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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】呼吸用プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021571968
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020065641
(87)【国際公開番号】W WO2020245367
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】1950676-5
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ボリンダー ナタニエル
(72)【発明者】
【氏名】ラッペ ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ロヤス マリア
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510303(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107261286(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喉頭切除した人または気管切開した人のストーマに使用するための呼吸用プロテクタであって、前記呼吸用プロテクタは、ハウジング(1)、熱・湿気交換器(HME)(3)、及び閉鎖部材(6)、を有しており、
前記ハウジング(1)は、少なくとも1つの入口(7)および少なくとも1つの出口(9)、並びに前記HME(3)を取り囲む閉鎖バルブシート(2)を備えており、
前記HME(3)は、前記ハウジング(1)内に配置され、前記閉鎖バルブシート(2)によって取り囲まれており
前記閉鎖部材(6)は、
前記ハウジング(1)の遠位開放端において、前記ハウジング(1)の中心軸に対して横断面に配置され、前記HME(3)の遠位に配置されており、
少なくとも1つの入口(8)を備えており、かつ
前記閉鎖バルブシート(2)に対してシールするように適合されている閉鎖バルブ(10)を備えており、
前記呼吸用プロテクタは、前記閉鎖部材(6)が前記ハウジング(1)の内側に向かって押されたときに、呼吸状態から話す状態になるように構成されており、
前記呼吸状態では、空気の流れが、
前記人の周囲から前記ハウジング(1)の入り口(7)、前記閉鎖バルブシート(2)と前記閉鎖バルブ(10)との間隙、及び前記HME(3)を通過し、さらに前記少なくとも1つの出口(9)を通過して、また、
前記人の周囲から前記閉鎖部材(6)の入り口(8)、及び前記HME(3)を通過し、さらに前記少なくとも1つの出口(9)を通過して、
前記人の気管に入るように構成されており、かつ
前記話す状態では、物体を前記閉鎖部材(6)に押し付けることよって、
前記閉鎖部材(6)が前記ハウジング(1)の内側に押し下げられて、前記閉鎖バルブシート(2)と前記閉鎖バルブ(10)とがシールされて前記ハウジング(1)の少なくとも一つの入口(7)と前記ハウジングの少なくとも一つの出口(9)との間の連通が閉じられると共に、
前記閉鎖部材(6)に設けられた少なくとも1つの入口(8)と前記ハウジングの少なくとも一つの出口(9)との間の連通が、前記物体によって閉鎖されるように構成されている、
呼吸用プロテクタ。
【請求項2】
前記閉鎖部材(6)の少なくとも1つの入口(8)は、前記閉鎖部材(6)の中央に配置されている、請求項1に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項3】
前記閉鎖部材(6)の少なくとも1つの入口(8)は、少なくとも1つの分割バー(4)を備えている、請求項1または2に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項4】
前記閉鎖部材(6)の少なくとも1つの入口(8)は、複数の分割バー(4)を備えている、請求項3に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項5】
前記閉鎖部材(6)の少なくとも1つの入口(8)が複数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項6】
