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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241220BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20241220BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20241220BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241220BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20241220BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/262 Z
H01M50/264
H01M50/209
H01M50/284
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022073622
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2017128212の分割
【原出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2022115909
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 将成
(72)【発明者】
【氏名】牧野 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】石津 竹規
(72)【発明者】
【氏名】申 ソクチョル
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-134083(JP,A)
【文献】特開2006-012841(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034932(WO,A1)
【文献】特開2017-004926(JP,A)
【文献】特開2009-004323(JP,A)
【文献】特開2011-054353(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204140(WO,A1)
【文献】特開2008-198525(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178456(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0315298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の幅広側面と、一対の幅狭側面と、前記幅広側面及び幅狭側面とを接続する底面と、外部端子が配置された上面と、を備えた電池セルを有する電池パックにおいて、
前記電池セルの幅広側面を対向させて、複数個積層した第一の電池群と、
前記電池セルの幅広側面を対向させて、複数個積層した第二の電池群と、
前記第一の電池群及び前記第二の電池群を収納する筐体と、を備え、
前記第一の電池群と前記第二の電池群それぞれの最上下部を形成する幅広側面は互いに対面しない位置関係で前記筐体内に配置され、
前記第一の電池群の外部端子が配置された面と、前記第二の電池群の外部端子が配置された面とは互いに対向して配置されるとともに、前記第一の電池群の外部端子が配置された面と、前記第二の電池群の外部端子が配置された面の間の空間には、電装品を配置した絶縁性の支持台が配置され、
前記第一の電池群と前記第二の電池群それぞれの端子の反対側の面が前記筐体の内面に対向するとともに他の電池群とは対向しないようにし、
前記支持台の一方側に前記電装品として基板が配置され、前記支持台の他方側に前記電装品としてリレー及びヒューズが配置されることを特徴する電池パック。
【請求項2】
請求項に記載の電池パックにおいて、
