(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ステータ、モータ、圧縮機、及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20241220BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20241220BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20241220BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20241220BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20241220BHJP
【FI】
H02K1/16 Z
F04C29/00 T
H02K1/14 Z
H02K7/14 B
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2021532614
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2019028036
(87)【国際公開番号】W WO2021009862
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 勇二
(72)【発明者】
【氏名】仁吾 昌弘
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】棚田 一也
【審判官】梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026928(JP,A)
【文献】特開2006-280087(JP,A)
【文献】特公平02-047191(JP,B2)
【文献】特開2018-112396(JP,A)
【文献】特開2019-030074(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031057(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/134740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均化反応を起こす性質の物質を含む冷媒と共に用いられる圧縮機内に配置されたモータのロータの外側に配置されるステータであって、
前記ロータの軸方向に積層された複数のシートを有するステータ鉄心を備え、
前記ステータ鉄心は、
周方向に円環状に分割されて配列された複数の鉄心部で構成されており、ヨーク部と、N個のティース部とを備え、
前記N個のティース部の各々は、前記ロータに対向するティース先端面を有し、
前記軸方向と直交する平面において、前記ティース先端面の曲率は一定であり、
前記軸方向と直交する平面において、前記ティース先端面の両端と前記ロータの回転中心とを通る2直線が成す角度をθ1[度]としたとき、
前記複数のシートの各々が、0.75≦(θ1×N)/360≦0.97
を満たすステータ。
【請求項2】
0.84≦(θ1×N)/360≦0.97を満たす請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
0.75≦(θ1×N)/360≦0.925を満たす請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記N個のティース部に分布巻きで取り付けられたコイルをさらに有する請求項1から3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
前記不均化反応を起こす性質の物質は、1,1,2-トリフルオロエチレンである請求項1から4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記不均化反応を起こす性質の物質は、1,2-ジフルオロエチレンである請求項1から4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータの内側に配置された前記ロータと
を備えるモータ。
【請求項8】
パルス幅変調制御方式で動作し、前記ステータに電力を供給するインバータを有する請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ロータの軸方向において、前記ロータは前記ステータよりも長い請求項7又は8に記載のモータ。
【請求項10】
前記ロータは、永久磁石を有する永久磁石埋込型ロータである請求項7から9のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項11】
前記ロータは、ロータ鉄心と、前記ロータの軸方向における前記ロータ鉄心の端部に固定された金属部材とを有し、
前記ロータの軸方向と直交する前記平面において、前記金属部材の表面積は、前記ロータ鉄心の表面積よりも大きい
請求項7から10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
前記ロータは、ロータ鉄心を有し、
前記ロータ鉄心の外径は、前記ロータの磁極中心部で最大であり、前記ロータの極間部で最小である請求項7から11のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項13】
密閉容器と、
前記密閉容器内に配置された圧縮装置と、
前記圧縮装置を駆動する請求項7から12のいずれか1項に記載のモータと
を備える圧縮機。
【請求項14】
請求項13に記載の圧縮機と、
熱交換器と
を備える空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのステータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧縮機の冷媒として、1,1,2-トリフルオロエチレンを含む冷媒が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、圧縮機内のモータの構造によっては、冷媒が膨張し、圧縮機内のシリンダが故障することがある。その結果、圧縮機の故障を引き起こすことがある。
【0005】
本発明は、以上に述べた課題を解決し、圧縮機の故障を発生しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステータは、
