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特許7607547衛星情報伝送システム、静止衛星、および、地上設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】衛星情報伝送システム、静止衛星、および、地上設備
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/10 20060101AFI20241220BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B64G1/10 100
B64G3/00
B64G1/10 328
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021191359
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077873
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0302377(US,A1)
【文献】特開2021-172157(JP,A)
【文献】特開2003-276697(JP,A)
【文献】特開平07-050513(JP,A)
【文献】特開2021-151811(JP,A)
【文献】米国特許第05927652(US,A)
【文献】特開2001-358633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00 -99/00
H04B 7/185
H04B 10/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止軌道近傍を経度方向に移動しながら地球ないし宇宙物体を監視する監視衛星と、
前記監視衛星と衛星情報を授受する地上設備と、
静止軌道を飛翔し、前記監視衛星と前記地上設備の間の衛星情報の通信を中継する複数の静止衛星と
を備える衛星情報伝送システムであって、
前記静止衛星は、
前記監視衛星と情報授受する電波通信装置として、地球方向西側、地球方向東側、反地球方向西側、および、反地球方向東側の4式以上の電波通信装置を具備するとともに前記複数の静止衛星の間の情報授受する光通信装置を具備し、
前記監視衛星が高度を上昇ないし下降して、地上との通信が許可されている軌道位置、通信可能な周波数帯、および、通信可能な伝送容量を逸脱する緊急対応において、
前記複数の静止衛星の間を光通信し、
前記監視衛星と前記複数の静止衛星の各静止衛星との間を電波通信し、
前記複数の静止衛星の各静止衛星と前記地上設備との間を電波通信する衛星情報伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星情報伝送システムを構成する静止衛星であって、
前記監視衛星と情報授受する前記電波通信装置と、
前記複数の静止衛星の間の情報授受する前記光通信装置と
を具備する静止衛星。
【請求項3】
請求項1に記載の衛星情報伝送システムを構成する地上設備であって、
移動体である地上設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衛星情報伝送システム、静止衛星、および、地上設備に関する。
【背景技術】
【0002】
静止軌道においては、地上との通信が許可されている軌道位置、通信可能な周波数帯、および、通信可能な伝送容量が限定されている。このため、静止軌道近傍の監視衛星が直接地上と通信できる場所と通信性能が限定され、緊急対応ができない場合がある。
【0003】
特許文献1では、静止衛星軌道上のスペースデブリを観測するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-218834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、静止衛星上の宇宙物体を監視する監視衛星について、監視衛星と地上設備との間の通信が許可される領域が限定される可能性があるという課題がある。
【0006】
本開示は、静止軌道近傍の監視衛星が、地上設備との間の通信が許可されている静止衛星を経由して衛星情報を地上に伝送する。これにより、常時、監視衛星と地上との通信授受を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る衛星情報伝送システムは、
静止軌道近傍を経度方向に移動しながら地球ないし宇宙物体を監視する監視衛星と、
前記監視衛星と衛星情報を授受する地上設備と、
静止軌道を飛翔し、前記監視衛星と前記地上設備の間の衛星情報の通信を中継する複数の静止衛星と
を備える衛星情報伝送システムであって、
前記複数の静止衛星の間を光通信し、
前記監視衛星と前記複数の静止衛星の各静止衛星との間を電波通信し、
前記複数の静止衛星の各静止衛星と前記地上設備との間を電波通信する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る衛星情報伝送システムでは、静止軌道近傍の監視衛星が、地上設備との間の通信が許可されている静止衛星を経由して衛星情報を地上に伝送する。また、監視衛星と複数の静止衛星の各静止衛星との間の通信は、電波通信とする。よって、本開示に係る衛星情報伝送システムによれば、低コストで、常時、監視衛星と地上設備との通信授受を可能とするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る衛星情報伝送システムの構成例を示す図。
