(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 13/00 20060101AFI20241220BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20241220BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H01C13/00 J
H01C1/032
H01C7/00 110
(21)【出願番号】P 2021519408
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018648
(87)【国際公開番号】W WO2020230713
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019092140
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】舘 厚樹
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-188901(JP,A)
【文献】特開2016-152301(JP,A)
【文献】特開2015-019023(JP,A)
【文献】特開2005-277019(JP,A)
【文献】特表2008-512872(JP,A)
【文献】特開2008-010895(JP,A)
【文献】特開2002-246211(JP,A)
【文献】特開昭61-240603(JP,A)
【文献】実開昭63-124701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
H01C 1/032
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において互いに反対側を向く第1面および第2面を有する抵抗体と、
前記第1面に配置され
るとともに、電気絶縁性を有
し、かつ合成樹脂を含む材料からなる保護膜と、
前記厚さ方向に対して直交する第1方向において互いに離間して配置され
ており、かつ前記抵抗体に接する一対の電極と、を具備しており、
前記保護膜は、前記第1方向において互いに離間し
ており、かつ前記厚さ方向および前記第1方向の双方に対して直交する第2方向に延びる第1外縁および第2外縁を有し、
前記抵抗体は、前記第1面から前記第2面にかけて貫通し
ており、かつ前記第2方向に延びる第1スリットおよび第2スリットを有し、
前記第1スリットは、前記第1外縁から最も近くに位置しており、
前記第2スリットは、前記第2外縁から最も近くに位置しており、
前記厚さ方向に視て、前記第1外縁と前記第1スリットとの第1間隔と前記第2外縁と前記第2スリットとの第2間隔とは、ともに前記保護膜の前記第1方向の寸法の15%以上の長さであり、
前記一対の電極の各々は、前記厚さ方向において前記保護膜に対して前記抵抗体とは反対側に位置する底部を有し、
前記一対の電極の各々の前記底部は、前記厚さ方向に視て前記保護膜の一部に重なる部分を含み、
前記厚さ方向に視て、前記一対の電極の各々の前記底部の間隔は、前記第1間隔および前記第2間隔の各々より小さ
く、
前記抵抗体は、前記第1面および前記第2面の双方につながり、かつ前記第1方向において互いに離間した一対の第1端面を有し、
前記一対の電極の各々は、前記一対の電極の各々の前記底部に個別につながり、かつ前記厚さ方向に起立する側部を有し、
前記一対の電極の各々の前記側部は、前記一対の第1端面に個別に接しており、
前記第2面に配置され、かつ合成樹脂を含む材料からなる絶縁板をさらに備え、
前記抵抗体は、前記第1面および前記第2面の双方につながり、かつ前記第2方向において互いに離間した一対の第2端面を有し、
前記一対の第2端面は、前記絶縁板に覆われており、
前記第1スリットおよび前記第2スリットの各々は、前記第1面から開口した第1開口と、前記第2面から開口しており、かつ前記第1開口につながる第2開口と、を有し、
前記第1スリットおよび前記第2スリットの各々の前記第1方向の寸法は、前記第1開口と前記第2開口との境界において最も小さく、
前記第2開口は、前記第1方向の両側に向けて膨出しており、
前記絶縁板は、前記第1スリットおよび前記第2スリットの各々に陥入しており、かつ前記保護膜に接している、抵抗器。
【請求項2】
前記厚さ方向に視て、前記第1間隔と前記第2間隔とは、互いに等しい、請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記保護膜は、合成樹脂を含む材料からなる、請求項1または2に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記保護膜には、セラミックスを含む材料からなるフィラーが含有されている、請求項3に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記厚さ方向に視て、前記第1スリットは、前記一対の電極のうち一方の前記底部に重なっており、
前記厚さ方向に視て、前記第2スリットは、前記一対の電極のうち他方の前記底部に重なっている、請求項1ないし4のいずれかに記載の抵抗器。
【請求項6】
前記厚さ方向に視て、前記第1間隔
および前記第2間隔
の各々は、前記保護膜の前記第1方向の寸法の30%以下の長さである、請求項5に記載の抵抗器。
【請求項7】
前記一対の電極の各々の前記側部は、前記絶縁板に接している、請求項1ないし6のいずれかに記載の抵抗器。
【請求項8】
前記第1スリットは、前記一対の第2端面のうち一方の面から前記第2方向に延びており、
前記第2スリットは、前記一対の第2端面のうち他方の面から前記第2方向に延びている、請求項
1ないし7のいずれかに記載の抵抗器。
【請求項9】
前記抵抗体は、前記一対の第2端面のいずれかから前記第2方向に向けて突出する突起を有し、
前記突起は、前記一対の第1端面のいずれかにつながっており、
