(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】三次元座標測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20241220BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20241220BHJP
G01B 5/004 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B21/00 E
G01B5/004
(21)【出願番号】P 2021106153
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】池淵 正康
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206644(JP,A)
【文献】特開2020-148517(JP,A)
【文献】特開2012-027000(JP,A)
【文献】特開2004-072420(JP,A)
【文献】特開2021-052048(JP,A)
【文献】実開昭57-153881(JP,U)
【文献】特開2015-194452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定マーカを有するとともに測定点を指示するために測定対象物に接触する接触部を有するプローブと、
測定対象物が載置される載置台と、
前記載置台と接続されかつ前記載置台から水平面内で一方向に延びるように形成された設置部と、
前記設置部上に取り付け可能かつ取り外し可能に構成された基準ベースと、
前記基準ベースと前記設置部との位置関係を予め定められた位置関係に固定する位置決め機構と、
前記基準ベースに対して相対的に回転可能に設けられ、前記プローブの複数の測定マーカを撮像する可動撮像部と、
前記可動撮像部により撮像された前記複数の測定マーカの画像を示す測定画像データに基づいて、前記接触部により指示された前記測定点の座標を算出する算出部とを備える、三次元座標測定装置。
【請求項2】
台座を有し、前記台座を設置面上に固定することが可能に構成された基準スタンドをさらに備え、
前記基準ベースは、さらに前記台座上に取り付けることが可能かつ取り外すことが可能に構成された、請求項1記載の三次元座標測定装置。
【請求項3】
第1の熱量で発熱する第1の素子が実装された1または複数の第1の基板と、
前記第1の熱量よりも高い第2の熱量で発熱する第2の素子が実装された1または複数の第2の基板と、
前記可動撮像部、前記1または複数の第1の基板、および前記1または複数の第2の基板を収容するケーシングとをさらに備え、
前記ケーシングは、
前記可動撮像部および前記1または複数の第1の基板を収容し、前記1または複数の第2の基板を収容しない第1のケーシング部分と、
前記1または複数の第2の基板を収容する第2のケーシング部分とを含む、請求項1または2記載の三次元座標測定装置。
【請求項4】
前記第1のケーシング部分の内部空間と前記第2のケーシング部分の内部空間とは互いに連通していない、請求項3記載の三次元座標測定装置。
【請求項5】
前記第1のケーシング部分は、
前記第1のケーシング部分の外部から前記第1のケーシング部分の内部に気体を導入する第1の吸気部と、
前記第1のケーシング部分の外部へ前記第1のケーシング部分の内部の気体を排出する第1の排気部とを備え、
前記第1の排気部は、前記第1の吸気部よりも上方に位置する、請求項3または4記載の三次元座標測定装置。
【請求項6】
前記第1のケーシング部分は、前記第1のケーシング部分の外部へ前記第1のケーシング部分の内部の気体を排出する第1の排気部を備え、
前記第2のケーシング部分に収容される前記1または複数の第2の基板は、平面視で前記第1の排気部に比べて前記基準ベースから離間した位置に配置された、請求項3または4記載の三次元座標測定装置。
【請求項7】
前記第2のケーシング部分は、
前記第1のケーシング部分の下方に位置する第3のケーシング部分と、
前記第3のケーシング部分の側方に位置する第4のケーシング部分と、
前記第3のケーシング部分に設けられ、前記第2のケーシング部分の外部から前記第2のケーシング部分の内部に気体を導入する第2の吸気部と、
前記第4のケーシング部分に設けられ、前記第2のケーシング部分の外部へ前記第2のケーシング部分の内部の気体を排出する第2の排気部とを備え、
前記1または複数の第2の基板は、前記第4のケーシング部分に収容された、請求項3~6のいずれか一項に記載の三次元座標測定装置。
【請求項8】
前記基準ベースに対して固定され、前記複数の測定マーカの少なくとも一部を撮像する固定撮像部と、
前記固定撮像部により撮像された前記複数の測定マーカの少なくとも一部の画像を示す固定画像データに基づいて前記可動撮像部の位置および姿勢を調整する調整駆動部とをさらに備え、
前記固定撮像部は、前記第3のケーシング部分に収容され、
前記第4のケーシング部分は、前記固定撮像部の撮像視野から外れるように前記第3のケーシング部分の側面に接続された、請求項7記載の三次元座標測定装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、平面視で前記載置台が存在する方向から当該ケーシングの内部に気体を吸気し、平面視で前記載置台が存在する方向とは反対の方向に当該ケーシングの内部の気体を排気するように構成された、請求項3~8のいずれか一項に記載の三次元座標測定装置。
【請求項10】
前記第2の素子は、駆動回路、制御回路および通信回路のうち少なくとも1つを構成する素子であり、
前記第1の素子は、前記駆動回路、前記制御回路および前記通信回路を構成する素子を含まない、請求項3~8のいずれか一項に記載の三次元座標測定装置。
【請求項11】
前記可動撮像部に固定された複数の参照マーカと、
前記基準ベースに固定されかつ前記複数の参照マーカを撮像する基準撮像部と、
前記複数の参照マーカの配置に関する情報を参照マーカ情報として記憶する記憶部とをさらに備え、
前記算出部は、前記可動撮像部により撮像された前記複数の測定マーカの画像に加えて、前記基準撮像部により撮像された前記複数の参照マーカの画像を示す基準画像データと、前記記憶部に記憶された前記参照マーカ情報とに基づいて、前記接触部により指示された前記測定点の座標を算出する、請求項1~10のいずれか一項に記載の三次元座標測定装置。
【請求項12】
前記可動撮像部および前記基準ベースを含む撮像ヘッドをさらに備え、
前記撮像ヘッドの重心は、平面視で前記基準ベースの内側に位置する、請求項1~11のいずれか一項に記載の三次元座標測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式のプローブを用いる三次元座標測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触式の三次元座標測定装置には、接触部を有するプローブが用いられる。測定対象物にプローブの接触部が接触され、測定対象物と接触部との接触位置が算出される。測定対象物上の複数の位置が算出されることにより、測定対象物の所望の部分の寸法が測定される。
【0003】
特許文献1に記載された三次元座標測定装置は、載置台、プローブおよび撮像部を備える。載置台上に載置された測定対象物にプローブの接触部が接触される。プローブに設けられた複数のマーカが撮像部によって撮像されることにより、画像データが生成される。その画像データに基づいて測定対象物と接触部との接触位置の座標が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の三次元座標測定装置においては、載置台の上方の領域が撮像部により撮像されるように、載置台と撮像部とが保持部により一体的に保持される。さらに、撮像部は、載置台の斜め上方に配置され、撮像領域が載置台に向かって斜め下方を向くように固定されている。この構成によれば、載置台上に載置される測定対象物と撮像部との位置関係が安定する。
【0006】
載置台上に測定対象物が載置されている状態で、測定対象物の複数の部分のうち座標の測定が可能な部分は、撮像部がプローブの複数のマーカを撮像する状態で接触部を接触可能な範囲に限られる。そのため、測定対象物の形状およびサイズによっては、測定対象物における測定可能な部分の範囲が使用者の熟練度に応じて大きく異なる可能性がある。
【0007】
また、上記の三次元座標測定装置においては、載置台と撮像部とが保持部により一体的に保持される。そのため、測定対象物は、載置台に載置される必要がある。しかしながら、載置台に載置不可能な対象物についても各部の座標を測定することができれば、三次元座標測定装置の利便性が向上する。
【0008】
本発明の目的は、使用者の熟練を要することなく測定対象物の広い範囲にわたって物理量を測定することが可能であるとともに、高い利便性を有する三次元座標測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る三次元座標測定装置は、複数の測定マーカを有するとともに測定点を指示するために測定対象物に接触する接触部を有するプローブと、測定対象物が載置される載置台と、載置台と接続されかつ載置台から水平面内で一方向に延びるように形成された設置部と、設置部上に取り付け可能かつ取り外し可能に構成された基準ベースと、基準ベースと設置部との位置関係を予め定められた位置関係に固定する位置決め機構と、基準ベースに対して相対的に回転可能に設けられ、プローブの複数の測定マーカを撮像する可動撮像部と、可動撮像部により撮像された複数の測定マーカの画像を示す測定画像データに基づいて、接触部により指示された測定点の座標を算出する算出部とを備える。
【0010】
上記の三次元座標測定装置においては、載置台から一方向に延びる設置部上に基準ベースを取り付けることおよび設置部上から基準ベースを取り外すことが可能である。設置部上に基準ベースが取り付けられた状態で、載置台から予め定められた距離離間した位置に可動撮像部が固定される。したがって、載置台上に載置される測定対象物と可動撮像部との位置関係が安定し、高い精度で測定点の座標を算出することが可能になる。
【0011】
可動撮像部は、基準ベースに対して相対的に回転可能である。この場合、可動撮像部を回転させることにより、可動撮像部の撮像視野を拡大することなく可動撮像部による撮像可能な範囲が拡大される。それにより、複数の測定マーカを撮像するために要求されるプローブの位置および姿勢の自由度が拡大される。したがって、プローブの操作性が向上する。
【0012】
また、上記の基準ベースは、設置部から取り外すことができる。この場合、基準ベースを設置部とは異なる位置に配置することにより、載置台に載置されていない測定対象物についても、プローブを用いて各部の座標を算出することが可能になる。
【0013】
これらの結果、使用者の熟練を要することなく測定対象物の広い範囲にわたって物理量を測定することが可能になるとともに、三次元座標測定装置の利便性が向上する。
また、上記の三次元座標測定装置は、基準ベースと設置部との位置関係を予め定められた位置関係に固定する位置決め機構をさらに備える。これにより、設置部と基準ベースとの位置関係を予め定められた位置関係に容易に固定することができる。
【0014】
(2)三次元座標測定装置は、台座を有し、台座を設置面上に固定することが可能に構成された基準スタンドをさらに備え、基準ベースは、さらに台座上に取り付けることが可能かつ取り外すことが可能に構成されてもよい。
【0015】
この場合、設置部から取り外された基準ベースを基準スタンドの台座上に取り付けることにより、載置台に載置されていない測定対象物に対して可動撮像部を容易に固定することができる。それにより、載置台に載置されていない測定対象物について、高い精度で各部の座標を算出することが可能になる。
【0016】
(3)三次元座標測定装置は、第1の熱量で発熱する第1の素子が実装された1または複数の第1の基板と、第1の熱量よりも高い第2の熱量で発熱する第2の素子が実装された1または複数の第2の基板と、可動撮像部、1または複数の第1の基板、および1または複数の第2の基板を収容するケーシングとをさらに備え、ケーシングは、可動撮像部および1または複数の第1の基板を収容し、1または複数の第2の基板を収容しない第1のケーシング部分と、1または複数の第2の基板を収容する第2のケーシング部分とを含んでもよい。
【0017】
この場合、第1のケーシング部分に1または複数の第2の基板が収容されないので、可動撮像部は第2の素子から発生される熱の影響を受けにくい。一方、第1のケーシング部分には、可動撮像部とともに1または複数の第1の基板が収容されるので、可動撮像部は、第1の素子から発生される熱の影響を受ける可能性がある。しかしながら、第1の素子から発生される熱の量は第2の素子から発生される熱の量に比べて小さい。それにより、可動撮像部が熱の影響を受けることによる座標の算出精度の低下が低減される。
【0018】
(4)第1のケーシング部分の内部空間と前記第2のケーシング部分の内部空間とは互いに連通していなくてもよい。この場合、第2のケーシング部分の内部空間において第2の素子により加熱された雰囲気が第1のケーシング部分の内部空間に進入することが抑制される。それにより、可動撮像部が熱の影響を受けることによる座標の算出精度の低下がさらに低減される。
【0019】
(5)第1のケーシング部分は、第1のケーシング部分の外部から第1のケーシング部分の内部に気体を導入する第1の吸気部と、第1のケーシング部分の外部へ第1のケーシング部分の内部の気体を排出する第1の排気部とを備え、第1の排気部は、第1の吸気部よりも上方に位置してもよい。
【0020】
この場合、第1のケーシング部分の内部では、第1の吸気部から第1の排気部に向かって下方から上方に向かう気体の流れが形成される。それにより、1または複数の第1の基板から発生される熱が第1のケーシング部材の内部空間から円滑に排出される。その結果、可動撮像部が熱の影響を受けることによる座標の算出精度の低下が低減される。
【0021】
(6)第1のケーシング部分は、第1のケーシング部分の外部へ第1のケーシング部分の内部の気体を排出する第1の排気部を備え、第2のケーシング部分に収容される1または複数の第2の基板は、平面視で第1の排気部に比べて基準ベースから離間した位置に配置されてもよい。この場合、1または複数の第2の基板から発生される熱が第1のケーシング部分の内部空間に進入しにくい。
【0022】
