(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ホームドア装置
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
B61B1/02
(21)【出願番号】P 2021181575
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英典
(72)【発明者】
【氏名】島田 翔平
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-055866(JP,A)
【文献】特開2016-120782(JP,A)
【文献】特開平08-177289(JP,A)
【文献】中国実用新案第212054417(CN,U)
【文献】米国特許第07721653(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
B61D 19/02
E04B 2/74
E06B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置場所に固定される固定部と、
前記固定部に進退自在に支持される扉体と、
前記扉体の戸先側の端部に取付けられる当接部材と、を備えるホームドア装置であって、
前記扉体に固定されて、前記当接部材を戸先方向又は戸尻方向に揺動可能に支持する
単数個の支持部材と、
ばね要素を有して、前記扉体の上下方向において前記支持部材から離隔された位置に配置されて、前記当接部材を前記扉体から離隔する方向に付勢する付勢手段と、を備える、
ホームドア装置。
【請求項2】
前記扉体に固定されて、前記当接部材が前記支持部材を支点として戸先方向又は戸尻方向に揺動する範囲を制限する揺動範囲制限手段を備える、
請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記当接部材が戸先方向又は戸尻方向
に平行移動することを許容するとともに、
前記扉体に固定されて、前記当接部材が前記支持部材に対して戸先方向又は戸尻方向に平行移動する範囲を制限する移動範囲制限手段を備える、
請求項1又は請求項2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記付勢手段の動作範囲を制限して、前記当接部材が前記扉体に対して進退する範囲を制限する動作範囲制限手段を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記当接部材のホーム側及び軌道側に、前記当接部材に対して隙間を空けて配置されて、前記扉体の戸先側の端部に固定される一対の側板であって、前記当接部材の少なくとも一部を、ホーム側及び軌道側にいる観察者の視線から遮る一対の側板を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【請求項6】
前記扉体の戸先側の端部に固定されて、前記支持部材と前記付勢手段を、ホーム側あるいは軌道側にいる観察者の視線から遮る目隠し部材を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームドア装置は、鉄道駅のプラットホームに設置される、一種の自動ドア装置である。プラットホームに隣接する軌道に列車が到着して停車すると、ホームドア装置は開扉されて、列車への乗客の乗降が可能にされる。乗客の乗降が終了すると、ホームドア装置は閉扉されて、その後、列車が発車する。そして、プラットホームに隣接する軌道に次の列車が到着して停車するまで、ホームドア装置は閉扉状態を維持して、プラットホーム上に所在する乗客の軌道への転落を防止する。
【0003】
ホームドア装置は、プラットホームつまり設置場所に固定される固定部と、固定部に進退自在に支持される扉体とを備える。固定部は、一般に戸袋と呼ばれる。また、多くの場合、乗客が列車に乗降する乗降通路を挟んで2台のホームドア装置が設置されて、両開きの引き戸が構成される。この場合に、2台のホームドア装置が閉扉状態にある時、2台のホームドア装置の扉体の戸先側の端部は互いに当接する。以下、本明細書において、ホームドア装置の扉体の戸先側の端部に取り付けられて、閉扉状態において相手方の扉体に当接する部材を当接部材と呼ぶことにする。
【0004】
例えば、特許文献1にはドアパネルの戸先側の端部に配置された縦部材に取り付け部材を介して、軟質ゴム製の緩衝部材を固定することが開示されている(明細書第0041段落、
