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▶ オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

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  • 特許-インプラント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/86 20130101AFI20241220BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61F2/86
A61B17/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199371
(22)【出願日】2022-12-14
(65)【公開番号】P2023088887
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】63/289,842
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヴォスニツア
(72)【発明者】
【氏名】トルシュテン・ユルゲンス
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング・シュヴァインバーガー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0214285(US,A1)
【文献】特開2021-073041(JP,A)
【文献】特表2021-510341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/86
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ構造を介して前立腺の中葉の組織に局所的な虚血性圧力を加えることによる人の尿路の治療のためのインプラント(10)であって、折りたたまれた状態で遠位端部から尿道に挿入可能であり、尿道において組織を治療するためのワイヤ構造に広がるインプラント(10)において、前記ワイヤ構造が、ループに拡張可能なループワイヤ(11)と、前記ループ内で緊張可能な少なくとも2つのメッシュワイヤ(12)と、を含み、前記ループワイヤ(11)および前記少なくとも2つのメッシュワイヤ(12)は、前記前立腺の中葉の周囲に巻き付けられた後、前記ループワイヤ(11)のループ周長が減少し、かつ、前記少なくとも2つのメッシュワイヤ(12)が前記ループ内で緊張するように適合され
前記メッシュワイヤ(12)および前記ループワイヤ(11)の一方の端部が、ハンドリング装置(16)に固定して取り付けられており、別の端部が、前記インプラント(10)の近位端部に緩くかつ緊張可能にガイドされ、そこで前記ハンドリング装置(16)に接続され、
前記ハンドリング装置(16)が前記別の端部を引っ張ることにより、前記ループワイヤ(11)のループ周長が減少し、かつ、前記少なくとも2つのメッシュワイヤ(12)が前記ループ内で緊張することを特徴とする、インプラント(10)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのメッシュワイヤ(12)が、互いに平行、および、互いに横断する方向の少なくとも一方に整列されていることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント(10)。
【請求項3】
前記ハンドリング装置(16)が、シャフト、ワイヤまたは糸であることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント(10)。
【請求項4】
1つまたは複数の接続ばね(15)が、少なくとも部分的に前記ループワイヤ(11)に引っ張られ、前記メッシュワイヤ(12)が、位置を固定するために前記接続ばね(15)に通されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のインプラント(10)。
【請求項5】
前記ループワイヤ(11)が、接続ばね(15)として形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のインプラント(10)。
【請求項6】
全てのワイヤ(11,12)が、前記インプラント(10)の近位端部(14)においてまとめられ、緩いワイヤ(11,12)をそこで固定することができるまたは尿道を通じて外方へ案内することができることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のインプラント(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
尿路、特に良性前立腺肥大症(BPH)の治療のための様々な方法および技術が知られている。BPH症状の低侵襲の、特にボディスペアリングな治療において、除去可能なインプラントが、尿道または患者の尿道の前立腺部分に一時的に配置される。このようなインプラントは、ニチノールなどの形状記憶合金から形成されたワイヤ構造である。ワイヤ構造は、収縮した状態でカテーテルによって所定の位置に押し込まれ、そこで、所定の基本構造に広がる。3つまたは4つのワイヤから形成することができるこの構造は、バスケット構造である。このバスケット構造は尿道を拡張する。尿道の組織に対するワイヤ構造の拡張により、尿道の組織は、数日の経過において変性される。組織のこの変性は、組織の細胞における個々のワイヤの虚血性圧力により生じ、その結果、血流の減少または完全な欠如を生じる。その結果、血流の欠如は、細胞における酸素の欠乏、そして最終的には細胞の死につながる。数日の間に、尿の流れがほとんど正常に戻る程度にまで組織を減少させることができる。この治療の完了後、インプラントをカテーテルによって尿道から回収することができる。