(7)第2のケーシング部分は、第1のケーシング部分の下方に位置する第3のケーシング部分と、第3のケーシング部分の側方に位置する第4のケーシング部分と、第3のケーシング部分に設けられ、第2のケーシング部分の外部から第2のケーシング部分の内部に気体を導入する第2の吸気部と、第4のケーシング部分に設けられ、第2のケーシング部分の外部へ第2のケーシング部分の内部の気体を排出する第2の排気部とを備え、1または複数の第2の基板は、第4のケーシング部分に収容されてもよい。
【0023】
この場合、第2のケーシング部分の内部では、第3のケーシング部分の第2の吸気部から第4のケーシング部分の第2の排気部に向かって気体の流れが形成される。この気体の流れにおいて、1または複数の第2の基板は、第3のケーシング部分よりも下流に位置する。したがって、1または複数の第2の基板に実装された第2の素子から発生される熱が、第3のケーシング部分の内部空間に進入することが低減される。その結果、第2の素子から発生された熱が、第1のケーシング部分の内部空間に伝達されることが抑制される。
【0024】
(8)三次元座標測定装置は、基準ベースに対して固定され、複数の測定マーカの少なくとも一部を撮像する固定撮像部と、固定撮像部により撮像された複数の測定マーカの少なくとも一部の画像を示す固定画像データに基づいて可動撮像部の位置および姿勢を調整する調整駆動部とをさらに備え、固定撮像部は、第3のケーシング部分に収容され、第4のケーシング部分は、固定撮像部の撮像視野から外れるように第3のケーシング部分の側面に接続されてもよい。
【0025】
この場合、1または複数の第2の基板に実装された第2の素子から発生される熱が、第3のケーシング部分の内部空間に進入することが低減されているので、固定撮像部が第2の素子から発生される熱の影響を受けにくい。
【0026】
また、上記の構成によれば、第4のケーシング部分が固定撮像部の撮像視野から外れているので、固定撮像部により撮像可能な複数の測定マーカの範囲が制限されない。したがって、測定対象物の広い範囲にわたって物理量を測定することが可能になる。
【0027】
(9)ケーシングは、平面視で載置台が存在する方向から当該ケーシングの内部に気体を吸気し、平面視で載置台が存在する方向とは反対の方向に当該ケーシングの内部の気体を排気するように構成されてもよい。
【0028】
この場合、ケーシング内で発生する熱により加熱された気体が、載置台の存在する領域に流れることが防止される。したがって、熱に起因する測定精度の低下が抑制される。
【0029】
(10)第2の素子は、駆動回路、制御回路および通信回路のうち少なくとも1つを構成する素子であり、第1の素子は、駆動回路、制御回路および通信回路を構成する素子を含まなくてもよい。これにより、第1の基板の周辺に発生する熱の量を第2の基板の周辺に発生する熱の量に比べて小さくすることができる。
【0030】
(11)三次元座標測定装置は、可動撮像部に固定された複数の参照マーカと、基準ベースに固定されかつ複数の参照マーカを撮像する基準撮像部と、複数の参照マーカの配置に関する情報を参照マーカ情報として記憶する記憶部とをさらに備え、算出部は、可動撮像部により撮像された複数の測定マーカの画像に加えて、基準撮像部により撮像された複数の参照マーカの画像を示す基準画像データと、記憶部に記憶された参照マーカ情報とに基づいて、接触部により指示された測定点の座標を算出してもよい。このような構成により、高い精度で測定対象物の各部について座標を算出することができる。
【0031】
(12)三次元座標測定装置は、可動撮像部および基準ベースを含む撮像ヘッドをさらに備え、撮像ヘッドの重心は、平面視で基準ベースの内側に位置してもよい。これにより、撮像ヘッドを設置部上に安定して載置することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、使用者の熟練を要することなく測定対象物の広い範囲にわたって物理量を測定することが可能になるとともに、三次元座標測定装置の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る三次元座標測定装置の一使用例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る三次元座標測定装置の他の使用例を示す模式図である。
【
図3】撮像ヘッドおよび処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】ケーシングが取り除かれた状態を示す撮像ヘッドの外観斜視図である。
【
図9】
図4のA-A線における撮像ヘッドの模式的断面図である。
【
図10】(a)は
図9の参照部材の模式的縦断面図であり、(b)は参照部材の下面図である。
【
図12】
図1のヘッド台座の平面図および側面図である。
【
図13】プローブの基本構成を示すブロック図である。
【
図14】プローブを一の方向に見た外観斜視図である。
【
図15】プローブを他の方向に見た外観斜視図である。
【
図16】把持部が第2の状態にあるプローブを一の方向に見た外観斜視図である。
【
図17】把持部が第2の状態にあるプローブを他の方向に見た外観斜視図である。
【
図18】把持部が第1の状態にあるプローブを用いて使用者が測定対象物を測定する状態を示す模式図である。
【
図19】把持部が第2の状態にあるプローブを用いて使用者が測定対象物を測定する状態を示す模式図である。
【
図20】本体部の内部構造を示すプローブの一部切り欠き断面図である。
【
図21】本体部の内部構造の概略を説明するためのプローブの分解斜視図である。
【
図22】
図3の本体制御回路による測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図23】測定点座標算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図24】
図3の本体制御回路による追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【
図25】本発明の一実施の形態に係る三次元座標測定システムの一構成例を示す模式図である。
【
図26】
図25のプローブの基本構成を示すブロック図である。
【
図27】
図25の撮像ヘッドおよび処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図28】他の実施の形態に係るプローブの外観斜視図である。
【
図29】
図28のプローブの状態から把持部が90°回転されたときのプローブの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[1]三次元座標測定装置の基本構成および使用例
図1は、本発明の一実施の形態に係る三次元座標測定装置の一使用例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る三次元座標測定装置1は、主として撮像ヘッド100、プローブ200、処理装置300および保持部800から構成される。
【0036】
保持部800は、設置部810、載置台820およびヘッド台座830を含む。設置部810は、一方向に延びるように形成された平板形状を有し、テーブルの上面等の設置面上に設置される。また、設置部810は、アルミニウム、鉄またはそれらの合金等により構成され、高い剛性を有する。設置部810の一端部には、載置台820が設けられている。本例の載置台820は、略長方形状を有する光学定盤であり、短辺が設置部810の長手方向(設置部810が延びる方向)と平行になるように設置部810の上面に接続されている。載置台820の長辺の長さL1は例えば450mm程度であり、載置台820の短辺の長さL2は例えば300mm程度である。載置台820は、正方形状を有してもよいし、円形状を有してもよいし、楕円形状を有してもよい。載置台820には、測定対象物Sが載置される。
【0037】
設置部810の他端部には、ヘッド台座830が設けられている。本例のヘッド台座830は、撮像ヘッド100の底部(以下、ヘッド底部と呼ぶ。)101を取り付け可能かつ取り外し可能に構成されている。ヘッド底部101がヘッド台座830上に取り付けられた状態で、撮像ヘッド100は設置部810および載置台820に対して固定される。一方、ヘッド底部101がヘッド台座830から取り外された状態で、
図1に点線の白抜き矢印で示すように、撮像ヘッド100は設置部810および載置台820から分離する。
【0038】
プローブ200は、使用者により携行可能に構成されている。プローブ200には、接触部211aが設けられている。使用者は、測定点を指示するために、測定対象物Sの所望の部分にプローブ200の接触部211aを接触させる。これにより、接触部211aが測定点を指示し、測定対象物Sにおける接触部211aとの接触部分が測定点として指示される。
【0039】
撮像ヘッド100の内部には、可動カメラ120が設けられている。可動カメラ120によりプローブ200に設けられた後述する複数のマーカeq(
図14等)が撮像される。また、撮像ヘッド100は、ケーブルCAを介して処理装置300に接続されている。処理装置300は、例えばパーソナルコンピュータであり、本体表示部310および本体操作部320が接続されている。処理装置300においては、可動カメラ120がプローブ200を撮像することにより得られる画像データ(以下、測定画像データと呼ぶ。)と後述する基準画像データとに基づいて測定対象物S上の測定点の座標が算出される。測定対象物Sにおける1または複数の測定点の座標が算出されることにより、それらの算出結果に基づいて測定対象物Sの物理量が測定される。
【0040】
使用者がプローブ200を移動させる場合には、
図1に太い実線の矢印a1,a2に示すように、可動カメラ120の撮像視野の向きはプローブ200の移動に追従する。すなわち、可動カメラ120の向きは、プローブ200が移動するときに、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内に位置するように変化する。本実施の形態に係る可動カメラ120は、撮像視野が載置台820に向けられた状態で、少なくとも載置台820上の空間をカバーする被写界深度を有する。換言すれば、可動カメラ120は、載置台820上の空間であって、当該撮像ヘッド100の頂部(後述するケーシング90の頂部)よりも低い位置にある空間をカバーする被写界深度を有する。
【0041】
そのため、三次元座標測定装置1は、載置台820上の空間を含む広い測定可能領域を有する。したがって、測定対象物Sの物理量を測定するために要求されるプローブ200の位置および姿勢の範囲が拡大される。測定可能領域は、可動カメラ120の撮像視野内に収まっている。
【0042】
上記のように、本実施の形態に係る三次元座標測定装置1によれば、撮像ヘッド100がヘッド台座830上に取り付けられた状態で、載置台820上に載置された測定対象物Sの物理量を測定することができる。一方、載置台820に載置されていない測定対象物Sについても物理量を測定することができれば、三次元座標測定装置1の利便性が向上する。そこで、本実施の形態に係る三次元座標測定装置1は、上記の構成に加えて、撮像ヘッド100を床面等の設置面上に固定するための基準スタンドをさらに備える。基準スタンドを用いた三次元座標測定装置1の使用例を説明する。
【0043】
図2は、本発明の一実施の形態に係る三次元座標測定装置1の他の使用例を示す模式図である。
図2に示すように、三次元座標測定装置1は、基準スタンド900をさらに含む。その基準スタンド900は、三脚であり、ヘッド台座911および脚部912からなる。ヘッド台座911は、脚部912の上端部に設けられ、
図1の保持部800のヘッド台座830と同様に、撮像ヘッド100のヘッド底部101を取り付け可能かつ取り外し可能に構成されている。本例では、
図1の保持部800から取り外された撮像ヘッド100が基準スタンド900のヘッド台座911上に取り付けられている。
【0044】
上記の基準スタンド900によれば、使用者Uは、加工機9にセットされた測定対象物Sが可動カメラ120の被写界深度の範囲内に位置するように、撮像ヘッド100を例えば床面上に固定することができる。加工機9は、例えば旋盤、フライス盤または放電加工機等の加工装置である。あるいは、使用者Uは、床面上に置かれた測定対象物Sが可動カメラ120の被写界深度の範囲内に位置するように、撮像ヘッド100を例えば床面上に固定することができる。したがって、使用者Uは、携行するプローブ200の接触部211aを測定対象物Sの所望の部分に接触させることにより、
図1の載置台820に載置されない測定対象物Sについても物理量の測定を行うことができる。なお、本例においても、使用者Uがプローブ200を携行して移動する場合には、
図1の例と同様に、可動カメラ120の撮像視野の向きはプローブ200の移動に追従する。以下、三次元座標測定装置1の各部の構成について詳細を説明する。
【0045】
[2]撮像ヘッド100および処理装置300の構成
図3は、撮像ヘッド100および処理装置300の構成を示すブロック図である。
図4は撮像ヘッド100の正面図であり、
図5は、撮像ヘッド100の背面図である。また、
図6は撮像ヘッド100の一方側面図であり、
図7は撮像ヘッド100の平面図である。
図4~
図7に示すように、撮像ヘッド100は、複数の構成要素がケーシング90内に収容された構成を有する。
図8はケーシング90が取り除かれた状態を示す撮像ヘッド100の外観斜視図であり、
図9は
図4のA-A線における撮像ヘッド100の模式的断面図である。
【0046】
(1)撮像ヘッド100
まず、撮像ヘッド100の構成について説明する。
図3に示すように、撮像ヘッド100は、電気的な構成として基準カメラ110、可動カメラ120、マーカ駆動回路130、回転駆動回路140、ヘッド制御回路150、無線通信回路160、通信回路170、俯瞰カメラ180および参照部材190を含む。これらの構成は、
図3に二点鎖線で示される固定連結部20、支持部材30および可動部材40のいずれかにより支持された状態で、
図4~
図7に示すケーシング90内に収容される。
【0047】
基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180の各々は、撮像素子として、赤外線を検出可能なCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを含む。基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180には、CMOSイメージセンサが実装された基板111,121,181がそれぞれ設けられる。
