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特許7607586リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20241220BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241220BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241220BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
C01G25/00
H01M10/0562
H01M4/62 Z
B01J2/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021564472
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020030510
(87)【国際公開番号】W WO2020223374
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】62/841,039
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】シックスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロベル,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】パル,アンスマン
(72)【発明者】
【氏名】ハディディ,カマル
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
H01M 10/0562
H01M 4/62
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末であって、
LLZO粒子を含み;
前記LLZO粒子は、プラズマ処理によって製造され;
前記LLZO粒子は、約20nm~約500nmのD50、D50÷4以上のD10、およびD50×4以下のD90を有し;
前記LLZO粒子は、約0.6より大きい球形因子(sphericity factor)を有し;
前記LLZO粒子の構造は、結晶ガーネット構造および/または非晶構造である、
LLZO粉末。
【請求項2】
前記D10は、D50÷2におおよそ等しい、請求項1に記載のLLZO粉末。
【請求項3】
前記D90は、D50×2におおよそ等しい、請求項1~2のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項4】
前記LLZO粒子は、約50nm~約500nmのD50を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項5】
前記D50は、約100nm~約400nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項6】
前記D50は、約150nm~約300nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項7】
前記LLZO粒子は、Li7-3xM1LaZr12の化学量論的組成を有し、M1は、Al、B、またはGaであり、xは、約0.1~0.3である、請求項1~6のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項8】
前記LLZO粒子は、Li7-yLaZr2-yM212の化学量論的組成を有し、M2は、TaまたはNbであり、yは、約0.4以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項9】
固体バッテリーであって、前記固体バッテリーは:
アノードと;
カソードと;
固体電解質と;
セパレータと、
を備え;
前記アノード、前記カソードまたは前記セパレータのいずれかは、LLZO粒子を含み;
前記LLZO粒子は、プラズマ処理によって製造され;
前記LLZO粒子は、約20nm~約500nmのD50、D50÷4以上のD10、およびD50×4以下のD90を有し;
前記LLZO粒子は、約0.6より大きい球形因子を有し;
前記LLZO粒子の構造は、結晶ガーネット構造である、
固体バッテリー。
【請求項10】
前記セパレータは、前記LLZO粒子を含む、請求項に記載の固体バッテリー。
【請求項11】
前記セパレータは、複合体またはセラミック非複合体セパレータである、請求項10に記載の固体バッテリー。
【請求項12】
前記LLZO粒子は、Li7-3xM1LaZr12の化学量論的組成を有し、M1は、Alであり、xは、約0.1~0.3である、請求項1~6のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【請求項13】
前記LLZO粒子は、Li7-3xM1LaZr12の化学量論的組成を有し、M1は、Bであり、xは、約0.1~0.3である、請求項1~6のいずれか一項に記載のLLZO粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
本願は、2019年4月30日に出願され、「リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末」と題された米国特許仮出願第62/841,039号の優先権を主張し、この内容は、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、いくつかの実施形態では、ドープおよび非ドープ型球状または楕円状リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末生成物、ならびにその製造方法を対象とする。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、小さい粒度、狭い粒度分布、および球状形態を有する高品質、高純度化学量論的組成のLLZO粉末の実施形態、ならびにかかる粉末の製造方法を開示する。いくつかの実施形態では、LLZO粉末は、LLZO粒子を含むことができ;LLZO粒子は、約20nm~約500nmのD50、D50÷4以上のD10、およびD50×4以下のD90を有し;LLZO粒子は、約0.6より大きい球形因子(sphericity factor
)を有し;LLZO粒子の構造は、結晶ガーネット構造および/または非晶構造である。
【0004】
いくつかの実施形態では、D10は、D50÷2におおよそ同等であり得る。いくつかの実施形態では、D90は、D50×2におおよそ同等であり得る。いくつかの実施形態では、D50は、約50nm~約500nmであり得る。いくつかの実施形態では、D50は、約100nm~約400nmであり得る。いくつかの実施形態では、D50は、約150nm~約300nmであり得る。いくつかの実施形態では、D50は、200nmにおおよそ同等であり得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、Li7-3xM1LaZr12の化学量論的組成を有し、M1は、Al、B、またはGaであり、xは、約0.1~0.3である。いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、Li7-yLaZr2-y2y12の化学量論的組成を有し、M2は、TaまたはNbであり、yは、約0.4以上である。いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、Li7-3nxM1LaZr2-myM212の化学量論的組成を有し、M1は、低原子質量金属であり、xは、約0.1~0.3であり、nは、M1の原子価に依存し得る。いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、Li7-3nxM1LaZr2-my2y12の化学量論的組成を有し、yは、約0.4以上であり、mは、M2の原子価に依存し得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、結晶であり得る。いくつかの実施形態では、LLZO粒子の結晶構造は、結晶ガーネット構造であり得る。いくつかの実施形態では、結晶ガーネット構造は、ガーネット単一結晶構造であり得る。いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、非晶であり得る。いくつかの実施形態では、LLZO粒子は、非晶および結晶構造の組合せであり得る。
