(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】仮想無線基地局のための編成器及び相互接続ファブリックマップ作成器
(51)【国際特許分類】
H04W 88/08 20090101AFI20241220BHJP
H04W 16/22 20090101ALI20241220BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20241220BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20241220BHJP
H04W 36/22 20090101ALI20241220BHJP
【FI】
H04W88/08
H04W16/22
H04W24/02
H04W24/04
H04W36/22
(21)【出願番号】P 2021523186
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 US2019058782
(87)【国際公開番号】W WO2020092513
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519307458
【氏名又は名称】ジョン メツァリングア アソシエイツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】JOHN MEZZALINGUA ASSOCIATES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ ノタルジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー コーリントン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ターナー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー マスターズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシャル アグラワル
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ フォレスタ
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526235(JP,A)
【文献】国際公開第2016/005008(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0295564(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287696(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上のプロセッサが実行するとき、前記1つ又はそれ以上のプロセッサに対して仮想基地局を実施させる命令、及びプロセスを実施させる命令でコード化された持続性マシン可読メモリであり、前記プロセスは以下のステップを備える、すなわち、
無線通信アクセスネットワークとの接続性に関するユーザー機器の需要を決定するステップと、
前記接続性に関するユーザー機器の需要に基づいてコンポーネントモジュールの組合せを決定するステップであって、前記コンポーネントモジュールの組合せは、少なくとも1つのベースバンドモジュールと、少なくとも1つの機能的に別個の複数のインタフェース/ルーターコンポーネントとを含むものであり、その各々は、複数の外部コアネットワークコンポーネントのうちの対応するものと通信を実施するように構成される、該ステップと、
前記コンポーネントモジュールの組合せの需要に合致するように、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと前記少なくとも1つのインタフェース/ルーターコンポーネントとの間における複数の相互接続チャネルを決定するステップと、
前記コンポーネントモジュールの組合せ内に各コンポーネントモジュールをメモリにおいてインスタンス化するステップと、
POI/DASモジュール(相互接続点/分散アンテナシステムモジュール)又は前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを遠隔ユニットに接続するステップと、
前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを少なくとも1つの外部コアネットワークコンポーネントに、前記少なくとも1つの外部コアネットワークコンポーネントが対応する前記少なくとも1つのインタフェース/ルーターコンポーネントを介して接続するステップと、
前記少なくとも1つのベースバンドモジュールのセルグループの受信可能範囲内で、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを少なくとも1つのUE(ユーザー機器)に接続するステップと、
を備え、
各コンポーネントモジュールは、低遅延性スイッチファブリックとの接続を有する、
持続性マシン可読メモリ。
【請求項2】
請求項1記載の持続性マシン可読メモリにおいて、各コンポーネントモジュールは、イーサネットスイッチとの接続を有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項3】
請求項1記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記低遅延性スイッチファブリックは、インフィニバンドスイッチを有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項4】
請求
項3記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記インタフェース/ルーターコンポーネントは、前記低遅延性スイッチファブリックを介して前記少なくとも1つのベースバンドモジュールに結合され、また前記インタフェース/ルーターコンポーネントの各々は
、イーサネットスイッチを介して前記外部ネットワークコンポーネントのうちの前記対応するものに結合される、持続性マシン可読メモリ。
【請求項5】
請求項4記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記ベースバンドモジュールを少なくとも1つのUEに接続するステップは、
前記低遅延性スイッチファブリック上で前記POI/DASモジュール(相互接続点/分散アンテナシステムモジュール)と前記ベースバンドモジュールとの間の接続を確立するステップと、及び
前記POI/DASモジュールと前記遠隔ユニットとの間の接続を確立するステップと、を含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項6】
請求項5記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記POI/DASモジュールと前記遠隔ユニットとの間の前記接続はCPRI接続(共通公衆無線インタフェース接続)を有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記ベースバンドモジュールを少なくとも1つのUEに接続するステップは、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと前記遠隔ユニットとの間の接続を確立するステップを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項8】
請求項7記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと前記遠隔ユニットとの間の前記接続はCPRI接続(共通公衆無線インタフェース接続)を有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項9】
請求項8記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記CPRI接続は、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと前記遠隔ユニットとの間で結合されるCPRIスイッチを有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項10】
請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の持続性マシン可読メモリにおいて、複数のベースバンドモジュールをさらに有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項11】
請求項10記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記コンポーネントモジュールの組合せの各々をインスタンス化するステップは、複数のUEコンテキストデータに対し共有メモリを割り振るステップを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項12】
請求項10又は11記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記ベースバンドモジュールを少なくとも1つのUEに接続するステップは、前記少なくとも1つのUEに対応するUEコンテキストデータを共有メモリに書き込むステップを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記複数のベースバンドモジュールのうち少なくとも1つは、IoT(モノのインターネット)スケジューラコンポーネントを有する、持続性マシン可読メモリ。
【請求項14】
請求項2から請求項13のいずれか1項に記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールは、
PDCP(Packet Data Convergence Protocol)コンポーネントと、
RLC(Radio Link Control)コンポーネントと、
MAC(Media Access Control)コンポーネントを含むスケジューラコンポーネントと、及び
PHY(Physical layer)コンポーネントと
を有し、前記PDCPコンポーネント及び前記PHYコンポーネントの各々は、前記低遅延性スイッチファブリックに結合さ
れる、持続性マシン可読メモリ。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の持続性マシン可読メモリにおいて、
決定された前記コンポーネントモジュールの組合せは、機能的に別個の複数のインタフェース/ルーターコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、その各々は、複数の外部コアネットワークコンポーネントのうちの対応するものと通信を実施するように構成され、
決定された前記複数の相互接続チャネルは、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと少なくとも1つの前記インタフェース/ルーターコンポーネントとの間にあり、
前記少なくとも1つのベースバンドモジュールは、少なくとも1つの前記インタフェース/ルーターコンポーネントを介して、少なくとも1つの前記外部コアネットワークコンポーネントに接続され、前記複数のインタフェース/ルーターコンポーネントの各々は、少なくとも1つの前記外部コアネットワークコンポーネントが対応する複数の外部ネットワークコンポーネントのうちの対応するものと通信を実施するように構成される、
持続性マシン可読メモリ。
【請求項16】
請求項15記載の持続性マシン可読メモリにおいて、少なくとも1つの前記インタフェース/ルーターコンポーネントは、S1、X2、GTP(一般パケット無線サービストンネリングプロトコル)、又はM2M(マシン対マシン)のインタフェースを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項17】
請求項15又は16記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記無線通信アクセスネットワークとの接続性に関する前記需要を決定するステップは、
現在需要、未来需要、及び需要の不安定さを決定するステップを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項18】
請求項17記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記未来需要を決定するステップは、トレンドデータの外挿と、履歴データに基づく推定とのうちの少なくとも1つを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項19】
請求項17記載の持続性マシン可読メモリにおいて、前記需要の不安定さを決定するステップは、限定された期間にわたる需要の推定された偏差を計算することを含む、持続性マシン可読メモリ。