不均化反応を起こす性質の物質を含む冷媒と共に用いられる圧縮機内に配置されたモータのロータの外側に配置されるステータであって、
前記ロータの軸方向に積層された複数のシートを有するステータ鉄心を備え、
前記ステータ鉄心は、周方向に円環状に分割されて配列された複数の鉄心部で構成されており、ヨーク部と、N個のティース部とを備え、
前記N個のティース部の各々は、前記ロータに対向するティース先端面を有し、
前記軸方向と直交する平面において、前記ティース先端面の曲率は一定であり、
前記軸方向と直交する平面において、前記ティース先端面の両端と前記ロータの回転中心とを通る2直線が成す角度をθ1[度]としたとき、
前記複数のシートの各々が、0.75≦(θ1×N)/360≦0.97
を満たす。
本発明の他の態様に係るモータは、
前記ステータと、
前記ステータの内側に配置された前記ロータと
を備える。
本発明の他の態様に係る圧縮機は、
密閉容器と、
前記密閉容器内に配置された圧縮装置と、
前記圧縮装置を駆動する前記モータと
を備える。
本発明の他の態様に係る空気調和機は、
前記圧縮機と、
熱交換器と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮機の故障を発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るステータを備えたモータの内部構造を概略的に示す断面図である。
【
図3】分割鉄心部の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図4】ステータ鉄心の構造を概略的に示す平面図である。
【
図5】分割鉄心部の構造を概略的に示す断面図である。
【
図10】モータの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図11】モータのさらに他の例を概略的に示す断面図である。
【
図12】金属部材の例を概略的に示す平面図である。
【
図14】ロータの回転角度とシリンダにおける内圧との関係を示すグラフである。
【
図15】定格トルク以下でモータが駆動するときの開き角割合[%]とトルクリプル率[%]との関係を示すグラフである。
【
図16】定格トルク以下でモータが駆動するときのステータ鉄心における磁束密度を示す図である。
【
図17】定格トルクよりも大きいトルクでモータが駆動するときのステータ鉄心における磁束密度を示す図である。
【
図18】定格トルクよりも大きいトルクでモータが駆動するときの開き角割合[%]とトルクリプル率[%]との関係を示すグラフである。
【
図19】本発明の実施の形態2に係る圧縮機の構造を概略的に示す断面図である。
【
図20】本発明の実施の形態3に係る冷凍空調装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
各図に示されるxyz直交座標系において、z軸方向(z軸)は、モータ1の軸線A1と平行な方向を示し、x軸方向(x軸)は、z軸方向(z軸)に直交する方向を示し、y軸方向(y軸)は、z軸方向及びx軸方向の両方に直交する方向を示す。軸線A1は、ロータ3の回転中心である。軸線A1は、ステータ2の中心も示す。軸線A1と平行な方向は、「モータ1の軸方向」、「ロータ3の軸方向」、又は単に「軸方向」ともいう。径方向は、ロータ3又はステータ2の半径方向であり、軸線A1と直交する方向である。xy平面は、軸方向と直交する平面である。矢印D1は、軸線A1を中心とする周方向を示す。ロータ3又はステータ2の周方向を、単に「周方向」ともいう。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態1に係るステータ2を備えたモータ1の内部構造を概略的に示す断面図である。
モータ1は、ステータ2と、ロータ3とを有する。モータ1は、例えば、永久磁石埋込型電動機である。
【0011】
モータ1は、例えば、不均化反応を起こす性質の物質を含む冷媒と共に用いられる圧縮機内に配置されたモータである。
【0012】
例えば、上述の冷媒は、不均化反応を起こす性質の物質を1wt%以上含んでいればよい。上述の冷媒は、不均化反応を起こす性質の物質のみで構成された冷媒でもよい。すなわち、上述の冷媒に占める不均化反応を起こす性質の物質の割合は、1wt%から100wt%であればよい。
【0013】
不均化反応を起こす性質の物質は、例えば、1,1,2-トリフルオロエチレン又は1,2-ジフルオロエチレンである。
【0014】
例えば、上述の冷媒は、1,1,2-トリフルオロエチレンを1wt%以上含んでいればよい。上述の冷媒は、1,1,2-トリフルオロエチレンのみで構成された冷媒でもよい。すなわち、上述の冷媒は、1,1,2-トリフルオロエチレンを1wt%から100wt%含んでいればよい。
【0015】
例えば、上述の冷媒は、1,2-ジフルオロエチレンを1wt%以上含んでいればよい。上述の冷媒は、1,2-ジフルオロエチレンのみで構成された冷媒でもよい。すなわち、上述の冷媒は、1,2-ジフルオロエチレンを1wt%から100wt%含んでいればよい。
【0016】
上述の冷媒は、1,1,2-トリフルオロエチレンとジフルオロメタン(R32とも称する)との混合物でもよい。例えば、1,1,2-トリフルオロエチレンを40wt%、R32を60wt%含有する混合物を冷媒として使用することができる。この混合物のR32を別の物質に置き換えても構わない。例えば、1,1,2-トリフルオロエチレンと他のエチレン系フッ化炭化水素との混合物を冷媒として使用しても構わない。他のエチレン系フッ化炭化水素としては、フルオロエチレン(HFO-1141とも称する)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132aとも称する)、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(「HFO-1132(E)」とも称する)、シス-1,2-ジフルオロエチレン(「HFO-1132(Z)」とも称する)を使用することができる。
【0017】