図2】実施の形態1に係る監視衛星の構成例を示す図。
図3】実施の形態1に係る地上設備のハードウェア構成例を示す図。
図4】実施の形態1に係る衛星情報伝送システムの実施例1において、高高度からの西方移動時監視を示す図。
図5】実施の形態1に係る衛星情報伝送システムの実施例1において、低高度からの東方移動時監視を示す図。
図6】実施の形態1に係る衛星情報伝送システムの実施例1における各衛星の詳細構成例を示す図。
図7】実施の形態1に係るデータ中継衛星の構成例を示す図。
図8】実施の形態1に係る気象衛星の構成例を示す図。
図9】実施の形態1に係る衛星情報伝送システムの実施例2において、高高度からの西方移動時監視を示す図。
図10】実施の形態1に係る衛星情報伝送システムの実施例2において、低高度からの東方移動時監視を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。また、以下の図面では各構成の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「表」、「裏」といった方向あるいは位置が示されている場合がある。それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置、器具、あるいは部品といった構成の配置および向きを限定するものではない。
【0011】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る衛星情報伝送システム500の構成例を示す図である。
【0012】
衛星情報伝送システム500は、監視衛星300と、複数の静止衛星400と、地上設備700とを備える。
【0013】
監視衛星300は、静止軌道近傍を経度方向に移動しながら地球ないし宇宙物体を監視する。
地上設備700は、地上に設けられた設備である。地上設備700は、監視衛星300と衛星情報200を授受する。
静止衛星400は、静止軌道を飛翔し、監視衛星300と地上設備700の間の衛星情報200の通信を中継する。
衛星情報200は、監視衛星300と地上設備700の間で授受される情報である。
【0014】
図2は、本実施の形態に係る監視衛星300の構成例を示す図である。
監視衛星300は、地球あるいは宇宙物体といった監視対象を監視する。
図1に示すように、監視衛星300が監視する監視対象には、静止軌道上の静止衛星400、あるいは、準天頂軌道(QZO)上の測位衛星が含まれていてもよい。QZOは、Quasi-Zenith Satellite orbitの略語である。
【0015】
監視衛星300は、衛星通信装置31と、監視装置32と、推進装置33と、姿勢制御装置34と、衛星制御装置35と、電源装置36とを備える。
【0016】
衛星通信装置31は、地上設備700と通信するための通信装置である。例えば、衛星通信装置31は、地上設備700から各種コマンドを受信する。また、衛星通信装置31は、監視装置32によって得られる監視データを地上設備700に送信する。
各種コマンドおよび監視データは、衛星情報200の例である。
【0017】
監視装置32は、地球あるいは宇宙物体といった監視対象を監視するための装置であり、監視データを生成する。本実施の形態では、監視対象を飛翔体と呼称する場合がある。監視装置32は、赤外線を利用する赤外監視装置である。例えば、監視装置32は、地球周縁を指向する赤外監視装置である。
監視衛星300は、視線方向を飛翔体へ向けるためのポインティング機能を有する。
【0018】
監視データは、飛翔体が映った画像に相当するデータであり、監視装置32の視野(監視範囲)における飛翔体の位置を示す。
監視データは、時刻情報、位置情報、視線情報および視野情報などを含んでもよい。時刻情報は、監視が行われた時刻(監視時刻)を示す。位置情報は、監視衛星300の座標値を示す。視線情報は、監視装置32の視線方向を示す。視野情報は、監視装置32の視野を示す。
【0019】
推進装置33は、監視衛星300に推進力を与える装置であり、監視衛星300の速度を変化させる。具体的には、推進装置33は電気推進機である。例えば、推進装置33は、イオンエンジンまたはホールスラスタである。
【0020】
姿勢制御装置34は、監視衛星300の姿勢と監視衛星300の角速度といった姿勢要素を制御するための装置である。
姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置34は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサなどである。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロである。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上設備700からの各種コマンドにしたがって、アクチュエータを制御する。