【請求項20】
無線通信アクセスネットワークとの接続性に関するユーザー機器の需要を決定するステップと、
前記接続性に関するユーザー機器の需要に基づいてコンポーネントモジュールの組合せを決定するステップであって、前記コンポーネントモジュールの組合せは、少なくとも1つのベースバンドモジュールと、少なくとも1つの機能的に別個の複数のインタフェース/ルーターコンポーネントとを含むものであり、その各々は、複数の外部コアネットワークコンポーネントのうちの対応するものと通信を実施するように構成される、該ステップと、
前記コンポーネントモジュールの組合せの需要に合致するように、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと前記少なくとも1つのインタフェース/ルーターコンポーネントとの間における複数の相互接続チャネルを決定するステップと、
前記コンポーネントモジュールの組合せ内に各コンポーネントモジュールをメモリにおいてインスタンス化するステップと、
POI/DASモジュール(相互接続点/分散アンテナシステムモジュール)又は前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを遠隔ユニットに接続するステップと、
前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを少なくとも1つの外部コアネットワークコンポーネントに、前記少なくとも1つの外部コアネットワークコンポーネントが対応する前記少なくとも1つのインタフェース/ルーターコンポーネントを介して接続するステップと、及び
前記少なくとも1つのベースバンドモジュールのセルグループの受信可能範囲内で、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを少なくとも1つのUE(ユーザー機器)に接続するステップと、
を含み、
各コンポーネントモジュールは、低遅延性スイッチファブリックとの接続を有する、
方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、前記ベースバンドモジュールを少なくとも1つのUEに接続するステップは、
前記コンポーネントモジュールの低遅延性スイッチファブリック上で、前記POI/DASモジュールと前記ベースバンドモジュールとの間の接続を確立するステップと、及び
前記POI/DASモジュールと前記遠隔ユニットとの間の接続を確立するステップと、を含む、方法。
【請求項22】
請求項20記載の方法において、前記ベースバンドモジュールを少なくとも1つのUEに接続するステップは、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと前記遠隔ユニットとの間の接続を確立するステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項20記載の方法において、前記コンポーネントモジュールの組合せの各々をインスタンス化するステップは、複数のUEコンテキストデータに対し共有メモリを割り振るステップを含む、方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、前記ベースバンドモジュールを少なくとも1つのUEに接続するステップは、前記少なくとも1つのUEに対応するUEコンテキストデータを前記共有メモリに書き込むステップを含む、方法。
【請求項25】
請求項20記載の方法において、
決定された前記コンポーネントモジュールの組合せは、機能的に別個の複数のインタフェース/ルーターコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、その各々は、複数の外部コアネットワークコンポーネントのうちの対応するものと通信を実施するように構成され、
決定された前記複数の相互接続チャネルは、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと少なくとも1つの前記インタフェース/ルーターコンポーネントとの間にあり、
前記少なくとも1つのベースバンドモジュールは、少なくとも1つの前記インタフェース/ルーターコンポーネントを介して、少なくとも1つの前記外部コアネットワークコンポーネントに接続され、前記複数のインタフェース/ルーターコンポーネントの各々は、少なくとも1つの前記外部コアネットワークコンポーネントが対応する複数の外部ネットワークコンポーネントのうちの対応するものと通信を実施するように構成される、
方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記無線通信アクセスネットワークとの接続性に関する前記需要を決定するステップは、
現在需要、未来需要、及び需要の不安定さを決定するステップを含む、方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、前記未来需要を決定するステップは、トレンドデータの外挿と、履歴データに基づく推定とのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項28】
請求項26記載の方法において、前記需要の不安定さを決定するステップは、限定された期間にわたる需要の推定された偏差を計算することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信に関し、またより具体的には、仮想無線基地局を可能にするシステム及びコンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
LTE又は5Gネットワークのような無線通信ネットワークは、概して、無線アクセスネットワーク、コアネットワーク、インターネットに対するインタフェースから作られている。ハンドセット及び他のユーザーデバイス(一般的にユーザー・イクイップメント(UEs)と称される)が、ユーザーの電話通話、eメール、テキスト、及びウェブ閲覧を成り立たせるメッセージ及びデータパケットを交換するのは無線アクセスネットワーク(RAN)を通してである。無線アクセスネットワークは多重基地局から成り、各基地局は無線遠隔(リモート)ユニットを介して1つ又はそれ以上のアンテナに結合される。各基地局は、無線信号の到達範囲内でUEsがインターネットに接続しかつ通信できる規定周波数及び符号化スキームでの無線信号を発生及び受信する。これら基地局は、各UEとコアネットワークとの間における複雑な信号伝達を提供し、これによりUEs各々との適切な接続が維持される。そうすることにおいて、動的に決定される周波数、変調スキーム、及びデータ通信リソースを各UEに最適に分配する多重入力多重出力(MIMO)レイヤを用いて、送信が生ずる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来型無線アクセスネットワーク、及びそれらの構成要素基地局は以下の欠点を被る。従来型基地局は、無線通信デバイスの予想されるピークの同時生起数及びそれらに対応する接続を許容するよう個々に構築されており、またひいては固定ピーク容量レベルに合わせるよう過剰設計されている。ピークの同時使用はしばしば任意な或る日にち又は週における短期間にのみ生起し、また使用パターンはしばしば1つのサービスエリアから他のサービスエリアにわたり広範囲に変動する。例えば、商業ビジネス区域におけるオフィスビル内でのピーク同時使用は午後2時に生起するとともに、住宅地域における集合住宅ビル内でのピーク同時使用は午後8時に生起し、またスタジアム内でのピーク同時使用は数週間に1回で数時間にわたってのみ生起する場合がある。スタジアムの場合、通常の低需要とピーク需要との間における対比は、アクティブ接続ユーザー数に500と100,000との間の相違があり得る。この結果は固定ピーク容量レベルで個々に過剰設計される基地局のネットワークに起因し、これにより各個別基地局にとって、並びに無線通信システム全体に集合的に必要なコストよりも相当高いコストとなる結果となる。
【0004】
したがって、必要とされるのは、所定サービスエリア内における接続性に対する現在需要に見合うよう、またそうするためにLTE及び5Gのような遠隔通信標準の厳密な遅延性要件に見あうよう、容量を拡縮することができる仮想化した基地局である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、1つ又はそれ以上のプロセッサが実行するとき、前記1つ又はそれ以上のプロセッサに対してプロセスを実施させる命令でコード化された持続性のマシン可読メモリに関連し、前記プロセスは以下のステップを備える、すなわち、無線通信アクセスネットワークとの接続性需要を決定するステップと、前記接続性需要に基づいてコンポーネントモジュールの組合せを決定するステップであって、前記コンポーネントモジュールは少なくとも1つのベースバンドモジュールを含むものである、該ステップと、前記コンポーネントモジュールの組合せ内で、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールと他のコンポーネントモジュールとの間における複数の相互接続チャネルを決定するステップと、前記コンポーネントモジュールの組合せ内に各コンポーネントモジュールをインスタンス化するステップと、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを少なくとも1つの外部ネットワークに接続するステップと、及び前記少なくとも1つのベースバンドモジュールを少なくとも1つのユーザー機器(UE)に接続するステップと、を備える。
【0006】
本発明の他の態様は、1つ又はそれ以上のプロセッサが実行するとき、前記1つ又はそれ以上のプロセッサに対して方法を実施させる命令でコード化された持続性マシン可読メモリに関連し、前記方法は以下のステップを備える、すなわち、無線通信アクセスネットワークとの接続性需要を決定するステップであり、前記無線通信アクセスネットワークは少なくとも1つのベースバンドモジュールを有するものである、該ステップと、前記少なくとも1つのベースバンドモジュールに対応する容量が前記需要に十分見合うか否かを決定するステップと、少なくとも1つの追加的ベースバンドモジュールをインスタンス化するステップと、前記少なくとも1つの追加的ベースバンドモジュールを少なくとも1つの外部ネットワークコンポーネントに接続するステップと、前記複数のベースバンドモジュールのうち少なくとも1つに対して、1つ又はそれ以上のUEsを前記少なくとも1つの追加的ベースバンドモジュールに引き継がせるよう命令するステップと、を備える。
【0007】
本発明の他の態様は、1つ又はそれ以上のプロセッサが実行するとき、前記1つ又はそれ以上のプロセッサに対して方法を実施させる命令でコード化された持続性マシン可読メモリに関連し、前記方法は以下のステップを備える、すなわち、無線通信アクセスネットワーク内における接続性需要を決定するステップであり、前記無線通信アクセスネットワークは複数のベースバンドモジュールを有するものである、該ステップと、前記複数のベースバンドモジュールのうち1つを、前記接続性需要に基づいて十分に活用されていない仮想ベースバンドモジュールとして指定するステップと、前記十分に活用されていないベースバンドモジュールに対して、複数の接続済みUEsを前記複数のベースバンドモジュール内における受入れベースバンドモジュールに引き継がせるよう命令するステップであって、前記受入れベースバンドモジュールは近隣セルグループに対応するものである、該ステップと、及び前記十分活用されていないベースバンドモジュールを停止するステップと、
を備える。
【0008】
本発明の他の態様は、仮想無線基地局に関連し、この仮想無線基地局は、複数のルーティング手段と、複数のベースバンド処理手段と、オーケストレイティング手段と、前記複数のルーティング手段と前記複数のベースバンド処理手段との間で結合される低遅延性スイッチングのためのスイッチング手段と、及び前記オーケストレイティング手段及び前記低遅延性スイッチングのためのスイッチング手段に結合されるファブリックマッピングのためのマッピング手段と、を備える。
【0009】
他の持続性マシン可読メモリは、1つ又はそれ以上のプロセッサが実行するとき、前記1つ又はそれ以上のプロセッサに対して、2つのセルグループ間におけるセル間干渉を軽減するプロセスであり、前記2つのセルグループ各々が対応するベースバンドモジュールを有し、各ベースバンドモジュールは低遅延性スイッチファブリックに結合される、該プロセスを実施させる命令でコード化された持続性マシン可読メモリであって、前記プロセスは以下のステップを備える、すなわち、前記2つのセルグループの共通受信可能サービスエリア内で少なくとも1つのUEとのセル間干渉を受けている2つのベースバンドモジュールを識別するステップと、前記セル間干渉に対応する周波数帯域を識別するステップと、前記低遅延性スイッチファブリックに結合されるコーディネータモジュールをインスタンス化するステップと、前記低遅延性スイッチファブリックを介して前記コーディネータモジュールを前記ベースバンドモジュールに結合するステップと、及び前記2つのベースバンドモジュール間におけるフレーム内調和を実施するステップと、を備える。
