複雑な動作が繰り返されるため、ユーザは、手を滑らせてフィルム用収容箱を落下させる可能性がある。そこで、特許文献1には、包装物収容体の側面に段差部を設ける方法が開示され、特許文献2には、巻回体収容箱の面に凸部群を設ける方法が開示さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-265032号公報
【文献】特開2015-182816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、フィルム用収容箱の強度が低下してしまう可能性がある。また、特許文献2に記載された方法では、フィルム用収容箱を手で持った際にベタツキを感じる可能性がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、滑りにくく、かつ強度を維持しつつ、ベタツキ感が少ないフィルム用収容箱を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、フィルム用収容箱の表面に、静摩擦係数が所定値よりも大きく、かつ動摩擦係数が所定値よりも小さい領域を形成することで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の態様は以下を含む。
【0010】
(1)フィルムが巻回された巻回体を収容可能で、前板、底板、後板、及び側板を有し、上面が開口した収容部と、前記収容部の上面の開口を開閉可能な蓋板と、当該蓋板から前記収容部の前板側に延出し閉時に前板の少なくとも一部を覆う掩蓋片とを有する蓋部と、を備えた、フィルム用収容箱であって、蓋板、掩蓋片、底板、後板のうちの少なくとも1か所の表面に、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ動摩擦係数が0.30以下である領域を有する、フィルム用収容箱。
(2)前記領域における、ISO 25178で規定するコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が13μm以上である、(1)に記載のフィルム用収容箱。
(3)前記領域における、ISO 25178で規定する最小自己相関長さSalの値が300μm以下である、(1)又は(2)に記載のフィルム用収容箱。
(4)前記巻回体が、(1)~(3)のいずれか1項に記載のフィルム用収容箱に収容された、フィルム収容体。
(5)前記フィルムの触覚接触子との静摩擦係数が2.0以上である、(4)に記載のフィルム収容体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、滑りにくく、かつ強度を維持しつつ、ベタツキ感が少ないフィルム用収容箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】フィルム収容体の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】蓋部を開放したときのフィルム収容体を示す斜視図である。
【
図3】巻回体とフィルム用収容箱の構成を示す斜視図である。
【
図5】開封片を外したフィルム用収容箱の前面図である。
【
図6】摩擦調整領域の他の例を示すフィルム用収容箱の展開図である。
【
図8】ISO 25178で規定するSk、Spkのイメージ図である。
【
図9】実施例の摩擦調整領域の各種数値と持ちやすさの評価を示す表である。
【
図10】実施例で使用する下地剤又は塗布剤の印刷パターンを示す図である。
【
図11】実施例で使用する下地剤又は塗布剤の印刷パターンを示す図である。
【
図12】摩擦調整領域の静摩擦係数と動摩擦係数の好ましい範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施の形態にかかるフィルム収容体1の一例を示す斜視図である。
図2は、フィルム収容体1を開封した状態の斜視図である。
図3は、フィルム収容体1のフィルム用収容箱10と巻回体11を示す斜視図である。なお、本明細書において、フィルム収容体1及びフィルム用収容箱10の構成における「上」、「下」は、
図1に示す姿勢、すなわちフィルム用収容箱10の後述の底板31を下にし、蓋板40を上にしたときの姿勢を基準にする。また、フィルム用収容箱10の前板30側を「前」、後板32側を「後ろ」とする。さらに、フィルム用収容箱10の長手方向(左右方向)を「X方向」とし、フィルム用収容箱10の長手方向Xに直交する前後方向を「Y方向」とし、フィルム用収容箱10の上下方向を「Z方向」とする。
【0015】
図1乃至
図3に示すようにフィルム収容体1は、フィルム用収容箱10と、フィルムFの巻回体11を有している。
【0016】
フィルム用収容箱10は、全体が例えば細長い直方体形状を有している。フィルム用収容箱10を構成する素材は、例えばボール紙、コートボール紙、段ボール等の紙類であるが、これに限定されず、当業界で公知の紙類や他の素材を適宜選択して用いてもよい。
【0017】
