(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20241220BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20241220BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241220BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20241220BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
C09J7/30
C09J7/38
H01B1/22 B
H01B5/16
(21)【出願番号】P 2022021048
(22)【出願日】2022-02-15
(62)【分割の表示】P 2017085744の分割
【原出願日】2017-04-24
【審査請求日】2022-03-11
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2016092903
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】佐藤 吉信
【審判官】小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-15205(JP,A)
【文献】特開2009-76431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性樹脂バインダに導電粒子が配置された異方性導電フィルムであって、
導電粒子が間隔をあけて一列に並んだ導電粒子列が並列してなる導電粒子の繰り返しユニットが繰り返し配置されており、
前記繰り返しユニットは、異方性導電フィルムを平面視したときに、縦方向及び横方向のそれぞれに繰り返されており、
正3角形を隙間無く並べた場合の正3角形の頂点と繰り返しユニットを構成する導電粒子が重なる配置となり、
繰り返し配置された繰り返しユニットの間に導電粒子が配置されていない上記正3角形の領域が一つ以上存在することで、縦方向及び横方向において個々の繰り返しユニットが互いに離間して存在して
おり、
繰り返しユニットにおいて並列している3列の導電粒子列において、中央の導電粒子列を構成する導電粒子数が両側の導電粒子列を構成する導電粒子数より多いか少ない異方性導電フィルム。
【請求項2】
絶縁性樹脂バインダに導電粒子が配置された異方性導電フィルムであって、
導電粒子が間隔をあけて一列に並んだ導電粒子列が並列してなる導電粒子の繰り返しユニットが繰り返し配置されており、
正3角形を隙間無く並べた場合の正3角形の頂点と繰り返しユニットを構成する導電粒子が重なる配置となり、
繰り返し配置された繰り返しユニットの間に導電粒子が配置されていない上記正3角形の領域が一つ以上存在し、
並列した導電粒子列における導電粒子の個数が増減し、その増減が繰り返されることで繰り返しユニットが形成されており、導電粒子の個数の増減は、3種以上の個数の組み合わせであ
り、
繰り返しユニットにおいて並列している3列の導電粒子列において、中央の導電粒子列を構成する導電粒子数が両側の導電粒子列を構成する導電粒子数より多いか少ない異方性導電フィルム。
【請求項3】
繰り返しユニットが異方性導電フィルムの全面にわたって配置されている請求項1又は2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
繰り返しユニットにおいて並列している導電粒子列を構成する導電粒子数が漸次異なる請求項1~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
繰り返しユニットの外形をなす導電粒子の中心を順次結んで形成される多角形の各辺が異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向と斜交している請求項1~
4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
繰り返しユニットの外形をなす導電粒子の中心を順次結んで形成される多角形が異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向と平行な辺を有する請求項1~
4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
繰り返しユニットにおいて、導電粒子列同士が平行である請求項1~
6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
繰り返しユニットと共に単独の導電粒子が繰り返し配置されている請求項1~
7のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
繰り返しユニット内において、隣接する導電粒子同士の最近接距離が導電粒子の平均粒子径の0.5倍以上である請求項1~
8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
繰り返しユニットを構成する導電粒子が、6方格子の各格子点に導電粒子が存在する配置から、所定の格子点の導電粒子を規則的に抜いた配置である請求項1~
9のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
更に絶縁性接着層が積層されている請求項1~
10のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
該縦方向又は横方向もしくは両方向で、繰り返しユニット間の最短距離は、繰り返しユニット内における隣接導電粒子間距離よりも長い請求項1~
11のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続されている接続構造体。
【請求項14】
第1電子部品と第2電子部品を異方性導電フィルムを介して熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品の接続構造体を製造する方法であって、異方性導電フィルムとして、請求項1~
12のいずれかに記載の異方性導電フィルムを使用する接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性樹脂バインダに導電粒子を分散させた異方性導電フィルムが、ICチップ等の電子部品を配線基板等に実装する際に広く使用されている。異方性導電フィルムにおいては、電子部品の高密度実装に伴うバンプの狭ピッチ化により、バンプにおける導電粒子の捕捉性を高め、かつ隣り合うバンプ間のショートを回避することが強く求められている。
【0003】
このような要請に対し、異方性導電フィルムにおける導電粒子の配置を格子状の配列とし、その配列軸を異方性導電フィルムの長手方向に対して傾斜させること、この場合に導電粒子間の距離を所定の割合で離間させることが提案されている(特許文献1、特許文献2)。また、導電粒子を連結させることで、導電粒子が局所的に密な領域を形成し、狭ピッチ化に対応することも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4887700号公報
【文献】特開平9-320345号公報
【文献】特表2002-519473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のように、導電粒子を単純な格子状に配置する場合、配列軸の傾斜角や導電粒子間の距離によってバンプのレイアウトに対応することとなる。そのため、バンプが狭ピッチになると導電粒子間の距離を狭めざるを得ず、ショートを回避することが困難となる。また、導電粒子の個数密度が増加し、異方性導電フィルムの製造コストも増加する。
【0006】
一方で導電粒子間の距離を狭めない場合には、導電粒子が端子で十分な数が捕捉されないことが懸念される。
【0007】
また、導電粒子を連結させることで導電粒子が局所的に密な領域を形成する手法では、連結した複数の導電粒子がバンプ間スペースに同時に入ったときにショートのリスクが高くなるので好ましくない。
【0008】