図3において、太い点線で取り囲まれる複数の回路(140,150,160,170)は、作動時に基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180の基板111,121,181に実装される各種素子に比べて高い発熱量を有する。以下の説明では、回転駆動回路140、ヘッド制御回路150、無線通信回路160および通信回路170が実装される1または複数の基板を、適宜、発熱基板GSと総称する。
【0048】
図4~
図7に示すように、ケーシング90は、下部ケーシング91、上部ケーシング92および基板ケーシング93から構成される。下部ケーシング91は、略円筒形状を有し、撮像ヘッド100のヘッド底部101に固定され、ヘッド底部101から一定距離上方に延びる。下部ケーシング91の上方の位置に上部ケーシング92が設けられている。上部ケーシング92は、略釣鐘形状を有し、後述する支持部材30(
図8)とともに水平面内で回転可能に設けられている。
【0049】
図4の正面図に示すように、上部ケーシング92の一部には、上部ケーシング92の上端部近傍から中央部にかけて上下方向に延びる矩形開口92Sが形成されている。矩形開口92Sは、可動カメラ120の撮像視野をケーシング90の外部へ導く。また、上部ケーシング92には、矩形開口92Sの両側部でかつ上部ケーシング92の下端部近傍に2つの吸気部HA1が形成されている。
【0050】
下部ケーシング91の外周面の一部には、俯瞰カメラ用窓91Wが形成されている。俯瞰カメラ用窓91Wは、俯瞰カメラ180の撮像視野をケーシング90の外部へ導く。以下の説明では、俯瞰カメラ用窓91Wが向く一の方向を撮像ヘッド100の前方と呼ぶ。また、撮像ヘッド100を基準として上記の一の方向とは逆の方向を撮像ヘッド100の後方と呼ぶ。下部ケーシング91の前部かつ下端部近傍には、俯瞰カメラ用窓91Wに加えて、2つの吸気部LA1が形成されている。
【0051】
図5および
図6に示すように、下部ケーシング91の外周面のうち後方を向く部分(後半部分)に、基板ケーシング93が接続されている。基板ケーシング93は、第1の収容部93aおよび第2の収容部93bを含む。第1の収容部93aは、下部ケーシング91の後半部から撮像ヘッド100の後方に延びる箱形状を有する。第2の収容部93bは、第1の収容部93aの上面の一部から上方に突出するように形成されている。
【0052】
図9に示すように、基板ケーシング93において第1の収容部93aの内部空間と第2の収容部93bの内部空間とは互いに連通している。また、第1の収容部93aの内部空間と下部ケーシング91の内部空間とは互いに連通している。一方、下部ケーシング91の内部空間と上部ケーシング92の内部空間とは、後述する上固定板22により区画されているため、互いに連通していない。
【0053】
図5、
図6および
図9に太い点線または実線で示すように、基板ケーシング93の内部には、第1の収容部93aの下部から第2の収容部93bの上部にかけて発熱基板GSが収容される。一方、発熱基板GSに比べて低い発熱性を有する複数の基板(基板111,121,181等)は、下部ケーシング91または上部ケーシング92内に収容される。
【0054】
図5に示すように、基板ケーシング93の第1の収容部93aの後端下部には、排気部LA2が形成されている。第1の収容部93aの内部には、排気部LA2に隣り合うように、排気ファンLFが設けられている。排気ファンLFは、下部ケーシング91および基板ケーシング93内の雰囲気を、排気部LA2を通して撮像ヘッド100の外部に排出する。このとき、
図4の2つの吸気部LA1から下部ケーシング91の内部に撮像ヘッド100の外部の空気が流入する。それにより、
図6に複数の白抜き矢印f1で示すように、撮像ヘッド100の前方から下部ケーシング91および基板ケーシング93の内部空間を通して撮像ヘッド100の後方に向かう円滑な空気の流れが発生する。この場合、基板ケーシング93に収容される発熱基板GSは、下部ケーシング91および基板ケーシング93内の空気の流れにおいて、下部ケーシング91よりも下流に位置する。それにより、発熱基板GSで発生する熱が下部ケーシング91の内部空間に進入することが低減される。さらに、発熱基板GSで発生する熱が下部ケーシング91の内部空間に滞留しないので、発熱基板GSで発生する熱が下部ケーシング91の内部空間を通じて上部ケーシング92の内部空間に伝達されることが抑制される。
【0055】
図7に示すように、上部ケーシング92の上部には、平面視で上部ケーシング92の中心を基準として矩形開口92Sと反対側の部分に排気部HA2が形成されている。上部ケーシング92の内部には、排気部HA2に隣り合うように、排気ファンHFが設けられている。排気ファンHFは、下部ケーシング91内の雰囲気を排気部HA2を通して撮像ヘッド100の外部に排出する。このとき、
図4の2つの吸気部HA1から上部ケーシング92の内部に撮像ヘッド100の外部の空気が流入する。それにより、
図6に複数の白抜き矢印f2で示すように、下部ケーシング91の2つの吸気部HA1から上部ケーシング92の内部空間を通して上部ケーシング92の下部から斜め上方に向かう円滑な空気の流れが発生する。この場合、後述するように上部ケーシング92内に収容される可動カメラ120またはマーカ駆動回路130が実装された基板43において発生される熱が、下部ケーシング91内で下方から上方に向かって円滑に流れ、下部ケーシング91の外部に排出される。
【0056】
図8および
図9に示すように、固定連結部20は、下固定板21、上固定板22、複数(例えば4本)の支柱23および中空支持軸24を含む。下固定板21は、円板形状を有し、ヘッド底部101の上面上に、ねじを用いて固定されている。下固定板21の上方には、複数の支柱23を介して上固定板22が設けられている。上固定板22は、下固定板21と同様に円板形状を有する。上固定板22の中央部には、円形の開口が形成されている。上固定板22の上面上には、上固定板22の中央部の開口を取り囲むように中空支持軸24がねじを用いて固定されている。下部ケーシング91は、固定連結部20を構成するいずれかの部材に取り付けられている。
【0057】
固定連結部20においては、下固定板21と上固定板22との間の空間に、発熱基板GSを除く各種基板(発熱基板GSよりも発熱性が低い基板)とともに、俯瞰カメラ180が設けられている。また、下固定板21上には、
図9に示すように、下部ケーシング91の略中央から上固定板22の開口を通して中空支持軸24の内部まで延びるように基準カメラ110が設けられている。この状態で、基準カメラ110の撮像視野は上方を向いている。本実施の形態では、基準カメラ110の光学系の光軸110cは、中空支持軸24の中心軸に一致している。
【0058】
下固定板21上および上固定板22上には、上記の各種基板および基準カメラ110に加えて、後述する支持部材30を中空支持軸24の中心軸の周りで回転させるため(ヘッド底部101の上面に平行な面内で回転させるため)の水平回転機構141が設けられている。水平回転機構141は、例えばモータおよび各種動力伝達部材を含む。
【0059】
図8に示すように、固定連結部20の中空支持軸24上には、支持部材30が設けられている。支持部材30は、回転台座31および一対の支持フレーム32,33を含む。回転台座31は、中央部に開口を有し、支持部材30が中空支持軸24の中心軸の周りで回転可能となるように、クロスローラベアリングCB(
図9)を介して中空支持軸24の上端部に取り付けられている。上部ケーシング92は、支持部材30を構成するいずれかの部材に取り付けられている。中空支持軸24に対する支持部材30の回転時には、上部ケーシング92は支持部材30とともに下部ケーシング91に対して相対的に回転する(
図7の太い一点鎖線の矢印参照)。
【0060】
一対の支持フレーム32,33は、回転台座31の一側部および他側部から互いに対向しつつ上方に延びるように形成されている。一対の支持フレーム32,33の間には、回転台座31から所定距離離間した位置に可動部材40が設けられている。
【0061】
可動部材40は、一対の支持フレーム32,33の互いに対向する部分を通る回転軸30cの周りで回転可能(水平面に対してチルト可能)となるように、支持フレーム32,33により支持されている。本実施の形態では、回転軸30cは、基準カメラ110(
図9)の光軸110cおよび中空支持軸24の中心軸に直交する。
【0062】
支持フレーム33の上端部近傍には、可動部材40とは反対側で回転軸30c上に位置する部分にチルト回転機構143が取り付けられている。チルト回転機構143は、例えばモータおよび各種動力伝達部材を含む。チルト回転機構143は、可動部材40を回転軸30cの周りで回転させる。
【0063】
可動部材40は、略正方形の扁平な筒状に形成され、上面41および下面42を有する。可動部材40上には、可動カメラ120およびその可動カメラ120に付随する各種基板が固定される。この状態で、可動カメラ120の光学系の光軸120c(
図9)は可動部材40の上面41に平行となっている。可動部材40の上端部には、その中央部の開口を塞ぐように
図3のマーカ駆動回路130が実装された基板43が設けられている。
【0064】
図9に示すように、可動部材40の内部には、複数のマーカep(
図3)を有する参照部材190が設けられている。
図10(a)は
図9の参照部材190の模式的縦断面図であり、
図10(b)は参照部材190の下面図である。
【0065】
図10(a),(b)に示すように、参照部材190は、発光基板191、拡散板192、ガラス板193および拡散反射シート195を含む。発光基板191、拡散板192およびガラス板193は、この順で上方から下方に向かって並ぶように積層されている。その積層体の外周部を取り囲むように拡散反射シート195が設けられている。
【0066】
発光基板191の下面には、全体に渡って複数の発光素子Lが実装されている。各発光素子Lは、例えば赤外LED(発光ダイオード)である。マーカ駆動回路130が発光基板191上の複数の発光素子Lを駆動する。それにより、複数の発光素子Lが発光する。
【0067】
拡散板192は、例えば樹脂からなる板部材であり、複数の発光素子Lから発生される光を拡散させつつ下方へ透過する。拡散反射シート195は、例えば樹脂からなる帯状のシート部材であり、複数の発光素子Lから参照部材190の側方(外方)に向かう光を拡散させつつその内方に反射する。
【0068】
ガラス板193は、例えば石英ガラスまたはソーダガラスにより形成された板部材である。ガラス板193の下面には、複数の円形開口を有するマスク194が設けられている。マスク194は、例えばガラス板193の下面にスパッタ法または蒸着法により形成されるクロムマスクである。
【0069】
上記の構成により、複数の発光素子Lから発生されて拡散板192および拡散反射シート195により拡散された光が、ガラス板193およびマスク194の複数の円形開口を通して参照部材190の下方に放出される。このようにして、複数の円形開口にそれぞれ対応する自発光型の複数のマーカepが形成される。
【0070】
本実施の形態においては、
図10(b)に示すように、複数のマーカepは、参照部材190の下面(平面)上でマトリクス状に等間隔で並んでいる。複数のマーカepのうち、中央部に位置するマーカepおよびその中央部のマーカepから所定距離離間した一のマーカepには、他のマーカepから識別するための識別マーク(本例では点)が付されている。これらの識別マークは、マスク194の一部により形成される。以下の説明では、複数のマーカepから識別マークが付された2つのマーカepを区別する場合に、識別マークを含む中央部のマーカepを第1のマーカep1と呼ぶ。また、識別マークを含む他方のマーカepを第2のマーカep2と呼ぶ。
【0071】
上記の構成においては、参照部材190は、下方に向く複数のマーカepが基準カメラ110の撮像視野の範囲内に位置するように可動部材40に取り付けられている。さらに、参照部材190は、可動部材40の上面41および下面42が基準カメラ110の光軸110cの方向に対して垂直となるときに、第1のマーカep1が光軸110c上に位置するように可動部材40に取り付けられている。
【0072】
支持部材30が固定連結部20上で回転する際、および可動部材40が回転軸30cの周りで回転する際には、基準カメラ110が参照部材190を撮像することにより得られる複数のマーカepの画像が変化する。したがって、例えば、支持部材30および可動部材40が予め定められた基準姿勢にあるときに得られる画像が変化した場合を想定する。この場合、画像内の第1のマーカep1と第2のマーカep2との位置関係に基づいて、支持部材30が基準姿勢からどれだけ回転しているのかを求めることができる。また、画像内の複数のマーカepの配列に生じる歪に基づいて、可動部材40が基準姿勢からどれだけ回転しているのかを求めることができる。
【0073】
上記のように、可動部材40には、可動カメラ120および参照部材190が一体的に固定されている。それにより、基準カメラ110が参照部材190の複数のマーカepを撮像することにより得られる画像データ(以下、基準画像データと呼ぶ。)に基づいて、基準カメラ110に対する可動カメラ120の位置および姿勢を算出することが可能である。
【0074】
可動部材40と回転台座31との間には、基準カメラ110から参照部材190までの基準カメラ110の撮像視野を含む撮像空間rs(
図9)を当該撮像空間rsの外部から光学的かつ空間的に遮断する蛇腹50が設けられている。
【0075】
本例の蛇腹50の上端部は可動部材40の下面42に接合され、蛇腹50の下端部は回転台座31の上面に接合されている。それにより、支持部材30が水平面内で回転する際には、支持部材30とともに蛇腹50も回転する。
【0076】
また、本例の蛇腹50は、略正方形の筒形状を有し、チルト回転機構143による可動部材40の回転時にその回転に追従して変形することにより撮像空間rsの光学的かつ空間的な遮断状態を維持可能に構成される。さらに、蛇腹50は、可動部材40の回転に追従して変形する際に、その蛇腹50が基準カメラ110の撮像視野に干渉しないように設けられる。
【0077】
このような構成により、撮像空間rs内に、撮像空間rsの外部から光が進入することが防止される。また、撮像空間rsの周囲でモータ等が発熱する場合でも、発生された熱が撮像空間rs内に進入することが防止される。それにより、撮像空間rsの雰囲気に揺らぎが生じることが防止される。したがって、高い精度で複数のマーカepが撮像されるので、基準カメラ110に対する可動カメラ120の位置および姿勢を高い精度で算出することができる。また、上記の構成によれば、蛇腹50の内部空間が外部空間から空間的に遮断されることにより蛇腹50の内部空間の雰囲気が安定する。
