(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】錠剤の製造方法及び造粒粒子群
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20241220BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241220BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20241220BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20241220BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241220BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K9/20
A61K31/17
A61K31/522
A61K47/36
A61K47/38
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022191745
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2018195640の分割
【原出願日】2018-10-17
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】寺本 勘二
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136566(JP,A)
【文献】特開2014-125442(JP,A)
【文献】特開2013-133299(JP,A)
【文献】特開2018-090549(JP,A)
【文献】特開2010-270019(JP,A)
【文献】特開2014-159377(JP,A)
【文献】特開2011-046692(JP,A)
【文献】特開2020-063208(JP,A)
【文献】特開平11-139971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と下記(B)成分とを含む造粒粒子群を含む粉体を打錠する工程を有し、
前記造粒粒子群を構成する造粒粒子は、前記(A)成分と前記(B)成分との合計の含有量が、前記造粒粒子の総質量に対し、80質量%以上であり、水溶性高分子の含有量が、前記造粒粒子の総質量に対し、2質量%以下であり、前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.1~1.5である、錠剤の製造方法。
(A)成分:アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェイン及び無水カフェインからなる群より選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種。
【請求項2】
前記粉体を打錠する工程の前に、少なくとも前記(A)成分と前記(B)成分とを造粒して前記造粒粒子群を得る工程を有する、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項3】
前記造粒粒子群を得る工程を、湿式造粒法により行う、請求項2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項4】
前記造粒粒子群を得る工程の前に、少なくとも、粉体状の前記(A)成分と粉体状の前記(B)成分とを混合して粉体混合物を得る工程を有し、
前記造粒粒子群を得る工程が、前記粉体混合物を造粒して前記造粒粒子群を得る工程である、請求項2又は3に記載の錠剤の製造方法。
【請求項5】
前記粉体混合物を得る工程における混合時間が10分以下である、請求項4に記載の錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記造粒粒子は、下記(C)成分をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
(C)成分:
水に対する溶解性が、溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量で10000mL以上(20±5℃)であり、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、部分α化デンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びエチルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種。
【請求項7】
前記(C)成分/(前記(A)成分+前記(B)成分)で表される質量比が0.01~3である、請求項6に記載の錠剤の製造方法。
【請求項8】
前記造粒粒子群の水分率は、0.1~2.0質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
【請求項9】
下記(A)成分と下記(B)成分とを含む造粒粒子群であり、
前記造粒粒子群を構成する造粒粒子は、前記(A)成分と前記(B)成分との合計の含有量が、前記造粒粒子の総質量に対し、80質量%以上であり、水溶性高分子の含有量が、前記造粒粒子の総質量に対し、2質量%以下であり、前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.1~1.5である造粒粒子群。
(A)成分:アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェイン及び無水カフェインからなる群より選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種。
【請求項10】
下記(C)成分をさらに含む、請求項9に記載の造粒粒子群。
(C)成分:
水に対する溶解性が、溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量で10000mL以上(20±5℃)であり、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、部分α化デンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びエチルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種。
【請求項11】
前記(C)成分/(前記(A)成分+前記(B)成分)で表される質量比が0.01~3である、請求項10に記載の造粒粒子群。
【請求項12】