【0007】
本明細書では、固体バッテリーの実施形態も開示し、固体バッテリーは、アノード;カソード;固体電解質、セパレータを備えることができ、アノード、カソードまたはセパレータのいずれかは、LLZO粒子を含み;LLZO粉末は、LLZO粒子を含むことができ;LLZO粒子は、約20nm~約500nmのD50、D50÷4以上のD10、およびD50×4以下のD90を有し;LLZO粒子は、約0.6より大きい球形因子を有
し;LLZO粒子の構造は、結晶ガーネット構造または非晶構造のいずれかである。
【0008】
いくつかの実施形態では、アノードは、LLZO粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソードは、LLZO粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータは、LLZO粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータは、複合体またはセラミック非複合体セパレータであり得る。
【0009】
本明細書では、LLZO粉末の製造方法の実施形態をさらに開示し、方法は:リチウム、ランタン、ジルコニウム、タンタル、およびドーパントを含む金属塩のLLZO供給原料を準備する工程と;LLZO供給原料を、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、および/またはマイクロ波プラズマトーチの排気ガス中に導入する工程と;LLZO供給原料を、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、および/またはマイクロ波プラズマトーチの排気ガス内で熱分解して、球状化されたLLZO粉末を形成する工程と、を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、LLZO供給原料は、固体供給原料であり得る。いくつかの実施形態では、LLZO供給原料は、液体供給原料であり得る。いくつかの実施形態では、ドーパントは、Al、B、Ga、Be、Fe、Zn、Ta、Nb、Tc、Ce、Ti、Sn、Mo、Ru、Hf、Mg、Sc、Mn、Ni、Cu、Co、Ir、Pt、およびPdの1つまたはいずれかの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、方法は、球状化LLZO粉末を焼結することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】固体-ゲル合成により製造されたLLZO粒子の一例を示す。
【0012】
図2】噴霧熱分解により製造されたLLZO粒子の一例を示す。
【0013】
図3】マイクロ波プラズマ法により製造されたLLZOナノ粒子の実施形態を示す。
【0014】
図4A】マイクロ波プラズマ処理システムの一例を示す。
図4B】マイクロ波プラズマ処理システムの一例を示す。
図4C】マイクロ波プラズマ処理システムの一例を示す。
【0015】
図5】本開示による粉末の製造方法の一例の実施形態を示す。
【0016】
図6】本開示の実施形態による粉末製造で使用することができるマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
【0017】
図7A】本開示のサイドフィードホッパーの実施形態による、粉末製造で使用することができるマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
図7B】本開示のサイドフィードホッパーの実施形態による、粉末製造で使用することができるマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、改良されたリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末および生成物の実施形態、ならびにプラズマ処理によって製造されたLLZO材料を利用するための方法、機器、およびアセンブリを開示する。固体バッテリーセルのためのイオン伝導性セラミックの有望な分類は、LLZOをベースとする。これらの材料は、10-3S/cm以下の室温イオン伝導性を有し、優れた電気化学安定性を有する。本開示の実施形
態は、セパレータ、電極、アノード、および/またはカソードなど、固体バッテリーに組み込むことができる。
【0019】
現在の固体バッテリーは、従来の非複合体セパレータまたは複合体セパレータのいずれかを備えることができる。非複合体セパレータおよび複合体セパレータの両方において、微細粒度の球状粒子形態、および狭い粒度分布は理想的であり、本開示の実施形態はかかる粒子を製造することができる。
【0020】
イオン膜セパレータの製造では、異なる方法により、粉末を薄膜に圧密化することができる。これらの方法の1つでは、粉末をイオン伝導ポリマーと混合して複合膜セパレータを製造することができる。別の例では、粉末を、焼結によりリボン状に圧密化して非複合体セパレータを製造することができる。これらのセパレータはいずれも、本明細書で有利に開示されている、粒度、粒度分布、および高化学純度を厳格に制御できるという利点がある。セラミック電解質非複合体セパレータでは、材料は、非晶または結晶のいずれかであり得る。複合体電解質セパレータでは、材料は、結晶であり得る。
【0021】
従来のLLZO製造では、通常、固体またはゾルゲル合成により粉末を製造し、次いで、寸法通りに製粉し、これはエネルギーおよび収率の観点から費用がかかり、図1に示されているように、不規則な形状の粒子および大きい粒度分布範囲を得る。
【0022】
あるいは、企業は、前駆体溶液を高温炉に供給する噴霧熱分解を使用した。しかしながら、この方法は、処理温度の均一性および処理環境の制御に限界がある。このため、図2に示されているように粒度分布が広く、相の不純物が多く、粒子の密度が低いため、セパレータ薄膜利用に適さない。
【0023】
どちらの場合も、これらの特性は、グリーン状態における不良な材料充填、不良な粒子間接触力、大きな粒度が原因である低い焼結駆動力、および不良な他粒子との粒子配位をもたらす。グリーン状態は、生成後だが焼結前の粒子として定義することができる。欠陥のないセパレータの迅速完全密度焼結は、LLZO粉末が製粉および/または噴霧熱分解により製造される場合、起こらない可能性がある。これらの方法により準備されたLLZOを用いて製造されたセパレータ薄膜は、残留空隙率および大きな粒度分布を有する可能性があり、早期故障をもたらし得る。
【0024】
本開示の実施形態は、小さいまたは狭い粒度、小さいまたは狭い粒度分布、および比較的球状形態を有するLLZO粉末に関し、これらは、固体バッテリーにとって有利な特性を有することができる。優れたLLZOを、マイクロ波プラズマ法などのプラズマ処理を用いて製造することができる。プラズマ処理を用いて処理されたLLZOは、厳密な粒度分布(例えば、100~500nm)、所望の化学量論的組成、および種々の結晶構造を有する球状粒子であってよい。マイクロ波プラズマ処理LLZOの実施形態は、図3で見ることができる。図に示されているように、処理LLZOは、高密度に焼結することができる高度に球状のナノスケール材料を有することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、粒子は、結晶構造を示すことができる。いくつかの実施形態では、結晶構造は、ガーネット結晶構造であり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、非晶であり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、結晶および非晶の組合せであり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、相純度を有することができる(または概して相純度を有する)。