R32は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yfとも称する)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(「R1234ze(E)」とも称する)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(「R1234ze(Z)」とも称する)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134aとも称する)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125とも称する)のいずれかに置き換えても構わない。R32は、R32、R1234yf、R1234ze(E)、R1234ze(Z)、R134a、R125のうち、いずれか2種類以上からなる混合物に置き換えても構わない。
【0018】
ステータ2は、円環状に形成されたステータ鉄心2aと、ステータ鉄心2aに巻回されたコイル27とを有する。ステータ2は、軸線A1(すなわち、ロータ3の回転中心)を中心とする周方向に円環状に形成されている。
【0019】
ステータ2は、ロータ3の外側に配置される。ステータ2の内側に、ロータ3が回転自在に備えられている。ステータ2の内側表面とロータ3の外側表面との間には、0.3mmから1mmのエアギャップが設けられている。ステータ2のコイル27に、インバータから電流が供給されると、ロータ3が回転する。コイル27に供給される電流は、指令回転数に同期した周波数を持つ電流である。
【0020】
ステータ2は、複数の分割鉄心部25aを有する。
図1に示される例では、複数の分割鉄心部25aが、軸線A1を中心とする周方向に円環状に配列されており、これによりステータ2を形成している。
【0021】
次に、駆動装置101について説明する。
図2は、駆動装置101の構成を示すブロック図である。
モータ1は、
図2に示される駆動装置101を有してもよい。駆動装置101は、電源の出力を整流するコンバータ102と、モータ1のステータ2(具体的には、コイル27)に電力を供給するインバータ103と、制御装置50とを有する。
【0022】
図2に示される例では、コイル27は、U相,V相,及びW相を持つ3相コイルである。
【0023】
コンバータ102には、交流電源である電源から電力が供給される。コンバータ102は、インバータ103に電圧を印加する。コンバータ102からインバータ103に印加される電圧を「コンバータ電圧」とも称する。コンバータ102の母線電圧は制御装置50に供給される。
【0024】
インバータ103は、パルス幅変調制御方式(PWM制御方式とも称する)で動作する。
【0025】
モータ1を駆動するインバータ電圧、すなわち、モータ1のコイル27に印加される電圧は、PWM制御方式で生成される。上述のように、モータ1のコイル27は、例えば、3相コイルである。この場合、インバータ103は、各相に対応する少なくとも1つのインバータスイッチを有し、各インバータスイッチは、1組のスイッチング素子(本実施の形態では、2個のスイッチング素子)を有する。
【0026】
PWM制御方式では、各相に対応するインバータスイッチのオンオフの時間割合を制御することでインバータ電圧の波形を生成する。これにより、インバータ103からの所望の出力波形を得ることができる。具体的には、インバータ103においてインバータスイッチがオンのとき、インバータ103からコイル27へ電圧が供給され、インバータ電圧が増大する。インバータスイッチがオフのとき、インバータ103からコイル27への電圧供給は遮断され、インバータ電圧が降下する。インバータ電圧と誘起電圧との差分がコイル27に供給され、電動機電流が発生し、モータ1の回転力が生じる。目標とする電動機電流値に一致するようインバータスイッチのオンオフの時間割合を制御することで、インバータ103からの所望の出力波形を得ることができる。
【0027】
各インバータスイッチのオンオフのタイミングは、キャリア波に基づいて決定される。キャリア波は、一定の振幅を持つ三角波で構成される。PWM制御方式におけるパルス幅変調周期は、キャリア波の周波数であるキャリア周波数によって決まる。本実施の形態では、予め定められたキャリア波のパターン又は予め定められたキャリア周波数が制御装置50に格納されている。制御装置50は、キャリア周波数を制御し、各インバータスイッチのオンオフを制御する。これにより、制御装置50は、コイル27に供給されるインバータ103からの出力を制御する。
【0028】
キャリア波の周波数であるキャリア周波数を「インバータ103のキャリア周波数」とも称する。すなわち、インバータ103のキャリア周波数は、コイル27に印加される電圧の制御周波数であり、制御装置50は、インバータ103のキャリア周波数を制御する。
【0029】
本実施の形態では、インバータ103は、3個のインバータスイッチ(すなわち、6個のスイッチング素子)を有するが、3個のインバータスイッチの内の1個のインバータスイッチ、すなわち、U相、V相、又はW相に対応する1個のインバータスイッチに対する制御について説明する。ただし、その1個のインバータスイッチに対する制御は、他の2個のインバータスイッチに対する制御にも適用可能である。
【0030】
制御装置50は、キャリア波の電圧値と、インバータ出力電圧指令値とを比較する。インバータ出力電圧指令値は、例えば、制御装置50において、目標電動機電流値に基づいて計算される。インバータ出力電圧指令値は、例えば、空気調和機などの冷凍空調装置のリモコンから制御装置50に入力された運転指示信号に基づいて設定される。
【0031】
キャリア波の電圧値がインバータ出力電圧指令値よりも小さいとき、制御装置50は、インバータスイッチがオンになるようにPWM制御信号をオンにする。キャリア波の電圧値がインバータ出力電圧指令値以上であるとき、制御装置50は、インバータスイッチがオフになるようにPWM制御信号をオフにする。これにより、インバータ電圧が目標値に近づく。
【0032】
上述のように、制御装置50は、インバータ出力電圧指令値とキャリア波の電圧値との差に基づいてPWM制御信号を生成する。
【0033】
制御装置50は、PWM制御信号に基づくインバータ駆動信号などの制御信号をインバータ103に出力し、インバータスイッチのオンオフ制御を行う。インバータ駆動信号は、PWM制御信号と同じ信号でもよく、PWM制御信号と異なる信号でもよい。
【0034】
インバータスイッチがオンのときにインバータ電圧がインバータ103から出力される。インバータ電圧はコイル27に供給され、モータ1において電動機電流(具体的には、U相電流、V相電流、およびW相電流)が発生する。これにより、インバータ電圧はモータ1(具体的には、ロータ3)の回転力に変換される。電動機電流は、電流センサなどの計測器で計測され、制御装置50に計測結果(例えば、電流値を示す信号)が送信される。