前記リレー及び前記ヒューズは、前記支持台の他方側に設けられた凹部に収容されることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記第一の電池群と前記筐体とは、加圧用束縛治具を介して互いに接触するとともに、前記第二の電池群と前記筐体とは、加圧用束縛治具を介して互いに接触することを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記第一の電池群と前記筐体とは、直接接触するとともに、前記第二の電池群と前記筐体とは、直接接触することを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題・資源枯渇問題を背景にして、地球環境の保全に向けた、環境負荷の低い省エネルギーな製品の開発が求められている。CO量の削減につながる製品のひとつとして、ハイブリッド電気自動車や電気自動車に代表されるエコカーに注目が集まっており、その販売台数が伸びている。これらのエコカーに搭載される車載用の二次電池への需要も高まっている。車載用二次電池の例としては、リチウムイオン二次電池や、鉛蓄電池、ニッケル水素電池などが挙げられる。この中で、リチウムイオン二次電池は一般に、鉛電池やニッケル水素電池などに比べて放電電位が高いため、小型・高エネルギー密度化が可能であり、有望視されている。
【0003】
本格適用に向けてリチウムイオン二次電池に求められる点には例えば、更なる高エネルギー密度化、高出力密度化、長寿命化等があげられる。電池を高出力化するためには高電位化とともに、例えば、大電流を電池から入・出力させる事が有効である。しかし大電流を電池から入・出力させる場合、電池の内部抵抗に由来する発熱が電池内部で生じる。発生した熱を十分に電池から取り除く事ができなかった場合、電池温度が上昇する。リチウムイオン電池の電池容量や内部抵抗等の電池特性は、電池温度によって劣化傾向が異なり、特に電池温度が高ければ高いほど電池劣化が進み、容量低下や内部抵抗上昇が起こる場合が多い。そこで、電池の放熱性能を向上させる技術開発が必要となっている。
【0004】
複数のリチウムイオン単電池(以下、単電池と呼ぶ)が組み合わされ、電池群として用いられる場合(例えば、電池モジュール、電池パックとして使用する場合)、電池群中の単電池間の温度差を小さく、さらに電池群の中に存在する電池の最大到達温度が低いことが望まれる。これは、単電池間での温度差が大きく、さらに最大到達温度が高い場合、単電池間で劣化の差が生じやすいためである。電池群の特性は、電池群に含まれる単電池の中で、最も劣化した電池の特性に律速される傾向があるため、特定の電池が劣化しない電池群の設計が必要となる。
【0005】
そこで、複数の単電池が組み合わされて形成された電池群において、様々な電池配置の構成が開発されている。例えば特許文献1には、単電池の幅広面に略垂直な方向に5つの単電池が積層されてなる電池群が、筐体の底面を構成する板上に2つ並べて配置された構成が記載されている。一般に、直列に接続された電池には同じ電流値が印加されるため、内部抵抗がほぼ同じ電池であれば電池の温度は同等程度になる。この場合、電池間の熱流が生じにくいために電池の積層数が多ければ多いほど、積層された電池群の中心部分の温度が断熱状態に近づき、電池群の端部に比べて高温になる事が知られている。特許文献1のように直列にした電池群を二列に分けた場合、電池群は筐体底面から見て電池が5個積層されたのと同じ構成となるため、電池群の内の中心部分の電池の温度が低下しやすいメリットがある。加えて、直列電池群を分けるため、低背化が可能であるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9406916号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される構造の様に、電池群同士の側面を熱的に物理的に接続して配置した場合、電池群の接続面から熱が逃げる経路としては、電池群間に挟まれた部材を経由し、その部材の正面にある筐体を介して放熱する必要があり、放熱経路が冗長化する問題があった。放熱経路が冗長化した場合、熱抵抗は高くなる傾向があり、放熱性を向上させるためには改良の余地がある。
【0008】
このような構成では、冷却効率が低下した場合(例えば強制流通させる空気の流量が小さい場合や、入出力電流が大きく単電池の発熱量が大きい場合)、構成される電池群内の電池温度に分布が生じ、特に電池群中に積層された電池群のうち、中心付近に配置された単電池の電池温度が高く、劣化が進む恐れがある。