(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】アントラサイクリンを含む結合タンパク質-毒素融合体、および免疫腫瘍学的適用におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20241220BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20241220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K31/704
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021519849
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019077644
(87)【国際公開番号】W WO2020074724
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515255205
【氏名又は名称】エヌビーイー セラピューティクス アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】グラヴンダー ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベールリ ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトマイアー ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】プレット フランチェスカ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/127664(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/072361(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/102679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患の治療に使用されるための
(i)1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含み、結合タンパク質に融合された結合タンパク質-毒素融合体、および、
(ii)免疫チェックポイント阻害剤;
の組合せを含む医薬品であって、
結合タンパク質は、抗体、標的結合能を保持する修飾抗体フォーマット、および/または標的結合能を保持する断片からなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ
1つ以上のアントラサイクリン毒素部分は、以下の式(i)を有するアントラサイクリンPNU-159682の誘導体であり、
【化1】
なお、前記毒素は、リンカーを介してその波線で結合タンパク質に融合され、かつ、
免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTLA-4、抗LAG3、抗CD40もしくは抗CD40L、抗TIM3、抗OX40もしくは抗OX40L(CD134/CD134L)、抗CD112、抗CD155、抗B7-H3、抗B7-H4、抗IDO1、抗IDO2、抗TDO2、抗TIGIT、抗GITR、および/または抗ガレクチン-9からなる群から選択される少なくとも1つであり、
ここで、結合タンパク質-毒素融合体および免疫チェックポイント阻害剤は、同時に、または任意の順序で、連続して患者に投与される、医薬品。
【請求項2】
cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患の治療のための薬剤の製造のための、結合タンパク質に融合された1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体と組み合わせて使用するための免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の使用
であって、
結合タンパク質は、抗体、標的結合能を保持する修飾抗体フォーマット、および/または標的結合能を保持する断片からなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ
1つ以上のアントラサイクリン毒素部分は、以下の式(i)を有するアントラサイクリンPNU-159682の誘導体であり、
【化2】
なお、前記毒素は、リンカーを介してその波線で結合タンパク質に融合され、かつ、
免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTLA-4、抗LAG3、抗CD40もしくは抗CD40L、抗TIM3、抗OX40もしくは抗OX40L(CD134/CD134L)、抗CD112、抗CD155、抗B7-H3、抗B7-H4、抗IDO1、抗IDO2、抗TDO2、抗TIGIT、抗GITR、および/または抗ガレクチン-9からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
【請求項3】
cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患が、不応性であるか、免疫チェックポイント阻害剤治療に抵抗性であるか、または免疫チェックポイント阻害剤治療後に再発性である腫瘍である、請求項1に記載の医薬品。
【請求項4】
cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患が、不応性であるか、免疫チェックポイント阻害剤治療に抵抗性であるか、または免疫チェックポイント阻害剤治療後に再発性である腫瘍である、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患が、以下からなる群より選択される、請求項1および3のいずれか1項に記載の医薬品:
・黒色腫、
・大腸癌もしくは大腸腫瘍、
・膵臓癌もしくは膵腫瘍
・膠芽腫、
・卵巣癌もしくは腫瘍、および/または
・前立腺癌もしくは腫瘍。
【請求項6】
cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患が、以下からなる群より選択される、請求項2および4のいずれか1項に記載の使用:
・黒色腫、
・大腸癌もしくは大腸腫瘍、
・膵臓癌もしくは膵腫瘍
・膠芽腫、
・卵巣癌もしくは腫瘍、および/または
・前立腺癌もしくは腫瘍。
【請求項7】
結合タンパク質が、以下からなる群から選択される少なくとも1つの標的に結合する、請求項1、3および5のいずれか1項に記載の医薬品:
・ROR1
・CS1
・HER2
・メソテリン(MN)および/または
・ROR2。
【請求項8】
結合タンパク質が、以下からなる群から選択される少なくとも1つの標的に結合する、請求項2、4および6のいずれか1項に記載の使用:
・ROR1
・CS1
・HER2
・メソテリン(MN)および/または
・ROR2。
【請求項9】
cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患が、<1のimmunoscoreを有すると特徴付けられる、請求項1、3、5および7のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項10】
cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患が、<1のimmunoscoreを有すると特徴付けられる、請求項2、4、6および8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
結合タンパク質が、
a)配列番号1および2;3および4、5および6ならびに/または20および21の対に記載された、重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対に含まれる重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)のセットを含む抗体;
b)以下の配列番号(HCDR1;HCDR2;HCDR3;LCDR1;LCDR2およびLCDR3の順番で)を含む、重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)のセットを含む抗体;
・22、23、24、25、26、および27、
・28、29、30、31、32、および33、
・34、35、36、37、38、および39、および/または
・40、41、42、43、44、および45;
c)b)の重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)を含むが、ただし、CDRの少なくとも1つはそれぞれの配列番号に対して3個のアミノ酸までの置換を有する抗体;ならびに/または
d)b)またはc)の重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)を含むが、ただし、CDRの少なくとも1つはそれぞれの配列番号に対して≧66%の配列同一性を有する抗体;
であって、
ここで、CDRは、十分な結合親和性でROR1に結合することができるように、適切なタンパク質フレームワークに埋め込まれ、
好ましくは、結合タンパク質が、
a)配列番号1および2;3および4、5および6ならびに/または20および21の対に記載された重鎖/軽鎖可変ドメイン(HCVD/LCVD)対を含む抗体;
b)a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン(HCVD/LCVD)対を含む抗体であって、ただし、
・HCVDは、それぞれの配列番号に対して≧80%の配列同一性を有する、および/もしくは
・LCVDは、それぞれの配列番号に対して≧80%の配列同一性を有する、抗体;ならびに/または
c)a)またはb)の重鎖/軽鎖可変ドメイン(VD)対を含む抗体であって、ただし、HCVDまたはLCVDの少なくとも1つが、それぞれの配列番号に対して10個までのアミノ酸置換を有する、抗体;
であって、
前記結合タンパク質は、依然として十分な結合親和性でROR1に結合することができる、
請求項
1、3、5、7および9のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項12】
結合タンパク質が、
a)配列番号1および2;3および4、5および6ならびに/または20および21の対に記載された、重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対に含まれる重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)のセットを含む抗体;
b)以下の配列番号(HCDR1;HCDR2;HCDR3;LCDR1;LCDR2およびLCDR3の順番で)を含む、重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)のセットを含む抗体;
・22、23、24、25、26、および27、
・28、29、30、31、32、および33、
・34、35、36、37、38、および39、および/または
・40、41、42、43、44、および45;
c)b)の重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)を含むが、ただし、CDRの少なくとも1つはそれぞれの配列番号に対して3個のアミノ酸までの置換を有する抗体;ならびに/または
d)b)またはc)の重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)を含むが、ただし、CDRの少なくとも1つはそれぞれの配列番号に対して≧66%の配列同一性を有する抗体;
であって、
ここで、CDRは、十分な結合親和性でROR1に結合することができるように、適切なタンパク質フレームワークに埋め込まれ、
好ましくは、結合タンパク質が、
a)配列番号1および2;3および4、5および6ならびに/または20および21の対に記載された重鎖/軽鎖可変ドメイン(HCVD/LCVD)対を含む抗体;
b)a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン(HCVD/LCVD)対を含む抗体であって、ただし、
・HCVDは、それぞれの配列番号に対して≧80%の配列同一性を有する、および/もしくは
・LCVDは、それぞれの配列番号に対して≧80%の配列同一性を有する、抗体;ならびに/または
c)a)またはb)の重鎖/軽鎖可変ドメイン(VD)対を含む抗体であって、ただし、HCVDまたはLCVDの少なくとも1つが、それぞれの配列番号に対して10個までのアミノ酸置換を有する、抗体;
であって、
前記結合タンパク質は、依然として十分な結合親和性でROR1に結合することができる、
請求項
2、4、6、8および10のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体、および免疫腫瘍学的適用におけるその使用に関する。
【0002】
発明の背景
抗体-薬物-融合体(ADC)を最も顕著な代表とする、結合タンパク質-毒素融合体は、癌治療において非常に大きな影響を与え、これまで治療することができなかった腫瘍型に対する新しい治療アプローチを提供した。
【0003】
一方、免疫チェックポイントの発見や免疫チェックポイント阻害薬の開発は、癌治療における免疫系の役割、および免疫系を刺激する方法、あるいはそれぞれの腫瘍が免疫系の攻撃に対する自己防御に用いる免疫チェックポイントを克服する方法に再び焦点を当ててきた。
【0004】
どちらのアプローチも非常に熱心に議論され、癌の治療において著しい進歩を示してきたが、これらの新しいアプローチでは治療できない腫瘍型が存在することも明らかとなった。