水分率は、0.1~2.0質量%である、請求項9~11のいずれか一項に記載の造粒粒子群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤の製造方法及び造粒粒子群に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアミノフェンを含む錠剤は、良好な崩壊性を有するが、摩損が生じやすい。
アセトアミノフェンを含む錠剤の摩損を改善する手法として、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を使用してアセトアミノフェン等を造粒し、得られた造粒物を打錠する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、摩損は改善されるものの、錠剤の崩壊性が著しく低下する。
本発明は、良好な崩壊性を有し、摩損が抑制された錠剤が得られる錠剤の製造方法及び造粒粒子群の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アセトアミノフェンをロキソプロフェン又はその塩とともに造粒し、それらの合計量が30質量%以上である造粒粒子群とすることによって、崩壊性を維持しつつ摩損を抑制できることを見出した。また、アセトアミノフェンと同様に摩損の課題がある他の薬物(エテンザミド、アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェイン、無水カフェイン)についても、同様の手法によって崩壊性を維持しつつ摩損を抑制できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づくものであり、以下の態様を有する。
【0006】
〔1〕下記(A)成分と下記(B)成分とを含み、前記(A)成分と前記(B)成分との合計の含有量が30質量%以上である造粒粒子群を含む粉体を打錠する工程を有する、錠剤の製造方法。
(A)成分:下記(a1)成分及び下記(a2)成分からなる群より選ばれる少なくとも1種。
(a1)成分:アセトアミノフェン及びエテンザミドからなる群より選ばれる少なくとも1種。
(a2)成分:アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェイン及び無水カフェインからなる群より選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種。
〔2〕前記粉体を打錠する工程の前に、少なくとも前記(A)成分と前記(B)成分とを造粒して前記造粒粒子群を得る工程を有する、前記〔1〕の錠剤の製造方法。
〔3〕前記造粒粒子群を得る工程を、湿式造粒法により行う、前記〔2〕の錠剤の製造方法。
〔4〕前記造粒粒子群を得る工程の前に、少なくとも、粉体状の前記(A)成分と粉体状の前記(B)成分とを混合して粉体混合物を得る工程を有し、
前記造粒粒子群を得る工程が、前記粉体混合物を造粒して前記造粒粒子群を得る工程である、前記〔2〕又は〔3〕の錠剤の製造方法。
〔5〕前記粉体混合物を得る工程における混合時間が10分以下である、前記〔4〕の錠剤の製造方法。
〔6〕前記造粒粒子群は、水溶性高分子の含有量が5質量%以下である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかの錠剤の製造方法。
〔7〕前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.1~12.5である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかの錠剤の製造方法。
〔8〕前記造粒粒子群は、下記(C)成分をさらに含む、前記〔1〕~〔7〕のいずれかの錠剤の製造方法。
(C)成分:不溶性デンプン誘導体及び不溶性セルロース誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種。
〔9〕前記(C)成分/(前記(A)成分+前記(B)成分)で表される質量比が0.01~3である、前記〔8〕の錠剤の製造方法。
〔10〕下記(A)成分と下記(B)成分とを含み、前記(A)成分と前記(B)成分との合計の含有量が30質量%以上である造粒粒子群。
(A)成分:下記(a1)成分及び下記(a2)成分からなる群より選ばれる少なくとも1種。
(a1)成分:アセトアミノフェン及びエテンザミドからなる群より選ばれる少なくとも1種。
(a2)成分:アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェイン及び無水カフェインからなる群より選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種。
〔11〕水溶性高分子の含有量が5質量%以下である、前記〔10〕の造粒粒子群。
〔12〕前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.1~12.5である、前記〔10〕又は〔11〕の造粒粒子群。
〔13〕下記(C)成分をさらに含む、前記〔10〕~〔12〕のいずれかの造粒粒子群。
(C)成分:不溶性デンプン誘導体及び不溶性セルロース誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種。
〔14〕前記(C)成分/(前記(A)成分+前記(B)成分)で表される質量比が0.01~3である、前記〔13〕の造粒粒子群。
【発明の効果】
【0007】
本発明の錠剤の製造方法によれば、良好な崩壊性を有し、摩損が抑制された錠剤が得られる。
本発明の造粒粒子群によれば、良好な崩壊性を有し、摩損が抑制された錠剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】錠剤の一例(標準R錠又は糖衣R錠)を示す側面図である。
【
図2】錠剤の他の例(2段R錠)を示す側面図である。
【
図3】錠剤の他の例(円形スミ角平錠)を示す側面図である。
【
図4】錠剤の他の例(円形スミ丸平錠)を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪造粒粒子群≫
本発明の造粒粒子群(以下、「粒子群(X)」ともいう。)は、(A)成分と(B)成分とを含み、(A)成分と(B)成分との合計の含有量が30質量%以上である造粒粒子(以下、「粒子(x)」ともいう。)の群である。
粒子(x)は、(C)成分をさらに含むことが好ましい。
粒子(x)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、(a1)成分及び(a2)成分からなる群より選ばれる少なくとも1種である。粒子(x)が(A)成分を含むことで、錠剤の崩壊性が優れる。
(a1)成分は、アセトアミノフェン及びエテンザミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