前記閉鎖部材(6)は、前記閉鎖部材(6)の少なくとも1つの入口(8)を横に取り囲む開口部インターフェース構造(5)を備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項7】
前記開口部インターフェース構造(5)は、ガイドリムである、請求項6に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項8】
前記開口部インターフェース構造(5)は、凹部である、請求項6に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項9】
前記閉鎖部材(6)は、非可撓性材料で作られている、請求項1~8のいずれか1項に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項10】
前記HME(3)はHMEフォームを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の呼吸用プロテクタ。
【請求項11】
前記HMEフォームは、閉鎖部材に対する圧力がなくなったときに、前記呼吸用プロテクタが前記話す状態から前記呼吸状態に戻ることができるように、前記閉鎖部材(6)のリターンスプリングとして機能するように構成されている、請求項10に記載の呼吸用プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、喉頭切除した人または気管切開した人のストーマに使用するための呼吸用プロテクタの分野に関し、前記呼吸用プロテクタは、熱・湿気交換器(HME)を含み、前記呼吸用プロテクタは、複数の入口および少なくとも1つの出口を有し、使用中の空気の流れが、前記人の周囲から前記入口を通り、前記HMEを通過して前記出口に至り、前記人の気管に入るようになっている。
【背景技術】
【0002】
気管切開は、首の前面部を通して気管に開口部を形成する外科的処置である。この開口部は、気管切開と呼ばれる。気管切開用チューブは、気管切開用チューブと気管との間に配置することができる。気管切開は、例えば、神経系または気道に関して、傷害または障害の結果としてのような機能不全があり、その機能不全が十分な空気を得ることができない結果となる場合に行われる。肺活量の低下や呼吸器系の治療が必要な場合にも気管切開を行うことがある。
【0003】
喉頭切除術とは、癌の治療などに用いられる外科手術で、喉頭や声帯を切除して気管切開部を形成するものである。この手術の結果、気管は咽頭に接続されなくなり、気管切開術に迂回されることになる。この処置の後、正常な鼻腔機能は不可能である。呼吸が正常に機能している被験者では、鼻と鼻腔の粘膜は、吸い込んだ空気を調整する重要な機能を果たしている。複雑に入り組んだ通路と豊富な血液供給により、吸い込んだ空気の温度と湿度を高め、これらのパラメータと肺の表面のパラメータとの差を最小限に抑えることができる。通常、大気中に放出される前の呼気からもいくらかの熱と湿気が取り込まれる。また、鼻腔の粘膜は、吸い込んだ空気から微粒子、汚染物質、微生物などの粒子状物質を取り除く役割を果たしており、繊毛の働きで粘膜や粒子を肺から運び出している。
【0004】
喉頭切除術を受けた場合、事実上、吸入された空気はすべて気管支を経由して肺に入り、鼻は事実上、吸入プロセスに関与しない。呼気は気管切開部を通過するが、人工声帯を装着した場合は気管切開部を閉鎖し、呼気を人工声帯を介して咽頭や口に送り込み、患者が発声できるようにすることもできる。呼気の流れは、気管切開バルブによって制御されることが望ましい。このような状況では、バルブは呼吸中は開いたままであるが、空気の流れを変えるために閉じることができ、呼気の流量をわずかに増やすことができる。
【0005】
この点で、吸入空気の湿潤化と、前記吸入空気中の小粒子および細菌性物質の除去を可能にするフィルタ装置および呼吸用プロテクタが開発されている。これは鼻の機能に似ている。しかし、このようなデバイスの製造にはいくつかの複雑な問題がある。第1に、このようなデバイスの使用者は、デバイスの表面積などのサイズをできるだけ小さくしながら、良好な保湿効果と除去効果を求めている。第2に、保湿効果と除去効果は、表面積が大きく、かつデバイス上に大きな抵抗を生じさせないことが求められている。これらの基準は矛盾しているが、これは観察力のある読者はすでに認めている。
【0006】