図4は、フィルム用収容箱10を展開したときのフィルム用収容箱10の表面を示す展開図である。フィルム用収容箱10は、
図3及び
図4に示すように、フィルムFが巻回された巻回体11を収容可能で、上面が開口した収容部20と、収容部20の上面の開口を開閉する蓋部21を有している。
【0018】
収容部20は、
図4に示すように例えば前板30と、底板31と、後板32と、前板脇片33と、側板34と、後板脇片35、裏板36及び裏板脇片37等を有している。
【0019】
図4の展開図において、裏板36、前板30、底板31及び後板32は、それぞれ長方形状を有し、前後方向Yにこの順番で互いに接続されている。前板脇片33は、方形状を有し、前板30の左右方向Xの両端に接続されている。側板34は、方形状を有し、底板31の左右方向Xの両端に接続されている。後板脇片35は、方形状を有し、後板32の左右方向Xの両端に接続されている。裏板脇片37は、裏板36の長手方向Xの両端に接続されている。
【0020】
前板30には、左右方向Xの両端部に亘り波形の切り込み30aが形成されている。前板30の表面には、フィルムFの端部を仮留めする仮留め部材Qが設けられている。裏板36には、裏板36と前板30との接続線(折り線)に接続される切り込み36aが形成されている。
【0021】
収容部20は、
図3に示すように上面が開口した直方体状に形成されている。前板30、底板31、後板32及び側板34は、収容部20の上面以外の5つの壁面を構成している。裏板36は、前板30の内側に折り返されて前板30の裏面に配置されている。前板30の切り込み30aよりも上部は、下部と離れて前方側に浮き上がっている。裏板36の切り込み36aよりも上部は、下部と離れて後方側に浮き上がっている。後板脇片35は、側板34の内側に折り返されて、側板34の内面を覆っている。前板脇片33及び裏板脇片37は、側板34の内面に折り返されて後板脇片35と側板34との間に介在されている。
【0022】
蓋部21は、
図4の展開図に示すように蓋板40と、掩蓋片41と、蓋板脇片42と、掩蓋脇片43及び開封片44等を有している。
【0023】
蓋板40及び掩蓋片41は、長方形状を有し、前後方向Yに互いに接続されている。蓋板40は、後板32の上端部に接続され、掩蓋片41は、蓋板40の前端部に接続されている。蓋板脇片42は、方形状を有し、蓋板40の左右方向Xの両端に接続されている。掩蓋脇片43は、方形状を有し、掩蓋片41の左右方向Xの両端に接続されている。開封片44は、帯状に形成され、掩蓋片41の先端部に切り取り可能に接続されている。掩蓋片41と開封片44の間には、接続線(切り取り線)P1が形成されている。切り取り線P1は、左右方向Xの中央が開封片44側に凸に湾曲し、その両側が掩蓋片41側に凸に湾曲している。すなわち、切り取り線P1は、略M字状に形成されている。
【0024】
蓋板40は、
図3に示すように後板32の上端部から前板30側に延出され、
図1に示すように蓋部21の閉時に収容部20の上面を覆い開口を閉鎖する。掩蓋片41は、蓋板40の前端部から前板30側に延出されている。掩蓋片41は、前板30よりも上下幅が小さく、蓋部21の閉時に前板30の上部領域を覆うように構成されている。
図3に示すように掩蓋脇片43は、蓋板脇片42の内側に折り返されて、蓋板脇片42の内面を覆っている。
【0025】
図5に示すように掩蓋片41の先端部には、収容部20内の巻回体11から引き出されたフィルムFを切断する切断刃50が設けられている。
【0026】
切断刃50は、例えば鋸刃状に形成されている。切断刃50は、例えば金属、樹脂、バルカナイズドファイバー等の薄い板形状を有し、掩蓋片41の先端部の裏面に張り付けられている。なお、切断刃50の形状は、例えば直線状、V状、アーチ状等の従来公知のものである。また切断刃50は、底板31と前板30の間の稜線部に配置されていてもよい。
【0027】
フィルム用収容箱10の蓋板40、掩蓋片41、底板31、後板32のうちの少なくとも1か所の表面に、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ動摩擦係数が0.30以下である摩擦調整領域Aが形成されている。
【0028】
触覚接触子との静摩擦係数及び動摩擦係数は、以下の方法で測定されたものである。すなわち、摩擦調整領域Aを摩擦測定機のテーブル表面に固定し、触覚接触子を荷重100g重で、測定表面を10mm/secで40mm移動させて、摩擦調整領域Aと触覚接触子との摩擦力を測定し、静摩擦係数および動摩擦係数を算出する。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行い、試験回数5回の平均値とする。触覚接触子は、幾何学的指紋パターンを模し、指先相当の硬度を有する、摩擦測定用の接触子である。
【0029】
摩擦調整領域Aは、例えば
図4に示すように蓋板40、掩蓋片41、底板31及び後板32の全面、又は各部分の全面の90%以上の面積に形成される。例えば掩蓋片41の摩擦調整領域Aは、開封片44との間の切り取り線P1に近接し当該切り取り線P1に沿った帯状領域R1を除く範囲に形成されている。