本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、電池群間の温度差が小さい電池パックを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に記載の電池パックは、一対の幅広側面と、一対の幅狭側面と、前記幅広側面及び幅狭側面とを接続する底面と、外部端子が配置された上面と、を備えた電池セルを有し、前記電池セルの幅広側面を対向させて、複数個積層した第一の電池群と、前記電池セルの幅広側面を対向させて、複数個積層した第二の電池群と、前記第一の電池群及び第二の電池群を収納する筐体と、を備え、前記第一の電池群の外部端子が配置された面と、前記第二の電池群の外部端子が配置された面とは互いに対向して配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池群同士の外部端子が配置された面同士を互いに筐体内で対向させ、電池群同士を熱的に物理的に接続させない構造とすることで、電池群の熱抵抗を低減させ、これにより電池群内にある単電池の温度を低減する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1および2における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図
図2】実施例1および2において対向させる電池群内部に存在する単電池を電気的に直列接続する場合に実施する、具体的な配線構成の一例を説明するための図
図3】実施例1における電池群を筐体内に対向して配置する場合に実施する、具体的な電池モジュールの構成の一例を説明するための分解斜視図
図4図3に図示された電池モジュールの蓋を外して蓋の上面からモジュール内を見た場合の平面図
図5図4に図示された支持台と電装品を一体化された部分の分解平面図
図6】実施例3における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図
図7】実施例4における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図
図8】実施例5における電池群を筐体内に対向して配置する場合に実施する、具体的な電池モジュールの構成の一例を説明するため、蓋を外してその上面から見た場合の平面図
図9】比較例1における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図
図10】比較例2および3における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図
図11】実施例1と、比較例1および比較例2における電池群の温度上昇比率を比較する図
図12】実施例2と、比較例3における電池群の温度上昇比率を比較する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本実施形態は以下の内容に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施可能である。また本発明における冷却環境は例示であり、空気や水以外のその他の冷媒を用いた場合にも適用できる。
【0013】
本発明における二次電池には、リチウムイオン二次電池を例示したが、本構成を他の種類の蓄電池に対しても適用できる。またリチウムイオン二次電池の構成部材はどのようなものであっても効果が得られる。つまり本発明では正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてCu集電箔と炭素材料からなる電極を用いているが、その他の構成でも良い。例えば負極の集電箔にAl箔を用いた場合においても放熱性を向上することが可能である。またリチウムイオン電池の形状として本実施例では角形電池を用いたが、その他の形状として知られる例えばラミネート型、円筒型等電池であっても効果が得られる。
【0014】
筐体中に含まれる電池群の数は、本発明における構成であるように、電池の側面が筐体の側面に物理的に熱的に接触することで、電池群の側面からの放熱経路が短縮できる限り、いくつであっても良いが、好ましくは電池パックの安定性を確保するために偶数がよい。例えば、本発明の実施例のように電池群を2個とした場合、筐体の左右両側の側面に電池群を物理的に熱的に接触させて配置することができる。
【0015】
また、電池群を構成する電池数は、本発明における構成とすることができ、筐体内に収まり、所望の電圧や容量を確保できる限りは、何本としても、本発明における効果が得られる。放熱効果としては、ひとつの電池群中の単電池の積層本数は少なければ少ないほど効果が現れるが、好ましくは100本以下、より好ましくは20本以下、最も好ましくは10本以下である。本発明の実施例のように6本とすることで小型かつ冷却性を兼ね備えた電池パックとすることができる。
【0016】
さらに、対向させる電池群同士の電池数は必ずしも同じでなくても本発明における効果を得る事ができる。例えば電池群のうちの一方の電池数が、他方の電池数に比べて一本以上多い場合も、本発明における効果を得ることができる。
【0017】