アセトアミノフェン(N-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド)及びエテンザミドはそれぞれ、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。アセトアミノフェンは、パラセタモールとも呼ばれる。
(a2)成分は、アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェイン及び無水カフェインからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
アリルイソプロピルアセチル尿素は、鎮静催眠成分である。カフェイン及び無水カフェインは、中枢興奮成分である。
(A)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0011】
<(B)成分>
(B)成分は、ロキソプロフェン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。粒子(x)が(B)成分を含むことで、錠剤の摩損度が優れる。ここで、摩損度が優れるとは、摩損度試験における摩損が抑制されていることを示す。摩損度は、錠剤の製造後に測定される摩損度(初期の摩損度)と、保存後に測定される摩損度(保存後の摩損度)の両方を意味する。保存後の摩損度の測定における保存条件としては、後述する実施例に示す条件、又はこれと同等の条件を採用し得る。摩損度は、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法、又はこれと同等の条件にて行われる摩損度試験により測定する。
ロキソプロフェンの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
(B)成分としては、ロキソプロフェンの塩が好ましく、ロキソプロフェンナトリウムがより好ましい。
(B)成分は、水和物の状態で存在していてもよい。水和物の例としては、ロキソプロフェンナトリウム二水和物が挙げられる(水分量として原薬末中約12%に相当する)。
【0012】
<(C)成分>
(C)成分は、不溶性デンプン誘導体及び不溶性セルロース誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。(C)成分は、崩壊性や摩損度をより高めるために用いられる。
ここで「不溶性」とは、水に対する溶解性が、第十七改正日本薬局方の通則における「ほとんど溶けない」(溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量が10000mL以上、20±5℃)であることを意味する。
不溶性デンプン誘導体の例としては、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、α化デンプン、部分α化デンプン等が挙げられる。
不溶性セルロース誘導体の例としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、エチルセルロース等が挙げられる。
(C)成分としては、崩壊性又は摩損度を良好に保つことができる点から、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
(C)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0013】
<他の成分>
他の成分としては、後述する錠剤任意成分と同様のものが挙げられる。
【0014】
<各成分の含有割合>
粒子(x)中、(A)成分と(B)成分との合計の含有量は、粒子(x)の総質量に対し、30質量%以上であり、40質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。(A)成分と(B)成分との合計の含有量が前記下限値以上であれば、錠剤の摩損、特に保存後の摩損を抑制する効果が優れる。
(A)成分と(B)成分との合計の含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。(C)成分及び他の成分それぞれの好ましい含有量を考慮し、全成分の合計が100質量%となるように適宜設定できる。
なお、本発明において、(B)成分の含有量は、ロキソプロフェンに結合する水分も含む。
【0015】
粒子(x)中、(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「(A)/(B)」ともいう。)は、0.1~12.5が好ましい。(A)/(B)が前記範囲の下限値以上であれば、崩壊性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、錠剤の摩損や物性のばらつきをより抑制できる。
(A)成分が(a1)成分である場合、(A)/(B)は、0.5~12.5がより好ましく、1.0~10.0がさらに好ましく、4.0~6.0が特に好ましい。
(A)成分が(a2)成分である場合、(A)/(B)は、0.1~5.0がより好ましく、0.5~3.0がさらに好ましく、0.75~1.5が特に好ましい。
【0016】
粒子(x)が(C)成分を含む場合、(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比(以下、「(C)/(A+B)」ともいう。)は、0.01~3が好ましく、0.01~0.42がより好ましく、0.02~0.3がさらに好ましく、0.07~0.2が特に好ましい。(C)/(A+B)が前記範囲の下限以上であれば、崩壊性、摩損度がより優れる。また、打錠時の機器への付着を抑制できる、保存後の外観安定性が良好になる等の効果も得られる。(C)/(A+B)が前記範囲の上限値以下であれば、(A)成分と(B)成分との合計の含有量を充分に多くできる。
【0017】
粒子(x)は、水溶性高分子の含有量が、粒子(x)の総質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。すなわち、粒子(x)は、水溶性高分子を含まないことが特に好ましい。水溶性高分子の含有量が少ないほど、崩壊性が優れる。
本発明において、「水溶性」とは、20℃の水に対する溶解度が1.3g/100mL以上であることを意味する。
【0018】
粒子群(X)の平均粒子径は、30~1500μmが好ましく、50~700μmがより好ましい。平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、製造機器への付着が抑制され、前記範囲の上限値以下であれば、粉体の均一性が良好になる。
粒子群(X)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製「LS13320型」)により測定される値である。
【0019】
