(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
F27D 7/02 20060101AFI20241220BHJP
F27D 7/04 20060101ALI20241220BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20241220BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20241220BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20241220BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F27D7/02 Z
F27D7/04
F27D11/02 Z
F27D17/00 101D
F27D17/00 101Z
F27B17/00 B
B29C35/04
(21)【出願番号】P 2021098826
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武文
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-101512(JP,A)
【文献】特開2012-78048(JP,A)
【文献】特開2008-39376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/02
F27D 7/04
F27D 11/02
F27D 17/00
F27B 17/00
B29C 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に炉本体を備える装置内に外気を取り込むためのブロワと、
前記ブロワによって装置内を流れる気体を加熱する上流側ヒーターと、
前記上流側ヒーターよりも気体が流れる方向の下流側に配され、かつ気体を加熱する下流側ヒーターと、
前記下流側ヒーターによって加熱された後に、前記炉本体の内部に流入した気体を撹拌するファンと、
前記炉本体の内部から装置外に気体を排気するための流路から分岐するように設けられて、前記上流側ヒーターから前記下流側ヒーターに至る流路中に前記炉本体の内部から排出された気体の一部を送り込む分岐流路と、
前記分岐流路の開放と遮断を切り替えるダンパーと、
を備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記炉本体の内部から装置外に気体を排気するための二重管煙突を備えると共に、
前記二重管煙突における内管の内側の通路、及び前記内管と外管との間の環状の通路のうちの一方が、前記炉本体の内部から装置外に気体を排気するための流路として用いられ、他方が前記ブロワによって取り込まれた外気を装置内に送るための流路として用いられることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記炉本体を覆う断熱材を備えると共に、
前記ブロワによって取り込まれた外気は、前記断熱材のうち前記炉本体の下面側を覆う部分と前記筐体との間の隙間、前記断熱材のうち前記炉本体の両側面側を覆う部分と前記筐体との間の隙間、及び前記断熱材のうち前記炉本体の上面側を覆う部分と前記筐体との間の隙間の順に流れた後に、前記上流側ヒーターが配された領域に送り込まれるように流路が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次加硫炉や恒温槽として用いることのできる加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置においては、炉内に加熱した気体を流し、加熱対象品の加熱に用いた気体の一部を循環させて再利用することによって、省エネルギー化を図る技術が知られている。しかしながら、このような方式の加熱装置は、加熱対象品の材料の種類によっては用いることができず、加熱に用いた気体を全て排気させる方式の加熱装置を用いる必要がある。このように、従来、加熱対象品の材料の種類に応じて、方式の異なる加熱装置を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平5-39431号公報
【文献】実公平6-36430号公報