そこで本発明は、狭ピッチのバンプに対応することができ、かつ従来の異方性導電フィルムよりも導電粒子の個数密度を低減させることのできる異方性導電フィルムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、導電粒子が互いに間隔を空けつつ特定の配列をなしている導電粒子のユニットを、異方性導電フィルムの全面に繰り返し配置すると、フィルム全面に導電粒子の疎密領域を形成できるので、疎密領域の密領域において狭ピッチのバンプを接続することができ、かつその密領域においても導電粒子は互いに離間しているのでショートのリスクが低減し、さらに疎領域の存在によりフィルム全体の導電粒子の個数密度を低減できることを見出し、本発明を想到した。
【0010】
即ち、本発明は、絶縁性樹脂バインダに導電粒子が配置された異方性導電フィルムであって、
導電粒子が間隔をあけて一列に並んだ導電粒子列であって導電粒子数の異なるものが並列してなる導電粒子の繰り返しユニットが繰り返し配置されている異方性導電フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異方性導電フィルムによれば、個々の導電粒子を単純な格子状の配列とせず、特定の粒子配置の導電粒子の繰り返しユニットを繰り返し配置しているので、フィルムに導電粒子の疎密領域を形成することができるため、異方性導電フィルム全体では導電粒子の個数密度の増加を抑制することができる。したがって、導電粒子の個数密度の増加に伴う製造コストの増加を抑制することができる。また、一般に、導電粒子の個数密度が増加すると、異方性導電接続時に押圧治具に必要とされる推力も増加するが、本発明の異方性導電フィルムによれば、導電粒子の個数密度の増加の抑制により、異方性導電接続時に押圧治具に必要とされる推力の増加も抑制されるので、異方性導電接続により電子部品が変形することを防止できる。また、押圧治具に過大な推力が不要とされることにより押圧治具の推力が安定するので、異方性導電接続した電子部品の導通特性等の品質が安定する。
【0012】
一方、本発明の異方性導電フィルムによれば、導電粒子が密な領域となる繰り返しユニットが縦横に繰り返し形成されているので、狭ピッチのバンプを接続することが可能となる。さらに、繰り返しユニット内において、導電粒子は互いに離間しているので、繰り返しユニットが端子間スペースに跨がった場合でも、ショートの発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、実施例の異方性導電フィルム1Aの導電粒子の配置を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例の異方性導電フィルム1Aの断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の異方性導電フィルム1Bの平面図である。
【
図3】
図3は、実施例の異方性導電フィルム1Cの平面図である。
【
図4】
図4は、実施例の異方性導電フィルム1Dの平面図である。
【
図5】
図5は、実施例の異方性導電フィルム1Eの平面図である。
【
図6】
図6は、実施例の異方性導電フィルム1Fの平面図である。
【
図7】
図7は、実施例の異方性導電フィルム1Gの平面図である。
【
図8】
図8は、実施例の異方性導電フィルム1Hの平面図である。
【
図9】
図9は、実施例の異方性導電フィルム1Iの平面図である。
【
図10】
図10は、実施例の異方性導電フィルム1Jの平面図である。
【
図11】
図11は、実施例の異方性導電フィルム1Kの平面図である。
【
図12】
図12は、実施例の異方性導電フィルム1aの断面図である。
【
図13】
図13は、実施例の異方性導電フィルム1bの断面図である。
【
図14】
図14は、実施例の異方性導電フィルム1cの断面図である。
【
図15】
図15は、実施例の異方性導電フィルム1dの断面図である。
【
図16】
図16は、実施例の異方性導電フィルム1eの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の異方性導電フィルムを図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
<異方性導電フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例の異方性導電フィルム1Aの導電粒子の配置を示す平面図であり、
図1Bはその断面図である。
この異方性導電フィルム1Aは、導電粒子2が絶縁性樹脂バインダ3の表面又はその近傍に単層で配置され、その上に絶縁性接着層4が積層した構造を有している。
【0016】
なお、本発明の異方性導電フィルムとしては、絶縁性接着層4を省略し、絶縁性樹脂バインダ3に導電粒子2が埋め込まれた構成としてもよい。
【0017】
<導電粒子>
導電粒子2としては、公知の異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウムなどの金属粒子、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン等の樹脂粒子の表面をニッケルなどの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。配置される導電粒子の大きさは、好ましくは1~30μm、より好ましくは1μm以上10μm以下、さらに好ましくは2μm以上6μm以下である。
【0018】
導電粒子2の平均粒子径は、画像型ないしレーザー式の粒度分布計により測定することができる。異方性導電フィルムを平面視で観察し、粒子径を計測して求めてもよい。その場合、好ましくは200個以上、より好ましくは500個以上、更により好ましくは1000個以上を計測する。
【0019】
導電粒子2の表面は、絶縁コートや絶縁粒子処理などにより被覆されていることが好ましい。このような被覆は導電粒子2の表面から剥がれ易く且つ異方性接続に支障をきたさないものとする。また、導電粒子2の表面の全面又は一部に突起が設けられていてもよい。突起の高さは導電粒子径の20%以内、好ましくは10%以内であることが好ましい。
【0020】
<導電粒子の配置>
(繰り返しユニット)
異方性導電フィルム1Aの平面視における導電粒子2の配置は、導電粒子列2p、2q、2rと単独の導電粒子2sが並置された繰り返しユニット5が異方性導電フィルム1Aの全面に縦横(X方向、Y方向)に繰り返されたものとなっており、繰り返しユニット5の外形をなす導電粒子の中心を順次結んで形成される多角形は3角形となっている。なお、本発明の異方性導電フィルムは、必要に応じて導電粒子が配置されていない領域をもつことができる。
【0021】
各導電粒子列2p、2q、2rは、それぞれ平面視にて導電粒子2が間隔をあけて一列に直線状に並んでいる。また、導電粒子列2p、2q、2rを構成する導電粒子数は漸次異なっており、導電粒子列2p、2q、2rは平行に並列している。このように粒子数が漸次異なる導電粒子列2p、2q、2rを並列させた粒子配置を繰り返すことにより、導電粒子の個数密度は局所的に疎密を形成するため、異方性導電フィルムを電子部品に貼り付けた場合に微小な位置ズレがあっても、バンプ列を構成するいずれのバンプにおいても安定した数の導電粒子を捕捉させ易くなる。これは異方性導電接続を連続して行う場合により効果的になる。即ち、単純な格子配列のもので異方性導電フィルムの電子部品への貼り付けが微小にずれた場合、特にバンプ端部では位置ズレの有無や程度で捕捉粒子数がばらつきやすい。このばらつきを抑制するために格子配列の角度をフィルムの長手方向に対して傾斜させることが考案されている(特許文献1など)。しかしながら、バンプ幅やバンプ間距離がより狭くなると、格子配列を傾斜させる効果には限界が生じる。これに対し、本発明では、バンプ長の範囲に導電粒子の個数密度の疎密を生じさせることで、バンプ長の範囲のいずれかの箇所では導電粒子が捕捉されるようにする。言い換えると、導電粒子が捕捉される位置と捕捉されない位置を一つのバンプで同時に発生させる。これにより、バンプ配列のいずれにおいてもバンプの形状(面積)が同様であれば、繰り返しユニットの繰り返し間隔を適宜設定することによりバンプに捕捉される導電粒子の個数が安定することになる。したがって、異方性導電フィルムの貼り付けに微小な位置ズレが生じたしたとしても、また、生産ラインで接続体を連続的に製造する際の接続体ごとのバンプ配列における導電粒子の捕捉状態も安定しやすくなる。また、導電粒子が捕捉される位置と捕捉されない位置を一つのバンプで同時に発生させることにより、異方性導電接続後の検査労力の低減や品質管理の向上が期待できる。例えば、導電粒子が捕捉される位置と捕捉されない位置を一つのバンプで同時に発生させることで、異方性導電接続後の圧痕検査の際に、連続して得られた接続体の対比が容易になる。また、異方性導電接続工程において電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りした際の位置ズレの有無を、連続して製造する接続体同士で比較できるため、接続装置の改善事項の判定し易くなることが期待できる。
