(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】学習装置、電力需要推論装置、系統制御システム、需給制御システム、設備形成支援システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241220BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/38 130
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2021194799
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】安並 一浩
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-115276(JP,A)
【文献】特開平07-123589(JP,A)
【文献】特開2010-193594(JP,A)
【文献】特開2014-143835(JP,A)
【文献】特開2019-109638(JP,A)
【文献】特開2020-194239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要の実績値と、当該実績値に対応する日時を示す日時情報とを取得する取得部と、
前記日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、
正解データである前記実績値と当該実績値に対応する前記特徴量とを用いて、前記特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを機械学習により生成する学習モデル生成部と、
を備えることを特徴とする学習装置。
【請求項2】
前記指標は、南中時刻における理論日射強度であり、
前記特徴量生成部は、前記実績値に対応する需要家の緯度と、前記実績値に対応する前記日時情報とを用いて前記指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記学習済モデルは時間帯ごとに生成されることを特徴とする請求項1または2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記特徴量は、さらに、前記日時情報から抽出された月を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の学習装置。
【請求項5】
前記特徴量は、さらに、前記実績値に対応する日時の気温および湿度のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の学習装置。
【請求項6】
前記特徴量は、さらに、前記日時情報に対応する日の前日の電力需要の実績値を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の学習装置。
【請求項7】
前記特徴量は、さらに、前記日時情報に対応する日における電力需要の実績値を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の学習装置。
【請求項8】
電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得する取得部と、
前記推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、
太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルに、前記特徴量生成部によって生成された前記特徴量を入力することにより電力需要を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする電力需要推論装置。
【請求項9】
前記指標は、南中時刻における理論日射強度であり、
前記特徴量生成部は、電力需要の推論対象の需要家の緯度と、前記推論対象日時情報とを用いて前記指標を算出することを特徴とする請求項8に記載の電力需要推論装置。
【請求項10】
前記学習済モデルは時間帯ごとに生成され、
前記推論部は、前記推論対象日時情報に対応する前記学習済モデルを選択し、選択した前記学習済モデルに前記特徴量を入力することにより電力需要を推論することを特徴とする請求項8または9に記載の電力需要推論装置。
【請求項11】
前記特徴量は、さらに、前記推論対象日時情報から抽出された月を含むことを特徴とする請求項8から10のいずれか1つに記載の電力需要推論装置。
【請求項12】
前記特徴量は、さらに、前記推論対象日時情報が示す日時の気温および湿度のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか1つに記載の電力需要推論装置。
【請求項13】
前記特徴量は、さらに、前記推論対象日時情報に対応する日の前日の電力需要の実績値を含むことを特徴とする請求項8から12のいずれか1つに記載の電力需要推論装置。
【請求項14】
前記特徴量は、さらに、前記推論対象日時情報に対応する日における電力需要の実績値を含むことを特徴とする請求項8から13のいずれか1つに記載の電力需要推論装置。
【請求項15】
電力需要の実績値と、当該実績値に対応する日時を示す日時情報とを取得する取得部と、
前記日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、
正解データである前記実績値と当該実績値に対応する前記特徴量とを用いて、前記特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを機械学習により生成する学習モデル生成部と、
前記学習済モデルを用いて電力需要を推論する推論部と、
を備え、
前記取得部は、電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得し、
前記特徴量生成部は、前記推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む推論用特徴量を生成し、
前記推論部は、前記推論用特徴量を前記学習済モデルに入力することで前記電力需要を推論することを特徴とする電力需要推論装置。
【請求項16】
電力需要を推論する電力需要推論装置と、
前記電力需要推論装置によって推論された前記電力需要を用いて電力系統の電圧を制御する制御装置と、
を備え、
前記電力需要推論装置は、
電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得する取得部と、
前記推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、
太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルに、前記特徴量生成部によって生成された前記特徴量を入力することにより電力需要を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする系統制御システム。
【請求項17】