【0026】
いくつかの実施形態では、粒子は、完全結晶であり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、99%(または約99%)結晶(したがって、1%の非晶)であり得る。いくつか
の実施形態では、粒子は、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%より大きい結晶性(または約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約99%結晶性)であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、球形因子は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、または0.8(または約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、もしくは約0.8より大きい)より大きくすることができる。いくつかの実施形態では、球形因子は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、または0.8未満(または約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、もしくは約0.8未満)であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、粉末の粒度は、20nm~500nm(または約20nm~約500nm)、50nm~500nm(または約50nm~約500nm)、100nm~400nm(または約100nm~約400nm)、または約150nm~約300nm(または約150nm~約300nm)に調整可能なD50であり得る。いくつかの実施形態では、粒子のD50は、200nm(または約200nm)であり得る。いくつかの実施形態では、D10は、D50÷4であり得る。いくつかの実施形態では、D10は、D50÷2であり得る。いくつかの実施形態では、D90は、D50×4であり得る。いくつかの実施形態では、D90は、D50×2であり得る。例えば、D50が200nmである場合、D50÷2は100nmであり、D50÷4は50nmであり、D50×4は800nmであり、D50×2は400nmであろう。D10は、LLZO粉末の10%がこの値未満の径を有する粒子からなる径として定義することができる。D50は、LLZO素材の50%がこの値未満の径を有する粒子からなる径として定義することができる。D90は、LLZO素材の90%がこの値未満の径を有する粒子からなる径として定義することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、粉末の化学量論的組成は、式Li7-nxM1LaZr2-my2y12(式中、nおよびmはM1およびM2の原子価に依存し得る)内で調整することができる。いくつかの実施形態では、M1およびM2は、周期表のいずれかの元素であり得る。いくつかの実施形態では、M1は、Al、B、Ga、Be、Fe、およびZnなどの低原子質量金属であり、M2は、Ta、Nb、Tc、Ce、Ti、Sn、Mo、Ru、Hf、Mg、Sc、Mn、Ni、Cu、Co、Ir、Pt、およびPdであり得る。いくつかの実施形態では、M1がAl、B、またはGaなどの低原子質量金属である場合、化学量論的組成は、式Li7-3xM1LaZr12(式中、x=0.1~0.3)に従って制御することができる。いくつかの実施形態では、M2がTaまたはNbなどの五価金属である場合、化学量論的組成は、式Li7-yLaZr2-yM212(式中、y≧0.4)に従って制御することができる。いくつかの実施形態では、Bをドーパントとして使用して、Li7-3xBxLaZr12(式中、x=0.1~0.3)の化学量論的組成を製造する。いくつかの実施形態では、粉末の化学量論的組成は、Li6.75LaZr2.5312であり得る。いくつかの実施形態では、M1ドーパントを用いて、ガーネット結晶構造を製造することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、プラズマ処理LLZOは、焼結中に材料を高密度化するより大きな駆動力を示す微細粒度を有することができ、これは、従来製造されたLLZO材料と比較して、より短い焼結時間およびより低い温度を促進する。厳密な粒度分布および球状形態は、焼結を迅速化する高比質量偏差を可能とすることができる。短い焼結時間および低い焼結温度は、プラズマ処理LLZOが常圧焼結に適するように導くことができる。
【0031】
さらに、厳密な粒度および球状形態は、焼結することができない安定な最高の発生を減らすことができる。より少ない安定細孔は、材料のエンド品質の向上をもたらすことができる。厳密な粒度分布はまた、過剰に大きい粒子および広い粒度分布をもたらす異常成長
を防止する制御された粒成長をもたらすことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、2μm以下の最大粒度を有する98.5%より大きい密度まで焼結を行うことができる。いくつかの実施形態では、焼結後の空隙率は、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満(または約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、もしくは約0.5%未満)であり得る。いくつかの実施形態では、焼結後の空隙率は、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%超(または約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、もしくは約0.5%超)であり得る。いくつかの実施形態では、プラズマ処理LLZOのイオン伝導度は、焼結後10-3S/cmであり得る。
【0033】
供給原料
いくつかの実施形態では、イオン伝導LLZO材料を製造するために使用される供給原料は、リチウム、ランタン、ジルコニウム、タンタル、およびアルミニウムの硝酸塩および酢酸塩などの関連元素の金属塩であり得る。これらの塩を、所望の化学量論的組成を得るように正しい割合で溶解、混合することができる。いくつかの実施形態では、金属塩の混合物を使用することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ランタン、リチウム、およびアルミニウムの硝酸塩をジルコニウムの酢酸塩と混合して、溶液供給原料を製造し、所望の化学量論的組成を得ることができる。いくつかの実施形態では、水酸化リチウムを硝酸リチウムとは対照的に使用して塩中のリチウム濃度を増加することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、リチウムまたはランタンが処理中に気化し、最終製品中の金属収率を低下させる可能性がある。金属塩を増量して、気化金属を補うことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、イオン伝導LLZO材料を製造するために使用される他の供給原料は、分散媒体と混合され、分散液、懸濁液、スラリー、または同様な混合物を得る担体溶液中の20~1000nmの粒度範囲の非リチウム含有セラミック粉末粒子であり得る。担体溶液は、水、アルコール、または他の非極性溶媒であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、炭酸リチウムを担体溶液中に部分的溶解し、水およびTriton Xなどの分散媒体中に化学量論的組成比の酸化ランタン、酸化ジルコニウム、および酸化アルミニウムと混合して安定な懸濁液を製造することができる。いくつかの実施形態では、分散液またはスラリーは、可溶性金属塩と混合されたセラミック酸化物粉末の組合せを含有することができる。硝酸リチウムおよび硝酸ランタンを、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウム水溶液と混合してスラリーを製造することができる。
