IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スクロール圧縮機 図1
  • 特許-スクロール圧縮機 図2
  • 特許-スクロール圧縮機 図3
  • 特許-スクロール圧縮機 図4
  • 特許-スクロール圧縮機 図5
  • 特許-スクロール圧縮機 図6
  • 特許-スクロール圧縮機 図7
  • 特許-スクロール圧縮機 図8
  • 特許-スクロール圧縮機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20241220BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
F04C18/02 311Y
F04C29/02 311F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021077628
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171161
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】三俣 圭史
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘文
(72)【発明者】
【氏名】竹内 真実
(72)【発明者】
【氏名】池▲高▼ 剛士
(72)【発明者】
【氏名】濱元 伸也
(72)【発明者】
【氏名】玉置 斉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-105909(JP,A)
【文献】特開2005-240676(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085752(WO,A1)
【文献】特開2009-275640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
該電動機によって駆動されることで、水平方向に延びる軸線回りに回転する回転軸と、
該回転軸の回転に伴って前記軸線を中心として旋回する旋回スクロールと、
前記電動機、及び前記旋回スクロールを収容する第一ハウジングと、
該第一ハウジングに固定され、前記旋回スクロールに対して前記軸線方向一方側から対向することで圧縮室を形成する固定スクロールと、
前記第一ハウジングに対して前記軸線方向一方側から固定されることで前記固定スクロールを覆う第二ハウジングと、
前記固定スクロールの前記軸線方向一方側を向く主面に設けられ、前記軸線を中心とする環状をなすことで間に環状流路を形成する一対のシール部と、
前記第二ハウジング内に形成され、前記環状流路に潤滑油を供給する油貯留部と、
を備えるスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記主面には前記軸線を中心とする環状の凹溝が形成され、前記一対のシール部は前記凹溝の内部で径方向に間隔をあけて配置されることで前記環状流路を形成している請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記主面には前記軸線を中心とする環状の凹溝が形成され、
該凹溝に収容された環状の基部、及び該基部から前記軸線方向一方側に突出するとともに径方向に間隔をあけて配置された一対の凸状部を有するシール体をさらに備え、
前記一対の凸状部が前記一対のシール部を形成している請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記油貯留部と前記環状流路との間に設けられた減圧機構をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記固定スクロールの内部に形成され、前記環状流路における前記軸線よりも上側の部分と連通する油供給流路をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、ハウジングに固定された固定スクロールと、この固定スクロールと対向することで間に圧縮室を形成する旋回スクロールと、を主に備えている。旋回スクロールが回転軸線から偏心した位置で旋回することで圧縮室の容積が時間変化して冷媒を圧縮することができる。
【0003】