前記一対の電極の各々の前記底部のいずれかが、前記突起に接している、請求項
1ないし8のいずれかに記載の抵抗器。
【請求項10】
前記抵抗体は、前記第1面から凹み、かつ所定の方向に延びる複数の溝を有し、
前記保護膜は、前記複数の溝と噛み合っている、請求項
1ないし9のいずれかに記載の抵抗器。
【請求項11】
前記厚さ方向において、前記抵抗体と、前記一対の電極の各々の前記底部と、の間に位置する一対の中間層をさらに備え、
前記一対の中間層の各々は、前記保護膜の一部を覆う被覆部を有し、
前記一対の電極の各々の前記底部は、前記一対の中間層の各々の前記被覆部に個別に接している、請求項
1ないし10のいずれかに記載の抵抗器。
【請求項12】
前記厚さ方向に視て、前記第1外縁および前記第2外縁は、前記一対の第1端面の間に位置しており、
前記第1面は、前記保護膜、および前記一対の中間層の各々から露出する第1領域および第2領域を含み、
前記第1領域は、前記第1外縁と、前記第1外縁に最も近くに位置する前記一対の第1端面のいずれかと、の間に位置しており、
前記第2領域は、前記第2外縁と、前記第2外縁に最も近くに位置する前記一対の第1端面のいずれかと、の間に位置しており、
前記第1領域および前記第2領域の各々は、前記一対の電極の各々の前記底部に個別に接している、請求項11に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主に電流検出に用いられる抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板からなる抵抗体を備える抵抗器が知られている。このような抵抗器は、主に電流検出に用いられる。特許文献1には、金属板からなる抵抗体を備える抵抗器の一例が開示されている。当該抵抗器は、抵抗体と、厚さ方向の一方側を向く抵抗体の面の両端に形成された一対の電極とを備える。
【0003】
近年、金属板からなる抵抗体を備える抵抗器においては、電流検出の精度を向上させるため、より低い抵抗値のものが求められている。一方、特許文献1に開示されているとおり、抵抗器の抵抗値を調整するために、抵抗体にスリットを設けることがある。この場合、当該抵抗器の一対の電極のいずれかに近接してスリットを設けると、当該抵抗器の抵抗温度係数(TCR;Temperature Coefficient of Resistance)の値が比較的高くなることが確認された。あわせて、当該抵抗器の抵抗値が低くなるほど、抵抗温度係数の値がより高くなる傾向があることも確認された。抵抗温度係数の値が高いほど、当該抵抗器の使用の際、抵抗体からの発熱に起因した当該抵抗器の抵抗値の変動が大きくなるため、当該抵抗器を用いた電流検出の精度が低下する。このため、抵抗体にスリットが設けられた抵抗器においては、抵抗温度係数の増加を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記事情に鑑み、抵抗温度係数の増加を抑制することが可能な抵抗器を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の側面により提供される抵抗器は、厚さ方向において互いに反対側を向く第1面および第2面を有する抵抗体と、前記第1面に配置され、かつ電気絶縁性を有する保護膜と、前記厚さ方向に対して直交する第1方向において互いに離間して配置され、かつ前記抵抗体に接する一対の電極と、を具備している。前記保護膜は、前記第1方向において互いに離間し、かつ前記厚さ方向および前記第1方向の双方に対して直交する第2方向に延びる第1外縁および第2外縁を有し、前記抵抗体は、前記第1面から前記第2面にかけて貫通し、かつ前記第2方向に延びる第1スリットおよび第2スリットを有し、前記第1スリットは、前記第1外縁から最も近くに位置し、前記第2スリットは、前記第2外縁から最も近くに位置する。前記厚さ方向に沿って視て、前記第1外縁と前記第1スリットとの第1間隔と前記第2外縁と前記第2スリットとの第2間隔とは、ともに前記保護膜の前記第1方向の寸法の15%以上の長さである。
【0007】
好ましくは、前記厚さ方向に沿って視て、前記第1間隔と前記第2間隔とは、互いに等しい。
【0008】
好ましくは、前記一対の電極の各々は、前記厚さ方向において前記保護膜に対して前記抵抗体とは反対側に位置する底部を有し、前記一対の電極の前記底部の各々は、前記厚さ方向に沿って視て前記保護膜の一部に重なる部分を含む。
【0009】
好ましくは、前記保護膜は、合成樹脂を含む材料からなる。
【0010】
好ましくは、前記保護膜には、セラミックスを含む材料からなるフィラーが含有されている。
【0011】
好ましくは、前記厚さ方向に沿って視て、前記第1スリットは、前記一対の電極のうち一方の前記底部に重なり、前記厚さ方向に沿って視て、前記第2スリットは、前記一対の電極のうち他方の前記底部に重なっている。
【0012】
好ましくは、前記厚さ方向に沿って視て、前記第1間隔と前記第2間隔とは、ともに前記保護膜の前記第1方向の寸法の30%以下の長さである。
【0013】
好ましくは、前記抵抗体は、前記第1面および前記第2面の双方につながり、かつ前記第1方向において互いに離間した一対の第1端面を有し、前記一対の電極の各々は、前記一対の電極の前記底部のいずれかにつながり、かつ前記厚さ方向に起立する側部を有し、前記一対の電極の前記側部の各々は、前記一対の第1端面のいずれかに接している。
【0014】
好ましくは、前記抵抗器は、前記第2面に配置され、かつ合成樹脂を含む材料からなる絶縁板をさらに備える。前記抵抗体は、前記第1面および前記第2面の双方につながり、かつ前記第2方向において互いに離間した一対の第2端面を有し、前記一対の第2端面は、前記絶縁板に覆われている。
【0015】
好ましくは、前記一対の電極の前記側部の各々は、前記絶縁板に接している。
【0016】
好ましくは、前記第1スリットは、前記一対の第2端面のうち一方の面から前記第2方向に延び、前記第2スリットは、前記一対の第2端面のうち他方の面から前記第2方向に延びている。
【0017】