姿勢制御装置34は、監視装置32の視野方向を変更するための装置(視野方向変更装置)として使用することができる。監視装置32の視野方向は、監視装置32の視線方向に相当する。監視装置32の視線方向を中心とする範囲(視野)が監視範囲となる。
【0021】
衛星制御装置35は、監視衛星300の各装置を制御するコンピュータであり、処理回路を備える。例えば、衛星制御装置35は、地上設備700から送信される各種コマンドにしたがって、各装置を制御する。
【0022】
電源装置36は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置などを備え、監視衛星300の各装置に電力を供給する。
【0023】
図1に示すように、静止軌道を飛翔する静止衛星400は、具体的には、通信衛星401、測位衛星402、データ中継衛星403、気象衛星404、および、観測衛星405といった衛星である。
これらの静止衛星400の構成は、上述した監視衛星300と同様であるが、監視装置32に替えて、各々のミッションを実施するミッション機器を備えている。例えば、気象衛星404であれば、衛星通信装置31と推進装置33と姿勢制御装置34と衛星制御装置35と電源装置36に加え、地球の気象を観測する気象観測機器を備えている。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る地上設備700のハードウェア構成例を示す図である。
地上設備700を例にして、コンピュータが備えるハードウェアについて説明する。
【0025】
プロセッサ910は、地上設備700の機能を実現するプログラムを実行する装置である。
プロセッサ910は、演算処理を行うICである。プロセッサ910の具体例は、CPU、DSP、およびGPUである。ICは、Integrated Circuitの略語である。CPUは、Central Processing Unitの略語である。DSPは、Digital Signal Processorの略語である。GPUは、Graphics Processing Unitの略語である。
【0026】
メモリ921は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ921の具体例は、SRAM、あるいはDRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略語である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略語である。
【0027】
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬の記憶媒体であってもよい。HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
【0028】
入力インタフェース930は、マウス、キーボード、あるいはタッチパネルといった入力装置と接続されるポートである。入力インタフェース930は、具体的には、USB端子である。なお、入力インタフェース930は、LANと接続されるポートであってもよい。USBは、Universal Serial Busの略語である。LANは、Local Area Networkの略語である。
出力インタフェース940は、ディスプレイといった表示機器941のケーブルが接続されるポートである。出力インタフェース940は、具体的には、USB端子またはHDMI(登録商標)端子である。ディスプレイは、具体的には、LCDである。HDMI(登録商標)は、High Definition Multimedia Interfaceの略語である。LCDは、Liquid Crystal Displayの略語である。
【0029】
通信装置950は、レシーバとトランスミッタを有する。通信装置950は、具体的には、通信チップまたはNICである。NICは、Network Interface Cardの略語である。
【0030】
地上設備700の機能を実現するプログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、プログラムだけでなく、OSも記憶されている。OSは、Operating Systemの略語である。プロセッサ910は、OSを実行しながら、プログラムを実行する。プログラムおよびOSは、補助記憶装置922に記憶されていてもよい。補助記憶装置922に記憶されているプログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、地上設備700の機能を実現するプログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
【0031】
地上設備700は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、プログラムを実行する装置である。
【0032】
プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ921、補助記憶装置922、または、プロセッサ910内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0033】