ここで、自動車分野では通常スクロール圧縮機を横置きする。つまり、上述の回転軸線を水平方向に向けた状態でスクロール圧縮機が配置される。この場合、各部を潤滑するための潤滑油が重力に従ってハウジング内の下部に設けられた貯油室に貯められる。下記特許文献1には、貯油室からハウジングの上部に向かって潤滑油を導く搬油路としての環状の凹溝が固定スクロールの端板に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-111389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように単に凹溝を形成するのみでは、圧力によって潤滑油が凹溝の外側に染み出す虞がある。その結果、目的とする領域に潤滑油が行き渡らず、潤滑性能が損なわれてしまう。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、潤滑性能がさらに向上したスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るスクロール圧縮機は、電動機と、該電動機によって駆動されることで、水平方向に延びる軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸の回転に伴って前記軸線を中心として旋回する旋回スクロールと、前記電動機、及び前記旋回スクロールを収容する第一ハウジングと、該第一ハウジングに固定され、前記旋回スクロールに対して前記軸線方向一方側から対向することで圧縮室を形成する固定スクロールと、前記第一ハウジングに対して前記軸線方向一方側から固定されることで前記固定スクロールを覆う第二ハウジングと、前記固定スクロールの前記軸線方向一方側を向く主面と前記第二ハウジングとの間に設けられ、前記軸線を中心とする環状をなすことで間に環状流路を形成する一対のシール部と、前記第二ハウジング内に形成され、前記環状流路に潤滑油を供給する油貯留部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、潤滑性能がさらに向上したスクロール圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るスクロール圧縮機の構成を示す断面図である。
図2】本開示の実施形態に係るスクロール圧縮機の要部拡大断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る旋回スクロールを軸線方向他方側から見た平面図である。
図4】本開示の実施形態に係る各部の寸法を示す断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る固定スクロール、及び第一ハウジングを軸線方向一方側から見た図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
図7】本開示の実施形態に係る旋回スクロールが図4の状態からわずかに旋回した状態を示す断面図である。
図8】本開示の実施形態に係る旋回スクロールが図7の状態からさらに旋回した状態を示す断面図である。
図9】本開示の実施形態に係るシール部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(スクロール圧縮機の構成)
以下、本開示の実施形態に係るスクロール圧縮機100について、図1から図9を参照して説明する。スクロール圧縮機100は、例えば車両用の空調装置の冷媒を圧縮するために用いられる。図1に示すように、スクロール圧縮機100は、回転軸1と、電動機2と、圧縮機本体3と、ハウジング4と、カバー5と、上部軸受6(軸受部)と、下部軸受7と、ドライブブッシュ8と、シール部9と、を備えている。
【0011】
(回転軸の構成)
回転軸1は、軸線Oに沿って延びるとともに、当該軸線O回りに回転可能とされている。軸線Oは水平方向に延びている。つまり、このスクロール圧縮機100は横置き型である。なお、ここで言う水平方向とは実質的な水平を指すものであり、製造上の誤差や設計上の公差は許容される。回転軸1は、回転軸本体10と、小径部11と、大径部12と、偏芯軸部13と、を有している。回転軸本体10は、軸線Oを中心とする円柱状をなしている。回転軸本体10は、軸線O方向の全域にわたって一様な径寸法を有している。回転軸本体10の外周面には、電動機2のロータ21(後述)が取り付けられている。
【0012】