また電池群をなす単電池の間に、例えば絶縁性シートや熱伝導性の高い部材を配置しても本発明の効果は得られるし、配置しなくても本発明の効果は得られる。また絶縁性のシートや熱伝導性の高い部材には例えばレール状、点状、など種々の形状の突起や溝などの立体構造を導入しても本発明における効果が得られる。単電池の側面が絶縁材料で被覆されている場合、これらの部材の材料として、アルミニウム、アルミダイカスト、銅、鉄等の熱伝導性の高い材料を用いることができる。また、単電池の側面が、絶縁材料で被覆されていない場合はポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、PPS、PPA、PBT等あるいは高熱伝導性樹脂を用いることができる。
【0018】
本発明では、電池群同士を筐体内部の対面同士に配置し、電極面が向き合う形となるため、対向させる電池群同士の間には、圧壊安全性を確保するため、電池群間に絶縁性の部材を少なくとも一部配置する事が好ましい。部材の例としては例えば以下が挙げられる。
【0019】
絶縁部材を、構成部材の一部に少なくとも用いられて作成される支持台であり、前記支持台には電池の安全機構(例えばヒューズなど)や、制御装置(例えば、Battery Management System:BMSなどがあげられる)や、プリチャージに必要なリレー、シャント抵抗、バスバーや導線などの導電性の配線、などの電装品の内、少なくとも一つを備えても良い。加えて、前記支持台は、これらの電装品を固定できる螺子や螺子穴や固定器具を備えても良い。これらの固定器具を用いて前記した電装品を支持台と一体化することで、導電性の配線を介して安全機構などの電装品と電池群をつなぎ、外部端子まで電気的に接続することができる。これにより、電池群それぞれの端子面の間に絶縁性の部材を導入可能であるため、圧壊安全性を備えつつ、放熱性も高い電池パックとすることができる。
【0020】
またこれらの支持台へ、安全機構などを取り付ける方法や位置関係は、本発明は特に限定されない。例えば絶縁性の支持台の上・下面や側面、内部にこれらの機器が配置・内蔵されていても良い。またこれらの機器の電気的な配置の順番にも特に制限されない。また支持台の大きさや形状も、電池群同士が圧壊により接近した場合に二つの電池群の絶縁性が確保できれば、どの様な大きさや形状でも良い。例えば、支持台が薄板状でも良いし、本発明に例示した支持台のように、各電装品を格納するために複雑な三次元形状としても良い。
【0021】
本発明の様に電池群が配置されれば、電池群を構成する単電池同士を電気的にどの様に接続しても本発明における効果を得る事ができる。例えば、電池群同士に対して配線を工夫することで並列に接続しても本発明における効果を得る事ができる。ここでは例として、電池群同士内の単電池を直列接続し、更に対向する二つの電池群同士も直列接続する場合の例を説明する。
【0022】
電池群同士を対向させた後に電池群を直列に接続する方法には、例えば以下が挙げられる。
(A)電池群同士を、バスバーを用いて直接接続する方法。この際、バスバー同士は作業性を考慮して、接続のために伸ばしたバスバーや配線の一部を使用して、ネジや溶接などの手法を用いて電気的に接続してもよい。ただし電気的に接続する方法はこれらのみには限らない。
(B)前記した、絶縁性の部材を構成部材に含む支持台を経由してバスバー同士を電気的に接続する方法。この際、支持台にはバスバー或いはケーブルなどの導電部を内蔵し、それらの導電性部材を介して電気的に接続する事が好ましい。
(C)ケーブルを用いて電池群同士を直接接続する方法。
(D)前記した、絶縁性の部材を構成部材に含む支持台を経由してケーブル同士を電気的に接続する方法などが挙げられる。
【0023】
また電池群は、単電池同士を電気的に直列あるいは並列接続することに加え、固定用の治具を用いて単電池同士を物理的に拘束することが好ましい。固定用の治具の材料には、単電池の側面が絶縁材料で被覆されている場合、アルミニウム、アルミダイカスト、銅、鉄等の熱伝導性の高い材料を用いることができる。また、単電池の側面が、絶縁材料で被覆されていない場合はポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、PPS、PPA、PBT等あるいは高熱伝導性樹脂を用いることができる。また、拘束の方法には本発明は限定されない。例えば、二つの電池群を固定用の治具一セットを用いて束縛した場合でも、固定用の治具2セットを用いて固定した場合でも効果が表れた。また固定用の治具の少なくとも一部が筐体であっても本発明における効果が得られた。
【0024】
筐体と電池群および支持台などの各部材の接触方法は特に限定されず、例えば接着剤などによる接着や、ボルトやナットなどの固定器具を介しての接続でも本発明における効果はあらわれる。筐体の形状は本実施形態においては直方体を例示するが、その形状は特に限定されない。また本発明における効果は電池パックへの電流印加条件や冷却条件に限定されない。
