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特許76075963-(4-(ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸誘導体の新規結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】3-(4-(ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸誘導体の新規結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/72 20060101AFI20241220BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20241220BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241220BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241220BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
C07D317/72 CSP
A61K31/357
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021571309
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2020007018
(87)【国際公開番号】W WO2020242252
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064586
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513000366
【氏名又は名称】ヒュンダイ ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キュ・ファン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・キョン・チェ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534582(JP,A)
【文献】特表2016-518366(JP,A)
【文献】特表2003-519698(JP,A)
【文献】特表2014-521744(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181847(WO,A1)
【文献】特開2017-149747(JP,A)
【文献】川口洋子ら,生活工学研究 2002,2002年07月15日,第4巻第2号,pp.310-317
【文献】医薬審発第568号,日本,2001年05月01日
【文献】有機合成化学協会誌 2007,2007年06月07日,pp.907-913
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D317/72
A61K 31/357
A61P 3/04
A61P 3/06
A61P 3/08- 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の化合物のI型結晶であって、
【化1】
前記I型結晶が、4.61±0.2、5.49±0.2、6.84±0.2、11.74±0.2、12.05±0.2、13.74±0.2、16.50±0.2、16.94±0.2、18.45±0.2、19.11±0.2、20.13±0.2、20.42±0.2、20.87±0.2、21.57±0.2、23.04±0.2、および25.02±0.2から選ばれる2[θ]値で4個以上の回折ピークを有するX線粉末回折パターンにより特定されることを特徴とする、化学式1のI型結晶。
【請求項2】
前記X線粉末回折パターンは、4.61±0.2、6.84±0.2、11.74±0.2、16.50±0.2、16.94±0.2、20.42±0.2、20.87±0.2から選ばれる2[θ]値で回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の化学式1のI型結晶。
【請求項3】
下記の表に列挙されたピーク位置とピーク位置が一致するX線粉末回折パターンにより特定されることを特徴とする請求項1に記載の化学式1のI型結晶:
【表1】
【請求項4】
(3S)-3-(4-(3-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デク-7-エン-8-イル)ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸とL-リシン塩をメタノールに溶かし、イソプロピルアセテートを加えた後、反応生成物から化学式1の化合物のI型結晶を収得することを含む、請求項1に記載の化学式1のI型結晶の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の化学式1のI型結晶と、薬剤学的に許容可能な担体と、を含む、代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記代謝性疾患は、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、耐糖能異常、インスリン耐性、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂質異常症およびX症候群からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項5に記載の代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記化学式1の3-(4-(ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸誘導体の新規結晶形に関する。