【0035】
制御装置50は、例えば、プロセッサおよびメモリで構成される。例えば、制御装置50は、マイクロコンピュータである。制御装置50は、単一回路又は複合回路などの専用のハードウェアとしての処理回路で構成されてもよい。
【0036】
分割鉄心部25aの構造について以下に説明する。
図3は、分割鉄心部25aの構造を概略的に示す斜視図である。
【0037】
本実施の形態では、ステータ2が複数の分割鉄心部25aによって構成されている。各分割鉄心部25aは、分割された鉄心である鉄心部21と、第1のインシュレータ24aと、第2のインシュレータ24bと、コイル27とを有する。ただし、
図3に示される例では、コイル27は図示されていない。
【0038】
第1のインシュレータ24aは、ステータ鉄心2a(具体的には、鉄心部21)と組み合わされる。本実施の形態では、第1のインシュレータ24aは、軸方向におけるステータ鉄心2aの両端部に備えられている。ただし、第1のインシュレータ24aは、軸方向におけるステータ鉄心2aの一方の端部に備えられていてもよい。本実施の形態では、第1のインシュレータ24aは、絶縁性樹脂である。
【0039】
第2のインシュレータ24bは、例えば、薄いPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。PETフィルムの厚さは、例えば、0.15mmである。第2のインシュレータ24bは、ステータ鉄心2aのティース部(後述するティース部22a)の側面を覆う。
【0040】
図4は、ステータ鉄心2aの構造を概略的に示す平面図である。
【0041】
ステータ鉄心2aは、少なくとも1つのヨーク部21aと、少なくとも2つのティース部22aとを有する。ステータ鉄心2aは、複数の鉄心部21によって構成されている。したがって、各鉄心部21は、ヨーク部21aと、ティース部22aとを有する。
【0042】
図4に示される例では、ステータ鉄心2aは、9個の鉄心部21によって構成されている。
【0043】
ただし、ステータ鉄心2aは、複数の鉄心部21に分割されていなくてもよい。この場合、ステータ鉄心2aは、1つの部材として一体化された複数の鉄心部21で構成されていてもよい。例えば、ステータ鉄心2aは、円環状の複数の材料(例えば、電磁鋼板)を積層することによって形成されていてもよい。
【0044】
2つのヨーク部21a及び2つのティース部22aによって囲まれた領域は、スロット部26である。ステータ鉄心2aにおいて、複数のスロット部26は、周方向に等間隔に設けられている。
図4に示される例では、ステータ鉄心2aに、9個のスロット部26が設けられている。
【0045】
図4に示されるように、ステータ鉄心2aは、複数のティース部22aを有し、各ティース部22aは、スロット部26を介して隣接している。したがって、複数のティース部22a及び複数のスロット部26は、周方向に、交互に配列されている。周方向における複数のティース部22aの配列ピッチ(すなわち、周方向におけるスロット部26の幅)は等間隔である。すなわち、複数のティース部22aは、放射状に位置している。
【0046】
本実施の形態では、ステータ2は、N個の分割鉄心部25a(Nは2以上の自然数)を有する。したがって、ステータ2は、N個のティース部22aを有する。
図1に示される例では、ステータ2は、9個の分割鉄心部25aを有する。したがって、
図1に示される例では、ステータ2は、9個のティース部22aを有する。
【0047】
図5は、分割鉄心部25aの構造を概略的に示す断面図である。
各分割鉄心部25aは、ヨーク部21aと、径方向におけるヨーク部21aの内側に位置するティース部22aと、コイル27と、ステータ鉄心2aを絶縁する第1のインシュレータ24aと、ステータ鉄心2aを絶縁する第2のインシュレータ24bとを有する。本実施の形態では、ティース部22aは、1つの部材としてヨーク部21aと一体化されているが、ヨーク部21aとは別に形成されたティース部22aをヨーク部21aに取り付けてもよい。
【0048】
コイル27は、第1のインシュレータ24a及び第2のインシュレータ24bを介してステータ鉄心2aに巻回されている。具体的には、コイル27は、ティース部22aの周りに巻回されている。コイル27に電流が流れると、コイル27から回転磁界が発生する。
【0049】
コイル27は、例えば、マグネットワイヤである。例えば、ステータ2は、3相であり、コイル27の結線は、例えば、Y結線(スター結線ともいう)又はデルタ結線である。コイル27のターン数及び線径は、モータ1の回転数、トルク、電圧仕様、及びスロット部26の断面積等に応じて定められる。コイル27の線径は、例えば、1.0mmである。ステータ鉄心2aの各ティース部22aには、コイル27が、例えば、80ターン巻回されている。ただし、コイル27の線径及びターン数は、これらの例に限られない。
【0050】
コイル27の巻線方式は、例えば、集中巻である。例えば、鉄心部21を円環状に配列する前の状態(例えば、鉄心部21が直線状に配列された状態)で、鉄心部21にコイル27を巻回することができる。コイル27が巻回された鉄心部21(すなわち、分割鉄心部25a)は、円環状に折り畳まれて、溶接等によって固定される。
【0051】
コイル27は、集中巻の代わりに、ステータ鉄心2aの各ティース部22aに分布巻きで取り付けられていてもよい。
【0052】
図6は、鉄心部21の構造を概略的に示す平面図である。
図7は、鉄心部21の構造を概略的に示す斜視図である。
【0053】
ヨーク部21aは、周方向に延びており、ティース部22aは、ステータ鉄心2aの径方向における内側(
図6では、-y方向)に向かって延びている。言い換えると、ティース部22aは、ヨーク部21aから軸線A1に向けて突出している。
【0054】
図6及び
図7に示されるように、各ティース部22aは、本体部221aと、歯先部222aと、ティース先端面223aとを有する。歯先部222aは、径方向におけるティース部22a(具体的には、本体部221aの端部)の先端に設けられている。
図6及び
図7に示される例では、本体部221aは、径方向に沿って等しい幅を持つ。歯先部222aは、周方向に延びており、周方向に向けて広がるように形成されている。
【0055】
ティース先端面223aは、モータ1において、ロータ3に対向する。具体的には、ティース先端面223aは、モータ1において、ロータ3に対向する歯先部222aの表面である。