粒子群(X)の水分率は、0.1~4.0質量%が好ましく、0.1~3.0質量%がより好ましく、0.1~2.0質量%がさらに好ましい。粒子群(X)の水分率が前記範囲の下限値以上であれば、錠剤の摩損をより抑制できる。粒子群(X)の水分率が前記範囲の上限値以下であれば、粒子群(X)の流動性が優れ、打錠前の臼への充填性が良好となり、錠剤の質量偏差が小さくなる。
粒子群(X)の水分率は、粒子群(X)を120℃10分間加熱したときの乾燥減量から算出される。すなわち、加熱前の質量(g)をW1、加熱後の質量(g)をW2としたときに、下記式により算出される。
水分率(質量%)=(W1-W2)/W1×100
【0020】
<造粒粒子群の製造方法>
粒子群(X)は、例えば、少なくとも(A)成分と(B)成分とを造粒する工程(造粒工程)を有する製造方法により製造できる。
前記製造方法は、必要に応じて、造粒工程の前に、粉体状の(A)成分と粉体状の(B)成分とを混合する工程(粉体混合工程)を有していてもよい。粉体混合工程を有する場合、造粒工程では、粉体混合工程で得た粉体混合物を造粒する。
以下、粉体混合工程と造粒工程とを有する態様の製造方法について詳しく説明する。
【0021】
(粉体混合工程)
粉体混合工程では、粉体状の(A)成分と粉体状の(B)成分とを混合して、粉体混合物を得る。このとき、粉体状の(A)成分及び粉体状の(B)成分とともに、粉体状の(C)成分や、粉体状の他の成分を混合してもよい。粉体状の他の成分としては、後述する賦形剤や崩壊剤等が挙げられる。
粉体混合物の総質量に対する粉体状の(A)成分と粉体状の(B)成分との合計量は、粒子(x)の総質量に対する(A)成分と(B)成分との合計の含有量に相当し、30質量%以上である。
【0022】
粉体混合工程で混合する各成分は、公知の製造方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。各成分は、原末をそのまま用いてもよく、原末を粉砕して用いてもよく、原末を造粒して用いてもよい。原末を造粒する場合、造粒方法は公知の造粒方法を採用できる。
【0023】
混合方法は特に限定されず、公知の粉体混合方法が挙げられる。例えば、一般的に粉体混合に用いられる機器(混合機)を使用して各粉体を混合することができる。
混合機としては、流動層造粒機、攪拌造粒機、ボーレコンテナミキサー、V型混合機、Wコーン型混合機及びリボンミキサー等が挙げられる。これらの中では、粉体状の(A)成分と粉体状の(B)成分とを効率良く混合可能な点や操作性、生産性の点から、流動層造粒機、攪拌造粒機が好ましい。
各粉体の混合機への投入順序は、製造上問題なければ特に限定されない。
混合条件は、使用する混合機に応じて適宜選定できる。例えば、流動層造粒機にて混合を行う場合は、給気温度60~100℃、給気風量1.0~4.0m3/分で混合を行うことができる。攪拌造粒機にて混合を行う場合は、チョッパー回転速度500~3000rpm、アジテーター回転速度100~500rpmにて混合を行うことできる。
混合時間は、10分以下が好ましく、5分以下がより好ましく、3分以下がさらに好ましい。混合時間が前記上限値以下であれば、錠剤の崩壊性及び摩損度がより優れる。
混合時間は、粉体の均一性の点では、0秒超が好ましく、10秒以上がより好ましく、20秒以上がさらに好ましい。
【0024】
(造粒工程)
本態様の造粒工程では、粉体混合工程で得た粉体混合物を造粒する。
造粒方法としては、乾式造粒法、湿式造粒法等が挙げられる。湿式造粒法としては、流動層造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、押し出し造粒法等が挙げられる。
造粒方法としては、製造性の点から、湿式造粒法が好ましい。中でも、(A)成分と(B)成分とを効率良く接触可能な点や操作性、生産性の点から、流動層造粒法及び攪拌造粒が好ましい。
造粒条件は、造粒方法に応じて適宜選定できる。例えば、流動層造粒法にて造粒を行う場合は、給気温度60~100℃、給気風量1.0~4.0m3/分で造粒を行うことができる。攪拌造粒法にて造粒を行う場合は、チョッパー回転速度500~3000rpm、アジテーター回転速度100~500rpmにて造粒を行うことできる。
【0025】
製造上問題ない液体を噴霧しながら造粒を行ってもよい。このような液体としては、水、エタノール等が挙げられる。
一般的に湿式造粒では、水溶性高分子や水不溶性アクリル酸重合体等の結合剤を水に分散又は溶解させた結合液を噴霧しながら造粒を行う。本態様の造粒工程においても、結合液を噴霧しながら造粒を行ってよい。この場合、得られる粒子群(X)を構成する粒子(x)は結合剤を含む。
結合剤が水溶性高分子を含む場合、崩壊性を良好に保つ点から、粒子(x)は、結合剤の含有量が少ないことが好ましい。具体的には、結合液の噴霧量は、水溶性高分子の含有量が、粒子(x)の総質量に対し、5質量%以下となる量であることが好ましい。水溶性高分子のより好ましい含有量は前記のとおりである。
【0026】
造粒後、必要に応じて、水分率の調整等の目的で、得られた造粒物を乾燥する。
乾燥方法としては、特に限定されないが、流動層造粒機又は箱式通気型式乾燥機等の乾燥機を使用して棚乾燥することが好ましい。
乾燥条件は、乾燥方法に応じて適宜選定できる。例えば、流動層造粒機を用いて乾燥を行う場合は、給気温度60~100℃、乾燥時間10~90分、給気風量1.0~4.0m3/分で乾燥させることができる。箱式通気型式乾燥機を用いて乾燥を行う場合は、乾燥温度40~90℃、乾燥時間15~130分で乾燥させることができる。
【0027】
以上、粉体混合工程と造粒工程とを有する態様の製造方法について説明したが、粒子群(X)の製造方法はこの態様の製造方法に限定されるものではない。
例えば、造粒工程を有し、粉体混合工程を有しない製造方法により粒子群(X)を製造してもよい。この場合、造粒工程では、造粒する各成分((A)成分、(B)成分、(C)成分等)を、粉体等の固体の状態で接触させてもよく、液状媒体に溶解又は分散された状態で接触させてもよい。
【0028】
粉体混合工程を経ずに造粒工程を行う場合、(A)成分及び(B)成分の造粒機への投入順序は、製造上問題なければ特に限定されない。例えば、(A)成分を投入し、造粒した後、造粒機に(B)成分を投入し、さらに造粒を行ってもよく、(A)成分と(B)成分の投入順序を逆にしてもよい。粒子(x)がより均一になりやすく、さらに工程の煩雑化を避けることができる点では、(A)成分と(B)成分とを同時に造粒機に投入して造粒を行うことが好ましい。
【0029】
≪錠剤≫
本発明の錠剤の製造方法により製造する錠剤(以下、「錠剤(Y)」ともいう。)は、粒子群(X)を用いたものであるため、粒子群(X)に由来する成分を含む。
粒子群(X)に由来する成分は、少なくとも(A)成分と(B)成分とを含み、必要に応じて、(C)成分や他の成分を含む。(A)成分は、(a1)成分のみでもよく、(a2)成分のみでもよく、(a1)成分及び(a2)成分の両方でもよい。