【0078】
撮像ヘッド100においては、
図8に示すように、一対の支持フレーム32,33の間に設けられる部分(主として可動部材40および可動カメラ120を含む構成)の重心は、回転軸30c上に位置することが望ましい。これにより、回転軸30cを中心とする可動部材40の回転が安定する。また、撮像ヘッド100においては、固定連結部20に対して回転する部分(主として支持部材30、可動部材40および可動カメラ120を含む構成)の重心は、基準カメラ110の光軸110c上に位置することが望ましい。これにより、光軸110cを中心とする支持部材30の回転が安定する。また、支持部材30および可動部材40を回転させるために必要となる駆動力を低減することができる。それにより、モータ等の駆動部に加わる負担が低減される。本例では、支持部材30の一対の支持フレーム32,33に、固定連結部20に対して回転する部分の重心位置を調整するためのウェイトWa,Wbが取り付けられている。
【0079】
固定連結部20に設けられる俯瞰カメラ180は、その撮像視野が撮像ヘッド100の前方を向くように固定連結部20に設けられる。俯瞰カメラ180の画角は、基準カメラ110および可動カメラ120の画角に比べて大きい。そのため、俯瞰カメラ180の撮像視野は、基準カメラ110および可動カメラ120の撮像視野に比べて大きい。
【0080】
後述する追跡処理において、俯瞰カメラ180は、広い範囲に渡ってプローブ200を撮像するために用いられる。この場合、例えばプローブ200が移動することにより可動カメラ120の撮像視野からプローブ200が外れる場合でも、当該プローブ200が俯瞰カメラ180で撮像されることにより、撮像により得られる画像データ(以下、俯瞰画像データと呼ぶ。)に基づいてプローブ200の大まかな位置を特定することができる。特定された位置に基づいて、可動カメラ120の撮像視野内にプローブ200が位置するように、可動カメラ120の位置および姿勢が調整される。
【0081】
また、本例では、基板ケーシング93は、俯瞰カメラ180の撮像視野から外れるように、下部ケーシング91に接続されている。それにより、俯瞰カメラ180により撮像可能な範囲が基板ケーシング93により制限されることが防止される。
【0082】
図11はヘッド底部101の下面図および側面図であり、
図12は
図1のヘッド台座830の平面図および側面図である。
図11に示すように、ヘッド底部101は、円環形状を有する環状底面102および環状傾斜面103を有する。環状傾斜面103は、環状底面102の内縁からその内側に向かって一定距離上方に向かって傾斜している。環状傾斜面103の内側には、開口部104が形成されている。環状底面102における所定の部分には、下方に向かって開口する縦孔105が形成されている。
【0083】
一方、
図12に示すように、ヘッド台座830は、円環形状を有する環状支持面831および環状傾斜面832を有する。環状支持面831は、ヘッド底部101の環状底面102と同じ形状を有し、環状底面102に対して摺動可能に構成されている。また、環状傾斜面832は、ヘッド底部101の環状傾斜面103に対応し、環状傾斜面832の内縁からその内側に向かって一定距離上方に向かって傾斜している。さらに、環状傾斜面832は、環状傾斜面103に対して摺動可能に構成されている。
【0084】
このような構成により、ヘッド台座830上にヘッド底部101が取り付けられる際には、ヘッド台座830上にヘッド底部101が載置される。この状態で、ヘッド底部101の環状底面102および環状傾斜面103と、ヘッド台座830の環状支持面831および環状傾斜面832とが接触する。次に、使用者は、ヘッド底部101をヘッド台座830上で周方向に摺動させることにより、ヘッド底部101の向きを回転させる。
【0085】
ここで、ヘッド台座830の環状支持面831には、上方に向かって開口する縦孔833が形成されている。縦孔833は、ヘッド底部101の縦孔105に対応し、ヘッド底部101とヘッド台座830とが予め定められた位置関係にある場合に重なり合う。そのため、例えば2つの縦孔105,833のうち一方には、伸縮可能なピン部材(図示せず)が挿入される。この場合、ヘッド台座830上でヘッド底部101を回転させることにより、ヘッド底部101とヘッド台座830とが予め定められた位置関係になったときにピン部材が2つの縦孔105,833に共に差し込まれる。それにより、ヘッド底部101とヘッド台座830とが予め定められた位置関係で固定される。これにより、ヘッド台座830へのヘッド底部101の取り付けが完了する。
【0086】
図2の基準スタンド900のヘッド台座911は、上記のヘッド台座830と同様に、環状支持面831および環状傾斜面832を有する。それにより、撮像ヘッド100のヘッド底部101は、ヘッド台座830の例と同様に、ヘッド台座911上に取り付けることができる。
【0087】
撮像ヘッド100全体の重心は、平面視でヘッド底部101の外縁よりも内側の領域内に位置することが望ましい。
図7では、撮像ヘッド100を平面視したときのヘッド底部101の外縁が太い二点鎖線で示される。撮像ヘッド100全体の重心が平面視でヘッド底部101の外縁よりも内側に位置する場合には、ヘッド台座830,911上に撮像ヘッド100が取り付けられた状態で、撮像ヘッド100の支持状態が安定する。
【0088】
図3に示すように、基準カメラ110、可動カメラ120、マーカ駆動回路130、回転駆動回路140、無線通信回路160および通信回路170は、ヘッド制御回路150に接続されている。ヘッド制御回路150は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、基準カメラ110、可動カメラ120、マーカ駆動回路130、回転駆動回路140および俯瞰カメラ180を制御する。
【0089】
上記のように、基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180の各々は、赤外線を検出可能なCMOSイメージセンサを含む。また、基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180の各々は、図示しない複数のレンズ(光学系)を含む。基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180の各画素からは、検出量に対応するアナログの電気信号(以下、受光信号と呼ぶ)がヘッド制御回路150に出力される。
【0090】
ヘッド制御回路150には、図示しないA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)およびFIFO(First In First Out)メモリが実装されている。基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180からそれぞれ出力される受光信号は、ヘッド制御回路150のA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、FIFOメモリに順次蓄積される。FIFOメモリに蓄積されたデジタル信号は、画素データとして順次処理装置300に転送される。
【0091】
マーカ駆動回路130は、ヘッド制御回路150の制御に基づいて、
図10(a)の発光基板191を駆動する。それにより、発光基板191上の複数の発光素子Lが発光し、参照部材190の複数のマーカepから光が放出される。なお、この発光タイミングと基準カメラ110の撮像タイミングとは同期される。
【0092】
回転駆動回路140は、ヘッド制御回路150の制御に基づいて
図8の水平回転機構141を駆動する。それにより、
図8の支持部材30が固定連結部20上で回転し、可動部材40および上部ケーシング92(
図4)が回転する。このとき、支持部材30が回転することにより、矩形開口92S(
図4)を通って上部ケーシング92の内部から外部に導かれる可動カメラ120の撮像視野が
図1のヘッド台座830または
図2のヘッド台座911の上で水平方向に回転する。
【0093】
また、回転駆動回路140は、ヘッド制御回路150の制御に基づいて
図8のチルト回転機構143を駆動する。それにより、
図8の可動部材40が一対の支持フレーム32,33間で回転軸30cを中心として回転する。このとき、矩形開口92S(
図4)を通る可動カメラ120の撮像視野が
図1のヘッド台座830または
図2のヘッド台座911の上で矩形開口92Sに沿って上下方向に回転する。これらの回転駆動回路140による可動カメラ120の撮像視野の回転は、処理装置300における後述する追跡処理に基づいて行われる。
【0094】
ヘッド制御回路150は、無線通信回路160を介してプローブ200との間で無線通信を行う。また、ヘッド制御回路150は、通信回路170およびケーブルCA(
図1および
図2)を介して処理装置300との間で有線通信を行う。
【0095】
(2)処理装置300
図3に示すように、処理装置300は、通信回路301、本体制御回路302および本体メモリ303を含む。通信回路301および本体メモリ303は、本体制御回路302に接続されている。また、本体制御回路302には、本体操作部320および本体表示部310が接続されている。
【0096】
本体メモリ303は、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)およびハードディスクを含む。本体メモリ303には、システムプログラムとともに、後述する測定処理プログラムおよび追跡処理プログラムが記憶される。また、本体メモリ303は、種々のデータの処理および撮像ヘッド100から与えられる画素データ等の種々のデータを保存するために用いられる。
【0097】
本体制御回路302は、CPUを含む。本実施の形態においては、本体制御回路302および本体メモリ303は、パーソナルコンピュータにより実現される。本体制御回路302は、撮像ヘッド100からケーブルCA(
図1および
図2)および通信回路301を介して与えられる画素データに基づいて画像データを生成する。画像データは複数の画素データの集合である。
【0098】
本実施の形態では、撮像ヘッド100に設けられる基準カメラ110、可動カメラ120および俯瞰カメラ180にそれぞれ対応する基準画像データ、測定画像データおよび俯瞰画像データが生成される。また、プローブ200に設けられる後述するプローブカメラ208に対応する画像データが生成される。本体制御回路302は、基準画像データおよび測定画像データに基づいて、プローブ200の接触部211a(
図1および
図2)の位置を算出する。
【0099】
本体表示部310は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。本体表示部310には、本体制御回路302による制御に基づいて、測定対象物S上の測定点の座標および測定対象物Sの各部の測定結果等が表示される。また、本体表示部310には、測定に関する種々の設定を行うための設定画面が表示される。
【0100】
本体操作部320は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスは、マウスまたはジョイスティック等を含む。本体操作部320は、使用者Uにより操作される。
【0101】
[3]プローブ200の構成
(1)プローブ200の基本構成
図13はプローブ200の基本構成を示すブロック図である。
図13に示すように、プローブ200は、電気的な構成としてプローブ制御部201、表示灯202、バッテリ203、マーカ駆動回路204、プローブメモリ205、無線通信回路206、モーションセンサ207、プローブカメラ208、プローブ操作部221および複数(本例では3つ)の目標部材290を含む。
【0102】
また、
図13に太い二点鎖線で示すように、プローブ200は、上記の各構成要素を収容、支持、または保持するための構成として、保持部210、プローブケーシング220および把持部230を有する。保持部210は、複数の目標部材290を保持する。また、保持部210には、指示部としてのスタイラス211が接続される。スタイラス211は、複数の目標部材290に対して予め定められた位置関係で、保持部210に取り付けられる。スタイラス211は、先端部に上記の接触部211aを有する棒状の部材である。プローブケーシング220は、保持部210の大部分を収容するとともに、プローブ制御部201、表示灯202、マーカ駆動回路204、プローブメモリ205、無線通信回路206およびモーションセンサ207を収容する。把持部230は、バッテリ203を内蔵する。把持部230には、さらにプローブ操作部221が設けられている。プローブ操作部221は使用者Uによる、測定に関する操作入力を受け付ける。プローブ操作部221は、トリガスイッチおよび複数の押しボタンを含む。プローブ操作部221の詳細は後述する。
【0103】
バッテリ203は、充放電可能に構成された蓄電池であり、プローブ200に設けられた他の構成要素に電力を供給する。より具体的には、バッテリ203は、少なくとも目標部材290に電力を供給する。プローブ制御部201は、CPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、表示灯202、マーカ駆動回路204およびプローブカメラ208を制御する。また、プローブ制御部201は、使用者Uによるプローブ操作部221の操作に応答して、各種処理を行う。
【0104】
表示灯202は、例えば1または複数のLEDを含み、その発光部がプローブケーシング220の外部に露出するように設けられている。表示灯202は、プローブ制御部201の制御に基づいてプローブ200の状態に応じた発光動作を行う。
【0105】
3つの目標部材290の各々は、基本的に
図10(a),(b)の参照部材190と同じ構成を有する。マーカ駆動回路204は、複数の目標部材290に接続され、プローブ制御部201の制御に基づいて各目標部材290が含む複数の発光素子を駆動する。
【0106】
プローブメモリ205は、不揮発性メモリまたはハードディスク等の記録媒体を含む。プローブメモリ205は、種々のデータを処理するためまたは保存するために用いられる。モーションセンサ207は、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロセンサを含み、例えば使用者Uがプローブ200を携行して移動する際に、そのプローブ200の動きを検出する。具体的には、モーションセンサ207は、プローブ200の移動時に、そのプローブ200の移動方向、加速度および姿勢等を検出する。プローブカメラ208は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。