【0005】
例えば、特定の毒素を有するADCはそれらの抗体によって癌特異的抗原に対処するが、特定の癌型に対して活性ではないことが示されている。また、免疫チェックポイント阻害剤が効力を持たない腫瘍型が存在することも示されている。
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、既存の治療法ではこれまで対処できなかった腫瘍型を治療可能にする新たな手法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的の1つは、対応する単剤療法の抗腫瘍活性を増加させる併用療法を提供することである。
【0008】
本発明およびさらなる目的は、独立請求項に記載の方法および手段によって達成される。従属請求項は、特定の実施形態に関連する。
【0009】
発明の概要
本発明は、1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体、および免疫腫瘍学的適用におけるその使用を提供する。
本発明及びその特徴の一般的な利点を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実験で使用される、部位特異的に融合したADCの生成に使用される、ペンタグリシン修飾EDA-アントラサイクリンPNU-159682誘導体(G5-EDA-PNUまたはG5-PNU)の化学構造である。G3-PNUおよびG2-PNUは同じ構造を指すが、ただし、ペンタグリシンはそれぞれ、トリグリシンまたはジグリシンによって置換される。
【0011】
【
図2】
図2は、マウスEMT-6乳癌細胞上で安定に発現されたヒトROR1の発現についてのFACS分析である。インビボ研究のために選択された、EMT-6-ROR1クローン14は、蛍光標識された抗ROR1抗体クローン2A2を用いたROR1発現についてのFACS染色によって分析された。陰性対照は、蛍光標識されたアイソタイプ適合対照抗体による同じ細胞の染色を示す。
【0012】
【
図3】
図3は、同所性同系乳癌モデルEMT-6-ROR1(クローン14)における、異なる用量レベル(0.25、0.5および1mg/kg)での単一の処理による、抗体XBR1-402に基づく新規抗ROR1 PNU-ADCの用量漸増を示す(A)同所移植された乳房腫瘍の腫瘍増殖は、示されるように、異なる処置群において経時的にモニターされる。(B)パネル(A)に示した群の個々のマウスにおける腫瘍成長曲線を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、EMT-6-ROR1(クローン14)乳癌細胞を同所移植した同系マウスにおける腫瘍体積の変化を示す。(A)ベヒクル対照(PBS)の注射、または(B)抗CD30抗体ブレンツキシマブ、クローンAc10を含む、アイソタイプ適合対照PNU-ADCを0.25mg/kg単回投与、または(C)新規抗ROR1抗体XBR1-402を含む抗ROR1 PNU-ADCを、0.25mg/kg単回投与のいずれかであり、これは、
図3によれば、マウスにおける同所性EMT-6-ROR1乳房腫瘍の治療に最適以下の用量であると決定されている。パネル(D)および(E)は、示されるように、0.25mg/kgのアイソタイプ適合対照ADC Ac10および0.25mg/kgの新規抗ROR1 PNU ADCを用いた、抗CTLA4免疫チェックポイント阻害剤抗体9D9による組合せ処置を示す。(F)は、以下の群についてのメジアン群腫瘍体積変化(Median group tumor volume evolution)(Last-Observation-Carried-Forward(LOCF)法を適用)を示す。ベヒクル対照、Ac10-G5-PNUアイソタイプ対照およびXBR1-402-G5-PNU;(G)は、以下の群についてのメジアン群腫瘍体積変化(Median group tumor volume evolution)(Last-Observation-Carried-Forward(LOCF)法を適用)を示す。ベヒクル対照、Ac10-G5-PNUアイソタイプ対照および抗マウスCTLA-4抗体9D9、ならびに、XBR1-402-G5-PNUおよび抗マウスCTLA-4抗体9D9;
【0014】
【
図5】
図5は、以下において、安定して発現するヒトROR1の発現に関するFACS分析を示す。(A)マウスCT-26乳癌細胞(クローン3)および(B)B16マウスメラノーマ癌細胞(プール)。インビボ研究のために選択された、CT-26-ROR1クローン3およびB16-ROR1プールは、蛍光標識された抗ROR1抗体クローンXBR1-402(右ピーク)によるROR1発現についてのFACS染色によって分析された。陰性対照は、蛍光標識されたアイソタイプ適合対照抗体(左ピーク)による同じ細胞の染色を示す。
【0015】
【
図6】
図6は、実施例6に従って、CT-26-ROR1クローン3腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積変化(Tumor volume evolution)を示す。(A)グループ1のベヒクル対照(未処理)、(B)グループ2のアイソタイプ対照、(C)グループ3の抗ROR1 ADC huXBR1-402-17、(D)アイソタイプ対照+グループ4の免疫チェックポイント阻害剤抗マウスPD-1抗体、(E)抗ROR1 ADC huXBR1-402-17+グループ7の免疫チェックポイント阻害剤抗マウスPD-1抗体。パネルA~Eの挿入図は、各処置群のマウスの数と比較して、腫瘍増殖が阻止されたマウスの数を提供する。結果は、評価された免疫チェックポイント阻害剤と標的化PNU誘導体含有ADCとの間の協力を示唆する。
【0016】
【
図7】
図7は、実施例7と同様に、ROR1過剰発現のB16プールの静脈内適用後、ベヒクル対照で処理後(「ベヒクル」、グループ1)、免疫チェックポイント阻害剤抗マウスCTLA-4抗体で処理後(「CTLA-4」、グループ2)、抗ROR1 ADC huXBR1-402-17で処理後(「ADC」、グループ3)、および抗ROR1 ADC huXBR1-402-17+免疫チェックポイント阻害剤抗マウスCTLA-4抗体で処理後(「ADC+CTLA-4」、グループ4)の、マウスにおける肺表面コロニー体積を示す。これらの結果は、免疫原性の低い腫瘍において、評価された免疫チェックポイント阻害剤と標的化PNU誘導体を含むADCとの間の強力な相乗作用を示唆する。「n.s.」は、統計的に有意に異ならず、「*」は統計的に有意に異なることを示す。
【0017】
【
図8】
図8は、(A)未処理対照マウス、および(B)本発明に従ってADCで処置した3匹のマウス(4mg/kgで1回)からの、hROR1(ヒトROR1)過剰発現B16腫瘍凍結切片のCD4およびCD8染色を示す。
図8(A)に示すように、B16腫瘍は、低レベルのCD4+およびCD8+細胞を自然に含む。
図8(B)は、本発明に示すように、ADCによる治療が腫瘍内のCD4+およびCD8+細胞の数を増加させることを示す。
【0018】
【
図9】
図9は、hROR1(ヒトROR1)過剰発現CT-26およびB-16腫瘍における浸潤リンパ球上のT細胞活性化マーカーである41BB(CD137)染色の分析を示す。
図9に示すように、CT-26腫瘍と比較して、cold tumorsとしてのB16腫瘍の状態で維持すると、B-16腫瘍において、活性化T CD4+(A)およびCD8+(B)リンパ球数は、有意に少ない。“*”は統計的に有意な差を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、そのようなデバイスおよび方法は変化し得るので、説明されたデバイスの特定の構成要素部分または説明された方法のプロセスステップに限定されないことを理解されたい。
また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことを理解されたい。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明白に別段の指示をしない限り、単数形および/または複数の言及を含むことに留意しなければならない。さらに、数値で区切られたパラメータ範囲が与えられた場合、その範囲はこれらの制限値を含むものとみなされることも理解されるべきである。
【0020】
さらに、本明細書に開示される実施形態は、互いに関連しない個々の実施形態として理解されることを意味しないことを理解されたい。
一実施形態で論じられた特徴は、本明細書に示された他の実施形態に関連しても開示されることが意図される。
1つの場合において、特定の特徴が1つの実施形態で開示されず、別の実施形態で開示される場合、当業者は、前記特徴が前記他の実施形態で開示されることを意味しないことを必ずしも意味しないことを理解するのであろう。
他の実施形態についても前記特徴を開示することが本出願の要旨であるが、明確にするために、および明細書を管理可能なボリュームに保つために、これは行われていないことを、当業者は理解するのであろう。
【0021】
さらに、本明細書で記載される先行技術文献の内容は、参照により組み込まれる。
これは、特に、標準的または日常的な方法を開示する先行技術文献を指す。
その場合、参照による組み入れは、主に、十分な可能な開示を提供し、長い繰り返しを回避する目的を有する。
【0022】
本発明の一態様によれば、以下の患者の治療のため(の医薬品の製造のため)に、結合タンパク質に融合された1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む、結合タンパク質-毒素融合体が提供される:
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患に罹患している患者、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患を発症する危険性がある患 者、および/または、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患と診断されている患者。
【0023】
括弧内の「医薬品の製造のため」という上記用語は、所与の化合物の医学的使用を対象とするクレームに関する異なる国内/地域の要件を満たすように選択されていることを強調することが重要である。
この用語がいわゆるスイス型フォーマット(「医薬品の製造のため」という修飾語が必要とされる場合)および、EPC2000に基づくそれぞれのクレーム言語(同じ修飾語は、もはや許されない場合)の両方を特に包含すべきである。
【0024】
本発明の別の態様によれば、cold tumorであることを特徴とする腫瘍性疾患を治療または予防する方法が提供され、前記方法は、1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体を患者に投与することを含む。
【0025】
本発明の別の態様によれば、以下の組合せが、
(i)1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含み、結合タンパク質に融合された結 合タンパク質-毒素融合体、および、
(ii)免疫チェックポイント阻害剤;
以下の患者の治療のため(の医薬品の製造のため)に提供される
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患に罹患している患者、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患を発症する危険性がある患 者、および/または、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患と診断されている患者。
【0026】
ここで、結合タンパク質-毒素融合体および免疫チェックポイント阻害剤は、同時に、または、任意の順序で、連続して患者に投与される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、cold tumorであることを特徴とする腫瘍性疾患を治療または予防する方法が提供され、前記方法は、患者に、以下を投与することを含む
(i)1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含み、結合タンパク質に融合された結 合タンパク質-毒素融合体、および
(ii)免疫チェックポイント阻害剤。
【0028】
ここで、結合タンパク質-毒素融合体および免疫チェックポイント阻害剤は、同時に、または任意の順序で、連続して患者に投与される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、結合タンパク質に結合された1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体が、以下の患者の治療に使用するため(の医薬品の製造のため)の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用するために提供される。
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患に罹患している患者、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患を発症する危険性がある患 者、および/または、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患と診断されている患者。
【0030】
本発明の別の態様によれば、下記の患者の治療に使用するため(の医薬品の製造のため)に、結合タンパク質に融合された1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体と組み合わせて使用するための免疫チェックポイント阻害剤である:
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患に罹患している患者、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患を発症する危険性がある患 者、および/または、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患と診断されている患者。
【0031】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤が、陽性免疫チェックポイントタンパク質を調節する。別の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤が陰性の免疫チェックポイントタンパク質を調節する。
【0032】
1つの実施形態において、1つ以上のアントラサイクリン毒素を含む結合タンパク質-毒素融合体は、免疫チェックポイント阻害剤の前に投与される。
【0033】
一実施形態では、患者は、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患に罹患している、および/ または、
・cold tumorとして特徴づけられる腫瘍性疾患と診断された。
【0034】
「hot tumor」とは、免疫細胞の浸潤を特徴とする癌性または腫瘍性組織をいう。
免疫浸潤のレベルが、免疫系が腫瘍を認識し、関与しているかどうかを反映する。
「hot tumor」という用語は、ここでは、「免疫応答性腫瘍」という用語と同義に使用される。
あるいは「hot tumor」とは、免疫チェックポイント阻害剤による治療に反応する腫瘍と定義され得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「治療に応答する」という語は、比較可能なベヒクルまたはアイソタイプ対照治療と比較して、全身腫瘍組織量または増殖の統計的に有意な減少を手段する。
【0036】
一実施形態では、「cold tumor」という用語は、免疫細胞浸潤が乏しいか、または免疫細胞浸潤がないことを特徴とする癌性組織または腫瘍性組織を定義する。
「cold tumor」という用語は、本明細書では、「免疫学的に応答しない腫瘍」という用語と同義的に使用される。
【0037】
腫瘍が、「cold」とみなされるためのひとつの基準は、腫瘍の試料中の2種類のT細胞の密度に基づく、いわゆるImmunoscoreである。
1つの例は、腫瘍の中心部(CT)および腫瘍の侵襲性辺縁部(IM)の両方における2つのリンパ球集団(CD3/CD45RO、CD3/CD8またはCD8/CD45RO)の密度である。
Immunoscoreは、両方の細胞型の低密度が両領域に認められる、Immunoscore 0(I0)から、両領域に高密度が認められるImmunoscore 4(I4)までの範囲のスコアを提供する。
【0038】
Immunoscoreを決定する方法は、例えば、Galonら、2014、Pagesら、2009、Angellら、2013、およびGalonら、2013に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
これまで、Immunoscoreの低い腫瘍(「cold tumor」)は、抗PD-1、抗CTLA-4または抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤による治療にあまり応答しないが、Immunoscoreの高い腫瘍は、そのような治療に応答することが論じられてきた(Buら、2016参照)。
理論に束縛されることなく、この知見の背景にある根拠は、もしそれぞれの腫瘍に免疫関与がなければ、与えられた阻害剤による免疫チェックポイントの阻害は、良いものに何も変化させることができないということであろう。
【0040】
本発明者らは、1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む、結合タンパク質-毒素融合体が腫瘍において特に免疫学的有効性を有し、とりわけ、腫瘍再攻撃からの免疫防御をもたらすことを理解した。
この驚くべき知見は、抗PD-1、抗CTLA-4または抗PD-L1抗体のように、免疫チェックポイント阻害剤でなされた知見からは予想できなかった。
後者に適用される理論的根拠は、1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体には適用されない可能性が高い。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、cold tumorとして特徴付けられる腫瘍性疾患は、不応答性であるか、免疫チェックポイント阻害剤治療に抵抗性であるか、または免疫チェックポイント阻害剤治療後に再発する腫瘍である。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「不応答」は、免疫チェックポイント阻害剤での治療に応答して、腫瘍収縮または安定化もしくは収縮の持続時間の点で、好ましい方法で合理的に応答しないか、または応答しなかった腫瘍をいう。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「抵抗性」は、免疫チェックポイント阻害剤での3ヶ月以上の間の治療に応答して、腫瘍収縮または安定化もしくは収縮の持続時間の点で、好ましい方法で合理的に応答しないか、または応答しなかった腫瘍をいう。
本明細書中で使用される場合、用語「再発性」は通常、腫瘍が検出され得ない期間の後に、免疫チェックポイント阻害剤での治療の後に復帰した腫瘍をいう。腫瘍は、対象の体内の同じ場所または別の場所に戻ることがある。
【0044】
免疫チェックポイント阻害剤によるこのような処置は、好ましくは単剤であった。
【0045】
免疫チェックポイント阻害剤によるこのような処置は、好ましくはそれぞれの薬物能書またはSOPCにおいて推奨される用量またはレジメンにおいて投与される。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、cold tumorであることを特徴とする腫瘍性疾患は、以下からなる群から選択される:
・黒色腫,
・大腸癌または大腸腫瘍、
・膵臓癌や膵腫瘍
・膠芽腫、
・卵巣癌または腫瘍、および/または
・前立腺癌または腫瘍。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、結合タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの標的に結合する:
・ROR1
・CS1
・HER2
・メソテリン(MN)および/または
・ROR2。
【0048】
これらの中でも、ROR1が好ましい標的である。
【0049】
これらの標的、およびその獲得抗体は、以下の刊行物に記載されている
・US2019112385A1(メソテリン)
・US2019153092A1、WO2019016381(ROR1)
・WO2019030240A1(CS-1)、
・US2018028682(HER2)および
・WO2019016392A1(ROR2)、
その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
好ましくは、前記標的は、ヒト由来のものである。特に、ROR1は、本明細書中で言及される場合、好ましくはヒトROR1を意味する。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントタンパク質に対して作用するために適切な、任意の結合剤または化合物をいう。
特に、「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫系の活性、特に、癌細胞を認識し、そしてそれらに対して作用する、T細胞の能力を支持するために、免疫チェックポイントタンパク質の活性を調節するために適切な任意の結合剤または化合物をいう。
免疫チェックポイントタンパク質は、陽性(すなわち、それらはT細胞活性および免疫応答を支持する)または陰性(すなわち、それらはT細胞活性および免疫応答を制限する)であり得る。
陽性の免疫チェックポイントタンパク質の場合では、免疫チェックポイント阻害剤はこの免疫チェックポイントタンパク質の活性を促進するのに適した結合剤または化合物を意味する。
陰性の免疫チェックポイントタンパク質の場合では、免疫チェックポイント阻害剤は、この免疫チェックポイントタンパク質の活性を阻害するのに適した結合剤または化合物を意味する。
【0052】
免疫チェックポイントは、免疫系を調節するタンパク質であり(Pardoll D.M.「癌免疫療法における免疫チェックポイントの遮断(The blockage of immune checkpoints in cancer immunotherapy)」,Nature、2012、第12巻、252-264頁)、免疫系が細胞を無差別に攻撃するのを妨げる自己寛容にきわめて重要であり、好ましくは、以下の表に開示されている群から選択される:
【表1】
例えば、T細胞の表面上に発現されたPD-1チェックポイントタンパク質は、それらのT細胞が、体内の他の細胞を攻撃することを阻止するように作用する。
T細胞PD-1が、細胞表面のPD-L1に結合すると、T細胞はその細胞に対する免疫応答を引き起こさない。
ある種の癌細胞は高レベルのPD-L1を発現しており、免疫系の攻撃を回避するのに役立っている。
したがって、PD-1またはPD-L1のいずれかと結合し、それらの相互の結合を阻害する抗体は、癌細胞に対する免疫応答を促進するのに役立つ。
CTLA-4は、T細胞上に発現される別のそのような陰性の免疫チェックポイントタンパク質である。
【0053】
一群の実施形態によれば、腫瘍性疾患は、I<1のImmunoscoreを有することを特徴とするcold tumorとして特徴づけられる。
【0054】
Immunoscoreは、癌に浸潤し周囲を取り巻く免疫細胞をもとに、癌患者の予後診断を推測する手法である。
Immunoscoreは、大腸癌において国際的に検証されている。
細胞毒性T細胞および記憶T細胞と、大腸癌患者の生存との正の関連を明らかにしたGalonら(2006)の知見に基づくものである。
【0055】
Immunoscoreは、宿主免疫応答の影響を癌分類に組み込み、予後の正確性を向上させる。
腫瘍の中心部および周辺部における2つのTリンパ球集団(CD3/CD8、CD3/CD45ROまたはCD8/CD45RO)の密度を測定する。
Immunoscoreは、両方の細胞型の低密度が両領域に認められる場合には、0(I0)から、高密度が両領域に認められる場合にはImmunoscore 4(I4)までの範囲のスコアを提供する。
Immunoscoreは、腫瘍の周辺部にある免疫細胞がどのように組織化されているか、または、B細胞、三次リンパ構造および胚中心の量を測定するものではない。これらはすべて、結腸直腸癌をはじめとする癌に対する免疫応答において重要な役割を果たしている。
【0056】
一実施形態では、cold tumorは、I0またはI1のimmunoscoreを有する腫瘍であり、好ましくはI1のimmunoscoreを有る腫瘍ある。
【0057】
別の実施形態では、「cold tumor」という用語は、免疫細胞浸潤の欠如または不十分を特徴とする癌性または腫瘍性組織を定義する。
免疫浸潤のレベルは、免疫系が腫瘍を認識しているかどうかを反映する。
【0058】
別の実施形態では、cold tumorは、免疫チェックポイント阻害剤が単独療法としてインビボで投与される場合、免疫チェックポイント阻害剤に応答しない腫瘍である。
この実施形態では、免疫能力のあるマウスモデル(immunocompetent mouse model)と比較して、cold tumorは、マウスにおいて確立されると、約10mg/kgまで、または20mg/kgまで、またはそのマウスモデルにおける最大耐量(MTD)までの単剤療法として投与される免疫チェックポイント阻害剤に対して有意に応答しない腫瘍である(ベヒクル対照群と比較して)。
ヒトにおいて、cold tumorは、別の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤の用法・用量に従って、例えば、10mg/kgまで、例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、または200もしくは240mgで、任意に2~3週間ごとに投与する単剤療法として投与された免疫チェックポイント阻害剤に有意に応答しない腫瘍である。
【0059】
別の実施形態では、ヒト固形腫瘍と比較して、cold tumorは、2000年2月に公表された、RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)基準(Therasse P.ら、「New Guidelines to Evaluate the Response to Treatment in Solid Tumors」、Journal of the National Cancer Institute, Vol. 92, No. 3, February 2, 2000)と比較して定義することができる(2009年(Eisenhauer E.A.ら, “New response evaluation criteria in solid tumours: Revised RECIST guideline (version 1.1)”, European Journal of Cancer, Volume 45, Issue 2, 228 - 247)にアップデートされた)。
この文脈において、別の実施形態では、cold tumorは、免疫チェックポイント阻害剤の能書の指示に従って投与された1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤での処置後に、部分応答(「PR」;すなわち、進行性(「PD」、進行性疾患)であるか、または安定なままである(「SD」、安定な疾患))未満に関連する腫瘍である。
