(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】家具等の扉用のヒンジ及びそのようなヒンジを備える家具物品
(51)【国際特許分類】
E05D 7/086 20060101AFI20241220BHJP
E05F 1/12 20060101ALI20241220BHJP
A47B 55/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
E05D7/086
E05F1/12
A47B55/00
(21)【出願番号】P 2022507348
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071322
(87)【国際公開番号】W WO2021023587
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】102019000014091
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517220911
【氏名又は名称】アルトゥーロ・サリチェ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ARTURO SALICE S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】サリチェ,セルジオ
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-047568(JP,Y1)
【文献】特表2018-514670(JP,A)
【文献】特表2017-519137(JP,A)
【文献】特表2013-534581(JP,A)
【文献】国際公開第2016/156514(WO,A1)
【文献】特表2019-512627(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181984(JP,U)
【文献】米国特許第08561262(US,B1)
【文献】登録実用新案第3139821(JP,U)
【文献】国際公開第2012/057249(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0136596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00 - 9/00
E05F 1/00 - 13/04, 17/00
A47B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具等の扉用のヒンジ(10)であって、
家具の側壁(12)に接続可能な固定部(11)と、
扉(14)に接続可能な可動部(13)と、
を備え、
前記固定部(11)と前記可動部(13)とは、少なくとも1つの関節軸(15)によって回動するように相互に接続されており、
ヒンジ(10)は、ヒンジ(10)の開閉動作を制御するための動作制御装置を更に備え、前記動作制御装置は、特に、ヒンジの閉鎖動作を減衰させるための減衰装置(30)、又はヒンジ(10)を開放するための弾性開放装置(48、49)の形態であり、
前記ヒンジ(10)の前記固定部(11)は、前記関節軸(15)に平行するか又は前記関節軸(15)を通過する面に沿って延びる実質的に平坦なハウジング本体(16’、16”)を有し、
前記固定部(11)の前記
ハウジング本体(16'、16”)は、前記家具の前記側壁(12)の厚さ内に設けられた平坦な座部(17)に挿入及び固定できるように形成されている、
前記固定部(11)の前記ハウジング本体(16'、16”)は、締結手段(44)を有し、
前記締結手段(44)は、前記側壁(12)内に設けられた前記座部(17)内に固定することができる少なくとも1つの中空保持要素(41'、41”)に締結することができる、
ことを特徴とする、ヒンジ(10)。
【請求項2】
前記動作制御装置は、前記ヒンジ(10)の前記固定部(11)の前記
ハウジング本体(16’、16”)内に配置され、前記ヒンジ(10)の前記可動部(13)に機能的に接続されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ(10)。
【請求項3】
前記動作制御装置は、前記ヒンジ(10)の閉鎖動作を減衰させるための減衰装置(30)を含み、
前記ヒンジは、前記ヒンジを閉鎖するための弾性閉鎖手段(39、40)を更に含む、
ことを特徴とする、請求項2に記載のヒンジ(10)。
【請求項4】
前記固定部(11)の第1の要素(18)と第2の要素(19)とは、第1のプレート(18)と第2のプレート(19)との形態で、前記ハウジング本体(16'、16”)の内部に配置され、
前記減衰装置は、少なくとも1つの流体作動式
のダンパー(30)を含み、