軸線O方向における回転軸本体10の一方側(下側)には、小径部11が設けられている。小径部11は、軸線Oを中心とする円柱状をなすとともに、回転軸本体10よりも小さな径寸法を有している。小径部11は、ハウジング4に取り付けられた下部軸受7によって軸線O方向一方側(下側)から支持されている。
【0013】
回転軸本体10の軸線O方向他方側(上側)には、大径部12が設けられている。大径部12は、軸線Oを中心とする円柱状をなすとともに、回転軸本体10よりも大きな径寸法を有している。大径部12は、ハウジング4に固定された上部軸受6によって径方向から支持されている。上部軸受6は、軸受本体60と、軸受支持部61と、を有している。軸受本体60はジャーナル軸受である。軸受支持部61は、ハウジング4は軸線Oを中心とする円盤状をなし、ハウジング4の内周面に固定されている。
【0014】
大径部12のさらに上側(軸線O方向他方側)には、偏芯軸部13が設けられている。偏芯軸部13は、大径部12から軸線O方向他方側に向かって突出している。偏芯軸部13は、軸線Oと平行をなすとともに、当該軸線Oから径方向にずれた位置に延びる偏芯軸Aを中心とする円柱状をなしている。したがって、回転軸1が回転するとき、偏芯軸部13は軸線O回りに公転(旋回)する。
【0015】
(モータの構成)
電動機2は、回転軸1に回転駆動力を与える。電動機2は、ロータ21と、ステータ22と、を有している。ロータ21は、回転軸本体10に固定されている。ロータ21は、軸線Oを中心とする円筒状をなしている。詳しくは図示しないが、ロータ21は、複数の磁石を有している。ステータ22は、このロータ21を外周側から覆っている。ステータ22は、複数の鋼板を軸線O方向に積層し、さらに銅線を巻回する(コイルを構成する)ことで形成されている。ステータ22に通電することで、ステータ22とロータ21との間に電磁力が発生し、ロータ21に軸線O回りの回転力が与えられる。これにより、回転軸1が軸線O回りに回転する。
【0016】
(圧縮機本体の構成)
圧縮機本体3は、電動機2による回転軸1の回転によって駆動する。圧縮機本体3は、固定スクロール31と、旋回スクロール32と、自転防止機構50と、油供給流路92と、を有している。固定スクロール31は、軸線Oを中心とする円盤状の第一端板31aと、この第一端板31aの軸線O方向一方側(下側)に設けられた第一渦巻板31bと、を有している。第一渦巻板31bは、軸線Oを中心として渦巻状に延びている。固定スクロール31は、ハウジング4に固定されている。
【0017】
旋回スクロール32は、円盤状の第二端板32aと、この第二端板32aの軸線O方向他方側(上側)に設けられた第二渦巻板32bと、ボス部32cと、を有している。第二渦巻板32bは、軸線Oを中心として渦巻状に延びている。第二渦巻板32bの軸線O方向の寸法は、上述した第一渦巻板31bの軸線O方向の寸法と同等である。このように第一渦巻板31bと第二渦巻板32bとが軸線O方向から噛み合うことで、両者の間に圧縮室が形成されている。
【0018】
ボス部32cは、第二端板32aから軸線O方向一方側(下側)に向かって突出する円筒状の部分である。ボス部32cは、ドライブブッシュ8を介して回転軸1の偏芯軸部13に取り付けられている。偏芯軸部13が軸線O回りに旋回することで、ドライブブッシュ8を通じて旋回力が旋回スクロール32に伝達される。これにより、旋回スクロール32は軸線O回りに旋回する。
【0019】
旋回スクロール32自身の回転(自転)は、自転防止機構50によって規制されている。図3に示すように、自転防止機構50は、ピン51と、案内凹部52と、リング53と、を有している。ピン51は上述の軸受支持部61の軸線O方向一方側を向く面に固定されている。ピン51は軸受支持部61から軸線O方向一方側に突出している。ピン51は、軸線Oの周方向に間隔をあけて複数(一例として6個)配列されている。案内凹部52は、旋回スクロール32の第二端板32aの裏面32s(軸線O方向他方側を向く面)に形成されている。
【0020】
案内凹部52は、裏面32s上で偏芯軸Aの周方向に間隔をあけて複数(一例として6個)形成されている。案内凹部52は、軸線O方向から見て円形をなすとともに、軸線O方向一方側に向かって凹んでいる。それぞれの案内凹部52にはピン51が1つずつ挿入されている。また、案内凹部52の内周側には環状のリング53が取り付けられている。案内凹部52の内周面(リング53)がピン51に当接しながら円運動をすることで、旋回スクロール32は自転することなく軸線O回りに旋回することが可能とされている。
【0021】