別の実施形態では、cold tumorは、少なくとも6週間、好ましくは少なくとも8週間、より好ましくは少なくとも12週間にわたって投与された、1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤での処置後に、部分応答(「PR」;すなわち、進行性(「PD」、進行性疾患)であるか、または安定なままである(「SD」、安定な疾患))未満に関連する腫瘍である。
別の実施形態では、cold tumorは、抗PD-L1治療後に進行性である乳がん腫瘍である。
【0060】
別の実施形態では、cold tumorは、免疫チェックポイント阻害剤の能書の指示に従って投与された1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤の少なくとも6週間後、好ましくは少なくとも8週間後、より好ましくは少なくとも12週間後に進行性疾患(「PD」)に関連する腫瘍である。
【0061】
別の実施形態では、cold tumorは、1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤に反応しなくなる腫瘍、すなわち、1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤による治療に以前に反応したが、反応しなくなった腫瘍である。
【0062】
別の実施形態において、cold tumorはまた、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤に対する初期応答の後に再発する(すなわち、治療に対する減少した応答をする)腫瘍として定義され得、ここで、後者は、免疫チェックポイント阻害剤の能書の指示に従って投薬される。
【0063】
別の実施形態では、cold tumorは、臨床医によってcold tumorとして分類された腫瘍である。
cold tumorの中でも特定非限定的な例として、マイクロサテライト不安定性が低い結腸直腸癌腫瘍が挙げられる(MSI-low; Sinicrope、F.「結腸直腸癌管理におけるマイクロサテライト不安定性検査の役割」“The Role of Microsatellite Instability Testing in Management of Colorectal Cancer”、Clinical Advances in Hematology & Oncology Volume 14、Issue 7 July 2016)。
このような腫瘍は、免疫チェックポイント阻害剤に対して非応答性であることが知られている。これらの腫瘍は非応答を確立するために1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤で最初に治療することなしに、cold tumorとして同定することができる。
【0064】
上述したように、「cold tumor」は、抗PD-1または抗CTLA-4抗体のような、免疫チェックポイント阻害剤による治療に対してあまり応答しない。
この現象の背後にある理論的根拠は、もしそれぞれの腫瘍に免疫系が関与していなければ、所定の阻害剤による免疫チェックポイントの阻害は、より良いものに何も変化させることはできないということであろう。
【0065】
特に、黒色腫、結腸直腸癌または腫瘍、膵臓癌または腫瘍、神経膠芽腫、卵巣がんまたは腫瘍および前立腺癌または腫瘍のサブセットは、cold tumorであることが知られている。
【0066】
本発明者らは、
(i)結合タンパク質に融合された1つ以上のアントラサイクリン毒素部分を含む結合タンパク質-毒素融合体、および
(ii)免疫チェックポイント阻害剤を含む処置を用いて、このようなcold tumorが効果的に処置され得ることを示す。
【0067】
この知見は驚くべきものであり、抗PD-1療法、抗CTLA-4療法または抗PD-L1療法のような免疫チェックポイント阻害剤でなされた知見、およびアントラサイクリンを含む結合タンパク質-毒素融合体でなされた知見からは予想できなかった。
理論に束縛されるものではないが、アントラサイクリン含有結合タンパク質-毒素融合体は、cold tumorを、免疫チェックポイント療法に感受性にする、すなわち、それらを、hot tumorに形質転換することができ、その結果、それらを免疫チェックポイント阻害剤で効率的に治療することができる。
【0068】
好ましくは、2つの異なる薬剤が患者に投与される間隔が最大4週間以下である。
【0069】
1つの実施形態において、1つ以上のアントラサイクリン毒素を含む結合タンパク質-毒素融合体は、免疫チェックポイント阻害剤の前に投与される。
【0070】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアントラサイクリン毒素部分は、PNU-159682であり、これは、(Quintiereiら、2005)に開示されている。
【0071】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのアントラサイクリン毒素部分は、以下の式(i)を有するアントラサイクリンPNU-159682の誘導体である
【化1】
前記毒素は、リンカーを介して、その波状の部分で結合タンパク質に融合されている。
【0072】
PNU由来アントラサイクリンおよび抗体薬物融合体におけるその使用は、同じ出願人に譲渡されたWO2016102679に可能に開示されている。この刊行物の含有量は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
別の群の実施形態によれば、免疫チェックポイント阻害剤は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである。
・抗PD-1
・抗PD-L1
・抗PD-L2
・抗CTLA-4
・抗LAG3
・抗CD40または抗CD40L
・抗TIM3、
・抗OX40または抗OX40L(CD134/CD134L)、
・抗CD112
・抗CD155
・抗B7-H3
・抗B7-H4
・抗IDO1
・抗IDO2
・抗TDO2
・抗TIGIT
・抗GITR、および/または
・抗ガレクチン-9。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
上記チェックポイント阻害剤の中で、以下に、結合または拮抗する化合物またはモノクローナル抗体
・PD-1
・PD-L1
・CTLA-4、および/または
・B7
が特に好ましく、PD-1およびPD-L1が最も好ましい標的である。
【0085】
別の群の実施形態によれば、融合体は、その波線で、リンカー構造X-L1-L2-L3-Yを含み、ここで、L1-L3はリンカーを表し、L1-L3の2つは必須であり、ここで、XおよびYはさらに、それぞれ1つ以上の任意のリンカーを表す。
【0086】
別の群の実施形態によれば、リンカー構造は、L2として、直接、または別のリンカーL1の手段によって、前記アントラサイクリン誘導体に結合されたオリゴグリシンペプチド(Gly)nを含み、ここで、nは、≧1および≦21、好ましくは2~5の整数である。
1つの具体的な実施形態(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ソルターゼAが使用される場合、以下を参照のこと)において、オリゴグリシン(Gly)nは、場合により、オリゴアラニン(Ala)nまたは混合Gly/Alaペプチドによって置換され得ることを理解することが大切である。
【0087】
別の群の実施形態によれば、オリゴグリシンペプチド(Gly)
nは、L
1と呼ばれるアルキレンジアミノリンカー(EDA)の手段によって、式(i)のアントラサイクリン誘導体に結合され、このアルキレンジアミノリンカーは第1のアミド結合の手段によってアントラサイクリン誘導体に結合され、一方、第2のアミド結合の手段によってオリゴグリシンペプチドのカルボキシ末端に結合され、前記アルキレンジアミノリンカーおよびオリゴグリシンペプチドの融合体は以下の式(ii)を有する
【化2】
【0088】
式中、波線は、式(i)のアントラサイクリン誘導体への結合を示し、
式中、mは、1以上11以下、好ましくは2~5の整数であり、そして、
nは、1以上21以下、好ましくは2~5の整数である。
1つの具体的な実施形態(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ソルターゼAが使用される場合、以下を参照のこと)において、オリゴグリシン(Gly)nは、任意に、オリゴアラニン(Ala)nによって置換され得ることを理解することが大切である。
【0089】
別の群の実施形態によれば、オリゴグリシンペプチド(Gly)nは、直接、または別のリンカーL1の手段によって、式(ii)のアントラサイクリン誘導体の環Aに結合される(ここで、アントラサイクリンコアの環Aは、Shiら、2009に示されるとおりである)。
1つの具体的な実施形態(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ソルターゼAが使用される場合、以下を参照のこと)において、オリゴグリシン(Gly)nは、任意に、オリゴアラニン(Ala)nによって置換され得ることを理解することが大切である。
【0090】
別の群の実施形態によれば、オリゴグリシンペプチド(Gly
n)は、L
1と呼ばれるアルキレンアミノリンカー(EA)の手段によって、式(i)のアントラサイクリン誘導体に融合され、このアルキレンアミノリンカーは、アミド結合の手段によってオリゴグリシンペプチドのカルボキシ末端に融合され、アルキレンアミノリンカーとオリゴグリシンペプチドとの前記融合体は以下の式(iii)を有する。
【化3】
【0091】
式中、波線は、式(i)のアントラサイクリン誘導体への結合を示し、
式中、mは、1以上11以下、好ましくは2~5の整数であり、そして、
nは、1以上21以下、好ましくは2~5の整数である。
1つの具体的な実施形態(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ソルターゼAが使用される場合、以下を参照のこと)において、オリゴグリシン(Gly)nは、任意に、オリゴアラニン(Ala)nによって置換され得ることを理解することが大切である。
【0092】
別の群の実施形態によれば、リンカー構造L3は、ソルターゼ酵素認識モチーフの特異的切断から生じるペプチドモチーフを含む。
【0093】
ソルターゼ酵素認識モチーフは、いわゆるソルターゼ酵素媒介抗体融合(SMAC技術)のためのタグとして働き、これは、同じ出願人に譲渡されたWO2014140317に実施可能に開示されている。
この刊行物の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
この技術では、一方がそのような認識モチーフを有し、他方がオリゴグリシンペプチド(Gly)nを有する2つの分子を、ソルターゼ酵素が、融合する。
1つの具体的な実施形態(化膿連鎖球菌ソルターゼAが使用される場合、以下を参照のこと)において、オリゴグリシン(Gly)nは任意に、オリゴアラニン(Ala)nによって置換され得ることを理解することが大切である。
【0094】
別の群の実施形態によれば、前記ソルターゼ酵素認識モチーフは、以下のアミノ酸配列:LPXTG、LPXAG、LPXSG、LAXTG、LPXTAまたはNPQTNのうちの少なくとも1つを含み、Xは任意の考えられるアミノ酸配列である。
【0095】
別の一群の実施態様によれば、得られたリンカーは、以下の少なくとも1つの配列を有する:
-LPXTGn-、
-LPXAGn-、
-LPXSGn-、
-LAXTGn-、
-LPXTGn-、
-LPXTAn-、または
-NPQTGn-、
ここで、Gnはnが≧1から≦21の整数であるオリゴまたはポリグリシンであり、
Anはnが≧1から≦21の整数であるオリゴまたはポリアラニンであり、そして、
Xは任意の考えられるアミノ酸配列である。
【0096】
別の群の実施形態によれば、アントラサイクリン誘導体は、1つ以上のリンカーの手段によって、結合タンパク質のカルボキシ末端、またはその少なくとも1つのドメインもしくはそのサブユニットのカルボキシ末端に結合される。
【0097】
別の群の実施形態によれば、結合タンパク質は、アミド結合の手段によって、オリゴグリシンペプチド(Gly)nのアミノ末端に結合される。
1つの具体的な実施形態(化膿連鎖球菌ソルターゼAが使用される場合、以下を参照のこと)において、オリゴグリシン(Gly)nは任意に、オリゴアラニン(Ala)nによって置換され得ることを理解することが大切である。
【0098】
使用されているソルターゼは好ましくはソルターゼAであり、一実施形態では、化膿連鎖球菌または黄色ブドウ球菌由来のソルターゼAである。
一実施形態では、ソルターゼA認識モチーフを依然として認識する、操作されたソルターゼAが使用されている。
1つの実施形態において、操作されたソルターゼAは、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ソルターゼAに由来し、1つの他の実施形態において、操作されたソルターゼAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ソルターゼAに由来する。
【0099】
別の群の実施形態によれば、結合タンパク質は、抗体、抗体ベースの結合タンパク質、標的結合能を保持する修飾抗体フォーマット、標的結合能を保持する抗体誘導体または断片、代替足場および/または抗体模倣物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0100】
上記の中でも、抗体が最も好ましいタイプの結合タンパク質である。
【0101】
用語「抗体」、「抗体ベースの結合タンパク質」、「標的結合能を保持する修飾抗体フォーマット」、「標的結合能を保持する抗体誘導体または断片」は、所与の抗原、エピトープまたは複数のエピトープへの強力な一価、二価または多価結合を示すポリペプチド鎖をいう。