錠剤(Y)は、必要に応じて、本発明の効果や錠剤物性、保存安定性を損なわない範囲で、粒子群(X)に由来しない成分(以下、「錠剤任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0030】
錠剤任意成分としては、生理活性成分、添加剤等が挙げられる。
生理活性成分としては、解熱鎮痛成分(例えばピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、スルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン等)、鎮咳去痰成分(例えば、コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl-メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)、制酸剤(例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム)等が挙げられる。これらの生理活性成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
これらの生理活性成分の中でも、崩壊性、摩損度が良好で、保存後の臭い変化を抑制することができ、より保存安定性の高い製剤を提供可能となる点で、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0031】
添加剤の例としては、結合剤、賦形剤、崩壊剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味料等が挙げられる。
結合剤の例としては、結晶セルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。賦形剤の例としては、乳糖、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、トレハロース、マルチトール、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、L-システイン、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。崩壊剤の例としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分α化デンプン、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等が挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。香料の例としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。甘味料の例としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム等が挙げられる。酸味料の例としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等が挙げられる。
【0032】
錠剤(Y)中の(a1)成分の含有量は、製造上問題ない範囲内であれば特に限定されない。
錠剤(Y)の1錠当たりの(a1)成分の含有量は、30~500mgが好ましく、50~300mgがより好ましく、100~230mgがさらに好ましい。
錠剤(Y)の総質量に対する(a1)成分の割合は、10~95質量%が好ましく、35~85質量%がより好ましく、40~55質量%がさらに好ましい。
(a1)成分の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、崩壊性、保存後の外観安定性がより優れる。(a1)成分の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、摩損度がより優れる。また、錠剤大きさの観点から、服用性が良好となる。
【0033】
錠剤(Y)中の(a2)成分の含有量は、製造上問題ない範囲内であれば特に限定されない。
錠剤(Y)の1錠当たりの(a2)成分の含有量は、10~300mgが好ましく、20~200mgがより好ましく、30~150mgがさらに好ましい。
錠剤(Y)の総質量に対する(a2)成分の割合は、5~75質量%が好ましく、10~55質量%がより好ましく、15~40質量%がさらに好ましい。
(a2)成分の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、崩壊性、保存後の外観安定性がより優れる。(a2)成分の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、摩損度がより優れる。また、錠剤大きさの観点から、服用性が良好となる。
【0034】
錠剤(Y)中の(B)成分の含有量は、製造上問題ない範囲内であれば特に限定されない。
錠剤(Y)の1錠当たりの(B)成分の含有量は、ロキソプロフェンナトリウム二水和物換算で、5~170mgが好ましく、10mg~113mgがより好ましく、20mg~85mgがさらに好ましい。
錠剤(Y)の総質量に対する(B)成分の割合は、5~90質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、8~30質量%がさらに好ましい。
(B)成分の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、摩損度がより優れる。(B)成分の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、保存後の外観安定性がより優れる。
【0035】
錠剤(Y)中の(C)成分の含有量は、製造上問題ない範囲内であれば特に限定されない。
錠剤(Y)の1錠当たりの(C)成分の含有量は、1~200mgが好ましく、3~100mgがより好ましく、10~60mgがさらに好ましい。
錠剤(Y)の総質量に対する(C)成分の割合は、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、2~15質量%がさらに好ましい。
(C)成分の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、崩壊性、摩損度がより優れる。さらに製造機器への付着と保存後の外観変化を抑制できる。(C)成分の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、保存後の摩損度がより優れる。
【0036】