図3)。特許文献1に記載のホームドア装置においては、緩衝部材が当接部材に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乗降通路を挟んで、2台のホームドア装置を配置して両開きの引き戸を構成する場合には、閉扉状態において当接部材が互いに隙間なく当接するように、ホームドア装置の取付け位置と取付け姿勢を調整する必要がある。当接部材が隙間なく当接しないと、隙間に乗客の持ち物等が差し入られてしまう恐れがあるからである。また、当接部材の間に隙間があると美観を損ねるからである。しかしながら、多くの場合、プラットホームの床面には微妙な凹凸あるいは高低差があるので、当接部材の間に隙間が生じないように、ホームドア装置の取付け位置と取付け姿勢を調整することが難しいという問題がある。また、ホームドア装置の設置後に、プラットホームに床面に変形が生じて、その結果、当接部材の間に隙間が生じるという問題がある。
【0007】
また、プラットホーム上には、多数のホームドア装置が配置されるので、隣接配置されるホームドア装置の組み合わせの全てにおいて、当接部材の間に隙間が生じないように、ホームドア装置の取付け位置と取付け姿勢を調整することは、更に難しい。
【0008】
本開示は、ホームドア装置の取付け位置と取付け姿勢に多少の不備があっても、閉扉状態において当接部材と当該当接部材に当接する相手方の部材との間に隙間が生じないホームドア装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本開示に係るホームドア装置は、設置場所に固定される固定部と、固定部に進退自在に支持される扉体と、扉体の戸先側の端部に取付けられる当接部材とを、備える。さらに、本開示に係るホームドア装置は、扉体に固定されて、当接部材を戸先方向又は戸尻方向に揺動可能に支持する単数個の支持部材を備える。そして、ばね要素を有して、扉体の上下方向において支持部材から離隔された位置に配置されて、当接部材を扉体から離隔する方向に付勢する付勢手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ホームドア装置に、当接部材を戸先方向又は戸尻方向に揺動可能に支持する支持部材と、扉体の上下方向において支持部材から離隔した位置に配置されて、当接部材を扉体から離隔する方向に付勢する付勢手段と、を備えるので、当接部材の一部が相手方の部材に当接すると、当接部材は相手方の部材に押されて、扉体に対して揺動する。その結果、当接部材と相手方の部材の間の隙間が解消する。そのため、ホームドア装置の取付け位置と取付け姿勢に多少の不備があっても、当接部材の間に隙間が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係るホームドア装置の構成を示す構成図であって、ホームドア装置をプラットホーム側から見た外形図
【
図2】(A)は、
図1に示したホームドア装置が備える扉体の戸先側の端部の拡大図、(B)は扉体の戸先側の端部を(A)において、AA’線で示す平面で切断した断面図
【
図3】
図2に示した支持部材とその周りの構成を示す説明図
【
図4】
図2に示したばね装置とその周りの構成を示す説明図
【
図6】2台のホームドア装置の位置決めが正確になされた場合における、本開示の実施の形態に係るホームドア装置の作用を示す説明図であって、(A)は閉扉前の状態を示す図、(B)は閉扉状態を示す図
【
図7】2台のホームドア装置が相対的に「ハ字形」に開いた状態で位置決めされた場合における、本開示の実施の形態に係るホームドア装置の作用を示す説明図であって、(A)は閉扉前の状態を示す図、(B)は閉扉状態を示す図
【
図8】2台のホームドア装置が相対的に「逆ハ字形」に開いた状態で位置決めされた場合における、本開示の実施の形態に係るホームドア装置の作用を示す説明図であって、(A)は閉扉前の状態を示す図、(B)は閉扉状態を示す図
【
図9】本開示の実施の形態に係るホームドア装置の別例を示す外形図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態に係るホームドア装置の構成と作用を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0013】
(全体構成)