旋回スクロール32が旋回することによって、上述の圧縮室の容積が時間変化し、当該圧縮室内を径方向外側から内側に冷媒が送られる中途で圧縮され、圧力が上がる。高圧状態となった冷媒は、固定スクロール31の第一端板31aに形成された開口部Hを通じてハウジング4内に導かれる。
【0022】
図1に示すように、ハウジング4は、電動機2、圧縮機本体3を収容する第一ハウジング4aと、第一ハウジング4aの軸線O方向一方側に設けられることで固定スクロール31を覆う第二ハウジング4bと、第一ハウジング4aに一体に設けられ、電装品を収容するためのカバー5と、を有している。図2に示すように、第二ハウジング4bの内側には、軸線O方向他方側に向かって突出する隔壁46が設けられている。この隔壁46は、第二ハウジング4bの内部の空間を高圧室45と油貯留部41とに区画している。高圧室45と油貯留部41との境界には、高圧冷媒に含まれる潤滑油を分離するためのオイルセパレータ44が取り付けられている。オイルセパレータ44によって分離された潤滑油は重力に従って油貯留部41に貯留される。
【0023】
油貯留部41の底部には、潤滑油を導く導入流路42が形成されている。導入流路42は、軸線O方向に延びている。導入流路42の下流側の端部は、第二ハウジング4bの軸線O方向他方側を向く面(ハウジング端面4s)上で開口している。導入流路42の内部には減圧機構43が挿入されている。減圧機構43は、螺旋ピン、オリフィス、キャピラリー等の部品間で作る狭隘流路などである。。減圧機構43を通過することで、潤滑油の供給圧力が低下する。
【0024】
固定スクロール31の第一端板31aには、一対のシール部9によって環状流路91が形成されている。図5図6に示すように、第一端板31aの軸線O方向一方側を向く面(主面31s)には、軸線Oを中心とする環状の凹溝31rが形成されている。この凹溝31rには、径方向に間隔をあけて径の異なる一対のシール部9(外周側シール部9a、及び内周側シール部9b)が配置されている。一例として外周側シール部9aは矩形の断面形状を有するガスケットである。内周側シール部9bは円形の断面形状を有するOリングである。各シール部9は、軸線Oを中心とする環状をなしている。これらシール部9同士の間の空間は環状流路91とされている。環状流路91の最も下方の部分は上記の導入流路42に連通している。導入流路42を通じて環状流路91に導かれた潤滑油は、圧力によって周方向に上方に向かって流れる。
【0025】
環状流路91の最も上側の部分は、油供給流路92に連通している。油供給流路92は軸線Oよりも上側の領域に形成されている。図2に示すように、油供給流路92は、固定スクロール31の内部に形成された第一部分33と、軸受支持部61に形成されるとともにこの第一部分33に連通する第二部分62と、供給孔93と、を有している。第一部分33は、固定スクロール31を軸線O方向に貫通している。第一部分33の軸線O方向一方側の端部は上記の環状流路91に接続されている。第二部分62は、軸線O方向に延びた後、旋回スクロール32に形成された案内凹部52に向かって向きを変えて延びている。第二部分62の下流側の端部には供給孔93が形成されている。供給孔93は、旋回スクロール32の旋回に伴って案内凹部52を臨む(連通する)ことが可能とされている。
【0026】
ここで、旋回スクロール32の旋回半径ρは、上記の自転防止機構50によって決定される。具体的には、旋回半径ρは、案内凹部52の半径(つまり、リング53の内周側の半径)からピン51の半径を減算した値となる。さらに、図4に示すように、旋回スクロール32の外周面からリング53の内周面までの最短距離をAとし、供給孔93の直径をφとする。この場合、ρ>A、かつρ>φとなるように各部の寸法が設定されている。また、φ>Aの関係も満たしている。
【0027】
(作用効果)
次いで、スクロール圧縮機100の動作について説明する。スクロール圧縮機100を運転するに当たってはまず、電動機2に電力を供給する。これにより、回転軸1が軸線O回りに回転する。回転軸1の回転に伴って旋回スクロール32が軸線O回りに旋回する。この旋回に伴って圧縮室の容積が時間変化し、冷媒が次第に圧縮される。圧縮された冷媒は高圧室45を通過した後、外部に導かれる。
【0028】