【0038】
処理工程
前駆体製造
リチウム、ランタン、ジルコニウム、およびアルミニウムなどのドーパントの目的の金属塩を、水などの溶媒中に化学量論的組成比率で溶解することによって、または、分散液の場合、担体溶液中に粉末を分散することによって、処理を開始することができる。製造しようとするLLZO材料の所望の最終化学量論的組成を得るように各塩の量を算出することができる。いくつかの実施形態では、LiLaZr12を製造する場合、最終LLZO製品中、リチウム塩の量を7モルのリチウムを得るように算出し、ランタン塩の量を3モルのランタンを得るように算出し、ジルコニウム塩の量を2モルのジルコニウムを得るように算出するだろう。
【0039】
ドーパントの場合、式の化学量論的組成をそれに合うように調節することができる。いくつかの実施形態では、アルミニウムは、LLZO構造においてリチウムに取って代わる
。リチウムを、供給原料に添加されたアルミニウムと同等の比率で、式Li7-3xAlLaZr12(式中、x=0.1~0.3)に従って供給原料から減少することができる。0.25モルのアルミニウムをドーパントとして要望する場合、リチウム濃度を7モルから6.25モルに低減して化学量論的組成および荷電的中性を維持する。
【0040】
いくつかの実施形態では、リチウムまたはランタンを、最終製品における金属重率を増加することができる処理中に気化してよい。金属塩を増量して、気化金属を補うことができる。
【0041】
プラズマ処理
溶解塩を充分に撹拌し、次いで、例えば、0.05~0.6μmの細孔径を有するフィルター膜によりろ過して、沈降物または不溶性不純物を含まない清浄な溶液を得ることができる。得られた溶液前駆体を、マイクロ波プラズマトーチの上部に位置する液滴生成装置に供給される槽に移すことができる。前駆体槽の実施形態としては、注射器またはホッパービーカーが挙げられる。前駆体槽から、供給原料を液滴生成装置の方に供給することができる。液滴生成装置のいくつかの実施形態としては、ネブライザーおよびアトマイザが挙げられる。液滴生成装置は、おおよそ5%の範囲の径を有する粒度とおおよそ同等である溶液前駆体液滴を生成することができる。液滴を、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、および/またはマイクロ波プラズマトーチの排気ガス中に供給することができる。
【0042】
システム概要を、図4A~4Cに見ることができる。図4Aは、マイクロ波プラズマ処理システムの実践の一例の概略図である。システムは、液滴生成装置402を備える。図4Bは、液滴生成装置402の図を示す。液滴生成装置402は、バルブから出る液体を放出するために開閉するバルブを作動させる電圧を使用する圧電液滴生成器であってよい。液滴生成装置402は、制御された粒度の高度に制御された液滴404を生成する。図4Cは、液滴404の図を示す。液滴404の大きさは、最終粒度と相関する。液滴404は、プラズマチャンバー406に入る。プラズマチャンバー406は、導波管408と連結している。導波管408は、導波管408を通るマイクロ波周波数シグナルを生成するマイクロ波発生装置410と連結している。マイクロ波周波数シグナルは、プラズマを発生するプラズマチャンバー406内で気体を励起する。いくつかの実施形態では、プラズマ406は、軸対称プラズマであってよい。液滴が解離して粒子412を生成するプラズマ406に、液滴404を供給する。プラズマ、プラズマプルーム、またはプラズマ排気ガスにより、液滴404を供給してよい。粒子412を、収集ビン414内に集める。
【0043】
各液滴はマイクロ波プラズマトーチにより生成されるプラズマホットゾーン内で加熱されるので、溶媒は気化することができ、溶媒は沈降することができ、熱分解が起こることができる。酸素プラズマ下での熱分解は、リチウム、ランタン、ジルコニウム、およびドーパント選択M1およびM2からなる酸化物化合物を生成することができる。プラズマガスは酸素であり得るが、あるいは、最小酸素濃度が1%である3種以下の気体の配合物であり得る。いくつかの実施形態では、3種以下の気体の1つは、アルゴンである。
【0044】
いくつかの実施形態では、液滴生成装置は、図7Aに示されているものなど、マイクロ波プラズマトーチの側面部に設置することができる。供給原料材料を、液滴生成装置によりマイクロ波プラズマトーチの側面部から供給することができる。液滴を、いずれの方向からでもマイクロ波発生プラズマに供給することができる。
【0045】
前駆体を酸化物材料に分解し、次いで、原子が結晶状態に達するのを防止するのに充分な速度で冷却した後に非晶材料を製造することができる。高速気体流中熱分解の0.05~2秒以内に液滴をクエンチすることによって冷却速度を達成することができる。高速度
気体流温度は、-150℃~40℃の範囲であり得る。
【0046】
あるいは、プラズマ長および反応器温度が、原子がその熱力学的に好ましい結晶学的位置に拡散するのに必要な時間および温度で粒子を提供するのに充分である場合、結晶材料を製造することができる。プラズマ長および反応器温度を、電力、トーチ径、反応器長、気体流速、気体流特性、およびトーチ型などのパラメータで調節することができる。いくつかの実施形態では、より長いプラズマ長ほどより高い結晶化度を得ることができる。いくつかの実施形態では、より高温ほどより高い結晶化度を得ることができる。いくつかの実施形態では、温度は、結晶性をもたらすのに充分高く、かつ粒子を溶融も気化もしないように充分低く調節することができる。いくつかの実施形態では、温度は、900℃~1600℃であり得る。
【0047】
球状化
いくつかの実施形態では、プラズマ処理により得られた最終粒子は、球状または楕円状であり得、これらの用語は互換的に使用することができる。有利に、開示された種々の供給原料の各々と関連する重要で特定の開示を使用することによって、供給原料の全てを、球状粉末に変形することができる。
【0048】
本開示の実施形態は、実質的に球状または楕円状であるか、または著しく球状化した粒子の製造を対象とする。いくつかの実施形態では、球状、楕円状または球状化された粒子は、所定閾値より大きい真球度を有する粒子を表す。次式を用いて、粒子の体積Vと一致する体積を有する球の表面積、As,idealを算出することができ:
【数1】

次いで、当該理想化された表面積を粒子の測定された表面積As, actualと比較する:
【数2】

ことによって算出され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、粒子は、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、0.91、0.95、または0.99超(または約0.5、約0.6、約0.7、約0.75、約0.8、約0.8、約0.91、約0.95、もしくは約0.99超)の真球度(本明細書では球形因子とも呼ぶ)を有することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、0.75以上または0.91以上(または約0.75以上もしくは約0.91以上)の真球度を有することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、0.5、0.