【0022】
繰り返しユニット5における導電粒子2の配置は、該繰り返しユニット5を構成する導電粒子2の一部が、正6角形を隙間無く並べた場合の各6正角形の頂点の一部を占める配置となっている。あるいは、正3角形を隙間無く並べた場合の正3角形の頂点と繰り返しユニット5を構成する導電粒子が重なる配置となっている。さらに言い換えると、6方格子配列の各格子点に導電粒子が存在する配置から所定の格子点の導電粒子を規則的に抜いた残りの配置が繰り返しユニット5となっている。このように6方格子配列の格子点に導電粒子2を配置すると繰り返しユニット5の粒子配置が認識し易く、設計が容易となる。なお、後述するように、繰り返しユニットにおける導電粒子の配置は、6方格子を基にするものに限らず、正方格子を基にしても良く、8角形以上の正多角形を縦横に並べ、隣接する正多角形の辺同士を重ね合わせた配置を基にしてもよい。
【0023】
(繰り返しユニットの繰り返し態様)
図1Aに示した異方性導電フィルム1Aにおける繰り返しユニット5の繰り返しは、より詳細には、X方向には、繰り返しユニット5が、繰り返しユニット5内における粒子間隔をあけて繰り返されている。また、Y方向には、繰り返しユニット5をY方向の対称軸で反転させた繰り返しユニット5Bと繰り返しユニット5とが間隔をあけて交互に繰り返されている。この場合、繰り返しユニットの外形をなす導電粒子の中心を順次結んで形成される多角形を、異方性導電フィルムの短手方向に投影したときの異方性導電フィルムの長手方向の辺における位置が、該繰り返しユニットに隣接する繰り返しユニットの同様の位置が部分的に重畳することが好ましい。一般に、電子部品の端子の幅方向が異方性導電フィルムの長手方向となるので、上述のように繰り返しユニットの外形をなす多角形を重畳させると、電子部品の端子で導電粒子が捕捉される確率が高まるためである。また、異方性導電フィルムの長手方向と短手方向を入れ替えてもよい。端子レイアウトによっては、入れ替えた方が良い場合も発生するためである。
【0024】
なお、導電粒子2の繰り返しユニットを考える場合に、繰り返しユニット5とそれを反転させた繰り返しユニット5Bとをあわせたユニットを導電粒子の繰り返し単位と見ることもできるが、本発明において繰り返しユニットは、複数の導電粒子列が並列してなるユニットであって、縦横に繰り返される最小の単位とすることが好ましい。
【0025】
(繰り返しユニットの大きさ)
繰り返しユニット5の異方性導電フィルムの大きさや繰り返しユニット間の距離は、該異方性導電フィルム1Aで接続する電子部品のバンプ幅やバンプ間スペースの大きさによって定めることが好ましい。
【0026】
例えば、接続対象が非ファインピッチの場合には、繰り返しユニット5の異方性導電フィルム長手方向の大きさは、バンプ幅又はバンプ間スペースのいずれか狭い方の長さよりも小さい方が好ましい。このような大きさとしても繰り返しユニット5が繰り返し配置されていることにより、接続に最低限必要な導電粒子数をバンプに捕捉させることができ、また、接続に関与しない導電粒子数を減らすことができるので、異方性導電フィルムのコスト削減を図ることができる。また、繰り返しユニット5の外形をなす多角形の辺を異方性導電フィルム1Aの短手方向に斜行させることで、長尺の異方性導電フィルムの切り出し位置に関係なく安定した接続性能を得ることができる。
【0027】
接続対象が非ファインピッチの場合の異方性導電フィルム長手方向における、隣接する繰り返しユニット5、5Bの距離は、当該異方性導電フィルムで接続する電子部品のバンプ間スペースよりも短くすることが好ましい。
【0028】
一方、接続対象がファインピッチの場合には、異方性導電フィルム長手方向の繰り返しユニット5、5Bの大きさを、バンプ間スペースを跨げる大きさとすることが好ましい。
【0029】
なお、ファインピッチと非ファインピッチの境界は、一例として、バンプ幅が30μm未満をファインピッチとし、30μm以上を非ファインピッチとすることができる。
【0030】
上述のように繰り返しユニット5の大きさを接続対象に応じて定めるにあたり、繰り返しユニット5を構成する導電粒子数は5個以上とすることが好ましく、10個以上がより好ましく、20個以上がさらに好ましい。一般に、異方性導電接続により接続する対向する端子間には、3個以上、特に10個以上の導電粒子が捕捉されることが好ましいため、繰り返しユニットが対向する端子間に挟まれたときに、そのような数の導電粒子が捕捉されていることを一つの繰り返しユニットの圧痕から確認できるようにするためである。
【0031】
(繰り返しユニットの具体的変形態様)
本発明において、繰り返しユニット5における導電粒子2の配置や、繰り返しユニット5の縦横の繰り返しピッチは、異方性導電接続の接続対象とする端子の形状や端子のピッチに応じて適宜変更することができる。したがって、導電粒子2を単純な格子状の配列とする場合に比して、異方性導電フィルム全体としては少ない導電粒子数で高い捕捉性を達成することができる。
【0032】
例えば、
図1Aに示した繰り返し態様の他に、
図2に示す異方性導電フィルム1Bのように、繰り返しユニット5を千鳥配列状に繰り返ししてもよい。千鳥配列では、電子部品の異方性導電接続時の樹脂流動が導電粒子に及ぼす影響が、千鳥配列の中央部に位置するバンプと外側に位置するバンプとでは異なり、千鳥配列の中央部のバンプに位置するバンプと外側に位置するバンプとではショートリスクも異なるので、繰り返しユニット5の形状を適宜変更して樹脂流動の流れを調整することができる。
【0033】
繰り返しユニット5における導電粒子2の配置も異方性導電接続の接続対象とする端子の形状や端子のピッチに応じて適宜変更することができる。例えば、
図3に示す異方性導電フィルム1Cのように、ひとつの繰り返しユニット5内で導電粒子列2pを構成する導電粒子数を漸次増加及び減少させてもよく、繰り返しユニット5の繰り返しと共に、単独の導電粒子2sが繰り返し配置されてもよい。さらに、一つの繰り返しユニット内で並列する3列の導電粒子列において、中央の導電粒子列を構成する導電粒子数を、両側の導電粒子列を構成する導電粒子数より多くしても少なくしても良い。例えば、
図4に示す異方性導電フィルム1Dのように、各繰り返しユニット5において、導電粒子2が異方性導電フィルムの長手方向に4個配列した導電粒子列2pと、2個配列した導電粒子列2qと、3個配列した導電粒子列2rと1個の導電粒子2sが並列している。一つの繰り返しユニット内で並列する導電粒子列における導電粒子の個数を増減させると、その繰り返しユニットの外形は複雑な多角形状となり、放射状のバンプ配列(所謂、ファンアウトバンプ)の接続に対応させやすくなる。一つの繰り返しユニットにおける導電粒子の配置を、該繰り返しユニットを構成する導電粒子列の導電粒子数で表し、例えば、
図4に示した繰り返しユニットを、[4-2-3-1]と表すとき、この繰り返しユニットの変形例として、[4-1-4-1]、[4-3-1-2]、[3-2-2-1]、[4-1-2-3]、[4-2-1-3]等をあげることができる。これらを組み合わせて繰り返し配置してもよい。例えば、[4-2-3-1-2-1-4-3]が挙げられる。
【0034】
また、一つの導電粒子列内における導電粒子間距離は、一つの繰り返しユニット内で並列している導電粒子列同士で同じでもよく、異なっていてもよい。例えば、
図5に示す異方性導電フィルム1Eのように、繰り返しユニット5の外形を菱形とし、その中央部に導電粒子2を配置してもよい。この繰り返しユニットでは、5個の導電粒子からなる導電粒子列2mと、2個の導電粒子からなる導電粒子列2nと、3個の導電粒子からなる導電粒子列2oと2個の導電粒子からなる導電粒子列2pと、5個の導電粒子からなる導電粒子列2qが並列しており、導電粒子列2m、2qにおける導電粒子間距離と、導電粒子列2n、2pにおける導電粒子間距離と、導電粒子列2oにおける導電粒子間距離は互いに異なっている。これを前述の表記の[4-3-2-1]とした場合、3の中心の導電粒子を抜いた配列であってもよい。ショート発生リスクをより低減できるからである。
【0035】
上述した異方性導電フィルム1A、1B、1C、1D、1Eでは、繰り返しユニット5、5B内における導電粒子2の配置が6方格子の格子点に存在するが、導電粒子列2pが並列している限り、
図6に示す異方性導電フィルム1Fのように正方格子を基にした配列としてもよい。
【0036】