【0056】
図5から
図7に示されるように、鉄心部21(例えば、ヨーク部21a)には、第1のインシュレータ24aを固定するための固定穴24cが設けられている。
【0057】
図7に示されるように、鉄心部21は、少なくとも1つのシート28(プレートともいう)によって構成されている。本実施の形態では、複数のシート28を軸方向(すなわち、z軸方向)に積層することにより鉄心部21が形成されている。
【0058】
シート28は、プレス加工(具体的には打ち抜き加工)によって、予め定められた形状に形成される。シート28は、例えば、電磁鋼板である。電磁鋼板をシート28として用いる場合、シート28の厚さは、例えば、0.01mmから0.7mmである。本実施の形態では、シート28の厚さは、0.35mmである。シート28は、カシメ部24dによって、隣接する他のシート28と固定されている。
【0059】
ロータ3の構造について以下に説明する。
図8は、ロータ3の構造を概略的に示す断面図である。
【0060】
ロータ3は、ロータ鉄心31と、シャフト32と、少なくとも1つの永久磁石33と、少なくとも1つの磁石挿入孔34と、少なくとも1つのフラックスバリア35と、少なくとも1つの風穴36と、少なくとも1つのスリット38とを有する。ロータ3は、軸線A1を中心として回転自在である。ロータ3は、ステータ2の内側に、回転自在に配置されている。軸線A1は、ロータ3の回転中心であり、且つ、シャフト32の軸線である。
【0061】
本実施の形態では、ロータ3は、永久磁石埋込型ロータである。ロータ鉄心31は、ロータ3の周方向に配列された複数の磁石挿入孔34を有する。磁石挿入孔34は、永久磁石33が配置される空隙である。各磁石挿入孔34には、1つの永久磁石33が配置されている。ただし、各磁石挿入孔34に複数の永久磁石33を配置してもよい。磁石挿入孔34に配置された永久磁石33は、ロータ3の径方向(すなわち、軸線A1と直交する方向)に磁化されている。磁石挿入孔34の数は、ロータ3の磁極数に対応する。各磁極の位置関係は同じである。本実施の形態では、ロータ3の磁極数は、6極である。ただし、ロータ3の磁極数は、2極以上であればよい。
【0062】
永久磁石33には、例えば、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)、及びボロン(B)を含む希土類磁石(以下、「Nd-Fe-B永久磁石」という)が適用される。
【0063】
Nd-Fe-B永久磁石の保磁力は、温度により低下する性質を持つ。例えば、圧縮機のように100℃以上の高温雰囲気中でNd希土類磁石を用いたモータを使用する場合、磁石の保磁力は温度により、約-0.5から-0.6%/ΔK劣化するため、Dy(ディスプロシウム)元素を添加して保磁力を高める必要がある。保磁力は、Dy元素の含有量にほぼ比例して向上する。一般的な圧縮機では、モータの雰囲気温度上限は150℃程度であり、20℃に対して、130℃程度の温度上昇の範囲で使用する。例えば、-0.5%/ΔKの温度係数では保磁力は65%低下する。
【0064】
圧縮機の最大負荷で減磁しないようにするためには、1100~1500A/m程度の保磁力が必要である。150℃の雰囲気温度中で保磁力を保証するためには、常温保磁力を1800~2300A/m程度に設計する必要がある。
【0065】
Nd-Fe-B永久磁石にDy元素が添加されていない状態では、常温保磁力は1800A/m程度である。2300kA/m程度の保磁力を得るためには、2wt%程度のDy元素を添加する必要がある。しかしながら、Dy元素を添加すると、保磁力特性は向上するが、残留磁束密度特性が低下する。残留磁束密度が低下すると、モータのマグネットトルクが低下し、通電電流が増加するため、銅損が増加する。そのため、モータの効率を考慮すると、Dy添加量を低減することが望まれる。
【0066】
ロータ鉄心31は、複数の電磁鋼板を積層することにより形成されている。ロータ鉄心31の各電磁鋼板の厚さは、例えば、0.1mmから0.7mmである。本実施の形態では、ロータ鉄心31の各電磁鋼板の厚さは、0.35mmである。ロータ鉄心31の電磁鋼板は、カシメによって、隣接する他の電磁鋼板と固定されている。
【0067】
ロータ3の径方向における磁石挿入孔34の外側には、少なくとも1つのスリット38が形成されている。本実施の形態では、ロータ3の径方向における磁石挿入孔34の外側に複数のスリット38が形成されている。各スリット38は、径方向に長い。
【0068】
シャフト32は、ロータ鉄心31と連結されている。例えば、シャフト32は、ロータ鉄心31に形成された軸穴37に、焼き嵌め又は圧入などの固定方法によって固定される。これにより、ロータ鉄心31が回転することによって発生する回転エネルギーは、シャフト32に伝達される。
【0069】
フラックスバリア35は、ロータ3の周方向において磁石挿入孔34に隣接する位置に形成されている。言い換えると、各フラックスバリア35は、各磁石挿入孔34の長手方向における各磁石挿入孔34の端部に隣接している。フラックスバリア35は、漏れ磁束を低減する。隣接する磁極間での磁束の短絡を防ぐため、フラックスバリア35とロータ鉄心31の外周面との間の薄肉部の幅は短いことが望ましい。フラックスバリア35とロータ鉄心31の外周面との間の薄肉部の幅は、例えば、0.35mmである。風穴36は、貫通孔である。例えば、圧縮機にモータ1を用いたとき、冷媒が風穴36を通過することができる。
【0070】
ティース部22aの構造を具体的に説明する。
図9は、ティース部22aの構造を示す図である。
xy平面において、ティース先端面223aの両端P1とロータ3の回転中心とを通る2直線L1が成す角度をθ1[度]としたとき、ステータ2は、0.75≦(θ1×N)/360≦0.97を満たす。
【0071】
本実施の形態では、N=9である。ただし、Nは2以上の自然数であればよい。
【0072】
すなわち、xy平面において、ティース先端面223aを通る円の円周においてティース先端面223aが占める割合α[%]が、75%以上97%以下を満たす。本出願では、この割合αを、開き角割合αと称する。ティース先端面223aを通る円は、例えば、
図4において破線R1で示される円である。
【0073】
変形例1.
図10は、モータ1の他の例を概略的に示す断面図である。
ロータ3の軸方向において、ロータ3は、ステータ2よりも長い。この場合、ロータ3は、ステータ鉄心2aよりも長ければよい。
【0074】
変形例2.