一方で、潤滑油は、油貯留部41から導入流路42に導かれる。導入流路42中で減圧機構43によって減圧された後、潤滑油は環状流路91に流入する。圧力によって環状流路91を上方へ流れた潤滑油は油供給流路92に導かれる。この油供給流路92を通過した潤滑油は、旋回スクロール32の旋回位置に応じて、それぞれ異なる部分に供給される。図4に示すように、旋回スクロール32が最も上方に位置するときには、供給孔93が案内凹部52の内部を臨んだ状態となる。これにより、案内凹部52に潤滑油が供給される。一方で、図7に示すように、旋回スクロール32が上記の状態からわずかに旋回したときには、供給孔93は第二端板32aの裏面32sと対向する。これにより、裏面32sが潤滑される。さらに、図8に示すように、図7の状態からさらに旋回スクロール32が旋回すると供給孔93は旋回スクロール32の外周側に露出した状態となる。これにより、旋回スクロール32と固定スクロール31の摺動部に潤滑油が供給される。このように、上述した寸法関係を満たすことにより、旋回スクロール32の旋回位置に応じて3つの異なる部分に潤滑油を供給することが可能とされている。
【0029】
ここで、本実施形態のように横置き型のスクロール圧縮機100では、油貯留部41からハウジング4の上部に向かって潤滑油を導く流路を形成する必要がある。そこで、本実施形態では、一対のシール部9によって環状流路91が形成されている。シール部9は第一ハウジング4aと第二ハウジング4bとの間のシール性を確保することを主目的として設けられるものである。そのため、シール部9によって環状流路91を形成することで、副次的な機能として当該環状流路91の外側に潤滑油が漏洩する可能性を低減することが可能となる。その結果、目的とする位置に潤滑油を安定的に供給することが可能となる。また、1つではなく一対のシール部9を備えることから、第一ハウジング4aと第二ハウジング4bとの間のシール性を高めることもできる。その結果、スクロール圧縮機100の性能をさらに向上させることができる。
【0030】
また、上記のスクロール圧縮機100では、一対のシール部9は凹溝31rの内部で径方向に間隔をあけて配置されることで環状流路91を形成している。この構成によれば、凹溝31rの内部に一対のシール部9を配置することのみによって、廉価かつ容易に環状流路91を形成することができる。
【0031】
さらに、上記のスクロール圧縮機100は、油貯留部41と環状流路91との間に設けられた減圧機構43をさらに備える。この構成によれば、減圧機構43を通過することで比較的に圧力が下がった状態の潤滑油が環状流路91に供給される。これにより、高圧状態の潤滑油が供給される場合に比べて、環状流路91から潤滑油が漏洩する可能性を低減することができる。
【0032】
加えて、上記のスクロール圧縮機100は、環状流路91における軸線Oよりも上側の部分と連通する油供給流路92をさらに備える。この構成によれば、環状流路91から供給された潤滑油を、油供給流路92を通じてスクロール圧縮機100の上側の領域に導くことができる。上側から供給された潤滑油は重力に従って下側に向かって流れる中途で各部を潤滑する。これにより、スクロール圧縮機100全体の潤滑性能を向上させることができる。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、一対のシール部9として、外周側シール部9aと内周側シール部9bを設ける構成について説明した。しかしながら、シール部9の態様はこれに限定されず、変形例として図9に示す構成を採ることも可能である。同図の例では、凹溝31rに環状のシール体9´が挿入されている。シール体9´はガスケットである。シール体9´は、円環状の基部9cと、この基部9cから突出する一対の凸状部9a´、9b´と、を有している。凸状部9a´、9b´は、径方向に間隔をあけて配置されている。つまり、凸状部9a´、9b´が上述の一対のシール部9に対応している。この構成によれば、シール体9´として基部9cと一対の凸状部9a´、9b´とが一体に形成されているため、環状流路91から潤滑油が漏洩する可能性をさらに低減することができる。
【0034】
さらに、上記実施形態では、1つの案内凹部52に対して油供給流路92を通じて潤滑油が供給される例について説明した。しかしながら、油供給流路92を複数の案内凹部52に連通させる構成を採ることも可能である。
【0035】
<付記>
各実施形態に記載のスクロール圧縮機100は、例えば以下のように把握される。
【0036】