本発明において使用される抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片は、任意の適切な技術(例えば、ハイブリドーマ技術、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、遺伝子シャッフリングライブラリー、半合成もしくは完全合成ライブラリー、またはそれらの組合せ)を使用して生成され得る。
本発明の、抗体、抗体ベースの結合タンパク質、および抗原結合断片は、インタクトな抗体および抗体断片、あるいは、インタクトな抗体の抗原結合部分を含み、かつ同族(cognate)抗原に結合する能力を保持するまたは抗原結合断片を含む。
本明細書中で特に明記しない限り、全ての抗体および抗原結合断片配列を含む全てのペプチド配列は、N→Cの順序で言及される。
【0102】
インタクトの抗体は、典型的には、ジスルフィド結合によって相互に連結された、少なくとも2つの重鎖(H)(約50~70kD)および2つの軽鎖(L)(約25kD)を含む。
抗体鎖をコードする認識された免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。
軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。
重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、そしてこれらは免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義する。
抗体のそれぞれの重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域から構成される。
IgGでは、重鎖定常領域は、CH1、CH2とCH3の3領域から構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域から構成される。
軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。
重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
モノクローナル抗体(mAb)は、同一の抗体分子からなる。
【0103】
抗体のVHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる、より保存されたフレームワーク領域(FR)が点在する(interspersed)超可変性の領域にさらに細分することができる。
それぞれのVHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で、アミノ末端からカルボキシル末端に配列される。
CDRおよびFR領域の位置、ならびに番号付けシステムは、本明細書中で使用されるように、例えば、IMGTシステム(Feffane MPら、2015)として定義されている。
【0104】
本発明の、抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片はまた、単鎖抗体をも包含する。
「単鎖抗体」という語は、一般にスペーサーペプチドを介して結合された、ポリペプチド結合におけるVHドメインおよびVLドメインを含むポリペプチドを指し、そして、アミノ末端および/またはカルボキシル末端にさらなるドメインまたはアミノ酸配列を含み得る。
例えば、単鎖抗体は、コードするポリヌクレオチドに連結するためのテザーセグメント(tether segment)を含み得る。
一例として、単鎖可変領域断片(scFv)は、単鎖抗体である。
別個の遺伝子によってコードされるFv断片のVLおよびVHドメインと比較して、scFvは合成リンカーによって(例えば、組換え方法によって)連結された2つのドメインを有する。
これにより、VL領域とVH領域とが対になって一価の分子を形成する単一の蛋白質鎖として生成されることが可能になる。
【0105】
抗体ベースの結合タンパク質の例は、抗体の結合ドメインが他のポリペプチドまたはポリペプチドドメインと結合するポリペプチド(例えば、代替的な分子足場)、Fc領域、他のポリペプチドの他の機能的または結合ドメイン、または追加結合特性を有する分子を生じる抗体(例えば、二重特異性または多重特異性タンパク質または抗体)である。
このようなポリペプチドは、天然に存在する抗体または抗体フラグメントにおいて通常見出されない結合ドメインまたは機能的ドメインの配置を作製し得る。
【0106】
抗原結合断片の例としては、
(i)Fab断片、VL、VH、CLとCH1ドメインからなる一価の断片;
(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域のジスルフィド架橋で結ばれた、2つのFab断片を含む2価の断片;
(iii)VHとCH1ドメインからなるFd断片;
(iv)インタクトの抗体の単一アームのVLとVHドメインからなるFv断片;
(v)構造的に保全されたフレームワーク領域間の操作された鎖間のジスルフィド結合を有する、ジスルフィド安定化Fvs(dsFvs);
(vi)VHまたはVL領域からなる単一ドメイン抗体(例えば、Wardら、Nature 341:544-546,1989参照);および
(vii)線形または環状ペプチドとしての独立した補完性決定領域(CDR);
が挙げられる。
【0107】
本発明の抗原結合断片はまた、ラクダ科足場を有する単一ドメイン抗原結合ユニットを包含する。
ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマ、およびアルパカが含まれる。ラクダ科動物は、軽鎖を欠く機能的抗体を産生する。
重鎖可変(VH)ドメインは、自律的に折り畳まれ、抗原結合ユニットとして独立して機能する。
その結合表面は、古典的な抗原結合分子(Fab)または単鎖可変断片(scFv)における6つのCDRと比較して、3つのCDRのみを含む。
ラクダ科抗体は、従来の抗体の結合親和性に匹敵する結合親和性を達成することができる。
【0108】
用語「ヒト抗体」は、実質的にすべてのCDR領域がヒト起源であるように、ヒト免疫グロブリンに由来する配列を含有する、抗体、抗体ベースの結合タンパク質、または抗原結合断片を指し、そして、実質的にすべてのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものに対応する。
【0109】
「代替足場」や「抗体模倣物」という用語は、免疫グロブリンファミリーに属さない蛋白質、そして、アプタマーなどの非蛋白質でさえ、または合成ポリマーをさす。抗体様βシート構造を有するものもあり、抗体よりも「抗体模倣物」や「代替足場」の潜在的利点は、溶解性がより良く、組織浸透性がより高く、熱や酵素に対する安定性がより高く、そして、生産コストが比較的低いことが挙げられる。
【0110】
いくつかの抗体模倣物は、考えられるあらゆる標的に対して、特異的結合候補を提供する大きなライブラリーにおいて提供することができる。
抗体と同様に、標的特異的抗体模倣物は、高スループットスクリーニング(HTS)技術の使用によって、ならびに、まさに、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母または哺乳動物ディスプレイのような確立されたディスプレイ技術を用いて開発され得る。
現在開発されている抗体模倣物は、例えば、
アンキリン反復タンパク質(DARPinsと呼ばれる)、
C型レクチン、
黄色ブドウ球菌のA-ドメインタンパク質、
トランスフェリン、
リポカリン、
フィブロネクチンの第10型IIIドメイン、
クニッツドメインプロテアーゼ阻害剤、
ユビキチン由来バインダー(アフィリンと呼ばれる)、
ガンマクリスタリン由来バインダー、
システインノットまたはノッチン、
チオレドキシンA足場ベースのバインダー、
核酸アプタマー、
ポリマーの分子インプリンティングによって産生される人工抗体、
細菌ゲノムからのペプチドライブラリー、
SH-3ドメイン、
ストレイドボディ、
ジスルフィド結合およびCa2+によって安定化された膜受容体の「Aドメイン」、
CTLA4ベースの化合物、
Fyn SH3、および
アプタマー(特定の標的分子に結合するオリゴ核酸またはペプチド分子)
を包含する。
【0111】
本発明の、抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片は、癌細胞上または腫瘍の癌細胞環境内の任意の適切な標的に結合し得る。
1つの実施形態において、本発明の、抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片は、癌細胞表面上の標的に結合する。
好ましい実施形態において、この標的は、癌細胞上で排他的に発現されるか、または健康な組織と比較して癌細胞上で過剰発現される。
本出願人は、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片が癌細胞上に結合し、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片がアントラサイクリン毒素部分とともに細胞内に内在化し、その細胞の免疫原性細胞死および/または免疫細胞(例えば、T細胞)の腫瘍内への浸潤をもたらす任意の標的が、好適な標的であることを示唆する。
当業者は、文献および実験の検討を通して、このような標的を同定することができる。
【0112】
1つの実施形態において、適切な標的は、ROR1、CS-1、HER2、メソテリンおよびROR2を含む。
1つの実施形態において、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質および抗原結合断片は、ROR1に結合する。
【0113】
本発明のさらなる実施形態によれば、結合タンパク質-毒素融合体に含まれる結合タンパク質は、以下の抗体である
a)配列番号の以下の対に記載される重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対に含まれる重 鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)のセットを含む抗体:
1と2;3と4、5と6および/または20と21;
b)以下の配列番号(HCDR1;HCDR2;HCDR3;LCDR1;LCD R2およびLCDR3の順番で)を含む重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)のセ ットを含む抗体:
・22,23,24、25、26、および27、
・28,29,30、31、32、および33、
・34,35,36、37、38、および39、および/または
・40,41,42、43、44、および45;
c)b)の重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)を含むが、ただし、CDRの少 なくとも1つは、それぞれの配列番号に対して、3アミノ酸までの置換を有する抗 体;および/または
【0114】
d)b)またはc)の重鎖/軽鎖相補性決定領域(CDR)を含むが、ただし、C DRの少なくとも1つは、それぞれの配列番号に対して、≧66%の配列同一性を 有する抗体;
【0115】
ここで、CDRは、十分な結合親和性でROR1に結合することができるように、適切なタンパク質フレームワークに埋め込まれる。
【0116】
本明細書中で使用される場合、用語「CDR」または「相補性決定領域」は、重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内に見出される非連続的な抗原結合部位を意味することが意図される。
これらの特定の領域は、Kabatら(1977)、Kabatら(1991)、Chothiaら(1987)およびMacCallumら(1996)によって記載されており、ここで、前記定義は、互いに対して比較される場合、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。
それにもかかわらず、抗体または移植された抗体またはその変異体のCDRを指すいずれかの定義の適用は、本明細書中で定義および使用される用語の範囲内であることが意図される。
上記で引用した記載の各々によって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基を、比較として以下の表に示す。
CDRの定義は場合によって異なるため、この番号付けは、同封の配列リストに実際に開示されているCDRとは異なる場合があることに留意されたい。
【0117】
【0118】
本明細書中で使用される場合、用語「フレームワーク」は、抗体可変領域に関して使用される場合、抗体の可変領域内のCDR領域外のすべてのアミノ酸残基を意味するように入力される。
したがって、可変領域フレームワークは長さが約100~120アミノ酸の間であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを指すことが意図される。
【0119】
本明細書で使用される「充分な結合親和性で標的Xに結合することができる」という語は、それぞれの結合ドメインが、標的に、KDが10-4以下で結合することを意味すると理解されなければならない。
KDは、タンパク質バインダーとその抗原との間の、Koff/Konの比率である平衡解離定数である。
KDと親和性は逆に関連している。
KD値はタンパク質バインダーの濃度(特定の実験に必要とされるタンパク質バインダーの量)に関連し、したがって、KD値が低くなるほど(濃度が低くなるほど)、したがって、結合ドメインの親和性が高くなる。
以下のテーブルは、典型的なモノクローナル抗体のKDの範囲を示している。
【0120】
【0121】
好ましくは、タンパク質バインダーが2個までのアミノ酸置換、より好ましくは1個までのアミノ酸置換を有する。