図7に示す異方性導電フィルム1Gは、2列の導電粒子列2p、2qからなる繰り返しユニット5と、該繰り返しユニット5の導電粒子の配列軸を60°回転させた繰り返しユニット5Bとをそれぞれフィルム全面に繰り返し配置したものである。このように、ある繰り返しユニットとそれを所定角度回転させた繰り返しユニットを併用してもよい。
【0037】
繰り返しユニットの形状としては、その外形をなす導電粒子を順次繋いで形成される多角形を正多角形としてもよい。これより導電粒子の配置の認識が容易になるので好ましい。この場合、繰り返しユニットを形成する各導電粒子は、6方格子又は正方格子の格子点に存在していなくてもよい。例えば、
図8に示す異方性導電フィルム1Hのように繰り返しユニット5の外形を正8角形に形成することができる。この場合、繰り返しユニットの外形をなす導電粒子は、同図に破線で示すように、正8角形を縦横に並べて隣接する正8角形同士の辺を重ね合わせた格子の該正8角形の頂点に配置されている。同様にして正12角形、もしくはそれ以上の正多角形体の頂点に導電粒子が配置されるようにしてもよい。なお、6方格子又は正方格子の格子点に導電粒子を配置することにより、外形が8角形以上の略正多角形となる繰り返しユニットを形成してもよい。例えば、
図9に示す異方性導電フィルム1Iの繰り返しユニット5は、正方格子の格子点上に配置された導電粒子2から形成されており、異方性導電フィルムの長手方向にも短手方向にも対称な8角形となっている。これにより導電粒子の配置を容易に認識することができる。
【0038】
また、繰り返しユニットにおいて並列する導電粒子列同士は、必ずしも平行でなくてもよく、放射状に並んでいても良い。例えば、
図10に示す異方性導電フィルム1Jのように、放射状に配列した導電粒子列2m、2n、2o、2p、2qを有する繰り返しユニット5を縦横に繰り返し配置することができる。この場合、導電粒子2は、6方格子や正方格子の格子点に存在しなくてもよい。
【0039】
(繰り返しユニットの辺の向き)
上述した異方性導電フィルムのうち、例えば
図1Aに示した異方性導電フィルム1Aでは繰り返しユニット5の外形をなす導電粒子の中心を順次結んで形成される3角形5xの各辺は異方性導電フィルム1Aの長手方向又は短手方向と斜交している。これにより、導電粒子2aの、異方性導電フィルムの長手方向の外接線L1が、該導電粒子2aと異方性導電フィルムの長手方向で隣接する導電粒子2bを貫く。また、導電粒子2aの、異方性導電フィルムの短手方向の外接線L2が、該導電粒子2aと異方性導電フィルムの短手方向で隣接する導電粒子2cを貫く。一般に、異方性導電接続時には、異方性導電フィルムの長手方向がバンプの短手方向となるので、繰り返しユニット5の多角形5xの辺が異方性導電フィルム1Aの長手方向又は短手方向と斜交していると、バンプの縁に沿って複数の導電粒子が直線状に並ぶことを防止でき、これにより直線状に並んだ複数の導電粒子がまとまって端子から外れて導通に寄与しなくなるという現象を回避できるので、導電粒子2の捕捉性を向上させることができる。
【0040】
なお、異方性導電接続時に異方性導電フィルムの長手方向がバンプの短手方向となる場合に、繰り返しユニット5の外形をなす導電粒子で形成される多角形5xは、必ずしもその全ての辺が異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向と斜交していなくてもよいが、導電粒子の捕捉性の点から、好ましくは2辺以上、より好ましくは3辺以上が異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向と斜交していることが好ましい。
【0041】
一方、バンプの配列パターンが放射状の場合(所謂、ファンアウトバンプ)には、繰り返しユニットをなす多角形が、異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向の辺を有することが好ましい。即ち、接続すべきバンプ同士が、バンプが設けられている基材の熱膨張によっても位置ズレしないようにするため、バンプの配列パターンを放射状にする場合があり(例えば、特開2007-19550号公報、2015-232660号公報等)、その場合に個々のバンプの長手方向と異方性導電フィルムの長手方向とがなす角度は漸次変化する。そのため、繰り返しユニット5の多角形の辺を異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向と斜行させなくても、放射状に配列した個々のバンプの長手方向の縁辺に対して繰り返しユニット5、5Bの多角形の辺は斜交する。したがって、異方性導電接続時にバンプの縁にかかっていた導電粒子の多くがそのバンプに捕捉されず、導電粒子の捕捉性が低下するという現象を回避することができる。一方、バンプの放射状の配列パターンは、通常、左右対称に形成される。したがって、異方性導電接続後の圧痕によって接続状態の良否の確認を容易にする点から、繰り返しユニット5の外形をなす多角形が、異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向の辺を有することが好ましい。そのため、例えば、繰り返しユニットを
図1Aに示した異方性導電フィルム1Aと同様の3角形とする場合、
図11に示した異方性導電フィルム1Kのように繰り返しユニット5の外形をなす3角形の1辺5aが異方性導電フィルムの長手方向又は短手方向と平行になるように配置することが好ましい。また、
図8に示した異方性導電フィルム1Hの繰り返しユニット5のように、異方性導電フィルムの長手方向と平行な辺5aと短手方向と平行な辺5bを持たせてもよい。
【0042】
なお、本発明における導電粒子の配置としては、図示した繰り返しユニットの配列に限定されない。例えば、図示した配列を傾斜させたものでもよい。この場合、90°傾斜させたもの、即ち、フィルムの長手方向と短手方向を入れ替えた態様も含まれる。また、繰り返しユニット5の間隔や繰り返しユニット内の導電粒子の間隔を変更したものであってもよい。
【0043】
<導電粒子の最近接粒子間距離>
導電粒子の最近接粒子間距離は、繰り返しユニット5内で隣接する導電粒子間においても、繰り返しユニット5間で隣接する導電粒子間においても、平均導電粒子径の0.5倍以上が好ましい。繰り返しユニット5間の距離は繰り返しユニット5内で隣接する導電粒子間距離よりも長いことが好ましい。この距離が短すぎると導電粒子相互の接触によりショートが起こりやすくなる。隣接する導電粒子の距離の上限は、バンプ形状やバンプピッチに応じて定める。例えば、バンプ幅200μm、バンプ間スペース200μmの場合に、バンプ幅又はバンプ間スペースのいずれかに導電粒子を最低1個存在させるとき、導電粒子間距離は400μm未満とする。導電粒子の捕捉性を確実にする点からは、200μm未満とすることが好ましい。
【0044】
<導電粒子の個数密度>
導電粒子の個数密度は、異方性導電フィルムの製造コストを抑制する点、及び異方性導電接続時に使用する押圧治具に必要とされる推力が過度に大きくならないようにする点から、導電粒子の平均粒子径が10μm未満の場合、50000個/mm2以下が好ましく、35000個/mm2以下がより好ましく、30000個/mm2以下がさらに好ましい。一方、導電粒子の個数密度は、少なすぎると端子で導電粒子が十分に捕捉されないことによる導通不良が懸念されることから、300個/mm2以上が好ましく、500個/mm2以上がより好ましく、800個/mm2以上がさらに好ましい。
【0045】
また、導電粒子の平均粒子径が10μm以上の場合は、15個/mm2以上が好ましく、50個/mm2以上がより好ましく、160個/mm2以上がさらにより好ましい。導電粒子径が大きくなれば、導電粒子の占有面積率も高まるからである。同様の理由から、1800個/mm2以下が好ましく、1100個/mm2以下がより好ましく、800個/mm2以下がさらに好ましい。
なお、導電粒子の個数密度は、局所的(一例として、200μm×200μm)には、上述の個数密度を外れていても良い。
【0046】
<絶縁性樹脂バインダ>