図1は、本開示の実施の形態に係るホームドア装置1の構成を示す構成図であって、ホームドア装置1をプラットホーム側から見た外形図である。
図1に示すように、ホームドア装置1は、ホームドア装置1の設置場所であるプラットホーム2に固定される固定部3と、固定部3に固定された図示しない直動レールを介して、固定部3に進退自在に支持される2枚の扉体4とを備えている。なお、
図1は、扉体4が固定部3の外側に引き出されて、図示しない乗降通路を閉鎖した状態を示している。扉体4が固定部3の内部に引き込まれると、乗降通路は開放される。また、
図1に示すように、2枚の扉体4の一方は固定部3の左側に引き出され、他方は固定部3の右側に引き出される。
【0014】
固定部3は、プラットホーム2に固定される下部横桁5と、下部横桁5に平行に配置された上部横桁6を備える。また、上部横桁6は下部横桁5に立設された3本の柱部材7によって支持されている。つまり、下部横桁5と上部横桁6の間には3本の柱部材7が配置され、柱部材7の両端は下部横桁5と上部横桁6に固定されている。また、下部横桁5と上部横桁6の間には複数本の固定パイプ8が配置されている。そして、固定パイプ8は柱部材7と交叉していて、柱部材7に固定されている。
【0015】
図1に示すように、扉体4は、上下方向に間隔を開けて配置された下部横部材9と上部横部材10と、扉体4の戸先側にあって下部横部材9と上部横部材10とを連結する縦部材11とを備える。また、下部横部材9と上部横部材10の間には、固定パイプ8と同数の横桟12が、下部横部材9と上部横部材10と平行に配置されている。横桟12はパイプ状の部材であって、横桟12の戸先側の端部は縦部材11に固定される。横桟12の戸尻側の端部は固定パイプ8に内挿される。そして、横桟12の戸尻側の端部には、固定パイプ8の内面に当接して摺動する摺動部材13が取り付けられている。ホームドア装置1が閉扉状態にある時には、つまり、ホームドア装置1が
図1に示す状態にある時には、横桟12は固定パイプ8の外に引き出される。ホームドア装置1が開扉状態にある時には、横桟12は固定パイプ8の中に引き込まれる。
【0016】
また、
図1に示すように、固定部3には電動機14と、電動機14によって回転駆動されるピニオン15が取り付けられている。ピニオン15は扉体4に固定された図示しないラックに噛合されている。そのため、ピニオン15が回転すると、扉体4は固定部3に対して進退する。このように、ホームドア装置1はラックピニオン機構を備えていて、扉体4は、ラックピニオン機構によって駆動される。
【0017】
(当接部材)
図2(A)は、
図1に示したホームドア装置1が備える扉体4の戸先側の端部を拡大して示す図である。前述したように、扉体4の戸先側には縦部材11が配置されている。そして
図2に示すように、縦部材11の更に戸先側には、ゴム製の固定緩衝材21と揺動緩衝材22が取り付けられている。固定緩衝材21は縦部材11の上端に固定されている。揺動緩衝材22は、後述するように縦部材11に対して揺動する部材であって、固定緩衝材21の下方に配置されて、縦部材11の下端まで延びる縦長の部材である。
【0018】
揺動緩衝材22は、本開示に係る当接部材の例示であり、縦部材11に上端近くに固定された支持部材30によって支持されている。また、縦部材11に下端近くには、ばね装置40が配置されている。ばね装置40は、本開示に係る付勢手段の例示であり、ばね装置40によれば、揺動緩衝材22は、縦部材11から、つまり扉体4から、戸先方向に離隔するよう付勢される。なお、支持部材30とばね装置40の具体的な構成と作用については、後述する。
【0019】
図2(B)は扉体4の戸先側の端部を
図2(A)において、AA’線で示す平面で切断した断面図である。
図2(B)に示すように、縦部材11は、扉体4に固定される基部11aと、軌道側とプラットホーム側に、それぞれ配置されて、戸尻側の端部において基部11aに結合された2枚の側板11bを備えている。また基部11aの戸先側には仕切板11cが配置されていて、仕切板11cの両端は2枚の側板11bにそれぞれ結合されている。
【0020】
図2(B)に示すように、揺動緩衝材22は、2枚の側板11bと仕切板11cに囲まれた「コ」字形の領域に配置されている。また、側板11bと揺動緩衝材22の間には隙間が空けられている。そのため、後述するように、揺動緩衝材22を縦部材11に対して進退させることができる。なお、側板11bと揺動緩衝材22の間の隙間は、揺動緩衝材22の縦部材11に対する進退を可能にできれば十分であり、この限りにおいて、できるだけ小さくすることが望ましい。また、隙間を必要以上に大きくすると美観を損ねるので、好ましくない。