前
記ダンパー(30)は、
前記第1のプレート(18)と前記第2のプレート(19)とのうちの少なくとも1つに設けられた対応する座部(31'、31”)内に配置され、前記
第1のプレート(18)と前記第2のプレート(19)と実質的に同一平面上にある、
ことを特徴とする、請求項3に記載のヒンジ(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ダンパー(30)用の駆動要素(35)を備え、
前記駆動要素(35)は、前記ヒンジの前記可動部(13)に機能的に接続されており、前記駆動要素(35)は、少なくとも1つの前記ダンパー(30)に作用するように、前記固定部(11)の平面内において可動である、
ことを特徴とする、請求項4に記載のヒンジ(10)。
【請求項6】
前記固定部(11)の第1の要素(18)と第2の要素(19)とは、第1のプレート(18)と第2のプレート(19)との形態で、前記ハウジング本体(16'、16”)の内部に配置され、
前記動作制御装置は、前記ヒンジを開放するための弾性開放装置の形態であって、
前記弾性開放装置は、少なくとも1つの開放ばね(48)を有し、少なくとも1つの前記開放ばね(48)は、前記プレート(19)と実質的に同一平面上にあるように、前記第2のプレート(19)内に設けられた対応する座部(31”)内に配置され、
少なくとも1つの前記
開放ばね(48)の一端は、前記ヒンジの前記可動部(13)に機能的に接続された駆動要素(35)と直接的又は間接的に接触するように配置されている、
ことを特徴とする、請求項2に記載のヒンジ(10)。
【請求項7】
前記駆動要素(35)は平坦な摺動要素であって、
前記駆動要素(35)と前記ヒンジの前記可動部(13)との間に関節式で接続された接続レバー(36)がある、
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載のヒンジ(10)。
【請求項8】
前記動作制御装置は、前記ヒンジを開放するための弾性開放装置の形態であって、
前記弾性開放装置は、前記ヒンジの前記可動部(13)内に配置されたリーフ型又は金属ワイヤタイプのV字形
のばね(49)を含み、
前記ばね(49)の弾性アーム(49”)は、前記関節軸(15)で前記固定部(11)によって支持されるカム(50)に作用するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ(10)。
【請求項9】
前記ヒンジの前記弾性閉鎖手段は、前記可動部(13)内に配置されたリーフ型又は金属ワイヤタイプのV字形
のばね(39)を含み、
前記ばね(39)のアーム(39”)は、前記関節軸(15)で前記ヒンジの前記固定部(11)によって支持されるカム(40)に作用するように構成されている、
請求項3から5のいずれか1項に記載のヒンジ(10)。
【請求項10】
前記固定部(11)の第1の要素(18)と第2の要素(19)とは、前記ハウジング本体(16’、16”)の内部に配置され、互いに対して、且つ前記ハウジング本体(16’、16”)に対して移動可能及び調整可能であり、
前記
第1の要素(18)と前記第2の要素(19)とのうちの1つは、前記ヒンジの前記可動部(13)に接続されている、
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のヒンジ(10)。
【請求項11】
前記固定部(11)の前記第1の要素(18)と前記第2の要素(19)とは、第1のプレート(18)と第2のプレート(19)との形態であって、
前記ハウジング本体(16'、16”)は、相互に結合できる2つの平坦なハーフシェル(16'、16”)によって形成され、
第1のハーフシェル(16’)は、前記第1のプレート(18)を収容するための座部(20)を有することによって、前記第1のプレート(18)は、第1の方向に移動でき、第1のカムねじ(21)によって移動することができ、
次に、前記第1のプレート(18)は、前記第2のプレート(19)が摺動するための座部を有し、前記第2のプレート(19)は、前記第1のプレート(18)に対して、前記第1の方向に垂直な第2の方向に摺動でき、第2のカムねじ(23)によって移動される、
ことを特徴とする、請求項10に記載のヒンジ(10)。
【請求項12】
前記可動部(13)は、第1の本体(26)と第2の本体(27)とを備え、
前記第1の本体(26)は、回動できるように前記関節軸(15)に接続され、
前記第2の本体(27)は、移動できるように前記第1の本体(26)に接続され、カムねじ(29)によって移動することができる、
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のヒンジ(10)。
【請求項13】
前記締結手段
(44)は、締結プレー
トを含み、
前記締結プレー