【0107】
プローブ制御部201には、上記のCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータに加えて、図示しないA/D変換器およびFIFOメモリが実装されている。それにより、プローブ制御部201においては、モーションセンサ207により検出されたプローブ200の動きを示す信号がデジタル信号形式のデータ(以下、動きデータと呼ぶ。)に変換される。プローブ制御部201は、デジタル形式の動きデータを、無線通信回路206を通して
図3の撮像ヘッド100に無線通信により送信する。この場合、動きデータは、さらに撮像ヘッド100から処理装置300に転送される。
【0108】
また、プローブ制御部201においては、プローブカメラ208の各画素から出力される受光信号がデジタル信号形式の複数の画素データに変換される。プローブ制御部201は、デジタル形式の動きデータおよび複数の画素データを、無線通信回路206を通して
図3の撮像ヘッド100に無線通信により送信する。この場合、画素データは、さらに撮像ヘッド100から処理装置300に転送される。
【0109】
(2)プローブ200の外観構造
図14はプローブ200を一の方向に見た外観斜視図であり、
図15はプローブ200を他の方向に見た外観斜視図である。以下の説明では、
図13のプローブケーシング220に収容される複数の構成要素と保持部210からなる構造体を、プローブ200の本体部250と呼ぶ。
図14および
図15に示すように、本体部250は、一方向に延びるように形成され、前端部251、後端部252、上面部253、底面部254、一方側面部255および他方側面部256を有する。以下の説明では、プローブ200において、本体部250の前端部251および後端部252が並ぶ方向に平行な方向を第1の方向dr1と呼ぶ。
【0110】
前端部251には、スタイラス211を取り付け可能な複数の取付部が設けられている。複数の取付部は、互いに異なる方向を向くように構成されている。使用者Uは、複数の取付部のうち所望の一の取付部にスタイラス211を取り付けることができる。それにより、前端部251には、複数の取付部にそれぞれ対応する複数の姿勢のうちいずれか一の姿勢でスタイラス211が取り付けられる。
図14および
図15の例では、スタイラス211は、第1の方向dr1に延びるように、前端部251に取り付けられている。前端部251には、さらにプローブカメラ208が設けられている。
【0111】
図14に示すように、本体部250の上面部253には、前端部251から後端部252にかけて並ぶように3つの目標部材290および無線通信回路206がこの順で設けられている。本例の3つの目標部材290のうち前端部251に最も近い目標部材290は、3つのマーカeqを有する。残りの2つの目標部材290の各々は、2つのマーカeqを有する。目標部材290のうち、マーカeqが設けられるマーカ面はいずれも、本体部250の上面部253に設けられ、同じ方向に面する。各マーカeqは、赤外光を放出する自発光型のマーカである。なお、これらの複数のマーカeqの発光タイミングと撮像ヘッド100の可動カメラ120の撮像タイミングとは同期される。
【0112】
図15に示すように、本体部250の底面部254には、後端部252よりもやや前端部251に近い部分に、把持部230を接続するための接続部254jが形成されている。本体部250において、マーカeqが設けられる上面部253と接続部254jが設けられる底面部254と、は反対側に位置する。したがって、マーカeqが設けられるマーカ面と反対側に接続部254jが設けられる。把持部230は、使用者Uが片手で把持可能な棒形状を有する。使用者Uはプローブ200を携行するとき、把持部230を把持する。把持部230は、使用者Uがプローブ200を携行するときの取り扱いのしやすさに基づいて、例えば使用者マニュアルで把持姿勢が規定される。本実施形態の把持部230は、
図14に示すように、スタイラス211側が窪んだ形状であり、使用者Uが当該窪みに手指を合わせて把持することが想定される。したがって、把持部230の形状によっても使用者Uが把持部230を把持するときの把持姿勢が規定されると言える。把持部230の一端部は、後述するヒンジ254h(
図20)を介して接続部254jに接続されている。この状態で、把持部230は、接続部254jを通りかつ第1の方向dr1に平行な回転軸RAの周りで回転可能となっている。回転軸RAはマーカeqが設けられるマーカ面に沿うため、回転軸RAの周りを把持部230が回転することにより、マーカ面に対して、把持部230を把持姿勢に従って把持する使用者Uの位置が変更される。把持部230は、接続部254jに接続されることで、本体部250に対する回転の回転軸RAが規定されるため、予め定められた回転軸としての回転軸RAの周りを回転可能である。
【0113】
図14および
図15の例では、把持部230は、接続部254jから第1の方向dr1に交差する第2の方向dr2に延びている。把持部230の一端部のうち後端部252側を向く部分には、
図13のプローブ操作部221の一部として、操作面221aが設けられている。操作面221aは、複数(本例では4つ)の押しボタン221bを含み、把持部230を把持する使用者が例えば親指で複数の押しボタン221bを操作可能に構成されている。また、把持部230の一端部のうち前端部251側を向く部分には、
図13のプローブ操作部221の一部として、トリガスイッチ221cが設けられている。把持部230を把持する使用者が、例えば人差し指でトリガスイッチ221cを操作可能に構成されている。このように、把持部230には、想定される使用者Uによる把持姿勢に基づいて、操作面221aの押しボタン221bやトリガスイッチ221cが設けられている。換言すれば、プローブ操作部221の配置によっても、使用者Uが把持部230を把持するときの把持姿勢が規定される。
【0114】
把持部230の他端部には、バッテリ203の充電を行うためのコネクタが設けられている。バッテリ203の充電時には、把持部230のコネクタにプローブ200の外部から電源ケーブルECが接続される。バッテリ203の充電が完了すると、電源ケーブルECは、把持部230のコネクタから引き抜かれる。なお、電源ケーブルECは、プローブ200と処理装置300との通信を可能にするケーブルであってもよい。また、電源ケーブルECが接続されるコネクタと別にコネクタが設けられ、当該コネクタに、プローブ200と処理装置300との通信を可能にするケーブルが接続されてもよい。例えば、電源ケーブルECが接続されるコネクタと別にUSBコネクタが設けられてもよい。このように、電源ケーブルECが接続されるコネクタと別にコネクタが設けられる場合も、把持部230に設けられることが好ましい。使用者Uがプローブ200を携行するときに、ケーブルが使用者Uの手元に位置するため、ケーブルがマーカeqの撮像を妨げにくい。
【0115】
ここで、接続部254jと把持部230との接続に用いられるヒンジ254h(
図20)は、いわゆるクリック機構を有する。それにより、回転軸RA周りの把持部230の回転角度が予め定められた複数の回転角度のいずれかにある場合、ヒンジ254hには、把持部230を当該回転角度に保持するための保持力が発生する。したがって、回転軸RA周りの把持部230の回転角度が予め定められた複数の回転角度のいずれかにある場合、使用者Uは、把持部230を把持しつつ安定した測定対象物Sの測定を行うことができる。本実施の形態においては、ヒンジ254hがクリック機構を有するが、予め定められた複数の回転角度以外の回転角度に把持部230が保持されることを妨げない。これにより、使用者Uは、把持部230の回転角度範囲内の好適な位置に把持部230が保持されるように把持部230を回動させた状態で、プローブ200を携行することができる。
【0116】
本実施の形態においては、予め定められた複数の回転角度の一部として、第1の回転角度および第2の回転角度が設定されている。この場合、把持部230は、把持部230の回転角度が第1の回転角度にある第1の状態と、把持部230の回転角度が第2の回転角度にある第2の状態とに移行可能である。
図14および
図15に示される把持部230の状態を、第1の状態とする。なお、本実施の形態において回転角度は、回転軸RA周りにおける任意の基準回転位置に対する把持部230の回転位置を示す。すなわち、把持部230の回転角度が第1の回転角度にある状態とは、任意の基準回転位置に対して第1の角度分、把持部230が回転した状態を示す。
【0117】
図16は、把持部230が第2の状態にあるプローブ200を一の方向に見た外観斜視図であり、
図17は把持部230が第2の状態にあるプローブ200を他の方向に見た外観斜視図である。
図16および
図17に示される把持部230の回転角度(第2の回転角度)は、
図14および
図15に示される把持部230の回転角度(第1の回転角度)に対して約90°異なる。
図16および
図17に示すように、第2の状態にある把持部230は、接続部254j(
図14および
図15)から第2の方向dr2とは異なる第3の方向dr3に延びている。
【0118】
本実施の形態においては、予め定められた複数の回転角度の一部として、上記の第1および第2の回転角度に加えて、第1の回転角度に対して約-90°異なる第3の回転角度も設定されている。この場合、把持部230の回転角度を第3の回転角度とすることにより、把持部230の状態を、第1および第2の状態とは異なる第3の状態とすることもできる。
【0119】
図15に示される状態では、複数の押しボタン221bは、第2の方向dr2において本体部250に近い位置に略長方形の押しボタン221bが位置し、第2の方向dr2において本体部250から遠い位置に当該略長方形の押しボタン221bの長辺に略平行な辺を有する略三角形の押しボタン221bが位置するような配列関係である。これに対して
図17に示される状態では、複数の押しボタン221bは、第2の方向dr2において本体部250に近い位置に略長方形の押しボタン221bと、当該略長方形の押しボタン221bの短辺に略平行な辺を有する略三角形の押しボタン221bが位置するような配列関係である。したがって、本体部250に対する複数の押しボタン221bの配列の関係は、把持部230が
図15に示される第1の回転角度から
図17に示される第2の回転角度に回転する前後で変化する。
【0120】
なお、上記実施の形態におけるプローブ操作部221の操作面221aには複数の押しボタン221bが設けられる構成であるが、本発明はこれに限定されない。操作面221aに、複数のグラフィカルインタフェースを表示可能でありかつ、当該グラフィカルユーザインタフェースに対する使用者の操作を受け付け可能な表示画面が設けられる構成であってもよい。この場合、表示画面に表示される複数のグラフィカルユーザインタフェースが複数の押しボタンに相当する。この構成においても、把持部230の回転の前後で操作面221aに対する複数のグラフィカルユーザインタフェースの配列関係が同じであれば、把持部230の回転の前後で、本体部250に対する複数のグラフィカルユーザインタフェースの配列関係が変化する。
【0121】
使用者Uは、本体部250の上面部253が撮像ヘッド100に向くように把持部230を把持する。その上で、使用者Uは、測定対象物Sの所望の部分に接触部211aを接触させながら、プローブ操作部221を操作する。
【0122】
図18は把持部230が第1の状態にあるプローブ200を用いて使用者Uが測定対象物Sを測定する状態を示す模式図であり、
図19は把持部230が第2の状態にあるプローブ200を用いて使用者Uが測定対象物Sを測定する状態を示す模式図である。
図14および
図15に示されるように、第1の状態において把持部230が沿う第2の方向dr2は、マーカ面が設けられる本体部250の上面部253と交差する方向である。このため、
図18のように、使用者Uが、第1の回転角度である把持部230を規定された把持姿勢に従って把持するとき、使用者Uは自身の正対する方向に位置する可動カメラ120に、複数のマーカ面を向けることができる。また、
図16および
図17に示されるように、第1の回転角度に対して異なる第2の回転角度において把持部230が沿う第3の方向dr3は、マーカ面が設けられる本体部250の上面部253に沿う方向であり、かつ第1の方向dr1に交差する方向である。このため、
図19のように、使用者Uが、第2の回転角度である把持部230を規定された把持姿勢に従って把持するとき、使用者Uは自身の側方に位置する可動カメラ120に、複数のマーカ面を向けることができる。したがって、規定された把持姿勢に従って使用者Uが把持部230を把持する場合に、使用者Uから見て、第1の状態でマーカ面が面する方向と、第2の状態でマーカ面が面する方向とは異なる。以上より、規定された把持姿勢に従って使用者Uが把持部230を把持する場合であっても、把持部230が第1の状態であるときと、把持部230が第2の状態であるときとで、複数のマーカeqは異なる向きに配置される。したがって、使用者Uは、把持部230を第1の状態と第2の状態との間で切り替えることにより、本体部250の上面部253を、可動カメラ120を有する撮像ヘッド100に向けた状態で、測定対象物Sおよび、可動カメラ120を有する撮像ヘッド100に対する相対的な位置および姿勢を変更することができる。
【0123】
ここで、
図14~
図17に示すように、本体部250の一方側面部255には、第1の方向dr1における前端部251と接続部254jとの間の部分に、
図13の表示灯202を構成する第1の表示部202aが設けられている。また、本体部250の他方側面部256には、第1の方向dr1における前端部251と接続部254jとの間の部分に、
図13の表示灯202を構成する第2の表示部202bが設けられている。
【0124】
第1の表示部202aおよび第2の表示部202bの各々は、複数の緑色LEDおよび複数の赤色LEDを含む。プローブ200の上面部253に設けられた複数のマーカeqが可動カメラ120(
図3)の撮像視野内に存在する場合には、第1の表示部202aおよび第2の表示部202bは緑色に発光する。一方、複数のマーカeqが可動カメラ120の撮像視野内に存在しない場合には、第1の表示部202aおよび第2の表示部202bは赤色に発光する。
【0125】
本体部250においては、第1の表示部202aおよび第2の表示部202bは、把持部230とスタイラス211との間に位置する。それにより、使用者Uは、第1の表示部202aおよび第2の表示部202bを視認しつつ、接触部211aを測定対象物Sの所望の部分に接触させて測定点を指示することができる。