6、0.7、0.75、0.8、0.9、0.91、0.95、または0.99未満(または約0.5、約0.6、約0.7、約0.75、約0.8、約0.8、約0.91、約0.95、もしくは約0.99未満)の真球度を有することができる。いくつかの実施形態では、粒子が前述の真球度値のいずれか以上の真球度を有する場合、粒子は、球状、楕円状または球状化されていると見做され、いくつかの実施形態では、その真球度が約0.75以上または約0.91以上である場合、粒子は、球状であると見做される。
【0050】
いくつかの実施形態では、所与の粉末内の全粒子の真球度メジアンは、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、0.91、0.95、または0.99超(または約0.5、約0.6、約0.7、約0.75、約0.8、約0.8、約0.91、約0.95、もしくは約0.99超)であり得る。いくつかの実施形態では、所与の粉末内の全粒子の真球度メジアンは、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、0.91、0.95、または0.99未満(または約0.5、約0.6、約0.7、約0.75、約0.8、約0.8、約0.91、約0.95、もしくは約0.99未満)であり得る。いくつかの実施形態では、所与の粉末について測定された粒子の全てまたは閾値パーセンテージ(下記フラクションのいずれかにより記載されている)が前述の真球度値のいずれか以上の真球度メジアンを有する場合、粉末は球状化されていると見做され、いくつかの実施形態では、粒子の全てまたは閾値パーセンテージが約0.75以上または約0.91以上の真球度メジアンを有する場合、粉末は球状化されていると見做される。
【0051】
いくつかの実施形態では、上記などの所与の真球度閾値より大きい可能性がある粉末内の粒子のフラクションは、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%超(または約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、もしくは約99%超)であり得る。いくつかの実施形態では、上記などの所与の真球度閾値より大きい可能性がある粉末内の粒子のフラクションは、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%未満(または約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、もしくは約99%未満)であり得る。
【0052】
粒度分布および真球度を、SEM、光学顕微鏡、動的光散乱法、レーザー回折法、例えば、同じ材料切片もしくはサンプルの少なくとも3画像に対して画像当たり約15~30測定から画像解析ソフトウェアを用いた寸法の手動測定、およびいずれかの他の技術などいずれかの適切な公知技術によって決定してよい。
【0053】
マイクロ波プラズマ処理
上記開示粒子/構造/粉末/前駆体を、いくつかの異なる処理手順で使用することができる。例えば、噴霧/火炎熱分解、高周波プラズマ処理、および高温噴霧乾燥機全てを使用することができる。
【0054】
場合によっては、供給原料は、液滴生成装置により供給することができる液体担体媒体中に懸濁された構成成分固体材料を含有する充分混合されたスラリーを含んでよい。液滴生成装置のいくつかの実施形態としては、ネブライザーおよびアトマイザが挙げられる。液滴生成装置は、おおよそ1μm~200μmの範囲の径を有する溶液前駆体液滴を生成することができる。液滴を、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、プラズマプルームの残光および/またはマイクロ波プラズマトーチの排気ガス中に供給することができる。各液滴はマイクロ波プラズマトーチにより生成されるプラズマホットゾーン内で加熱されるので、担体液体は取り出され、残った乾燥成分は溶融して構成成分元素を含有する溶融液滴を生成する。プラズマガスは、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素またはこれらの混合物であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、液滴生成装置は、マイクロ波プラズマトーチの側面部に設置
することができる。供給原料材料を、液滴生成装置によりマイクロ波プラズマトーチの側面部から供給することができる。液滴を、いずれの方向からでもマイクロ波発生プラズマに供給することができる。
【0056】
前駆体を所望の材料に処理し、次いで、原子が結晶状態に達するのを防止するのに充分な速度で冷却した後に非晶材料を製造することができる。高速気体流中処理の0.05~2秒以内に材料をクエンチすることによって冷却速度を達成することができる。高速度気体流温度は、-200℃~40℃の範囲であり得る。
【0057】
あるいは、プラズマ長および反応器温度が、原子がその熱力学的に好ましい結晶学的位置に拡散するのに必要な時間および温度で粒子を提供するのに充分である場合、結晶材料を製造することができる。プラズマ長および反応器温度を、電力(2~120kW)、トーチ径(0.5~4インチ)、反応器長(0.5~30フィート)、気体流速(1~20CFM)、気体流特性(層状または乱流)、およびトーチ型(層状または乱流)などのパラメータで調節することができる。適切な温度の時間が長いと、より高い結晶化度をもたらす。
【0058】
処理パラメータを最適化して、粉末初期条件に依存する最大球状化を得ることができる。各供給原料粉末特性のため、処理パラメータを特定の結果のために最適化することができる。米国特許出願公開第2018/0297122号、米国特許第8,748,785号、および米国特許第9,932,673号は、開示された方法、詳細には、マイクロ波プラズマ処理のために使用することができる特定の処理技術を開示している。したがって、米国特許出願公開第2018/0297122号、米国特許第8,748,785号、および米国特許第9,932,673号は、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられ、これらの技術の記述は、本明細書に記載されている供給原料に適用することができると見做されるべきである。
【0059】
本開示の1つの態様は、マイクロ波発生プラズマを用いた、金属、金属合金、またはセラミックの球状化方法を含む。粉末供給原料を、不活性および/または還元および/または酸化気体環境にエントレインし、マイクロ波プラズマ環境に注入する。ホットプラズマへの注入により、供給原料は球状化され、不活性ガスで充填されたチャンバー内に放出し、貯蔵する気密密封されたドラム中に導入する。大気圧、部分的真空、または大気圧より僅かに高い圧で、この方法を行うことができる。代替の実施形態では、低真空、中程度の真空、または高真空環境で、方法を行うことができる。方法は連続的に実行することができ、球状化された粒子で充満したとき、ドラムを交換する。