トは、本体(16'、16'')の外側で移動すること及び駆動されることができるように支持され、前記中空保持要素(41'、41”)の内部に設けられた少なくとも1つの係合突起又は歯(45)と係合可能であるように、少なくとも1つのフック(44’)を有する、
ことを特徴とする、請求項
1に記載のヒンジ(10)。
【請求項14】
少なくとも1つの側壁(12)と、少なくとも1つの扉(14)とを備える家具であって、
少なくとも1つの前記側壁(12)と、少なくとも1つの前記扉(14)とは、請求項1から
13のいずれか1項に記載の前記ヒンジの2つ以上によって回動するように相互に接続され、
前記側壁(12)は、2つ以上の平坦な座部(17)を有し、
2つ以上の前記平坦な座部(17)は、前記側壁(12)の厚さ内に設けられ、前記側壁(12)と同一平面上にあり、
各々の前記ヒンジの前記固定部(11)の前記実質的に平坦なハウジング本体(16'、16”)は、前記家具の前記側壁(12)の厚さ内に設けられた前記平坦な座部(17)のそれぞれに挿入されて固定される、
ことを特徴とする、家具。
【請求項15】
前記側壁(12)の厚さ内に設けられた前記平坦な座部(17)のそれぞれは、前記ヒンジのための挿入開口部を有し、
前記挿入開口部は、前記側壁(12)の前面側のみにおいて開口し、
前記側壁(12)は、内側において、前記ヒンジの調整及び/又は固定部材にアクセスするためのアクセスウィンドウ(47)を有し、
前記
アクセスウィンドウ
(47)は、カバーによって閉じることができる、
ことを特徴とする、請求項
14に記載の家具。
【請求項16】
前記側壁(12)の厚さ内に設けられた前記平坦な座部(17)のそれぞれは、前記ヒンジのための挿入開口部を有し、
前記挿入開口部は、前記家具の前記側壁(12)の前面側、及び内側又は外側において開口し、
前記平坦な座部(17)の側面開口部を覆うためのカバーを有する、
ことを特徴とする、請求項
14に記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具等の扉用のヒンジ、特に、取り付けられたときに実質的に目視されないヒンジに関するものであり、また、そのようなヒンジを備える家具物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具の分野において、家具の扉を支えて回動させるために、一般に、固定部又はアームと可動部とを備えるヒンジが使用される。固定部又はアームは、家具の本体の側壁の内側面に固定することができ、可動部は、扉に接続できる箱状の本体で構成される。固定部と可動部とは、回転軸を介して、又は関節軸及び連接ロッカを含む関節運動システムを介して、回動できるように相互に関節連結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のヒンジは、機能性のいくつかの欠点が存在する。ヒンジの固定部は、家具物品の側壁に固定されると、かなりのスペースを占有し、これによって、家具物品内のスペースの使用、及び家具物品内に引出しの取り付けが制限される。更に、家具物品の側壁にヒンジの固定部の存在はまた、美的観点からも魅力が損なうこととなる。
【0004】
上記の欠点を克服するために、目視されないタイプのヒンジが提案されてきた。目視されないタイプのヒンジは、固定部と可動部とを備える。固定部は、家具物品の上部壁又は下部壁の厚さ内に設けられた座部(seat)に挿入され、ねじで固定できるように成形される。可動部は、ヒンジの固定部の垂直方向のスペース占有を減らすために、それぞれの関節軸に垂直な平面に沿って延びる平坦なロッカによって固定部に接続される。
【0005】
しかしながら、このようなソリューションでは、1つの扉には2つのヒンジのみが取り付けることができ、そのうち1つは家具の上部壁に、もう1つは家具の下部壁に取り付けられる。これは、大きな重量及び寸法を有する扉を支持することが不可能である。これは、このようなヒンジの使用の可能性が大きく制限されることを意味する。
【0006】
更に、固定ネジの噛み合わせを可能にするために、それらの座部を適切な形に作製するためには、家具物品の壁において複雑な機械加工を実行する必要がある点で、これらのヒンジには、家具の上部壁及び下部壁の座部への固定に関連する問題も存在する。更に、特に大きい寸法の扉の場合、固定部を壁の座部内に挿入してねじで固定することが困難である。
【0007】
本発明の目標は、家具等の扉用のヒンジを提供することであって、当該ヒンジは、目視されないタイプであって、使用の多様性が高く、特に大きな重量及び寸法を有する扉でも使用可能である。
【0008】
この目標の範囲において、本発明の目的は、上述したタイプのヒンジを提供することであって、当該ヒンジは、家具物品に簡単且つ迅速に取り付けることができ、構造の点で従来のソリューションよりもシンプルである。
【0009】