好ましくは、前記絶縁板の一部が、前記厚さ方向において前記第1スリットおよび前記第2スリットに貫入している。
【0018】
好ましくは、前記第1スリットおよび前記第2スリットの各々は、前記第1方向において互いに離間した一対の側壁を有し、前記一対の側壁の各々は、前記第1方向に向けて凹む部分を含む。
【0019】
好ましくは、前記抵抗体は、前記一対の第2端面のいずれかから前記第2方向に向けて突出する突起を有し、前記突起は、前記一対の第1端面のいずれかにつながり、前記一対の電極の前記底部のいずれかが、前記突起に接している。
【0020】
好ましくは、前記抵抗体は、前記第1面から凹み、かつ所定の方向に延びる複数の溝を有し、前記保護膜は、前記複数の溝と噛み合っている。
【0021】
好ましくは、前記抵抗器は、前記厚さ方向において前記抵抗体と前記一対の電極の前記底部との間に位置する一対の中間層をさらに備える。前記一対の中間層の各々は、前記保護膜の一部を覆う被覆部を有し、前記一対の電極の前記底部の各々は、前記一対の中間層の前記被覆部のいずれかに接している。
【0022】
好ましくは、前記厚さ方向に沿って視て、前記第1外縁および前記第2外縁は、前記一対の第1端面の間に位置し、前記第1面は、前記保護膜、および前記一対の中間層のいずれにも覆われていない第1領域および第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1外縁と前記第1外縁に最も近くに位置する前記一対の第1端面のいずれかとの間に位置する。前記第2領域は、前記第2外縁と前記第2外縁に最も近くに位置する前記一対の第1端面のいずれかとの間に位置する。前記第1領域および前記第2領域の各々は、前記一対の電極の前記底部のいずれかに接している。
【0023】
前記抵抗器の上述した構成によれば、抵抗温度係数の増加を抑制することが可能となる。
【0024】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態にかかる抵抗器の平面図である。
【
図2】
図1に示す抵抗器の平面図であり、絶縁板を透過している。
【
図4】
図3に対応する底面図であり、一対の電極を透過している。
【
図5】
図4に対応する底面図であり、一対の中間層を透過している。
【
図8】
図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図12】
図1に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図13】
図1に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図14】
図1に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図15】
図1に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図16】
図1に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図17】
図1に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図18】
図1に示す抵抗器と、比較例の抵抗器との抵抗温度係数を示すグラフである。
【
図19】第2実施形態にかかる抵抗器の平面図であり、絶縁板を透過している。
【
図20】
図19に示す抵抗器の底面図であり、一対の電極を透過している。
【
図23】
図19に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図24】
図19に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【
図25】
図19に示す抵抗器の製造工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の種々の実施形態について、添付図面に基づき以下において説明する。
【0027】
図1~
図11に基づき、第1実施形態にかかる抵抗器A10について説明する。抵抗器A10は、電流検出に用いられるシャント抵抗器を対象としている。抵抗器A10の主たる抵抗値は、5mΩである。抵抗器A10は、様々な電子機器の配線基板に表面実装される。抵抗器A10は、抵抗体10、絶縁板20、保護膜30、一対の中間層40、および一対の電極50を備える。なお、
図2は、理解の便宜上、絶縁板20を透過している。
図4は、理解の便宜上、一対の電極50を透過している。
図5では、一対の中間層40、および一対の電極50をそれぞれ透過している。これらの図において透過した一対の中間層40、および一対の電極50を想像線(二点鎖線)で示している。
【0028】
抵抗器A10の説明においては、抵抗体10の厚さに沿った方向を「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する一方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。「厚さ方向z」、「第1方向x」および「第2方向y」は、後述する抵抗器A20の説明においても適用する。
図1に示すように、抵抗器A10は、厚さ方向zに沿って視て矩形状である。第1方向xは、抵抗器A10の長手方向に該当する。第2方向yは、抵抗器A10の短手方向に該当する。
【0029】
抵抗体10は、抵抗器A10の機能中枢をなしている。抵抗体10は、金属板である。当該金属板の材料は、たとえば銅(Cu)-マンガン(Mn)-ニッケル(Ni)合金(マンガニン:登録商標)、または銅-マンガン-錫(Sn)合金(ゼラニン:登録商標)である。抵抗体10の厚さは、50μm以上150μm以下である。
【0030】
図7および