【0010】
本発明の他の態様は無線基地局に関連する。この無線基地局は、各々が対応するベースバンドモジュールを有する複数のセルグループであって、前記ベースバンドモジュール各々が低遅延性スイッチファブリックに結合される、該複数のセルグループと、及びプロセスを実行するようコード化された持続性マシン可読媒体命令を有するハードウェア計算環境とを備える。前記プロセスは、以下のステップ、すなわち、前記2つのセルグループの共通受信可能サービスエリア内で少なくとも1つのUEとのセル間干渉を受けている2つのベースバンドモジュールを識別するステップと、前記セル間干渉に対応する周波数帯域を識別するステップと、コーディネータモジュールをインスタンス化するステップと、前記低遅延性スイッチファブリックを介して前記コーディネータモジュールを前記ベースバンドモジュールに結合するステップと、及び前記2つのベースバンドモジュール間におけるフレーム内調和を実施するステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示による例示的仮想基地局システムを示す。
【
図2】本開示による例示的ベースバンド処理モジュールを示す。
【
図3】本開示による仮想基地局を新規に立ち上げかつ初期化する例示的プロセスを示す。
【
図4】本開示による、接続性に対する現在及び近未来の需要に見合うようコンポーネントモジュールを割り振る例示的プロセスを示す。
【
図5】本開示による、仮想化基地局に対する運用の例示的方法を示す。
【
図6】本開示による、セル間干渉軽減を実施する例示的方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1つ又はそれ以上の無線基地局(例えば1つ又はそれ以上のeNodeBs)を、個別かつ動的に創成され、認識され、また停止させられることができる仮想化したコンポーネントに区分けできる仮想基地局ホスティング環境及びアーキテクチャを開示する。
【0013】
仮想的遂行により、需要変動に応じて基地局コンポーネントを動的に創成し、認識し、また停止させることができる。さらに、市販の容易に入手可能なサーバーハードウェアを活用することによって相当なコスト削減を達成することができる。しかし、仮想基地局の展開には技術的な難題が存在する。例えば、LTE及び5Gのような遠隔通信標準に準拠する厳密な遅延性要件を考えると、仮想化したコンポーネント間におけるタスク間通信は、従来型コンピュータハードウェアに対して途方もない要求を課すことになり、これはとくに、これら仮想化したコンポーネントが需要変動に応じて動的に創成され、認識され、また停止させられる場合に言える。
【0014】
LTEの場合、本開示によれば、仮想基地局又はeNodeBsは、そのS1、X2、GTP、及びM2Mのインタフェース機能が個別ソフトウェアオブジェクト(以下「インタフェース/ルーター」コンポーネントと称する)内にカプセル化されるよう区分けすることができ、これら個別ソフトウェアオブジェクトは数個の仮想ベースバンドプロセッサで共有することができる。そうするにあたり、例えば、標準ソフトウェアベースのS1インタフェースは、多重ソフトウェアベースのベースバンドプロセッサと1つ又はそれ以上のMMEsとの間でルーターとして作用することができる。さらに、仮想ベースバンドプロセッサは、そのプロトコルスタックレイヤ間に区分けすることができ、この区分けは、ボトルネックのプロトコルスタック機能が、速度をより高めるため多重コンポーネント又はプロセススレッドに並列化されるように行う。このことは、容易に調和させることができる多くのセルを有する、1つ又はそれ以上のベースバンドプロセッサを創成することができる。このことは、S1インタフェース上でMMEsとの通信を簡素化することができ、これはすなわち、より高い容量を有するより少数のベースバンドプロセッサが存在するからである。異なる仮想ベースバンドプロセッサの下に2つの干渉セルが存在する場合、これら2つの干渉セルは単独稼働ベースバンドプロセッサに移行することができ、この移行は、すべての構成要素UEsが単一スケジューラによってスケジュール設定されるよう、又は2つの干渉セルをホスティングするため新たなベースバンドプロセッサを創成できるよう行う。
【0015】
これら特徴を可能にするには、高速スイッチング構成(ファブリック)によって相互接続される複数の多重プロセッサ回路基板を有するサーバーハードウェア計算環境を必要とする。例としては、各々がPCIeアダプタを装備する多重サーバー回路基板があり、これらPCIeアダプタは、インフィニバンド(登録商標)スイッチ(例えば、36ポート100Gbps)によりサーバー間で接続されて100Gbps又は200Gbpsで動作する。このインフィニバンドのコンポーネントは、十分な帯域幅を有する超低遅延性(PCIeカード上における600ナノ秒以下、スイッチ上におけるポート間で90ナノ秒以下)が高性能クラスタリングを可能にする。異なる仮想ベースバンドプロセッサ及びインタフェース/ルーターコンポーネントは、RDMA(遠隔直接メモリアクセス:Remote Direct Memory Access)により、単一回路基板内における共有メモリ上で直接、又はインフィニバンドのような回路基板間の相互接続チャネル上のいずれかで通信することができる。さらに、低遅延性スイッチ構成(ファブリック)の使用は、パケット処理ワークロード加速化を可能にするDPDK(データ平面展開キット:Data Plane Development Kit)のようなデータ平面改善技術を組み込むことによって高められる。このハードウェア計算環境に対する改変例は可能であり、またこれらが本開示の範囲内であることは理解されるであろう。
【0016】
集中型S1/X2/GTP/M2Mインタフェースモジュールとともに、このハードウェアプラットフォーム及びホスト多重区分けベースバンドプロセッサを適正に使用するためには、2つのソフトウェア実体、すなわち、以下に記載する編成器(オーケストレータ:orchestrator)及びモジュール間チャネルマップ作成器(以下「ファブリックマッパー」と称する)を必要とする。
【0017】
図1は本開示による例示的仮想基地局システム100を示す。システム100は複数のコンポーネントモジュール105を備える。各コンポーネントモジュール105は、イーサネットスイッチ110にイーサネット接続177を介して結合し、また高帯域幅低遅延性スイッチファブリック120に結合する。適当な高帯域幅低遅延性スイッチファブリック120の例としては上述したようなインフィニバンドスイッチがあるが、遅延性要件に合致できる場合には、Omni-Path(登録商標)又はイーサネットのような他のスイッチング技術を使用することができる。図示の例示的システム100において、コンポーネントモジュール105としては、3つのベースバンドプロセッサユニット(BBU)モジュール155及び4つのインタフェース/ルーターコンポーネントモジュール、すなわち、M2Mux135、S1Mux140、GTPMux145、及びX2Mux150がある。各BBUモジュール155は、低遅延性スイッチファブリック120内に確立された専用相互接続チャネルを介して4つのインタフェース/ルーターコンポーネントモジュールの各々に結合することができる。
【0018】
イーサネットスイッチ110に結合されるのは標準外部ネットワークコンポーネント115である。LTEベースの例示的実施形態において、外部コンポーネント115は、MME(Mobility Management Entity)180、MCE(Multicell/Multicast Coordination Entity)182、SGW(Serving Gateway)185、MBMS GW(Multimedia Broadcast Multicast Service Gateway)、及び1つ又はそれ以上の外部eNodeBs190である。これら外部ネットワークコンポーネント各々は、それぞれに対応するインタフェースプロトコル(例えば、MME180とS1Mux140との間はSCTP、SGW185とGTPMux145との間及びMBMS GW187とGTPMux145との間はGTP、MCE182とM2Mux135との間はM2、並びに1つ又はそれ以上の外部eNodeBs190とX2Mux150との間はX2)に従って、イーサネットスイッチ110を介してそれぞれに対応するインタフェース/ルーターコンポーネントモジュールに結合される。
【0019】
3つの図示したBBUs155の各々は、低遅延性スイッチファブリック120を介して対応するPOI/DAS(Point of Interface/Distributed Antenna System)コンポーネントモジュール160に結合することができる。さらに、各POI/DASコンポーネントモジュール160は、CPRI(Common Public Radio Interface)接続162を介して無線遠隔ユニット170に結合することができ、また遠隔ユニット170はRF分配接続を介して1つ又はそれ以上のアンテナ(図示せず)に結合することができる。各CPRI接続162は、1つ又はそれ以上のサーバー回路基板ホスティングシステム100にインストールすることができる専用PCIe CPRIカードで遂行することができる。システム100は個別の専用CPRI接続162で図示したが、これら接続は、POI/DASコンポーネントモジュール160と遠隔ユニット170との間のCPRIトラフィックをルーティング(経路指定)することができるCPRIスイッチ(図示せず)で遂行できることは理解されるであろう。他の変更例においてCPRI接続162は、インフィニバンドスイッチのような低遅延性スイッチファブリック120を使用して遂行することができ、これにより遠隔ユニット170は低遅延性スイッチファブリック120に直接結合することができる。さらに他の変更例において、1つ又はそれ以上のBBUモジュール155は、CPRI接続162を介して1つ又はそれ以上の遠隔ユニット170に直接結合することができ、これによりPOI/DASモジュール160は介在しない。さらに、遅延性要件を考慮すると、CPRI接続162のうち1つ又はそれ以上は、イーサネット接続で代わりに遂行することができる。このような変更例も可能であり、また本開示の範囲内であることは理解されるであろう。
【0020】
他の変更例において、1つ又はそれ以上のBBU155は、標準LTEプロトコルスタックで遂行する代わりに、例えば、帯域幅制限NB-IoT UEsに特別なサービスを提供するための特殊用途プロトコルスタックとすることができる。幾つかの事例において、この特殊用途BBUモジュール155は、それ自身のスペクトルが割り当てられ、他のBBUモジュール155とは独立して動作することができる。この場合、特殊用途BBUモジュール155は、専用遠隔ユニット170に結合することができる。変更例において、NB-IoT BBUモジュール155は、別個の標準LTE BBUモジュール155の周波数帯域における保護周波数帯内で動作することができる。この場合、特殊用途BBUモジュール155は、標準LTE BBUモジュール155と共有する遠隔ユニット170に結合することができ、この場合、それらの対応RF信号は遠隔ユニット170内で合流する。他の事例において、所定帯域内での調和が必要であり、この場合、特殊用途BBUモジュール155及び標準LTE BBUモジュール155は、所定LTEフレーム内で1組のリソースブロックのセットを共有することができ、調和は、調和器(コーディネータ)モジュール157によって取り扱われる。このことは、以下にさらに説明する。
【0021】
各無線遠隔ユニット170及びそれに対応するアンテナ(図示せず)は、所定のセルグループ175をカバーすることができる。本明細書で使用されるセルグループ175は、スケーリングシステム100内の粒度のベースラインユニットと見なすことができる。セルグループ175は、最小において、所定時間に存在するすべてのMIMOレイヤを含む所定アンテナ/リモート組合せによって取り扱われるすべての帯域をカバーする単一アンテナ範囲として定義することができる。多重帯域の場合、そのセルグループ内の任意なUEは、利用可能な帯域の任意な組合せで送信及び受信することができ、また対応するBBUモジュール155は、独立してキャリヤ集合法を用いて所定セルグループ175内のすべてのUEsをスケジュール設定する。最大で、セルグループ175は、多重アンテナゲインパターン、各ゲインパターン内の多重帯域、或る時点で利用可能なすべてのMIMOレイヤを有することができる。この事例において、対応するBBUモジュール155は、多重POI/DASモジュール160及び多重対応遠隔ユニット170と通信し、独立して範囲内のすべてのUEsをスケジュール設定することができる。これら各範囲において、単一のBBUモジュール155は、単一セルグループ175を取り扱い、またセルグループのサイズ及び複雑性は変動することができる。
【0022】