錠剤(Y)の1錠当たりの結合剤の含有量は0~30質量%が好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの賦形剤の含有量は0~40質量%が好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの崩壊剤の含有量は0~20質量%が好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの香料の含有量は0~5質量%が好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの滑沢剤の含有量は0~5質量%が好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの甘味剤の含有量は0~5質量%が好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの酸味料の含有量は0~5質量%が好ましい。
【0037】
錠剤(Y)の種類は特に限定されず、例えば素錠、糖衣錠、コーティング錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠等が挙げられる。
錠剤(Y)は、単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(積層錠)であってもよいし、有核錠であってもよい。錠剤(Y)が積層錠である場合、少なくとも1層が、粒子群(X)を用いた層であればよい。
【0038】
錠剤(Y)の寸法は、特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から、錠剤の直径φとして5~14mmが好ましく、6~13mmがより好ましく、7~12mmがさらに好ましい。
錠剤(Y)の1錠当たりの質量は、150mg~550mg程度が適切である。
【0039】
錠剤(Y)の形状は、本発明の効果の点では特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の点から、円柱部及び前記円柱部より上下に膨出する膨出部を有する形状が好ましい。前記の円柱部及び膨出部を有する形状の錠剤としては、R錠(標準R錠、糖衣R錠等)、2段R錠、スミ角平錠、スミ丸平錠等が挙げられる。これらの錠剤の膨出部は上下非対称であってもよいが、上下対称であることが好ましい。
以下に、図面を用いて、標準R錠又は糖衣R錠、2段R錠、円形スミ角平錠、円形スミ丸平錠の形状について詳細に説明する。
【0040】
図1に示すように、標準R錠又は糖衣R錠100は、円柱部8と、第一の膨出部12と、第二の膨出部22とを有し、第一の膨出部12、第二の膨出部22それぞれの表面の曲線の曲率半径Rが、膨出部表面の位置によらず一定である両凸面錠剤である。
第一の膨出部12は、円柱部8の一方の端面の周縁近傍から、前記一方の端面の中心に向かうに従って膨出する。第二の膨出部22は、円柱部8の他方の端面の周縁近傍から、前記他方の端面の中心に向かうに従って膨出する。
ここで、「第一の膨出部12の表面の曲線の曲率半径」とは、天頂12Aを通るように、円柱部8の端面に対して垂直方向に切断した際の断面において、第一の膨出部12の表面が描く曲線を円の一部とみなした際のその円の半径をいう。
「第二の膨出部22の表面の曲線の曲率半径」とは、天頂22Aを通るように、円柱部8の端面に対して垂直方向に切断した際の断面において、第二の膨出部22の表面が描く曲線を円の一部とみなした際のその円の半径をいう。
第一の膨出部12における天頂12Aは、一方の端面に対して最も高いところに位置する点である。第二の膨出部22における天頂22Aは、他方の端面に対して最も低いところに位置する点である。
第一の膨出部12のRと第二の膨出部22のRとは、同じであってもよく、異なっていてもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
【0041】
図2に示すように、2段R錠200は、円柱部8と、第一の膨出部12と、第二の膨出部22とを有し、第一の膨出部12、第二の膨出部22それぞれの周縁からの立ち上がり部の曲率半径R1と天頂12Aの曲率半径R2とが異なり、R1<R2である両凸面錠剤である。
第一の膨出部12のR1と第二の膨出部22のR1とは、同じであってもよく、異なっていてもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
第一の膨出部12のR2と第二の膨出部22のR2とは、同じであってもよく、異なっていてもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
【0042】
図3に示すように、円形スミ角平錠300は、円柱部8と、第一の膨出部12と、第二の膨出部22とを有する両凸面錠剤である。
第一の膨出部12は、円柱部8の一方の端面の周縁近傍から、前記一方の端面の中心に向かい所定の立ち上がり角度θにて直線的に立ち上がり、天頂12Aを含む任意の領域が平面となる。
第二の膨出部22は、円柱部8の他方の端面の周縁近傍から、前記他方の端面の中心に向かい所定の立ち上がり角度θにて直線的に立ち上がり、天頂22Aを含む任意の領域が平面となる。
第一の膨出部12における立ち上がり角度θと、第二の膨出部22における立ち上がり角度θとは、同じであってもよく、異なっていてもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
【0043】
図4に示すように、円形スミ丸平錠400は、円柱部8と、第一の膨出部12と、第二の膨出部22とを有する両凸面錠剤である。
第一の膨出部12は、円柱部8の一方の端面の周縁近傍から、前記一方の端面の中心に向かい所定のRにて立ち上がり、天頂12Aを含む任意の領域が平面となる。
第二の膨出部22は、円柱部8の他方の端面の周縁近傍から、前記他方の端面の中心に向かい所定のRにて立ち上がり、天頂22Aを含む任意の領域が平面となる。
第一の膨出部12のRと第二の膨出部22のRとは、同じであってもよく、異なっていてもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
【0044】
図1~4に示すように、標準R錠又は糖衣R錠100、2段R錠200、円形スミ角平錠300、円形スミ丸平錠400はそれぞれ、第一の膨出部12の外周に平面視円環状の水平面(ランド部14)を有し、第二の膨出部22の外周に平面視円環状の水平面(ランド部24)を有する。
ランド部14の幅はWである。「ランド部14の幅」とは、第一の膨出部12の周縁から端面周縁までの距離のことである。
ランド部24の幅は、Wと同じであってもよく、異なっていてもよい。錠剤強度の観点から、ランド部24の幅は、Wと同じであることが好ましい。
【0045】
錠剤の大きさは、服用性の観点から、以下の範囲に含まれることが好ましい。
・標準R錠…R=4.0~24.0mm、ランド部の幅W=0.05~0.1mm。
・糖衣R錠…R=2.0~18.5mm、ランド部の幅W=0.01~0.1mm。
・2段R錠…R1=1.2~8.0mm、R2=4.5~21.5mm、ランド部の幅W=0.05~0.1mm。
・円形スミ丸平錠…R=0.7~5.0mm、ランド部の幅W=0.05~0.1mm。
・円形スミ角平錠…立ち上り角度θ=25~35°、ランド部の幅W=0.05~0.1mm。
