(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241220BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241220BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20241220BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241220BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241220BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L23/48 G
H01L23/48 T
H01L23/36 C
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2022511955
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011701
(87)【国際公開番号】W WO2021200336
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2020065762
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】石松 祐司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼ 憲治
(72)【発明者】
【氏名】原 英夫
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186321(JP,A)
【文献】特開2017-112153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/48
H01L 23/36
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において相互に離間した基板主面および基板裏面を有する基板と、
素子主面
および前記素子主面と反対側の素子裏面を有し、前記素子主面に第1主面電極が形成された電子素子と、
前記基板主面上に配置され且つ前記電子素子の駆動を制御する制御素子と、
前記基板主面上に形成され、前記電子素子を制御するための制御信号を伝送する配線部と、
前記厚さ方向において互いに離間した主面および裏面を有し、前記裏面が前記配線部に接合された導通部材と、
前記基板主面上に配置された導電性の第1リードと、
前記第1リードから離間した、導電性の第2リードと、
前記第1リードおよび前記第2リードから離間する、導電性の第3リードと、
前記
導通部材の前記主面と前記第1主面電極とに接合された第1接続部材と、
前記基板の少なくとも一部、前記配線部、前記導通部材、前記電子素子、前記制御素子、および前記第1接続部材を直接的に覆う単一の樹脂部材と、
を備えており、
前記第1リードは、前記配線部から離間し且つ前記電子素子が接合された第1パッド部を含み、
前記配線部と前記第1主面電極とは、前記導通部材および前記第1接続部材を介して互いに導通
し、
前記素子裏面には、前記第1パッド部に導通接合された裏面電極が形成されており、
前記素子主面には、前記第1主面電極と離間し且つ前記第2リードに導通する第2主面電極が形成されており、
前記制御信号は、前記電子素子の駆動を制御するための駆動信号を含み、
前記第3リードは、前記配線部に接合され、前記配線部を介して前記制御素子に導通し、
前記第1リード、前記第2リードおよび前記第3リードの各々は、前記樹脂部材から露出する部分を有している、
電子装置。
【請求項2】
前記第1パッド部は、前記厚さ方向の寸法が、前記配線部よりも大きい、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記厚さ方向に見て、前記導通部材および前記電子素子は、前記厚さ方向に直交する直交方向に沿って並んでおり、
前記
導通部材の前記主面は、前記直交方向に見て、前記電子素子に重なる、請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記
導通部材の前記主面は、前記直交方向に見て、前記素子主面に重なる、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第1接続部材は、ワイヤである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子装置。
【請求項6】
前記第1接続部材は、前記第1主面電極にボンディングされた先行ボンディング部と、前記
導通部材の前記主面にボンディングされた後行ボンディング部と、を含む、請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記第2リードと前記第2主面電極とに接合された第2接続部材をさらに備えている、
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電子装置。
【請求項8】
前記第2接続部材は、ワイヤである、
請求項7に記載の電子装置。
【請求項9】
前記制御素子と前記配線部とに接合された第3接続部材をさらに備えている、
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の電子装置。
【請求項10】
前記第3接続部材は、ワイヤである、
請求項9に記載の電子装置。
【請求項11】
前記基板裏面は、前記樹脂部材から露出している、
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電子装置。
【請求項12】
前記第1パッド部は、前記厚さ方向に見て前記基板に重なる、請求項1ないし
請求項11のいずれかに記載の電子装置。
【請求項13】
前記導通部材は、Cuを含有する、請求項1ないし
請求項12のいずれかに記載の電子装置。
【請求項14】
前記基板は、セラミックを含有する、請求項1ないし
請求項13のいずれかに記載の電子装置。
【請求項15】
前記電子素子は、パワートランジスタである、請求項1ないし
請求項14のいずれかに記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電子装置の一つとして、IPM(Intelligent Power Module)と称されるものがある。この電子装置は、電子素子と、制御素子と、リードフレームと、を備えている(特許文献1参照)。電子素子は、電力制御を行うパワー半導体素子である。制御素子は、電子素子を制御する。リードフレームは、電子素子および制御素子を支持するとともに、これら素子のための導通経路を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、制御素子に入力されるあるいは制御素子から出力される制御信号の数が増えるほど、制御素子につながる導通経路の数を増やす必要がある。しかしながら、電子装置の高集積化に伴い、小さいスペースに導通経路を従来のように金属製のリードフレームによって構成することが困難となる。実際、リードフレームは、金型を用いたプレス加工やエッチングによって形成・加工されるため、細線化や高密度化が困難である。