電力需要を推論する電力需要推論装置と、
前記電力需要推論装置によって推論された前記電力需要を用いて電力の需給制御を行う需給制御装置と、
を備え、
前記電力需要推論装置は、
電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得する取得部と、
前記推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、
太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルに、前記特徴量生成部によって生成された前記特徴量を入力することにより電力需要を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする需給制御システム。
【請求項18】
電力需要を推論する電力需要推論装置と、
前記電力需要推論装置によって推論された前記電力需要を用いて電力系統の状態を提示する状態管理装置と、
を備え、
前記電力需要推論装置は、
電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得する取得部と、
前記推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、
太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルに、前記特徴量生成部によって生成された前記特徴量を入力することにより電力需要を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする設備形成支援システム。
【請求項19】
コンピュータシステムに、
電力需要の実績値と、当該実績値に対応する日時を示す日時情報とを取得するステップと、
前記日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成するステップと、
正解データである前記実績値と当該実績値に対応する前記特徴量とを用いて、前記特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを機械学習により生成するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項20】
コンピュータシステムに、
電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得するステップと、
前記推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成するステップと、
太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルに、生成された前記特徴量を入力することにより電力需要を推論するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力需要を推論するための学習を行う学習装置、電力需要推論装置、系統制御システム、需給制御システム、設備形成支援システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統においては、需給制御、設備形成、電力系統の電圧制御をはじめとして様々な目的で電力需要の予測や推定が行われている。例えば、特許文献1には、時刻tの需要予測を行う際に、「予測実施時点から所定期間(例えば、49日間)の時刻tの平均電力需要」、「予測実施時点における平均需要と需要の実績値の差」、「冷暖房効果変数(気温)」、「土曜ダミー変数(土曜日の識別フラグ)」、「日曜・祝日ダミー変数(日曜、祝日の識別フラグ)」、「日射影響変数(日射量)」等を入力データとして利用し、重回帰分析により、需要予測を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、回帰分析日射量を予測するために日射量の実績値の取得が必要である。日射量の実績値は取得できない地域が多く所望の地域の日射量を取得するために日射計の設置が必要となりコストが増加する。このため、日射量の実績値を使用せずに、精度よく電力需要を推論するための技術が望まれる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、日射量の実績値を使用せずに、電力需要の精度のよい推論を実現することができる学習装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる学習装置は、電力需要の実績値と、当該実績値に対応する日時を示す日時情報とを取得する取得部と、日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成する特徴量生成部と、正解データである実績値と当該実績値に対応する特徴量とを用いて、特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを機械学習により生成する学習モデル生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる学習装置は、日射量の実績値を使用せずに、電力需要の精度のよい推論を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1にかかる学習装置を含む系統制御システムの構成例を示す図
【
図3】実施の形態1の学習装置における学習時の処理手順の一例を示すフローチャート
【
図4】「南中時刻における理論日射強度」の一例を示す図
【
図5】実施の形態1の電力需要推論装置における電力需要の推論時の処理手順の一例を示すフローチャート
【
図6】実施の形態1の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図
【
図7】実施の形態1の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図
【
図8】実施の形態1の学習装置および電力需要推論装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
【
図9】実施の形態2にかかる学習装置を含む系統制御システムの構成例を示す図
【
図10】実施の形態2において特徴量として用いられる電力需要の実績値の一例を示す図
【
図11】実施の形態2の電力需要推論装置における電力需要の推論時の処理手順の一例を示すフローチャート
【
図12】実施の形態2の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図
【
図13】実施の形態2の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図
【
図14】実施の形態3において特徴量として用いられる電力需要の実績値の一例を示す図
【
図15】実施の形態3の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図
【