【0060】
球状化金属、金属合金、またはセラミックの冷却速度を、粉末のミクロ構造に戦略的に影響を与えるように制御することができる。冷却ガス流速、滞留時間、冷却ガス組成、その他などの処理パラメータの制御によって、金属、金属合金、またはセラミックのミクロ構造を制御することができる。これらの構造を形成するために要する正確な冷却速度は、ほとんどが材料内の合金元素の種類および量に依存する。
【0061】
特に、マイクロ波プラズマプルームの一貫した均一な加熱能力と組み合わせた場合の冷却速度は、最終ミクロ構造の制御を可能とする。結果として、上記方法を、金属、金属合金、またはセラミック供給原料の処理に適用することができる。
【0062】
冷却処理パラメータとしては、冷却ガス流速、ホットゾーンにおける球状化粒子の滞留時間、および冷却ガスの組成または製造方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、粒子の冷却速度またはクエンチ速度を、冷却ガスの流速の増大により増大することができる。プラズマから出る球状化粒子を過ぎて冷却ガスがより速く流れるほど、クエン
チ速度はより高くなり、それにより、特定の所望のミクロ構造が固定されるのを可能とする。
【0063】
プラズマのホットゾーン内の粒子の滞留時間を調節して、得られたミクロ構造の制御を提供することもできる。すなわち、粒子がプラズマに暴露される時間長は、粒子の溶融度を決定する(すなわち、粒子の内部の大部分または中心部と比較して溶融した粒子表面)。結果として、溶融度は、固化するのに必要な冷却の程度、したがって冷却処理パラメータに影響する。
【0064】
ミクロ構造変化は、粒子溶融の程度に応じて、粒子全体またはその一部だけに組み込むことができる。ホットゾーン内の粒子注入速度および流速のような操作変数(および層流または乱流などの条件)を調節することによって、滞留時間を調節することができる。装置の変更も使用して滞留時間を調節することができる。例えば、ホットゾーンの断面積を変更することによって、滞留時間を調節することができる。
【0065】
変更または制御することができる別の冷却処理パラメータは、冷却ガスの組成である。特定の冷却ガスは、他より高い熱伝導性である。例えば、ヘリウムは、より高い熱伝導性ガスであると考えられる。冷却ガスの熱伝導性がより高いほど、球状化粒子はより速く冷却/クエンチすることができる。冷却ガスの組成を制御(例えば、より低い熱伝導性ガスに対するより高い熱伝導性ガスの量または比率を制御)することによって、冷却速度を制御することができる。
【0066】
金属、金属合金、またはセラミックのミクロ構造を、材料の組成ならびに材料の加熱および冷却/クエンチによって決定することができる。供給原料材料の組成を選択し(または知り)、それから、マイクロ波プラズマトーチにより提供されるとき、均一な温度プロファイルを有しそれを制御するプラズマに供給原料を暴露し、次いで、冷却パラメータを選択および制御することによって、球状化粒子のミクロ構造の制御を行う。加えて、材料の相は、熱処理と同様に供給原料材料の組成(例えば、純度、合金元素の組成、その他)に依存し得る。
【0067】
1つの例示的実施形態では、不活性ガスを、粉末金属、金属合金、またはセラミック供給を取り囲んで連続的にパージして、粉末供給ホッパー内の酸素を除去する。次いで、連続的に供給される粉末を、不活性ガス内に巻き込み、脱水素または球状化粒子の組成/純度維持のためマイクロ波発生プラズマ中に供給する。一例では、マイクロ波発生プラズマを、米国特許出願公開第2013/0270261号および/または米国特許第8,748,785号、同第9,023,259号、同第9,206,085号、同第9,242,224号、および同第10,477,665号(これらの各々はその全文を参照することによって本明細書に組み入れられる)に記載されているマイクロ波プラズマトーチを用いて発生させてよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、マイクロ波発生プラズマ内の4,000~8,000Kの一様な温度プロファイルに、粒子を暴露する。いくつかの実施形態では、マイクロ波発生プラズマ内の3,000~8,000Kの一様な温度プロファイルに、粒子を暴露する。プラズマトーチ内で、粉末粒子を迅速に加熱し溶融する。いくつかの実施形態では、液体対流は、溶融粒子全体にわたるH拡散を加速し、粒子から離れる液体金属水素化物の表面に水素(H)を連続的に導き、固体法と比較して、各粒子が処理環境内に存在しなければならない時間を低減する。処理内の粒子がアルゴンなどの不活性ガス内に巻き込まれるとき、概して、粒子間接触は最小であり、粒子凝集の発生を大いに低減する。したがって、処理後篩分けの必要性を大いに低減または除き、得られた粒度分布は、インプット供給材料の粒度分布と部分的に同じであるだろう。例示的実施形態では、供給材料の粒度分布
を、最終製品において維持する。
【0069】
プラズマ内で、溶融粒子を、液体表面張力により本質的に球状化する。マイクロ波発生プラズマは実質的に一様な温度プロファイルを示すので、粒子の90%超の球状化を行うことができるだろう(例えば、91%、93%、95%、97%、99%、100%)。プラズマを出た後、粒子を、収集ビンに入る前に冷却する。収集ビンが充満した場合、処理を止めることなく、これを取り除き、必要に応じて空のビンに交換する。
【0070】
図5は、本開示の実施形態による球状粉末の例示的製造方法(250)を示すフローチャートである。この実施形態では、方法(250)は、プラズマトーチ(255)への供給材料の導入により始まる。いくつかの実施形態では、プラズマトーチは、マイクロ波発生プラズマトーチまたはRFプラズマトーチである。プラズマトーチ内では、供給材料を、プラズマに暴露し、上記のように材料を溶融させる(260)。溶融材料を、上記のように表面張力によって球状化する(260b)。プラズマから出た後、製品は冷却し固化し、球形に固定し、それから、収集される(265)。
【0071】
いくつかの実施形態では、環境および/またはビンのシーリングの要件を注意深く制御する。すなわち、粉末の汚染または潜在的な酸化を防止するため、環境および/またはビンの密封は用途に合わせる。1つの実施形態では、ビンは真空下にある。1つの実施形態では、本技術により生成された粉末で充満された後、ビンを気密密封する。1つの実施形態では、ビンを、例えば、アルゴンなどの不活性ガスで充満し戻す。処理の連続性が理由で、一旦、ビンが充満されていると、プラズマ処理を止めることなく、これを取り出し、必要に応じて、空のビンに交換する。
【0072】