本発明の他の目的は、高い使用の多様性を提供し、目視されないタイプのヒンジの適用を可能にするように構成された家具物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目標及び以下でより明らかになるこれら及び他の目的は、家具等の扉用のヒンジによって達成される。当該ヒンジは、家具の側壁に接続可能な固定部と、扉に接続可能な可動部と、を備え、固定部と可動部は、少なくとも1つの関節軸によって回動するように相互に接続されている。当該ヒンジは、ヒンジの開閉動作を制御するための動作制御装置を更に備えている。当該動作制御装置は、特に、ヒンジの閉鎖動作を減衰させるための減衰装置(damping device)、又はヒンジを開放するための弾性開放装置(elastic opening device)の形態である。ヒンジの前記固定部は、前記関節軸に平行するか又は前記関節軸を通過する面に沿って延びる実質的に平坦なハウジング本体を有し、固定部の前記本体は、ヒンジの側壁の厚さ内に設けられた平坦な座部に挿入及び固定できるように形成されていることを特徴とする。本発明の更なる特徴及び利点は、従属請求項に更に規定される。
【0011】
本発明の特徴及び利点は、家具の扉用のヒンジのいくつかの優先的であるが非限定的な実施形態についての以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】家具物品に取り付けられた、本発明に係るヒンジの第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】家具物品の側壁の斜視図であって、当該側壁は、ヒンジの固定部を挿入するために、前面側に開口を有し、当該側壁の厚さ内に設けられた座部が示されている。
【
図3】
図2の側壁の斜視図であって、ヒンジの固定部の迅速な結合を可能にするための、座部に固定された保持要素を示している。
【
図4】
図1のヒンジの斜視図であって、固定部が保持要素を形成する2つのハーフシェルのうちの1つに挿入されているように示されている。
【
図5】開放状態にある
図1のヒンジの斜視図であって、本体の2つの部分の1つが固定部から取り外されている。
【
図6】閉鎖状態にある
図5のヒンジを示す図である。
【
図7】線VII-VIIに沿って取られた
図5のヒンジの縦断面図である。
【
図9】本発明に係るヒンジの第2の実施形態の斜視図である。
【
図10】本発明に係るヒンジの第3の実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照すると、符号10で全体的に示された本発明の第1の実施形態に係る家具の扉用のヒンジは、固定部11と可動部13とを備えている。固定部11は、家具の側壁12に接続可能であって、可動部13は、家具の扉14に接続可能である。固定部11と可動部13とは、少なくとも1つの関節軸によって、例えば、示されている実施形態においては関節軸15によって、又は4つ以上の関節軸及び2つ以上の接続レバーを含む従来型の関節運動システムによって回動するように相互に接続されている。
【0014】
当該ヒンジは、更に、ヒンジの開閉動作を制御するための制御装置を備えている。示されている実施形態では、動作制御装置は、特に、ヒンジの閉鎖動作を減衰させるための減衰装置を含み、その場合、ヒンジは、以下に説明するように、また、そのようなヒンジを閉鎖するための弾性閉鎖手段を備える。
【0015】
本発明によれば、ヒンジの固定部11は、関節軸15に平行するか、又は関節軸15を通過する面に沿って延びる実質的に平坦なハウジング本体16'、16”を有し、固定部11の本体16'、16”は、家具の側壁12の厚さ内で設けられ、側壁12と同一平面上に延びる平坦な座部17に挿入及び固定できるように形成されている。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、動作制御装置は、ヒンジの固定部11の平坦な本体16'、16''内に配置されるように形成され、ヒンジ10の可動部13に機能的に接続される。
【0017】
好ましくは、ハウジング本体16'、16”は、例えば、差し込みカップリング(bayonet coupling)などによって相互に結合することができる2つの平坦なハーフシェル16'、16”によって形成され、ヒンジの動作制御デバイス及びその他の構成要素を収容するための内部空間を規定する。
【0018】
特に、固定部の第1の要素と第2の要素とは、ハーフシェル16'、16”の内部に配置され、具体的には、第1のプレート18と第2のプレート19との形態であって、これらは、互いに対して、且つハーフシェル16’、16”に対して移動可能及び調整可能である。
【0019】
図8によりよく示されているように、ハーフシェル16'は収容座部20を有し、第1のプレート18は、収容座部20内に配置されて、関節軸15に平行に移動することができるとともに、第1のカムねじ21又は他の作動要素によって移動することができる。これによって、扉14の垂直方向の調整が可能となる。