【0021】
また、
図2(B)に示すように、揺動緩衝材22には芯材22aが固定されている。芯材22aは揺動緩衝材22の長さ方向に延びるアルミニウム製の部材である。芯材22aを備えることによって、揺動緩衝材22の曲がりが抑制される。
【0022】
図2(B)に示すように、ばね装置40は2枚の側板11bの間に配置される。また、2(B)においては図示しないが、支持部材30も2枚の側板11bの間に配置される。そのため、支持部材30とばね装置40は、ホームドア装置1のプラットホーム側あるいは軌道側からは見えない。このように、縦部材11の側板11bは支持部材30とばね装置40を、プラットホーム側あるいは軌道側にいる観察者の視線から遮る目隠し部材として機能する。また、縦部材11によれば、揺動緩衝材22の一部も、プラットホーム側あるいは軌道側にいる観察者の視線から遮られる。
【0023】
(支持部材)
図3は、支持部材30とその周りの詳細な構成を示す説明図である。
図3に示すように、支持部材30は、縦部材11の仕切板11cにカシメ加工によって固定されるナット31と、固定緩衝材21に挿通されてナット31に螺合されるボルト32と、ボルト32に装着されてボルト32の締め過ぎを防止するパイプ状のスペーサ33を備えている。なお、固定緩衝材21は縦部材11に嵌め込まれていて、摩擦力によって縦部材11に固定されている。
【0024】
図3に示すように、固定緩衝材21には下端が開放された凹部21aが形成されている。そして、凹部21aには揺動緩衝材22の芯材22aの端部が差し込まれている。また、芯材22aの凹部21aに差し込まれた部分には吊り孔22bが穿設されている。そして、吊り孔22bには支持部材30が差しこまれている。そのため、芯材22aは支持部材30に懸垂支持される。また、前述したように、芯材22aは揺動緩衝材22に固定されている。そのため、揺動緩衝材22は、芯材22aを介して支持部材30に懸垂支持される。
【0025】
図3に示すように、凹部21aの幅は芯材22aの幅よりも大きくされている。つまり、凹部21aと芯材22aの間には、幅方向の隙間がある。そして、吊り孔22bの内径は支持部材30の外径よりも大きくされている。そのため、支持部材30によれば、支持部材30を支点とする揺動緩衝材22の戸先方向又は戸尻方向の揺動が許容される。一方、揺動緩衝材22の揺動範囲は凹部21aの幅によって制限される。このように、固定緩衝材21は、揺動緩衝材22の支持部材30を支点とする戸先方向あるいは戸尻方向の揺動範囲を制限する揺動範囲制限手段として機能する。
【0026】
また、前述したように、凹部21aの幅が芯材22aの幅よりも大きくされ、吊り孔22bの内径が支持部材30の外径より大きくされているので、揺動緩衝材22の縦部材11に対する戸先方向あるいは戸尻方向への平行移動が許容される。しかしながら、その平行移動可能な範囲は、凹部21aと芯材22aの間の隙間の大きさによって制限される。このように、固定緩衝材21は、揺動緩衝材22が縦部材11に対して戸先方向あるいは戸尻方向に平行移動する範囲を制限する移動範囲制限手段としても機能する。
【0027】
以上説明したように、支持部材30によれば、揺動緩衝材22が懸垂支持される。また、支持部材30によれば、支持部材30を支点として揺動緩衝材22を戸先方向あるいは戸尻方向に揺動させることができる。また、支持部材30によれば、揺動緩衝材22の揺動緩衝材22を縦部材11に対して戸先方向あるいは戸尻方向に平行移動させることができる。そして、揺動と平行移動が可能な範囲は、固定緩衝材21の凹部21aの幅によって制限される。
【0028】
(ばね装置)
図4は、ばね装置40とその周りの構成を示す説明図である。
図4に示すように、ばね装置40は、戸先側ボルト41と中間ナット42と戸尻側ボルト43とコイルばね44を備えている。中間ナット42は芯材22aの戸尻側に配置されている。戸先側ボルト41は戸先側から芯材22aに挿通され、芯材22aの戸尻側で中間ナット42に螺合される。このように構成されているので、戸先側ボルト41を中間ナット42に緊結することによって、戸先側ボルト41と中間ナット42は芯材22aに固定される。なお、中間ナット42と芯材22aの間にはワッシャ45が挟持される。また、戸先側ボルト41と戸先側ボルト41の間には、揺動緩衝材22を支持するL字型金具46が挟持される。