特許文献1には、ハウジングと親水性フィルタリングディスクとを備えた人工鼻が記載されており、ハウジングの窓を開閉するために上下に動かすことができるキャップをさらに備えている。特許文献1の人工鼻は、開いた位置から閉じた位置に積極的に移動させる必要があり、抗菌効果は非常に限られている。
【0007】
特許文献2には、喉頭切除した人または気管切開した人のストーマに使用するための呼吸用プロテクタが記載されている。この呼吸用プロテクタは、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口との間の連通を閉じるように作動させることができる閉鎖部材を備えている。前記閉鎖部材は、可撓性カバーの部材であるか、または、可撓性カバーに取り付けられている。可撓性カバーの弾力性により、可撓性カバーは、内側に押し下げられて、閉鎖リブなどの閉鎖面と閉鎖的に適合することができる。可撓性カバーが閉鎖リブに押し付けられると、閉鎖効果が得られる。特許文献2に記載されている呼吸用プロテクタには多くの利点があるが、より低い呼吸抵抗とHMEの改善された加湿が必要な場面が存在する可能性がある。そのような場合の例として、運動時がある。
【0008】
特許文献3には、フィルタハウジングと、第1の開口部と第2の開口部とを備える呼吸用プロテクタが記載されている。第1の開口部は、第2の開口部の上流側に位置する。交換フィルタは、フィルタハウジング内に配置されてもよく、バルブシートは、第1の開口部の周りに延びてもよい。バルブ部材は、閉じた位置でバルブシートに係合するように配置されてもよい。しかしながら、この呼吸用プロテクタでは、上述のように良好な保湿効果を得ることができても、時には、より低い呼吸抵抗とHMEの改善された加湿とが必要とされる。
【0009】
したがって、改良された呼吸用プロテクタが有利であり、特に、呼吸用プロテクタのハウジング内に設けられた空間で優れた保湿効果を可能にし、かつ小型の呼吸用プロテクタを提供することができる呼吸用プロテクタが有利である。さらに、例えば運動中に呼吸用プロテクタを快適に使用することができるように、前記呼吸用プロテクタに対する抵抗が低い呼吸用プロテクタを提供することが有利である。また、患者がスピーチ中などに弱い力で呼吸用プロテクタを閉じる可能性を提供する呼吸用プロテクタ、および開いた状態から閉じた状態に容易に移動できる呼吸用プロテクタを提供することが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5,487,382号
【文献】米国特許第8,505,537号
【文献】米国特許第8,991,394号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、上述の特定された欠陥の1つ以上を軽減、緩和または解消し、言及された種類の改良された呼吸用プロテクタを提供することを目的とする。この目的のために、呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を有するハウジングを有し、熱・湿気交換器(HME)が前記ハウジングによって取り囲まれている。呼吸用プロテクタは、ハウジングの中心軸に対して横断面に、かつ前記HMEの遠位に配置された閉鎖部材を備えている。閉鎖部材は、閉鎖位置においてハウジングと閉鎖的に係合するように適合され、閉鎖部材は、少なくとも1つの入口を備えている。
【0012】
本発明の有利な特徴は、従属請求項に定義されている。
【0013】
本発明が可能であるこれらおよび他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して、本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態による呼吸用プロテクタの斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による呼吸用プロテクタの断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による呼吸用プロテクタの斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による呼吸用プロテクタの斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による呼吸用プロテクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、呼吸用プロテクタに適用可能な本発明の一実施形態に焦点を当てており、特に、喉頭切除された人または気管切開された人のストーマで使用するための呼吸用プロテクタであって、前記ストーマが前記人の気管と連通している呼吸用プロテクタに焦点を当てている。しかし、本発明はこの用途に限定されるものではなく、空気の流れを湿らせ、前記空気の流れを閉じる可能性を提供することを望む他の技術分野にも適用可能である。