【0003】
上述の技術は、尿道における組織を治療する非常に効率的な方法である。前立腺の腫脹により、中葉(medial lobe)が膀胱の内部深くまで膨張するおそれがある。このような中葉の突出だけではなく、起こり得る中葉の腫脹によっても、膀胱出口が変位することが考えられる。しかしながら、中葉の突出および腫脹の少なくとも一方による膀胱出口のこの変位は、前立腺の腫脹とは無関係に生じる可能性もある。膀胱出口の閉塞を回避することは医学的理由から重要である。しかしながら、このための公知の方法および技術は、かなり複雑であり、患者にとって心的外傷を与えることになる。したがって、上述の技術は、尿路を治療するのにも適していない。
【発明の概要】
【0004】
これに鑑みて、本発明は、それによって中葉(medial lobe)を単純かつ信頼できる態様で治療することができるインプラントを提供するという課題に基づく。
【0005】
この課題を解決するためのインプラントは、請求項1の特徴を有する。したがって、尿路を治療するためのインプラントがワイヤ構造を有することが提供される。治療は、泌尿器、特に中葉および場合によっては同時に尿道の組織に、局所的な虚血性圧力を加えることによって実施される。このインプラントは、折りたたまれた状態で遠位端部から尿道へ挿入可能であり、そこで広がり、組織を治療する。そこで、ワイヤ構造の個々のワイヤによって組織に圧力が加えられる。本発明は、ループに拡張可能なループワイヤと、前記ループにおいて緊張可能な少なくとも2つのメッシュワイヤと、を企図し、ワイヤ構造が中葉の周囲に巻き付け可能である。広げられると、インプラントはテニスラケットの形態を取り、ループワイヤがラケットのフレームを形成し、メッシュワイヤがカバーリングを形成する。中葉を治療するために、このループワイヤは中葉の周囲に通され、ネットワイヤの少なくとも一方の端部が緩く保持される。そのプロセスにおいて、テニスラケット形状は、トラップネット様形状に変形する。ループワイヤによって形成されたインプラントまたはループが中葉上へ通されると、ループワイヤおよびネットワイヤの両方が収縮され、ループ円周を減少させ、ネットワイヤを締め付ける。この収縮により、ループワイヤおよびメッシュワイヤの両方は組織に虚血性圧力を加え、組織を数日以内に変性させる。治療後、ループを再開放し、中葉から除去することができる。この低侵襲手順により、中葉は特に単純で、効率的かつ穏やかに治療される。
【0006】
好ましくは、複数のメッシュワイヤをループ内で緊張させることができ、メッシュワイヤは、互いに平行および互いに横断する方向(特に垂直)の少なくとも一方に整列されることが提供される。複数、例えば2、3、4、5または6本のメッシュワイヤを使用することによって、複数の圧力点を中葉に生じさせることができ、その結果、インプラントをより効率的に適用することにもなる。圧力領域のこの増大により、同じ期間において、より多くの組織が変性される。ループ内のメッシュワイヤの配向を互い違いにすることによって、ループの安定性を高めることができる。加えて、メッシュワイヤを所定の角度に配置することによって、組織を全領域にわたって圧力に曝すことができる。
【0007】
本発明の別の好ましい実施形態は、メッシュワイヤおよびループワイヤのそれぞれの一方の端部がワイヤ構造に固定して取り付けられ、メッシュワイヤおよびループワイヤのそれぞれの別の端部が、それらがハンドリング装置に接続、特に取外し可能に接続されているインプラントの近位端部に緩くかつ緊張可能にガイドされていることを提供してもよい。端部は、例えば、締結、接着、圧着、ノッティングなどによって取り付けることができる。緩い端部は、例えば、まとめられてハンドリングのためにワイヤを形成するか、または外側まで尿道を個々に通される。緩い端部はハンドリング装置によって可動であることも考えられる。ワイヤの緩い端部を引っ張ることによって、ワイヤを緊張させることができる。ワイヤを解放することによって、ループ構造またはメッシュ構造が放棄され、それによりインプラントが中葉から容易に除去され得る。
【0008】
ハンドリング装置が、シャフト、ワイヤ、糸などであることが想定されてもよい。用途に応じて、インプラントをまずこのハンドリング装置を介して体内に挿入し、そこで位置決めすることができる。その後、ハンドリング装置をインプラントから切り離すことができると考えられる。ワイヤの回収と再調整または再締付けとの少なくとも一方のために、ハンドリング装置をインプラントの近位端部に再び結合することができる。同様に、ハンドリング装置がインプラントに永久に接続されることが考えられる。
【0009】
発明の特に有利な実施形態は、1つまたは複数の接続ばねが少なくとも部分的にループワイヤ上で引っ張られ、メッシュワイヤが、位置を固定するためにこれらの接続ばねに通されていることを提供してもよい。したがって、1つの実施形態は、ループを形成するループワイヤが完全にガイドばねに通され、ネットワイヤが、テニスラケット形状を形成するためにループの反対側の位置において好ましくは対称的にこのばねに通されることを提供する。接続ばねは、ループワイヤを真っ直ぐに受容することができるようになっている。代替的な実施形態は、ループワイヤが部分的にのみ短い接続ばねを有することを提供する。これらの短い部分は、ループワイヤ上の所定の位置に固定されているので、接続ばねによってガイドされるネットワイヤは、所定の位置にとどまり、その位置から滑り出ることはない。ループワイヤがループを形成するように広げられると、接続ばねは、ばねとしての特性によりループ円周の増大に従う。同様に、ループワイヤが収縮されると、接続ばねが収縮するので、接続ばねをカテーテル内に引き戻すこともできる。治療中、接続ばねの個々のワイヤ部分は、組織の変性における強化効果を有する。
【0010】