【0025】
本発明で例示する支持台には、熱伝導性の良いバスバーや導線が配置されるため、支持台から熱を逃がす機構を設けた場合、冷却効果が期待できる。例えば、支持台と熱的に接触する部分にヒートパイプや冷却管などの冷却機構を設けても良い。
【0026】
また、筐体にフィンやその他の冷媒を用いたジャケットや配管などの冷却機構を設けても、本発明における構造をとることで効果が得られる。
【0027】
筐体の種類には例えば、樹脂製筐体や、金属製筐体などが挙げられるが、特に制限されない。好ましくはアルミニウム、アルミダイカスト、銅、鉄等の熱伝導性金属製の筐体である事が好ましい。
【0028】
蓋から現れる外部端子の位置は本発明の例示では電装品配置可能スペースの上部に配置したが、外部端子の位置を加圧用束縛治具の上部に配置する事もできる。この場合も本発明における構造をとることで本発明における効果が得られる。実施例では、絶縁性の部材を構成部材に含む支持台に対して、バスバー等の導線が配置されており、それに対してネジを用いて各種電装品を接続することで、電気的に接続する方法が例示されている。
【0029】
(実施例1)
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
まず図3を用いて本発明にかかる電池パック100の概要を説明する。図3は本発明の電池パック100の分解斜視図である。本発明に係る電池パック100は、2つの電池群10A、10B、当該2つの電池群10A、10Bを収納する金属製の筐体7、筐体7の開口を塞ぐ蓋8、図3では図示されていない電装品を配置した支持台4から構成されている。なお、支持台4は電池群10Aと電池群10Bの間の電装品配置スペース4Aに配置される。電池群10A、10Bは互いに単電池1の端子(正極端子12、負極端子13)を対向させるように配置されており、互いに配線6で電気的に接続されている。蓋8には外部端子9が配置され配線6と電気的に接続されており、この外部端子9を介して電池パック100から電力が取り出されるようになっている。
【0031】
この電池群10A、10Bの詳細については図1を用いて説明する。単電池1には一対の幅広面、一対の幅狭面、底面、上面から構成されており、上面には正極端子12と負極端子13が配置されている。そして単電池1の間には絶縁性のスペーサ11が配置され、この端子の正負極が互い違いになるように単電池1が積層されている。
【0032】
最上部に配置された単電池1の幅広面と、最下部に配置された単電池1の幅広面のそれぞれに対向して一対の加圧用束縛治具3が配置されている。
【0033】
また、単電池1の幅狭側面に対向して一対の加圧用束縛治具2が配置されており、加圧用束縛治具2と加圧用束縛治具3とが互いに固定用金具5で固定されている。
【0034】
続いて図2に配線6と各単電池1との接続を示す。配線6は外部端子9と接続される配線6Aと、互いの単電池1間同士を接続する配線6C、電池群10A、10B間を接続する配線6Bの3つの種類に分けられる。これらの配線6A、6B、6Cが接続され電池群10A、電池群10Bが構成される。なお、電池群10Aの配線6Bと電池群10Bの配線6Bとは互いに接続される。
【0035】
続いて図3の蓋8を外した状態で筐体7の開口側から見た図を図4に示す。第一の電池群10Aと第二の電池群10Bとの間に配置された支持台4は配線6Aと接続され、この配線6Aは蓋8に設けられた外部端子9と接続される支持台端子部6A1に電気的に接続される。この支持台4には、BMS(基板)20、シャント抵抗21、ヒューズ22、リレー23が組み付けられる。組み付け方については図5を用いて詳述する。なお、この支持台は絶縁部材が用いられ、例えば絶縁性の樹脂材が使用される。
【0036】
続いて図5を用いて支持台4の説明をする。支持台4の一方の面にはBMS20とシャント抵抗21が配置され、他方の面にはヒューズ22とリレー23が配置される。BMS20とシャント抵抗21は一体に組み付けられた状態で、一方側が配線6Aに、他方側が支持台端子部6A1に接続される。
【0037】
他方の面に配置されるヒューズ22とリレー23は大きな部品であるため、他方側の面には2つの凹部が設けられ、そこにヒューズ22とリレー23が収容される構造となっている。このような構造にすることによって支持台4と電装品の一体アッセンブリを小型にすることができる。なお、ヒューズ22とリレー23とは互いに接続配線6A2で接続して一体にしたのちに支持台4に組み付けてもよい。また、電装品を組み付ける際にはねじ等の部品で組み付けるが、組み付け方はそれに限定されるものではない。