図16】実施の形態3の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる学習装置、電力需要推論装置、系統制御システム、需給制御システム、設備形成支援システムおよびプログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる学習装置を含む系統制御システムの構成例を示す図である。本実施の形態の系統制御システム4は、学習装置1、電力需要推論装置2および制御装置3を備える。学習装置1は、「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」、「平日/土日祝日の種別」を特徴量とし、電力需要を正解データとした機械学習により電力需要を予測するための学習済モデルを生成する。電力需要推論装置2は、推論対象の日の特徴量を学習装置1によって生成された学習済モデルに入力することで電力需要を推論する。制御装置3は、電力需要推論装置2によって推論された電力需要を用いて、例えば、電力系統の制御機器や分散電源を用いて電流・電圧を制御する。
【0011】
正解データとして与えられる電力需要は、例えば、スマートメータと呼ばれる電力量の計量装置による計測値、または当該計量装置の計測値から算出された値である。詳細には、例えば、発電設備を有していない需要家については、負荷によって消費された電力が計量装置によって計測されているため、計量装置の計測値を正解データとして用いることができる。また、全量買取制度の契約(以下、全量買取契約という)の対象となっている需要家においては、発電出力と電力需要とが個別に計測されているため、計測された電力需要を正解データとして用いることができる。一方、余剰電力買取制度の契約(以下、余剰買取契約という)の対象となっている需要家については、電力需要から発電出力が差し引かれた残余需要が計量装置によって計測されるため、計測された残余需要に発電出力が加えられた電力需要を正解データとして用いることができる。このとき用いられる発電出力は、計量装置とは別に計測された値であってもよいし、任意の方法で推定された値であってもよい。なお、正解データとして与えられる電力需要は、上述した例に限定されず、他の手段によって計測された実績値または他の方法で算出されたものであってもよい。
【0012】
電力需要推論装置2によって推論が行われる際の推論対象の日は、将来であってもよいし、過去であってもよい。すなわち、電力需要推論装置2は、学習済モデルを用いて電力需要を予測してもよいし、学習済モデルを用いて現在または過去の電力需要を推定してもよい。
図1に示した例では、電力系統の電圧および電流のうち少なくとも1つの制御に用いられるため、推論対象の日は例えば将来である。または、制御装置3が、電力系統における電圧、電流または電力量の計測値を用いて電力需要を算出し、算出した電力需要を用いて制御を行う場合に、欠測が生じたときに、電力需要推論装置2によって推論された電力需要を、計測結果の現在値の代用として用いてもよい。
【0013】
図1では、学習装置1および電力需要推論装置2が、系統制御システム4に含まれ、電力需要推論装置2によって推論された電力需要が系統制御に用いられる例を示しているが、これに限らず、推論された電力需要は、例えば、需給制御、設備形成などに用いられてもよい。また、電力需要推論装置2によって推論された電力需要は、VPP(Virtual Power Plant)やDR(Demand Response)の制御に用いられてもよいし、需要家におけるエネルギー管理に用いられてもよい。VPPやDRの制御に用いられる場合には、推論の対象となる電力需要および正解データは、複数の需要家の電力需要の合計値であってもよい。また、電力需要推論装置2によって推論された電力需要が需要家におけるエネルギー管理に用いられる場合、例えば、需要家におけるエネルギー管理装置が、推定された電力需要を表示してもよいし、分散型電源(需要家の蓄電池など)の制御を行う際に推定された電力需要を用いてもよい。
【0014】
電力需要推論装置2によって推論された電力需要が需給制御に用いられる場合、例えば、需給制御システムが、学習装置1および電力需要推論装置2を備えるとともに、需給制御を行う需給制御装置を備え、需給制御装置が、電力需要推論装置2によって予測された電力需要を用いて、電力の需給制御を行う。また、電力需要推論装置2によって推論された電力需要が設備形成の支援のために用いられる場合、設備形成支援システムが、学習装置1および電力需要推論装置2を備えるとともに、電力系統の状態を管理する状態管理装置を備え、状態管理装置が、電力需要推論装置2によって推論された電力需要を用いて電力系統の状態を管理し、運用者に電力系統の状態を提示することで設備形成を支援する。例えば、状態管理装置は、電力需要推論装置2によって予測された電力需要を用いて電力系統の将来の状態を求めてもよいし、電力需要推論装置2によって推論された電力需要を、計量装置の欠測値の代わりに用いて電力系統の過去の状態を推定してもよい。すなわち、電力需要推論装置2による推論結果が欠測値の補完に用いられてもよい。
【0015】
また、学習装置1によって生成される学習済モデルが複数の電力需要推論装置2で用いられてもよい。例えば、学習装置1を1つ設け、当該学習装置1によって生成された学習済モデルを記憶する電力需要推論装置2を、需給制御システムと設備形成支援システムとにそれぞれ設けてもよい。
【0016】
次に、学習装置1および電力需要推論装置2の構成例について説明する。
図1に示すように、学習装置1は、取得部11、特徴量生成部12、学習モデル生成部13、モデル記憶部14およびデータ保存部15を備える。
【0017】
取得部11は、電力需要の実績値と、当該実績値に対応する日時を示す日時情報とを取得する。具体的には、取得部11は、タイムスタンプ付きの電力需要である電力需要データを取得し、取得した電力需要データをデータ保存部15へ格納する。タイムスタンプは、電力需要の実績値である電力需要データに対応する日時を示す日時情報である。なお、以下に述べる例では、電力需要の実績値として上述した計量装置の計測値または計量装置の計測値を用いて算出された電力需要を用いることとする。タイムスタンプは、例えば、計量装置によって計測されたタイミングで付与されるが、これに限らず、計測値を収集するサーバなどの他の装置によって、当該他の装置が計測値を受信したタイミングで付与されてもよい。取得部11は、例えば、図示しない装置から電力需要データを取得する。また、ここでは、計量装置は、30分周期で計測値を送信しているとし、タイムスタンプ付きの電力需要も30分ごとの値が得られるとする。なお、複数の需要家の電力需要の合計値を推論の対象とする場合には、取得部11が取得する電力需要データ自体が複数の需要家の電力需要の合計値であってもよいし、取得部11が取得する電力需要データは需要家単位であり、特徴量生成部12がデータ保存部15に格納された需要家データを用いて複数の需要家の電力需要の合計値を算出してもよい。
【0018】