【0122】
好ましくは、CDRの少なくとも1つは、≧67%;≧68%;≧69%;≧70%;
≧71%;≧72%;≧73%;≧74%;≧75%;≧76%;≧77%;≧78%;
≧79%;≧80%;≧81%;≧82%;≧83%;≧84%;≧85%≧86%;≧87%;
≧88%;≧89%;≧90%;≧91%;≧92%;≧93%;≧94%;≧95%;≧96%;
≧97%;≧98%;≧99%の配列同一性を有する。最も好ましくはそれぞれの配列番号に対して100%である。
【0123】
本明細書中で使用される、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較窓(comparison window)を通して、2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、ここで、比較窓(comparison window)中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、付加または欠失を含まない参照配列(例えば、ポリペプチド)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。
パーセンテージは、一致した位置の数を生じる、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列において生じる位置の数を決定し、一致した位置の数を比較窓における位置の総数で割り、そして配列同一性のパーセンテージを生じるために結果に100を掛けることによって計算される。
【0124】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一」または「同一性」のパーセンテージは、同じ配列である2以上の配列または部分列(subsequences)を指す。
【0125】
比較窓(comparison window)にわたって、最大対応について、または、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動アラインメントおよび目視検査によって測定される指定された領域を比較およびアラインメントしたとき、もし、2つの配列が、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定のパーセンテージ(すなわち、特定の領域にわたって、または特定されない場合、参照配列の全配列にわたって、少なくとも、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する場合、2つの配列が「実質的に同一である」。
【0126】
本開示は、本明細書に例示されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドとそれぞれ実質的に同一であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する。
必要に応じて、同一性は、長さが少なくとも約15、25もしくは50ヌクレオチドである領域にわたって、またはより好ましくは長さが100~500もしくは1000もしくはそれ以上のヌクレオチドである領域にわたって、または参照配列の完全長にわたって存在する。
アミノ酸配列に関して、同一性または実質的同一性は、長さが少なくとも5、10、15または20アミノ酸、任意に、長さが少なくとも約25、30、35、40、50、75または100アミノ酸、任意に少なくとも約150、200または250アミノ酸、または参照配列の全長である領域にわたって存在し得る。
より短いアミノ酸配列、例えば、20以下のアミノ酸のアミノ酸配列に関して、本明細書中に定義される保存的置換に従って、1つまたは2つのアミノ酸残基が保存的に置換される場合、実質的な同一性が存在する。
【0127】
好ましくは、CDRの少なくとも1つは、以下を含むCDR配列修飾を受けている
・親和性成熟
・免疫原性の減少
【0128】
親和性成熟(Affinity maturation)とは、ある抗体の親和性がin vitroで向上する過程のことである。
天然の対応物と同様に、in vitroでの親和性成熟も突然変異と選択の原理に基づいている。
これは、抗体、抗体フラグメント、または抗体模倣物のような他のペプチド分子を最適化するために首尾よく使用されてきた。
CDR内部のランダム突然変異は、放射線、化学的突然変異原、またはエラープローンPCR(error-prone PCR)を用いて導入される。
さらに、チェインシャフリング(chain shuffling)法によって遺伝的多様性を増加させることができる。
ファージディスプレイのようなディスプレイ方法を使用する2または3ラウンドの変異および選択は、通常、低ナノモル範囲の親和性を有する抗体フラグメントを生じる。
原理については、Eylensteinら(2016)を参照のこと(その内容は、本明細書中で参照として援用される)。
【0129】
操作された抗体は、任意の必要なフレームワーク復帰突然変異と共に、配列由来V領域に移植されたマウス配列由来CDR領域を含む。従って、ヒト化抗体が患者に投与される場合、CDR自体が免疫原性反応を引き起こし得る。
CDRによって引き起こされる免疫原性を減少させる方法はHardingら(2010)に開示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本発明のさらなる実施形態によれば、結合タンパク質-毒素融合体に含まれる結合タンパク質は、以下の抗体である
a)以下の配列番号の対に記載される重鎖/軽鎖可変ドメイン(HCVD/LCVD )対:
1と2;3と4、5と6、および/または20と21;
b)a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン(HCVD/LCVD)対。ただし、
・HCVDは、それぞれの配列番号に対して≧80%の配列同一性を有する、および/ または
・LCVDは、それぞれの配列番号に対して≧80%の配列同一性を有する;
c)a)またはb)の重鎖/軽鎖可変ドメイン(VD)対であって、ただし、HCV DまたはLCVDの少なくとも1つが、それぞれの配列番号に対して、10個までの アミノ酸置換を有する;
前記タンパク質バインダーは、依然として十分な結合親和性でROR1に結合することができる。
【0131】
「可変ドメイン」は、抗体またはその重鎖もしくは軽鎖に関して使用される場合、分子上に抗原結合を付与し、定常領域ではない抗体の部分を意味することが意図される。
この用語は、可変領域全体の結合機能の全てのいくつかを維持するその機能的断片を含むことが意図される。
可変領域結合断片には、例えば、Fab、F(ab)2、Fv、単鎖Fv(scfv)などの機能的断片が含まれる。
このような機能的断片は、当業者に周知である。従って、異種可変領域の機能的断片を記載する際のこれらの用語の使用は、当業者に周知の定義に対応することが意図される。
そのような用語は、例えば、Hustonら(1993)またはPluckthunおよびSkerra(1990)に記載されている。
【0132】
好ましくは、HCVDおよび/またはLCVDがそれぞれの配列番号に対して≧81%;
≧82%;≧83%;≧84%;≧85%;≧86%;≧87%;≧88%;≧89%;
≧90%;≧91%;≧92%;≧93%;≧94%;≧95%;≧96%;≧97%;
≧98%;≧99%;または最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0133】
本発明の別の実施形態によれば、結合タンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)である。
【0134】
本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)」は、非保存的置換よりも抗体機能に対する効果が小さい。
アミノ酸を分類する多くの方法があるが、それらはしばしば、それらの構造およびそれらのR基の一般的な化学的特徴に基づいて6つの主な基に分類される。
【0135】
いくつかの実施形態では、「保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。
例えば、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。
これらのファミリーには、以下のアミノ酸が含まれる
・塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、
・酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、
・非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミ ン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、
・非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシ ン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、
・β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン) および
・芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプト ファン、ヒスチジン)。
【0136】
他の保存されたアミノ酸置換は、ペプチドの電荷を修飾するために、アスパラギンをアスパラギン酸で置換する場合のように、アミノ酸側鎖ファミリーにわたって起こり得る。
保存的変化は、化学的に相同な非天然アミノ酸(すなわち、ロイシンの代わりに合成非天然疎水性のアミノ酸、トリプトファンの代わりに合成非天然芳香族アミノ酸)の置換をさらに含み得る。
本発明のさらなる実施形態によれば、結合タンパク質は、上記の記載による抗体のものと比較して少なくとも50%のROR1に対する標的結合親和性を有する。
【0137】
本明細書中で使用される場合、用語「結合親和性」は、結合相互作用の強度を意味することが意図され、したがって、実際の結合親和性ならびに見かけの結合親和性の両方を含む。実際の結合親和性は、解離速度に対する会合速度の比である。
従って、結合親和性を付与または最適化することは、所望のレベルの結合親和性を達成するために、これらの成分のいずれかまたは両方を改変することを包含する。
見かけの親和性は、例えば、相互作用の結合活性を含むことができる。
例えば、二価異種可変領域結合断片はその価数のために、変化したまたは最適化された結合親和性を示し得る。
【0138】
結合剤の親和性を測定するための適切な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)によるものである。
この方法は、表面プラズモン波が金属/液体界面で励起されたときに生じる現象に基づいている。光は、試料と接触していない表面の側面に向けられ、反射され、そして、SPRは、角度と波長の特定の組み合わせで反射光強度の減少を引き起こす。
生体分子結合事象は、表面層における屈折率の変化を引き起こし、これは、SPRシグナルの変化として検出される。
結合事象は、受容体-リガンド対間の結合会合または解離のいずれかであり得る。
屈折率の変化は本質的に瞬時に測定することができ、したがって、親和定数の個々の構成要素の決定を可能にする。
より具体的には、前記方法は、会合率(kon)と解離率(koff)の正確な計測を可能にする。
【0139】
konおよびkoff値を測定すると、治療上より有効な、変更された可変領域または最適化された可変領域を特定できるため、効果的でありうる。
例えば、改変された可変領域またはその異種結合断片(heteromeric binding fragment)は、例えば、類似の結合親和性を示す可変領域および異種結合断片(heteromeric binding fragment)と比較して、高いkon 値を有するため、より有効であり得る。
より高いkon値を有する分子は、より速い速度でそれらの標的に特異的に結合し、そしてそれらの標的を阻害し得るので、増大した効力が付与される。
同様に、本発明の分子は、類似の結合親和性を有する分子と比較してより低いkoff 値を示すので、より効果的であり得る。
いったん結合されると、その分子がそれらの標的から解離するのがより遅いので、より低いkoff 速度を有する分子で観察される増加した効力が観察され得る。
本発明の、変化した可変領域および最適化された可変領域(その異種可変領域結合断片を含む)を参照して記載されるが、会合速度および解離速度を測定するための上記の方法は、治療目的または診断目的のためのより有効なバインダーを同定するために、本質的に任意のタンパク質バインダーまたはそのフラグメントに適用可能である。
【0140】
結合剤の親和性を測定するための別の適切な方法は、表面を通るものであり、FACS/スキャッチャード分析によるものである。
【0141】
表面プラズモン共鳴を使用する、会合および解離速度を含む親和性を測定するための方法は、当該分野で周知であり、そして例えば、JonssonおよびMalmquist(1992)ならびにWuら(1998)に記載されているのを理解し得る。
さらに、結合相互作用を測定するための当技術分野で周知の1つの装置は、Pharmacia Biosensor(Uppsala、Sweden)から市販されているBIAcore 2000装置である。
【0142】
好ましくは、前記標的結合親和性は、≧51%、≧52%、≧53%,≧54%,≧55%,≧56%,≧57%,≧58%,≧59%,≧60%,≧61%,≧62%,≧63%,≧64%,≧65%,≧66%,≧67%,≧68%,≧69%,≧70%,≧71%,≧72%,≧73%,≧74%,≧75%,≧76%,≧77%,≧78%,≧79%,≧80%,≧81%,≧82%,≧83%,≧84%,≧85%,≧86%,≧87%,≧88%,≧89%,≧90%,≧91%,≧92%,≧93%,≧94%,≧95%,≧96%,≧97%,≧98%であり、最も好ましくは対照結合剤のそれと比べて≧99%である。