【0020】
第1のプレート18は、上下に、第2のプレート19のための摺動座部を規定する折り畳み部分22が設けられている。第2のプレート19は、関節軸15に垂直な方向において、第1のプレート18に対して摺動することができるとともに、第2のカムねじ23によって移動することができる。これによって、扉14の正面調整が可能となる。
【0021】
プレート18、19は、異なる方向に移動可能及び調整可能であってもよく、例えば、第1のプレート18は、関節軸15に垂直な方向に移動可能であり、第2のプレート19は、当該関節軸15に平行に移動可能である可能性も排除されない。
【0022】
第2のプレート19は延長部19’を有し、当該延長部19’は、関節軸15が挿入される同軸穴25を有する2つの相互に平行する平坦なアーム24で終端する。
【0023】
関節軸15は、可動部13と回動するように接続されている。可動部13は、扉14の横方向の調整を可能にするために、互いに対して移動できる2つの本体26、27によって構成されることが好ましい。
【0024】
具体的には、可動部13は、関節軸15と回動的接続するための同軸穴28を有する第1の本体26と、第2の本体27とを備える。第2の本体27は、第1の本体26に接続されることによって、関節軸15に垂直な方向、且つ、第2の本体27のフランジ27'に平行する方向において摺動することができる。フランジ27'は、第2の本体27を扉14に固定するために用いられる。第1の本体26に対する第2の本体27の摺動は、第3のカムねじ29によって制御される。
【0025】
示される好ましい実施形態では、ヒンジの閉鎖動作を減衰させるための減衰装置は、少なくとも1つの流体作動式ダンパー(fluid-operated damper)、例えば、油動式ダンパーを含む。当該流体作動式ダンパーは、プレート18、19の少なくとも1つに設けられた対応する座部内に配置され、それぞれのプレート18、19と実質的に同一平面上にある。
【0026】
好ましくは、2つの油動式線形ダンパー30がプレート18、19の少なくとも1つ内に設けられ、プレート18、19と実質的に同一平面上にある。示される実施形態では、プレート18、19の両方は、ダンパー30のための座部31'、31”を有する。
【0027】
各ダンパー30は、プレート19の延長部19’に向けられたシリンダ32と、シリンダ32から延長部19’と反対方向に延びるステム33とを含む。また、ステム33をリセットするためのばね(図示せず)が設けられており、当該ばねは、シリンダ32の内部に配置するか、又はステム33と同軸に配置することができる。
【0028】
シリンダ32は、第2のプレート19の座部31”内に固定することができる支持要素34によって摺動できるように支持されている。そして、ステム33は、要素34の端部壁34’に当接するように、当該支持要素34内に延びる。
【0029】
ダンパー30は、ヒンジの可動部13に機能的に接続された駆動要素35によって作動される。好ましくは、駆動要素35は、第2のプレート19の延長部19'に配置された平坦な要素の形態であって、プレート19と平行に、そして固定部11の本体16'、16”の面に沿って摺動できるように移動することによって、ダンパー30を圧縮するようにダンパー30のシリンダ32に作用することができる。好ましくは、駆動要素35は、接続レバー36によって可動部13に機能的に接続される。接続レバー36は、軸37によって駆動要素35に、そしてヒンジの関節軸15から離間されている軸38によって、可動部13、特に可動部13の第1の本体26に関節式で接続されている。これによって、クランク機構(crank mechanism)が規定される。当該クランク機構は、ヒンジの閉鎖動作中に、特に、
図6に示す最後の25°~35°に沿って、完全に閉鎖する位置までの閉鎖動作において、ダンパー30を圧縮することができる。
【0030】
駆動要素は、別のタイプ、例えば、固定部11内の回動レバー又は可動カムであってもよく、ヒンジの可動部13との機能的接続は、異なる伝達システムを介して実現されてもよい。
【0031】
同様に、ダンパー30の配置を逆にすることができる。すなわち、シリンダ32が支持要素34内に固定され、ステム33は、駆動要素35に向けられて、駆動要素35によって、ステム33自体に配置された先端要素を介して直接的又は間接的に作動されてもよい。
【0032】
ヒンジ10を閉鎖位置にさせて、ユーザの介入までその位置に維持するために、前述したように、ヒンジ10は、弾性閉鎖手段を備え、当該弾性閉鎖手段は、好ましくは、可動部13、特に第1の本体26に配置されたリーフ(leaf)型又は金属ワイヤタイプのV字形ばね39を備える。ばね39は、本体26の固定された当接面26’上に載置される第1の弾性アーム39’と、カム40に作用する第2の弾性アーム39”とを有する。カム40は、関節軸15で固定部11の第2のプレート19によって支持され、例えば、30°と45°との間に含まれる開口角度から開始して閉鎖方向に作用する力を生成するように形成される。