地上設備700の各部の「部」を「処理」、「手順」、「手段」、「段階」、「サーキットリ」あるいは「工程」に読み替えてもよい。また、地上設備700の各部の「部」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」に読み替えてもよい。「処理」、「手順」、「手段」、「段階」、「サーキットリ」あるいは「工程」は、互いに読み換えが可能である。
【0034】
地上設備700は、例えば、各監視衛星300を制御するため、各監視衛星300に対する各種コマンドを生成する。また、地上設備700は、各監視衛星300から得られる監視データを解析して、監視対象である飛翔体の情報(例えば位置情報)を生成する。
通信装置950は、各監視衛星300と通信を行う。具体的には、通信装置950は、各種コマンドを各監視衛星300へ送信する。また、通信装置950は、各監視衛星300から送信される監視データを受信する。
本実施の形態では、通信装置950は、静止衛星400を経由して、各監視衛星300と通信を行う。
【0035】
地上設備700と衛星制御装置35とのそれぞれに備わる処理回路について説明する。
処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、上述したようにメモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせで実現することができる。
専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0036】
衛星高度および軌道傾斜角の調整について説明する。
監視衛星300の軌道面の法線を北極側から見た相対角度は、衛星高度と軌道傾斜角との相関で成立する。
1日当たりの衛星周回数を維持する高度条件において、適切な軌道傾斜角を微調整することにより、軌道面間の相対角度を維持したまま、衛星コンステレーションの運用が可能となる。
地上設備700は、各監視衛星300の高度を制御するためのコマンドを生成する。また、地上設備700は、各監視衛星300の軌道傾斜角を制御するためのコマンドを生成する。そして、地上設備700は、これらコマンドを各監視衛星300へ送信する。
各監視衛星300において、衛星制御装置35は、これらのコマンドにしたがって、衛星高度と軌道傾斜角とのそれぞれを調整する。具体的には、衛星制御装置35は、これらのコマンドにしたがって、推進装置33を制御する。推進装置33が衛星速度を変えることにより、衛星高度と軌道傾斜角とを調整することができる。
監視衛星300の飛行速度が増速すると、監視衛星300の高度が上昇する。そして、監視衛星300の高度が上昇すると、監視衛星300の対地速度が減速する。
監視衛星300の飛行速度が減速すると、監視衛星300の高度が下降する。そして、監視衛星300の高度が下降すると、監視衛星300の対地速度が増速する。
監視衛星300が赤道上空を横切る地点(分点)において推進装置33が軌道面と直交する方向へ推力を発生させれば、効果的に軌道傾斜角を微調整することができる。
【0037】
***衛星情報伝送システム500の機能***
図1において、実線で表された通信は光通信である。また、点線で表された通信は電波通信である。
複数の静止衛星の静止衛星400同士では、光通信により情報授受が行われる。
監視衛星300と複数の静止衛星の各静止衛星400との間は、電波通信により情報授受が行われる。
複数の静止衛星の各静止衛星400と地上設備700との間は、電波通信により情報授受が行われる。
【0038】
監視衛星300は、経度方向に移動して地球ないし宇宙物体を監視する。このとき、監視衛星300では、地上設備700との間の通信が許可される領域が限定される。
図1に示すように、本実施の形態では、監視衛星300は、常に、地上設備700との間の通信が許可されている静止衛星400を経由して衛星情報200を伝送する。これにより、監視衛星300と地上設備700との通信授受が常時可能になるという効果がある。
【0039】
衛星間の通信手段として光通信と電波通信が選択できる。
光通信では大容量通信できるというメリットと、秘匿通信を実現できるというメリットがある。一方、光通信では送信側と受信側の光軸を高精度に一致させる必要があるため、通信装置を搭載する衛星の高精度指向方向制御と、高精度指向安定度を実現する必要がある。さらに、光通信では光軸ずれの原因となる擾乱抑制が必要不可欠となる。
1機の衛星が同時に複数の通信相手と光通信をする場合は、高精度指向方向制御を同時に複数の通信相手と実施する必要がある。また、通信中の指向安定度を高精度に維持する必要があるため、衛星を整備して運用する技術難度が高く、高コストになるという課題がある。さらに、光軸がずれると通信が途絶し、再度光軸合わせの運用をし直す必要があるため、通信途絶するリスクがあり、復旧に時間を要するという課題がある。
【0040】
複数の静止衛星の間の通信では、静止衛星の相対位置が維持されるので、高精度指向方向制御をして指向安定度を高度に維持することが容易である。
一方、相対的に移動する監視衛星と静止衛星の間の通信では、光軸を一致させたまま指向方向を変更する必要がある。