【0143】
本発明の他の実施形態によれば、結合タンパク質は、上記の記載による抗体と、ROR1との結合について競合する。
本発明の他の実施形態によれば、結合タンパク質は、上記の説明による抗体と本質的に同じ、または同じROR1上の領域に結合する。
【0144】
本明細書中で使用される場合、用語「結合について競合する」は、上記の配列によって定義される抗体の1つを参照して使用され、これは実際のタンパク質バインダーと同じ標的、または標的エピトープもしくはドメインもしくはサブドメインに結合する活性として、後者のバリアントであることを意味する。
結合の効率(例えば、動力学または熱力学)は、後者の効率と同じか、またはそれより大きくても小さくともなる。
例えば、基質への結合のための平衡結合定数は、2つの抗体について異なり得る。
【0145】
このような結合の競合は、競合結合アッセイを用いて適切に測定することができる。
このようなアッセイは、Fincoら、2011年に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれ、特許請求の範囲の解釈のためのそれらの意味は、Dengら、2018年に開示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
この特性を試験するために、とりわけ、以下を含む適切なエピトープマッピング技術が利用可能である
・X線共結晶解析と極低温電子顕微鏡(cryo-EM)(X-ray co-cr ystallography and cryogenic electron m icroscopy)
・アレイベースのオリゴ-ペプチド走査型(Array-based oligo- peptide scanning)
・部位特異的突然変異誘発マッピング(Site-directed mutage nesis mapping)
・ハイスループットショットガン突然変異誘発エピトープマッピング(High-t hroughput shotgun mutagenesis epitope mapping)
・水素-重水素交換、および/または
・架橋結合質量分析法(Cross-linking-coupled mass spectrometry)
【0147】
これらの方法はとりわけ、Banikら(2010)およびDeLisser(1999)に開示および議論されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0148】
実施例
【0149】
本発明は、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は例示的または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。
特許請求の範囲において、単語「有する」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用されることができないことを示すものではない。
特許請求の範囲におけるいかなる引用符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0150】
本明細書中に開示される全てのアミノ酸配列は、N末端からC末端へと示され;本明細書中に開示される全ての核酸配列は、5’→3’で示される。
【0151】
実施例1
精製組換え抗ヒトROR1およびアイソタイプ対照抗体(isotype control antibodies)の作製
【0152】
発現ベクター:抗体可変部コード領域(Antibody variable region coding regions)は、リーダー配列として、MNFGLRLIFLVLTLKGVQC、を用いて、全遺伝子合成(GenScript)により作製し、そして、適用できるように、発現ベクターpCB14内で、ヒトIgH-γ1及びIgL-κ又はIgL-λの定常領域を適宜組み合わせた。
このベクターは、エピソーム哺乳動物発現ベクターpCEP4(Invitrogen)の誘導体であり、EBV複製起点を持ち、EBV核抗原(EBNA-1)をコードして、染色体外複製を可能にし、そして、元のヒグロマイシンB耐性遺伝子の代わりにピューロマイシン選択マーカーを含む。
【0153】
発現および精製: pCB14ベースの発現ベクターを、PLUS(商標)試薬を用いたLipofectamine(登録商標)LTX試薬(Thermo Fisher Scientific、Reinach、Switzerland、15388100)を用いて、HEK293T細胞にトランスフェクトした;1日のインキュベーション(37℃、5% CO2、増殖培地:10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)、100IU/mLのPen-Strep-Fungizoneおよび2mMのL-グルタミン(すべてBioconcept、Allschwil、Switzerland)を含むL-グルタミンを用いたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)高グルコース(4.5g/L))後、細胞を選択条件下で増殖させた(2μg/mLのピューロマイシン(Sigma-Aldrich, Buchs SG, Switzerland, P8833-25mg 2mg/mLで保存))。
細胞を分割し、さらに増殖させた(37℃、5% CO2);コンフルエンシーに達したら、組織培養皿を20μg/mlのポリ-L-リジン(Sigma-Aldrich、P1524)で37℃で2時間コーティングし、そして、PBSで2回洗浄した。
【0154】
次に、細胞をトリプシン処理し、ポリ-L-リジン被覆プレート上で1:3に分割した。
再びコンフルエントに達した後、細胞をPBSで洗浄し、続いて、1μg/mLのピューロマイシン(Sigma、P8833)、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone(Bioconcept)、161μg/mLのN-アセチル-L-システイン(Sigma-Aldrich、A8199)および10μg/mLのL-グルタチオン還元(Sigma-Aldrich、G6529)を補充した生産培地(DMEM/F-12、Gibco/Thermo Fisher Scientific、31330-03)に培地を置換した。
2週間ごとに回収し、細胞を除去するために濾過した上清(0.22μm)を、精製するまで4℃で保存した。
【0155】
精製のために、濾過した上清を、PBS平衡化プロテインA HiTrapカラム(GE Healthcare、Frankfurt am Main、Germany、17-0405-01)またはJSR Amsphere(商標)Protein Aカラム(JSR Life Sciences、Leuven、Belgium、JWT203CE)に負荷し、PBSで洗浄し;AEKTA純粋(GE Healthcare)上で、0.1Mグリシン(pH 2.5)を用いて溶出を行った。
画分を、1M Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)で直ちに中和し、そして、SDS-PAGEによってタンパク質純度および完全性(integrity)について分析した。
タンパク質含有画分を混合し、Amicon濾過ユニット(Millipore、Schaffhausen、Switzerland、UFC901008)を用いて緩衝液交換に供して、PBS中で1:100の希釈に到達させ、次いで低保持フィルター(0.20μm、Carl Roth、Karlsruhe、Germany、PA49.1)を用いて滅菌濾過した。
【0156】
抗体を、当技術分野で公知の方法によって、CHO細胞中で一過性に発現させ、組換え抗体を、当技術分野で公知のように、CHO細胞上清からの標準プロテインA精製によって精製し、そして、組換え抗体の純度および完全性(integrity)をSDS-PAGEによって分析した。
【0157】
【0158】
実施例2
SMAC技術(商標)を用いた、グリシン修飾毒素とmAbの融合によるADC形成
【0159】
ソルターゼA
黄色ブドウ球菌のソルターゼ Aに基づく組換えおよびアフィニティー精製ソルターゼ A酵素を、WO2014140317A1に記載の技術に従って、大腸菌中で産生した。
【0160】
グリシン修飾毒素の生成
SMAC技術(商標)
TM融合ADCを生成するために、ペンタグリシン-EDA-PNU誘導体(G5-EDA-PNU)を、コンコルチス(Concortis)によって製造した(
図1に示す)。
ペンタグリシン修飾毒素の同一性および純度を、それぞれ、質量分析およびHPLCによって確認した。
G5-EDA-PNUは、HPLCクロマトグラフィーで測定して、>95%の純度を示した。
【0161】
ソルターゼ媒介抗体融合体
上記毒素を、LPETG標識mAbs[10μM]を、グリシン修飾毒素[200μM]および3μMソルターゼAと共に、列挙した融合緩衝液中で、25℃で、3.5時間インキュベートすることによって、表2の抗体に融合させた。
反応を、rProtein A GraviTrapカラム(BioRad)に通すことによって停止させた。結合した融合体を、5カラム容量の溶出緩衝液(0.1Mグリシン、pH 2.5、50nM NaCl)で溶出し、1カラム容量の画分を、25% v/vの1M HEPES(pH 8)を含有するチューブに回収して、酸を中和した。
タンパク質含有画分をプールし、ZebaSpin脱塩カラムを用いて、表2の処方緩衝液中に製剤化した。
【0162】
ADC分析
薬物-抗体比率(DAR)を、0.05~0.1% TFA/H2Oと0.04~0.1% TFA/CH3CNとの間の25分間の線形勾配を用いて、1mL/分/80℃で実行されるポリマーラボPLRP 2.1mm×5cm、5μmカラム上で行われる逆相クロマトグラフィーによって評価した。
試料を、最初に、37℃で15分間、pH 8.0でDTTとインキュベートすることによって還元した(reduced)。
【0163】
逆相クロマトグラフィーにより測定したDARを、以下の表2に要約する。
【0164】
【表5】
これらの分析から、SMAC技術(商標)融合は、高能率で進行したと結論づけることができる。
【0165】
実施例3
ヒトROR1を安定に発現するEMT-6細胞の産生
マウスEMT-6乳癌細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)、100IU/mLのPen-Strep-Fungizoneおよび2mM L-グルタミン(すべてBioconcept、Allschwil、Switzerland)を含むL-グルタミンを含むDMEM完全(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)高グルコース(4.5g/L))中、37℃および5% CO2で培養した。
細胞を、次のように転位により、ROR1を過剰発現するように操作した:
細胞を遠心分離(6分、290×g、4℃)し、そして、RPMI-1640培地(5×106細胞/mL)に再懸濁した。
次に、400μLの細胞懸濁液を、13.3μgのいずれかの転移性ベクター(transposable vector) pPB-PGK-Puro-ROR1(完全長ROR1(NP_005003.2)とピューロマイシン耐性遺伝子の同時発現へ導く)、および6.6μgの転移酵素含有ベクターpCDNA3.1_hy_mPBを含有する400μLのRPMIに添加した。
DNA/EMT-6細胞混合物を、エレクトロポレーションキュベット(0.4cm-ギャップ、165-2088、BioRad、Cressier、スイス)に移し、そして、300Vおよび950μFでキャパシタンスエクステンダーを有するBiorad Gene Pulser IIを使用してエレクトロポレーションした。
次に、細胞を室温で5~10分間インキュベートした。
インキュベーション後、細胞を、エッペンドルフ5810R遠心分離機中で290×gで6分間遠心分離し、1回洗浄し、続いて、完全DMEMに再懸濁した後、5% CO2雰囲気の加湿インキュベーター中で37℃でインキュベートした。
エレクトロポレーションの1日後、ヒトROR1を安定に発現する細胞プールを、3μg/mLのピューロマイシン(Sigma-Aldrich、P8833)を添加することによって選択した。
【0166】
ROR1を発現する単細胞クローンは、抗生物質で選択されたEMT-6-ROR1細胞に由来した。
簡潔には、
トリプシン処理後、106細胞をFACSチューブ中で遠心分離し、
得られたペレットを、緩衝液(2%(v/v)FCSを含むPBS)中に再懸濁した。
次いで、細胞を抗ROR1抗体2A2と共に、30分間インキュベートし(4℃、最終濃度2μg/mL)、続いて、遠心分離および洗浄した。
次いで、細胞を前述のように再懸濁し、そして、暗所(30分、4℃)で、1:250に希釈した抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PE(eBioscience、Vienna、Austria、12-4998-82)とインキュベートし、緩衝液中で1回洗浄し、そして、FACSAriaII装置(BD Biocsiences、San Jose、USA)を用いた、FACSによる抗原発現細胞の単一細胞選別まで氷上に保持した。
【0167】
実施例4
EMT-6-ROR1同系乳房腫瘍モデルにおける抗ROR1 ADCのin vivo評価
1x106個のEMT-6-ROR1クローン14の腫瘍細胞を、100μlのPBSに溶解して、それぞれのBALB/cマウスの乳腺脂肪パッドに同所的に移植した。
【0168】
腫瘍の平均体積が、約30~80mm
3(ノギスによる)に達した、0日目(D0)に、マウスを腫瘍の大きさに応じて、8匹ずつのグループにブロックランダムに分けた。