【0030】
また、摩擦調整領域Aは、例えば
図6に示すように蓋板40と後板32の一部に形成されてもよい。例えば、摩擦調整領域Aは、蓋板40と後板32を左右方向Xに3等分した場合の中央の領域A1と、左右方向Xに5等分した場合の左右両端の領域A2のそれぞれに形成される。
【0031】
蓋板40と後板32の中央の領域A1は、主としてフィルム収容体1の使用時における滑りにくさに寄与する。フィルム収容体1の使用時には、一方の手でフィルム収容体1の左右方向Xの中央部を把持し、他方の手で巻回体11からフィルムFを引き出すことが想定される。したがって、蓋板40と後板32の中央の領域A1の左右方向Xの長さは、成人の標準的な手のひらの幅から手のひらの幅の2倍程度とするとよく、例えば70mm以上200mm以下程度が好ましい。蓋板40と後板32の中央の領域A1の左右方向Xの長さは、それぞれ蓋板40及び後板32の左右方向Xの全長の1/3以上1/2以下程度であってもよい。
【0032】
蓋板40と後板32の左右両端の領域A2は、主として、フィルム収容体1を収納場所から取り出す時、あるいはフィルム収容体1の受け渡し時における滑りにくさに寄与する。蓋板40と後板32の左右両端の領域A2の長さは、20mm以上50mm以下程度でもよい。
【0033】
また、蓋板40又は後板32の全体の面積に対して、領域A1及び領域A2が占める割合は、特に限定されないが、30%以上100%以下が好ましい。この範囲にあることで、フィルム用収容箱10を把持する際のベタツキ感が十分に減少し、かつ、持ちやすい効果が十分に生じる。
【0034】
摩擦調整領域Aは、
図7に示すように、例えば外観上不規則な形状の微細な凹凸を有するものであってもよい。
【0035】
摩擦調整領域Aは、ISO 25178で規定するコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が13μm以上になるように形成されている。ISO 25178の表面性状(面粗さ測定)は、表面粗さの評価方法を定めた国際規格である。ISO 25178において、Skはコア部の高さを表し、Spkは突出山部高さを表す。
図8は、ISO 25178におけるSk、Spkを示すイメージ図であり、図中のSvkは、突出谷部高さであり、Smr1は、突出山部とコア部を分離する負荷面積率であり、Smr2は、突出谷部とコア部を分離する負荷面積率である。
【0036】
摩擦調整領域Aは、ISO 25178で規定する最小自己相関長さSalの値が300μm以下になるように形成されている。ISO 25178において、最小自己相関長さSalは、表面の自己相関が相関値s(0≦s<1)に減衰する最も近い横方向の距離を表す。表面処理層のSalは、表面において凸部の高さが急激に変化している箇所の有無を表す指標である。Salは、表面が平坦であるほど大きくなり、凸部が多いほど小さくなる。
【0037】
次に、摩擦調整領域Aの形成方法について説明する。先ず、フィルム用収容箱10の表面に撥液性の下地剤が塗工又は印刷される。次に、その撥液性の下地剤の上に塗布剤が塗工又は印刷される。このとき、塗布剤が撥液性の下地剤によってはじかれ、微細な凹凸が形成されて、摩擦調整領域Aが形成される。
【0038】
上述の撥液性の下地剤には、例えば電子線又は紫外線の硬化型インキが用いられる。電子線又は紫外線の硬化型インキには、少なくともポリマー、モノマー、光重合開始剤を混合した主剤に、ポリエチレンワックス、反応性シリコーンを助剤として主剤に対して0~10質量%加えたものを使用する。この助剤は、インキを撥液性にするために加えられる。
【0039】
下地剤のインキの主剤のポリマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート(以下、「メチルアクリレート」と「メチルメタクリレート」とを、「(メタ)アクリレート」と表記する。以下、同様。)、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、スチレンの如き1分子中に1個の重合性ビニル基を有する、いわゆる単官能モノマーと、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの如き1分子中に2個の重合性ビニル基を有する、いわゆる2官能のモノマーと、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの如き1分子中に3個以上の重合性ビニル基を有する、いわゆる多官能モノマー、などがあげられる。
【0040】
さらに、オリゴマーとして、不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどのオリゴマーを用いることもできる。
【0041】