【0038】
続いて本実施形態の特徴部について再度図3に戻って説明する。
【0039】
本実施形態では電池群10A、10Bの4つの面、つまり、電池群10A、10Bの2つの側面(加圧用束縛治具2が配置されている面)、単電池1の底面、電池群10A、10Bの最下面(下側の加圧用束縛治具3が配置されている面)が直接筐体と接するように筐体7に収納している。そのため、2つ以上の電池群10A、10Bを収納する際に最も冷却性が向上する。一方で、冷却効率を向上させるために電池群10Aの端子が配置されている面と電池群10Bの端子が配置されている面とが互いに対向されるように収納する必要がある。そのため、本発明では、電池パック100に必要な電装品を絶縁性の支持台に組み付けて電池群10Aと電池群10Bの間に配置するように構成した。そのため、電池パック100としての冷却性を向上させつつ、2つの電池群10Aと電池群10Bの絶縁性も確保でき、電池パック100の大型化を防ぐことができる。この電池パック100の大型化を防ぐことができるという点についてより詳細に説明する。もともと電池群10Aの端子側面と電池群10Bの端子側面を対向させようとすると二つの電池群のために沿面距離を稼ぐ必要があり、その分電池パック100として体積が増加する。そのため、電池群10A、10Bの沿面距離を稼ぐ分の空間を支持台を配置する空間に重ねることができるため、電池パック100の大型化を防ぐことができる。
【0040】
本構造のさらなる効果としては、一旦支持台4に電装品を一体化してから電池パック100を構成することとしている。そのため、電池群10Aと電池群10Bとの間の狭い空間で電装品の配置作業をすることなく、電装品が固定された支持台4を筐体7等に一括で固定すれば作業が済むため電池パック100を作成する際の作業性が向上する。
【0041】
また本実施例では、支持台4の一方側には基板(20)、他方側には大きな部品であるリレー(23)及びヒューズ(22)が配置されている。このような構造にすることによって、平面部材であるBMS20を一方側に配置することができ、支持台4の片側にリレー23、もう片側にヒューズ22を配置するといったような構造と比較して無駄な凹凸空間が発生しなくなる。そのため、小型化に寄与するようになる。
【0042】
なお、本実施形態では配線6としてバスバーを用いたが、ケーブルを用いてもよい。
【0043】
上記のようにして作製した電池パックに対して電流を印加した。この際、筐体の下面に熱伝導率の低い部材を配置して電流を印加し、略空気の流れの無い恒温槽中での試験結果とした。なお電池からの発熱量は電流値から計算して平均3Wとなるように電流値を印加した。本実施例では、前記条件を電池パックに与えた後、ほぼ定常状態となった際の温度挙動を図11に示す。
【0044】
(実施例2)
本実施例では、正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてAl集電箔とスピネル系酸化物からなる電極を用い、それらの電極を捲回してなる単電池6本を図1に記載するように積層させ、その周囲を固定用の加圧治具を用いて固定することで電池群を得た。本実施例は、前記構成の電池に対して、実施例1と同様の電流印加条件および周囲の冷却環境を与え、ほぼ定常状態となった際の結果を図12に示す。
【0045】
(比較例1)
正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてCu集電箔と炭素材料からなる電極を用い、それらの電極を捲回してなる単電池を用い、12個の単電池1を直列につなげることで単一の電池群10A、10Bとした。この際、単電池1間には実施例1と同様のスペーサ11を配置した。電池群を図9の様に筐体底面に対して、単電池1の幅広面が略垂直な方向に単電池1を配置し、これら12本の電池群を固定用の加圧治具(22、33)を用いて固定することで電池群10Cを得た。筐体と電池群10Cはネジを使用して固定した。なお、図9は、筐体の蓋面の上面から見た平面図である。本比較例では実施例1と同様に、外部端子9から単電池1を繋ぐ経路上に電装品を配置されることとなる。電池群10Cの電極部から外部端子までは、バスバーおよびケーブルを用いて実施例1と同じ電装品を接続することで電気的に接続した。本比較例は、前記構成の電池に対して、実施例1と同様の電流印加条件および周囲の冷却環境を与え、ほぼ定常状態となった際の結果を図11に示す。
【0046】
(比較例2)