絶縁性樹脂バインダ3としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性樹脂バインダとして使用されている熱重合性組成物、光重合性組成物、光熱併用重合性組成物等を適宜選択して使用することができる。このうち熱重合性組成物としては、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性樹脂組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性樹脂組成物、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合性樹脂組成物等をあげることができ、光重合性組成物としては、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合性樹脂組成物等をあげることができる。特に問題が生じないのであれば、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、熱カチオン重合性組成物と熱ラジカル重合性組成物の併用などが挙げられる。
【0047】
ここで、光重合開始剤としては波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、異方性導電フィルムの製造時における、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、異方性接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0048】
絶縁性樹脂バインダ3を光重合性組成物を使用して形成する場合に、異方性導電フィルムの製造時の光硬化により、絶縁性樹脂バインダ3に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、絶縁性樹脂バインダ3における導電粒子2の配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉の向上が見込まれる。また、この光硬化の条件を調整することにより、異方性導電フィルムの製造工程における絶縁性樹脂層の粘度を調整することができる。
【0049】
絶縁性樹脂バインダ3における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がより好ましい。光重合性化合物が多すぎると異方性導電接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0050】
一方、熱重合性組成物は、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有するが、この熱重合性化合物として、光重合性化合物としても機能するものを使用してもよい。また、熱重合性組成物には、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させると共に光重合性開始剤を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物と光重合開始剤を含有させる。例えば、熱重合開始剤として熱カチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。絶縁性樹脂バインダ3には、これらの重合性組成物の硬化物を含めてもよい。
【0051】
熱又は光重合性化合物として使用されるアクリレート化合物としては従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0052】
また、重合性化合物として使用されるエポキシ化合物は、3次元網目構造を形成し、良好な耐熱性、接着性を付与するものであり、固形エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。ここで、固形エポキシ樹脂とは、常温で固体であるエポキシ樹脂を意味する。また、液状エポキシ樹脂とは、常温で液状であるエポキシ樹脂を意味する。また、常温とは、JIS Z 8703で規定される5~35℃の温度範囲を意味する。本発明では2種以上のエポキシ化合物を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0053】
固形エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂と相溶し、常温で固体であれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、フィルムのタック性、柔軟性などの観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
熱重合開始剤のうち熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0056】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0057】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0058】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0059】
熱アニオン重合開始剤としては、通常用いられる公知のものを使用することができる。例えば、有機酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、アミン化合物、ポリアミドアミン化合物、シアナートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物、カルボン酸、三級アミン化合物、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド酸塩、ポリメルカプタン系硬化剤、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0060】
熱重合性組成物には、膜形成樹脂を含有させることが好ましい。膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ましい。
【0061】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、絶縁性フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラーの大きさは粒径20~1000nmが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性化合物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。
【0062】
更に、上述の絶縁性フィラーとは異なる充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0063】
また、必要に応じて、応力緩和剤、シランカップリング剤、無機フィラー等を配合してもよい。応力緩和剤としては、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン-イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。また、無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0064】
絶縁性樹脂バインダ3は、上述した樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。絶縁性樹脂バインダ3は、必要に応じて樹脂層を積層することにより得ても良い。また、絶縁性樹脂バインダ3は、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離フィルム上に形成することが好ましい。
【0065】
(絶縁性樹脂バインダの粘度)
絶縁性樹脂バインダ3の最低溶融粘度は異方性導電フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、異方性導電フィルムの製造方法として、導電粒子を絶縁性樹脂バインダの表面に所定の配置で保持させ、その導電粒子を絶縁性樹脂バインダに押し込む方法を行うとき、絶縁性樹脂バインダがフィルム成形を可能とする点から樹脂の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。また、後述するように、
図12又は
図13に示すように絶縁性樹脂バインダ3に押し込んだ導電粒子2の露出部分の周りに凹み3bを形成したり、