主剤の光重合開始剤として特に制約を設ける必要はないが、重合性の組成物に溶解可能な物質が好ましく、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤であって良い。そのような光重合開始剤としては、例えば、p-ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの如きアセトフェノン類と、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きケトン類と、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾイン類と、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、などがあげられる。
【0042】
また、光重合開始剤に光増感剤を併用しても差し支えない。このような光増感剤としては、例えば、n-ブチルアミン、n-ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミンなどがあげられる。
【0043】
撥液性の下地剤をフィルム用収容箱10の表面に塗工又は印刷する方法は、特に限定されない。撥液性の下地剤は、乾燥膜厚が約1~10μm、1~10g/m2となるような量で塗工又は印刷されることが好ましい。
【0044】
撥液性の下地剤を印刷する場合には、例えばオフセット印刷(平版印刷)やグラビア印刷等を用いてもよい。撥液性の下地剤を塗工する場合には、摩擦調整領域Aを形成する領域にベタ塗りしてもよいし、当該領域に所定のパターンで塗工してもよい。摩擦調整領域Aを形成する領域に所定のパターンで塗工する場合には、スクリーンマスク等を使用してもよい。
【0045】
撥液性の下地剤が電子線又は紫外線の硬化型のインキの場合には、下地剤は、紫外線又は電子線を照射することにより硬化される。一方、撥液性の下地剤が電子線又は紫外線の硬化型のインキでない場合には、下地剤は、乾燥等により硬化される。
【0046】
下地剤の上に供給される塗布剤は、塗工又は印刷された場合に、ハジキ現象を生じるものであれば特に限定されるものではなく、この目的に合致した塗布剤を適宜選択することができる。塗布剤は、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂を含むものであってもよく、かかる塗布剤は、撥液性の下地剤に使用するインキの主剤と同様に、少なくともポリマー、モノマー、光重合開始剤等を混合したものである。さらに、これに助剤として表面調整剤を加えたものを使用することができる。表面調整剤としては、セルロース系のレベリング剤及び天然ワックス系の滑剤などがある。
【0047】
塗布剤を塗工する場合には、摩擦調整領域Aを形成する領域にベタ塗りしてもよいし、当該領域に所定のパターンで塗工してもよい。摩擦調整領域Aを形成する領域に所定のパターンで塗工する場合には、スクリーンマスク等を使用してもよい。
【0048】
塗布剤に紫外線硬化性樹脂を使用した場合には、公知の紫外線照射装置(水銀ランプ、紫外線ランプ、白熱灯、ハロゲンランプ等)を用いて、紫外線を塗布剤に照射して塗布剤を硬化させる。また、塗布剤に電子線硬化性樹脂を使用した場合には、公知の種々の電子線、放射線等を照射可能な装置を用いて、電子線を塗布剤に照射して塗布剤を硬化させる。
【0049】
以上のように、撥液性の下地剤の上に塗布剤が塗工又は印刷されることで、2つの材料の性質の違いから、塗布剤による凸状の部分を所望の配列及び大きさで形成し、フィルム用収容箱10の表面に、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ動摩擦係数が0.30以下である摩擦調整領域Aを形成することができる。
【0050】
上記例では、摩擦調整領域Aを形成する方法が、撥液性の下地剤を用いたものであったが、これに限られるものではない。例えばモールド上のパターンをUV硬化性樹脂に押し付け、紫外光を照射し樹脂を硬化させることでパターンを複製するUVナノインプリントや、モールド上のパターンを熱可塑性樹脂に強い圧力で押し付け、加熱後冷却することでパターンを複製する熱ナノインプリント等の方式によって、摩擦調整領域Aを形成してもよい。
【0051】
図3に示すように巻回体11は、例えば円筒状の紙製の芯管70を有し、その芯管70にフィルムFが巻かれて構成されている。芯管70は、例えばフィルム用収容箱10の内部の左右方向Xの長さと同程度の長さを有している。
【0052】
フィルムFは、いわゆるラップフィルムであり、粘着性を有する。フィルムFは、触覚接触子との静摩擦係数が2.0以上である。
【0053】