遠隔ユニット170に対する変更は可能であり、これら変更は本開示の範囲内である。例えば、遠隔ユニット170は、DASのための従来型遠隔無線ヘッド、アクティブアンテナシステム、又はCell Hubユニット(JMAワイヤレス社によって提供される)先進遠隔ユニットとすることができる。例示的システム100は3つのPOI/DAS(Point of Interface/Distributed Antenna System)160を有するものとして図示したが、変更例も可能であることは容易に理解されるであろう。例えば、それらのうち任意なものをマクロセル、スモールセル等々とし、またその任意な組合せも可能であり、これらも本開示の範囲内である。さらに、3つのBBU155及びPOI/DAS165を図示したが、より多く又は少ない数も可能であり、かつこれらも本開示の範囲内である。
【0023】
システム100は、さらに、編成器(オーケストレータ:orchestrator)モジュール130、ファブリックマッパーモジュール125、及び1つ又はそれ以上のコーディネータモジュール157を有し、これらをそれぞれ以下に説明する。
【0024】
4つのインタフェース/ルーターモジュールの各々は、個別のeNodeBによって普通に実施される機能性を含む。本開示によれば、これらインタフェース機能は、BBU機能性から区分けされているものとし、また1つより多いBBU155にサービスを提供ことができる個別コンポーネント内にカプセル化しておくことができる(システム100の例示的実施形態によれば、3つであるが、より多くの又は少ないBBUs155も可能であり、これらは本開示の範囲内である)。したがって、システム100は3つのeNodeBsを有するものと見なすことができ、これにより或るeNodeBはBBU155を有し、またそれに対応するインタフェース機能性はインタフェース/ルーターコンポーネントモジュールによって実施される。
【0025】
すべてのコンポーネントモジュール105は、マシン可読の命令を有することができ、これら命令は、1つ又はそれ以上のメモリデバイス内にコード化され、またイーサネット接続110及び低遅延性スイッチファブリック120に結合される1つ又はそれ以上のプロセッサ上で実行される。本明細書で使用されるように、用語「持続性メモリ(non-transitory memory)」は、任意な有形記憶媒体(電磁的又は光学的な信号とは対照的に)に言及することができ、また媒体自体に言及し、またデータ記憶(例えば、RAM対ROM)に制限するものではない。例えば、持続性媒体は、命令でコード化された埋込みメモリに言及することができ、これによりメモリは、電源を切ってすぐに入れ直した後、適切なマシン可読命令でリロードしなければならない。各コンポーネントモジュール105は、上述したハードウェア計算環境に従って1つ又はそれ以上の多重プロセッササーバー回路基板上でホスティングすることができる。ハードウェア計算環境上にどのようにコンポーネントモジュール105を展開するかの変更は可能である。例えば、1つの変更例において、同一サーバー回路基板上のコンポーネントモジュール105は共有メモリを介して通信することができ、また異なるサーバー回路基板上のコンポーネントモジュールは、低遅延性スイッチファブリック120を介して相互接続チャネル上で通信することができる。他の変更例において、一連の基地局コンポーネントモジュール105全体は、サーバー回路基板を共有し、かつ異なるサーバー回路基板上の基地局コンポーネントモジュール間で低遅延性スイッチファブリック120内における相互接続チャネル上でRDMAを使用する基地局コンポーネントモジュール間にRDMAを用いて、物理的マシン上の仮想マシン又はコンテナ内に展開することができる。他の変更例においてコンポーネントモジュール105は、物理的マシン上の仮想マシン又はコンテナに展開することができ、すべてのコンポーネントモジュール105は、コンポーネントモジュール105の任意な対における下側レイヤの物理的インスタンス化が物理的ノード(サーバー回路基板)を共有するか否かに無関係に、仮想アドレス指定により低遅延性スイッチファブリックを介して通信する。例示的ソフトウェアコンテナとしては、ドッカー(Docker)コンテナ若しくはrktポッド、又はアプリケーションのコンテナ詰めが可能である任意な同様のソフトウェアパッケージがあり得る。さらに、コンテナ、VMs、及び地金上で動作するプロセッサの混成体も可能である。しかし、コンテナ詰めの利点は、極めて急速にスピンアップすることができ、また最小のOSコンポーネントをカプセル化するという事実に起因してサイズの観点から極めて軽量である点にある。しかし、1つ又はそれ以上のVMsの利点は、永続的なメモリ使用及び状態ドリブンの動作を可能にする点である。このような例示的変更例も可能であり、これらは本開示の範囲内である。
【0026】
イーサネット接続110はオーケストレータ(編成器)130に結合される。オーケストレータ130は、持続性メモリのようなメモリ内にコード化されたマシン可読命令を有するソフトウェアモジュールとすることができ、これにより、1つ又はそれ以上のプロセッサによって実行されるとき、特定の順番でではなく、以下の機能を実施する。第1に、オーケストレータ130は、立ち上げ並びにシステム100の動作中における現在及び近未来のシステム100に対するトラフィック需要を決定する。第2に、オーケストレータ130は、各BBUモジュール155のパフォーマンスを測定する及び/又は各BBUモジュール155からの測定報告を受け取ることによってシステム100のパフォーマンスをモニタリングし、またモニタリングしたパフォーマンス並びに需要変化に応答してシステム100の容量を調整する。オーケストレータ130は、新たなBBUs155を創成する、不必要なBBUs155を停止する、及びセルグループを合体又は分割することを含む特定機能を実施することによってシステム100の容量を調整することができ、これにより或るBBUモジュール155における容量を調整することができる。第3に、オーケストレータ130は、セル175の対応するBBUs155への割り振りを調和させることによって、システム100のパフォーマンスを改善することができる。2つのセルグループ範囲内に多重UEが存在する場合、また2つのオーバーラップするアンテナ範囲内における多重UEsのスケジュール設定を調和させなければならない2つのBBUモジュール155を有する場合の複雑さを最小化するため、このオーケストレータ130は、2つの既存セルグループ175を単一セルグループ175に合体させることができ、これにより単一BBUモジュール130内における単一スケジューラがより大きいサービスエリアにおけるスケジュール設定を取り扱うことができる。代案として、オーケストレータ130は、1つ又はそれ以上のコーディネータモジュール157をインスタンス化することができ、このコーディネータモジュール157は、或るサービング周波数(以下にさらに説明する)で2つの干渉しあうBBUs155間でスケジュール設定を調和させる支援をすることができる。代案として、オーケストレータ130は、新たなBBU155を創成し、また双方の同時干渉セル175をそれに移行させる命令を実行することができる。オーケストレータ130は、コマンド発生及び状態情報受信等をするためイーサネット接続110を介して各コンポーネントに結合することができる。
【0027】
オーケストレータ130の他の機能は、ファブリックマッパー125をセットアップさせる、変更させる、低遅延性スイッチファブリック120内における相互接続チャネルを停止させ、これによりコンポーネントモジュール105は、最小の遅延及び十分な帯域幅で互いに通信できるようにするコマンドを発生することである。
【0028】
オーケストレータ130は、クーべネティス(Kubernetes)又は付加的な機能性をハイパーバイザ/コンテナのランタイムに供給する他のソフトウェアスイートのような、コンテナ・オーケストレーション・エンジン(COE)を用いて遂行することができる。オーケストレータ130は、若干の機能(例えば、コンポーネントモジュール105の検診、オンデマンド展開、等々)をCOEに委託することができる。
【0029】
上述したように、4つのインタフェース/ルーターコンポーネント、すなわち、M2Mux135、S1Mux140、GTPMux145、及びX2Mux150の各々は、各BBUモジュール155とそれに対応する外部ネットワークコンポーネント115との間における標準通信を実施する。S1Mux140は、BBUs155の各々とMME180との間におけるインタフェース及びルーターとして役務する。S1Mux140は、2つのポート、すなわち、SCTPを使用してイーサネットスイッチ110に接続するポートと、及び低遅延性スイッチファブリック120に接続するポートとを有することができる。S1Mux140から低遅延性スイッチファブリック120への接続は、インフィニバンドパケットの形態でパッケージされるS1-APメッセージの形態とすることができる。MME180からのDL(ダウンリンク)通信のために、S1Mux140は、MME180からのSCTPフォーマットされたメッセージを傍受する命令を実行し、メッセージからeNodeB識別子を回収し、メッセージからのSCTP関連情報を剥ぎ取ってS1-APメッセージに変換し、また意図したちBBU155のeNodeB識別子に対応するインフィニバンドスイッチ110内における相互接続チャネルにルーティングする。そうすることにおいて、S1Mux140は、例えば、RDMAメモリの書込みを標的コンポーネントモジュールに割り振られたメモリに実施する命令を、低遅延性スイッチファブリック120内における専用相互接続チャネルを介して実行することができる。或るBBU155からMME180へのUL(アップリンク)通信の場合、S1Mux140は、低遅延性スイッチファブリック120内におけるBBUの専用相互接続チャネルを介してBBU155からメッセージを受信し、S1-APメッセージをSCTPフォーマットに変換し、またそのメッセージをMME180にイーサネット接続110を介して送信する。他のインタフェース/ルーターコンポーネントの構造及び機能はほぼ同様であり、他ならぬ特定インタフェースプロトコル翻訳における主な違いは、イーサネットベースのプロトコルと、低遅延性スイッチファブリック120経由で中継するフォーマットとの間でメッセージを翻訳することにある。
【0030】
GTPMux145は、主にSGW185と各BBUモジュール155との間におけるルーターとして役務する。GTPMux145は、以下のポート、すなわちイーサネットスイッチ110を介してSGW185と通信するイーサネットポート、及び低遅延性スイッチファブリック120上で各BBUモジュール155と通信するための1つ又はそれ以上の第2ポートを有することができる。上述したように、GTPMux145のポートは双方向である。S1Mux140と同様に、GTPMux145は、SGW185が、介在インタフェース/ルーターコンポーネントモジュールと直接に通信していており、普通のeNodeBとの通信のように各BBUモジュール155とは直接通信していないことに気付かないよう構成することができる。M2Mux135は、GTPMux145と同様のやり方でルーターとして役務するが、MBMS GW184から各BBUモジュール155へのMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Services)トラフィックを取り扱う。
【0031】
図2は、BBUモジュール155の例示的実施形態を示す。本明細書で使用される用語ベースバンドプロセッサ又はBBUは、ソフトウェア実装垂直LTE又は5Gプロトコルスタックに言及することができ、そのインタフェース機能性はインタフェース/ルーターモジュールのうち1つによって区分けされ、また取り扱われる。各BBUモジュール155は、システム100のハードウェア計算環境内における1つ又はそれ以上の持続性メモリコンポーネントでコード化されるマシン可読命令を有するソフトウェアモジュールとすることができ、これによりシステム100のハードウェア計算環境内における1つ又はそれ以上のプロセッサによって実行されるとき、各BBU155はプロトコルスタック及びスケジュール設定機能を実施する。
図2に示すように、例示的BBU155は、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)コンポーネント210、RLC(Radio Link Control)コンポーネント220、MAC(Media Access Control)コンポーネント230、及びPHY(Physical layer)コンポーネント250を有することができる。各BBUモジュール155は、上述したように、対応するインタフェース/ルーターコンポーネントを介して外部ネットワークコンポーネント115と通信する。各BBUモジュール155は、さらに、BBUモジュール155とそれに対応するPOI/DAS165との間におけるI/Q(同相/直角位相)信号データを双方向に送信するため、CPRI接続160に結合される。これは、各BBUモジュール115がCPRI接続を介してPOI/DASモジュール160に直接結合することができる変更例である。
【0032】