図8に示すように、抵抗体10は、第1面10A、第2面10B、一対の第1端面10C、および一対の第2端面10Dを有する。第1面10Aは、厚さ方向zの一方を向く。第2面10Bは、第1面10Aとは反対側を向く。このため、第1面10Aおよび第2面10Bは、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。一対の第1端面10Cは、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の第1端面10Cの各々は、第1面10Aおよび第2面10Bの双方につながっている。一対の第2端面10Dは、第2方向yにおいて互いに離間している。一対の第2端面10Dの各々は、第1面10Aおよび第2面10Bの双方につながっている。
【0031】
図2および
図8に示すように、抵抗体10は、第1スリット111および第2スリット112を有する。第1スリット111および第2スリット112は、抵抗体10の抵抗値を所定の値に調整するために設けられている。第1スリット111および第2スリット112は、第1方向xにおいて互いに離間している。第1スリット111および第2スリット112の各々は、第1面10Aから第2面10Bにかけて抵抗体10を貫通している。第1スリット111は、一対の第2端面10Dのうち一方の面から第2方向yに延びている。第2スリット112は、一対の第2端面10Dのうち他方の面から第2方向yに延びている。
【0032】
図9に示すように、第1スリット111は、一対の側壁11Aを有する。なお、図示は省略しているが、第2スリット112においても、第1スリット111と同様の一対の側壁11Aを有する。一対の側壁11Aは、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の側壁11Aの各々は、第1面10Aおよび第2面10Bの双方につながっている。一対の側壁11Aの各々は、第1方向xに向けて凹状である部分を含む。
【0033】
図5および
図10に示すように、抵抗体10は、複数の溝12は、第1スリット111および第2スリット112とともに、抵抗体10の抵抗値を所定の値に調整するために設けられている。複数の溝12は、第1面10Aから凹み、かつ所定の方向に延びている。抵抗器A10が示す例においては、複数の溝12の各々は、第2方向yに延びている。複数の溝12は、第1方向xにおいて第1スリット111と第2スリット112との間に位置する。
図10に示すように、複数の溝12の各々の最大幅bmaxは、第1スリット111および第2スリット112の各々の最小幅Bmin(
図9参照)よりも小である。
【0034】
図2、
図4および
図7に示すように、抵抗体10は、4つの突起14を有する。厚さ方向zに沿って視て、4つの突起14は、抵抗体10の四隅に位置する。4つの突起14の各々は、一対の第2端面10Dのいずれかから第2方向yに向けて突出している。4つの突起14の各々は、一対の第1端面10Cのいずれかにつながっている。
【0035】
抵抗体10の形状は、厚さ方向zに沿って視て点対称をなしている。この場合の点対称とは、
図2に示す抵抗体10の中心Cを通過し、かつ第2方向yに延びる境界Nにより抵抗体10を2つに区分した際、一方の区分領域と、他方の区分領域とが中心Cに対して点対称の関係であることを指す。
【0036】
絶縁板20は、
図8に示すように、抵抗体10の第2面10Bに配置されている。絶縁板20は、合成樹脂を含む材料からなる。抵抗器A10が示す例においては、絶縁板20は、エポキシ樹脂を含む合成樹脂シートである。
図1および
図7に示すように、抵抗体10の一対の第2端面10Dは、絶縁板20に覆われている。
図1、
図6および
図8に示すように、絶縁板20は、一対の端面20Aを有する。一対の端面20Aは、第1方向xにおいて互いに反対側を向き、かつ第1方向xにおいて互いに離間している。一対の端面20Aの各々は、一対の第1端面10Cのいずれかと面一である。
図8に示すように、絶縁板20の一部は、厚さ方向zにおいて抵抗体10の第1スリット111および第2スリット112に貫入している。
【0037】
保護膜30は、
図8に示すように、抵抗体10の第1面10Aに配置されている。保護膜30は、電気絶縁性を有し、かつ合成樹脂を含む材料からなる。抵抗器A10が示す例においては、保護膜30は、エポキシ樹脂を含む材料からなる。
図9および
図10に示すように、保護膜30には、フィラー31が含有されている。フィラー31は、セラミックスを含む材料からなる。当該セラミックスは、たとえばアルミナ(Al
2O
3)や窒化ホウ素(BN)といった熱伝導率が比較的大であるものが好ましい。保護膜30は、第1面10Aの一部と、抵抗体10の第1スリット111および第2スリット112に貫入した絶縁板20の一部とを覆っている。
図10に示すように、保護膜30は、抵抗体10の複数の溝12と噛み合っている。
【0038】
図2、
図5および
図8に示すように、保護膜30は、第1外縁30Aおよび第2外縁30Bを有する。第1外縁30Aおよび第2外縁30Bは、第1方向xにおいて互いに離間し、かつ第2方向yに延びている。第1外縁30Aは、抵抗体10の第1スリット111から最も近くに位置する。第2外縁30Bは、抵抗体10の第2スリット112から最も近くに位置する。厚さ方向zに沿って視て、第1外縁30Aと第1スリット111との第1間隔L1と、第2外縁30Bと第2スリット112との第2間隔L2とは、ともに保護膜30の第1方向xの寸法L0の15%以上30%以下である。第1間隔L1は、第1スリット111の一対の側壁11Aと、抵抗体10の第1面10Aとの境界から第1外縁30Aまでの最短距離を指す。同様に、第2間隔L2は、第2スリット112の一対の側壁11Aと、第1面10Aとの境界から第2外縁30Bまでの最短距離を指す。なお、寸法L0は、第1外縁30Aと第2外縁30Bとの間隔に等しい。厚さ方向zに沿って視て、第1間隔L1と第2間隔L2とは、互いに等しい。
【0039】
図2においては、保護膜30の第1方向xの寸法L0の15%に等しい第1間隔L1および第2間隔L2を、それぞれ第1間隔L1min,第2間隔L2minと示している。あわせて、保護膜30の第1方向xの寸法L0の30%に等しい第1間隔L1および第2間隔L2を、それぞれ第1間隔L1max,第2間隔L2maxと示している。