特許文献1に記載されている電池構成を模擬し、比較例とした。具体的には、正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてCu集電箔と炭素材料からなる電極を用い、それらの電極を捲回してなる単電池1を用い、電池群10Dのみを実施例1と比較できるよう、実施例1と同様に、6つの単電池からなる群とした。それらの電池群10Dの側面をそれぞれ物理的に接触させる形で電池群10Dを配置した。外部端子から電池群10Dの電極を繋ぐ経路上に電装品を配置されることとなり、電装品を電極部から外部端子までは、バスバーおよびケーブルを用いて実施例1と同じ電装品を接続することで電気的に接続した。また、実施例1と略同じ冷却環境を与えるため、前記電池群の周囲に筐体77および蓋88を新たに設けて比較実験とした。このような構成とした電池群10Dに対し、実施例1と同様の電流印加条件および周囲の冷却環境を与え、ほぼ定常状態となった際の結果を図11に示す。
【0047】
(比較例3)
本比較例では、正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてAl集電箔とスピネル系酸化物からなる電極を用い、それらの電極を捲回してなる単電池6本を図10に記載するように積層させ、その周囲を固定用の加圧治具を用いて固定することで電池群10Dを得た。本比較例は、前記構成の電池に対して、実施例1と同様の電流印加条件および周囲の冷却環境を与え、ほぼ定常状態となった際の結果を図12に示す。
【0048】
本実施例や比較例に示す条件を電池群に与えた結果、電池群の温度はほぼ定常状態に達した際に、環境温度に比べて電池温度が上昇した。図11及び図12では、本発明における実施例および比較例の中で、最も温度上昇が高くなった、比較例1中に存在する電池群の中で、環境温度からの温度上昇が最も大きかった電池の温度上昇を100%として、各例の中に存在する単電池の温度上昇比率を比較した。
【0049】
比較例1については、図9に示す左の単電池から順にセルNoをつけている。一方で比較例1以外は、積層された電池群について、底面からの高さの位置関係が同じ単電池については略同じ温度となったため、高さの異なる単電池6本についてのみ記載した。一方で比較例1を除く例の中では、図中のセルNoが小さい順に筐体底面からの高さが高くなっている。
【0050】
以下に各図の結果について詳細に説明する。
【0051】
図11には比較例1、2とともに、本発明を適用した例である、実施例1の温度上昇比率を示す。図から比較例1では電池を積層させた中心部分であるセルNo.6および7の温度が最大となる事が分かる。これはセルNo.7付近の電池では、周囲の電池で発生した熱量が放熱されないため、自身の電池温度だけでなく周囲の電池温度も高くなっており、温度差がつかないために熱が流れにくくなり、結果として電池温度が高くなっているためである。
【0052】
一方で、実施例1および比較例2では図11に示すように、積層された電池群の数が減少数することで6本の電池群の温度上昇比率が、12本積層されている比較例1に比べて減少している事が分かる。この影響があり、比較例2では、比較例1に比べて温度上昇が抑えられていると考える。それに加え、実施例1ではさらに、電池群同士の外部端子が配置された面同士を互いに筐体内で対向させ、電池群同士を熱的に物理的に接続させない構造としている。これにより比較例2よりも熱抵抗が低減され、比較例2に比べても単電池の温度を低減したと考える。
【0053】
図12には、正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてAl集電箔とスピネル系酸化物からなる電極を用い、それらの電極を捲回してなる単電池6本を用いて、本発明における構成と、公知例における構成で比較した場合を示す。図12の結果は、電池種を変えても本発明における効果があらわれることがわかる。
【0054】
(実施例3)
続いて実施例3について説明する。実施例3が実施例1と異なる点は筐体7の側面に水冷ジャケット107が設けられている点である。なお、実施例1と同様の構成については同様の図面番号を付している。
【0055】
図6は実施例3の構造を示すものである。本実施例では図6に示すように筐体7の側面に水冷ジャケット107を設けた。そのため、実施例1の効果に加えて、さらに冷却性能を強化することができる。
【0056】
(実施例4)
続いて実施例4について説明する。実施例4が実施例1と異なる点は筐体7の側面に空冷用のフィン177が設けられている点である。なお、実施例1と同様の構成については同様の図面番号を付している。
図7は実施例4の構造を示すものである。本実施例では図7に示すように筐体7の側面に空冷用のフィン177を設けた。そのため、実施例1の効果に加えて、さらに冷却性能を強化することができる。また、本実施例では空冷方式となるので、実施例3と比較して冷却性能は低下するが水冷に必要な装置等が不要となり、車両に搭載するときにコンパクトにすることができる。