【文献】実公平7-11946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、適用可能な加熱対象品の材料の種類を多くすることのできる加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、本発明の加熱装置は、筐体内に炉本体を備える装置内に外気を取り込むためのブロワと、前記ブロワによって装置内を流れる気体を加熱する上流側ヒーターと、前記上流側ヒーターよりも気体が流れる方向の下流側に配され、かつ気体を加熱する下流側ヒーターと、前記下流側ヒーターによって加熱された後に、前記炉本体の内部に流入した気体を撹拌するファンと、前記炉本体の内部から装置外に気体を排気するための流路から分岐するように設けられて、前記上流側ヒーターから前記下流側ヒーターに至る流路中に前記炉本体の内部から排出された気体の一部を送り込む分岐流路と、前記分岐流路の開放と遮断を切り替えるダンパーと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ダンパーによって、分岐流路を開放することで、加熱対象品の加熱に用いた気体の一部を再利用することができ、分岐流路を遮断することで、加熱対象品の加熱に用いた気体を全て排気させることができる。これにより、本発明の加熱装置に適用可能な加熱対象品の材料の種類を多くすることができる。
【0008】
また、前記炉本体の内部から装置外に気体を排気するための二重管煙突を備えると共に、前記二重管煙突における内管の内側の通路、及び前記内管と外管との間の環状の通路のうちの一方が、前記炉本体の内部から装置外に気体を排気するための流路として用いられ、他方が前記ブロワによって取り込まれた外気を装置内に送るための流路として用いられるとよい。
【0009】
これにより、ブロワによって取り込まれた外気は、装置内に送られる過程で、排気される気体と熱交換が行われる。これにより、加熱効率を高めつつ、装置の外部に逃げる熱量
を抑制することができる。
【0010】
更に、前記炉本体を覆う断熱材を備えると共に、前記ブロワによって取り込まれた外気は、前記断熱材のうち前記炉本体の下面側を覆う部分と前記筐体との間の隙間、前記断熱材のうち前記炉本体の両側面側を覆う部分と前記筐体との間の隙間、及び前記断熱材のうち前記炉本体の上面側を覆う部分と前記筐体との間の隙間の順に流れた後に、前記上流側ヒーターが配された領域に送り込まれるように流路が設けられていることも好適である。
【0011】
これにより、ブロワによって取り込まれた外気が上流側ヒーターに送られるまでの間に、断熱材から外部に逃げた熱により加熱される。また、装置外部に逃げる熱量を抑制することができる。
【0012】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、適用可能な加熱対象品の材料の種類を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係る加熱装置を上方から見た内部構成図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例に係る加熱装置を側方から見た内部構成図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例に係る加熱装置を正面から見た内部構成図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例に係る加熱装置を側方から見た内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(実施例)
図1~
図4を参照して、本発明の実施例に係る加熱装置について説明する。本実施例に係る加熱装置は、ゴム製品を二次加硫するための加硫炉として好適に用いられる他、恒温槽や乾燥装置としても適用可能である。
【0017】
図1~
図4は、いずれも本実施例に係る加熱装置の内部構成を簡略的に示したもので、
図1は上方から、
図2及び
図4は側方から、
図3は正面から、それぞれ加熱装置を見た内部構成を示している。いずれの図においても、特徴的な構成を簡略的に示しており、便宜上、図示した構成における視線方向の位置(距離)は異なる場合もある。また、便宜上、奥行線を省略したり、他の図で示した構成を省略したりしている。なお、図中の太線は、隔壁として機能する部分を必要に応じて強調して示している。また、図中の矢印F1~F17は気体の流れる方向を示している。本実施例に係る加熱装置においては、加熱対象品の加熱に用いた気体の一部を循環させる循環方式と、加熱対象品の加熱に用いた気体を全て排気させる全排気方式の2つの方式を切り替えることができるように構成されている。
図1及び
図3においては、双方の方式における気体の流れ方を示しており、
図2においては、循環方式における気体の流れ方を示し、
図4においては、全排気方式における気体の流れ方を示している。
【0018】
以下の説明においては、
図1、
図2及び
図4中の左側、
図3中の紙面手前側を、装置の「前側」と称し、
図1、
図2及び
図4中の右側、
図3中の紙面奥側を、装置の「後側」と
称する。また、
図1中の上下側、
図2及び
図4中の紙面手前と奥側、
図3中の左右側を、装置の「側面側」又は「両側面側」と称する。更に、