【0016】
図1および図2に示されている本発明の一実施形態では、呼吸用プロテクタが提供される。この呼吸用プロテクタは、喉頭切除した人または気管切開した人のストーマに使用するためのものである。前記呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口7および少なくとも1つの出口9を有するハウジング1を備える。少なくとも1つの入口7は、前記ハウジング1の上部、すなわち気管ストーマの遠位部に位置し、少なくとも1つの出口9は、前記ハウジング1の下部、すなわち気管ストーマの近位部に位置する。前記呼吸用プロテクタは、熱・湿気交換器(HME)3をさらに備える。HMEは、前記ハウジング1内に配置され、ハウジング1によって囲まれている。前記ハウジング1がHME3を囲むことにより、ユーザの首がHME3と接触することが防止されるので、HME3の汚染を最小限に抑えることが保証され得る。
【0017】
図1に示すように、呼吸用プロテクタは、閉鎖部材6をさらに備える。閉鎖部材6は、ハウジング1の一体部分ではなく、ハウジング1から分離されている。したがって、閉鎖部材6は、別個の閉鎖部材6である。閉鎖部材6は、ハウジング1の中心軸に対する横断面に配置されている。これは、ハウジング1の開口部に配置されていて、この開口部は、前記ハウジング1の遠位端、すなわち、前記人の首から最も遠い端部に位置している。閉鎖部材6は、前記HME3の遠位に配置されている。したがって、HME3は、ハウジング1内で、閉鎖部材6のすぐ下に配置されている。
【0018】
閉鎖部材6は、周囲の空気と気管との間の連通を遮断することができるように、閉じた位置で前記ハウジング1と閉鎖的に係合するように適合されている。図1および図2にさらに示されているように、閉鎖部材6は、少なくとも1つの入口8を備える。本開示は、このようにして、使用中の空気の流れが、周囲から、呼吸用プロテクタが配置されているかまたはその上にあるストーマを通って、前記人の気管に通過する呼吸用プロテクタを提供する。空気の流れは、ハウジング1の前記複数の入口7、8および閉鎖部材6を経由し、HME3を通り、ハウジング1の少なくとも1つの出口9を通って、人の気管に通過する。
【0019】
閉鎖部材6に少なくとも1つの入口8を設けることで、呼吸用プロテクタを通してより大きな空気の流れが実現される。空気が前記少なくとも1つの入口8を通っても呼吸用プロテクタに流入する可能性があるので、前記HME3によって提供される加湿は増加する。空気がより多くの入口を通って流れる可能性があるので、呼吸用プロテクタにはより大きな入口表面積が与えられ、空気の流れが閉鎖部材6の下に設けられたHME3の部分も通過するので、HME3は加湿のためによりよく利用される。さらに、閉鎖部材6を通る空気の流れの経路が追加されたことにより、呼吸用プロテクタを通る空気の流れの抵抗が減少し、呼吸用プロテクタの全体的な機能が向上する。呼吸用プロテクタを通る空気の流れに対する抵抗が高くなっても、通常は問題にならないが、運動時には、抵抗が高くなることは負担になり得る。提案された呼吸用プロテクタは、このようにして、激しい呼吸の間、ユーザにとってより許容されるようになる。このように、開示された呼吸用プロテクタは、運動時や、より重い呼吸が予想される場面での使用に有利であり得る。
【0020】
少なくとも1つの入口8は、前記閉鎖部材6の中央に配置されることが好ましい。少なくとも1つの入口8を中央に設けることにより、入口7、8と少なくとも1つの出口9との間の連通を閉じることが容易になり、閉鎖部材6に設けられた少なくとも1つの入口8を同時に遮断しながら、閉鎖部材6を作動させることが容易になり得るからである。したがって、周囲の空気と人の気管との間の空気の流れは、より直感的で容易に停止する。さらに、少なくとも1つの入口8を前記閉鎖部材6の中央に設けることで、使用者が閉鎖部材6の正しい位置で閉鎖力を加えることも容易になり得る。
【0021】