特徴量生成部12は、データ保存部15に格納された電力需要データに付与されたタイムスタンプを用いて特徴量を生成し、生成した特徴量を電力需要データに対応付けてデータ保存部15に格納する。具体的には、特徴量生成部12は、タイムスタンプから「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」、「平日/土日祝日の種別」を算出する。特徴量の算出方法については後述する。
【0019】
学習モデル生成部13は、正解データである電力需要の実績値と当該実績値に対応する特徴量とを用いて、特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを機械学習により生成する。具体的には、学習モデル生成部13は、データ保存部15に格納されている特徴量と当該特徴量に対応する正解データである電力需要データとを用いて、機械学習によって学習済モデルを生成し、生成した学習済モデルをモデル記憶部14に格納する。学習済モデルは、1日における時間帯ごとに作成される。例えば、計測値の取得周期と同じ30分ごとに、学習済モデルを生成する。すなわち、例えば、0時に対応する学習済モデル、0時30分に対応する学習済モデル、1時に対応する学習済モデル、…といったように、48個の学習済モデルが生成される。例えば、0時30分に対応する学習済モデルは、タイムスタンプで示される時刻が0時30分の電力需要データを用いて生成される。また、各計測値は、例えば、タイムスタンプで示される時刻から30分間の積算値であるが、これに限らず、タイムスタンプで示される時刻を中心とする30分間の積算値であってもよいし、タイムスタンプで示される時刻より30分前からタイムスタンプで示される時刻までの30分間の積算値でもよく、タイムスタンプと対応する30分の積算期間との関係はこの例に限定されない。なお、ここでは、学習済モデルが作成される時間単位を30分とした例について説明するが、学習済モデルが作成される時間単位は30分に限定されない。
【0020】
学習済モデルを生成するための機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、ランダムフォレスト(Random Forest)、回帰木、重回帰、サポートベクトル回帰、ニューラルネットワークを用いることができるが、これらに限らず、回帰型のアルゴリズムであればどのようなものが用いられてもよい。
【0021】
モデル記憶部14は学習済モデルを記憶する。また、モデル記憶部14には、学習途中の学習モデルが記憶されてもよい。データ保存部15は、需要家の緯度を含む需要家情報と、電力需要データと、特徴量とを記憶する。需要家の緯度は、後述するように、「南中時刻における理論日射強度」の算出に用いられる。
【0022】
図2は、本実施の形態の需要家情報の一例を示す図である。需要家情報は、例えば、各需要家の契約内容や住所を示す契約情報に基づいて作成される。
図2に示した例では、需要家情報は、需要家ごとの、契約電力と、住所と、緯度とを含む。緯度は、住所に基づいてあらかじめ算出されて需要家情報として格納される。ここでは、緯度があらかじめ算出される例を説明するが、特徴量の生成時に、住所に基づいて緯度が算出されてもよい。また、
図2に示した例は一例であり、需要家情報は、需要家の緯度、または需要家の緯度を算出するために必要な情報が含まれていればよく、需要家情報の構成は
図2に示した例に限定されない。
【0023】
図1の説明に戻る。電力需要推論装置2は、モデル記憶部21、取得部22、特徴量生成部23、推論部24、出力部25およびデータ保存部26を備える。
【0024】
モデル記憶部21には、学習装置1によって生成された学習済モデルが格納される。モデル記憶部21にあらかじめこの学習済モデルが格納されてもよいし、電力需要推論装置2の図示しない通信部が学習装置1からこの学習済モデルを受信してモデル記憶部21に格納してもよい。
【0025】
取得部22は、電力需要の推論の対象日時を示す推論対象日時情報を取得し、取得した推論対象日時情報を特徴量生成部23および推論部24へ出力する。取得部22は、運用者などから入力を受け付けることで推論対象日時情報を取得してもよいし、他の装置から推論対象日時情報を受信することで推論対象日時情報を取得してもよい。特徴量生成部23は、推論対象日時情報を用いて特徴量生成部12と同様に特徴量を生成し、データ保存部26に格納する。
【0026】
推論部24は、モデル記憶部21に格納されている学習済モデルにデータ保存部26に格納されている特徴量を入力することで電力需要を推論し、推論結果をデータ保存部26に格納する。電力需要の予測を行う場合には、推論結果は電力需要の予測値であり、欠測値の補完に用いられる場合には、推論結果は欠測が生じた日時に対応する電力需要の推定値である。出力部25は、データ保存部26に格納されている推論結果を読み出し、読み出した推論結果を制御装置3へ送信する。なお、出力部25は、表示機能を有し推論結果を表示してもよい。
【0027】
データ保存部26は、需要家情報、特徴量および推論結果を記憶する。需要家情報は、学習装置1のデータ保存部15に格納される需要家情報と同様である。
【0028】
図1に示した例では、学習装置1と電力需要推論装置2とが個別に設けられているが、これに限らず、電力需要推論装置2が学習装置1としての機能を有することで、学習装置1と電力需要推論装置2とが一体化されていてもよい。この場合、電力需要推論装置2に学習モデル生成部13が追加され、学習モデル生成部13は学習済モデルをモデル記憶部21に格納する。また、この場合、取得部11、特徴量生成部12、データ保存部15が、電力需要推論装置2に追加されてもよいが、取得部22、特徴量生成部23、データ保存部26が、それぞれ取得部11、特徴量生成部12、データ保存部15としての機能も有することで取得部22、特徴量生成部23、データ保存部26が学習時と推論時とで共用されてもよい。
【0029】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
図3は、本実施の形態の学習装置1における学習時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、学習装置1は、電力需要データを取得する(ステップS1)。詳細には、取得部11が、タイムスタンプ付きの電力需要データを取得し、データ保存部15に格納する。
【0030】
次に、学習装置1は、特徴量を生成する(ステップS2)。詳細には、特徴量生成部12が、次のように、「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」および「平日/土日祝日の種別」を、特徴量として算出する。
【0031】
例えば、特徴量生成部12は、日付ごとの、曜日と祝日であるか否かを示す情報とを含むカレンダー情報を保持し、カレンダー情報を用いてタイムスタンプに対応する日の「曜日(祝日は別扱い)」、「平日/土日祝日の種別」を算出する。なお、カレンダー情報として、一般的な曜日および祝日を示すカレンダーを示す情報を用いてもよいし、地域特有の休日を反映したカレンダーを示す情報を用いてもよいし、企業、事業所といった需要家特有の勤務日と休日とを反映したカレンダーを示す情報を用いてもよい。特徴量生成部12は、「曜日(祝日は別扱い)」については、例えば、各タイムスタンプに対応する曜日を求めた後に、祝日を抽出し祝日として抽出されたタイムスタンプに対応する「曜日(祝日は別扱い)」を「祝日」とし、祝日以外については曜日をそのまま「曜日(祝日は別扱い)」として用いる。「月」については、特徴量生成部12は、タイムスタンプから「月」に対応する部分を抽出する。