図2に示すように、各BBUモジュール155に対して、そのPDCPモジュール210は、GTPMux145によりアップリンク/ダウンリンクのデータトラフィックを中継するため、低遅延性スイッチファブリック120に結合することができる。PDCPモジュール210及びRLCモジュール220は、それぞれが共有メモリにより、又は低遅延性スイッチファブリック120を介する相互接続チャネルにより遂行できるアップリンク/ダウンリンク接続215によりリンク付けすることができる。同様の遂行は、RLCレイヤ220とMACレイヤ230との間におけるアップリンク/ダウンリンク接続225に対しても使用することができる。アップリンク/ダウンリンク接続215及び225は、ベアラ(bearer)ベースとすることができ、これは、UEがBBUモジュール155に接続された後にデータがこれら接続上で送信され、またアップリンク/ダウンリンク接続215及び225上でのトラフィックの程度がアクティブベアラの数の関数であることを意味する。
【0033】
スケジュールモジュール230及びMACモジュール240(スケジューラ230のサブコンポーネントとすることができる)は、スケジューラ機能の大部分を実施し、またBBUモジュール155の平面信号伝達を制御することができる。MACモジュール240は、1つ又はそれ以上のコーディネータ(調和器)157を介して他のBBUモジュール155とのスケジュール設定を調和させ、オーケストレータ130及びファブリックマッパー125からの構成情報を受信し、また測定報告及び状態情報をオーケストレータ130に供給する付加的な機能性を組み込むことができる。これら機能を受け入れるため、MACモジュール240はイーサネットスイッチ110へのイーサネット接続232を有することができ、これにより、これら他のコンポーネントモジュールと通信することができる。MACモジュール240は、さらに、S1-AP信号伝達メッセージをS1Mux140に/から通信するため、低遅延性スイッチファブリック120に結合することもできる。
【0034】
PHYモジュール250はLTE又は5Gの遂行で期待されるPHYレイヤ機能性を実施する。PHYモジュール250は、個別コンポーネント又はスレッドとして、1つがキャリヤ毎のスレッド、1つが各キャリヤに関する各MIMOレイヤのためのスレッド、並びに1つがアップリンクのためのスレッド及び1つがダウンリンクのためのスレッドで動作することができる。各PHYモジュール250は、PHYリンク235を介してMACモジュール240と通信することができる。PHYリンク235は、各PHYモジュールスレッド250のための専用通信リンクを有することができる。これらリンクは、共有メモリを越える、又は低遅延性スイッチファブリック120上の専用相互接続チャネルを越えることができる。各PHYモジュールスレッド250は、さらに、低遅延性スイッチファブリック120上で指定POI/DASモジュール160にいたる専用相互接続チャネルを有することができる。代案として、各PHYモジュールスレッド250は、高速リンク(例えば、PCIe)上でCPRIカードに結合することができ、このCPRIカードはCPRI接続162上で遠隔ユニット170に結合される。
【0035】
図1に戻って説明すると、ファブリックマッパーモジュール125は、持続性メモリのようなメモリ内にコード化されたマシン可読命令を有するソフトウェアモジュールとすることができ、これにより1つ又はそれ以上のプロセッサが実行するとき、以下の機能を実施する。これは、基地局コンポーネントモジュール105間における各相互接続チャネルのために低遅延性スイッチファブリック120(例として)内における相互接続チャネルを確立する。例えば、ファブリックマッパー125は、各BBU155と各インタフェース/ルーターコンポーネントとの間で複数の相互接続チャネル(例えば、各LTEベアラにつき1つ)を確立し、これにより各相互接続チャネルは2つのコンポーネント間におけるRDMAアクセスを提供することができ、したがって、データは各BBUに対して十分な帯域幅及び十分な低遅延性で交換し、所定の遠隔通信標準(例えば、LTE)要件内で基地局の機能性を発揮できるようになる。相互接続における性質(何を何に接続しているか)に基づいて、遅延性及び帯域幅要件は異なる場合があり得る。このことに適応するために、ファブリックマッパー125は、各相互接続チャネルの組合せ(例えば、BBU/S1Mux、BBU/GTPMux、X2Muxを介してのBBU1/BBU2、等々)の遅延性及び帯域幅要件に対応する構成データテーブルを有し、また相互接続チャネルを適切に(例えば、RDMAに割り振られたメモリの範囲内、等々で)割り振ることができる。各BBUがさらにプロトコルサブコンポーネントに区分けされる場合、ファブリックマッパー125はそれらの間(例えば、或るBBU155のMACモジュール240とそれに対応するPHYモジュール250との間)に相互接続チャネルをセットアップすることができる。
【0036】
オーケストレータ130が各基地局コンポーネントモジュールに対してリソースをどのように設定したかに基づいて、ファブリックマッパー125は、コンポーネントモジュール間に相互接続チャネルを創成するよう低遅延性スイッチファブリック120を経由する経路を決定する。ファブリックマッパー125が相互接続チャネルを決定した後、関連の相互接続チャネル情報(例えば、メモリアドレス、ポートガス番号、等々)を他のモジュールコンポーネント各々に通信する。
【0037】
2つのコンポーネントモジュール105間に期待される帯域幅要件に基づいて、ファブリックマッパー125は、低遅延性スイッチファブリック120内における専用相互接続チャネルに対して、2つのコンポーネントモジュール間で共有すべきメモリアレイを確立することができる。
【0038】
ファブリックマッパー125はオーケストレータ130と連動し、これにより或るBBUモジュール155がダウンする場合、オーケストレータ130は交換BBUモジュール155をインスタンス化する命令を実行し、また関連アドレス情報をファブリックマッパー125に提供することができ、これによりファブリックマッパー125は、低遅延性スイッチファブリック120内で1組の新たな相互接続チャネルのセットをマッピングする命令を実行し、また新たな相互接続チャネルのセットに関する情報を新たな交換BBU155に提供することができる。そうするのにあたり、ファブリックマッパー125は、その機能の一部としてインフィニバンド・サブネット・マネジャーとして(又はインフィニバンド・サブネット・マネジャーと併用して)作用することができる。
【0039】
ファブリックマッパー125は、さらに、システム100の堅牢性を高めるための冗長性をもたらすこともできる。例えば、オーケストレータ130は、トラフィックの大幅な増加が差し迫っている(例えば、スタジアムの売店エリアをカバーする1組のセル175のセットに対してフットボールスタジアムにおけるハーフタイム)ことを決定することができる。この状況を仮定すると、オーケストレータ130は、ファブリックマッパー125に追加リソースの必要性を知らせる命令を実行することができる。これに応答して、ファブリックマッパー125は、追加のBBUモジュール155に対する相互接続チャネルを前もってマッピングし、また必要に応じて、迅速展開のために相互接続チャネルのプール内にそれらを維持する命令を実行することができる。
【0040】
低遅延性スイッチファブリック120は、単一サーバー回路基板内相互接続プロセッサ並びに相互接続プロセッサが多重サーバー回路基板にわたって広がる1つ又はそれ以上のハードウェアコンポーネントを有することができる。低遅延性スイッチファブリック120がインフィニバンドスイッチである実施例において、インフィニバンド仕様によれば、実際のハードウェア接続としては、光ファイバ、回路基板配線、ツイストペア有線接続、等々があり得る。特別なインフィニバンド機能を遂行する関連ソフトウェアは低遅延性スイッチファブリック120のハードウェアコンポーネント上に記憶させ、また動作させることができる。
【0041】
本開示はインフィニバンドコンポーネントを使用しての相互接続チャネル及びハードウェア計算環境について記載するが、LTE及び/又は5G仕様に適合するよう基地局のコンポーネントモジュール間におけるタスク間通信に対する十分高い帯域幅及び十分な低遅延性を可能にする限り、他の相互接続ファブリック技術も可能であり、また本開示の範囲内であることは理解されるであろう。
【0042】
起動(セットアップ)及び構成(コンフィグレーション)
【0043】
図3は、本開示による仮想基地局100を起動させまた構成する例示的プロセスを示す。
【0044】
ステップ305で、オーケストレータ130は、仮想基地局100が展開されている無線ネットワークに対する現在需要、近未来需要、及び需要の不安定さを決定する命令を実行する。そうするにあたり、オーケストレータ130は、環境設定ファイル又は他の情報ソースから情報を検索することができる。例示的実施形態において、オーケストレータ130は、参照により全体が本明細書に組み入れられるものである
”SYSTEM AND METHOD FOR ADAPTIVELY TRACKING AND ALLOCATING CAPACITY IN A BROADLY-DISPERSED WIRELESS NETWORK”と題した米国特許出願第15/918,799号に記載のようなACCS(Adaptive Connection Control System)を介して、現在需要、近未来需要、及び需要の不安定さを取得することができる。しかし、取得した情報は、以下のものを含む場合があり得る。すなわち、(a) システム100が展開されている近傍における、能動的に接続された(例えば、LTE RRC接続状態にある)デバイスの数、及びアイドル状態(例えば、RRCアイドル状態)にあるデバイスの数、これらデバイスのデバイスカテゴリー(例えば、Cat 0-8、Cat M等々)、接続されるUEsに関するベアラの期待されるQCIs(Quality of Service Class Indicators)を含むことができる接続性に対する現在需要の推定、(b) 直近トレンドデータの外挿、又は履歴データに基づく推定を含むことができる接続性に対する推定近未来需要に関与するトレンド情報、及び(c) 時間の限定コースにわたる需要の推定される偏差を含むことができる接続性に対する需要の不安定さ、があり得る。高い不安定さの例としては、地下鉄ステーション近傍の都会の密集地があり、この場合、各地下鉄トレインが乗客を排出するような、ラッシュアワー時に歩行者は或るセルグループ175の受信地域への定期的な出入りを急増する。不安定さの他の例としてはスタジアムのような会場があり、この場合、開催されているイベントに休憩時間があると、多数の観客が1つのエリアから他のエリアに突然移動する場合があり得る。これら例の各々において、接続性に対する任意な定常需要に加えて、異なるデバイスカテゴリーのデバイスにより需要に急激な増減期間が存在することがあり得る。オーケストレータ130は、展開しようとしているシステム100を適切に構成するため、このデータを取得し、また使用することができる。
【0045】
現在及び近未来需要を決定するにあたり、オーケストレータ130は、(それ自体上で又は上述したACCSを介して)システム100に対応する場所での接続性に対する需要に関する履歴情報を取得又は検索する命令を実行することができる。このことは、1日における時間、週の曜日、月、所定イベント発生日(例えば、スポーツイベント、休日、コンサート、悪天候予報、等々)があり得る。オーケストレータ130は、この情報を考慮して、現在及び近未来の需要を決定する先読みアルゴリズムを遂行することができる。ステップ305に対する改変も可能であり、これら改変が本開示の範囲内であることは理解されるであろう。
【0046】
ステップ310において、オーケストレータ130は、ステップ305で決定された需要及び不安定さを適切に満たすようコンポーネントモジュール105の適切な割り振りを決定する命令を実行する。
【0047】
図4は、オーケストレータ130がステップ310を実施することができる例示的プロセスを示す。
【0048】
ステップ405において、オーケストレータ130は、ステップ305で決定した需要を、デバイスカテゴリー及び期待される容量によって期待されるUEsの数に分解する命令を実行する。
【0049】
ステップ410において、オーケストレータ130は、システム100のサービスエリア内における物理的場所及びエリアによる需要集中を決定する命令を実行する。そうするにあたり、オーケストレータ130は、需要データ(ステップ305で取得された)から、接続された状態及びアイドル状態の双方におけるUEsに対応するセル識別子を検索し、またセル識別子に対応する物理的場所情報に関連付けることができる。この結果は、システム100によってカバーされるエリア及び期待される場所、並びに予想される需要に対応するUEsの集中、潜在的にこれら集中及び分布に対応する予想される時間のマップ状表現である。
【0050】