1つの実施形態では、図3に示されているように、前記少なくとも1つの入口8は、少なくとも1つの分割バー4を備えている。別の実施形態では、図4に示されているように、前記少なくとも1つの入口8は、複数の分割バー4を備えている。図4では、互いに交差する2本の分割バー4を備えた入口8を図示しているが、より多数の分割バー4を実現し得る。入口8に1本以上の分割バー4を設けることで、ユーザが呼吸用プロテクタを閉じるために閉鎖部材6を押しているときに、ユーザの指がHME3に触れて汚してしまうことを防止する。したがって、HME3は、指による過度の汚染から緩和され得る。また、1つ以上の分割バー4は、閉鎖部材6とHME3との間のプレテンションに起因して発生するかもしれない、HME3の閉鎖部材6を介した突出をさらに防止する。
【0022】
別の実施形態では、呼吸用プロテクタの閉鎖部材6は、複数の入口8を備え得る。これは、図5に示されている。入口8は、任意のサイズおよび任意の数であり得て、それらは、閉鎖部材6の利用可能な領域によって、および指で覆われるのに適した領域によってのみ制限される。入口8のサイズおよび数は、いくつかの実施形態では、呼吸用プロテクタの製造に関して選択し得る。したがって、本開示による閉鎖部材6は、一般的な製造条件に容易に適合させ得る。理解されるように、これらの複数の入口8の各々は、1つまたは複数の分割バー4を備えてもよい。
【0023】
閉鎖部材6は、いくつかの方法で呼吸用プロテクタに固定され得る。1つの実施形態では、閉鎖部材6を呼吸用プロテクタに固定するために、閉鎖部材6はHMEに接着されている。別の、より好ましい実施形態では、閉鎖部材6は、閉鎖部材6の閉鎖バルブ10から延びる突出部によって呼吸用プロテクタに取り付けられる。突出部は、閉鎖バルブ10から半径方向に延び、ハウジング1に設けられた少なくとも1つの入口7と係合する。したがって、突出部は、少なくとも1つの入口7の中に延び、それにより、閉鎖部材6の遠位方向の軸方向の動きを止め、閉鎖部材6を所定の位置に維持する。
【0024】
図1図5の各々に示されているように、閉鎖部材6は、開口部インターフェース構造5をさらに備えている。開口部インターフェース構造5は、閉鎖部材6の前記少なくとも1つの入口8を横に取り囲んでいる。開口部インターフェース構造5は、呼吸用プロテクタの閉鎖中に、指の正しい位置決めを容易にする。したがって、閉鎖部材6に開口部インターフェース構造5を有する呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口8がどこに位置するかを指が感じることができるので、閉鎖が容易である。さらに、開口部インターフェース構造5は、ユーザが閉鎖部材6の正しい位置で閉鎖力を加えることを容易にし得る。1つの実施形態では、開口部インターフェース構造5は、閉鎖部材6から上方に延びるガイドリムである。別の実施形態では、開口部インターフェース構造5は、閉鎖部材6の凹部である。
【0025】
閉鎖部材6は、好ましくは、閉鎖部材6が変形することを防止し、代わりに、閉鎖部材6が加えられた力に瞬時に反応することを可能にする、硬くて非可撓性の材料で作られる。この加えられた力によって、閉鎖部材6を作動させて、前記少なくとも1つの入口7と前記少なくとも1つの出口9との間の連通を閉じることができる。したがって、小さな力を加えることによって、呼吸用プロテクタを閉じることが可能となり得る。また、ハウジング1の少なくとも上部もまた、好ましくは、ハウジング1の上部が変形するのを防ぐ、硬くて柔軟性のない材料で作られている。これにより、呼吸用プロテクタの内部構造を保護し得て、さらに、HME3に不必要な圧力がかかることを防止し得る。
【0026】
図2に示されているように、前記呼吸用プロテクタのハウジング1は、閉鎖バルブシート2をさらに備える。バルブシート2は、HME3を取り囲んでいる。閉鎖バルブシート2を補完するために、閉鎖部材6には閉鎖バルブ10が設けられている。閉鎖バルブ10は、閉鎖部材6から近位方向、すなわちユーザに向かう方向に延びている。閉鎖バルブ10は、閉鎖部材6の横に配置され、したがって、閉鎖部材6の下側の外側領域からハウジング1内に下がる方向に延びている。閉鎖バルブ10を有する閉鎖部材6の構造により、閉鎖部材6が近位に、すなわち呼吸用プロテクタの使用者に向かって押されたときに、閉鎖バルブ10を内側に押し下げて、ハウジング1の閉鎖バルブシート2と閉じ合わせることができるようになっている。閉鎖バルブ10は、このように、閉鎖バルブシート2に対してシールするように適合されている。閉鎖バルブ10が閉鎖バルブシート2に対してシールすると、少なくとも1つの入口7と少なくとも1つの出口9との間の連通が閉じられる。したがって、少なくとも1つの入口7が閉鎖バルブ10によって塞がれ、または覆われ、少なくとも1つの入口7を通って少なくとも1つの出口9に向かって空気が通過することができないような閉鎖効果が得られる。