【0029】
図4に示すように、戸尻側ボルト43は、縦部材11の基部11aに穿設された挿通穴11dに戸尻側から挿通されて、挿通穴11dの戸先側で中間ナット42に螺合される。その結果、戸尻側ボルト43は中間ナット42を介して、芯材22aに固定される。また、戸尻側ボルト43と中間ナット42の間には、円筒状のスペーサ47が挟持されていて、戸尻側ボルト43の締め過ぎを防いでいる。
【0030】
図4に示すように、コイルばね44は縦部材11の基部11aと揺動緩衝材22の芯材22aとの間に架け渡されている。また、コイルばね44の中心には中間ナット42と戸尻側ボルト43が挿通されている。つまり、コイルばね44の中心には中間ナット42と戸尻側ボルト43は同心に配置されている。コイルばね44は基部11aと芯材22aに押圧力を作用させる圧縮ばねである。そのため、コイルばね44によれば、揺動緩衝材22は縦部材11から離隔する方向に、つまり戸先側に向かう方向に押し出される。このように、ばね装置40は、揺動緩衝材22を縦部材11から離隔する方向に付勢する付勢手段として機能する。なお、
図4に示すように、縦部材11の仕切り板11cの一部は、ばね装置40の動作を妨げないように切り開けられている。
【0031】
また、
図4に示すように、スペーサ47の外径は挿通穴11dの内径よりも小さくされている。そのため、ばね装置40は縦部材11に対して進退する。一方、戸尻側ボルト43のヘッド43aの外径は、挿通穴11dの内径よりも大きくされている。そのため、ヘッド43aは戸尻側ボルト43が縦部材11の基部11aの戸先側に引き抜かれることを防いで、ばね装置40の縦部材11に対する進退動作を制限する動作範囲制限手段として機能する。よれば、揺動緩衝材22がコイルばね44に押されて縦部材11から離隔する量が制限される。
【0032】
また、
図5に示すように、揺動緩衝材22が外力Fを受けると、コイルばね44が圧縮されて、ばね装置40と揺動緩衝材22が戸尻方向へ移動する。そして、この時のばね装置40と揺動緩衝材22の戸尻方向への移動量は仕切板11cによって制限される。すなわち、ばね装置40と揺動緩衝材22が戸尻方向へ移動して、芯材22aが仕切板11cに当接すると、ばね装置40と揺動緩衝材22の移動はそこで止められる。このように、仕切板11cも、ばね装置40の縦部材11に対する進退動作を制限する動作範囲制限手段として機能する。なお、前述したヘッド43aによれば、ばね装置40の縦部材11に対する離隔動作が制限され、仕切板11cによれば、ばね装置40の縦部材11に対する接近動作が制限される。
【0033】
なお、
図4は、ヘッド43aが基部11aに当接した状態であって、その結果、揺動緩衝材22の戸先側への変位が止められた状態を示している。
【0034】
以上、説明したように、ホームドア装置1は、ばね装置40を備えるので、揺動緩衝材22が、その下端が戸先側に移動する方向に揺動するように付勢される。揺動緩衝材22の下端が縦部材11から離隔する量は、ヘッド43aによって制限される。
【0035】
(作用)
最後に、ホームドア装置1の作用を説明する。図示しない2台のホームドア装置1,1’の位置決めが正確になされると、
図6(A)に示すように、2枚の扉体4,4’は互いに平行に配置される。この場合に、閉扉状態において揺動緩衝材22,22’の一部が互いに当接すると、揺動緩衝材22,22’は互いに押しあって、縦部材11,11’に対して変位する。その結果、
図6(B)に示すように、揺動緩衝材22,22’は隙間なく、互いに当接する。
【0036】
位置決めに不備があって、ホームドア装置1,1’が相対的に「ハ字形」に開いた状態で位置決めされると、
図7(A)に示すように、2枚の扉体4,4’は「ハ字形」に開いた状態で配置される。この場合も、閉扉状態において揺動緩衝材22,22’の一部が互いに当接すると、揺動緩衝材22,22’は互いに押しあって、縦部材11,11’に対して変位する。その結果、
図7(B)に示すように、揺動緩衝材22,22’は隙間なく、互いに当接する。
【0037】
位置決めに不備があって、ホームドア装置1,1’が相対的に「逆ハ字形」に開いた状態で位置決めされると、