【0057】
(実施例5)
続いて実施例5について説明する。実施例5が実施例1と異なる点は加圧用束縛部材2を筐体277と兼用した点である。なお、実施例1と同様の構成については同様の図面番号を付している。
【0058】
図8は実施例5の構造を示すものである。本実施例では図8に示すように筐体277の側面が直接電池群10A、10Bと接触するようになっており、加圧用束縛治具3が筐体277に接続される構造となっている。
【0059】
図8に示すように本実施例では加圧用束縛部材3が筐体277に直接接続される構造となっている。また、加圧用束縛治具3と筐体277との接触面積を増やすために本実施例では加圧用束縛治具3を収容するための筐体側面凹部277A、277Bと、2つの筐体側面凹部277A、277Bの間に配置される筐体側面凸部277Cが設けられている。このような構造にすることによって、電池群10A、10Bの側面部が加圧用束縛治具を介さずに直接筐体277に接触するため、冷却性能が向上する。また、電池群10A、10Bの加圧用束縛治具3が筐体側面凹部277A、277Bに配置されることによって、加圧用束縛治具3が筐体277との接触面積が増え、加圧用束縛治具3からの放熱が促進される。さらに2つの加圧用束縛治具3が筐体側面凸部277Cにも接触されるため、より加圧用束縛治具3からの放熱が促進される。
【0060】
以上、簡単に本発明についてまとめる。
【0061】
本発明の電池パック100では、一対の幅広側面と、一対の幅狭側面と、前記幅広側面及び幅狭側面とを接続する底面と、外部端子が配置された上面と、を備えた電池セル(1)を有し、電池セル(1)の幅広側面を対向させて、複数個積層した第一の電池群(10A)と、電池セル(1)の幅広側面を対向させて、複数個積層した第二の電池群(10B)と、第一の電池群(10A)及び第二の電池群(10B)を収納する筐体(7)と、を備え、第一の電池群(10A)の外部端子(12、13)が配置された面と、前記第二の電池群(10B)の外部端子(12、13)が配置された面とは互いに対向して配置される。このような構造にすることによって、電池群10A、10Bの4つの面、つまり、電池群10A、10Bの2つの側面(加圧用束縛治具2が配置されている面)、単電池1の底面、電池群10A、10Bの最下面(下側の加圧用束縛治具3が配置されている面)を直接筐体7と接するようにして冷却に使用できるようになるため、冷却性能が向上する。
【0062】
また、本発明に記載の電池パック(100)は、第一の電池群(10A)の外部端子(12、13)が配置された面と、第二の電池群(10B)の外部端子(12、13)が配置された面の間の空間には、電装品が配置される。このような構造にすることによって、電池群10A、10Bの沿面距離を稼ぐ分の空間を電装品の収納空間とすることができ、電池パック100の大型化を防ぐことができる。
【0063】
また、本発明に記載の電池パック(100)は、電装品として、基板(20)、リレー(23)、又はヒューズ(22)のうちの少なくとも2つ以上であれば、2つ以上の部品を一つのアッセンブリにできるため作業性向上の効果が得られる。
【0064】
また、本発明に記載の電池パック(100)は、電装品が、それぞれ絶縁部材に一体化されていることを特徴とする電池パック。このような構造にすることによって電池群10A、10B間の絶縁性を確保しつつ、電池群10Aと電池群10Bとの間の狭い空間で電装品の配置作業をすることなくなる。そのため、電装品が固定された支持台4を筐体7等に一括で固定できるため電池群10A、10B間の絶縁性を確保しつつ、作業性も向上させることができる。
【0065】
また、本発明に記載の電池パック(100)は、電装品が、基板(20)、リレー、(23)及びヒューズ(23)であり、絶縁部材の一方側には基板(20)、他方側にはリレー(23)及びヒューズ(22)が配置されている。このような構造にすることによって、平面部材であるBMS20を一方側に配置することができ、支持台4の片側にリレー23、もう片側にヒューズ22を配置するといったような構造と比較して無駄な凹凸空間が発生しなくなる。そのため、小型化に寄与するようになる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 単電池
2 加圧用束縛治具
3 加圧用束縛治具
4 支持台
5 固定用金具
6 配線
7 筐体
8 蓋
9 端子
10A、10B 電池群

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12