【0046】
錠剤(Y)は、例えば、ランド部を有さず、錠剤周縁部と膨出立ち上がり部とが接していてもよい。錠剤(Y)の形状が円形スミ角平錠又は円形スミ丸平錠の場合、第一の膨出部における天頂を含む任意の領域及び第二の膨出部における天頂を含む任意の領域のいずれか一方が平面でなくてもよい。錠剤(Y)の形状は、平面視円形でなくてもよく、平面視楕円形や、平面視方形、平面視円形と平面視方形とが複合した形状であってもよい。
錠剤(Y)に刻印はあっても無くてもよい。
【0047】
錠剤(Y)の形状は、上述の例には限定されないが、本発明の作用効果が得られやすい点で、R錠、2段R錠、円形スミ丸平錠、又は円形スミ角平錠剤が好ましく、R錠、2段R錠、又は円形スミ丸平錠がより好ましく、R錠又は2段R錠がさらに好ましい。
【0048】
錠剤(Y)の水分率は、1~8%が好ましい。錠剤(Y)の水分率が前記範囲の下限値以上であれば、崩壊性がより優れる。錠剤(Y)の水分率が前記範囲の上限値以下であれば、保存後の外観安定性が良好である。
錠剤(Y)の水分率は、錠剤(Y)の粉砕物を120℃10分間加熱したときの乾燥減量から算出される。水分率の算出方法は、粒子群(X)の水分率の算出方法と同様である。
錠剤(Y)の水分率は、錠剤(Y)の製造時に打錠する粉体の水分率、水分を含む任意成分の配合、製造工程中の乾燥条件等により適宜調整が可能である。
【0049】
≪錠剤の製造方法≫
本発明の錠剤の製造方法は、粒子群(X)を含む粉体を打錠する工程(打錠工程)を有する。
打錠工程の前に、粒子群(X)の製造を行ってもよい。粒子群(X)の製造方法は前記したとおりである。
【0050】
(粉体)
打錠工程で打錠する粉体(以下、「打錠用粉体」ともいう。)は、粒子群(X)を含む。打錠用粉体に含まれる粒子群(X)は1種でもよいし、2種以上でもよい。打錠用粉体は、粒子群(X)以外の他の粉体をさらに含んでいてもよい。
打錠用粉体が複数種の粉体(2種以上の粒子群(X)を含む粉体、1種以上の粒子群(X)と1種以上の他の粉体とを含む粉体等)の混合物(以下、「混合粉体」ともいう。)である場合、打錠工程の前に、粒子群(X)を含む複数種の粉体を混合する工程(打錠用粉体調製工程)を行う。打錠用粉体調製工程において各粉体は、前記した粉体混合工程と同様にして混合できる。
他の粉体としては、前記した錠剤任意成分の粉末が挙げられる。錠剤任意成分の粉末としては、原末をそのまま用いてもよく、造粒したものを用いてもよい。造粒したものを用いる場合、造粒方法は公知の造粒方法を採用できる。
打錠用粉体中の粒子群(X)の含有量は、製造する錠剤(Y)中の(A)成分及び(B)成分の所望の含有量に応じて適宜選定できる。
【0051】
(打錠工程)
打錠方法は特に限定されず、公知の打錠方法が挙げられる。例えば、臼と杵とを有する打錠機を用いて打錠用粉体を打錠する方法が挙げられる。
打錠機としては、例えば、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製:リブラ3L)等が挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。
なお、錠剤(Y)が積層錠である場合、打錠用粉体は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分よりも後に充填されてもよい。
【0052】
打錠工程の後、必要に応じて、打錠工程で得られた錠剤に対し、コーティング剤によるコーティング処理を施してもよい。
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも水溶性高分子化合物、可塑剤が好ましい。
水溶性高分子化合物としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース化合物、アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、トリアセチン等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
これらコーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
コーティング処理は、公知の方法により行うことができる。
【0053】
以上説明した本発明の錠剤の製造方法にあっては、粒子群(X)を含む粉体を打錠して錠剤を製造するので、良好な崩壊性を有し、摩損が抑制された錠剤が得られる。
【0054】
本発明の錠剤の製造方法により得られた錠剤は、下記式(1)及び下記式(2)を満たし得る。
t2w<t2w+4w (1)
t2w<t0 (2)
ここで、t2wは、前記錠剤を、透湿度が1ポケットあたり0.13~0.16mg(40℃、90%RH、24時間)であるプレススルー包装体に充填(アルミ箔でシール)した状態で、50℃75%RHで2週間保存したときの前記錠剤の崩壊時間(秒)を示し、t2w+4wは、前記錠剤をさらに4週間保存したときの前記錠剤の崩壊時間(秒)を示し、t0は、保存する前の前記錠剤の崩壊時間(秒)を示す。なお透湿度は、JIS Z 0208防湿包装材料の透湿度試験方法に準じ測定して求めた値である。
【0055】
前記式(1)及び式(2)を満たすことは、前記の条件での保存開始から2週間程度経過した時点では保存前よりも崩壊時間が短くなり、その後、崩壊時間が長くなることを示す。このような挙動を示す錠剤は、良好な崩壊性を有するとともに摩損が生じにくい。
t2wは、5秒以上840秒(14分)未満が好ましい。
t2wに対するt0の割合は、105~500%(t0としては10秒以上900秒(15分)未満)が好ましい。
t2wに対するt2w+4wの割合は、105~1000%(t2w+4wとしては10秒以上1800秒(30分)未満)が好ましい。
崩壊時間は、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ、6錠の崩壊時間を測定し(崩壊試験液は水)、それらを平均することで求めた値である。
【0056】
このように、粒子群(X)を用いることにより、良好な崩壊性を有し、摩損が抑制された錠剤が得られるので、粒子群(X)は、錠剤用として有用である。
ただし、粒子群(X)の用途はこれに限定されるものではない。例えば顆粒剤、カプセル剤、散剤、発泡顆粒剤等に粒子群(X)を用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0058】
<使用原料>
アセトアミノフェン:岩城製薬株式会社製、「ピレチノール」日本薬局方規格。
エテンザミド:岩城製薬株式会社製、「エテンザミド」日本薬局方規格。
アリルイソプロピルアセチル尿素:金剛化学株式会社製、「アリプロナール コンゴー」。
無水カフェイン:白鳥製薬株式会社製、「無水カフェイン0.2/0.5」。
ロキソプロフェンナトリウム二水和物:大和薬品工業株式会社、日本薬局方規格。