【0040】
図4、
図5および
図8に示すように、保護膜30の第1外縁30Aおよび第2外縁30Bは、厚さ方向zに沿って視て抵抗体10の一対の第1端面10Cの間に位置する。抵抗体10の第1面10Aは、保護膜30、および一対の中間層40のいずれにも覆われていない第1領域131および第2領域132を含む。第1領域131は、第1外縁30Aと、第1外縁30Aに最も近くに位置する一対の第1端面10Cのいずれかとの間に位置する。第2領域132は、第2外縁30Bと、第2外縁30Bに最も近くに位置する一対の第1端面10Cのいずれかとの間に位置する。
【0041】
一対の中間層40は、
図8に示すように、厚さ方向zにおいて抵抗体10と、一対の電極50の底部51(詳細は後述)との間に位置する。一対の中間層40は、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の中間層40は、導電性を有する。抵抗器A10においては、一対の中間層40は、導電性を有し、かつ合成樹脂を含む材料からなる。一対の中間層40には、金属粒子が含有されている。当該金属粒子は、銀(Ag)を含む。抵抗器A10が示す例においては、一対の中間層40に含まれる合成樹脂は、エポキシ樹脂である。一対の中間層40の電気抵抗率は、抵抗体10の電気抵抗率の約10倍である。したがって、一対の中間層40の電気抵抗率は、抵抗体10の電気抵抗率よりも大である。
【0042】
図4および
図8に示すように、一対の中間層40の各々は、被覆部41および延伸部42を有する。被覆部41は、厚さ方向zにおいて保護膜30に対して抵抗体10とは反対側に位置する。被覆部41は、保護膜30の一部を覆っている。延伸部42は、一対の中間層40の被覆部41のいずれかから、抵抗体10の一対の第1端面10Cのいずれかに向けて延びている。延伸部42は、抵抗体10の第1面10Aに接している。これにより、一対の中間層40は、抵抗体10に導通している。
【0043】
図2、
図4および
図8に示すように、一対の中間層40の各々は、第1層40Aおよび第2層40Bを含む。第1層40Aは、延伸部42を有するとともに、抵抗体10の第1面10Aに接している。第1層40Aの厚さ方向zの寸法は、全体にわたって略均一である。第2層40Bは、被覆部41を有する。第2層40Bは、一対の中間層40の第1層40Aのいずれかに接している。第2層40Bは、当該第1層40Aの一部に覆い被さった構成となっている。
【0044】
図4に示すように、一対の中間層40の延伸部42の各々には、切欠き421が形成されている。切欠き421は、一対の第1端面10Cのいずれかから第1方向xに向けて凹んでいる。切欠き421から、それぞれが抵抗体10の一対の突起14を含む第1領域131および第2領域132のいずれかが露出している。
【0045】
図11に示すように、一対の中間層40の第1層40Aの各々は、延伸部42から保護膜30に向けて延びる介在部43を有する。介在部43は、抵抗体10と保護膜30との間に位置する部分を含む。これにより、保護膜30の第1方向xの両端の各々は、一対の中間層40の第1層40Aのいずれかに覆い被さった構成となっている。介在部43は、抵抗体10および保護膜30の双方に接している。
【0046】
一対の電極50は、
図1~
図3、
図6および
図8に示すように、第1方向xにおいて互いに離間して配置されている。一対の電極50の各々は、抵抗体10に接している。これにより、一対の電極50は、抵抗体10に導通している。一対の電極50の各々は、複数の金属層により構成されている。抵抗器A10が示す例においては、当該複数の金属層は、抵抗体10に近い方から順に、銅層、ニッケル層、錫層が積層されたものである。
【0047】
図3、および
図6~
図8に示すように、一対の電極50の各々は、底部51を有する。底部51は、厚さ方向zにおいて保護膜30に対して抵抗体10とは反対側に位置する。一対の電極50の底部51は、厚さ方向zに沿って視て保護膜30の一部に重なる部分を含む。
図2に示すように、厚さ方向zに沿って視て、抵抗体10の第1スリット111は、一対の電極50のうち一方の底部51に重なっている。あわせて、厚さ方向zに沿って視て、抵抗体10の第2スリット112は、一対の電極50のうち他方の底部51に重なっている。
【0048】
図6および
図8に示すように、一対の電極50の底部51の各々は、一対の中間層40のいずれかの被覆部41および延伸部42の双方に接している。あわせて、
図7および
図8に示すように、一対の電極50の底部51の各々は、抵抗体10の第1領域131および第2領域132のいずれかと、抵抗体10の一対の第1端面10Cのいずれかに隣接する2つの突起14に接している。
【0049】
図1~
図3、および
図6~
図8に示すように、一対の電極50の各々は、側部52を有する。側部52は、一対の電極50の底部51のいずれかにつながり、かつ厚さ方向zに起立している。一対の電極50の側部52の各々は、抵抗体10の一対の第1端面10Cのいずれかに接している。あわせて、一対の電極50の側部52の各々は、絶縁板20の一対の端面20Aのいずれかに接している。
【0050】
次に、
図12~
図17に基づき、抵抗器A10の製造方法の一例について説明する。なお、
図12~
図17が示す断面位置は、
図8が示す断面位置と同一である。
【0051】
最初に、