図14に示すように絶縁性樹脂バインダ3に押し込んだ導電粒子2の直上に凹み3cを形成したりする点から、最低溶融粘度は、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、特に3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、昇温速度が10℃/分、測定圧力が5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができる。また、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で絶縁性樹脂バインダ3に導電粒子2を押し込む工程を行う場合に、上述と同様に凹み3b又は3cの形成の点から、60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。
【0066】
絶縁性樹脂バインダ3を構成する樹脂の粘度を上述のように高粘度とすることにより、異方性導電フィルムの使用時において、対向する電子部品等の接続対象物の間に導電粒子2を挟んで加熱加圧する場合に、異方性導電フィルム内の導電粒子2が、溶融した絶縁性樹脂バインダ3の流動により流されてしまうことを防止することができる。
【0067】
(絶縁性樹脂バインダの厚み)
絶縁性樹脂バインダ3の厚みLaは、好ましくは1μm以上60μm以下、より好ましくは1μm以上30μm以下、さらに好ましくは2μm以上15μm以下である。また、絶縁性樹脂バインダ3の厚みLaは、導電粒子2の平均粒子径Dとの関係では、それらの比(La/D)が0.6~10が好ましい。絶縁性樹脂バインダ3の厚みLaが大き過ぎると異方性導電接続時に導電粒子が位置ズレしやすくなり、端子における導電粒子の捕捉性が低下する。この傾向はLa/Dが10を超えると顕著である。そこでLa/Dは8以下がより好ましく、6以下が更により好ましい。反対に絶縁性樹脂バインダ3の厚みLaが小さすぎてLa/Dが0.6未満となると、導電粒子を絶縁性樹脂バインダ3によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持することが困難となる。特に、接続する端子が高密度COGの場合、絶縁性樹脂バインダ3の層厚Laと導電粒子2の粒子径Dとの比(La/D)は、好ましくは0.8~2である。
【0068】
(絶縁性樹脂バインダにおける導電粒子の埋込態様)
絶縁性樹脂バインダ3における導電粒子2の埋込状態については特に制限がないが、異方性導電フィルムを対向する部品の間で挟持し、加熱加圧することにより異方性導電接続を行う場合、
図12、
図13に示すように、導電粒子2を絶縁性樹脂バインダ3から部分的に露出させ、隣接する導電粒子2間の中央部における絶縁性樹脂バインダの表面3aの接平面3Pに対して導電粒子2の露出部分の周りに凹み3bが形成されているか、又は
図14に示すように、絶縁性樹脂バインダ3内に押し込まれた導電粒子2の直上の絶縁性樹脂バインダ部分に、前記と同様の接平面3Pに対して凹み3cが形成され、導電粒子2の直上の絶縁性樹脂バインダ3の表面にうねりが存在するようにすることが好ましい。導電粒子2が対向する電子部品の電極間で挟持されて加熱加圧される際に生じる導電粒子2の偏平化に対し、
図12、
図13に示した凹み3bがあることより、導電粒子2が絶縁性樹脂バインダ3から受ける抵抗が、凹み3bが無い場合に比して低減する。このため、対向する電極間において導電粒子2が挟持され易くなり、導通性能も向上する。また、絶縁性樹脂バインダ3を構成する樹脂のうち、導電粒子2の直上の樹脂の表面に凹み3c(
図14)が形成されていることにより、凹み3cが無い場合に比して加熱加圧時の圧力が導電粒子2に集中し易くなり、電極において導電粒子2が挟持され易くなり、導通性能が向上する。
【0069】
上述の凹み3b、3cの効果を得やすくする点から、導電粒子2の露出部分の周りの凹み3b(
図12、
図13)の最大深さLeと導電粒子2の平均粒子径Dとの比(Le/D)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20~25%であり、導電粒子2の露出部分の周りの凹み3b(
図12、
図13の最大径Ldと導電粒子2の平均粒子径Dとの比(Ld/D)は、好ましくは100%以上、より好ましくは100~150%であり、導電粒子2の直上の樹脂における凹み3c(
図14)の最大深さLfと導電粒子2の平均粒子径Dとの比(Lf/D)は、好ましくは0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である。
【0070】
なお、導電粒子2の露出部分の径Lcは、導電粒子2の平均粒子径D以下とすることができ、好ましくは平均粒子径Dの10~90%である。導電粒子2の頂部2tの1点で露出するようにしてもよく、導電粒子2が絶縁性樹脂バインダ3内に完全に埋まり、径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0071】
(絶縁性樹脂バインダの厚さ方向における導電粒子の位置)
上述の凹み3bの効果を得やすくする点から、隣接する導電粒子2間の中央部における絶縁性樹脂バインダの表面3aの接平面3pからの導電粒子2の最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、導電粒子2の平均粒子径Dとの比(Lb/D)(以下、埋込率という)は60%以上105%以下であることが好ましい。
【0072】
<絶縁性接着層>
本発明の異方性導電フィルムでは、導電粒子2を配置させている絶縁性樹脂バインダ3上に、絶縁性樹脂バインダ3を構成する樹脂と粘度や粘着性が異なる絶縁性接着層4が積層されていてもよい。
【0073】
絶縁性樹脂バインダ3に上述の凹み3bが形成されている場合、
図15に示す異方性導電フィルム1dのように、絶縁性接着層4は、絶縁性樹脂バインダ3に凹み3bが形成されている面に積層されてもよく、
図16に示す異方性導電フィルム1eのように、凹み3bが形成されている面と反対側の面に積層されてもよい。絶縁性樹脂バインダ3に凹み3cが形成されている場合も同様である。絶縁性接着層4の積層により、異方性導電フィルムを用いて電子部品を異方性導電接続するときに、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填し、接着性を向上させることができる。
【0074】
また、絶縁性接着層4を絶縁性樹脂バインダ3に積層する場合、絶縁性接着層4が凹み3b、3cの形成面上にあるか否かに関わらず、絶縁性接着層4がICチップ等の第1電子部品側にある(言い換えると、絶縁性樹脂バインダ3が基板等の第2電子部品側にある)ことが好ましい。このようにすることで、導電粒子の不本意な移動を避けることができ、捕捉性を向上させることができる。なお、通常はICチップ等の第1電子部品を押圧治具側とし、基板等の第2電子部品をステージ側とし、異方性導電フィルムを第2電子部品と仮圧着した後に、第1電子部品と第2電子部品を本圧着するが、第2電子部品の熱圧着領域のサイズ等によっては、異方性導電フィルムを第1電子部品と仮貼りした後に、第1電子部品と第2電子部品を本圧着する。
【0075】
絶縁性接着層4としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性接着層として使用されているものを適宜選択して使用することができる。絶縁性接着層4は、上述した絶縁性樹脂バインダ3と同様の樹脂を用いて粘度をより低く調整したものとしてもよい。絶縁性接着層4と絶縁性樹脂バインダ3との最低溶融粘度は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が絶縁性接着層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほど異方性導電接続時に絶縁性樹脂バインダ3を構成する樹脂の移動量が相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。実用上は、絶縁性接着層4と絶縁性樹脂バインダ3との最低溶融粘度比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺の異方性導電フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は15以下が好ましい。絶縁性接着層4の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に100~2000Pa・sである。
【0076】
絶縁性接着層4の形成方法としては、絶縁性樹脂バインダ3を形成する樹脂と同様の樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。
【0077】
絶縁性接着層4の厚みは、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下である。