【0032】
また、特徴量生成部12は、タイムスタンプとデータ保存部15に格納されている需要家情報に含まれる需要家の緯度とに基づいて、電力需要データに対応する「南中時刻における理論日射強度」を算出する。具体的には、例えば、特徴量生成部12は、「水環境の気象学」(近藤純正編著、朝倉書店、1994年)に記載されている下記式によって「南中時刻における理論日射強度」であるStを算出する。なお、I00は太陽定数(1365W/m2)、θは天頂角、φは緯度、δは太陽の赤緯、hは太陽の南中からの時角、Mは月、DAYは日、HOURは時間、Hnは南中時刻である。
St=I00・(d0/d)2・cosθ
cosθ=sinφsinδ+cosφcosδcosh
(d0/d)2=1.00011+0.034221cosη
+0.00128sinη+0.000719cos2η
+0.000077sin2η
δ=sin-1(0.398sina2)
a2=4.871+η+0.033sinη
η=(2π/365)・i
i=30.36・(M-1)+DAY
h=(HOUR-Hn)・15°
【0033】
南中時刻においては、HOUR=Hnであるため、h=0である。上記式のうち、I00は定数であり、(d0/d)2は月日によって定まる値であり、cosθは月日と緯度によって定める値であるため、計算対象の月日と緯度とを入力すれば、「南中時刻における理論日射強度」が算出できることになる。
【0034】
図4は、「南中時刻における理論日射強度」の一例を示す図である。
図4において、横軸は日付を示し縦軸は日射強度を示している。このように、「南中時刻における理論日射強度」は、1年を1周期として変化し、春と秋では同程度の値となり、夏は春および秋より高く冬は春および秋より低い値となる。本実施の形態では、このように、内部的に保持している情報である需要家の緯度と、月日とを用いて「南中時刻における理論日射強度」を算出することができる。このため、外部から情報を取得したり、日射計を設置したりする必要がない。後述する推論時にも、同様に、推論対象日時情報と緯度とから特徴量を算出することができる。このため、コストを抑えて電力需要を推論することができる。
【0035】
また、各需要家の住所に基づく緯度を用いる代わりに、エリア単位で同一の緯度を用いてもよい。例えば、都道府県または市町村などのエリアごとに代表の緯度を定めておき、同一のエリア内の需要家に関しては同一の代表の緯度を用いてもよい。代表の緯度は、エリアの幾何中心であってもよいし、都道府県庁などの庁舎の存在する位置であってもよい。また、推論の対象となる需要家が存在する地理的範囲が定められており需要家間の緯度の差が少ない場合には、需要家ごとの緯度を用いずに代表値としてあらかじめ定めた緯度を需要家によらずに用いてもよい。例えば、同一県内の需要家の電力需要を推定対象とする場合には、県庁所在地などの代表値の緯度を用いてもよい。
【0036】
また、複数の需要家の電力需要の合計値を推論の対象とする場合には、特徴量生成部12は、複数の需要家の緯度の重心を用いて「南中時刻における理論日射強度」を算出してもよい。または、特徴量生成部12は、複数の需要家の緯度を、各需要家の契約電力で重み付けして算出した重心を用いて「南中時刻における理論日射強度」を算出してもよい。
【0037】
本実施の形態では、特徴量に「南中時刻における理論日射強度」を含む例を説明するが、「南中時刻における理論日射強度」に限らず、1年における変化が「南中時刻における理論日射強度」と同様であれば「南中時刻における理論日射強度」以外の量を「南中時刻における理論日射強度」の代わりに用いてもよい。すなわち、特徴量として、太陽の高度に関する指標を用いればよく、太陽の高度に関する指標は、「南中時刻における理論日射強度」であってもよいし、南中時刻から一定時刻ずれた時刻における理論日射強度であってもよいし、南中時刻の太陽高度であってもよいし、日の出から日の入までの時間の長さであってもよいし、日の出時刻および日の入時刻のうちの少なくとも一方であってもよい。また、これらの値を組み合わせて用いてもよい。例えば、「南中時刻における理論日射強度」と日の出時刻と日の入時刻とを特徴量に含めてもよい。
【0038】
また、ここでは、特徴量として「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」および「平日/土日祝日の種別」を用いる例を説明するが、特徴量は太陽の高度に関する指標と曜日に関する情報とを含めばよく、「月」は特徴量として用いられなくてもよい。「曜日(祝日は別扱い)」および「平日/土日祝日の種別」は、いずれも曜日に関する情報であり、曜日に関する情報は、「曜日(祝日は別扱い)」および「平日/土日祝日の種別」の両方であってもよいし一方であってもよい。例えば、「南中時刻における理論日射強度」と「曜日(祝日は別扱い)」との2つを特徴量として用いてもよい。すなわち、特徴量生成部12は、タイムスタンプを用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成すればよい。特徴量は、さらに、タイムスタンプから抽出された「月」を含んでいてもよく、さらに、電力需要の実績値に対応する日時の気温および湿度のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。学習時に生成される特徴量が電力需要の実績値に対応する日時の気温および湿度のうちの少なくとも一方を含む場合推論時に生成される特徴量も、同様に推論対象日時情報が示す日時の気温および湿度のうちの少なくとも一方を含む。
【0039】
また、特徴量に、さらに、気温および湿度のうちの少なくとも一方を含めてもよい。気温および湿度は、日射量に比べて取得しやすい情報であるため、これらのうちの少なくとも一方を追加した場合であってもコストの増加は軽微であると想定される。
【0040】
図3の説明に戻る。次に、学習装置1は、機械学習処理すなわち学習済モデルの生成を実行し(ステップS3)、処理を終了する。詳細には、ステップS3では、学習モデル生成部13が、データ保存部15に格納されている特徴量と当該特徴量に対応する正解データである電力需要データとを用いて、機械学習によって学習済モデルを生成し、生成した学習済モデルをモデル記憶部14に格納する。上述したように、学習済モデルは、時間帯ごとに生成される。例えば、30分単位の各時間帯に対応する48個の学習済モデルが生成される。
【0041】
以上の処理により、電力需要を推論するための学習済モデルが生成される。例えば、学習装置1は、1年分以上のタイムスタンプ付きの電力需要の実績値を用いて学習を行うことで、どの季節についても電力需要を精度良く推論可能な学習済モデルを生成することができる。
【0042】
次に、本実施の形態の電力需要推論装置2における推論について説明する。