【0002】
【化1】
【背景技術】
【0003】
多様な結晶形または無定形は、吸湿性、圧搾に対する挙動、保管途中の安定性およびミリングされた固体の流動性などの多様な固体状態の物理的特性を示すことができる。このような性質は、さらに、特定固体状態の商業的生産のための活性製薬物質としての適合性に影響を与える。例えば、流動性は、物質が製薬製品に加工される途中、取り扱いの容易性に影響を与える。粉末化された化合物の粒子がお互い容易に流動しない場合、製剤専門家は、その事実を錠剤またはカプセルの製剤を開発するのに考慮しなければならないわけであり、これにより、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプンまたは三塩基性リン酸カルシウムなどの滑剤の使用が必要とされ得る。
【0004】
同じ薬物の異なる結晶形態または無定形は、また、溶解速度および生体利用可能性などの製薬上の重要な性質において実質的な差異を有し得る。溶解速度は、シロップ、エリキシルおよびその他液体医薬を調製するために考慮されるだけでなく、治療の結果を異ならせ得る。例えば、患者の胃液のうち活性成分の溶解速度は、それが経口投与された活性成分が患者の血流に到達する速度に上限を付与するので、治療の結果を異ならせることになる。
【0005】
一方、化学式1の化合物、(3S)-3-(4-(3-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デク-7-エン-8-イル)ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸L-リシン塩は、国際特許公開公報WO2014-171762号によって開示された化合物であり、遊離脂肪酸受容体1(Free fatty acid receptor 1(FFAR1)/G-protein coupled receptor(GPR40))を活性化させて、細胞内カルシウム濃度を増加させ、優れた血糖降下効果を示す物質である。
【0006】
本発明者らは、化学式1の化合物の製品開発過程で、化学式1の化合物の結晶形に関する研究を持続的に行った。その結果、本発明者らは、化学式1の化合物の結晶形として結晶形I型と結晶形II型が存在し、結晶形I型は、結晶形II型または無定形と比較して、物理化学的に優れた特性を有することを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、化学式1の化合物の無定形および結晶形II型に比べて物理化学的に優れた特性を有する化学式1の化合物の結晶形I型を提供することにある。
【0008】
本発明は、また、前記化学式1の化合物の結晶形I型の製造方法を提供しようとする。
【0009】
本発明は、また、化学式1の化合物の結晶形I型を有効成分として含む薬学的組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、化学式1の化合物の無定形および結晶形II型に比べて物理化学的に優れた特性を有する、化学式1の化合物の結晶形I型を提供する。
【0011】
粉末X線回折(PXRD)分析によれば、結晶形I型および結晶形II型は、異なる結晶構造を有する。
【0012】
本発明の一具体例によれば、化学式1の化合物の結晶形I型は、4.61±0.2、5.49±0.2、6.84±0.2、11.74±0.2、12.05±0.2、13.74±0.2、16.50±0.2、16.94±0.2、18.45±0.2、19.11±0.2、20.13±0.2、20.42±0.2、20.87±0.2、21.57±0.2、23.04±0.2、および25.02±0.2から選ばれる2[θ]値で4個以上、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の回折ピークを有するX線粉末回折パターンにより特定されることを特徴とする。
【0013】
特に、前記X線粉末回折パターンは、4.61±0.2、6.84±0.2、11.74±0.2、16.50±0.2、16.94±0.2、20.42±0.2、20.87±0.2から選ばれる2[θ]値で回折ピークを有することを特徴とする。
【0014】
より具体的に、化学式1の化合物の結晶形I型は、下記の表1に列挙されたピーク位置とピーク位置が一致するX線粉末回折パターンにより特定されることを特徴とする。
【0015】
【表1】
【0016】
一方、化学式1の化合物の結晶形II型は、4.71±0.2、5.47±0.2、7.17±0.2、8.21±0.2、10.56±0.2、10.99±0.2、11.23±0.2、13.75±0.2、14.20±0.2、15.01±0.2、15.19±0.2、15.74±0.2、16.24±0.2、17.32±0.2、18.37±0.2、19.33±0.2、20.54±0.2、20.86±0.2、21.20±0.2、21.49±0.2、22.05±0.2、22.76±0.2、23.26±0.2、23.64±0.2、24.94±0.2、25.80±0.2、27.13±0.2から選ばれる2[θ]値で4個以上、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の回折ピークを有するX線粉末回折パターンにより特定されることを特徴とする。
【0017】
特に、前記X線粉末回折パターンは、5.47±0.2、8.21±0.2、10.99±0.2、13.75±0.2、16.24±0.2、19.33±0.2、22.05±0.2、23.26±0.2、および24.94±0.2から選ばれる2[θ]値で回折ピークを有することを特徴とする。