【0078】
また、絶縁性樹脂バインダ3と絶縁性接着層4を合わせた異方性導電フィルム全体の最低溶融粘度は、絶縁性樹脂バインダ3と絶縁性接着層4の厚みの比率にもよるが、実用上は8000Pa・s以下としてもよく、バンプ間への充填を行い易くするためには200~7000Pa・sであってもよく、好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0079】
絶縁性樹脂バインダ3や絶縁性接着層4には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミニウム等の絶縁性フィラーを加えてもよい。絶縁性フィラーの配合量は、それらの層を構成する樹脂100質量部に対して3質量部以上40質量部以下とすることが好ましい。これにより、異方性導電接続の際に異方性導電フィルムが溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子が不要に移動することを抑制することができる。
【0080】
<異方性導電フィルムの製造方法>
異方性導電フィルムの製造方法としては、例えば、導電粒子を所定の配列に配置するための転写型を製造し、転写型の凹部に導電粒子を充填し、その上に、剥離フィルム上に形成した絶縁性樹脂バインダ3を被せ圧力をかけ、絶縁性樹脂バインダ3に導電粒子2を押し込むことにより、絶縁性樹脂バインダ3に導電粒子2を転着させる。あるいはさらにその導電粒子2上に絶縁性接着層4を積層する。こうして、異方性導電フィルム1Aを得ることができる。
【0081】
また、転写型の凹部に導電粒子を充填した後、その上に絶縁性樹脂バインダを被せ、転写型から絶縁性樹脂バインダの表面に導電粒子を転写させ、絶縁性樹脂バインダ上の導電粒子を絶縁性樹脂バインダ内に押し込むことにより異方性導電フィルムを製造してもよい。この押し込み時の押圧力、温度等により導電粒子の埋込量(Lb)を調整することができる。また、凹み3b、3cの形状及び深さを、押し込み時の絶縁性樹脂バインダの粘度、押込速度、温度等により調整することができる。例えば、導電粒子の押し込み時の絶縁性樹脂バインダの粘度を、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上とし、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下とする。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。より具体的には、絶縁性樹脂バインダの表面に
図12に示した凹み3bを有する異方性導電フィルム1aを製造する場合、導電粒子の押し込み時の絶縁性樹脂バインダの粘度を、8000Pa・s(50~60℃)とすることができ、
図14に示した凹み3cを有する異方性導電フィルム1cを製造する場合、導電粒子の押し込み時の絶縁性樹脂バインダの粘度を4500Pa・s(50~60℃)とすることができる。
【0082】
なお、転写型としては、凹部に導電粒子を充填するもの他、凸部の天面に微粘着剤を付与してその天面に導電粒子が付着するようにしたものを用いても良い。
【0083】
これらの転写型は機械加工、フォトリソグラフィ、印刷法等の公知の技術を用い、また応用して製造することができる。
【0084】
また、導電粒子を所定の配列に配置する方法としては、転写型を用いる方法に代えて、二軸延伸フィルムを用いる方法等を使用してもよい。
【0085】
<巻装体>
異方性導電フィルムは、電子部品の接続に連続的に供するため、リールに巻かれたフィルム巻装体とすることが好ましい。フィルム巻装体の長さは、5m以上であればよく、10m以上であることが好ましい。上限は特にないが、出荷物の取り扱い性の点から、5000m以下であることが好ましく、1000m以下であることがより好ましく、500m以下であることがさらに好ましい。
【0086】
フィルム巻装体は、全長より短い異方性導電フィルムを繋ぎテープで連結したものでもよい。連結箇所は複数個所存在してもよく、規則的に存在してもよく、ランダムに存在してもよい。繋ぎテープの厚みは、性能に支障を来たさない限り特に制限はないが、厚すぎると樹脂のはみ出しやブロッキングに影響を及ぼすため、10~40μmであることが好ましい。また、フィルムの幅は特に制限はないが、一例として0.5~5mmである。
【0087】
フィルム巻装体によれば、連続した異方性導電接続ができ、接続体のコスト削減に寄与することができる。
【0088】
<接続構造体>
本発明の異方性導電フィルムは、FPC、ICチップ、ICモジュールなどの第1電子部品と、FPC、リジッド基板、セラミック基板、ガラス基板、プラスチック基板などの第2電子部品とを熱又は光により異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。また、ICチップやICモジュールをスタックして第1電子部品同士を異方性導電接続することもできる。このようにして得られる接続構造体及びその製造方法も本発明の一部である。
【0089】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、例えば、異方性導電フィルムのフィルム厚方向で導電粒子が近くに存在する側の界面を、ステージに載置した配線基板などの第2電子部品に仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、ICチップなどの第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から押圧治具を用いて熱圧着することが、接続信頼性を高める点から好ましい。同様の電子部品の接続を、光硬化を利用して行うこともできる。
【0090】
なお、配線基板等の第2電子部品の接続領域のサイズ等により異方性導電フィルムを配線基板等の第2電子部品に仮貼りすることが難しい場合には、異方性導電フィルムの仮貼りを、ステージに載置したICチップの第1電子部品に対して行い、その後に第1電子部品と第2電子部品を熱圧着する。
【実施例】
【0091】
実験例1~実験例8
(異方性導電フィルムの作製)
COG接続に使用する異方性導電フィルムについて、絶縁性樹脂バインダの樹脂組成と導電粒子の配置がフィルム形成能と導通特性に及ぼす影響を次のようにして調べた。
【0092】
まず、表1に示した配合で絶縁性樹脂バインダ及び絶縁性接着層を形成する樹脂組成物をそれぞれ調製した。この場合、絶縁性樹脂組成物の調製条件により樹脂組成物の最低溶融粘度を調整した。絶縁性樹脂バインダを形成する樹脂組成物をバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚さLaの絶縁性樹脂バインダ層を形成した。同様にして、絶縁性接着層を表2に示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0093】
【0094】
次に、導電粒子の平面視における配置が表2に示した配置となり、その繰り返しユニットにおける最近接導電粒子の中心間距離が6μmとなるように金型を作製した。その金型に公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることで、凹みが表2に示す配置の樹脂型を形成した。ここで、実験例8では導電粒子の配置を6方格子配列(個数密度32000個/mm2)とし、その格子軸の一つを異方性導電フィルムの長手方向に対して15°傾斜させた。
【0095】
導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)を用意し、この導電粒子を樹脂型の凹みに充填し、その上に上述の絶縁性樹脂バインダを被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂バインダを剥離し、絶縁性樹脂バインダ上の導電粒子を、加圧(押圧条件:60~70℃、0.5Mpa)することで絶縁性樹脂バインダに押し込み、絶縁性樹脂バインダに導電粒子が表2に示す状態で埋め込まれたフィルムを作製した。この場合、導電粒子の埋め込み状態は、押し込み条件でコントロールした。その結果、実験例4では、導電粒子を押し込んだ後にフィルム形状が維持されなかったが、それ以外の実験例では、導電粒子を埋め込んだフィルムを作製することができた。金属顕微鏡による観察で、埋め込まれた導電粒子の露出部分の周り又は埋め込まれた導電粒子の直上には表2に示すように凹みが認められた。なお、実験例4を除く各実験例では導電粒子の露出部分周りの凹みと、導電粒子直往の凹みの双方が観察されたが、表4には、各実験例ごとに凹みが最も明確に観察されたものの計測値を示した。