図11は、モータ1のさらに他の例を概略的に示す断面図である。
図12は、金属部材39の例を概略的に示す平面図である。
変形例2では、ロータ3は、少なくとも1つの金属部材39を有する。金属部材39は、ロータ3の軸方向におけるロータ鉄心31の端部に固定されている。
【0075】
図11及び
図12に示される例では、ロータ3は、2つの金属部材39を有し、ロータ鉄心31の両端部に金属部材39が固定されている。金属部材39は、単一の構造体であることが望ましい。これにより、金属部材39のコストを低減することができる。
【0076】
xy平面において、各金属部材39の表面積は、ロータ鉄心31(具体的には、金属部材39に面するロータ鉄心31の表面)の表面積よりも大きい。
【0077】
変形例3.
図13は、ロータ3の他の例を示す図である。
ロータ3は、ロータ鉄心31の代わりに、
図13に示されるロータ鉄心31aを有してもよい。
図13に示されるロータ鉄心31aは、xy平面において、複数の異なる半径を持つ。具体的には、ロータ鉄心31aの半径は、ロータ3の磁極中心部で最大であり、ロータ3の極間部で最小である。
図13に示される例では、ロータ鉄心31aの外径は、ロータ3の磁極中心部で最大であり、ロータ3の極間部で最小である。
図13に示されるxy平面において、ロータ3の磁極中心部は、各永久磁石33の中央と軸線A1とを通る直線上に位置する。
図13に示されるxy平面において、ロータ3の極間部は、互いに隣接する永久磁石33の間の点と軸線A1とを通る直線上に位置する。
【0078】
実施の形態1に係るステータ2の利点を以下に説明する。
図14は、ロータの回転角度とシリンダにおける内圧との関係を示すグラフである。
図14に示される例では、実線B1は、大きいトルクリプルを持つモータに対応しており、破線B2は、小さいトルクリプルを持つモータに対応している。
通常、圧縮機において、冷媒の圧縮が開始されると、シリンダの内部圧力が高まる。内部圧力が要求能力を満たす狙いの吐出圧力に達したとき、冷媒がバルブ弁を押しのけ、バルブ弁が開放される。これにより、シリンダが吐出マフラに連通し、狙いの吐出圧力で冷媒が吐出パイプから吐出される。
【0079】
しかしながら、シリンダの内部圧力が狙いの吐出圧力に達してからバルブ弁が完全に開放されるまでにタイムラグが発生する場合、シリンダの内部圧力が、狙いの吐出圧力を超えることがある。この現象を、本出願では、「圧力オーバーシュート」と称する。
【0080】
圧力オーバーシュートが発生すると、1,1,2-トリフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレンなどの不均化反応を起こす性質の物質を含む冷媒は、不均化反応の連鎖によって急激な体積膨張を起こし、圧縮機内のシリンダが故障しやすくなる。そのため、できるだけ圧力オーバーシュートの発生を抑えることが望ましい。
【0081】
通常、圧縮機において、モータの回転速度が大きいほど、冷媒が圧縮される周期が短くなり、バルブ弁開放の遅れによる影響は大きくなる。すなわち、モータの回転速度が大きいほど、圧力オーバーシュートが発生しやすくなる。
【0082】
通常、モータの駆動中にトルクリプルが発生するため、モータの駆動中にモータの回転速度が上下する。瞬時の回転速度が大きくなるほど、シリンダの瞬時の内部圧力が高まり、シリンダが故障しやすくなる。
【0083】
図15は、定格トルク以下でモータが駆動するときの開き角割合α[%]とトルクリプル率[%]との関係を示すグラフである。
図16は、定格トルク以下でモータが駆動するときのステータ鉄心2aにおける磁束密度を示す図である。
図17は、定格トルクよりも大きいトルクでモータが駆動するときのステータ鉄心2aにおける磁束密度を示す図である。
【0084】
図15に示されるように、定格トルク以下でモータが駆動するとき、
図9に示される角度θ1が大きいほど、モータの駆動時におけるトルクリプル率は小さい。トルクリプル率とは、時間平均トルクに対する、最大トルクと最小トルクとの差分の比率である。トルクリプル率が小さいほど、モータの駆動中におけるモータの回転速度の変動が低減し、圧力オーバーシュートが発生しにくくなる。
図16に示されるように、トルク負荷が小さいとき、各ティース部における磁気飽和の影響が少ない。これに対して、
図17に示されるように、トルク負荷が大きいとき、各ティース部における磁気飽和が増加する。例えば、圧縮機内のモータにおいてトルク負荷が大きいとき、シリンダの内部圧力が高まるため、冷媒の不均化反応による圧縮機の故障が起きやすい。
【0085】
具体的には、角度θ1は、ステータとロータとの間に発生する磁気吸引力に影響を及ぼす。その結果、角度θ1は、トルクリプル率に影響を及ぼす。
【0086】
図18は、定格トルクよりも大きいトルクでモータ1が駆動するときの開き角割合α[%]とトルクリプル率[%]との関係を示すグラフである。
図18に示されるように、開き角割合αが75%以上のとき、トルクリプル率を効果的に小さくすることができる。すなわち、0.75≦(θ1×N)/360において、トルクリプル率を効果的に小さくすることができる。
【0087】
開き角割合αが84%以上のとき、トルクリプル率をより効果的に小さくすることができる。すなわち、0.84≦(θ1×N)/360において、トルクリプル率をより効果的に小さくすることができる。
【0088】
開き角割合αが97%を超えるとき、トルクリプル率が急激に大きくなる。すなわち、(θ1×N)/360>0.97において、トルクリプル率が急激に大きくなる。
【0089】