図12に示すように、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く第1面81Aおよび第2面81Bを有する抵抗体81に、基材82を熱圧着させる。抵抗体81は、抵抗器A10の抵抗体10が第1方向xおよび第2方向yに複数連なったものである。第1面81Aが、抵抗体10の第1面10Aに相当する。第2面81Bが、抵抗体10の第2面10Bに相当する。基材82は、抵抗器A10の絶縁板20が第1方向xおよび第2方向yに複数連なったものである。まず、第1面10Aから第2面81Bにかけて貫通する複数のスリット811を抵抗体81に形成する。複数のスリット811が、抵抗体10の第1スリット111および第2スリット112に相当する。複数のスリット811は、ウエットエッチングにより形成される。次いで、第2面81Bに基材82を積層プレスにより熱圧着させる。第2面81Bに基材82を熱圧着させると、厚さ方向zにおいて複数のスリット811に基材82の一部が貫入する。最後に、第1面10Aに抵抗体81の抵抗値を測定するためのプローブを接触させた状態で、第1面10Aから凹む複数の溝812を抵抗体81に形成する。複数の溝812が、抵抗体10の複数の溝12に相当する。複数の溝12は、たとえばレーザ照射により形成される。抵抗体81の抵抗値が所定の値になったとき、複数の溝812の形成を終了する。
【0052】
次いで、
図13に示すように、抵抗体81の第1面81Aの一部を覆う一対の中間層40の第1層40Aを形成する。一対の中間層40の第1層40Aは、銀粒子およびエポキシ樹脂を含む材料をスクリーン印刷により第1面81Aに塗布する。この際、第1方向xにおいて互いに離間させた状態で当該材料を塗布する。その後、当該材料を熱硬化させることにより、一対の中間層40の第1層40Aが形成される。
【0053】
次いで、
図14に示すように、抵抗体81の第1面81Aの一部と、抵抗体81の複数のスリット811に貫入した基材82の一部とを覆う保護膜30を形成する。まず、エポキシ樹脂を含む材料をスクリーン印刷により複数のスリット811に貫入した基材82の一部を完全に覆うように第1面81Aの一部に塗布する。この際、当該材料の第1方向xの両端の各々が、一対の中間層40の第1層40Aのいずれかに覆い被さるようにする。その後、当該材料を熱硬化させることにより、保護膜30が形成される。
【0054】
次いで、
図15に示すように、保護膜30の一部を覆う一対の中間層40の第2層40Bを形成する。まず、銀粒子およびエポキシ樹脂を含む材料をスクリーン印刷により保護膜30に塗布する。この際、第1方向xにおいて互いに離間させた状態で当該材料を塗布する。あわせて、互いに離間させた当該材料の個々の部分が、一対の中間層40の第1層40Aのいずれかの一部に覆い被さるようにする。その後、当該材料を熱硬化させることにより、一対の中間層40の第2層40Bが形成される。
【0055】
次いで、
図16に示すように、抵抗体81および基材82を切断線CLに沿ってダイシングブレードで切断することにより、保護膜30および一対の中間層40(第1層40Aおよび第2層40B)を含む個片に分割する。当該個片が、一対の電極50を除く抵抗器A10の構成要素となる。すなわち、個片に分割された抵抗体81が、抵抗器A10の抵抗体10となる。あわせて、個片に分割された基材82が、抵抗器A10の絶縁板20となる。なお、抵抗体10の一対の第1端面10Cは、本工程において現れる抵抗体81の切断面である。あわせて、絶縁板20の一対の端面20Aは、本工程において現れる基材82の切断面である。
【0056】
最後に、
図17に示すように、抵抗体10に接する一対の電極50を形成する。一対の電極50は、銅層、ニッケル層、錫層の順に、それぞれ電解バレルめっきを施すことにより形成される。一対の中間層40の各々は、一対の電極50の底部51のいずれかに覆われる。一対の電極50の底部51の各々は、抵抗体10の第1領域131および第2領域132のいずれかと、保護膜30とに接する。あわせて、抵抗体10の一対の第1端面10Cの各々と、絶縁板20の一対の端面20Aの各々の一部とは、一対の電極50の側部52のいずれかに覆われる。次いで、温度170℃、かつ2時間の条件下で、一対の電極50を熱処理させる。これにより、一対の電極50の底部51の各々と、抵抗体10との結合性が向上する。以上の工程を経ることによって、抵抗器A10が製造される。
【0057】
次に、抵抗器A10の作用効果について説明する。
【0058】
抵抗器A10は、抵抗体10と、抵抗体10の第1面10Aに配置された保護膜30と、第1方向xにおいて互いに離間して配置され、かつ抵抗体10に接する一対の電極50とを備える。抵抗体10は、第1スリット111および第2スリット112を有する。保護膜30は、第1スリット111に最も近くに位置する第1外縁30Aと、第2スリット112に最も近くに位置する第2外縁30Bを有する。抵抗器A10においては、厚さ方向zに沿って視て、第1外縁30Aと第1スリット111との第1間隔L1と、第2外縁30Bと第2スリット112との第2間隔L2とは、ともに保護膜30の第1方向xの寸法L0の15%以上である。
【0059】
図18は、抵抗体10の温度を20℃以上60℃以下の範囲で変動させたときの、抵抗器A10と、比較例の抵抗器との抵抗変動係数(単位:10
-6/℃)を示している。
図18において、比較例-1の第1スリット111および第2スリット112の各々の長さは、抵抗器A10-1の第1スリット111および第2スリット112の各々の長さに等しい。同様に、比較例-2の第1スリット111および第2スリット112の各々の長さは、抵抗器A10-2の第1スリット111および第2スリット112の各々の長さに等しい。比較例-1および比較例-2の各々においては、厚さ方向zに沿って視て、第1外縁30Aと第1スリット111との第1間隔L1と、第2外縁30Bと第2スリット112との第2間隔L2とは、ともに保護膜30の第1方向xの寸法L0の15%未満である。
【0060】
図18に示すように、抵抗器A10-1の抵抗変動係数は、比較例-1の抵抗変動係数に対して約50%低減している。同様に、抵抗器A10-2の抵抗変動係数は、比較例-2の抵抗変動係数に対して約50%低減している。したがって、抵抗器A10によれば、抵抗温度係数の増加を抑制することが可能となる。
【0061】