【0018】
より具体的に、化学式1の化合物の結晶形II型は、下記の表2に列挙されたピーク位置とピーク位置が一致するX線粉末回折パターンにより特定されることを特徴とする。
【0019】
【表2】
【0020】
本発明は、また、(3S)-3-(4-(3-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デク-7-エン-8-イル)ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸とL-リシン塩をメタノールに溶かし、イソプロピルアセテートを加えた後、反応生成物から化学式1の化合物の結晶形I型を収得することを含む、化学式1の結晶形I型の製造方法を提供する。本発明は、また、前記化学式1の化合物の結晶形と、薬剤学的に許容可能な担体とを含む代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0021】
前記化学式1の化合物は、GPR40酵素を活性化させることが知られている。GPR40は、膵臓のインスリン分泌細胞で主に発現するGタンパク質にカップリングされた受容体(GPCR)であり、GPR40発現プロファイルは、肥満および糖尿病を含む多様な代謝性疾患の治療に対して潜在的有用性を有する。
【0022】
本発明による化学式1の化合物は、GPR40タンパク質を活性化させる効果に優れていて、これによるインスリン分泌促進効果に優れ、他の薬物との併用投与が可能であり、生体内でのGPR40タンパク質を活性化させる有効効果に非常に優れているので、これを有効成分として含有する組成物は、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、耐糖能異常、インスリン耐性、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂質異常症、X症候群などの代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物として有用に使用できる。
【0023】
本発明による化学式1の化合物は、臨床投与時に経口および非経口の様々な剤形で投与することができ、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使って製造される。
【0024】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の本発明の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)またはゼラチンなどを混ぜて製造される。また、単純な賦形剤の他にマグネシウムステアレート、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0025】
非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、エチルオレエートなどの注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用できる。
【0026】
また、本発明の化学式1の化合物の人体に対する効果的な投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態および疾患程度によって様々であってよく、一般的に、約0.001~100mg/kg/日であり、好ましくは、0.01~35mg/kg/日である。体重が70kgの成人患者を基準とするとき、一般的に、0.07~7000mg/日であり、好ましくは、0.7~2500mg/日であり、医師または薬剤師の判断によって一定の時間間隔で1日に1回~数回に分割投与することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による化学式1の化合物の結晶形I型は、無定形や結晶形II型に比べて熱安定性、静電気誘発能、圧縮率などにおいて格別に優れた物理化学的特性を示し、製剤化および長期間の保管に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】化学式1の化合物の結晶形I型のX線粉末回折パターンを示す図である。
図2】化学式1の化合物の結晶形II型のX線粉末回折パターンを示す図である。
図3】化学式1の化合物の無定形のX線粉末回折パターンを示す図である。
図4】化学式1の化合物の結晶形I型の温度と時間の変化による熱流の差を示す図である。
図5】化学式1の化合物の結晶形I型の温度変化による物質の物理的性質または反応生成物を温度または時間の関数を使って測定して物質の特性を示す図である。
図6】化学式1の化合物の結晶形II型の温度と時間の変化による熱流の差を示す図である。
図7】化学式1の化合物の結晶形II型の温度変化による物質の物理的性質または反応生成物を温度または時間の関数を使って測定して物質の特性を示す図である。
図8】化学式1の化合物の無定形の温度と時間の変化による熱流の差を示す図である。
図9】化学式1の化合物の無定形の温度変化による物質の物理的性質または反応生成物を温度または時間の関数を使って測定して物質の特性を示す図である。
図10】熱苛酷条件での化学式1の化合物の結晶形I型、II型、無定形の熱安定性と関連した性状変化を示す写真である。
図11】熱苛酷安定性試験の前(下段、黒色)と後(上段、橙色)における結晶形IのXRDパターン変化を示すグラフである。
図12】熱苛酷安定性試験前における結晶形I(下段、黒色)と結晶形II(上段、橙色)のXRDパターンの差異を示すグラフである。
図13】熱苛酷安定性試験の前(下段、黒色)と後(上段、橙色)における結晶形IIのXRDパターン変化を示すグラフである。