ステップ415において、オーケストレータ130は、物理的場所及びエリアによる予想される需要集中に適応するようセルグループ175を割り当てる命令を実行する。このことは、遠隔ユニット170及びそれらの対応するアンテナの特別な構成に依存し得る。例えば、若干の遠隔ユニット170及びアンテナは、より多い又は少ないキャリヤ集約機会を可能にする異なる帯域を支援することができる。さらに、オーケストレータ130は、システム100及び各セルグループの物理的RF環境に対応する履歴データにアクセスすることができる。例えば、或るセルグループ175は、他のセルグループ175の場所よりもより多くのMIMO機会をより受け入れ易いと実証されている物理的場所にあることがあり得る。例えば、遠隔ユニット170のアンテナパターンは、多くの反射表面を有するビル間にあり多くのMIMO機会をもたらす位置にあることがあり得る。これらMIMO機会は、帯域の関数であり得る。例えば、或る遠隔ユニット170のアンテナパターンに対する或るRF環境は多くの反射表面を有するが、沢山の木々及び他の群葉が存在する場合があり、この場合、より低い周波数帯域で反射の多い環境(したがって、より多くのMIMO機会)をもたらすが、ミリメートル波帯域では減衰がより多くなるおそれがある。
【0051】
この事例において、予想される需要及び既知のRF環境に基づいて、オーケストレータ130は、他の近隣又はオーバーラップする遠隔ユニット170にわたる遠隔ユニット170上で、この遠隔ユニットがより多くの帯域を支援する又はより有利なアンテナゲインパターンを有する場合、このような1つの遠隔ユニット170を選択することができる。ステップ415の結果は、アクティブにすべき選択した遠隔ユニット170、並びにそれぞれがPOI/DASモジュール160及びBBUモジュール155に対応する期待される計算リソースのセットである。例えば、多くの帯域(より多いキャリヤ集約機会)を支援し、また多くのMIMOレイヤ(既知のRF環境に基づく)を支援することが期待される遠隔ユニット170に対して、オーケストレータ130は、各BBUモジュール155:PHYモジュール250スレッドの数、スケジューラ230の複雑さ等々のための、個別の計算リソース要件を予め決定することができる。
【0052】
図3に戻って説明すると、ステップ315において、オーケストレータ130は、UEコンテキストデータ191、或るUEに対するすべての必要構成及びデバイス固有情報をカバーする共通データセットを記憶するため、各BBUモジュール155に対して共有メモリを割り振る命令を実行する。オーケストレータ130により創成されたUEコンテキストデータ191のアレイは、対応するBBUモジュール155に対する都合のよいアクセスにより共有メモリに存在すべきである。UEコンテキストデータ191のテンプレートは、すべてのUEsに共通することができ、このことは、ビットレート及び帯域容量を可能にする最大値のようなUE情報を含むことができる。したがって、接続性に対する予想される需要がステップ305でオーケストレータ130によって決定されることを考慮すると、UEコンテキストデータ191のサイズは、単一UEコンテキストデータテンプレートのサイズの整数倍となり得る。各UEコンテキストデータテンプレートは、BBUモジュール155に接続されるUEsが追加され、各追加されたUEコンテキストデータテンプレートは、BBUモジュールのサブコンポーネント、すなわち、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)コンポーネント210、RLC(Radio Link Control)コンポーネント220、MAC(Media Access Control)コンポーネント230、及びPHY(Physical layer)コンポーネント250がアクセスする必要がある。これらサブコンポーネント各々は、追加されたUEコンテキストデータテンプレート内の特定情報にアクセスすることのみ必要となり得る。したがって、オーケストレータ130は各BBUモジュール155をインスタンス化しまた構成することができ、その構成要素であるサブコンポーネントは、必要であるUEコンテキストデータテンプレート内におけるそれらのメモリ領域にのみアクセスするよう構成される。このことに加えて、オーケストレータ130は、他のBBUモジュール155及び/又は1つ若しくはそれ以上の随意的なコーディネータモジュール157に対して、或るBBUモジュールUEコンテキストデータ191へのアクセスを行うことができる。他のBBUモジュールへのアクセスは調和多重ポイント(COMP:Coordinated Multi-Point)及びセル間干渉調和(ICIC:Intercell Interference Coordination)のような調和を可能にする。
【0053】
ステップ320において、ファブリックマッパー125は、コンポーネントモジュール105の集合セットの需要に合致するよう低遅延性スイッチファブリック120内における相互接続チャネルの適切なセットを決定し、次に相互接続チャネルをセットアップ(起動)させる命令を実行する。各BBUモジュール155は、各インタフェース/ルーターモジュールによる複数の相互接続チャネル(例えば、幾つかの事例において各ベアラに対して1つ)を必要とし、すなわち、MME180に対する通信のためのS1Mux140、MCE182に対する通信のためのM2Mux135、MBMS GW187及びSGW185に対する通信のためのGTPMux145、及び1つ又はそれ以上の外部eNodeBs190に対する通信のためのX2Mux150による相互接続チャネルを必要とする。X2インタフェースの場合、各BBU155に対してどのくらい多くのX2接続が確立されるかは既知であり得る。各BBUモジュール155がそれに対応する相手側BBUモジュール155各々に対するX2接続を有すると仮定することができ、このことは、X2Mux150のためにX2相互接続チャネルのベースライン個数をもたらす。しかし、1つ又はそれ以上の外部eNodeBs190に対してどのくらい多くの相互接続チャネルが必要であるかは不明でありそうである。したがって、ファブリックマッパー125は、運用上トラフィック需要が変化するにつれて、或るBBUモジュール155と外部eNodeB190との間で相互接続チャネルを動的に創成しまた停止させることができる。さらに、各BBU155がどのようにそれぞれに対応するCPRI接続160に結合されるかに基づいて、各BBUは、低遅延性スイッチファブリック120を介してCPRI回路基板に対する相互接続チャネルを有することができる。
【0054】
さらにステップ320につき説明すると、ファブリックマッパー125は、専用メモリのアレイを各相互接続チャネルに割り振ることができ、2つのコンポーネントモジュール間における各通信方向に対して各1個割り振ることができる。これらは、或るプロセッサ回路基板内に共有メモリとして、又はインフィニバンドリンク上のRDMA通信に使用されるべきデータ構造として実装できる静的共有データ構造であり得る。固定アレイの静的性質を考慮すると、ファブリックマッパー125は、過剰になり得ないが、ニーズが増大するにつれオーケストレータが追加のコンポーネントモジュール105をインスタンス化するとき必要となる追加の相互接続チャネルに対する追加アレイを動的に割り振る柔軟性を排除するほど大きくない適切なサイズを有するようそれらのサイズを割り振ることができる。
【0055】
インフィニバンドを使用する実施例において、ファブリックマッパー125は、複数のQPs(待ち行列ペア:queue pairs)を画定することによって相互接続チャネルのセットを創成することができ、各QPは、相互接続チャネル(例えば、BBU1/S1Mux、BBU2/S1Mux、BBU1/GTPMux、等々)のエンドポイントの対を画定し、また対応する送信及び受信待ち行列に対するサービスタイプ(例えば、接続指向対データグラム、高信頼性対低信頼性、等々)、サービスレベル、リンクビットレート(例えば、x1、x4、及びx12、(すなわち、Infection Rate Control))、及びファブリック区分けの割り振りを決定する。このことは、ファブリックマッパー12がQPを創成し及び割り当てている或るベアラに対応するデバイスカテゴリー及びQCIに依存し得る。さらに、各BBU155がどのように対応するCPRI接続160に結合されているかの性質に基づいて、ファブリックマッパー125は、各BBUに対する複数のQPs及び集積CPRI回路基板におけるいずれかの専用ポートを画定することができる。このことは、システム100の構成とともに維持される。
【0056】
ファブリックマッパー125は、低遅延性スイッチファブリック120(この実施例ではインフィニバンドスイッチ)により適切なインフィニバンドで定義される動詞を呼び出す命令を実行することによって適切なQPsを確立する。より具体的には、ファブリックマッパー125は、各インフィニバンド・ホスト・チャネル・アダプタにより適切な動詞を呼び出し、またインフィニバンド消費者であるコンポーネントモジュール105であって、各消費者が複数のQPsを有する、該コンポーネントモジュール105各々をセットアップする。
【0057】
ファブリックマッパー125が適切な相互接続チャネルセットを決定した後、次に低遅延性スイッチファブリック120によりそれら相互接続チャネルを創成し、また相互接続チャネルを対応する対のコンポーネントモジュール105に割り振る命令を実行する。
【0058】
ステップ325において、オーケストレータ130は、推定した需要に見合うようシステム100が必要とするコンポーネントモジュール105をインスタンス化する命令を実行する。そのようにするにあたり、オーケストレータ130は、
図4につき上述したステップ310からの結果としての構成データに基づいて、適切なインタフェース/ルーターコンポーネント(M2Mux、S1Mux、GTPMux、及びX2Mux)並びに1つ又はそれ以上のBBUモジュール155をインスタンス化することができる。
【0059】
BBUモジュール155を割り振りまたインスタンス化する際に考慮すべき因子は、各BBUモジュール155のインスタンス化の複雑さと、システム100のハードウェア計算環境における多重スレッディング機会との間におけるバランスに関与する。例えば、単一の大きなセルグループ175又は2つ又はそれ以上のそれより小さいセルグループ175を有するシステム100内における所定エリアをカバーする機会が存在し得る。前者の場合、より大きくより複雑なBBUモジュール155に必要とされる計算リソースは、システム100のハードウェア計算環境のオペレーティングシステムが他のコンポーネントモジュール105における他の競合スレッドとともにそれ自体のスレッドの処理を十分調和させることができないほど大きい場合があり得る。換言すれば、多重プロセッサ回路基板(マルチコアプロセッサを有する)の計算効率は、オーバーレイする大量な単一BBUモジュール155のスレッドの存在により減殺されるおそれがある。この場合、より小さく、より多い、またより高い管理可能性がある(OSマルチタスクの視点から見て)BBUモジュール155を設けてより効率的な計算を生ずることができる。
【0060】
さらにステップ325につき説明すると、インスタンス化したBBU155各々は専用CPRI接続162を有することができ、これにより各インスタンス化は、システム100のハードウェア計算環境の一部であるハードウェアCPRI回路基板への1つ又はそれ以上のポートアドレスに結合されるよう構成される。代案として、各BBU155は、低遅延性スイッチファブリック120により集積CPRI回路基板に対する1つ又はそれ以上の専用相互接続チャネルを有するようインスタンス化することができる。
【0061】
システム100に対する変更において、オーケストレータ130は、BBUプロトコルスタックにおける各レイヤに対する個別コンポーネントモジュールの形態として各BBU155をインスタンス化することができる。したがって、BBU155をインスタンス化する代わりに、オーケストレータは、1つのPDCPモジュール210,1つのRLCモジュール220、1つのスケジューラ230及びMACモジュール240、並びに1つのPHYモジュール250を多重スレッドとともに、又は1つより多いPHYモジュール250とともに、インスタンス化することができる。この変更例において、ファブリックマッパー125は、BBUとして集積させた状態で通信するとき、それらの間における通信のための相互接続チャネルを決定し、創成し、及び割り当てることができる。この場合、BBU155は、標準で、プロトコルスタックの各レイヤ間でインフィニバンド相互接続チャネルを有するBBUである。
【0062】
さらにステップ325につき説明すると、オーケストレータ130は、異なるコンポーネントモジュール105をインスタンス化することができ、この場合、或るコンポーネントモジュール105における計算電力需要、及び2つまたはそれ以上のコンポーネントモジュール105間における通信のための遅延性及び帯域幅に対する厳格さに基づいて、それらがハードウェアノード(同一サーバー回路基板上の)を共有する、又は異なるサーバー回路基板上であるようにインスタンス化することができる。例えば、オーケストレータ130は、POI/DASモジュール160と遠隔ユニット170との間における遅延性を最小化するようPCIeのCPRIカードを配置する同一サーバー回路基板上でPOI/DASモジュール160をインスタンス化する命令を実行することができる。
【0063】