また、抵抗器A10においては、厚さ方向zに沿って視て、第1外縁30Aと第1スリット111との第1間隔L1と、第2外縁30Bと第2スリット112との第2間隔L2とは、ともに保護膜30の第1方向xの寸法L0の30%以下である。第1スリット111と第2スリット112との間隔が近すぎると、抵抗器A10の使用の際、第1スリット111と第2スリット112とに挟まれた抵抗体10の領域の温度上昇が顕著となる。このような状態になると、抵抗器A10の抵抗値に変動を来す。したがって、本構成をとることにより、第1スリット111と第2スリット112とに挟まれた抵抗体10の領域の過度な温度上昇が防止されるため、抵抗体10の温度上昇に伴う抵抗器A10の抵抗値の変動を抑制することができる。
【0062】
抵抗器A10においては、厚さ方向zに沿って視て、第1スリット111は、一対の電極50のうち一方の底部51に重なっている。あわせて、第2スリット112は、一対の電極50のうち他方の底部51に重なっている。抵抗体10において、第1スリット111および第2スリット112の各々に対して第2方向yに隣接する領域は、他の領域に比べて抵抗値が局所的に高くなる。このため、抵抗器A10の使用の際、当該領域の温度は、他の領域よりも温度が高くなる。したがって、本構成をとることにより、当該領域から発生した熱が一対の底部51に伝達されるため、当該領域の過度な温度上昇を防ぐことができる。
【0063】
抵抗体10は、第1面10Aから凹み、かつ所定の方向に延びる複数の溝12を有する。保護膜30は、複数の溝12と噛み合っている。これにより、抵抗体10に対して保護膜30にアンカー効果が生じるため、抵抗体10と保護膜30との結合性を向上させることができる。
【0064】
保護膜30には、セラミックスを含む材料からなるフィラー31が含有されている。これにより、保護膜30の機械的強度を増加させることができる。さらに、当該セラミックスとして、アルミナや窒化ホウ素など、熱伝導率が比較的大であるものを選択することにより、保護膜30の熱伝導率を高くすることができる。これにより、抵抗器A10の放熱性を、より向上させることができる。
【0065】
絶縁板20は、合成樹脂を含む材料からなる。これにより、
図11に示す工程において、抵抗体81の第2面81Bに基材82を、積層プレスにより熱圧着させることができる。また、絶縁板20の一部が、厚さ方向zにおいて第1スリット111および第2スリット112に貫入している。これにより、抵抗体10に対して絶縁板20にアンカー効果が生じるため、抵抗体10と絶縁板20との結合性を向上させることができる。さらに、第1スリット111および第2スリット112の各々は、第1方向xに離間した一対の側壁11Aを有する。一対の側壁11Aの各々は、第1方向xに向けて凹状である部分を有する。これにより、抵抗体10に対する絶縁板20のアンカー効果が高まるため、抵抗体10と絶縁板20との結合性を、より向上させることができる。
【0066】
絶縁板20は、第1方向xにおいて互いに反対側を向き、かつ第1方向xにおいて互いに離間した一対の端面20Aを有する。一対の電極50の側部52の各々は、一対の端面20Aのいずれかに接している。これにより、一対の電極50の側部52の各々の厚さ方向zの寸法を、より長くすることができる。抵抗器A10を配線基板に実装した際、一対の電極50の側部52の各々には、はんだフィレットが形成される。したがって、本構成により、はんだフィレットの体積がより拡大するため、配線基板に対する抵抗器A10の実装性を、より向上させることができる。
【0067】
抵抗器A10は、保護膜30の一部を覆う被覆部41を有し、かつ第1方向xにおいて互いに離間した一対の中間層40をさらに備える。一対の中間層40は、抵抗体10に導通している。抵抗器A10においては、一対の中間層40は、金属薄膜からなる。一対の中間層40の被覆部41の各々は、保護膜30と、一対の電極50の底部51のいずれかとの間に位置する。これにより、保護膜30の一部を覆う一対の電極50の底部51を、
図16に示す工程において電解バレルめっきにより形成することができる。
【0068】
保護膜30の第1外縁30Aおよび第2外縁30Bは、厚さ方向zに沿って視て抵抗体10の一対の第1端面10Cの間に位置する。抵抗体10の第1面10Aは、保護膜30、および一対の中間層40のいずれにも覆われていない第1領域131および第2領域132を有する。第1領域131および第2領域132の各々は、一対の電極50の底部51のいずれかに接している。これにより、抵抗器A10の使用の際、抵抗体10を流れる電流は、第1領域131および第2領域132から一対の電極50の底部51に流れやすくなる。したがって、抵抗器A10における電流経路の長さが短縮されるため、抵抗器A10の抵抗値の変動を抑制することができる。
【0069】
抵抗体10は、一対の第2端面10Dのいずれかから第2方向yに向けて突出する突起14を有する。突起14は、一対の第1端面10Cのいずれかにつながっている。これにより、
図15に示す工程において、突起14を目標として切断線CLを設定することができる。また、突起14により抵抗体10の第1領域131および第2領域132のいずれかの面積が拡大される。これにより、一対の電極50の底部51のいずれかと、抵抗体10との結合性を向上させることができる。
図16に示す工程において電解バレルめっきにより一対の電極50を形成する際、当該結合性の向上により、一対の電極50の底部51のいずれかに欠損が発生しにくくなる。
【0070】
抵抗体10の形状は、厚さ方向zに沿って視て点対称をなしている。これにより、一対の電極50の極性にかかわらず、抵抗器A10の抵抗値は一定となる。したがって、抵抗器A10を配線基板に実装する際、一対の電極50の極性を確認する必要がなくなる。
【0071】
抵抗器A10においては、一対の中間層40は、金属粒子が含有された合成樹脂を含む材料からなる。これにより、保護膜30および一対の中間層40は、ともに同種材料を含む構成となるため、保護膜30と、一対の中間層40の被覆部41との結合性を向上させることができる。また、一対の中間層40の物性が導電性を有するものとなるため、一対の中間層40を抵抗体10に導通させることができる。
【0072】