また、静止衛星と地上設備の間の通信において光通信を採用する場合は、雲があると通信が途絶するという課題があり、被雲率の高い地上設備設置領域においては通信途絶リスクが高いという課題がある。
【0041】
<衛星情報伝送システム500の実施例1>
図4は、本実施の形態に係る衛星情報伝送システム500の実施例1において、高高度からの西方移動時監視を示す図である。
図5は、本実施の形態に係る衛星情報伝送システム500の実施例1において、低高度からの東方移動時監視を示す図である。
【0042】
衛星情報伝送システム500の実施例1では、複数の静止衛星400は2機の気象衛星と2機のデータ中継衛星により構成されている。
【0043】
衛星情報伝送システム500の実施例1では、光通信は静止衛星400間の通信手段に限定する。
例えば、図4では、データ中継衛星Aと気象衛星Bの間、気象衛星Aと気象衛星Bの間、および、気象衛星Bとデータ中継衛星Aの間の各通信は、光通信である。
また、図5では、データ中継衛星Aとデータ中継衛星Bの間、気象衛星Aと気象衛星Bの間、および、気象衛星Bとデータ中継衛星Aの間の各通信は、光通信である。
【0044】
監視衛星300と静止衛星400の間は電波通信とする。
例えば、図4では、データ中継衛星Aと監視衛星300の間、気象衛星Aと監視衛星300の間、気象衛星Bと監視衛星300の間、および、データ中継衛星Bと監視衛星300の間の各通信は、電波通信である。
また、図5では、データ中継衛星Aと監視衛星300の間、気象衛星Aと監視衛星300の間、気象衛星Bと監視衛星300の間、および、データ中継衛星Bと監視衛星300の間の各通信は、電波通信である。
【0045】
静止衛星400と地上設備700の間は電波通信とする。
例えば、図4では、データ中継衛星Aと地上設備700の間、および、データ中継衛星Bと地上設備700の間の各通信は、電波通信である。
また、図5では、データ中継衛星Aと地上設備700の間、気象観測Aと地上設備700の間、および、データ中継衛星Bと地上設備700の間の各通信は、電波通信である。
【0046】
また、図4では、気象衛星Aと地上設備700の間、および、気象衛星Bと地上設備700の間の各通信は、気象情報の授受を行う電波通信である。
また、図5では、気象観測が可能な気象衛星Bと地上設備700の間で、気象情報の授受を行う電波通信が実施されている。
【0047】
図4および図5に示すように、光通信の高精度指向制御が必要な組み合わせを静止衛星400間の通信に限定している。
【0048】
図6は、本実施の形態に係る衛星情報伝送システム500の実施例1における各衛星の詳細構成例を示す図である。
【0049】
静止衛星400は、監視衛星300と情報授受する電波通信装置41と、複数の静止衛星の間の情報授受する光通信装置42とを具備する。
また、静止衛星400は、監視衛星300と情報授受する電波通信装置41として、地球方向西側、地球方向東側、反地球方向西側、および、反地球方向東側の4式以上の電波通信装置41を具備する。
【0050】
図6における光通信装置42の表記である光通信装置(GEO-GEO)は、静止軌道(GEO)を飛翔する静止衛星同士で用いられる光通信装置であることを表している。GEOは、Geostationary Orbitの略語である。
また、図6における電波通信装置41の表記には、電波通信装置(監視衛星-GEO)、電波通信装置(GEO-監視衛星)、電波通信装置(GEO-地上)、および、電波通信装置(地上-GEO)が含まれる。電波通信装置(監視衛星-GEO)と電波通信装置(GEO-監視衛星)は、監視衛星と静止衛星との間の電波通信に用いられる通信装置である。電波通信装置(GEO-地上)と電波通信装置(地上-GEO)は、静止衛星と地上設備との間の電波通信に用いられる通信装置である。
【0051】
監視衛星300は、静止衛星400と電波通信する電波通信装置(監視衛星-GEO)を備える。
データ中継衛星403は、監視衛星300と電波通信する電波通信装置(監視衛星-GEO)と、光通信装置(GEO-GEO)と、地上設備700と電波通信する電波通信装置(GEO-地上)を備える。
気象衛星404は、電波通信装置(監視衛星-GEO)と、光通信装置(GEO-GEO)と、電波通信装置(GEO-地上)と、気象観測機器といった気象ミッション機器を備える。
地上設備700は、静止衛星400と電波通信する電波通信装置(地上-GEO)を備える。
【0052】
地上設備700には、固定基地局、監視情報センター、および、気象情報センターといった地上設備がある。
また、地上設備700に移動体600が含まれていてもよい。
静止衛星400と地上設備700の間の通信において、地上設備700が移動体600であってもよい。例えば、地上設備700は、緊急対応を必要とする場合に、直接対処行動をする移動体である。地上設備700がこのような移動体600であれば、監視衛星300が緊急対応を必要とする情報を伝送する場合に、移動体600に対して遅延時間なくリアルタイムで情報授受できるという効果がある。
これにより、緊急事態が発生した場合に、即応型デブリ除去衛星の打上など緊急対処行動が迅速に実施できるという効果がある。緊急事態の例として、デブリといった不審物体が自国衛星へ接近するといった事態がある。
【0053】