図5は、本実施の形態の電力需要推論装置2における電力需要の推論時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0043】
電力需要推論装置2は、特徴量を生成する(ステップS11)。詳細には、取得部22が取得した推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得し、取得した推論対象日時情報を特徴量生成部23へ出力する。特徴量生成部23は、推論対象日時情報とデータ保存部26に含まれる需要家情報の緯度とを用いて、学習装置1の特徴量生成部12と同様に、「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」および「平日/土日祝日の種別」を特徴量として算出する。
【0044】
次に、電力需要推論装置2は、電力需要推論処理を実行する(ステップS12)。詳細には、推論部24が、モデル記憶部21に格納されている学習装置1によって生成された学習済モデル、すなわち太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルに、特徴量を入力することで電力需要の推論結果である推論値を取得し、取得した推論値を推論データ(電力需要推論データ)としてデータ保存部26に格納する。より詳細には、推論部24は、モデル記憶部21に格納されている48個の学習済モデルのうち、取得部22から入力された推論対象日時情報に対応する学習済モデルを選択し、選択した学習済モデルに特徴量を入力することで推論値を取得する。
【0045】
次に、電力需要推論装置2は、電力需要推論データを送信し(ステップS13)、処理を終了する。詳細には、ステップS13では、出力部25が、データ保存部26に推論結果として格納されている推論データを制御装置へ送信する。なお、電力需要の予測を行う場合には、ステップS11では、予測対象の日時を示す推論対象日時情報が入力され、ステップS12では、予測対象の日時に対応する予測値が推論結果として取得される。また、欠測値の代わりとなる値を推定する場合には、ステップS11では、欠測値に対応する日時を示す推論対象日時情報が入力され、ステップS12では、欠測値に対応する推定データが推論結果として取得される。本実施の形態では、例えば、1週間分の欠測がある場合でも、1週間分の欠測値の代用として、電力需要の推論結果を用いることができる。
【0046】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
図6および
図7は、本実施の形態の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図である。
図6および
図7において、横軸は日付を示し、縦軸は有効電力を示している。また、
図6および
図7において、破線は本実施の形態の学習済モデルを用いた推論によって予測された予測値を示し、実線は対応する日時の実測値を示す。
図6では、秋季における予測値と実績値との比較を示し、
図7では、冬季における予測値と実績値との比較を示す。
図6および
図7に示すように、本実施の形態の学習済モデルを用いた推論によって予測された予測値は実測値とほぼ一致する。このように、本実施の形態では、電力需要を推論するための精度の高い学習済モデルを生成することができる。これにより、日射量の実績値を使用せずに、電力需要の精度のよい推論を実現することができる。
【0047】
次に、本実施の形態の学習装置1および電力需要推論装置2のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の学習装置1は、コンピュータシステム上で、学習装置1における処理が記述されたコンピュータプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが学習装置1として機能する。本実施の形態の電力需要推論装置2も同様に、コンピュータシステム上で、電力需要推論装置2における処理が記述されたコンピュータプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが電力需要推論装置2として機能する。
図8は、本実施の形態の学習装置1および電力需要推論装置2を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
図8に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0048】
図8において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の学習装置1または電力需要推論装置2における処理が記述されたプログラムを実行する。なお、制御部101の一部が、GPU(Graphics Processing Unit),FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用ハードウェアにより実現されてもよい。入力部102は、例えばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタ、スピーカなどである。なお、
図8は、一例であり、コンピュータシステムの構成は
図8の例に限定されない。
【0049】
ここで、本実施の形態のプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、例えば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、コンピュータプログラムが記憶部103にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部103から読み出されたプログラムが記憶部103の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の学習装置1または電力需要推論装置2としての処理を実行する。
【0050】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、学習装置1または電力需要推論装置2における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、例えば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0051】
本実施の形態のプログラムは、例えば、コンピュータシステムに、電力需要の実績値と、当該実績値に対応する日時を示す日時情報とを取得するステップと、日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成するステップと、正解データである実績値と当該実績値に対応する特徴量とを用いて、特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを機械学習により生成するステップと、を実行させる。また、本実施の形態のプログラムは、例えば、コンピュータシステムに、電力需要の推論対象の日時を示す推論対象日時情報を取得するステップと、推論対象日時情報を用いて、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量を生成するステップと、太陽の高度に関する指標と曜日を示す情報とを含む特徴量とから電力需要を推論するための学習済モデルに、生成された特徴量を入力することにより電力需要を推論するステップと、を実行させる。