さらに、本発明によれば、ループワイヤが接続ばねとして設計されることを提供することができる。この実施形態において、ループワイヤは存在しない。ループの締付けのために、接続ばねの対応する締付けが生じる。また、接続ばねは、上述の技術のために形状記憶材料から形成されてもよい。
【0011】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】インプラントの実施形態の概略図である。
図2図1による実施形態の例の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面には、本発明の可能な実施形態の例が概略的に示されている。この実施形態の例に本発明を限定する意図がないことに特に留意されたい。むしろ、本発明を他の実施形態によっても実現可能であることが意図されている。
【0014】
図1および図2に示された本発明によるインプラント10の概略的な実施形態の例によれば、これは、ループを形成する周囲ループワイヤ11によって形成されている。少なくとも2つのネットワイヤ12が、このループまたはこのループワイヤ11において緊張されている。これらのネットワイヤ12は、テニスラケットのサイドのようにループ内に配置されている。理想的には、2つのネットワイヤ12は、湾曲したループワイヤ11内で互いに横断する方向または互いに垂直に向けられている。
【0015】
図1に示した実施形態の例では、ループワイヤ11によって形成されたループは、ネットワイヤ12によって横断されており、2つのさらなるネットワイヤ12がそれに対して垂直に位置決めされている。さらに、これらのネットワイヤ12に対して、さらなるネットワイヤ12がループワイヤ11内で平行に配置されることが考えられる。
【0016】
インプラント10は、概略的にのみ示されたカテーテル13を通じて尿路に挿入される。ループワイヤ11およびメッシュワイヤ12は最初、カテーテル13内で折りたたまれている。ループワイヤ11は、カテーテル13から押し出されることによってループに広がり、それにより、メッシュワイヤ12がループ内で緊張される。この広がりは、ループワイヤ11の材料の選択によって実現される。すなわち、ループワイヤ11は、好ましくは、形状記憶材料(例えばニチノール)から形成されている。ループワイヤ11およびネットワイヤ12の両方は、それらの端部のうちの少なくとも1つによってハンドリング装置16に単に取り付けできるか、または取外し可能に取り付けできてよい。このハンドリング装置16は、ロッド、シャフト、ワイヤまたは糸であってよい。ハンドリング装置16によって、インプラント10を体内に挿入しかつ再び引き出すことができる。ハンドリング装置16は、インプラント10に解放可能に結合できることが考えられる。したがって、治療中、ハンドリング装置16をインプラント14から取り外すことができる。特にインプラント10を回収するために、インプラント10をハンドリング装置16に再び結合することができる。
【0017】
ループワイヤ11およびメッシュワイヤ12のそれぞれの一方の端部は、インプラント10の近位端部14、特にハンドリング装置16に固定されている。第2の端部は、インプラント10の近位端部14へ緩く戻されている。そこで、第2の端部を引っ張ることによって前後に移動させることができ、好ましくはロック可能またはハンドリング装置16にロック可能である。牽引力を加えることによって、例えば、ループワイヤ11の円周を減じることができる。さらに、ネットワイヤ12の自由端部を同時に引っ張ることによって、ネットワイヤ12の機械的張力を維持することができる。十分な機械的安定性を提供するために、ネットワイヤ12は、チタンまたはばね鋼から形成されている。
【0018】
ネットワイヤ12をループワイヤ11のループ内に固定するために、ネットワイヤ12は、ループワイヤ11の内側に沿って案内され、そこで固定手段によって所定の位置に保持される。したがって、ループ直径が増減されるときにネットワイヤ12は互いに対する相対位置を維持する。本発明の有利な実施形態では、ループワイヤ11は接続ばね15によって包囲されている。この接続ばね15は、ループワイヤ11の全長に沿ってまたは部分的にのみ延在してよい。
【0019】
図1および図2に示された実施形態の例では、接続ばね15はループワイヤ11の全長にわたって延在している。接続ばね15の個々の巻きは、そこにネットワイヤ12を通すために機能する。これにより、ネットワイヤ12は、単純かつ信頼できる形式で互いに相対位置を維持する。接続ばね15における複数のコイルは、また、複数のネットワイヤ12が、ループにおいて、実質的にあらゆる配向および配置(constellation)で緊張されることを可能にする。しかしながら、スペースの理由を考慮しても、ループ内の2~4つのネットワイヤ12がファブリックにおいて特に有利な効果を達成することが示されている。
【0020】
中葉を治療するために、ループワイヤ11によって形成されたループが、中葉上へ通される。最初、メッシュワイヤ12の緩い端部は固定されていない。その結果、ネットワイヤ12およびループワイヤ11は、中葉の周囲を包囲する。次のステップにおいて、ループワイヤ11およびネットワイヤ12の両方が引っ張られる。これは、ループの円周および包囲された組織におけるメッシュワイヤ12の機械的張力を変化させる。次の数日間、中葉の組織の既に制限された変性が生じる。治療の最後に、ループワイヤ11およびメッシュワイヤ12の緩い端部は解放され、中葉から持ち上げられる。インプラント10を引っ込めるかまたはメッシュワイヤ12を引っ込めることによって、それらは、図2に示したように緩い端部がループの平面から垂れ下がる。この状態で、身体を損傷することなくインプラント10を尿路から容易に除去することができる。
【符号の説明】
【0021】
10…インプラント、11…ループワイヤ、12…メッシュワイヤ、13…カテーテル、14…近位端部、15…接続ばね、16…ハンドリング装置
図1
図2