さらにステップ325につき説明すると、各インスタンス化したコンポーネントモジュール105は、それ自体をファブリックマッパー125で登録することができ、これによりファブリックマッパー125は、各コンポーネントモジュール105に対して相互接続チャネルのための指定アドレス及び構成情報を供給することができる。各コンポーネントモジュール105は、それぞれに対応するイーサネット接続177及びイーサネットスイッチ110上でファブリックマッパーと通信することができる。このことで、各コンポーネントモジュール105は、イーサネットスイッチ110を介して他のコンポーネントモジュール105との接続を確立することができる。例えば、各BBUモジュール155は、それ自体をインタフェース/ルーターコンポーネントモジュールで、すなわち、S1Mux140、GTPMux145、X2Mux150、及びM2Mux135で登録する命令を実行することができる。各インタフェース/ルーターコンポーネントモジュールは、次に、そのBBUモジュール155に対応する相互接続チャネルのための各BBUモジュール155に対応する関連のセルIDs及び他の構成情報を適切なポートアドレス及び構成情報(ファブリックマッパー125によって得られる)に関連付けて記憶するよう、それ自体をそれぞれ構成することができる。
【0064】
ステップ325の終了時に、すべてのコンポーネントモジュール105はUEコンテキストデータ191のために確保されるメモリ空間とともにインスタンス化され、また低遅延性スイッチファブリック120にわたる必要とされるすべての相互接続チャネルが確立される。
【0065】
ステップ330において、各POI/DASモジュール160は、指定された遠隔ユニット170との通信を確立する命令を実行する。各POI/DASモジュール160が介在するCPRIドライバを介して対応する遠隔ユニット170と結合される例示的実施形態において、各POI/DASモジュール160は、遠隔ユニット170との双方向通信をするためのデータポートを起動して作動させる命令を実行することができる。このことは、各POI/DAS-遠隔ユニットのペア間における個別スタンドアロンCPRI接続により行うことができる。代案として、システム100は、各POI/DASモジュール160と各遠隔ユニット170との間でルーターとして役務することができるCPRIスイッチ(図示せず)を有することができる。他の例示的実施形態によれば、各POI/DASモジュール160とその指定された遠隔ユニット170との間における通信は、低遅延性スイッチファブリック120(例えば、インフィニバンドスイッチ)上で行うことができ、各POI/DASモジュール160及び対応する遠隔ユニット170は、低遅延性スイッチファブリック120から遠隔ユニット170への光ファイバ接続を設けるよりも、専用相互接続チャネルをわたってI/Q(同相/直角位相)データを双方向に送信することができる。このことは、CPRI標準又はパケットベースのイーサネットプロトコルを用いて行うことができる。1つ又はそれ以上のBBUモジュール155を1つ又はそれ以上の遠隔ユニット170に直接的に結合する変更例においては、ステップ330で、これらBBUモジュール155各々が上述したように、それに指定された遠隔ユニット170との接続を確立することができる。
【0066】
ステップ335において、各BBUモジュール155は、それに対応する外部ネットワークコンポーネント115及びそれより大きいコアネットワークとの通信を立ち上げる。例えば、各BBUモジュール155は、低遅延性スイッチファブリック120内で立ち上がった相互接続チャネルを介するS1Mux140によるMME180との制御平面通信を確立するよう、1つ又はそれ以上のMMEs180とのS1接続を確立するLTE仕様の機能を実施することができる。S1Mux140をどのように構成するかに基づいて、各BBUモジュール155がそれとMME180との間における媒介として透過的に作用するS1Mux140の存在に気付かないことがあり得る。S1制御平面通信が各BBUモジュール155とMME180との間に確立された後、MME180及び或るBBUモジュール155は、ともに連携して、各BBUモジュール155を外部ネットワークコンポーネント115にGTPMux145及びM2Mux135を介して接続するプロセスを継続することができる。
【0067】
さらにステップ335につき説明すると、X2Muxモジュール150は、各BBUモジュール155間におけるX2接続を確立する命令を実行することができる。このことは、UEsが各BBUモジュール155に接続して潜在的ハンドオーバのためシステム100における1つ又はそれ以上の他のBBUモジュール155を認識するときのシステム100の動作中に動的に生ずることができる。代案として、起動時にX2インタフェースは確立されることができ、これにより各BBUモジュール155は他のBBUモジュール155を気付けるようになり、またコアネットワークにおけるオペレーション・サポート・システム(OSS)(図示せず)に接続して、このOSSから構成データを受信するとき、他のBBUモジュール155のIPアドレスを取得できるようになる。このような変更も可能であり、これらは本開示の範囲内であることは理解されるであろう。
【0068】
さらにステップ335につき説明すると、各BBUモジュール155は、1つ又はそれ以上の外部eNodeBs190とX2接続を確立する命令を実行することができる。このことは起動時に自動的に実施することができ、これによりオーケストレータ130は自動近隣関係(他のBBUモジュール155につき上述した)を確立する命令を実行するよう各BBU155にコマンドを発生する。代案として、このことは、システム100の動作中に後で生起することができ、これにより、各BBUモジュール155は、接続済みUEによって外部eNodeB190とのX2インタフェースの確立を促進することができ、この場合、接続済みUEは、外部eNodeB190からの強い信号を表示する。これは、3GPP TS 36.300に従って行うことができる。
【0069】
ステップ340において、各BBUモジュール155は、対応するセルグループ175の受信可能範囲内でUEsとの接続を確立する。S1Mux140を介して各BBU155とMME180との間にS1インタフェースが確立した状態で、各BBUモジュール155は、MIB(マスター情報ブロック)及びSIB(システム情報ブロック)の情報を生成する命令を実行し、この情報はブロードキャスト信号となるようフォーマットされている。次に、各BBU155は、低遅延性スイッチファブリック120を介して対応するPOI/DASモジュール160に対応するI/Qデータを送信し、このPOI/DASモジュール160は該I/Qデータを適切な遠隔ユニット170に送信し、この遠隔ユニット170は、そのセルグループ175の範囲内におけるUEsにMIB及びSIB情報をブロードキャストする。
【0070】
さらにステップ340につき説明すると、各範囲内UEは、或るBBUモジュール155によってブロードキャストされたMIB及びSIB情報を受信し、またRRC接続リクエストでBBUモジュール155に応答し、次いでこのBBUモジュール155はRRC接続セットアップメッセージで応答する等々を行い、この結果として、明確な複数UEsが各BBUモジュール155との接続状態になる。各UEが外部ネットワークコンポーネント115を介してサービスに接続しかつ確立するとき、UE間の対応するすべての通信(そのBBUモジュール155を介する)は、適切なインタフェース/ルーターコンポーネント経由で生起する。
【0071】
例えば、或るBBUモジュール155とSGW185との間の通信はGTPMux145経由で生起する。低遅延性スイッチファブリック120はインフィニバンドスイッチである実施例において、或るベアラのためのデータは信頼性が高いRDMA QP経由で中継することができ、これによりBBUモジュール155及びGTPMux145は、インフィニバンド・チャネル・アダプタ経由でそれぞれに対応するメモリセクタからデータをファブリックマッパー125によって割り振られた他方に対して書込み(読出し)をすることができる。これと従来型LTE通信との間における大きな相違は、多重BBUモジュール155のためのルーターのように作用する単一GTPインタフェース(GTPMux145)が存在することである。
【0072】
各UE自体は或るBBUモジュール155に接続するとき、BBUモジュール155内におけるスケジューラモジュール230は、UEから入手されたUEコンテキストデータ191を検索することができ、また検索したデータをUEコンテキストデータテンプレートに追加することができる。この結果、UEコンテキストデータ共有メモリオブジェクトは、接続済みUEにつき各1個となる追加済みUEコンテキストデータテンプレートのアレイとなり、これにより、各BBUモジュールサブコンポーネント、すなわち、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)コンポーネント210、RLC(Radio Link Control)コンポーネント220、MAC(Media Access Control)コンポーネント230、及びPHY(Physical layer)コンポーネント250は、UEコンテキストデータテンプレート内のそれぞれに対応する必要データにアクセスする。アクセスは、低遅延性スイッチファブリック120内の専用相互接続チャネル経由で行われるが、このタイプのデータアクセスに対する遅延性要件がそれほど厳密でなければ、このことは必ずしも必要ではない。
【0073】
動作
図5は、システム100が動作する例示的プロセス500を示し、この場合、システムは仮想基地局の機能を実施するとともに、動的に接続性需要変化を予測及び応答する。
【0074】
ステップ505において、オーケストレータ130は、システム100の接続性に関する現在及び近未来需要を決定する命令を実行する。ステップ505は、例示的プロセス300のステップ305にほぼ類似するものであり得る。したがって、システム100がステップ505の任意な所与反復で既に稼働していると仮定すると、オーケストレータ130は、スタートしてからの(起動プロセス300の実行からの)システム100の接続性需要並びに対応する容量及び性能に関する履歴データを蓄積していることがあり得る。オーケストレータ130は、さらに、定期的に各BBUモジュール155の性能をモニタリングすることができる。この履歴及び性能データを考慮して、オーケストレータ130は、近未来需要及び不安定さを決定する先読みアルゴリズムを遂行することができ、またそれをシステム100の現在容量と比較することができる。
【0075】
ステップ510において、オーケストレータ130は、以下のように、システム100(及び各BBUモジュール155)の性能をモニタリングする命令を実行することができる。各BBUモジュール155は、システム100内における各セルに対応するPMs(Performance Measurements)を供給する。このPMsは、低レベルのカウンタ情報、例えば、UE接続の試行及び成功の回数、試行した及び成功した初期コンテキストセットアップのリクエスト及びレスポンスの回数を含む。各BBUモジュール155は、オーケストレータ130にこれらPMsを供給する命令を実行することができる。
【0076】
オーケストレータ130は、報告されたPMデータを使用して、過負荷状態になりつつある任意なBBUモジュール155、並びにPMに一貫したパターンを示していて、過剰な容量を有しており、また停止することができる任意なBBUモジュール155を識別することができる。後者であり、また過剰容量のインスタンスがある場合、プロセス500は分岐515に進み、ここでオーケストレータは、十分活用されていないBBUモジュール155、またおそらく集合的にセルグループ175をなしている対応のPOI/DASモジュール160及び遠隔ユニット170を停止させることを決定することができる。
【0077】
ステップ520において、オーケストレータ130は、どのベースバンドモジュール155及び対応するセルグループ175が十分活用されていないかを決定することによって、どのセルグループ175を停止させるべきかを決定する命令を実行する。このことは、その時点で十分活用されていないセルグループ175によってサービスを受けているUEsが他のセルグループ175の範囲内に十分接近しているかを決定して、受信可能範囲ロスがないハンドオフを可能にするステップを含むことができる。このことが当てはまる場合、プロセス500はステップ525に進む。
【0078】
ステップ525において、終了すべきセルグループ175のBBUモジュール115は、残りのセルグループ175へのLTE内引継ぎを行う命令を実行する。X2引継ぎプロセスを使用してそのことを行うことができる。この事例において、発信元BBUモジュール155は、適切なメッセージを宛先BBUモジュール155にX2Mux150を介して送信する。この引継ぎが発信元(停止すべき)BBUモジュール155と宛先(残りの)BBUモジュール155との間で連携されて行われた後、宛先BBUモジュール155は、それとMME180との間におけるS1Mux140を介しての、及びそれとSGW185との間におけるGTPMux145を介しての適切な信号送信の交換によって引継ぎを完了する命令を実行する。