【0052】
図1に示した特徴量生成部12および学習モデル生成部13は、
図8に示した記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムが
図8に示した制御部101により実行されることにより実現される。
図1に示した特徴量生成部12および学習モデル生成部13の実現には、
図8に示した記憶部103も用いられる。
図1に示した取得部11は、
図8に示した通信部105により実現される。また、
図1に示した取得部11が、オペレータからの入力を受け付ける場合には、取得部11は
図8に示した入力部102により実現される。
図1に示したモデル記憶部14およびデータ保存部15は、
図8に示した記憶部103の一部である。また、学習装置1は、複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、学習装置1は、クラウドコンピュータシステムにより実現されてもよい。
【0053】
図1に示した特徴量生成部23および推論部24は、
図8に示した記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムが
図8に示した制御部101により実行されることにより実現される。
図1に示した特徴量生成部23および推論部24の実現には、
図8に示した記憶部103も用いられる。
図1に示した取得部22および出力部25は、
図8に示した通信部105により実現される。また、
図1に示した取得部22が、オペレータからの入力を受け付ける場合には、取得部22は
図8に示した入力部102により実現される。出力部25が表示機能を有する場合には、出力部25は
図8に示した表示部104により実現される。
図1に示したモデル記憶部21およびデータ保存部26は、
図8に示した記憶部103の一部である。また、電力需要推論装置2は、複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、電力需要推論装置2は、クラウドコンピュータシステムにより実現されてもよい。また、学習装置1および電力需要推論装置2が、1つのコンピュータシステムにより実現されてもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態の学習装置1は、太陽の高度に関する指標と曜日に関する情報とを特徴量として用いるとともに電力需要の実績値を正解データとして用いて機械学習により、特徴量から電力需要を推論するための学習済モデルを生成する。そして、本実施の形態の電力需要推論装置2は、推論対象の日時を示す推論対象日時情報を用いて特徴量を生成し、生成した特徴量を学習済モデルに入力することで電力需要を推論するようにした。このため、日射量の実績値を使用せずに、電力需要を精度よく推論することができる。
【0055】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。
図9は、実施の形態2にかかる学習装置を含む系統制御システムの構成例を示す図である。本実施の形態の系統制御システム4aは、学習装置1、電力需要推論装置2aおよび制御装置3を備える。制御装置3は、実施の形態1と同様である。学習装置1の構成は実施の形態1と同様である。電力需要推論装置2aの構成は、データ保存部26の代わりにデータ保存部26aを備える以外は実施の形態1と同様である。学習装置1および電力需要推論装置2aによる推論結果の利用目的も実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明し、実施の形態1と重複する説明を省略する。
【0056】
本実施の形態では、実施の形態1の特徴量に、推論対象日の前日の電力需要の実績値が追加される。
図10は、本実施の形態において特徴量として用いられる電力需要の実績値の一例を示す図である。
図10に示した例では、電力需要推論装置2aによる推論時、すなわち予測時に、特徴量として、推論対象日である予測対象日の前日の48点の電力需要の実績値(以下、需要実績ともいう)が追加される。このため、学習装置1による学習時には、正解データとして用いる電力需要に対応する日の前日の1日分の電力需要の実績値が特徴量として追加される。すなわち、本実施の形態では、学習時に生成される特徴量は、さらに、電力需要の実績値に付加されるタイムスタンプに対応する日の前日の電力需要の実績値を含む。なお、ここでは、前日の1日分の電力需要の実績値を用いる例を説明するが、前日と前々日の2日分の電力需要の実績値を用いてもよく、この場合、特徴量として前日を含むN(Nは1以上の整数)日分の電力需要の実績値を用いればよい。また、特徴量として、1日分より短い期間の電力需要の実績値を用いてもよい。このように、特徴量として用いる電力需要の実績値の長さ(期間)は、1日に限定されず、1日より長くてもよいし短くてもよい。
【0057】
本実施の形態では、学習時に、
図3に示した処理のステップS2において、特徴量生成部12が、特徴量として、「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」、「平日/土日祝日の種別」に加えて、「前日の電力需要の実績値」(正解データとして用いられる電力需要の実績値の前日の電力需要の実績値)を生成する。詳細には、特徴量生成部12は、データ保存部15から前日の電力需要データを読み出すことで「前日の電力需要の実績値」を特徴量として生成する。また、
図3に示したステップS3において、学習モデル生成部13は、「南中時刻における理論日射強度」、「月」、「曜日(祝日は別扱い)」、「平日/土日祝日の種別」に加えて、「前日の電力需要の実績値」を特徴量として用いて機械学習により学習済モデルを生成する。上述した以外の学習時の動作は、実施の形態1と同様である。
【0058】
図11は、本実施の形態の電力需要推論装置2aにおける電力需要の推論時の処理手順の一例を示すフローチャートである。電力需要推論装置2aは、電力需要データを取得する(ステップS21)。詳細には、取得部22が、推定対象日時情報だけでなく推定対象日時の前日の電力需要データを取得し、取得した電力需要データをデータ保存部26aに格納する。ステップS11では、電力需要推論装置2aの特徴量生成部23が、特徴量を生成するが、このとき、生成される特徴量は実施の形態1で述べた特徴量に、推定対象日の前日の電力需要データが追加されたものとなる。ステップS12では、実施の形態1と同様に、推論部24が、特徴量をモデル記憶部21に格納されている学習済モデルに入力することで推論結果である予測値を算出するが、このとき、特徴量には上述したように推定対象日の前日の電力需要データが追加されている。ステップS13は実施の形態1と同様である。
【0059】