図5では、監視衛星300は、静止軌道に対して低高度から、東方移動しながら静止軌道の宇宙物体を監視する。このとき、静止衛星400の地球指向面側を飛翔する。よって、監視衛星300と静止衛星400の間の通信装置は、静止衛星400の地球指向面側に通信視野を確保する必要がある。
また、図4では、監視衛星300は、静止軌道に対して高高度から、西方移動しながら静止軌道の宇宙物体、または日照の地球表面を監視する。このとき、監視衛星300は静止衛星400の地球指向面と反対側を飛翔する。よって、監視衛星300と静止衛星400の間の通信装置は、静止衛星400の反地球指向面側に通信視野を確保する必要がある。
また、監視衛星300が静止衛星400の東側を飛翔する場合と、監視衛星300が静止衛星400の西側を飛翔する場合のいずれの場合も通信ができる必要がある。
【0054】
光通信では、静止衛星400における構体、太陽電池パドル、あるいはアンテナといった遮蔽物があると通信は途絶してしまう。よって、高高度、低高度、東側、および、西側の光通信視野を確保するためには、4式以上の光通信装置を具備する必要があり、コストが非常に高コストになるという課題がある。
光通信装置を長いブームの先端に配置して大角度に視野変更する機能を具備すれば、通信装置の数量を減らすことができる。しかし、長いブームの先端では高精度の指向精度と安定度を実現するのが難しいという課題がある。
【0055】
このような光通信の課題に対して、監視衛星300と静止衛星400が電波通信して、近傍通過時に近傍通信する前提であれば、安価で小型軽量の固定アンテナを用いた電波通信装置が採用できる。よって、低コストで4式以上の電波通信装置を具備することができるという効果がある。
【0056】
<データ中継衛星403の構成例>
図7は、本実施の形態に係るデータ中継衛星403の構成例を示す図である。
【0057】
上述したように、衛星情報伝送システム500の実施例1では、複数の静止衛星400として、2機の気象衛星404と2機のデータ中継衛星403との合計4機を想定している。
【0058】
静止衛星400では南北方向に太陽電池パドルを展開して太陽発電するのが合理的である。よって、太陽電池パドルは、衛星の南北方向に配置され、衛星打上げ時には屏風状に折り畳まれた状態に収納される。そのため、衛星の南北面に対する他の機器配置は最小限に止める。
【0059】
静止衛星400と地上設備700の間の通信では、遠距離大容量通信を実施する。そのため、東西面に大型展開アンテナである電波通信用アンテナを配置する。図7の左図において、電波通信装置(GEO-地上)は静止衛星400と地上設備700との通信に用いられる電波通信用アンテナである。
【0060】
静止衛星間の通信を実施する光通信装置は、静止衛星400では地球指向が一意に決まるので、地球指向面に1式または地球指向面の東側と西側に各1式の2式を配置する。
図7の左図は1式の光通信装置を配置する例であり、図7の右図は2式の光通信装置を配置する例である。
必要最低限の構成は1式であり、低コストで実現できることがメリットである。
一方、静止軌道上で通信する対象が東側と西側の両方に存在する場合、あるいは、衛星搭載機器の視野干渉が避けられない場合には2式の光通信装置を搭載するのが合理的である。また、静止衛星間の通信であれば、相対位置変動がほぼないので、東側と西側で2式の光通信を同時運用することも不可能ではない。
【0061】
センターに1式の光通信装置を搭載する場合は、光軸指向変動機能として、東西方向の大角度変更機能が必要である。
2式の光通信装置を搭載する場合は、光軸視線ベクトルが地球方向から南側に傾斜して1式、地球方向から北側に傾斜して1式配置すると、広い視野範囲が確保できて合理的である。
光通信装置は、通常、南北方向と東西方向に光軸方向を変更する粗精度2軸指向方向変更装置と、光軸を高精度に指向制御するための精精度2軸指向方向装置を具備している。
【0062】
監視衛星300と静止衛星400と間の通信装置は、監視衛星300の相対位置が経度方向と高度方向に大きな範囲で移動しても電波通信が可能となる必要がある。よって、最低限の構成でも地球指向面の東西と反地球指向面の東西の合計4式具備するのが望ましい。
さらに、同時に通信する監視衛星数を増やす場合、あるいは、視野確保の制約がある場合には、適宜電波通信装置の搭載数を増やすことにより運用制約を減らすことができる。
静止衛星400がデータ中継衛星403の場合、データ中継衛星403は日本の上空から東西方向に離して配置するのが合理的である。このことから、静止軌道の西方に位置する光通信装置を衛星の東面に搭載し、東方に位置する光通信装置を衛星の西面に搭載するのも合理的である。
【0063】
<気象衛星404の構成例>
図8は、本実施の形態に係る気象衛星404の構成例を示す図である。
【0064】
静止衛星400が気象衛星404の場合、地球指向面に気象観測機器が搭載される。よって、放熱視野を確保するために、地球指向面の南北方向のどちらか一方は気象観測機器が占有する前提で通信装置を配置する。
気象衛星404の光通信装置の主たる搭載目的が、主従2機の気象衛星同士の相互情報通信である場合がある。このとき、静止軌道上の2機の気象衛星の静止軌道上配置に応じて、1機が東面、他の1機が西面に光通信装置を搭載するのも合理的である。この場合は気象衛星同士の通信を実施していない空き時間を使って、気象衛星とデータ中継衛星の通信に光通信装置を流用することができる。この場合、データ中継衛星の東西方向の位置としては、光通信する相手の気象衛星と同じ方向に位置するデータ中継衛星に限定されることになる。