抵抗器A10においては、一対の中間層40の電気抵抗率は、抵抗体10の電気抵抗率よりも大である。これにより、抵抗器A20の使用の際、抵抗体10を流れる電流が一対の中間層40には流れにくくなる。したがって、一対の中間層40の影響による抵抗器A20の抵抗値の変動を抑制することができる。
【0073】
図19~
図22に基づき、第2実施形態にかかる抵抗器A20について説明する。これらの図において、先述した抵抗器A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、
図19では、絶縁板20を透過している。
図20では、一対の電極50を透過している。
図20において透過した一対の電極50を想像線で示している。
【0074】
抵抗器A20においては、一対の中間層40の構成が、先述した抵抗器A10におけるこれらの構成と異なる。
【0075】
抵抗器A20においては、一対の中間層40は、金属薄膜からなる。当該金属薄膜は、たとえばニッケル-クロム(Cr)合金からなる。
図19、
図20および
図22に示すように、一対の中間層40の各々は、被覆部41および延伸部42を有する。被覆部41は、厚さ方向zにおいて保護膜30に対して抵抗体10とは反対側に位置する。被覆部41は、保護膜30の一部を覆っている。延伸部42は、一対の中間層40の被覆部41のいずれかから、抵抗体10の一対の第1端面10Cのいずれかに向けて延びている。延伸部42は、抵抗体10の第1面10Aに接している。これにより、一対の中間層40は、抵抗体10に導通している。なお、抵抗器A20においては、一対の中間層40の各々は、第1層40Aおよび第2層40Bを含まない構成となっている。これにより、一対の中間層40の各々は、一体となっている。
【0076】
【0077】
最初に、
図12に示すように、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く第1面81Aおよび第2面81Bを有する抵抗体81に、基材82を熱圧着させる。なお、本工程は、抵抗器A10の製造方法にかかる工程と同一であるため、説明は省略する。
【0078】
次いで、
図23に示すように、抵抗体81の第1面81Aの一部と、抵抗体81の複数のスリット811に貫入した基材82の一部とを覆う保護膜30を形成する。保護膜30は、エポキシ樹脂を含む材料をスクリーン印刷により複数のスリット811に貫入した基材82の一部を完全に覆うように第1面81Aの一部に塗布した後、当該材料を熱硬化させることにより形成される。
【0079】
次いで、
図24に示すように、厚さ方向zに沿って視て、抵抗体81の第1面81Aの全体と、保護膜30の全体との各々に重なる金属薄膜83を形成する。金属薄膜83の形成にあたっては、まず、抵抗体81の第1面81Aの一部と、保護膜30の一部とを覆うマスク層89を形成する。マスク層89は、スクリーン印刷により形成される。マスク層89を形成した後、金属薄膜83を形成する。金属薄膜83は、ニッケル-クロム合金からなる。金属薄膜83は、スパッタリング法により形成される。本工程において、マスク層89の全体が金属薄膜83に覆われる。
【0080】
次いで、
図25に示すように、マスク層89と、マスク層89を覆う金属薄膜83の一部を除去(リフトオフ)する。本工程により、抵抗体81の第1面81Aの一部と、保護膜30の一部とを覆う一対の中間層40が形成される。すなわち、一対の中間層40は、保護膜30などに残存した金属薄膜83からなる。
【0081】
次いで、
図16に示すように、抵抗体81および基材82を切断線CLに沿ってダイシングブレードで切断することにより、保護膜30および一対の中間層40を含む個片に分割する。なお、本工程は、抵抗器A10の製造方法にかかる工程と同一であるため、説明は省略する。
【0082】
最後に、
図17に示すように、抵抗体10に接する一対の電極50を形成する。なお、本工程は、抵抗器A10の製造方法にかかる工程と同一であるため、説明は省略する。以上の工程を経ることによって、抵抗器A20が製造される。
【0083】
次に、抵抗器A20の作用効果について説明する。
【0084】
抵抗器A20は、抵抗体10と、抵抗体10の第1面10Aに配置された保護膜30と、第1方向xにおいて互いに離間して配置され、かつ抵抗体10に接する一対の電極50とを備える。抵抗体10は、第1スリット111および第2スリット112を有する。保護膜30は、第1スリット111に最も近くに位置する第1外縁30Aと、第2スリット112に最も近くに位置する第2外縁30Bを有する。抵抗器A10においては、厚さ方向zに沿って視て、第1外縁30Aと第1スリット111との第1間隔L1と、第2外縁30Bと第2スリット112との第2間隔L2とは、ともに保護膜30の第1方向xの寸法L0の15%以上である。したがって、抵抗器A20によっても、抵抗温度係数の増加を抑制することが可能となる。
【0085】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。また、これら実施形態の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0086】
A10,A20:抵抗器
10:抵抗体
10A:第1面
10B:第2面
10C:第1端面
10D:第2端面
111:第1スリット
112:第2スリット
11A:側壁
12:溝
131:第1領域
132:第2領域
14:突起
20:絶縁板
20A:端面
30:保護膜
30A:第1外縁
30B:第2外縁
31:フィラー
40:中間層
40A:第1層
40B:第2層
41:被覆部
42:延伸部
421:切欠き
43:介在部
50:電極
51:底部
52:側部
81:抵抗体
81A:第1面
81B:第2面
811:スリット
812:溝
82:基材
83:金属薄膜
89:マスク層
L1,L1min,L1max:第1間隔
L2,L2min,L2max:第2間隔
L0:寸法
C:中心
N:境界
Bmin,bmax:幅
CL:切断線
z:厚さ方向
x:第1方向
y:第2方向