(1)第1の態様に係るスクロール圧縮機100は、電動機2と、該電動機2によって駆動されることで、水平方向に延びる軸線O回りに回転する回転軸1と、該回転軸1の回転に伴って前記軸線Oを中心として旋回する旋回スクロール32と、前記電動機2、及び前記旋回スクロール32を収容する第一ハウジング4aと、該第一ハウジング4aに固定され、前記旋回スクロール32に対して前記軸線O方向一方側から対向することで圧縮室を形成する固定スクロール31と、前記第一ハウジング4aに対して前記軸線O方向他方側から固定されることで前記固定スクロール31を覆う第二ハウジング4bと、前記固定スクロール31の前記軸線O方向一方側を向く主面31sに設けられ、前記軸線Oを中心とする環状をなすことで間に環状流路91を形成する一対のシール部9と、前記第二ハウジング4b内に形成され、前記環状流路91に潤滑油を供給する油貯留部41と、を備える。
【0037】
上記構成によれば、一対のシール部9によって環状流路91が形成される。これにより、環状流路91の外側に潤滑油が漏洩する可能性が低減される。その結果、目的とする位置に潤滑油を安定的に供給することが可能となる。また、一対のシール部9を備えることから、第一ハウジング4aと第二ハウジング4bとの間のシール性を高めることもできる。
【0038】
(2)第2の態様に係るスクロール圧縮機100では、前記主面31sには前記軸線Oを中心とする環状の凹溝31rが形成され、前記一対のシール部9は前記凹溝31rの内部で径方向に間隔をあけて配置されることで前記環状流路91を形成している。
【0039】
上記構成によれば、凹溝31rの内部に一対のシール部9を配置することのみによって、廉価かつ容易に環状流路91を形成することができる。
【0040】
(3)第3の態様に係るスクロール圧縮機100では、前記主面31sには前記軸線Oを中心とする環状の凹溝31rが形成され、該凹溝31rに収容された環状の基部9c、及び該基部9cから前記軸線O方向一方側に突出するとともに径方向に間隔をあけて配置された一対の凸状部9a´、9b´を有するシール体9´をさらに備え、前記一対の凸状部9a´、9b´が前記一対のシール部9を形成している。
【0041】
上記構成によれば、凹溝に一つのシール体9´を配置することのみによって容易に環状流路91を形成することができる。また、シール体9´として基部9cと一対の凸状部9a´、9b´とが一体に形成されているため、環状流路91から潤滑油が漏洩する可能性をさらに低減することができる。
【0042】
(4)第4の態様に係るスクロール圧縮機100は、前記油貯留部41と前記環状流路91との間に設けられた減圧機構43をさらに備える。
【0043】
上記構成によれば、減圧機構43を通過することで比較的に圧力が下がった状態の潤滑油が環状流路91に供給される。これにより、高圧状態の潤滑油が供給される場合に比べて、環状流路91から潤滑油が漏洩する可能性を低減することができる。
【0044】
(5)第5の態様に係るスクロール圧縮機100は、前記固定スクロール31の内部に形成され、前記環状流路91における前記軸線Oよりも上側の部分と連通する油供給流路92をさらに備える。
【0045】
上記構成によれば、環状流路91から供給された潤滑油を、油供給流路92を通じてスクロール圧縮機100の上側の領域に導くことができる。上側から供給された潤滑油は重力に従って下側に向かって流れる中途で各部を潤滑する。これにより、スクロール圧縮機100全体の潤滑性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
100 スクロール圧縮機
1 回転軸
2 電動機
3 圧縮機本体
4 ハウジング
4a 第一ハウジング
4b 第二ハウジング
4s ハウジング端面
5 カバー
6 上部軸受
7 下部軸受
8 ドライブブッシュ
9 シール部
9´ シール体
9a 外周側シール部
9b 内周側シール部
9a´,9b´ 凸状部
10 回転軸本体
11 小径部
12 大径部
13 偏芯軸部
21 ロータ
22 ステータ
31 固定スクロール
31a 第一端板
31b 第一渦巻板
31s 主面
32 旋回スクロール
32a 第二端板
32b 第二渦巻板
32c ボス部
32s 裏面
33 第一部分
41 油貯留部
42 導入流路
43 減圧機構
44 オイルセパレータ
45 高圧室
46 隔壁
50 自転防止機構
51 ピン
52 案内凹部
53 リング
60 軸受本体
61 軸受支持部
62 第二部分
91 環状流路
92 油供給流路
93 供給孔
A 偏芯軸
H 開口部
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9