【0027】
閉鎖部材6は、閉鎖部材6に設けられた少なくとも1つの入口8の上に指を置き、近位方向に、すなわちユーザに向かう方向に力を加えることによって作動する。近位方向への力は、次いで閉鎖バルブ10を、それが閉鎖バルブシート2に到達するまで、同じ近位方向に動かす。同時に、近位方向に力を加える指は、閉鎖部材6に設けられた少なくとも1つの入口8を覆い、これにより、少なくとも1つの入口8と少なくとも1つの出口9との間の連通も閉じる。したがって、指で閉鎖部材6を作動させることによって閉鎖動作を実現することが可能であり得て、その指は、同時に閉鎖部材6の少なくとも1つの入口8を塞ぎ、または覆う。呼吸用プロテクタの閉鎖は、ユーザが話すことを意図するときに、ユーザによって起動される。
【0028】
先に開示された実施形態は、コンパクトな設計の呼吸用プロテクタを提供する。よりコンパクトなデザインは、より多くのユーザ集団が一般的にこれらを受け入れるので、有利であり得る。さらに、提案された実施形態は、患者が、スピーチの間などに、比較的弱い力で呼吸用プロテクタを閉じる可能性を提供する。外部からアクセス可能な閉鎖部材6を有する、開示された呼吸用プロテクタの構造は、明確かつ明確に定義された閉鎖を提供する。呼吸用プロテクタの構造は、呼吸用プロテクタの閉鎖状態、すなわち、開状態または閉状態の触覚的な確認を提供する。
【0029】
HME3の材料は、その中に流路を含み、流路がランダムに配向された開放構造を有することが望ましい。材料は、紙、発泡プラスチック、異なる繊維で作られた詰め物、またはそれらの組み合わせを含んでよい。吸湿性物質を含浸させたものであってもよい。さらに、材料の穴または隙間が特別な方向性を持たないと有利であり、その結果、意図された偏向を達成するために、呼吸用の空気が多くの方向で材料を容易に通過し得る。
【0030】
1つの有利な実施形態では、HME3の材料は、HMEフォームであり得る。そのような実施形態では、HME3は、さらに、閉鎖部材6のリターンスプリングとして機能し得る。HMEフォームの弾力性により、圧力がなくなると、閉鎖部材6は呼吸用プロテクタの開放状態に戻ることができる。したがって、ユーザは、閉鎖部材6を押して、前記閉鎖バルブ10で少なくとも1つの入口7を塞ぐ、または覆い得る。次いで、ユーザは、ユーザが話したいときに、呼吸用プロテクタを話すモード/状態に切り換え、ユーザが話すのをやめて呼吸用プロテクタを呼吸モード/状態に戻したいときに、閉鎖部材6への圧力を単に解除し得る。
【0031】
上述した実施形態では、喉頭切除した人または気管切開した人のストーマで使用するための呼吸用プロテクタを説明した。この呼吸用プロテクタは、ハウジング1と、閉鎖部材6と、HME3とを備える。ハウジング1は、少なくとも1つの入口7と、少なくとも1つの出口9とを備える。閉鎖部材6は、ハウジング1の中心軸に対する横断面かつ前記HME3の遠位に配置され、閉鎖位置で前記ハウジング1と閉鎖的に係合するように適合されている。前記閉鎖部材6は、少なくとも1つの入口8を備え、使用中に空気の流れが、前記人の周囲から前記入口7、8を通って前記少なくとも1つの出口9に至り、前記人の気管に入るようになっている。既に開示されている特定の入口および出口を単に分割することによって、入口および出口を増加した量に分割し得ることは、具体的に開示されていなくても、当業者には明らかである。前記HME3は、使用中の前記空気の流れが前記入口7、8から前記出口9を通過する際に、前記空気の流れが前記HME3を通過するように、前記ハウジング1によって囲われている。
【0032】
本開示の一態様によれば、喉頭切除した人または気管切開した人のストーマを介した呼吸中に、空気を加湿するための方法が提供される。この方法は、周囲からの空気を、呼吸用プロテクタを介して前記人の気管に通すことを含む。呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口7と少なくとも1つの出口9とを備えたハウジング1を含む。呼吸用プロテクタは、HME3と、少なくとも1つの入口8が設けられた閉鎖部材6とをさらに含む。空気は、前記人の周囲を通り、前記複数の入口7、8から前記少なくとも1つの出口9まで通って、前記人の気管に入る。この方法は、空気がHME3を通過するときに、空気を保湿することをさらに含む。