【0033】
家具物品にヒンジを迅速に取り付けるためには、好ましくは、固定部11のハウジング本体16’、16”は、少なくとも1つの中空保持要素に締結することができる締結手段を有する。締結手段は、好ましくは、差し込みカップリング又はスライディングカップリング(sliding coupling)によって互いに接続することができる2つのハーフシェル41’、41”によって形成される。中空保持要素は、保持要素41’、41”の横フランジ43内に設けられた穴42に挿入することができるねじによって、側壁12の厚さ内に設けられた座部17に固定することができる。
【0034】
或いは、保持要素は、接着剤による接着によって、又は連動係合手段(interlocking engagement means)若しくは他のタイプの手段によって、座部17に固定することができる。
【0035】
ハウジング本体16'、16''の締結手段は、好ましくは、締結プレート44を含み、当該締結プレート44は、ハーフシェル16'の外側で移動できるように支持される。また、当該締結プレート44は、少なくとも1つのフック44'を有することによって、中空保持要素41’、41”の内部に設けられた少なくとも1つの係合突起又は歯45と係合可能である。
【0036】
好ましくは、固定プレート44は、関節軸15と平行に移動することができ、ハーフシェル16’とそのプレート44との間で係合可能なカムねじ46によって制御可能である。ただし、固定プレートの輪郭を変えたり、別の方法で移動したりする可能性も排除されない。
【0037】
ハウジング本体16'、16”の中空保持要素41’、41”への挿入を容易にするために、好ましくは、ハウジング本体16'、16”、及び/又は、中空保持要素41’、41”には、円錐形又は入口面が存在する。
【0038】
中空保持要素を使用せずに、ヒンジの固定部のハウジング本体16’、16”が家具物品の側壁12の座部17に直接挿入して固定する可能性も排除されない。固定は、例えば、本体16'、16”の適合された横方向フランジに配置され、壁12に直接係合可能なねじによって、又は本体16'、16”の背面に設けられた1つ又は複数のシャンクによって行うことができる。1つ又は複数のシャンクは、圧力によって、又はシャンクの対応する側穴に係合するように壁12の側面に設けられた穴に挿入されたねじによって、側壁12に固定可能である。シャンクの対応する側穴は、好ましくは、固定を安定且つ正確にすることができる付加的な引っ張りを生成するために、円錐面などで便利に成形される。
【0039】
示される実施形態では、側壁12の厚さ内に設けられた平坦な座部17は、ヒンジの固定部11のための挿入開口部を有する。当該挿入開口部は、側壁12の前面側のみにおいて開口する。この場合、側壁12は、ヒンジの調整及び/又は固定部材、特にカムねじ21、23、46にアクセスするために、内側において、アクセスウィンドウ47を有し、そのようなウィンドウ47は、図示されていないカバーによって閉じることができる。
【0040】
或いは、平坦な座部17が、家具物品の側壁12の内側又は外側において開口することも可能である。この場合、ヒンジの固定部11の取り付けは、それを正面から座部17に挿入するだけでなく、ヒンジの固定部11を座部17の横に置き、それを横方向に挿入することによって取り付けを行うこともできる。
【0041】
この場合、固定は、例えば、2つの収容体16’、16”のうちの1つに周辺フランジを設けることによって行うことができる。当該周辺フランジは、家具物品の側壁12に係合することができるねじを挿入するための穴を備えている。
【0042】
更に、平坦な座部17の側面開口部を覆うためのカバーが設けられる。ヒンジが座部17に挿入されて固定された後、当該カバーがヒンジ又は側壁に適用され、固定される。
【0043】
本発明によるヒンジの構成により、家具の側壁に対応する数の平坦な座部を設けることにより、家具物品に2つよりも多いヒンジ、例えば、3つ以上のヒンジを取り付けることが可能である。これによって、大きな重量及び寸法を有する扉を支持することが可能となる。
【0044】
図9は、本発明の第2の実施形態を示しており、同一の参照符号を用いて類似又は同等の部品を示している。
【0045】
この実施形態では、減衰装置の代わりに、ヒンジ10は、異なる動作制御装置、特に、弾性開放装置の形態の動作制御装置を備えている。当該弾性開放装置は、ヒンジに対して、ヒンジの閉鎖位置から開始して、開く方向に、例えば、20°から50°の間に含まれる角度に沿って動きを与えることができる。この場合、ヒンジは、第1の実施形態に係るヒンジが備える弾性閉鎖手段39、40を含まない。