本実施の形態によれば、蓋板40、掩蓋片41、底板31、後板32のうちの少なくとも1か所の表面に、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ動摩擦係数が0.30以下である摩擦調整領域Aが形成されている。触覚接触子との静摩擦係数は、フィルム用収容箱10を握ったときのグリップ性に関係し、触覚接触子との動摩擦係数は、フィルム用収容箱10を手放すときの指離れ性に関係している。これは、触覚接触子が、幾何学的指紋パターンを模し、指先相当の硬度を有する接触子であり、フィルム用収容箱10を取り扱う人の指腹部構造の触感に相応する摩擦感が得られるからである。よって、フィルム用収容箱10の表面に、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ、動摩擦係数が0.30以下である摩擦調整領域Aを形成することにより、フィルム用収容箱10が使用される際に、ユーザが力を入れてフィルム用収容箱10を握ったときのグリップ性が良好となり滑りにくくなり、かつ、手で持ちかえる際のフィルム用収容箱10に対する指離れ性が良好となりベタツキ感が減少する。また、フィルム用収容箱10の表面に段差部等を形成しないので、強度も維持される。この結果、滑りにくく、かつ強度を維持しつつ、ベタツキが少ないフィルム用収容箱10を実現することができる。
【0054】
なお、触覚接触子との静摩擦係数は0.55以上がさらにより好ましく、0.60以上がさらに好ましい。静摩擦係数の上限は特にないが、通常1.0以下である。また、触覚接触子との動摩擦係数は0.25以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましい。動摩擦係数の下限は特に示されないが、通常0.1以上である。
【0055】
摩擦調整領域Aは、ISO 25178で規定するコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が13μm以上になるように形成されている。平均的な指紋の凹凸高さは高さ約50μmであるため、コア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が、13μm以上であることで、指紋の凹凸高さの1/4を超える。これにより、指紋の凸凹が摩擦調整領域Aにひっかかりやすくなり、フィルム用収容箱10のグリップ性が向上する。
【0056】
摩擦調整領域Aは、ISO 25178で規定する最小自己相関長さSalの値が300μm以下になるように形成されている。指紋の稜線の間隔は約400μm程度であることから、最小自己相関長さSalの値が、300μm以下であることで、摩擦調整領域Aの凸凹が指紋の凹凸に十分引っかかる程度の傾斜とクリアランスを有することになる。これにより、指紋の凸凹が摩擦調整領域Aにひっかかりやすくなり、フィルム用収容箱10のグリップ性が向上する。
【0057】
フィルムFの触覚接触子との静摩擦係数が2.0以上である。これにより、フィルムFと指がしっかり引っ掛かり、フィルムFの引き出しを好適に行うことができる。フィルムFの触覚接触子との静摩擦係数は2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
フィルム用収容箱10は、上記実施の形態のものに限られず、他の構成や形状を有するものであってもよい。収容部20は、少なくとも前板、底板、後板、及び側板を有していればよく、また蓋部21は、少なくとも蓋板と掩蓋片を有していればよい。摩擦調整領域Aは、蓋板、掩蓋片、底板、後板の少なくとも一カ所に設けられていればよく、蓋板、掩蓋片、底板、後板のうちの複数個所に設けられていてもよい。摩擦調整領域Aは、蓋板、掩蓋片、底板、後板以外の側板や前板等にも設けられていてもよい。フィルムFは、食品包装用のラップフィルムに限られず、アルミホイル、クッキングシート等であってもよい。
【実施例】
【0060】
(収容箱の摩擦測定方法)
トリニティラボ製の摩擦測定機「TL201Tt」を用いてフィルム収容箱の摩擦調整領域の摩擦の測定を行った。触覚接触子はトリニティラボ製で、購入後1年以内で、汚れや摩耗の無いものを用いた。フィルム収容箱の摩擦調整領域から、15mm×50mmの大きさで測定方向に50mmの長さとなるよう切り出したサンプル片をSUS板に固定した後、当該SUS板を摩擦測定機のテーブル表面に固定した。触覚接触子を荷重100g重でサンプル片の測定表面に載せ、10mm/secで40mm移動させて、摩擦調整領域と触覚接触子との摩擦力を測定した。触覚接触子が動き始めた時の最大荷重を静摩擦力とし、これを荷重100g重で割って静摩擦係数を算出した。静摩擦力のピーク部分を除外し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から30mmまでの平均荷重を動摩擦力とし、これを荷重100g重で割って動摩擦係数を算出した。測定は、23℃、50%RHの雰囲気中で行った。サンプルを変えて計5回測定を行い、5回の平均値を測定値とした。測定方向に50mmの長さとなるよう切り出せない場合は、適宜長さを調整して良い。その場合の動摩擦係数は、静摩擦力のピーク部分を除外し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から測定領域の摩擦力が得られたところまでの平均荷重を動摩擦力とし、これを荷重100g重で割って算出して良い。
【0061】
(表面粗さ測定方法)