したがって、開き角割合αは、75%以上97%以下を満たすことが望ましい。すなわち、ステータ2は、0.75≦(θ1×N)/360≦0.97を満たすことが望ましい。これにより、トルクリプル率を効果的に小さくすることができ、その結果、圧縮機の故障を発生しにくくすることができる。
【0090】
開き角割合αは、84%以上97%以下を満たすことがより望ましい。すなわち、ステータ2は、0.84≦(θ1×N)/360≦0.97を満たすことがより望ましい。これにより、トルクリプル率をより効果的に小さくすることができ、その結果、圧縮機の故障をより発生しにくくすることができる。
【0091】
さらに、開き角割合αは、87.5%以上92.5%以下を満たすことがより望ましい。すなわち、ステータ2は、0.875≦(θ1×N)/360≦0.925を満たすことがより望ましい。これにより、トルクリプル率をより効果的に小さくすることができ、その結果、圧縮機の故障をより発生しにくくすることができる。
【0092】
開き角割合αが90%のとき、トルクリプル率が最小である。したがって、ステータ2が、(θ1×N)/360=0.9を満たすとき、トルクリプル率が最小である。この場合、圧縮機の故障をより発生しにくくすることができる。
【0093】
開き角割合αは、87.5%以上97%以下でもよい。すなわち、ステータ2が0.875≦(θ1×N)/360≦0.97を満たすとき、トルクリプル率を効果的に小さくすることができ、その結果、圧縮機の故障を発生しにくくすることができる。
【0094】
開き角割合αは、87.5%以上92.5%以下でもよい。すなわち、ステータ2が0.875≦(θ1×N)/360≦0.925を満たすとき、トルクリプル率を効果的に小さくすることができ、その結果、圧縮機の故障を発生しにくくすることができる。
【0095】
開き角割合αは、84%以上92.5%以下でもよい。すなわち、ステータ2が0.84≦(θ1×N)/360≦0.925を満たすとき、トルクリプル率を効果的に小さくすることができ、その結果、圧縮機の故障を発生しにくくすることができる。
【0096】
コイル27がステータ鉄心2aの各ティース部22aに分布巻きで取り付けられている場合、コイル27からの磁束が、集中巻に比べて、ステータ2に広く分散する。これにより、ロータ3の回転時においてロータ3とステータ2との間に発生する磁気吸引力の変動が緩やかになり、トルクリプル率を小さくすることができる。
【0097】
モータ1が、PWM制御方式で動作するインバータを有する場合、インバータ電圧の波形を細かく調整することができる。これにより、インバータ電圧に起因するモータ1のトルク波形を制御することができ、トルクリプル率を小さくすることができる。
【0098】
ロータ3の軸方向において、ロータ3がステータ2よりも長い場合、ロータ3の慣性モーメントを増加させることができる。これにより、圧力オーバーシュートの発生を抑えることができる。さらに、ロータ3の軸方向において、ステータ2がロータ3よりも短いとき、モータ1を小型化することができる。したがって、モータ1を有する圧縮機を小型化することができる。
【0099】
ロータ3は、少なくとも1つの金属部材39を有する場合、ロータ3の慣性モーメントを増加させることができる。これにより、圧力オーバーシュートの発生を抑えることができる。
【0100】
ロータ3は、少なくとも1つの金属部材39を有する場合、xy平面において、各金属部材39の表面積は、ロータ鉄心31(具体的には、金属部材39に面するロータ鉄心31の表面)の表面積よりも大きいことが望ましい。これにより、ロータ3の慣性モーメントをより増加させることができる。これにより、圧力オーバーシュートの発生を効果的に抑えることができる。
【0101】
ロータ鉄心31aの半径が、ロータ3の磁極中心部で最大であり、ロータ3の極間部で最小である場合、ロータ3の外周面における磁束密度が磁極中心部で最大になり、ロータ3の外周面における磁束密度が極間部で最小になる。すなわち、磁極中心部から極間部に近づくにつれてロータ3の外周面における磁束密度が小さくなる。これにより、モータ1における誘起電圧の波形が正弦波に近づき、トルクリプル率を小さくすることができる。その結果、圧力オーバーシュートの発生を抑制することができる。
【0102】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る圧縮機6について説明する。
図19は、実施の形態2に係る圧縮機6の構造を概略的に示す断面図である。
【0103】
圧縮機6は、電動要素としてのモータ1と、ハウジングとしての密閉容器61と、圧縮要素(圧縮装置とも称する)としての圧縮機構62とを有する。圧縮機6は、実施の形態1で説明した冷媒、すなわち、不均化反応を起こす性質の物質を含む冷媒と共に用いられる。この冷媒は、圧縮機6内に予め設けられていてもよい。本実施の形態では、圧縮機6は、ロータリ圧縮機である。ただし、圧縮機6は、ロータリ圧縮機に限定されない。
【0104】
圧縮機6内のモータ1は、実施の形態1で説明したモータ1である。モータ1は、圧縮機構62を駆動する。本実施の形態では、モータ1は、永久磁石埋込型電動機であるが、これに限定されない。
【0105】
密閉容器61は、モータ1及び圧縮機構62を覆う。密閉容器61の底部には、圧縮機構62の摺動部分を潤滑する冷凍機油が貯留されている。
【0106】
圧縮機6は、さらに、密閉容器61に固定されたガラス端子63と、アキュムレータ64と、冷媒を吸入するための吸入パイプ65と、冷媒を突出するための吐出パイプ66とを有する。
【0107】
吸入パイプ65及び吐出パイプ66は、密閉容器61に固定されている。
【0108】
圧縮機構62は、密閉容器61内に配置されている。本実施の形態では、圧縮機構62は、密閉容器61における下部に配置されている。