図14】熱苛酷安定性試験前(下段、黒色)における結晶形I型のXRDパターンと熱苛酷安定性試験後(上段、橙色)における結晶形IIのXRDパターンの差異を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になるだろう。しかしながら、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現されるものであり、単に本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0030】
[実施例]
実施例1:化学式1の化合物の結晶形I型の製造
(3S)-3-(4-(3-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デク-7-エン-8-イル)ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸とL-リシンをメタノールに入れ、撹拌した。60℃で30分間撹拌後、徐々に冷却した。35℃でイソプロピルアセテートを小分けして添加した。固体生成後、30分間撹拌後、イソプロピルアセテートをさらに添加した。25℃で1時間撹拌後、ろ過した。これを乾燥して、化学式1の化合物の結晶形を収得した。
【0031】
粉末X線回折分析結果、図1のXRDパターンを有することを確認し、これを結晶形I型と称することとした。
【0032】
XRD(X-Ray Diffractometer、X線回折分析装置)条件
1)モデル:D8 Advance(Bruker)
2)電流/電圧/2 Theta range/Rate:40Ma/40KV/3-45/6deg/min*7
【0033】
実施例2:化学式1の化合物の結晶形II型の製造
(3S)-3-(4-(3-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デク-7-エン-8-イル)ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸L-リシン塩をイソプロピルアルコールと精製水に溶かした。メンブレンフィルターでろ過して冷却した。生成された固体を掻き出した後、ろ過した。これを乾燥して、化学式1の化合物の結晶形を収得した。
【0034】
粉末X線回折分析結果、図2のXRDパターンを有することを確認し、これを結晶形II型と称することとした。
【0035】
実施例3:化学式1の化合物の無定形の製造
(3S)-3-(4-(3-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デク-7-エン-8-イル)ベンジルオキシ)フェニル)ヘキス-4-イノイック酸L-リシン塩をメタノールとイソプロピルアルコールで60℃で加熱して溶かす。メンブレンフィルターでろ過して冷却した。生成された固体をかいた後、ろ過した。これを乾燥して、化学式1の化合物の粉末を収得した。粉末X線回折分析結果、図3のXRDパターンを有することを確認し、これを無定形と称することとした。
【0036】
実験例1:化学式1の化合物の結晶形I型のDSC分析
実施例1で得られた結晶形I型を温度変調示差走査熱量計(MDSC)で分析した。MDSC分析結果を図4に示した。
【0037】
MDSC(Auto Modulated Differential Scanning Calorimeter、温度変調示差走査熱量計)条件
1)Model:Q-1000(TA)
2)温度範囲:40℃~210℃
3)速度:20℃/min
【0038】
実験例2:化学式1の化合物の結晶形I型のTGA/SDT分析
実施例1で得られた結晶形I型を熱分析装置(TGA/SDT)で分析した。
【0039】
TGA/SDT(Thermal Analyzer、熱分析装置)条件
1)モデル:TGA Q5000 IR/SDT Q600(TA)
2)温度範囲:40℃~400℃
3)速度:20℃/min
【0040】
TGA/SDT分析結果を図5に示した。
【0041】
実験例3:化学式1の化合物の結晶形II型のDSC分析
実施例2で得られた結晶形II型を温度変調示差走査熱量計(MDSC)で分析した。
【0042】
MDSC(Auto Modulated Differential Scanning Calorimeter、温度変調示差走査熱量計)条件
1)モデル:Q-1000(TA)
2)温度範囲:40℃~210℃
3)速度:20℃/min
【0043】
MDSC分析結果を図6に示した。
【0044】
実験例4:化学式1の化合物の結晶形II型のTGA/SDT分析
実施例2で得られた結晶形II型を熱分析装置(TGA/SDT)で分析した。
【0045】
TGA/SDT(Thermal Analyzer、熱分析装置)条件
1)モデル:TGA Q5000 IR/SDT Q600(TA)
2)温度範囲:40℃~400℃
3)速度:20℃/min
【0046】
TGA/SDT分析結果を図7に示した。
【0047】
実験例5:化学式1の化合物の無定形のDSC分析
実施例3で得られた無定形を温度変調示差走査熱量計(MDSC)で分析した。
【0048】
MDSC(Auto Modulated Differential Scanning Calorimeter、温度変調示差走査熱量計)条件
1)Model:Q-1000(TA)
2)温度範囲:40℃~210℃
3)速度:20℃/min
【0049】
MDSC分析結果を図8に示した。
【0050】
実験例6:化学式1の化合物の無定形のTGA/SDT分析
実施例3で得られた無定形を熱分析装置(TGA/SDT)で分析した。
【0051】
TGA/SDT(Thermal Analyzer、熱分析装置)条件
1)モデル:TGA Q5000 IR/SDT Q600(TA)