キーエンス製のレーザー顕微鏡「VK-X1000」を用いてフィルム収容箱の摩擦調整領域の表面粗さの測定を行った。フィルム収容箱の摩擦調整領域から、10mm×10mmの大きさで切り出したサンプル片をステージに置き、対物レンズ20倍を選択し、レーザーコンフォーカルモード、測定サイズは「標準」、測定品質は「高精度」、ピッチは「0.75μm」を各々選択し、高さ測定を行った。凸部または繰り返し単位が少なくとも20個以上計測範囲内に入るように、必要に応じて貼り合わせ測定を行った。得られた高さ画像について、画像全体に基準面設定を行った後、計測領域を全領域として、Sk、Spk、Salの算出を行った。Salはs=0.2として算出を行った。測定箇所を変えて計5回測定を行い、5回の平均値を測定値とした。
【0062】
(持ちやすさ評価方法)
30cm×50mのフィルム用収容箱の長手方向の中央部の15cm幅の領域に摩擦調整の加工を行い、20名のモニターが、当該フィルム用収容箱を用いて大皿、どんぶりにフィルムをかける動作を行い、一連の動作を通じ持ちやすさ(滑りにくさ、ベタツキ感)をどのように感じたのかについて次の五段階評価で評点をつけた。そして、評点の平均点に基づいて、持ちやすさの官能評価を行った。
評点:
5点:とても持ち心地が良い
4点:まあ持ち心地が良い
3点:どちらともいえない
2点:やや持ち心地が悪い
1点:とても持ち心地が悪い
評価:
◎:平均評点4.4点以上
〇:平均4.2点以上4.4点未満
△:平均4.0点以上4.2点未満
×:平均4.0点未満
【0063】
(フィルムの摩擦測定方法)
トリニティラボ製の静動摩擦測定機「TL201Tt」を用いてフィルムの摩擦の測定を行った。触覚接触子は購入後1年以内で汚れや摩耗の無いものを用いた。SUS板に30mm×70mmに切り出したろ紙(アドバンテック製定性ろ紙、No.2)を両面テープで貼り付けたものをフィルム固定片として用いた。測定するフィルム片をろ紙を覆うようにフィルム固定片に載せ、フィルムとSUS板を両面テープでシワが入らないよう注意しながら固定した。尚、フィルムは収容箱からの引出方向(MD方向)とろ紙の長手方向が一致するように貼り付けた。フィルムを貼り付けたフィルム固定片を摩擦測定機のテーブル表面に固定し、触覚接触子を荷重10g重で、ろ紙上のフィルム表面を10mm/secで40mm移動させて、フィルム片と触覚接触子との摩擦力を測定し、静摩擦係数を算出した。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行った。サンプルを変えて計5回測定を行い、5回の平均値を測定値とした。
【0064】
以上の測定及び評価を、次の実施例1乃至6、比較例1、2の摩擦調整領域について行った。それらの結果を
図9にまとめて示す。
【0065】
(実施例1)
下地剤に、T&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤に、T&KTOKA製GLAを用いた。そして、王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを2回印刷し、その上からT&KTOKA製GLAを35℃で印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が0.65で、動摩擦係数が0.15であった。持ちやすさ評価は、「◎」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が14μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が83μmであった。
【0066】
(実施例2)
下地剤に、T&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤に、T&KTOKA製HTA-Wを用いた。そして、王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを2回印刷し、その上からT&KTOKA製HTA-Wを35℃で印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が1.00で、動摩擦係数が0.18であった。持ちやすさ評価は、「◎」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が15μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が90μmであった。
【0067】
(実施例3)
下地剤に、T&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤に、T&KTOKA製GLAを用いた。そして、王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを
図10の格子状のパターンB1で印刷し、その上からT&KTOKA製GLAを30℃で印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が0.59で、動摩擦係数が0.23であった。持ちやすさ評価は、「〇」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が18μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が146μmであった。
【0068】
(実施例4)
下地剤に、T&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤に、T&KTOKA製HTA-Wを用いた。そして、王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを
図10の格子状のパターンB1で印刷し、その上からT&KTOKA製HTA-Wを30℃で印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が0.90で、動摩擦係数が0.24であった。持ちやすさ評価は、「〇」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が17μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が153μmであった。
【0069】
(実施例5)
下地剤に、T&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤に、T&KTOKA製GLAを用いた。そして、王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを2回印刷し、その上からT&KTOKA製GLAを
図11のドット状のパターンB2で25℃で印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が0.51で、動摩擦係数が0.28であった。持ちやすさ評価は、「△」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が21μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が216μmであった。
【0070】
(実施例6)
下地剤にT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤に、T&KTOKA製HTA-Wを用いた。王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを2回印刷し、その上からT&KTOKA製HTA-Wを
図11のドット状のパターンB2で25℃で印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が0.80で、動摩擦係数が0.29であった。持ちやすさ評価は、「△」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が22μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が245μmであった。
【0071】
(比較例1)
下地剤は使用せず、塗布剤にT&KTOKA製HTA-Wを用いた。そして、王子マテリア製サンコートにT&KTOKA製HTA-Wのみを35℃で印刷し、その後UV硬化させた。触覚接触子との静摩擦係数が0.63で、動摩擦係数が0.38であった。持ちやすさ評価は、「×」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が5μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が340μmであった。
【0072】
(比較例2)
下地剤に、T&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを用い、塗布剤は使用しなかった。そして、王子マテリア製サンコートにT&K TOKA製 UV HJK下刷ニスGを印刷し、その後UV硬化した。触覚接触子との静摩擦係数が0.39で、動摩擦係数が0.23であった。持ちやすさ評価は、「×」であった。ISO 25178のコア部のレベル差Skと突出山部高さSpkの値の合計値が6μmであった。ISO 25178の最小自己相関長さSalの値が207μmであった。
【0073】
図12に示すように摩擦調整領域が、触覚接触子との静摩擦係数が0.50以上かつ動摩擦係数が0.30以下であることで、持ちやすさが向上することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、滑りにくく、かつ強度を維持しつつ、ベタツキ感が少ないフィルム用収容箱を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 フィルム収容体
10 フィルム用収容箱
11 巻回体
20 収容部
21 蓋部
30 前板
31 底板
32 後板
34 側板
40 蓋板
41 掩蓋片
F フィルム
A 摩擦調整領域