【0109】
圧縮機構62は、シリンダ62aと、ピストン62bと、上部フレーム62c(第1のフレーム)と、下部フレーム62d(第2のフレーム)と、上部フレーム62c及び下部フレーム62dにそれぞれ取り付けられた複数のマフラ62eとを有する。圧縮機構62は、さらに、シリンダ62a内を吸入側と圧縮側とに分けるベーンを有する。
【0110】
圧縮機構62は、モータ1によって駆動される。圧縮機構62は、冷媒を圧縮する。
【0111】
モータ1は、密閉容器61における上部に配置されている。具体的には、モータ1は、吐出パイプ66と圧縮機構62との間に位置する。すなわち、モータ1は、圧縮機構62の上方に設けられている。
【0112】
モータ1のステータ2は、圧入、焼き嵌めなどの固定方法で密閉容器61内に固定されている。圧入及び焼き嵌めの代わりに溶接でステータ2を密閉容器61に直接取り付けてもよい。
【0113】
モータ1のステータ2のコイル(例えば、
図1に示されるコイル27)には、ガラス端子63を介して電力が供給される。
【0114】
モータ1のロータ(具体的には、ロータ3のシャフト32)は、上部フレーム62c及び下部フレーム62dの各々に備えられた軸受部を介して回転自在に上部フレーム62c及び下部フレーム62dに保持されている。
【0115】
ピストン62bには、シャフト32が挿通されている。上部フレーム62c及び下部フレーム62dには、シャフト32が回転自在に挿通されている。上部フレーム62cには、冷媒の逆流を防ぐバルブ弁が設けられている。具体的には、このバルブ弁は、上部フレーム62cとマフラ62eとの間に位置している。上部フレーム62c及び下部フレーム62dは、シリンダ62aの端面を閉塞する。アキュムレータ64は、吸入パイプ65を通して冷媒をシリンダ62aに供給する。
【0116】
次に、圧縮機6の動作について説明する。アキュムレータ64から供給された冷媒は、密閉容器61に固定された吸入パイプ65を通してシリンダ62a内に入る。モータ1が回転すると、シャフト32に嵌合されたピストン62bがシリンダ62a内で回転する。これにより、シリンダ62a内で冷媒が圧縮される。
【0117】
冷媒は、マフラ62eを通り、密閉容器61内を上昇する。シリンダ62aで冷媒が圧縮され、シリンダ62aの内部圧力が一定以上に達すると、上部フレーム62cに設けられたバルブ弁が開き、吐出パイプ66から圧縮された冷媒が吐出される。このようにして、圧縮された冷媒が、吐出パイプ66を通って冷凍サイクルの高圧側へと供給される。シリンダ62aの内部圧力が一定未満になるとそのバルブ弁は閉じ、冷媒の流れが遮断される。
【0118】
実施の形態2に係る圧縮機6は、実施の形態1で説明したモータ1を有するので、圧縮機6の故障を発生しにくくすることができる。
【0119】
実施の形態3.
本発明の実施の形態2に係る圧縮機6を有する、空気調和機としての冷凍空調装置7について説明する。
図20は、実施の形態3に係る冷凍空調装置7の構成を概略的に示す図である。
【0120】
冷凍空調装置7は、例えば、冷暖房運転が可能である。
図20に示される冷媒回路図は、冷房運転が可能な空気調和機の冷媒回路図の一例である。
【0121】
実施の形態3に係る冷凍空調装置7は、室外機71と、室内機72と、室外機71及び室内機72を接続する冷媒配管73とを有する。
【0122】
室外機71は、圧縮機6と、熱交換器としての凝縮器74と、絞り装置75と、室外送風機76(第1の送風機)とを有する。凝縮器74は、圧縮機6によって圧縮された冷媒を凝縮する。絞り装置75は、凝縮器74によって凝縮された冷媒を減圧し、冷媒の流量を調節する。絞り装置75は、減圧装置とも言う。
【0123】
室内機72は、熱交換器としての蒸発器77と、室内送風機78(第2の送風機)とを有する。蒸発器77は、絞り装置75によって減圧された冷媒を蒸発させ、室内空気を冷却する。
【0124】
冷凍空調装置7における冷房運転の基本的な動作について以下に説明する。冷房運転では、冷媒は、圧縮機6によって圧縮され、凝縮器74に流入する。凝縮器74によって冷媒が凝縮され、凝縮された冷媒が絞り装置75に流入する。絞り装置75によって冷媒が減圧され、減圧された冷媒が蒸発器77に流入する。蒸発器77において冷媒は蒸発し、冷媒(具体的には、冷媒ガス)が再び室外機71の圧縮機6へ流入する。室外送風機76によって空気が凝縮器74に送られると冷媒と空気との間で熱が移動し、同様に、室内送風機78によって空気が蒸発器77に送られると冷媒と空気との間で熱が移動する。
【0125】
以上に説明した冷凍空調装置7の構成及び動作は、一例であり、上述した例に限定されない。
【0126】
実施の形態3に係る冷凍空調装置7は、実施の形態1及び2で説明した利点を有する。
【0127】
実施の形態3に係る冷凍空調装置7は圧縮機6を有するので、冷凍空調装置7の故障を発生しにくくすることができる。
【0128】
以上に説明したように、好ましい実施の形態を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0129】
以上に説明した各実施の形態における特徴及び各変形例における特徴は、互いに適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0130】
1 モータ、 2 ステータ、 3 ロータ、 6 圧縮機、 7 冷凍空調装置、 21a ヨーク部、 22a ティース部、 27 コイル、 31 ロータ鉄心、 33 永久磁石、 39 金属部材、 61 密閉容器、 62 圧縮機構、 74 凝縮器、 77 蒸発器、 103 インバータ、 223a ティース先端面。