【0033】
別の態様では、本開示は、喉頭切除した人または気管切開した人のストーマで使用するための呼吸用プロテクタを閉じるための方法を提供する。呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口7と少なくとも1つの出口9とを有するハウジング1を有する。呼吸用プロテクタは、HME3をさらに含む。呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口8を有する閉鎖部材6をさらに含み、使用中の空気の流れが、前記人の周囲から前記入口7、8を通過し、前記HME3を通過して前記少なくとも1つの出口9に至り、前記人の気管に入るようになっている。呼吸用プロテクタのハウジング1には、前記HME3を取り囲む閉鎖バルブシート2が設けられている。閉鎖部材6は、閉鎖バルブシート2に対してシールするように適合された閉鎖バルブ10を備えている。この方法は、閉鎖バルブ10がハウジング1に設けられた少なくとも1つの入口7を覆う、または塞ぐように、前記閉鎖部材6を前記ハウジング1に押し付けることによって、前記呼吸用プロテクタを閉じることを含む。これは、前記閉鎖部材6を前記ハウジング1に押し付けている物体、例えば指が、前記閉鎖部材6に設けられた少なくとも1つの入口8を覆う、または塞ぐのと同時に行われる。
【0034】
本発明の実施形態の要素およびコンポーネントは、任意の適切な方法で物理的、機能的、および論理的に実施され得る。実際に、機能は、単一のユニットにおいて、複数のユニットにおいて、または他の機能ユニットの一部として実施され得る。このように、本発明は、単一のユニットに実施されてもよいし、異なるユニット間で物理的および機能的に分散されてもよい。
【0035】
以上、具体的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は、本明細書に記載された特定の形態に限定されることを意図したものではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限され、これらの添付の特許請求の範囲の範囲内で、上記の特定のもの以外の他の実施形態も同様に可能である。
【0036】
特許請求の範囲において、「含む(comprises/comprising)」という用語は、他の要素またはステップの存在を排除するものではない。さらに、個別に記載されているが、複数の手段、要素、または方法のステップは、例えば、単一のユニットまたはプロセッサによって実施されてもよい。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれていても、これらはおそらく有利に組み合わされる可能性があり、異なる請求項に含まれていることは、特徴の組み合わせが実現可能でないことおよび/または有利でないことを意味するものではない。さらに、単数形の記述は複数形を排除するものではない。「1つ(a)」、「1つ(an)」、「第1(first)」、「第2(second)」などの用語は、複数を排除するものではない。特許請求の範囲の参照符号は、単に明確な例として提供されており、いかなる方法でも特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
本開示は以下の態様を含んでいる:
《態様1》
喉頭切除した人または気管切開した人のストーマに使用するための呼吸用プロテクタであって、前記呼吸用プロテクタは、
少なくとも1つの入口(7)および少なくとも1つの出口(9)を有するハウジング(1)と、
熱・湿気交換器、HME(3)であって、前記HME(3)は、前記ハウジング(1)内に配置され、ハウジング(1)によって取り囲まれている、HME(3)と、
前記ハウジング(1)の遠位開放端において、ハウジング(1)の中心軸に対して横断面に配置され、前記HME(3)の遠位に配置された閉鎖部材(6)であって、前記閉鎖部材(6)は、閉鎖位置において前記ハウジング(1)と閉鎖的に係合するように適合され、前記閉鎖部材(6)は、少なくとも1つの入口(8)を備え、使用時の空気の流れが、前記人の周囲から前記入口(7、8)を通過し、前記HME(3)を通過し、さらに前記少なくとも1つの出口(9)を通過して、前記人の気管に入るようになっている、閉鎖部材(6)と、
を含む、呼吸用プロテクタ。
《態様2》