本開示による方法および処理を使用して、球状粉末などの粉末を製造することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、マイクロ波プラズマ処理などの本明細書で述べられている処理を、特定の元素が溶融中の供給原料の流出しないように防止および/または流出を最小限にするように制御することができ、これにより所望の組成/ミクロ構造を維持することができる。
【0074】
図6は、本開示の実施形態による粉末製造で使用することができる例示的マイクロ波プラズマトーチを示す。上記のように、供給材料9、10を、マイクロ波発生プラズマ11を持続するマイクロ波プラズマトーチ3に導入することができる。一例の実施形態では、エントレインメントガスフローおよびシースフロー(下矢印)を、入口5を通じて注入して、マイクロ波照射源1によるプラズマ11の点火前にプラズマトーチ内のフロー条件を作り出してよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、エントレインメントフローおよびシースフローは、軸対称および層状の両方であり、他の実施形態では、ガスフローは渦巻いている。供給材料9を、マイクロ波プラズマトーチに軸方向に導入し、これらは、プラズマの方向に材料を導くガスフローに巻き込まれる。上記のように、ガスフローは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、その他などの周期表の貴ガスの列からなり得る。マイクロ波発生プラズマ内で、材料を球状化するために、供給材料を溶融する。入口5を使用して、プラズマ11の方向に軸12に沿って粒子9、10を巻き込み、加速するように処理ガスを導入することができる。第一に、粒子9を、プラズマトーチ内の環状間隙を通じて作られた中心部層状ガスフロー(上部矢印セット)を用いたエントレインメントにより加速する。第二層流(下部矢印セット)を、第二環状間隙を通じて作られ、誘電性トーチ3の内壁に対してシースする層流を提供して、プラズマ11からの熱放射による溶融から保護する。例示的実施形態では、層
流は、粒子9,10を軸12に出来るだけ密接した経路に沿ってプラズマ11の方向に誘導し、プラズマ内の実質的に一様な温度に暴露する。
【0076】
いくつかの実施形態では、適切なフロー条件は、プラズマ付着が起こり得るプラズマトーチ3の内壁に粒子10が到達しないように提供される。粒子9、10を、マイクロ波プラズマ11の方向にガスフローによって案内され、それぞれ、均一に熱処理される。粒子パラメータだけでなくマイクロ波発生プラズマの様々なパラメータを、所望の結果を得るために調節してよい。これらのパラメータは、マイクロ波電力、供給材料サイズ、供給材料挿入速度、ガス流速、プラズマ温度、滞留時間および冷却速度を含み得る。いくつかの実施形態では、冷却速度またはクエンチ速度は、プラズマ11を出るとき10+3℃/秒以上である。上記のように、この特定の実施形態では、ガスフローは層流であり;しかしながら、代替の実施形態では、渦流または乱流を使用して供給材料をプラズマの方向に誘導してよい。
【0077】
図7A~Bは、図6の実施形態に示されている上部供給ホッパーではなく側面部供給ホッパーを含み、したがって、下流供給を可能とする例示的マイクロ波プラズマトーチを図示する。したがって、この実践では、マイクロ波プラズマトーチの「プルーム」または「排気ガス」における処理のためのマイクロ波プラズマトーチ印加電極後に供給原料を注入する。したがって、マイクロ波プラズマトーチのプラズマをプラズマトーチの出口端で係合し、図6に関して述べられた上部供給(または下流供給)とは対照的に、供給原料の下流供給を可能とする。ホットゾーンライナーの壁に材料堆積しないように無制限にホットゾーンは保護されるので、この下流供給は、トーチの寿命を有利に延ばすことができる。さらに、これは、温度レベルおよび滞留時間の正確なターゲティングにより粉末の最適な溶融に適した温度においてプラズマプルーム下流を係合することを可能とする。例えば、マイクロ波粉末、ガスフロー、およびプラズマプルームを含むクエンチ槽内の圧を用いたプルームの長さを目盛で示すことができる。
【0078】
概して、下流球状化方法は、米国特許出願公開第2018/0297122号に記載されているなどの環状トーチ、または米国特許第8,748,785(B2)号および米国特許第9,932,673(B2)号に記載されている渦状トーチである安定なプラズマプルームを確立する2つの主要なハードウェア構成を利用することができる。図7Aおよび図7Bの両方は、環状トーチまたは渦状トーチのいずれかを用いて実践することができる方法の実施形態を示す。プラズマトーチの出口においてプラズマプルームと密結合された供給システムを使用して、軸対照的に粉末を供給して処理の均一性を保つ。
【0079】
他の供給構成は、プラズマプルームを取り囲む1つまたはいくつかの個々の供給ノズルを含む可能性がある。供給原料粉末は、どの方向からのポイントにおいてもプラズマに入ることができ、プラズマ内のポイントにプラズマの周囲360°のどの方向からも供給することができる。供給原料粉末は、特定の温度が測定されたプラズマプルームの長さに沿った特定の位置において、粒子の溶融に充分であると推定される滞留時間、プラズマに入ることができる。溶融粒子は、プラズマから出て密封チャンバーへ入り、クエンチされ、次いで、収集される。
【0080】
供給材料314を、マイクロ波プラズマトーチ302に導入することができる。供給材料314をマイクロ波プラズマトーチ302、プルーム、または排気ガスに供給する前に、ホッパー306を、供給材料314を貯蔵するために使用することができる。供給材料314を、プラズマトーチ302、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、または55°の長さ方向へのいずれもの角度で注入することができる。いくつかの実態形態では、供給原料を、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、または55°より大きい角度で注入することができる。いくつかの実施形態では
、供給原料を、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、または55°未満の角度で注入することができる。代替の実施形態では、供給原料を、プラズマトーチの縦軸に沿って注入することができる。
【0081】
マイクロ波照射を、導波管304を通ってプラズマトーチに導くことができる。供給材料314をプラズマチャンバー310に供給し、プラズマトーチ302により発生されたプラズマと接触する。プラズマ、プラズマプルーム、またはプラズマ排気ガスと接触する場合、供給材料は溶融する。まだプラズマチャンバー310内にある間、容器312に集められる前に、供給材料314は冷却し固化する。あるいは、供給材料314は、まだ溶融相にある間にプラズマチャンバー310を出て、プラズマチャンバーの外側で冷却し固化することができる。いくつかの実施形態では、クエンチングチャンバーを使用してよく、陽圧を使用してもよく、使用しなくてもよい。図6から別々に説明されているが、図7A~7Bの実施形態は、図6の実施形態と同様な図および条件を使用すると理解される。