【0065】
<衛星情報伝送システム500の実施例2>
図9は、本実施の形態に係る衛星情報伝送システム500の実施例2において、高高度からの西方移動時監視を示す図である。
図10は、本実施の形態に係る衛星情報伝送システム500の実施例2において、低高度からの東方移動時監視を示す図である。
【0066】
監視衛星300と静止衛星400の間の通信としては、監視衛星300が東方移動しながら監視する場合は静止軌道よりも低高度を飛翔する。また、監視衛星300が西方移動しながら監視する場合は静止軌道よりも高高度を飛翔する。このため、静止衛星400から見れば地球指向方向を高度方向として、地球指向面側の東方向を指向する電波通信装置と西側を指向する電波通信装置が、東方移動する監視衛星300と通信する。また、静止衛星400において、地球指向と反対面側の東方向を指向する電波通信装置と西側を指向する電波通信装置が、西方移動する監視衛星300と通信をする。
【0067】
監視衛星300は宇宙空間の様々な物体を監視するために様々な角度に指向制御する。よって、監視衛星300には多数の電波通信装置を具備するか、または静止衛星400と通信する際に、電波通信視野が確保できる方向に衛星を指向変更して通信を実施することになる。
監視衛星300が太陽光反射を利用する光学監視装置により地球ないし静止軌道上物体を監視する場合には、地球の昼の時間帯には高高度から西方移動しながら監視することになり、地球の夜の時間帯には、低高度から東方移動しながら監視することになる。東方移動して監視する場合には光学監視装置の視線ベクトルが地球と反対側を指向することになる。
【0068】
静止衛星400が気象衛星404の場合には、気象観測機器が赤外線観測装置を含む。よって、夜間であっても気象観測を実施可能である。このため、気象衛星404では、気象衛星情報を地上設備700と授受する電波通信装置を昼の時間帯から夜の時間帯まで概ね占有する。よって、監視衛星300のデータ中継を同時に実施するためには気象衛星404と地上設備700の間の電波通信装置を2式具備して相乗りするのが合理的である。
なお、気象衛星404では、太陽が地球の影に入る日陰入り前と、地球の影から出た日陰開け後に気象観測機器への太陽光入射を回避する必要がある。このため、気象観測を中断する時間帯が存在する。この時間帯に気象衛星404と地上設備700の間の電波通信装置を流用すれば、1式の電波通信装置で共用することもできる。この方法によれば、衛星情報伝送システム全体として低コスト化できるという効果がある。
【0069】
また、気象衛星404が2機の気象衛星同士で情報共有する目的で光通信装置を具備する場合がある。この場合、気象情報授受のための通信の空き時間を利用して、監視衛星300が気象衛星404と衛星情報200を授受し、気象衛星404がデータ中継衛星403を経由して地上設備700に衛星情報授受する。これにより、気象観測を実施中であっても、気象衛星404がデータ中継の役割を果たすことが可能である。また、一方の気象衛星が他方の気象衛星の近傍を通過する際に、常時通信環境を確立できるという効果がある。
気象衛星同士の情報共有の目的がバックアップ体制構築である場合がある。この場合は、バックアップ側の気象衛星における気象観測の空き時間に光通信装置を流用できる可能性が高い。よって、衛星情報伝送システム全体として低コスト化ができるという効果がある。
【0070】
以上の実施の形態1では、衛星情報伝送システムおよび各衛星といった各システムおよび各装置の構成は、上述した実施の形態のような構成でなくてもよい。各システムおよび各装置の構成は、上述した実施の形態で説明した機能を実現することができれば、どのような構成でもよい。
また、実施の形態1のうち、複数の部分あるいは実施例を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、この実施の形態のうち、1つの部分あるいは実施例を実施しても構わない。その他、この実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0071】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示の範囲、本開示の適用物の範囲、および本開示の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
200 衛星情報、300 監視衛星、31 衛星通信装置、32 監視装置、33 推進装置、34 姿勢制御装置、35 衛星制御装置、36 電源装置、400 静止衛星、401 通信衛星、402 測位衛星、403 データ中継衛星、404 気象衛星、405 観測衛星、41 電波通信装置、42 光通信装置、500 衛星情報伝送システム、600 移動体、700 地上設備、910 プロセッサ、921 メモリ、922 補助記憶装置、930 入力インタフェース、940 出力インタフェース、950 通信装置。
図1
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