前記少なくとも1つの入口(8)は、前記閉鎖部材(6)の中央に配置されている、態様1に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様3》
前記閉鎖部材(6)の前記少なくとも1つの入口(8)は、少なくとも1つの分割バー(4)を備えている、態様1または2に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様4》
前記閉鎖部材(6)の前記少なくとも1つの入口(8)は、複数の分割バー(4)を備えている、態様3に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様5》
前記閉鎖部材(6)は、複数の入口(8)を備えている、態様1~4のいずれか1つに記載の呼吸用プロテクタ。
《態様6》
前記閉鎖部材(6)は、前記少なくとも1つの入口(8)を横に取り囲む開口部インターフェース構造(5)を備えている、態様1~5のいずれか1つに記載の呼吸用プロテクタ。
《態様7》
前記開口部インターフェース構造(5)は、ガイドリムである、態様6に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様8》
前記開口部インターフェース構造(5)は、凹部である、態様6に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様9》
前記閉鎖部材(6)は、非可撓性材料で作られている、態様1~8のいずれか1つに記載の呼吸用プロテクタ。
《態様10》
前記ハウジング(1)は、前記HME(3)を取り囲む閉鎖バルブシート(2)を備え、前記閉鎖部材(6)は、閉鎖バルブ(10)を備え、前記閉鎖バルブ(10)は、前記閉鎖バルブシート(2)に対してシールするように適合されている、態様1~9のいずれか1つに記載の呼吸用プロテクタ。
《態様11》
起動中の前記閉鎖部材(6)は、前記少なくとも1つの入口(7)と前記少なくとも1つの出口(9)との間の連通を閉じるように配置されている、態様10に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様12》
前記HME(3)はHMEフォームを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の呼吸用プロテクタ。
《態様13》
前記HMEフォームは、前記閉鎖部材(6)のリターンスプリングとして機能するように構成されている、態様12に記載の呼吸用プロテクタ。
《態様14》
喉頭切除した人または気管切開した人のストーマを介した呼吸中に、空気を加湿するための方法であって、前記方法は、
周囲からの空気を呼吸用プロテクタを通して前記人の気管へと通過させることであって、前記呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口(7)および少なくとも1つの出口(9)を備えたハウジング(1)と、少なくとも1つの入口(8)を備えた閉鎖部材(6)と、熱・湿気交換器、HME(3)とを含む、こと、および、
前記HME(3)に空気を通すときに、前記空気を湿らせること、
を含む、方法。
《態様15》
喉頭切除した人または気管切開した人のストーマに使用するための呼吸用プロテクタを閉じる方法であって、前記呼吸用プロテクタは、少なくとも1つの入口(7)および少なくとも1つの出口(9)を有するハウジング(1)と、熱・湿気交換器、HME(3)と、少なくとも1つの入口(8)を備える閉鎖部材(6)であって、使用時の空気の流れが、前記人の周囲から前記入口(7、8)を通過し、前記HME(3)を通過し、さらに前記少なくとも1つの出口(9)を通過して、前記人の気管に入るようになっている、閉鎖部材(6)と、を有し、前記ハウジング(1)は、前記HME(3)を取り囲む閉鎖バルブシート(2)を備え、前記閉鎖部材(6)は、閉鎖バルブ(10)を備え、前記閉鎖バルブ(10)は、前記閉鎖バルブシート(2)に対してシールするように適合されており、
前記閉鎖部材(6)を前記ハウジング(1)に押し付けることによって前記呼吸用プロテクタを閉じることであって、前記閉鎖バルブ(10)が前記ハウジング(1)に設けられた少なくとも1つの入口(7)を塞ぐ一方で、前記閉鎖部材(6)を前記ハウジング(1)に押し付ける物体が、前記閉鎖部材(6)に設けられた少なくとも1つの入口(8)を同時に塞ぐ、こと、
を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5