【0096】
導電粒子を埋め込んだフィルムの導電粒子を押し込んだ側に絶縁性接着層を積層することにより樹脂層が2層タイプの異方性導電フィルムを作製した。ただし、実験例4では、導電粒子を押し込んだ後にフィルム形状が維持されなかったので以降の評価を行わなかった。
【0097】
(評価)
各実験例の異方性導電フィルムに対し、次のようにして(a)初期導通抵抗と(b)導通信頼性を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
(a)初期導通抵抗
各実験例の異方性導電フィルムを、ステージ上のガラス基板と押圧ツール側の導通特性評価用ICとの間に挟み、押圧ツールで加熱加圧(180℃、5秒)して各評価用接続物を得た。この場合、押圧ツールによる推力を低(40MPa)、中(60MPa)、高(80MPa)の3段階に変えて3通りの評価用接続物を得た。
【0099】
ここで、導通特性評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0100】
導通特性評価用IC
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0101】
ガラス基板(ITO配線)
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0102】
得られた評価用接続物の初期導通抵抗を測定し、次の3段階の評価基準で評価した。
初期導通抵抗の評価基準(実用上、2Ω未満であれば問題はない)
A:0.4Ω未満
B:0.4Ω以上0.8Ω未満
C:0.8Ω以上
【0103】
(b)導通信頼性
(a)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おく信頼性試験を行い、その後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定し、次の3段階の評価基準で評価した。
【0104】
導通信頼性の評価基準(実用上、5Ω未満であれば問題はない)
A:1.2Ω未満
B:1.2Ω以上2Ω未満
C:2Ω以上
【0105】
【0106】
表2から絶縁性樹脂バインダの最低溶融粘度が800Pa・sの実験例4では導電粒子近傍の絶縁性樹脂バインダに凹みを有するフィルムの形成は難しいことがわかる。一方、絶縁性樹脂バインダの最低溶融粘度が1500Pa・s以上の実験例では、導電粒子の埋込時の条件の調整により絶縁性樹脂バインダの導電粒子近傍に凸部を形成できること、こうして得られた異方性導電フィルムはCOG用に導通特性が良好であることがわかる。また、6方格子配列の実験例8に比して導電粒子の個数密度が低い実験例1~7では、異方性導電接続をより低圧で行えることがわかる。
【0107】
(c)ショート率
実験例1~3と5~8の異方性導電フィルムを使用し、次のショート率の評価用ICを使用して180℃、60MPa、5秒の接続条件で評価用接続物を得、得られた評価用接続物のショート数を計測し、評価用ICの端子数に対する計測したショート数の割合としてショート率を求めた。
【0108】
ショート率の評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group):
外形 15×13mm
厚み0.5mm
バンプ仕様 サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm、バンプ高さ15μm
【0109】
ショートは50ppm未満であれば実用上好ましく、実験例1~3と5~8の異方性導電フィルムは全て50ppm未満であった。
【0110】
なお、実験例4を除く各実験例に対し、バンプ1個当たりに捕捉されている導電粒子を計測したところ、いずれも10個以上の導電粒子が捕捉されていた。
【0111】
実験例9~16
(異方性導電フィルムの作製)
FOG接続に使用する異方性導電フィルムについて、絶縁性樹脂バインダの樹脂組成と導電粒子の配置がフィルム形成能と導通特性に及ぼす影響を次のようにして調べた。
【0112】
即ち、表3に示した配合で絶縁性樹脂バインダと絶縁性接着層を形成する樹脂組成物を調製し、これらを用いて実験例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。この場合の導電粒子の配置と最近接粒子の中心間距離を表4に示す。実験例16では導電粒子の配置を6方格子配列(個数密度15000個/mm2)とし、その格子軸の一つを異方性導電フィルムの長手方向に対して15°傾斜させた。
【0113】
この異方性導電フィルムの作成工程において、絶縁性樹脂バインダに導電粒子を押し込んだ後に実験例12ではフィルム形状が維持されなかったが、それ以外の実験例ではフィルム形状が維持された。そのため、実験例12を除く実験例の異方性導電フィルムについて導電粒子の埋込状態を金属顕微鏡で観察して計測し、さらに以降の評価を行った。各実験例における導電粒子の埋込状態を表4に示す。表4に示した埋込状態は、表2と同様に各実験例ごとに絶縁性樹脂バインダの凹みが最も明確に観察されたものの計測値である。
【0114】
(評価)
各実験例の異方性導電フィルムに対し、次のようにして(a)初期導通抵抗と(b)導通信頼性を測定した。結果を表4に示す。
【0115】
(a)初期導通抵抗
各実験例で得た異方性導電フィルムを2mm×40mmで裁断し、導通特性の評価用FPCとガラス基板との間に挟み、ツール幅2mmで加熱加圧(180℃、5秒)して各評価用接続物を得た。この場合、押圧ツールによる推力を低(3MPa)、中(4.5MPa)、高(6MPa)の3段階に変えて3通りの評価用接続物を得た。得られた評価用接続物の導通抵抗を実験例1と同様に測定し、その測定値を次の基準で3段階に評価した。
【0116】
評価用FPC:
端子ピッチ 20μm
端子幅/端子間スペース 8.5μm/11.5μm
ポリイミドフィルム厚(PI)/銅箔厚(Cu)=38/8、Sn plating
【0117】
ノンアルカリガラス基板:
電極 ITO配線
厚み 0.7mm
【0118】
初期導通抵抗の評価基準
A:1.6Ω未満
B:1.6Ω以上2.0Ω未満
C:2.0Ω以上
【0119】
(b)導通信頼性
(a)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間き、その後の導通抵抗を初期導通抵抗と同様に測定し、その測定値を次の基準で3段階に評価した。
【0120】
導通信頼性の評価基準
A:3.0Ω未満
B:3.0Ω以上4Ω未満
C:4.0Ω以上
【0121】
表4から絶縁性樹脂バインダの最低溶融粘度が800Pa・sの実験例12では、凹みを有するフィルムの形成は難しいことがわかる。一方、絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が1500Pa・s以上の実験例では、導電粒子の埋込時の条件の調整により絶縁性樹脂バインダの導電粒子近傍に凹みを形成できること、こうして得られた異方性導電フィルムはFOG用に導通特性が良好であることがわかる。
【0122】
(c)ショート率
初期導通抵抗を測定した評価用接続物のショート数を計測し、計測されたショート数と評価用接続物のギャップ数からショート発生率を求めた。ショート発生率は100ppm未満であれば実用上問題はない。
実験例9~11と13~16のいずれもショート発生率は100ppm未満であった。
【0123】
なお、実験例12を除く各実験例に対し、バンプ1個当たりに捕捉されている導電粒子を計測したところ、いずれも10個以上の導電粒子が捕捉されていた。
【0124】
【0125】
【符号の説明】
【0126】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1a、1b、1c、1d、1e 異方性導電フィルム
2、2a、2b、2c、2s 導電粒子
2m、2n、2o、2p、2q、2r 導電粒子列
2t 導電粒子の頂部
3 絶縁性樹脂バインダ
3a 絶縁性樹脂バインダの表面
3b、3c 凹み
3P 接平面
4 絶縁性接着層
5、5B 繰り返しユニット
5a 異方性導電フィルムの長手方向と平行な辺
5b 異方性導電フィルムの短手方向と平行な辺
5x 繰り返しユニットの外形をなす導電粒子の中心を順次結んで形成される多角形
D 平均粒子径
L1、L2 外接線
La 絶縁性樹脂バインダの厚み
Lb 導電粒子の埋込量
Lc 導電粒子の露出部分の径
Ld 凹みの最大径
Le、Lf 最大深さ