トウモロコシデンプン:松谷化学工業株式会社製、「局方松谷コーンスターチ」。
部分α化デンプン:旭化成株式会社製、「PCS」。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製、「L-HPC LH-31」(登録商標)。
結晶セルロース:旭化成株式会社製、「UF-702」。
クロスポビドン:BASF製、「Kollidon(登録商標) CL-SF」。
乳糖造粒物:フロイント産業株式会社製、「乳糖G」。
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、「ステアリン酸マグネシウム」。
ポリビニルアルコール:日本合成化学工業(株)製「ゴーセノール EG04」。
【0059】
<打錠条件>
打錠機:ロータリー式打錠機 リブラ3L(菊水製作所製)。
盤回転速度:20rpm。
臼杵:φ8.0mm(2段R)×12本立て、刻印無し (キャップ高さ0.1mm、 R1=3.2、R2=9.5)、又はφ9.0mm(2段R)×12本立て、刻印無し (キャップ高さ0.1mm、 R1=3.6、R2=10.5)。
予圧:1kN(約10MPa、約100kg/cm2)。
本圧:11kN(約110MPa、約1100kg/cm2)。
【0060】
<水分率の測定方法>
水分率は、電子水分計(MOISTURE BALANCE MOC-120H 島津製作所製)で、サンプル約5gを120℃10分間熱したときの乾燥減量から算出した。
造粒粒子群の水分率の測定においては、造粒粒子群をそのままサンプルとした。錠剤の水分率の測定においては、錠剤に対し、乳鉢を用いて粉砕処理を行い、得られた粉砕物をサンプルとした。
【0061】
<評価方法>
(崩壊性の評価)
得られた錠剤について、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ(崩壊試験液は水)、6錠の崩壊時間を測定し、その平均値を求めた。得られた平均値から下記評価基準に基づき、崩壊性を評価した。3点以上を合格とする。
「評価基準」
5:崩壊時間の平均値が5分未満。
4:崩壊時間の平均値が5分以上、10分未満。
3:崩壊時間の平均値が10分以上、15分未満。
2:崩壊時間の平均値が15分以上、20分未満。
1:崩壊時間の平均値が20分以上。
【0062】
(摩損度の評価1(初期の摩損度の評価))
得られた錠剤について、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法に準じ、繰り返し3回摩損度を測定し、その平均値を求めた。得られた平均値から下記評価基準に基づき、摩損度を評価した。2点以上を合格とする。
「評価基準」
4:摩損度の平均値が0.3%以下。
3:摩損度の平均値が0.3%超、0.6%以下。
2:摩損度の平均値が0.6%超、1.0%以下。
1:摩損度の平均値が1.0%超。
【0063】
(摩損度の評価2(保存後の摩損度の評価))
予め錠剤を収容するポケット部を成形した樹脂シート(大成化工製、「TAS-230」)のポケット部に、得られた錠剤を収容し、この樹脂シートの一方面にアルミ箔をラミネートしてポケット部の開口を封止し、プレススルー包装体を得た。このプレススルー包装体を50℃75%RHで4週間保存した。その後、プレススルー包装体から錠剤を取出し、この錠剤について、前記摩損度の評価1と同様にして摩損度の平均値を求め、摩損度を評価した。2点以上を合格とする。
【0064】
<実施例1、3、5、7、9及び11~34、製造例1~6、比較例1~4>
表1~7に記載の造粒粒子群の配合比に従って、造粒に用いる粉体を採取し、総質量3kgの粉体を流動層造粒機(フロイント産業(株)製、製品名:FLO-5)に入れ、給気温度80℃、給気風量2.0m3/分、表1~7に記載の混合時間にて混合した。
引き続き、この流動層造粒機内に液体を噴霧しながら給気温度80℃、給気風量2.0m3/分にて流動層造粒を行った。実施例1、3、5、7、9及び11~34、製造例1~6、比較例1、3、4においては、液体として水を噴霧した。水の総噴霧量は、粉体の総質量(3kg)に対して1200gとした。比較例2については、液体として結合液(5質量%ポリビニルアルコール水溶液)を噴霧した。結合液の総噴霧量は、ポリビニルアルコールの固形分換算での質量が、表7に記載の配合割合になる量とした。
引き続き、同じ流動層造粒機にて、給気温度80℃、給気風量2.0m3/分の条件で、排気温度が50℃になるまで造粒物を乾燥させ、造粒粒子群を得た。
その後、得られた造粒粒子群と、表1~5に記載の錠剤任意成分とを混合し、得られた混合粉体を前記の打錠条件で打錠し、錠剤を得た。実施例1、3、5、7、9及び11~34、比較例3及び4についてはφ9.0mmの臼杵を使用し、製造例1~6、比較例1~2についてはφ8.0mmの臼杵を使用した。
【0065】
<実施例2、4、6、8、10>
表1に記載の造粒粒子群の配合比に従って、造粒に用いる粉体を採取し、総質量3kgの粉を攪拌造粒機(アーステクニカ(株)製、製品名:ハイスピードミキサFS-10)に入れ、700gの水を滴下し、チョッパー回転速度1500rpm、アジテーター回転速度300rpmにて攪拌造粒を行った。得られた造粒物を流動層造粒機に投入し、給気温度80℃、給気風量2.0m3/分の条件で、排気温度が50℃になるまで造粒物を乾燥させ、造粒粒子群を得た。
その後、得られた造粒粒子群と、表1に記載の錠剤任意成分とを混合し、得られた混合粉体を前記の打錠条件で、φ9.0mmの臼杵を使用して打錠し、錠剤を得た。
【0066】
実施例1~34、比較例1~4の錠剤について、崩壊性及び摩損度を評価した。結果を表1~5、7に示した。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1~7において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、任意成分、錠剤任意成分それぞれの量(mg)は、錠剤1錠中の量を示す。空欄は、該当する成分を配合していないことを示す。「%」は、質量%である。
【0075】
実施例1~34の錠剤は、良好な崩壊性を有していた。また、初期の摩損度、保存後の摩損度がともに2点以上(1.0%以下)であった。
(B)成分を用いなかった比較例1の錠剤は、初期の摩損度、保存後の摩損度がともに1点(1.0%超)であった。
(B)成分の代わりに結合剤(ポリビニルアルコール)を用いた比較例2の錠剤は、崩壊性が劣っていた。
(B)成分を造粒粒子群に配合せず、錠剤任意成分として配合した比較例3の錠剤は、初期の摩損度、保存後の摩損度がともに1点(1.0%超)であった。
造粒粒子群中の(A)成分と(B)成分との合計の含有量が30質量%未満の比較例4の錠剤は、保存後の摩損度が1点(1.0%超)であった。
【符号の説明】
【0076】
100 標準R錠又は糖衣R錠
200 2段R錠
300 円形スミ角平錠
400 円形スミ丸平錠