図1中の紙面手前側と奥側、
図2~
図4中の上側と下側を、それぞれ「上面側」「下面側」と称する。
【0019】
<加熱装置の構成>
本実施例に係る加熱装置1は、筐体10と、筐体内に設けられる炉本体20と、筐体内に配され、かつ炉本体20を覆う断熱材30(各図中のハッチングで示す部材)とを備えている。本実施例に係る筐体10は、内部が隔壁によって前側と後側に隔てられており、筐体内部の前側に炉本体20が設けられている。また、筐体10の後側には、装置内に外気を取り込むためのブロワ40と、加熱対象品の加熱に利用した気体を装置外に排気するための二重管煙突50が設けられている。また、筐体内部の後側には各種部材を駆動するための駆動機構や制御機器(いずれも不図示)が設けられている。更に、筐体10の前側には筐体10の開口部を開いたり閉じたりするための扉11が設けられている。
【0020】
炉本体20の内部には、加熱対象品を設置する回転枠体21が設けられている。本実施例では、2か所に回転枠体21が設けられている。なお、回転枠体21は不図示の駆動源及び駆動機構によって、加熱中、回転するように構成されている。また、炉本体20の上面側においては、所望の方向に気体が流れるようにするための流路を形成するように隔壁(太線参照)が構成されている。この流路中に、上流側ヒーター61と、この上流側ヒーター61よりも気体が流れる方向の下流側に配される下流側ヒーター62が設けられている。上流側ヒーター61は、効率よく外気を加熱するために、フィン付きのシーズヒーターなどを好適に用いることができる。これに対して、下流側ヒーター62は、加熱対象品の加熱に用いられた気体が再利用され、タールや析出物が付着し得るため、清掃し易いように、フィンなしのシーズヒーターなどを用いると好適である。
【0021】
また、炉本体20には、下流側ヒーター62によって加熱された後に、炉本体20の内部に流入した気体を撹拌するためのファン70が設けられている。なお、ファン70は、筐体10の外部に配される駆動源71と、駆動源71によって回転する回転軸72と、回転軸72の先端に固定され、かつ炉本体内部に配されるファン本体73とを備えている。
【0022】
断熱材30は、炉本体20の上面側と下面側と両側面側と後側とをそれぞれ覆うように設けられている。断熱材30のうち炉本体20の下面側を覆う部分と筐体10との間の隙間、断熱材30のうち炉本体20の両側面側を覆う部分と筐体10との間の隙間、及び断熱材30のうち炉本体20の上面側を覆う部分と筐体10との間の隙間は、いずれも流路として利用される。
【0023】
二重管煙突50は、外気を取り込むための吸気口51と、内管と外管との間の環状の通路52と、内管の内側の通路53と、排気中のタールや析出物を溜めておき、メンテナンス時に回収するための回収皿54とを備えている。吸気口51には、外部からの異物が装置内に入り込まないようにフィルタを設けるのが望ましい。本実施例においては、環状の通路52を外気を装置内に取り込むための流路として利用し、内管の内側の通路53を炉本体20の内部から装置外に気体を排気するための流路として利用している。ただし、環状の通路52を炉本体20の内部から装置外に気体を排気するための流路として利用し、内管の内側の通路53を外気を装置内に取り込むための流路として利用するように、流路構成を変更してもよい。
【0024】
また、加熱装置1の内部には、炉本体20の内部から装置外に気体を排気するための流路(通路53に向かう流路)から分岐する分岐流路23が設けられている。この分岐流路23は、炉本体20の後側と断熱材30との間の隙間により構成され、かつ、上流側ヒーター61から下流側ヒーター62に至る流路中に、炉本体20の内部から排出された気体
の一部を送り込むように構成されている。そして、加熱装置1は、この分岐流路23の開放と遮断を切り替えるダンパー80が設けられている。ダンパー80は、例えば、分岐流路内に設けられ、流路を開閉するSUS板からなるシャッターを備える構成を採用することができる。この場合、例えば、炉本体20の外部に、エアシリンダーを設けて、エアシリンダーによって往復移動する棒状の部材によりシャッターを開閉させることができる。
【0025】
以上のように構成される加熱装置1によれば、ダンパー80による分岐流路23の開閉によって、気体の流れを切り替えることができる。これにより、分岐流路23を開放することで循環方式の加熱装置1として利用でき、分岐流路23を遮断することで全排気方式の加熱装置1として利用することができる。以下、それぞれの場合について、気体の流れ方を説明する。
【0026】
<循環方式>