【0126】
また、第1の表示部202aが設けられる一方側面部255と、第2の表示部202bが設けられる他方側面部256とは、本体部250のうち互いに逆の方向に向く面である。第1の表示部202aが向く方向と第2の表示部202bが向く方向とが異なるため、使用者Uがこれらの表示部を視認できる角度範囲が異なる。そのため、使用者Uは、プローブ200の操作時に第1の表示部202aを視認することが困難な場合でも、第2の表示部202bを視認することができれば複数のマーカeqが可動カメラ120の撮像視野内に存在するか否かを容易に把握することができる。また、使用者Uは、プローブ200の操作時に第2の表示部202bを視認することが困難な場合でも、第1の表示部202aを視認することができれば複数のマーカeqが保持部210の撮像視野内に存在するか否かを容易に把握することができる。したがって、測定点を指示する際のプローブ200の操作性が向上する。
【0127】
(3)プローブ200における本体部250の内部構造
図20は、本体部250の内部構造を示すプローブ200の一部切り欠き断面図である。
図21は、本体部250の内部構造の概略を説明するためのプローブ200の分解斜視図である。
【0128】
図20に示すように、保持部210は、主としてスタイラス取付部210aおよび目標部材保持部210bから構成される。上記のスタイラス211を取り付け可能な複数の取付部は、スタイラス取付部210aに設けられている。目標部材保持部210bは、複数の目標部材290を保持する。スタイラス取付部210aおよび目標部材保持部210bは、互いの位置関係が変化しないように連結されている。これにより、スタイラス取付部210aにスタイラス211が取り付けられた状態で、スタイラス211の接触部211aと複数の目標部材290との位置関係が、予め定められた位置関係に固定される。
【0129】
一方、プローブケーシング220は、主として上部ケーシング220aおよび下部ケーシング220bから構成される。
図21に示すように、プローブ200の組み立て時には、保持部210および複数のゴムブッシュrbを挟み込むように上部ケーシング220aおよび下部ケーシング220bが配置される。
【0130】
ここで、上部ケーシング220aには、
図20に示すように、目標部材290に対応する位置に開口部299が形成されている。開口部299には、可動カメラ120による目標部材290の撮像を妨げない透光部材が配置されてもよい。この構成によれば、目標部材290が上部ケーシング220aの外部に露出しないので、目標部材290が汚染する可能性が低減される。また、本実施の形態においては、目標部材290に対応する位置に開口部299が形成される構成であるが、上部ケーシング220a自体が、可動カメラ120による目標部材290の撮像を妨げない透光部材で構成されてもよい。なお、
図21においては、開口部299の図示を省略している。
【0131】
ここで、上部ケーシング220aには、3つのねじscの軸部を挿入可能な3つの貫通孔h1が形成されている。また、保持部210の目標部材保持部210bには、上部ケーシング220aの3つの貫通孔h1にそれぞれ対応する3つの貫通孔h2が形成されている。さらに、下部ケーシング220bは、目標部材保持部210bを支持する支持部を有する。その支持部には、上部ケーシング220aの3つの貫通孔h1および目標部材保持部210bの3つの貫通孔h2にそれぞれ対応する3つの貫通孔h3(
図20)が形成されている。
【0132】
上部ケーシング220aおよび下部ケーシング220bは、3つのねじscを用いて連結される。3つのねじscを用いて連結される3つの連結部のうち一の連結部の状態が
図20の吹き出し内に示される。
【0133】
図20の吹き出し内でより詳細に示すように、各連結部においては、目標部材保持部210bの貫通孔h2内に、例えば金属製のカラーcaが挿入される。上部ケーシング220aの貫通孔h1、カラーcaおよび下部ケーシング220bの貫通孔h3を通してねじscが挿入され、ねじscの先端部にナットntが取り付けられる。上部ケーシング220aの上面とねじscの頭部との間にワッシャwaが配置され、下部ケーシング220bの支持部とナットntとの間にワッシャwaが配置されている。
【0134】
さらに、上部ケーシング220aと目標部材保持部210bとの間には、柔軟性を有するゴムブッシュrbが配置されている。また、目標部材保持部210bと下部ケーシング220bとの間には、柔軟性を有するゴムブッシュrbが配置されている。
【0135】
このような構成により、保持部210は、複数のゴムブッシュrbによりプローブケーシング220内で移動可能に保持される。すなわち、保持部210は、プローブケーシング220の内部で浮動状態で保持される。具体的には、保持部210は、例えば本体部250の上下方向(上面部253および底面部254が並ぶ方向)において、プローブケーシング220に対して3mm程度移動可能に保持される。また、保持部210は、本体部250の左右方向(一方側面部255および他方側面部256が並ぶ方向)において、プローブケーシング220に対して3mm程度移動可能に保持される。
【0136】
この場合、例えばスタイラス211の接触部211aが測定対象物Sに接触する状態で、把持部230に測定対象物Sに向かうような負荷が加えられた場合でも、複数のゴムブッシュrbが緩衝部材として機能する。それにより、保持部210の変形が抑制され、スタイラス211と複数の目標部材290との位置関係がずれることに起因する測定精度の低下が抑制される。
【0137】
また、上記の構成によれば、プローブ200の落下または衝突等によってプローブケーシング220に衝撃が加わる場合でも、プローブケーシング220から保持部210に伝わる衝撃が複数のゴムブッシュrbによって緩和される。それにより、保持部210の破損が防止される。
【0138】
本実施の形態では、プローブ200における第1の方向dr1は、本体部250の前端部251および後端部252が並ぶ方向に平行な方向と定義している。一方、上記のように、保持部210はプローブケーシング220内で複数のゴムブッシュrbを介して保持されている。そのため、スタイラス211を測定対象物Sに接触させる場合等、保持部210とプローブケーシング220との間に相対的な負荷が加わる場合には、本体部250の前端部251と後端部252との位置関係が変化する。したがって、本実施の形態においては、第1の方向dr1は、保持部210とプローブケーシング220との間に相対的な負荷が加わらずかつプローブ200が予め定められた姿勢にある状態で定義されたものとする。
【0139】
図20では、本体部250の断面に加えて、本体部250と把持部230との接続部分の断面も示される。
図20に示すように、本体部250と接続部254jとは、ヒンジ254hにより回転可能に接続されている。本例のヒンジ254hは、把持部230の内部空間と本体部250の内部空間との間でケーブル等を導く中空部材hi1と、接続部254jに対して把持部230を支持する軸部材hi2とを含む。
【0140】
[4]測定点の座標の算出方法
本実施の形態に係る三次元座標測定装置1においては、基準カメラ110に対して予め定められた関係を有する三次元座標系(以下、装置座標系と呼ぶ。)が予め定義されている。また、処理装置300の本体メモリ303には、予め参照部材190における複数のマーカepの相対的な位置関係が記憶されている。
【0141】
上記のように、基準カメラ110は、参照部材190の複数のマーカepを撮像する。この場合、
図3の本体制御回路302は、撮像により得られる基準画像データと、本体メモリ303に記憶されている複数のマーカepの位置関係とに基づいて、装置座標系における各マーカepの各座標を算出する。このとき、参照部材190の複数のマーカepの各々は、第1および第2のマーカep1,ep2に基づいて識別される。
【0142】
その後、本体制御回路302は、算出された複数のマーカepの座標に基づいて、参照部材190上に固定された可動カメラ120の位置および姿勢を装置座標系により示す情報を第1の位置姿勢情報として生成する。
【0143】
本実施の形態に係る三次元座標測定装置1においては、上記の装置座標系に加えて、可動カメラ120に対して予め定められた関係を有する三次元座標系(以下、可動座標系と呼ぶ。)が予め定義されている。また、処理装置300の本体メモリ303には、予めプローブ200における複数のマーカeqの相対的な位置関係が記憶されている。
【0144】
上記のように、可動カメラ120は、プローブ200の複数のマーカeqを撮像する。この場合、
図3の本体制御回路302は、撮像により得られる測定画像データと、本体メモリ303に記憶されている複数のマーカeqの位置関係とに基づいて、可動座標系における各マーカeqの各座標を算出する。
【0145】
その後、本体制御回路302は、算出された複数のマーカeqの座標に基づいて、プローブ200の位置および姿勢を可動座標系により示す情報を第2の位置姿勢情報として生成する。
【0146】
基準カメラ110はヘッド底部101上に固定されている。そのため、測定対象物Sの測定時に装置座標系は変化しない。一方、可動カメラ120は、撮像視野がプローブ200の移動に追従するように、回転可能に設けられている。そのため、装置座標系と可動座標系との間の関係は、可動カメラ120の回転とともに変化する。
【0147】
そこで、本実施の形態では、本体制御回路302は、第1および第2の位置姿勢情報に基づいて、プローブ200の位置および姿勢を装置座標系で表す第3の位置姿勢情報を生成する。すなわち、本体制御回路302は、第1の位置姿勢情報に基づいて装置座標系に対する可動座標系の相対的な関係を算出するとともに、算出された関係に基づいて第2の位置姿勢情報を装置座標系に従う情報に変換する。それにより、第3の位置姿勢情報が生成される。
【0148】
その後、本体制御回路302は、生成された第3の位置姿勢情報と、プローブ200における複数のマーカeqおよび接触部211a間の位置関係とに基づいてプローブ200により指示された測定点の座標を算出する。
【0149】
[5]測定例
図13のプローブ操作部221は、測定点の座標を算出するために使用者Uにより押下操作される。例えば、使用者Uは、測定対象物Sの所望の部分に接触部211aが接触された状態で、プローブ操作部221の複数の押しボタン221bおよびトリガスイッチ221cのいずれかを操作する。この場合、測定対象物Sにおける接触部211aとの接触部分の座標が、測定点の座標として算出される。算出された測定点の座標は、測定結果として本体メモリ303に記憶されるとともに、本体表示部310に表示される。
【0150】
三次元座標測定装置1においては、使用者Uは、
図3の本体操作部320を操作することにより、あるいは
図13のプローブ操作部221を操作することにより、測定対象物Sに対して所望の測定条件を設定することができる。
【0151】
具体的には、使用者Uは、測定対象物Sについて、幾何要素および測定項目の選択を行う。幾何要素は、測定対象物Sにおいて測定すべき部分の形状を示す幾何学形状の種類である。幾何学形状の種類には、点、直線、平面、円、円筒および球等が含まれる。また、測定項目は、測定対象物Sに対して何を測定すべきかを示すものであり、距離、角度および平面度等の種々の物理量が含まれる。
【0152】
幾何要素および測定項目の選択後、使用者Uは、選択された幾何要素についてプローブ200を用いた1または複数の測定点の指示を行う。それにより、選択された幾何要素であって、測定対象物S上で1または複数の測定点により特定される幾何要素を装置座標系で示す情報(以下、要素特定情報と呼ぶ。)が生成される。その後、生成された要素特定情報に関して選択された測定項目の値が算出される。
【0153】
例えば、使用者Uは、互いに平行かつ反対側の第1および第2の面を有する測定対象物Sの第1の面と第2の面との間の距離を測定したい場合には、幾何要素「平面1」および「平面2」を選択する。また、使用者Uは、測定項目「距離」を選択する。
【0154】
この場合、使用者Uは、幾何要素「平面1」に対応する測定対象物S上の平面(第1の面)を特定するために、プローブ200を用いて測定対象物Sの第1の面の複数(本例では3点以上)の部分を測定点として指示する。これにより、幾何要素「平面1」に対応する要素特定情報が生成される。
【0155】
さらに、使用者Uは、幾何要素「平面2」に対応する測定対象物S上の平面(第2の面)を特定するために、プローブ200を用いて測定対象物Sの第2の面の複数(本例では3点以上)の部分を測定点として指示する。これにより、幾何要素「平面2」に対応する要素特定情報が生成される。
【0156】
その後、幾何要素「平面1」および「平面2」にそれぞれ対応する2つの要素特定情報に基づいて、測定項目「距離」に対応する測定対象物Sの第1の面と第2の面との間の距離が算出される。算出された測定結果は、本体メモリ303に記憶されるとともに、本体表示部310に表示される。
【0157】
[6]測定処理
図22は、
図3の本体制御回路302による測定処理の流れを示すフローチャートである。
図22の測定処理は、
図3の本体制御回路302のCPUが本体メモリ303に記憶された測定処理プログラムを実行することにより所定周期で繰り返して行われる。また、測定処理の開始時には、本体制御回路302に内蔵されたタイマがリセットされるとともにスタートされる。
【0158】
まず、本体制御回路302は、使用者Uによる
図3の本体操作部320の操作の有無に基づいて、幾何要素および測定項目の選択が行われたか否かを判定する(ステップS11)。
【0159】
幾何要素および測定項目の選択が行われた場合、本体制御回路302は、選択された幾何要素および測定項目を
図3の本体メモリ303に記憶させることにより測定条件として幾何要素および測定項目の設定を行う(ステップS12)。その後、本体制御回路302は、ステップS11の処理に戻る。
【0160】
ステップS11において、幾何要素および測定項目の選択が行われない場合、本体制御回路302は、幾何要素および測定項目が設定されているか否かを判定する(ステップS13)。幾何要素および測定項目が設定されている場合、本体制御回路302は、測定対象物Sの測定を開始すべき指令を受けたか否かを判定する(ステップS14)。この判定は、例えば使用者Uによる本体操作部320の操作の有無に基づいて行われる。
【0161】