【0079】
ステップ530において、オーケストレータ130は、停止すべき十分活用されていないセルグループ175から引き継がれたUEsを受け取った残りのセルグループ175の電力をブーストする命令を実行することができる。このことは、残りのセルグループ175に接続されるUEsが広く物理的に分散し得るスタジアムのような会場で必要となり得る。代案として、停止すべきセルグループ175の遠隔ユニット170は残りのセルグループ175に同期して引き継がれることができ、残りのBBUモジュール155は、元の遠隔ユニット170及び停止すべきセルグループ175における遠隔ユニット170の双方の制御をすることができる。このことは結果として、2つまたはそれ以上の遠隔ユニット170によって給電される単一BBUモジュール155でスケジュール設定されるより大きなセルグループ175となる。
【0080】
図7は、システム100の減少した容量構成700を示す。関連するコンポーネントモジュールのみを
図7に示すが、図示しないインタフェース/ルーターコンポーネントモジュール及び外部コンポーネントがあることは理解されるであろう。減少した容量構成700において、数個のセルグループ175をより大きいセルグループ705として合体させ、このより大きいセルグループ705は単一BBUモジュール155及びPOI/DASモジュール160によって駆動される。それ自体は専用BBUモジュール155及びPOI/DASモジュール160を有する高需要セルグループ175が図示される。このように図示されないが、より大きなセルグループ705は、より広い受信可能範囲エリアを補償するよう増加した電力を有することとなった単一(又は少数の)遠隔ユニット170によって駆動することができる。このような変更例も可能であり、また本開示の範囲内であることは理解されるであろう。この事例において、使用されない遠隔ユニット170は停止することができる。さらに、電力節減は、システム100のコンポーネントモジュール105の数及び複雑さを減らすことによって達成できることは明らかであろう。
【0081】
図5に戻って説明すると、オーケストレータ130は、ステップ510でシステム100が現在及び近未来需要に対して十分な容量を有することを決定し、次にプロセス500を分岐540に進め、ここでオーケストレータ130は容量をシステム100に追加する命令を実行する。
【0082】
ステップ545において、オーケストレータ130は、接続性需要増大が起きている場所を決定する命令を実行する。そうするにあたり、オーケストレータ130は、報告された性能測定から過剰な需要を報告しているBBUモジュール155を識別することによって、過負荷セルグループ175を識別する。この情報により、オーケストレータ130は、そのとき停止させることができるその受信可能範囲サービスエリア内の未使用遠隔ユニット170を捜索することによって潜在的な追加セルグループ175を識別する。オーケストレータ130は、利用可能な遠隔ユニット170、それらの対応するアンテナ(図示せず)、及びこれらアンテナの受信可能範囲サービスエリアをリストアップしているデータベース又は構成ファイルにクエリーを行う命令を実行することによってそうすることができる。さらに、このことは、システム100が減少した容量構成700で動作している場合にも当てはまり、この場合、需要増大が起きているエリアにおける受信可能サービスエリア内の2つまたはそれ以上の遠隔ユニット170が
図7に示すように冗長的に動作していることがあり得る。この事例において、これら遠隔ユニット170のうち1つ又はそれ以上は、増大する需要が起きているエリア内に1つ又はそれ以上の新たなセルグループ175を形成するよう利用可能であり得る。
【0083】
ステップ550において、オーケストレータ130は、1つ又はそれ以上の新たなセルグループ175を形成するよう、1つ又はそれ以上のBBUモジュール155及び対応するPOI/DASモジュール160をインスタンス化する命令を実行する。このことを行うプロセスは、上述したステップ320~335とほぼ類似し得る。ステップ550の結果、システム100は、1つ又はそれ以上のBBUモジュール155及びPOI/DASモジュール160、追加UEsの期待される個数のためのUEコンテキストデータ191用の共有メモリアレイ、及び新たなBBUモジュール155、POI/DASモジュール160、及びインタフェース/ルーターモジュール間の相互接続チャネル、並びにX2Mux150を介する他のBBUモジュール155に対するX2接続を有する。
【0084】
ステップ555において、オーケストレータ130は、需要増大が起きているBBUモジュール155に対して、1つ又はそれ以上の新たなBBUモジュール155及びそれに対応するセルグループ175にX2引継ぎを実施する所定の数のUEsを持たせる命令を実行することができ、これにより適格なセルグループ175間で負荷を分散することができる。
【0085】
図8は、各個に高い需要レベルが起きているため、各セルグループ175が最小受信可能サービスエリアであるよう、すべてのセルグループ175が分散しているシステム100の最大容量構成800を示す。各セルグループ175は専用の遠隔ユニット170を有し、この遠隔ユニット170は、専用POI/DASモジュール160、及び対応する専用BBUモジュール155を有する。
【0086】
図5に戻って説明すると、ステップ560で、オーケストレータ130は、システム100が需要変化に応じてその容量を増加又は減少のいずれかを行ったとの信号を適切なネットワークオペレータにおけるコアネットワークに送信することができる。このことは、ネットワークオペレータが次に変化に応じてシステム100に対するネットワークリソースの再割り振りを適切に行う機会を持てる点で有益な情報となり得る。
【0087】
干渉緩和
セル間干渉は、2つのセルグループ175の受信可能サービスエリア内に位置するUEs間で生じ得る。極めて低い遅延性で通信する容量を有する仮想化BBUモジュール155の実現を考慮すると、システム100は、ICIC(Inter-Cell Interference Coordination)の機会を提供する。
【0088】
図6は、オーケストレータ130が隣接するセルグループ175のために向上したICICを提供することができる例示的プロセス600を示し、各セルグループ175は同一周波数で或るTTI(Transmit Time Interval)で独自のデータフレームを送信する。
【0089】
ステップ605において、オーケストレータ130は、或るサービス周波数で互いに干渉している2つのセルを識別する命令を実行する。このことは、2つまたはそれ以上のBBUモジュール155が性能測定(ステップ510におけるような)を行う、又は1つ又はそれ以上のBBUモジュール155から、それらが或る周波数でセル間干渉が起きているとの指示をオーケストレータ130が受け取ることによってなされることができる。ステップ610において、オーケストレータはどのセルグループ175が干渉を受けているか、及びどの周波数帯域であるかを識別する。
【0090】
ステップ615において、オーケストレータ130は、2つまたはそれ以上の干渉セルと集合的に通信する接続されたUEsの数を決定する。接続されたUEsの総数が、集合的セルグループに過負荷を掛けることになる数より十分下回る場合、オーケストレータ130は、干渉セルグループ175をより大きいマスターセルグループ175に合体させる命令を実行することができる。このことは、プロセス500のステップ520~530につき説明したのと同様に行うことができる。この結果として、セル間干渉が起きているUEsのすべてを取り扱う単一BBUモジュール155(及びひいては単一スケジューラ)となる。
【0091】
ステップ615に戻って説明すると、干渉セルグループ175内における接続されたUEsの総数が単一セルグループ175に合体できないような数である場合、プロセス600はステップ625に進み、ここでオーケストレータ130は、1つ又はそれ以上のコーディネータモジュール157をインスタンス化する命令を実行する。各コーディネータモジュール157は、セル間干渉を生じているサービング周波数に割り当てられる。さらに、各コーディネータモジュール157は、1組のマシン可読命令のセットを有し、この命令セットは、1つ又はそれ以上のプロセッサによって実行されるとき、ステップ610でオーケストレータ130が識別したサービング周波数で2つまたはそれ以上の干渉BBUモジュール155間に調和をもたらし、2つの形態の調和、すなわち、セル間調和及びフレーム内調和のうち一方を遂行する。例示的実施形態において、各コーディネータモジュール157は、クーべネティス(Kubernetes)のようなCOEを用いて遂行することができる。代案として、単一クーべネティスのインスタンスは、1組のコーディネータモジュール157のセットの創成、動作、及び停止を編成することができる。
【0092】
セル間調和において、2つのBBUモジュール155は、一方のセルグループ175のアンテナに比較的接近している及び第2のセルグループ175のアンテナから比較的離れている、の双方で配置されていてUEが互いに接近しており、オーバーラップする受信範囲サービスエリア内のUEsとの通信を調和させることができる。セル間干渉調和の下で、これらUEsは双方ともに同一周波数で同一のリソースブロックを使用することができる。この事例において、一方のUEは近傍セルグループ175と通信状態にあり、他方のUEは比較的離れたセルグループ175と通信状態にある。それらは同一周波数で同一リソースブロックを使用することができ、これはすなわち、両者間で遅延時間に相違を有するからである。どちらのUEも同一時間に同一リソースブロックを探していない。したがって、セル間干渉はない。この事例において、2つのBBUモジュール155は、オーバーラップする受信範囲サービスエリア内におけるUEsの取扱いを調和させることができる。このシナリオにおいて、コーディネータモジュール157は、この調和を達成するためどのUEsがどのセルグループ175と通信するかを指定する橋渡し役として役務することができる。さらに、コーディネータモジュール157は、2つの干渉しているセルグループ175間でリソースブロックを割り振ることができ、この割り振りは、一方のセルグループが、その受信範囲サービスエリアの外側端縁における時間依存カバレージを割り振られるとともに、他方のセルグループ175がその受信範囲サービスエリア内側を優先的に割り振られるように行う。
【0093】
ステップ630はステップ625に対する代替ステップであって、このステップ630において、コーディネータモジュール157はフレーム内調和を遂行する命令を実行する。この事例において、コーディネータモジュール157は、相互接続チャネルを介して各干渉BBUモジュール155のスケジューラ230と通信する。低遅延性スイッチファブリック120における相互接続チャネルを使用することは、2つの異なるスケジューラ230が、そうでないとセル間干渉を引き起こすことになるUEsのためにTTI基盤上の所与のフレームを共有することを可能にし得る。このことは、サービス周波数の関数(例えば、10MHzスペクトル塊)として独立的に行うことができ、これにより、それぞれがはっきりと異なる10MHz帯域を取り扱う数個のコーディネータモジュール157が存在することができる。ステップ630の変更例において、2つの異なるスケジューラ(BBUモジュール155)が所与のフレームを共有することができ、これにより、一方のBBUモジュール155は標準LTEプロトコルスタックを遂行することができ、また他方のBBUモジュールは、CatM又はNB-IoTのようなIoTデバイスのための特殊用途スケジューラとすることができる。この事例において、コーディネータモジュール157は、特殊用途スケジューラに対してリソースブロックの特別なセットを保有することができ、これにより、2つのスケジューラ(標準LTE BBUモジュール155及び特殊用途IoT BBUモジュール155)によってサービスを受けるUEsの相対的優先度が維持される。このことは、そうしないと受信範囲サービスエリア改善使用を可能にするサブフレームのシーケンスにわたりリソースブロックをIoT-仕様スケジューラが保有することがあり得る状況を回避し、これにより貧弱な受信範囲サービスエリアを有する単一IoT UEは、先制してHARQ関連の再送信を可能にする(例えば、受信範囲サービスエリア改善)極めて多数のリソースブロックを与えられる。この事例において、コーディネータ157は、さらに、アービトレータ(調停役)として機能することができ、LTE BBUモジュール155と特殊用途BBUモジュール155との間に共通LTEフレームのリソースブロックが適切に供給されるのを確実にする。
【0094】
上述の実施例はコンポーネントモジュール105間で通信させる低遅延性スイッチファブリック120を使用するものとしてシステム100を説明したが、これは一例であり、十分な帯域幅、十分な低遅延性を有し、またカーネルを含まないデータ通信をもたらす場合、他のプロセス間通信技術、標準又はテクノロジーを採用することができ、これらも可能であり、本開示の範囲内であることは理解されるであろう。