図9(A)に示すように、2枚の扉体4,4’は「逆ハ字形」に開いた状態で配置される。この場合も、閉扉状態において揺動緩衝材22,22’の一部が互いに当接すると、揺動緩衝材22,22’は互いに押しあって、縦部材11,11’に対して変位する。その結果、
図8(B)に示すように、揺動緩衝材22,22’は隙間なく、互いに当接する。
【0038】
このように、揺動緩衝材22,22’は縦部材11,11’に対して変位するので、ホームドア装置1,1’の位置決めに不備があっても、正確に位置決めされた場合と同様に、閉扉状態において、揺動緩衝材22,22’は、隙間なく互いに当接する。
【0039】
以上説明したように、ホームドア装置1の取付け位置と取付け姿勢の調整に多少の不備があっても、閉扉状態において揺動緩衝材22と揺動緩衝材22に当接する揺動緩衝材22’との間には隙間が生じない。そのため、閉扉状態において、扉体4,4’が安定して保持される。また、閉扉状態における美観が向上する。
【0040】
しかしながら、本開示の技術的範囲は上記の実施の形態によっては限定されない。本開示は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、自由に、応用、変形、あるいは改良して実施することができる。
【0041】
本開示が適用されるホームドア装置1は、
図1において図示された構成を備えるものには限定されない。すなわち、ホームドア装置1は、固定パイプ8と、固定パイプ8に対して進退する横桟12を備えるものには限定されない。ホームドア装置1、
図9に示すような、箱型の固定部3とパネル状の扉体4を備えるものであっても良い。いずれにせよ、ホームドア装置1において、固定部3と扉体4の構造あるいは形式、あるいは扉体4を駆動する手段は限定されない。
【0042】
また、
図1において、2枚の扉体4を備えるホームドア装置1を図示したが、ホームドア装置1は2枚の扉体4を備えるものには限定されない。ホームドア装置1は扉体4を1枚だけ備えるものであっても良い。
【0043】
図6ないし
図8において、扉体4が当接する相手方の扉体4’が揺動緩衝材22’を備える例を示したが、相手方の扉体4’は揺動緩衝材22’を備えないものであっても良い。
【0044】
また、
図6ないし
図8において、ホームドア装置1をホームドア装置1’と組み合わせて両開きの開き戸を構成する例を示したが、ホームドア装置1は片開き戸を構成するものであっても良い。つまり、例えば、ホームドア装置1は揺動緩衝材22が他のホームドア装置1の固定部3に当接するものであっても良い。
【0045】
図2において、支持部材30がばね装置40の上方に配置された例を示したが、本開示においては、支持部材と付勢手段は扉体の上下方向において離隔配置されていれば十分であり、両者の上下関係は限定されない。すなわち、ばね装置40が支持部材30よりも高い位置に配置されても良い。
【0046】
本開示における支持部材の具体的な構成は
図3において図示された支持部材30によっては限定されない。例えば、支持部材は揺動緩衝材22をヒンジ支持するものであっても良い。なお、この場合、揺動緩衝材22の戸先方向又は戸尻方向の平行移動は支持部材によって拘束される。また、この場合、ばね装置40は支持部材つまりヒンジの上方に配置されても良い。
【0047】
本開示における付勢手段の具体的な構成は
図4において図示されたばね装置40によっては限定されない。特に、付勢手段が備えるばね要素はコイルばね44には限定されない。ばね要素は、板ばねであっても良いし、その他の固体ばねであっても良い。ばね要素は、その他の形式のばねであっても良い。ゴム等の弾性体をばね要素として備えても良い。
【0048】
いずれにせよ、本開示の技術的範囲は、本明細書及び図面に示された、具体的な構成によっては限定されない。
【符号の説明】
【0049】
1,1’ ホームドア装置、2 プラットホーム、3 固定部、4,4’ 扉体、5 下部横桁、6 上部横桁、7 柱部材、8 固定パイプ、9 下部横部材、10 上部横部材、11,11’ 縦部材、11a 基部、11b 側板、11c 仕切板、11d 挿通穴、12 横桟、13 摺動部材、14 電動機、15 ピニオン、21 固定緩衝材、21a 凹部、22,22’ 揺動緩衝材、22a 芯材、22b 吊り孔、30 支持部材、31 ナット、32 ボルト、33 スペーサ、40 ばね装置、41 戸先側ボルト、42 中間ナット、43 戸尻側ボルト、43a ヘッド、44 コイルばね、45 ワッシャ、46 L字型金具、47 スペーサ、F 外力。