2)温度範囲:40℃~400℃
3)速度:20℃/min
【0052】
TGA/SDT分析結果を図9に示した。
【0053】
実験例7:熱安定性試験
化学式1の化合物の結晶形I型、結晶形II型、無定形サンプルに対して熱安定性試験を実施した。
【0054】
各サンプルを20mLバイアルに0.3gずつ入れ(各サンプル当たり0.3g*3eaずつ準備)、ふたを閉じた後、80℃のオーブンに放置し、6日、14日、1ヶ月後の時点でサンプルを取り出して、熱苛酷条件の前と後における性状、純度、およびXRDパターン変化を調査した。
【0055】
純度は、HPLCを用いて下記の条件で測定した。
カラム:YMC-Pack Pro C18、5um、4.6×150mm
カラム温度:35℃
流速:1.0mL/min
注入量:5uL
波長:220nm
移動相(Mobile Phase)A:0.1%TFA in HO/MeOH=60/40
移動相(Mobile Phase)B:MeOH/0.1%TFA in ACN=60/40
グラジェント:
【化2】
希釈液(Diluent):HO/ACN=80/20
実行時間(Run time):40min
サンプル濃度:0.7mg/mL
【0056】
その結果、図10から分かるように、結晶形I型およびII型は、熱苛酷試験1ヶ月の時点でも性状が大きく変わらなかった反面、無定形のサンプルは、いずれも、熱苛酷試験6日の時点ですでに黄色に変化して、熱安定性が大きく劣ることが示された。
【0057】
同様に、表3から分かるように、熱苛酷試験条件1ヶ月経過時点で、無定形は、純度が明確に劣る反面、結晶形I型およびII型の純度は、高いレベルに維持されることを確認できた。
【0058】
【表3】
【0059】
図11は、熱苛酷安定性試験の前(下段、黒色)と後(上段、橙色)における結晶形IのXRDパターン変化を示すグラフである。
【0060】
図12は、熱苛酷安定性試験前における結晶形I(下段、黒色)と結晶形II(上段、橙色)のXRDパターン差異を示すグラフである。
【0061】
図13は、熱苛酷安定性試験の前(下段、黒色)と後(上段、橙色)における結晶形IIのXRDパターン変化を示すグラフである。
【0062】
図14は、熱苛酷安定性試験前(下段、黒色)における結晶形I型のXRDパターンと熱苛酷安定性試験の後(上段、橙色)における結晶形IIのXRDパターン差異を比較するグラフである。
【0063】
結晶形I型は、XRDパターンピーク上の大きい変化が見られない反面、結晶形II型の場合、特定のピークが移動することが示された。すなわち、熱により結晶形II型が結晶形I型に転換されることが示された。
【0064】
実験例8:圧縮率試験
静電気誘発がひどい薬物は、ハンドリングが難しく、製剤化時に圧縮して打錠しにくいので、薬物の含有量が均一な製剤を具現することが非常に困難である。これより、結晶形I型、II型および無定形3種の静電気誘発能および流動性と関連してこれらの薬物を含む各製剤の圧縮率を調べてみた。
【0065】
カール指数(Carr’s Index)は、製剤の圧縮率を示す指標として使用され、これは、製剤化時の便宜性、すなわち静電気誘発能および流動性と、薬物含有量の均一性の確保と関連している。
【0066】
カール指数(Carr’s Index)(CI)は、次のように計算する。
CI=100×(1-BD/TD)
BD:かさ密度(bulk density;BD)、TD:タップ密度(tapped density;TD)
【0067】
ハウスナー比(Hausner ratio)(Hr)も、粉末または粒子状の薬物の流動性に関連した指標である。
Hausner ratio(Hr)は、次のように計算する。
Hr=TD/BD
【0068】
試験結果、結晶形I型、II型、および無定形のかさ密度およびタップ密度を得て表4に整理し、これを通じて、Carr’s Index(CI)およびHausner ratio(Hr)を求め、表5の基準に基づいて表6にCarr’s Index(CI)およびHausner ratio(Hr)、流動性に関する評価結果を記載した。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
結晶形I型とII型の熱苛酷安定性試験において差異が大きくなかったが、圧縮率試験においては、結晶形II型は、静電気誘発が非常にひどいため、打錠のためのダイに充填することさえも難しくなり、非常に不良な圧縮率試験結果を示した。
【0073】
実験例9:保管安定性試験
化学式1の化合物の結晶形I型、結晶形II型、無定形を製剤化する場合、安定性を確認するために、各サンプル50mgを微結晶セルロース149mg、硬質無水ケイ酸1mgと混合したパウダーを茶色のガラス瓶に入れ、60℃、75%RH条件の安定性チャンバーに放置し、2週、4週、8週後の時点でサンプルを取り出して、時間経過による化学式1の化合物の純度を確認した。
【0074】
保管条件別の保管期間到来時、各サンプルのうち化学式1の化合物35mg該当量を取って、50mL容量フラスコに入れ、適量の希釈液で溶かした後、標線をつけた。この液をガラス遠心分離チューブに入れ、3,000rpm、5℃で10分間遠心分離をした。ガラスピペットを使ってサンプルを取って、HPLCバイアルに入れて分析した。
【0075】
その結果、表7から分かるように、結晶形I型、結晶形II型、無定形の順に化学式1の化合物の純度が減少して、結晶形I型の化合物が最も安定していることを確認した。
【0076】
【表7】
【0077】
結論的に、結晶形I型が、無定形や結晶形II型に比べて熱安定性、静電気誘発能、圧縮率、保管安定性などにおいて格別に優れた物理化学的特性を有することが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14