次に、ADCが、部分的な抗腫瘍反応のみをもたらす準最適用量を決定するために、マウスを異なる用量(0.25mg/kg、0.5mg/kgおよび1mg/kg)で1回処置した(
図3)。
これに続いて、同じモデルを、表3にしたがって、アイソタイプをマッチさせた対照ADCを含む低用量ADCと、10mg/kgの抗CTLA4免疫チェックポイント阻害剤mAb 9D9との併用処理または非併用処理に設定した。
マウスを少なくとも40日間モニターし、過度の腫瘍量または苦痛の徴候の場合に安楽死させた。
免疫チェックポイント阻害剤9D9はマウスCTLA-4の阻害剤であり、PBS中に製剤化され、BioXcell、West Lebanon、New Hampshire、U.S.から購入した。
【0169】
【表6】
腫瘍体積は、腫瘍サイズの週2回のノギス測定に基づいて決定した。
群の腫瘍体積中央値の計算には、当該日に生存していた動物の値を考慮した。
さらに、腫瘍量が多いために安楽死させられた動物の腫瘍量は、グループの平均/中央値の腫瘍量が増加する限り、LOCF(Last-Observation-Carried-Forward)法を用いて繰り越された。
【0170】
図4は、個々のマウスに対する腫瘍体積の変化、ならびに腫瘍体積の変化の中央値を示す。
(A)ベヒクル対照、
(B)Ac10-G5-PNUアイソタイプ対照、
(C)XBR1-402-G5-PNU、
(D)Ac10-G5-PNUアイソタイプ対照+抗マウスCTLA-4抗体9D9、
(E)XBR1-402-G5-PNU+抗マウスCTLA-4抗体9D9、
で処置した個々のマウスについての腫瘍体積の変化。
【0171】
(F)ベヒクル対照、Ac10-G5-PNUアイソタイプ対照、およびXBR1-402-G5-PNUの群について、群腫瘍体積の変化中央値(Last-Observation-Carried-Forward(LOCF)法の適用による)。
【0172】
(G)ベヒクル対照、Ac10-G5-PNUアイソタイプ対照および抗マウスCTLA-4抗体9D9、ならびにXBR1-402-G5-PNUおよび抗マウスCTLA-4抗体9D9群についての群腫瘍体積変化の中央値(Last-Observation-Carried-Forward(LOCF)法の適用を伴う)。
【0173】
図中の結果によって示されるように、XBR1-402-G5-PNUおよび抗マウスCTLA-4抗体9D9の組合せは、0.25mg/kgでのADC単独での個々の処置と比較して、増強された抗腫瘍応答を提供する。
さらに、パネルDは、ベヒクル(パネルA)およびアイソタイプ対照(パネルB)と比較して、抗マウスCTLA-4抗体9D9がいくらかの抗腫瘍効力を示すことを示し、EMT-6-ROR1腫瘍モデルが、hot tumorモデルとして特徴付けられ得ることを支持する。
【0174】
さらに、第11群の生き残ったマウス(他の群にはない?そして、示すことが多分重要?)はすべて、1×106個のEMT-6-ROR1クローン14腫瘍細胞を事前に注射せずに乳腺脂肪パッドに移植して再チャレンジ(102日目)した際に、腫瘍の成長から保護された(図示せず)ことから、ADCとチェックポイント阻害剤の組み合わせでのみ、防御抗腫瘍免疫反応が生じたと考えられる。
【0175】
実施例5
ヒトROR1を安定発現するCT-26およびB16-F10細胞の作製
マウスCT-26結腸癌細胞およびB16-F10(「B16」)メラノーマ細胞(両方ともATCC由来)を、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)、100IU/mLのPen-Strep-Fungizoneおよび2mM L-グルタミン(すべてBioconcept、Allschwil、Switzerland)を含むRPMI培地中、37℃および5% CO2で培養した。
細胞を、以下のように、移植によりROR1を過剰表現するように操作した:
細胞をEppendorf 5810R遠心分離(6分、290×g、4℃)で遠心分離し、RPMI培地(5x106セル/ml)で再度懸濁した。
次に、400μLの細胞懸濁液を、13.3μgの転移性ベクター pPB-PGK-Puro-ROR1(完全長ROR1(NP_005003.2)とピューロマイシン耐性遺伝子の同時発現を導く)および6.6μgの転移酵素含有ベクターpcDNA3.1_hy_mPBを含有する400μLのRPMIに添加した。
DNA/CT-26またはB16細胞混合物を、エレクトロポレーションキュベット(0.4cm-gap、165-2088、BioRad、Cressier、Switzerland)に移し、300Vおよび950μFのキャパシタンスエクステンダーを有するBiorad Gene Pulser IIを用いてエレクトロポレーションした。
次に、細胞を、室温で、5~10分間インキュベートした。
インキュベーション後、細胞を290×gで6分間遠心分離し、1回洗浄し、その後、5% CO2雰囲気の加湿インキュベーター中で37℃でインキュベーションする前に、完全RPMI中に再懸濁した。
エレクトロポレーションの1日後、ヒトROR1を安定に発現する細胞プールを、3μg/mLのピューロマイシン(Sigma-Aldrich、P8833)を添加することによって選択した。
【0176】
ROR1を発現するCT-26の単細胞クローンは、抗生物質によって選択された細胞に由来した。
簡潔には、
トリプシン処理後、10
6細胞を、FACSチューブ中で遠心分離し、
得られたペレットを、緩衝液(2%(v/v)FCSを含むPBS)中に再懸濁した。
次いで、細胞を、抗ROR1抗体XBR1-402と共に30分間インキュベートし(4℃、最終濃度2μg/mL)、
続いて、遠心分離および洗浄した。
次いで、細胞を、以前のように再懸濁し、そして抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PE(eBioscience、Vienna、Austria,12-4998-82)と共に、暗所(30分、4℃)で、1:250希釈でインキュベートし、緩衝液中で1回洗浄し、そして、FACSAria II装置(BD Biocsiences、San Jose、USA)を使用するFACSによる抗原発現細胞の単一細胞ソーティングまで氷上に保持した。
図5(A)は、操作されたCT-26クローン3のFACS染色結果を示す。
以下の実験で使用したB16プールにおけるROR1の発現もまた、FACSによって決定した(
図5(B))。
【0177】
実施例6
抗ROR1 ADCおよび免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせで処理した、hROR1過剰発現CT26結腸癌マウスモデル
CT26は、マウスモデルにおいて、warm-to-hot腫瘍を確立し、これは、これらが十分に高い投与量では、免疫チェックポイント阻害剤に応答することを意味する(Mosely.Sら、2017)。
表4のように、実験群は、それぞれ8匹の6~8週齢の雌BALB/cマウスを含んでいた。
100μLのPBS中の1x106 CT-26-ROR1クローン3腫瘍細胞(実施例5から)を、各マウスの脇腹の片側に移植した。腫瘍体積中央値が、約30~100mm3(ノギスによる)に達した、0日目(D0)に、マウスを腫瘍の大きさに従って群に無作為化した。
次いで、表4に従ってマウスを処置し、1週間に3回、42日間、または腫瘍が1500 mm3に達するまで(ノギスにより)モニターした。
RPM1-14(BioXcell、West Lebanon、New Hampshire、U.S.)はマウスPD-1の阻害剤であり、PBS中に製剤化した。
この免疫チェックポイント阻害剤は、これまでOncotest(データは示していない)によって判定されていたように、単剤療法としてのその有効用量を下回って投与された。
【0178】
【表7】
図6は、各群の個々のマウスについての腫瘍体積変化を示す:
(A)第1群のベヒクルコントロール(未処理)、
(B)第2群のアイソタイプ対照群、
(C)第3群の抗ROR1 ADC huXBR1-402-17-G3-PNU、
(D)第4群のアイソタイプ対照+免疫チェックポイント阻害剤抗マウスPD-1抗体、
(E)第7群の抗ROR1 ADC huXBR1-402-17-G3-PNU+免疫チェックポイント阻害剤抗マウスPD-1抗体。
パネルCに示されるように、標的ADCは単剤療法としての完全応答に必要とされる用量よりも有意に低い用量で投与されたことが強調される。
結果は、評価された免疫チェックポイント阻害剤と標的PNU誘導体含有ADCとの間の強力な相乗作用を示唆する。
【0179】
実施例7
抗ROR1 ADCおよび免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせで処理した、hROR1過剰発現B16メラノーママウスモデル
B16は、マウスモデルにおいて免疫原性の低い(cold)腫瘍を確立し(Celik、Cら、1983)、これはこれらが、合理的な範囲内、すなわち、約50~100μg/マウス(Grosso、Jら、2013)までの用量で投与された場合、免疫チェックポイント阻害剤に応答しないことを意味する。
表7による実験群は、それぞれ、8~9週齢の雌BL6/6NRj 10匹を含んでいた。
100μLのハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt solution)(HBSS、Thermo Fischer)中の2x105 B16-ROR1腫瘍細胞(実施例5由来)を、0日目(D0)に各マウスに静脈内注射した。
マウスを単純なランダム割り当てにより群に無作為に割り付け、そして、表5に従って処置し、12~19日にわたり週5日モニタリングした。
【0180】
【表8】
モニターの最終日に、マウスを、CO
2により安楽死させ、続いて全肺を回収し、ブイン溶液(Bouin’s solution)(Labforce Bio-Optica)中で固定した。
実験的に誘導された各肺表面上の転移(Saxena M.ら、2013)(B16-ROR1コロニーを表す)を視覚的に計数し、そして、盲検条件下で3つのビン(直径<1mm、1~2mm、>2mm)のうちの1つへの割り当てについてそれぞれを評価した。
次いで、各肺上のコロニーの体積を、以下の式(各コロニーを球として近似する)に従って決定した:
【0181】
コロニー体積(mm3)=カウント(スポット径<1mm)×0.004mm3+カウント(スポット径1~2mm)×0.21mm3+カウント(直径>2mmスポット)×0.485mm3
【0182】
統計分析は、GraphPad Prismおよび平均の不対T検定を用いて行った。p値<0.05を統計学的に有意(*)、p値≧0.5を統計学的に有意でない(n.s.)とした。
【0183】
図7は、表5の異なる処置群のコロニー体積を示す。
これらの結果は、免疫チェックポイント阻害剤の有意な効果を伴わない低免疫原性(「cold」)腫瘍において、評価された免疫チェックポイント阻害剤と標的化PNU誘導体含有ADCとの間の強力な相乗作用を示唆する。
【0184】
実施例8
抗ROR1 ADCで処理した、hROR1過剰発現B16メラノーママウスモデル
表6による実験群は、8~9週齢の雌BL6/6NRjを含んでいた。
ハンクス平衡塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt solution)(HBSS、Thermo Fischer)100μL中の106 B16-ROR1腫瘍細胞(実施例5から)を、各マウスの脇腹の片側に移植した。
腫瘍体積中央値が、約250 mm3(ノギスによる)の平均に達した0日目(D0)に、マウスを、表6の腫瘍の大きさに従って群に無作為化した。次いで、表6に従ってマウスを処置し、投与の24時間後に安楽死させ、続いて腫瘍抽出を行った。
【0185】
【表9】
腫瘍を、最適切断温度化合物(oct、Fischer Scientific製)中で急速凍結した。低温切片を、一次市販抗マウスCD4および抗マウスCD8抗体(それぞれ、GK1.5 BioLegend 100402および53-6.7 BioLegend 100702)を用いて染色した。
検出は、抗ラット抗体(AlexaFluor488、Invitrogen A21208)を用いて行った。
【0186】
図8は、表6に従って、(A)未処理対照マウス、および(B)ADCで処理した3匹のマウス(4mg/kgで1回)からのhROR1(ヒトROR1)過剰発現B16腫瘍凍結切片のCD4およびCD8染色の代表的な画像を示す。
図8(A)に従うと、B16腫瘍は、cold tumorとしてのB16腫瘍の状態を保持して、自然に低レベルのCD4+およびCD8+細胞を含む。
図8(B)は、本発明によるADCによる治療が、腫瘍内のCD4+およびCD8+細胞の数を増加させることを示す。
【0187】
さらに、hROR1(ヒトROR1)過剰発現CT-26およびB-16腫瘍を、機械的および酵素的に消化し、生存細胞および免疫細胞マーカーについてFACS染色に供して、T細胞集団を確認した。
表7に報告されたFACS染色スキームを、633または635nm励起染色試薬(ThermoFischer)のためのLIVE/DEAD(商標)固定型近赤外線死細胞染色キットと組み合わせて使用した。
【0188】
【表10】
図9は、2つの腫瘍モデル(未処理)におけるCD4(パネルA)およびCD8(パネルB)陽性T細胞集団の活性化状態を示し、hROR1(ヒトROR1)過剰発現B-16腫瘍モデルの「cold」性を確認したものである。
【0189】
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【0190】
配列
下記の配列は、本出願の開示の一部を形成する。
WIPO ST 25適合性のある電子配列表もまた、この出願と共に提供される。
疑義を避けるため、以下の表中の配列と電子配列表中の配列との間に齟齬が存在する場合、この表中の配列が正しいものとみなされるものとする。
【表11】
【配列表】