測定対象物Sの測定を開始すべき指令を受けた場合、本体制御回路302は、測定点座標算出処理を行う(ステップS15)。測定点座標算出処理の詳細は後述する。この処理により、本体制御回路302は、使用者によるプローブ200の操作に基づいて、選択された幾何要素を特定するための測定点の座標を算出する。
【0162】
また、本体制御回路302は、ステップS15の測定点座標算出処理により算出される1または複数の測定点の座標を本体メモリ303に記憶させる(ステップS16)。
【0163】
次に、本体制御回路302は、測定対象物Sの測定を終了すべき指令を受けたか否かを判定する(ステップS17)。この判定は、例えば使用者Uによる本体操作部320の操作の有無に基づいて行われる。
【0164】
測定の終了指令を受けない場合、本体制御回路302は、上記のステップS15の処理に戻る。一方、測定の終了指令を受けると、本体制御回路302は、直前のステップS16の処理で本体メモリ303に記憶された1または複数の測定点の座標から設定された幾何要素について要素特定情報を生成する(ステップS18)。
【0165】
その後、本体制御回路302は、ステップS18の処理で生成された要素特定情報に基づいて設定された測定項目の値を算出し(ステップS19)、測定処理を終了する。なお、ステップS13の判定時において、複数の幾何要素(例えば、2つの平面等)が設定されている場合には、設定された幾何要素ごとに上記のステップS14~S18の処理が行われる。
【0166】
ステップS13において幾何要素および測定項目が設定されていない場合およびステップS14において測定対象物Sの測定を開始すべき指令を受けない場合、本体制御回路302は、内蔵のタイマによる計測時間に基づいて、当該測定処理が開始された後予め定められた時間が経過したか否かを判定する(ステップS20)。
【0167】
予め定められた時間が経過していない場合、本体制御回路302は、ステップS11の処理に戻る。一方、予め定められた時間が経過した場合、本体制御回路302は、ステップS15の処理と同様に、後述する測定点座標算出処理を行う(ステップS21)。その後、本体制御回路302は、測定処理を終了する。
【0168】
なお、ステップS21の処理は、例えば後述する追跡処理においてプローブ200が可動カメラ120または俯瞰カメラ180の撮像視野内にあるか否かを判定するために行われる。
【0169】
図23は、測定点座標算出処理の流れを示すフローチャートである。まず、本体制御回路302は、プローブ200のプローブ制御部201に対して複数のマーカeq(
図14)の発光を指令するとともに、撮像ヘッド100のヘッド制御回路150に対して参照部材190の複数のマーカep(
図10(b))の発光を指令する(ステップS101)。
【0170】
次に、本体制御回路302は、ヘッド制御回路150により基準カメラ110を用いて参照部材190の複数のマーカepを撮像させることにより基準画像データを生成する(ステップS102)。また、本体制御回路302は、生成された基準画像データに基づいて、可動カメラ120の位置および姿勢を装置座標系により示す第1の位置姿勢情報を生成する(ステップS103)。
【0171】
次に、本体制御回路302は、可動カメラ120を用いてプローブ200の複数のマーカeqを撮像することにより測定画像データを生成する(ステップS104)。また、本体制御回路302は、生成された測定画像データに基づいて、プローブ200の位置および姿勢を可動座標系により示す第2の位置姿勢情報を生成する(ステップS105)。
【0172】
その後、本体制御回路302は、第1および第2の位置姿勢情報に基づいて、プローブ200の位置および姿勢を装置座標系で表す第3の位置姿勢情報を生成する(ステップS106)。また、本体制御回路302は、生成された第3の位置姿勢情報に基づいてプローブ200により指示された測定点の座標を算出する。
【0173】
なお、上記のステップS102,S103の処理とステップS104,S105の処理とは、逆の順に行われてもよい。
【0174】
上記の測定処理によれば、使用者Uは、予め定められた複数の幾何要素および予め定められた複数の測定項目から所望の幾何要素および測定項目を選択することにより、測定対象物Sにおける所望の物理量を容易に測定することができる。
【0175】
[7]追跡処理
図24は、
図3の本体制御回路302による追跡処理の流れを示すフローチャートである。
図24の追跡処理は、
図3の本体制御回路302のCPUが本体メモリ303に記憶された追跡処理プログラムを実行することにより所定周期で繰り返して行われる。
【0176】
まず、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内にあるか否かを判定する(ステップS31)。この判定は、測定処理におけるステップS15,S21の処理中に生成される測定画像データに、複数のマーカeqに対応する画像データが含まれているか否かを判定することにより行われる。
【0177】
プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内にある場合、本体制御回路302は、後述するステップS36の処理に進む。一方、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内にない場合、本体制御回路302は、プローブ200が俯瞰カメラ180の撮像視野内にあるか否かを判定する(ステップS32)。この判定は、上記の測定処理におけるステップS15,S21の処理中に生成される俯瞰画像データに、複数のマーカeqに対応する画像データが含まれているか否かを判定することにより行われる。
【0178】
プローブ200が俯瞰カメラ180の撮像視野内にある場合、本体制御回路302は、後述するステップS35の処理に進む。一方、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内にない場合、本体制御回路302は、プローブ200から転送される動きデータに基づいてプローブ200の座標推定を行うことが可能か否かを判定する(ステップS33)。この判定は、例えば動きデータが異常な値を示しているか否かまたは動きデータの示す値が0であるか否か等に基づいて行われる。動きデータが異常な値を示す場合、または動きデータが0である場合、プローブ200の座標推定は不可能である。
【0179】
プローブ200の座標推定は不可能である場合、本体制御回路302は、ステップS31の処理に戻る。一方、プローブ200の座標推定が可能である場合、本体制御回路302は、動きデータに基づいてプローブ200の位置を推定する。また、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内に位置するように、可動カメラ120の位置および姿勢の調整を指令する(ステップS34)。その後、本体制御回路302は、ステップS31の処理に戻る。
【0180】
ステップS32において、プローブ200が俯瞰カメラ180の撮像視野内にある場合、本体制御回路302は、俯瞰画像データに基づいてプローブ200の位置を算出する。また、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内に位置するように可動カメラ120の位置および姿勢の調整をヘッド制御回路150に指令する(ステップS35)。
【0181】
次に、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ120の撮像視野内に位置することになると、プローブ200の複数のマーカeqの重心が可動カメラ120の撮像視野の中心に位置するように可動カメラ120の位置および姿勢の調整をヘッド制御回路150に指令する(ステップS36)。その後、本体制御回路302は、追跡処理を終了する。
【0182】
上記の追跡処理によれば、プローブ200が移動する場合でも、可動カメラ120の撮像視野がプローブ200の複数のマーカeqに追従する。それにより、使用者Uは、可動カメラ120の撮像視野を手動で調整する必要がない。したがって、煩雑な調整作業を要することなく広い範囲で測定対象物Sの所望の測定点の座標を測定することが可能になる。
【0183】
[9]効果
(1)上記の三次元座標測定装置1においては、設置部810に設けられたヘッド台座830上に撮像ヘッド100のヘッド底部101を取り付けることが可能である。設置部810上に撮像ヘッド100が取り付けられた状態で、載置台820から予め定められた距離離間した位置に可動カメラ120が固定される。したがって、載置台820上に載置される測定対象物Sと可動カメラ120との位置関係が安定し、高い精度で測定点の座標を算出することが可能になる。
【0184】
可動カメラ120は、ヘッド底部101に対して相対的に回転可能である。この場合、可動カメラ120を回転させることにより、可動カメラ120の撮像視野を拡大することなく可動カメラ120による撮像可能な範囲が拡大される。それにより、複数のマーカeqを撮像するために要求されるプローブ200の位置および姿勢の自由度が拡大される。したがって、プローブ200の操作性が向上する。
【0185】
また、上記の三次元座標測定装置1においては、設置部810に設けられたヘッド台座830から撮像ヘッド100のヘッド底部101を取り外すことが可能である。この場合、撮像ヘッド100を設置部810とは異なる位置に配置することにより、載置台820に載置されていない測定対象物Sについても、プローブ200を用いて各部の座標を算出することが可能になる。
【0186】
これらの結果、使用者の熟練を要することなく測定対象物Sの広い範囲にわたって物理量を測定することが可能になるとともに、三次元座標測定装置1の利便性が向上する。
【0187】
(2)上記の三次元座標測定装置1は、基準スタンド900をさらに含む。設置部810に設けられたヘッド台座830から取り外された撮像ヘッド100を基準スタンド900のヘッド台座911上に取り付けることにより、載置台820に載置されていない測定対象物Sに対して可動カメラ120を容易に固定することができる。それにより、載置台820に載置されていない測定対象物Sについても、プローブ200を用いて各部の座標を算出することが可能になる。
【0188】
(3)上記のように、ケーシング90においては、基板ケーシング93の内部空間と下部ケーシング91の内部空間とは互いに連通している。一方、下部ケーシング91の内部空間と上部ケーシング92の内部空間とは、互いに連通していない。また、基板ケーシング93には、高い発熱性を有する複数の発熱基板GSが収容されている。一方、上部ケーシング92には、複数の発熱基板GSよりも低い発熱性を有する複数の基板111,121,181が収容され、発熱基板GSは収容されていない。
【0189】
このような構成によれば、上部ケーシング92に発熱基板GSが収容されないので、可動カメラ120は発熱基板GSから発生される熱の影響を受けにくい。上部ケーシング92には、可動カメラ120とともに複数の基板111,121,181が収容されるが、これらの基板から発生される熱は、発熱基板GSから発生される熱に比べて小さい。それにより、可動カメラ120が各種基板から発生される熱の影響を受けることによる座標の算出精度の低下が低減される。
【0190】
[10]プローブカメラ208の使用例
図13のプローブカメラ208によって測定対象物Sを撮像することにより、測定対象物Sの画像を
図3の本体表示部310に表示させることができる。以下、プローブカメラ208により得られる画像を撮像画像と呼ぶ。
【0191】
プローブ200の複数のマーカeqとプローブカメラ208との位置関係、およびプローブカメラ208の特性(画角およびディストーション等)は、例えば
図3の本体メモリ303に撮像情報として予め記憶される。そのため、複数のマーカeqが可動カメラ120の撮像視野内にある場合、プローブカメラ208により撮像される領域が
図3の本体制御回路302により認識される。すなわち、撮像画像に対応する3次元空間が本体制御回路302により認識される。この場合、本体表示部310に撮像画像を表示させつつ、測定対象物Sの測定時に設定された幾何要素および測定項目を重畳表示させることができる。
【0192】
[11]三次元座標測定装置1を備える三次元座標測定システム
図25は、本発明の一実施の形態に係る三次元座標測定システムの一構成例を示す模式図である。
図25に示すように、本実施の形態に係る三次元座標測定システム700は、三次元座標測定装置1に加えて、プローブ操作ロボット600を備える。なお、
図25では、撮像ヘッド100を床面上に固定するための基準スタンド900の図示が省略されている。
【0193】
その三次元座標測定システム700においては、撮像ヘッド100は、可動カメラ120の撮像視野が、例えば床面上に載置された測定対象物Sおよびその周辺の領域を少なくともカバーするように配置される。
【0194】
プローブ操作ロボット600は、ロボット動作部610およびロボット本体部620を含む。ロボット動作部610は、主として多関節アーム611およびプローブ把持機構612から構成されている。多関節アーム611は、ロボット本体部620から延びるように設けられている。多関節アーム611の先端部にプローブ把持機構612が設けられている。プローブ把持機構612は、プローブ200に接続される。
【0195】
図26は、
図25のプローブ200の基本構成を示すブロック図である。
図26に示すように、本例では、プローブケーシング220にロボット用接続部257が接続される。ロボット用接続部257にはプローブ把持機構612とロボット用接続部257とを固定するための固定要素257aが設けられる。固定要素257aは、例えば雌ねじであり、ねじでプローブ把持機構612とロボット用接続部257とが固定される。また、本例では、使用者Uはプローブ200を携行しないため、把持部230はプローブケーシング220に対して着脱可能であることが好ましい。
図25の例では、プローブケーシング220から把持部230が取り外された状態のプローブ200が示される。把持部230がプローブケーシング220から取り外されない場合、少なくとも把持部230が、プローブ把持機構612とロボット用接続部257との固定に干渉しないように、把持部230とロボット用接続部257とが配置されることが好ましい。また、把持部230が回転軸RA(
図14等)の周りを回転し、ロボット用接続部257とプローブ把持機構との固定に干渉しない位置に移動してもよい。
【0196】
また、本実施の形態のプローブ200は、プローブケーシング220にプローブ通信回路258を収容する。
図25に示すように、プローブ200と処理装置300とは、通信用のケーブルCAaで接続されている。プローブ通信回路258とケーブルCAaとを介して、プローブ200と処理装置200とが通信する。