【0082】
いくつかの実施形態では、下流注入方法の実践は、下流の渦流、延長された球状化、またはクエンチングを使用してよい。下流の渦流は、管の壁から粉末を保持するようにプラズマトーチから下流へ誘導することができる追加の渦流成分を表す。延長された球状化は、粉末により長い滞留時間を与える延長されたプラズマチャンバーを表す。いくつかの実施形態では、これは、下流の渦流、延長された球状化、またはクエンチングを使用しなくてもよい。いくつかの実施形態では、これは、下流の渦流、延長された球状化、またはクエンチングの1つを使用してもよい。いくつかの実施形態では、これは、下流の渦流、延長された球状化、またはクエンチングの2つを使用してもよい。
【0083】
下方からの粉末の注入は、マイクロ波領域におけるプラズマ管の短縮または除去をもたらすかもしれない。コーティングが頑丈すぎる場合、マイクロ波エネルギーは、プラズマホットゾーンに入るのを保護され、プラズマ結合を減少する。時々、プラズマは、消光し不安定になることさえあり得る。プラズマ強度の低下は、粉末の球状化レベルの低下を意味する。したがって、マイクロ波領域下の供給原料の供給およびプラズマトーチの出口におけるプラズマプルームの係合により、この領域におけるコーティングを除き、プラズマ結合へのマイクロ波粉末はプロセスを通して一定のままであり、充分な球状化を可能とする。
【0084】
したがって、有利に、下流アプローチは、コーティングの問題が減少するので長期間実行する方法を可能とし得る。さらに、下流アプローチは、コーティングを最小化する必要がないので、より多くの粉末を注入する能力を可能とする。
【0085】
前述の記載から、本発明のLLZO粉末および製造方法を開示することは高く評価されるだろう。いくつかの成分、技術および態様をある程度詳細に記載したが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において上記特定の設計、構成、および方法において多くの変更をすることができることは明らかである。
【0086】
別々の実践との関連で本開示に記載されている特定の特徴を、単一の実践において組み合わせて行うこともできる。逆に、単一の実践との関連で記載されている様々な特徴を、別々にまたはいずれかの適切なサブコンビネーションで複数の実践で行うこともできる。さらに、特徴は特定の組合せで作用するように上記に記載されているが、クレームされた組合せからの1つ以上の特徴は、場合によっては、組合せから切り取ることができ、組合せはいずれかのサブコンビネーションまたはいずれかのサブコンビネーションの変形型としてクレームされ得る。
【0087】
さらに、方法は、図面に図示または特定の順序で本明細書に記載されている場合がある
が、望ましい結果を得るために、かかる方法を示されている特定の順序でも連続的な順序でも行う必要はなく、全ての方法を行う必要はない。図示も記載もされていない他の方法を、実施例の方法およびプロセスに組み入れることができる。例えば、1つ以上の追加の方法を、記載されている方法のいずれかの前、後、同時にまたは間に行うことができる。さらに、方法を、他の実践において再編成または順序づけてもよい。さらに、上記実践における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実践におけるかかる分離を必要としないと理解されるべきであり、概して、記載されている構成要素およびシステムを、単一の製品に一緒に統合または複数の製品にパッケージすることができると理解されるべきである。加えて、他の実践は、本開示の範囲内である。
【0088】
「できる(can)」、「できた(could)」、「であってよい(might)」または「であってよい(may)」などの条件語は、特に指定されない限り、または使用されるとき文脈上他の意味に理解されない限り、概して、特定の実施形態は特定の特徴、要素、および/または工程を含むかまたは含まないことを伝えることを目的とする。したがって、かかる条件語は、概して、特徴、要素、および/または工程が1つ以上の実施形態のために何としても必要であると意味するものではない。
【0089】
フレーズ「X、Y、およびZのうち少なくとも1つ」などの接続語は、特に指定されない限り、概して、項目、用語、その他はX、Y、またはZのいずれかであり得ることを伝えるために使用されるときの前後関係で他の意味に理解される。したがって、かかる接続語は、概して、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、およびZの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味するものではない。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「およそ(approximately)」、「約(about)」、「概して(generally)」、および「実質的に(substantially)」など、本明細書で使用される程度の言語は、それでもやはり所望の機能を行うかまたは所望の結果を得る指定された値、量、または指数に近接する値、量、または指数を表す。例えば、用語「およそ(approximately)」、「約(about)」、「概して(generally)」、および「実質的に(substantially)」は、指定された量の10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、および0.01%以下である量を表し得る。指定された量が0(例えば、なし、有しない)である場合、上記範囲は特定の範囲であり得、値の特定の%内ではない。例えば、指定された量の10重量/体積%以下内、5重量/体積%以下内、1重量/体積%以下内、0.1重量/体積%以下内、および0.01重量/体積%以下内である。
【0091】
様々な実施形態との関連においていずれかの特定の特徴、態様、方法、特質、特徴、質、性状、要素、または同様のものの本明細書の開示を、本明細書に記載されている全ての他の実施形態において使用することができる。加えて、本明細書に記載されているいずれもの方法を、記載されている工程を行うために適したいずれものデバイスを用いて実行してよいと認識されるだろう。
【0092】
いくつかの実施形態およびその変化形は詳細に記載されているが、これらを用いた他の変更法および方法が、当業者には明白であろう。したがって、様々な応用、変更、材料、および置換は、本明細書における特有および本発明の開示またはクレームの範囲から逸脱しない均等物から行うことができると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B