循環方式の加熱装置1として利用する場合には、上記の通り、ダンパー80によって分岐流路23は開放された状態となる。ブロワ40を作動させることによって、吸気口51から二重管煙突50における内管と外管との間の環状の通路52に外気が取り込まれ(矢印F1)、取り込まれた外気(気体)は通路52を流れていく(矢印F2)。その後、気体は、筐体10の内部を前側と後側に隔てる隔壁に設けられた開口部12aを通って、断熱材30のうち炉本体20の下面側を覆う部分と筐体10との間の隙間に流れていく(矢印F3)。その後、気体は、断熱材30のうち炉本体20の両側面側を覆う部分と筐体10との間の隙間を流れていき(矢印F4)、更に、断熱材30のうち炉本体20の上面側を覆う部分と筐体10との間の隙間の順に流れていく(矢印F5)。その後、気体は、断熱材30のうち炉本体20の上面側を覆う部分に設けられた開口部31を通って、上流側ヒーター61が配された領域に送り込まれて、上流側ヒーター61により加熱されながら、更に下流へと流れていく(矢印F6)。
【0027】
上流側ヒーター61によって加熱された気体は、ダンパー80の上方付近で折り返されて(矢印F7)、下流側ヒーター62が設けられた領域を流れていき、下流側ヒーター62によって、更に加熱される。その後、気体は、炉本体20の上部に設けられた開口部22に向けて流れていき(矢印F8)、開口部22から炉本体20の内部に向けて流れていく(矢印F9)。炉本体20の内部に入った気体は、ファン70によって撹拌されながら、回転枠体21に設置された加熱対象品を加熱する(矢印F10)。加熱対象品の加熱に利用された後の気体は、炉本体20の下面側において断熱材30との間に形成された隙間に流れていく(矢印F11)。その後、気体は、断熱材30のうち炉本体20の後側を覆う部分に設けられた開口部32を通って、二重管煙突50における内管の内側の通路53を流れていき(矢印F12)、加熱装置1の外部へと排出される(矢印F13)。また、循環方式の場合には、炉本体20の内部から装置外に向けて流れていく流体の一部は分岐流路23を流れていく(矢印F14)。分岐流路23を流れる気体は、ダンパー80によって開放された部位を通って、上流側ヒーター61から下流側ヒーター62に至る流路中に戻される(矢印F15)。その後は、上流側ヒーター61により加熱された後の気体と混合されて、下流側ヒーター62によって、更に加熱される。
【0028】
以上のように、循環方式の場合には、加熱対象品の加熱に利用された気体の一部が、再度、加熱されて、加熱対象品の加熱に利用される。従って、加熱効率を高めることができる。
【0029】
<全排気方式>
全排気方式の加熱装置1として利用する場合には、上記の通り、ダンパー80によって分岐流路23は遮断された状態となる。矢印F1から矢印F11までの気体の流れ方は、循環方式の場合と同様である。全排気方式の場合には、分岐流路23が遮断されているた
め、矢印F11方向に流れる気体は、全て、二重管煙突50における内管の内側の通路53を流れていき(矢印F12)、加熱装置1の外部へと排出される(矢印F13)。
【0030】
<本実施例に係る加熱装置の優れた点>
本実施例に係る加熱装置1によれば、ダンパー80によって、分岐流路23を開放することで、加熱対象品の加熱に用いた気体の一部を再利用することができ、分岐流路23を遮断することで、加熱対象品の加熱に用いた気体を全て排気させることができる。すなわち、本実施例に係る加熱装置1は、循環方式か全排気方式かを選択して利用することができる。従って、加熱装置1に適用可能な加熱対象品の材料の種類を多くすることができる。
【0031】
また、本実施例においては、二重管煙突50における内管の内側の通路53を炉本体20の内部から装置外に気体を排気するための流路として利用し、環状の通路52を外気を装置内に取り込むための流路として利用している。これにより、ブロワ40によって取り込まれた外気は、装置内に送られる過程で、排気される気体と熱交換が行われる。従って、加熱効率を高めつつ、装置の外部に逃げる熱量を抑制することができる。また、排気が二重管煙突50における内管の内側の通路53を流れる過程で温度が低下するため、排気成分中の析出物が凝結されて、回収皿54に落下する。
【0032】
更に、本実施例においては、外気が上流側ヒーター61が配された領域に至るまでに、断熱材30と筐体10との間の隙間を通るように構成されている。従って、ブロワ40によって取り込まれた外気が上流側ヒーター61に送られるまでの間に、断熱材30から外部に逃げた熱により加熱される。また、装置外部に逃げる熱量を抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 加熱装置
10 筐体
11 扉
12a 開口部
20 炉本体
21 回転枠体
22 開口部
23 分岐流路
30 断熱材
31 開口部
32 開口部
40 ブロワ
50 二重管煙突
51 吸気口
52 通路
53 通路
54 回収皿
61 上流側ヒーター
62 下流側ヒーター
70 ファン
71 駆動源
72 回転軸
73 ファン本体
80 ダンパー