【0197】
本実施の形態に係るプローブ制御部201は、モーションセンサ207により検出される動き量等に基づいてプローブ200が測定点の座標を算出するために適切な状態にあるか否かを判定する。その上で、プローブ制御部201は、プローブ200が測定点の座標を算出するために適切な状態にあると判定した場合に、測定点の座標の算出を許可することを示す信号(以下、接触トリガと呼ぶ。)を出力する。プローブ制御部201が出力する接触トリガは、プローブ通信回路258からケーブルCAaを通して処理装置300に送信される。この場合、処理装置300においては、プローブ200からの接触トリガに基づいて測定点の指示を受け付け、測定点の算出を行う。ケーブルCAaは例えばUSB(ユニバーサルシリアルバス)ケーブルである。把持部230がプローブケーシング220から取り外される場合、ケーブルCAaを介して、プローブ200に電力が供給されてもよい。
【0198】
図25の吹き出し内に示すように、ロボット本体部620には、ロボット駆動部621、通信部622およびロボット制御部623が内蔵されている。ロボット駆動部621は、複数のモータ等を含み、多関節アーム611を駆動する。ロボット制御部623は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、ロボット駆動部621を制御する。ロボット本体部620は、通信用のケーブルCAbを介して撮像ヘッド100に接続されている。ロボット制御部623は、通信部622およびケーブルCAbを通して撮像ヘッド100、プローブ200および処理装置300との間で種々のデータのやり取りが可能となっている。
【0199】
多関節アーム611の各関節部分には、図示しないエンコーダが設けられている。ロボット制御部623は、例えば予め定められた測定対象物S上の座標情報と多関節アーム611の各関節部分のエンコーダの出力とに基づいてロボット駆動部621を制御する。それにより、例えば測定対象物Sの所望の部分にプローブ200の接触部211aを接触させる。
【0200】
図27は、
図25の撮像ヘッド100および処理装置300の構成を示すブロック図である。
図27に示すように、撮像ヘッド100は、通信回路170に接続され、外部機器に信号を出力するための外部I/O175を備える。外部I/O175は例えば端子台であり、
図25のケーブルCAbが接続される。外部I/O175からケーブルCAbを介してロボット制御部623に出力される信号として、例えば、プローブ200から出力される接触トリガに基づく信号がある。この構成によれば、撮像ヘッド100からロボット制御部623にHigh出力とLow出力とを有する二値信号が出力されるため、撮像ヘッド100は、プローブ200から出力される接触トリガを当該二値信号の立上りや立下りに対応させた信号を、ロボット制御部623に出力することができる。したがって、本実施形態の撮像ヘッド100によれば、ロボット制御部623によるロボット駆動部621の制御の応答性が高い三次元座標測定システム700を構築することができる。
【0201】
上述の通り、プローブ200から出力される接触トリガは、ケーブルCAaを通して処理装置300に送信される。さらに、接触トリガ、もしくは接触トリガに基づく信号は、処理装置300からケーブルCA、撮像ヘッド100およびケーブルCAbを通してプローブ操作ロボット600に送信される。この場合、ロボット制御部623は、プローブ200から出力される接触トリガに応答して、ロボット動作部610の動作が一時的に停止するようにロボット駆動部621を制御する。さらに、処理装置300の本体制御回路302は、接触トリガに応答してプローブ200および撮像ヘッド100の複数のマーカeq(
図14),ep(
図10(b))の発光を指令する。
【0202】
上記の動作によれば、測定対象物Sに接触するプローブ200が一時的に停止した状態で、プローブ200の複数のマーカeq(
図14)が撮像ヘッド100の可動カメラ120により撮像される。したがって、プローブ200により指示される測定点の座標を高い精度で算出することが可能になる。
【0203】
上記の三次元座標測定システム700においては、プローブ200から出力される接触トリガに基づいてプローブ操作ロボット600がスタイラス211およびプローブ保持部210に過剰な歪が生じないように動作する。また、測定点を指示するタイミングが適切に定められる。それにより、プローブ操作ロボット600により指示される測定点の座標が高い精度で算出される。
【0204】
[12]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係る撮像ヘッド100においては、基板ケーシング93に複数の発熱基板GSが収容されるが、複数の発熱基板GSのうちの一部が下部ケーシング91に収容されてもよい。また、基板ケーシング93には、複数の発熱基板GSに加えて、発熱基板GSよりも低い発熱性を有する他の基板が収容されてもよい。
【0205】
(2)上記実施の形態に係る撮像ヘッド100においては、下部ケーシング91内に俯瞰カメラ180が設けられるが、本発明はこれに限定されない。俯瞰カメラ180は、上部ケーシング92内に収容されてもよい。この場合、例えば俯瞰カメラ180は、支持部材30に取り付けられる。
【0206】
(3)上記実施の形態に係るプローブ200においては、把持部230は、接続部254jから第1の方向dr1に交差する方向に延びるようにかつ回転軸RAの周りで回転可能に設けられているが、本発明はこれに限定されない。
【0207】
図28は、他の実施の形態に係るプローブ200の外観斜視図である。
図28のプローブ200について、上記実施の形態に係るプローブ200と異なる点を説明する。このプローブ200においては、接続部254jが底面部254から第1の方向dr1に直交する方向に一定長さ延びるように形成されている。その接続部254jの先端部には、本体部250の後端部252側に向かって第1の方向dr1に平行に延びるように、棒状の把持部230xが取り付けられている。
【0208】
把持部230xの一端部は、
図28に太い二点鎖線の矢印で示すように、第1の方向dr1に平行または略平行な回転軸RAの周りで回転可能に接続部254jに接続されている。把持部230xの他端部には、回転軸RAに直交または略直交するようにプローブ操作部221の操作面221aが設けられている。操作面221aにおいては、予め定められた配列で複数の押しボタン221bが設けられている。
【0209】
把持部230xの外周面のうち他端部近傍に位置する部分には、トリガスイッチ221cが設けられている。これにより、使用者Uは、親指および人差し指がプローブ操作部221の近傍に位置し、小指が接続部254jの近傍に位置するように把持部230xを把持することにより、プローブ200を用いた測定点の指示を行うことができる。
【0210】
上記のように、把持部230xは、回転軸RAの周りで回転可能となっている。この場合、把持部230xが回転軸RAの周りで回転しても、プローブ200における把持部230xの位置は変化しない。しかしながら、本体部250に対する複数の押しボタン221bおよびトリガスイッチ221cの配列の関係は、把持部230xの回転の前後で変化する。
【0211】
図29は、
図28のプローブ200の状態から把持部230xが90°回転されたときのプローブ200の外観斜視図である。
図29の例では、本体部250に対する複数の押しボタン221bの配列と、複数の押しボタン221bおよびトリガスイッチ221cの配列が
図28の例と異なっている。それにより、使用者Uは、必要に応じて把持部230xを回転させることにより、プローブ操作部221の操作性を確保しつつ測定対象物Sの測定点の指示を容易に行うことができる。
【0212】
[13]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0213】
上記実施の形態においては、プローブ200の複数のマーカeqが複数の測定マーカの例であり、接触部211aが接触部の例であり、プローブ200がプローブの例であり、載置台820が載置台の例であり、設置部810およびヘッド台座830が設置部の例であり、ヘッド底部101が基準ベースの例である。
【0214】
また、可動カメラ120が可動撮像部の例であり、本体制御回路302が算出部の例であり、三次元座標測定装置1が三次元座標測定装置の例であり、ヘッド台座911が台座の例であり、基準スタンド900が基準スタンドの例であり、基準カメラ110の基板111、可動カメラ120の基板121および俯瞰カメラ180の基板181が1または複数の第1の基板の例であり、複数の発熱基板GSが1または複数の第2の基板の例である。
【0215】
また、ケーシング90がケーシングの例であり、上部ケーシング92が第1のケーシング部分の例であり、下部ケーシング91および基板ケーシング93が第2のケーシング部分の例であり、吸気部HA1が第1の吸気部の例であり、排気部HA2および排気ファンHFが第1の排気部の例であり、下部ケーシング91が第3のケーシング部分の例であり、基板ケーシング93が第4のケーシング部分の例である。
【0216】
また、吸気部LA1が第2の吸気部の例であり、排気部LA2および排気ファンLFが第2の排気部の例であり、俯瞰カメラ180が固定撮像部の例であり、支持部材30、可動部材40および回転駆動回路140が調整駆動部の例であり、複数のマーカepが複数の参照マーカの例であり、基準カメラ110が基準撮像部の例であり、本体メモリ303が記憶部の例であり、ヘッド底部101およびヘッド台座830の2つの縦孔105,833と図示しないピン部材とが位置決め機構の例である。
【0217】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
[14]参考形態
(1)参考形態に係る三次元座標測定装置は、複数の測定マーカを有するとともに測定点を指示するために測定対象物に接触する接触部を有するプローブと、測定対象物が載置される載置台と、載置台と接続されかつ載置台から水平面内で一方向に延びるように形成された設置部と、設置部上に取り付け可能かつ取り外し可能に構成された基準ベースと、基準ベースに対して相対的に回転可能に設けられ、プローブの複数の測定マーカを撮像する可動撮像部と、可動撮像部により撮像された複数の測定マーカの画像を示す測定画像データに基づいて、接触部により指示された測定点の座標を算出する算出部とを備える。
上記の三次元座標測定装置においては、載置台から一方向に延びる設置部上に基準ベースを取り付けることおよび設置部上から基準ベースを取り外すことが可能である。設置部上に基準ベースが取り付けられた状態で、載置台から予め定められた距離離間した位置に可動撮像部が固定される。したがって、載置台上に載置される測定対象物と可動撮像部との位置関係が安定し、高い精度で測定点の座標を算出することが可能になる。
可動撮像部は、基準ベースに対して相対的に回転可能である。この場合、可動撮像部を回転させることにより、可動撮像部の撮像視野を拡大することなく可動撮像部による撮像可能な範囲が拡大される。それにより、複数の測定マーカを撮像するために要求されるプローブの位置および姿勢の自由度が拡大される。したがって、プローブの操作性が向上する。
また、上記の基準ベースは、設置部から取り外すことができる。この場合、基準ベースを設置部とは異なる位置に配置することにより、載置台に載置されていない測定対象物についても、プローブを用いて各部の座標を算出することが可能になる。
これらの結果、使用者の熟練を要することなく測定対象物の広い範囲にわたって物理量を測定することが可能になるとともに、三次元座標測定装置の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0218】
1…三次元座標測定装置,9…加工機,900…基準スタンド,20…固定連結部,21…下固定板,22…上固定板,23…支柱,24…中空支持軸,30…支持部材,30c,RA…回転軸,31…回転台座,32,33…支持フレーム,40…可動部材,41…上面,42…下面,43,111,121,181…基板,50…蛇腹,90…ケーシング,91,220b…下部ケーシング,91W…俯瞰カメラ用窓,92,220a…上部ケーシング,92S…矩形開口,93…基板ケーシング,93a,93b…収容部,100…撮像ヘッド,101…ヘッド底部,102…環状底面,103,832…環状傾斜面,104…開口部,105,833…縦孔,110…基準カメラ,110c,120c…光軸,120…可動カメラ,130,204…マーカ駆動回路,140…回転駆動回路,141…水平回転機構,143…チルト回転機構,150…ヘッド制御回路,160,206…無線通信回路,170,301…通信回路,175…外部I/O,180…俯瞰カメラ,190…参照部材,191…発光基板,192…拡散板,193…ガラス板,194…マスク,195…拡散反射シート,200…プローブ,201…プローブ制御部,202…表示灯,202a…第1の表示部,202b…第2の表示部,203…バッテリ,205…プローブメモリ,207…モーションセンサ,208…プローブカメラ,210,800…保持部,210a…スタイラス取付部,210b…目標部材保持部,211…スタイラス,211a…接触部,220…プローブケーシング,221…プローブ操作部,221a…操作面,221b…押しボタン,221c…トリガスイッチ,230,230x…把持部,250…本体部,251…前端部,252…後端部,253…上面部,254…底面部,254h…ヒンジ,254j…接続部,255…一方側面部,256…他方側面部,257…ロボット用接続部,257a…固定要素,258…プローブ通信回路,290…目標部材,299…開口部,300…処理装置,302…本体制御回路,303…本体メモリ,310…本体表示部,320…本体操作部,600…プローブ操作ロボット,610…ロボット動作部,611…多関節アーム,612…プローブ把持機構,620…ロボット本体部,621…ロボット駆動部,622…通信部,623…ロボット制御部,700…三次元座標測定システム,810…設置部,820…載置台,830,911…ヘッド台座,831…環状支持面,912…脚部,ca…カラー,CA,CAa,CAb…ケーブル,CB…クロスローラベアリング,EC…電源ケーブル,ep,ep1,ep2,eq…マーカ,GS…発熱基板,h1,h2,h3…貫通孔,HA1,LA1…吸気部,HA2,LA2…排気部,HF,LF…排気ファン,hi1…中空部材,hi2…軸部材,rb…ゴムブッシュ,rs…撮像空間,S…測定対象物,sc…ねじ,U…使用者,Wa,Wb…ウェイト