【0046】
特に、ヒンジ10の弾性開放装置は、少なくとも1つの開放ばね、好ましくは第1及び第2の開放ばね48を含み、これらの開放ばね48のそれぞれは、少なくとも第2のプレート19に設けられた座部31”に、互いに平行に配置され、プレート19とは実質的に同一平面上にある。
【0047】
各ばね48の第1の端部は、第2のプレート19の座部31”に固定することができる支持要素49のそれぞれに配置され、ばね48の反対側の端部は、プレート19の延長部19'に向かって突出して、ヒンジの可動部13に機能的に接続されている駆動要素35と直接的又は間接的に接触する。
【0048】
間接的な接触は、例えば、プレート19の延長部19'に向けられたばね48の端部において、ばねに先端要素及び/又はガイド要素があって、当該先端要素及び/又はガイド要素は、そのばね上又はそのばね内に挿入されて駆動要素35と接触することで、上記間接的な接触が実現できる。
【0049】
好ましくは、駆動要素35は、平坦な要素の形態である。駆動要素35は、第2のプレート19の延長部19’に配置され、プレート19と平行に、したがって、固定部11の本体16’、16”の面に沿って摺動するように移動することができる。これによって、ばね48を圧縮するか及び/又はばね48によって押されるように、ばね48と作用することができる。
【0050】
駆動要素35は、接続レバー36を介して可動部13に機能的に接続されている。接続レバー36は、駆動要素35と可動部13と関節式で接続され、これによって、ヒンジの閉鎖動作中に、例えば、閉鎖動作の最後の20°~50°に沿って、ばね48を圧縮することができるクランク機構が規定される。このようにして、ばね48は、解放可能に扉を閉鎖位置に保持するための従来の保持装置を解放した後、ヒンジに対して開く方向に前述した動きを与えることができる。
【0051】
駆動要素及び/又は可動部との機能的接続の手段は異なるタイプである可能性も排除されない。
【0052】
図10は、本発明の第3の実施形態を示しており、同一の参照符号を用いて類似又は同等の部品を示している。
【0053】
この更なる実施形態においても、減衰装置の代わりに、ヒンジ10は、異なる動作制御装置、特に、ヒンジに対して、ヒンジの閉鎖位置から開始して、開く方向に、例えば、20°から50°の間に含まれる角度に沿って動きを与えることができる弾性開放装置の形態の運動制御装置を備える。
【0054】
この場合、ヒンジ10の弾性開放装置は、リーフ型又は金属ワイヤタイプのV字形ばね49を備える。当該V字形ばね49は、
図1から8に示す第1の実施形態の閉鎖ばね39と同様又は相当の輪郭及び配置を有する。特に、開放ばね49は、可動部13、特に第1の本体26内に配置されている。ばね49は、本体26の固定された当接面26’上に載置される第1の弾性アーム49’と、カム50に作用する第2の弾性アーム49”とを有する。カム50は、関節軸15で固定部11の第2のプレート19によって支持され、第1の実施形態のカム39とは異なる形状を有する。これによって、ヒンジの閉鎖位置から開始して、開く方向に、例えば、0°から50°の間に含まれる開き角度に沿って作用する力を生成する。
【0055】
実際に、本発明によるヒンジは、設定された目標及び目的を完全に達成したことが明らかになっている。特に、本発明によるヒンジは、家具物品の側壁において障害となることなく、当該壁の厚さ内に埋め込まれるため、実質的に目視されないことが明白である。更に、2つ以上のヒンジを取り付けることが可能であるため、本発明によるヒンジを利用することによって、大きな重量及び寸法の扉を有し、側壁には目視できる金物類の要素を有さない斬新なデザインを有する家具物品の作製が可能となる。
【0056】
同様に、本発明によるヒンジは、簡単かつ迅速に家具物品に取り付けることができ、構造の点で従来のソリューションよりもシンプルである。
【0057】
本発明によるヒンジ及び家具の物品は、多数の修正及び変形が可能であり、それらの全ては添付の特許請求の範囲内に含まれる。更に、全ての詳細は、他の技術的に同等の要素で置き換えることができる。
【0058】
実際に、使用される材料、及び不特定な寸法及び形状は、要求及び技術水準に応じて任意に採用されてもよい。本出願は、イタリア特許出願第102019000014091号の開示に基づいて優先権を主張し、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
特許請求の範囲に記載された技術的特徴の後に参照符号が付されている場合、それらの参照符号は、特許請求の範囲の理解度を高めるためのみに含まれている。したがって、そのような参照符号は、例としてそのような参照符号によって識別される各要素の解釈にいかなる限定的な影響も及ぼさないものである。