また、上述した例では、前日の電力需要を特徴量として追加することで翌日(推論対象の当日)の電力需要を予測する例を説明したが、本実施の形態の処理は欠測補完にも適用可能である。欠測補完を行う場合には、電力需要推論装置2aが、欠測値に対応する前日の電力需要の実績値を特徴量として用いることで欠測値に対応する電力需要を推定することができる。
【0060】
図12および
図13は、本実施の形態の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図である。
図12および
図13において、横軸は日付を示し、縦軸は有効電力を示している。また、
図12および
図13において、破線は本実施の形態の学習済モデルを用いた推論によって予測された予測値を示し、実線は対応する日時の実測値を示す。
図12では、秋季における予測値と実績値との比較を示し、
図13では、冬季における予測値と実績値との比較を示す。
図12および
図13に示すように、本実施の形態の学習済モデルを用いた推論によって予測された予測値は実測値とほぼ一致する。このように、本実施の形態では、日射量の実績値を使用せずに、電力需要を推論するための精度の高い学習済モデルを生成することができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態では、特徴量に前日の電力需要の実績値を追加する。これにより、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、前日の需要が推定対象日時の需要と関連性がある場合や前日の推定対象日時の需要と類似する場合に、実施の形態1に比べて推論結果の精度を向上させることができる。また、推論対象の年度に特有の電力需要の傾向がある場合などに、実施の形態1に比べて推論結果の精度を向上させることができる。
【0062】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。本実施の形態の学習装置1および電力需要推論装置2aの構成は実施の形態2と同様である。学習装置1および電力需要推論装置2aによる推論結果の利用目的も実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1または2と異なる点を主に説明し、実施の形態1または2と重複する説明を省略する。
【0063】
実施の形態2では、実施の形態1の特徴量に前日の電力需要の実績値が追加されたが、本実施の形態では、実施の形態1の特徴量に、当日における推論対象時間の一定時間前までの電力需要の実績値が追加される。当日とは、学習時においては正解データに対応する電力需要データに付加されているタイムスタンプに対応する日であり、推論時においては推論対象日である。
図14は、本実施の形態において特徴量として用いられる電力需要の実績値の一例を示す図である。
図14に示した例では、電力需要推論装置2aによる推論時、すなわち予測時に、特徴量として、予測対象日当日の0時に対応する点から予測対象時間のn(nは1以上の整数)点前までの電力需要の実績値が追加される。
図14に示した例では、予測対象時間が12時であるため、予測対象日の0時に対応する点から12時のn点前の需要実績が特徴量として用いられる。学習装置1による学習時には、正解データとして用いる需要実績に対応する日における0時に対応する点から予測対象時間のn点前までの需要実績が特徴量として追加される。すなわち、本実施の形態では、学習時に生成される特徴量は、さらに、正解データとして用いられる電力需要の実績値に付加されるタイムスタンプに対応する日における、0時からタイムスタンプに対応する時刻の一定時間前までの電力需要の実績値を含む。
【0064】
本実施の形態の学習装置1における学習時の処理は、「前日の電力需要の実績値」の代わりに「当日の0時に対応する点から対象時間のn点前の電力需要の実績値」が用いられる以外は、実施の形態2と同様である。
【0065】
また、本実施の形態の電力需要推論装置2aの処理は、実施の形態2の
図11に示した処理において、「前日の電力需要の実績値」の代わりに「当日の0時に対応する点から対象時間のn点前の電力需要の実績値」が用いられる以外は実施の形態2と同様である。
【0066】
なお、上述した例では、特徴量として「当日の0時に対応する点から対象時間のn点前の電力需要の実績値」を含むが、これに限らず、特徴量として、「対象時間のm(mはn以上の整数)時点前からn時点前までの電力需要の実績値」を含めばよい。対象時間のm時点前は、対象日の前日であってもよいし、対象時間の0時より後であってもよい。すなわち、特徴量として当日の電力需要の実績値を含めばよく、電力需要の実績値に対応する期間の開始時点は当日であっても前日であってもよい。
【0067】
また、上述した例では、「当日の0時に対応する点から対象時間のn点前の電力需要の実績値」を特徴量として追加することで電力需要を予測する例を説明したが、本実施の形態の処理は欠測補完にも適用可能である。欠測補完を行う場合には、電力需要推論装置2aが、欠測値に対応する日の「当日の0時に対応する点から対象時間のn点前の電力需要の実績値」を特徴量として用いることで欠測値に対応する電力需要を推定することができる。
【0068】
図15および
図16は、本実施の形態の学習済モデルを用いた推論の検証結果を示す図である。
図15および
図16において、横軸は日付を示し、縦軸は有効電力を示している。また、
図15および
図16において、破線は本実施の形態の学習済モデルを用いた推論によって予測された予測値を示し、実線は対応する日時の実測値を示す。
図15では、秋季における予測値と実績値との比較を示し、
図16では、冬季における予測値と実績値との比較を示す。
図15および
図16に示すように、本実施の形態の学習済モデルを用いた推論によって予測された予測値は実測値とほぼ一致する。このように、本実施の形態では、日射量の実績値を使用せずに、電力需要を推論するための精度の高い学習済モデルを生成することができる。
【0069】
以上のように、本実施の形態では、特徴量に当日における推論対象時間の一定時間前までの電力需要の実績値を追加する。これにより、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、推論対象の日に特有の電力需要の傾向がある場合などに、実施の形態1に比べて推論結果の精度を向上させることができる。換言すると、本実施の形態では、当日における推論対象時間の一定時間前までの電力需要の実績値を特徴量として追加することにより、直前の電力需要を見て推論値を補正している(当日補正を行っている)ことに相当しており、これにより実施の形態1に比べて推論結果の精度を向上させることができる。
【0070】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 学習装置、2,2a 電力需要推論装置、3 制御装置、4,4a 系統制御システム、11,22 取得部、12,23 特徴量生成部、13 学習モデル生成部、14,21 モデル記憶部、15,26,26a データ保存部、24 推論部、25 出力部。