【0005】
上記事情に鑑み、本開示は、より高集積化が可能な電子装置を提供することを一の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の側面によって提供される電子装置は、厚さ方向において相互に離間した基板主面および基板裏面を有する基板と、素子主面を有し、前記素子主面に第1主面電極が形成された電子素子と、前記基板主面上に形成され、前記電子素子を制御するための制御信号を伝送する配線部と、前記厚さ方向において互いに離間した主面および裏面を有し、前記裏面が前記配線部に接合された導通部材と、前記基板主面上に配置された導電性の第1リードと、前記導電部材の前記主面と前記第1主面電極とに接合された第1接続部材と、を備えている。前記第1リードは、前記配線部から離間し且つ前記電子素子が接合された第1パッド部を含む。前記配線部と前記第1主面電極とは、前記導通部材および前記第1接続部材を介して互いに導通する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電子装置によれば、従来よりも高集積化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の電子装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の電子装置を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態の電子装置を示す平面図であって、樹脂部材を想像線で示している。
【
図4】第1実施形態の電子装置を示す底面図である。
【
図5】第1実施形態の電子装置を示す側面図(左側面図)である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図7の一部を拡大した要部拡大断面図である。
【
図10】第2実施形態の電子装置を示す平面図であって、樹脂部材を想像線で示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の電子装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して以下に説明する。
【0010】
図1~
図9は、第1実施形態にかかる電子装置A1を示している。電子装置A1は、基板1、配線部2、2つの電子素子3、2つの制御素子4、複数の受動素子5、複数のリード6、複数の第1接続部材71、複数の第2接続部材72、複数の第3接続部材73および樹脂部材8を備えている。複数のリード6は、複数の第1リード61、複数の第2リード62、複数の第3リード63および複数の第4リード64を含んでいる。電子装置A1は、たとえば、IPM(Intelligent Power Module)であるが、本開示はこれに限定されない。電子装置A1は、エアーコンディショナやモータ制御機器などの用途に用いられる。
【0011】
図1は、電子装置A1を示す斜視図である。
図2は、電子装置A1を示す平面図である。
図3は、
図2に対応する平面図であり、樹脂部材8を想像線(二点鎖線)で示している。
図4は、電子装置A1を示す底面図である。
図5は、電子装置A1を示す側面図(左側面図)である。
図6は、
図3のVI-VI線に沿う断面図である。
図7は、
図3のVII-VII線に沿う断面図である。
図8は、
図7の一部を拡大した要部拡大断面図である。
図9は、
図3のIX-IX線に沿う断面図である。
図9においては、第1接続部材71および第3接続部材73を省略している。
【0012】
説明の便宜上、互いに直交する3つの方向(x方向、y方向、z方向)を参照する。z方向は、電子装置A1の厚さ方向に対応する。x方向およびy方向は、電子装置A1の平面図(たとえば
図3)に含まれる。x方向における2つの向きを区別する際には、一方をx1方向といい、他方をx2方向という。y1方向およびy2方向、ならびにz1方向およびz2方向についても同様である。とする。本開示では、z方向に(沿って)見た場合のことを「平面視」という語を用いて言い表すこともある。
【0013】
図4および
図6等から分かるように、基板1は、x方向あるいはy方向の寸法に比べてz方向の寸法(厚さ)が相対的に小さい形状である。図示の例では、基板1は、平面視において、x方向に長い矩形状である。基板1の厚さは、たとえば0.1mm以上1.0mm以下であるが、本開示がこれに限定されるわけではない。基板1の各寸法(長さ、幅、厚さ)は、特に限定されない。基板1は、絶縁性の材料からなる。また、基板1の材料としては、たとえば樹脂部材8よりも熱伝導率が高い材料が好ましい。たとえば、基板1は、セラミックから形成される。セラミックの例としては、アルミナ(Al
2O
3)、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア入りアルミナなどがある。
【0014】
基板1は、基板主面11および基板裏面12を有する。基板主面11および基板裏面12は、z方向に互いに離間する。基板主面11は、z2方向を向き、基板裏面12は、z1方向を向く。基板主面11および基板裏面12はそれぞれ、z方向に直交する平坦面であるが、本開示はこれに限定されない。基板主面11には、配線部2が形成されており、かつ、複数の第1リード61、複数の第3リード63および複数の電子部品が搭載されている。複数の電子部品には、2つの電子素子3および2つの制御素子4が含まれている。基板裏面12は、樹脂部材8から露出する。基板主面11および基板裏面12はそれぞれ、たとえば平面視矩形状である。基板1の平面視形状は限定されない。
【0015】
配線部2は、基板主面11上に形成されている。配線部2は、導電性材料からなる。配線部2の構成材料は、たとえば銀(Ag)あるいはAg合金(たとえばAg-PtやAgPdなど)である。当該構成材料は、AgまたはAg合金の代わりに、銅(Cu)あるいはCu合金、または、金(Au)あるいはAu合金などでもよい。配線部2は、上記構成材料を含むペースト材を印刷した後、当該ペースト材を焼成することによって形成されるが、本開示はこれに限定されない。配線部2は、各制御素子4への導通経路である。配線部2には、各電子素子3を制御するための各種制御信号が流れる。制御信号は、駆動信号や検出信号などを含む。駆動信号は、電子素子3の駆動を制御するための信号である。検出信号は、電子素子3の動作状態(たとえば電圧値や電流値など)を検出するための信号である。
【0016】
配線部2は、
図3に示すように、複数のパッド部21および複数の接続配線22を含む。複数のパッド部21はそれぞれ、平面視矩形状である。複数のパッド部21は、互いに離間している。複数のパッド部21は、他の部品が接合される部分である。電子装置A1では、複数のパッド部21には、複数の導通部材29、複数の制御素子4、複数の受動素子5、複数の第3リード63、複数の第4リード64および複数の第3接続部材73が接合されている。複数の接続配線22は、電子装置A1の導通経路が所望の回路構成となるように、複数のパッド部21間を接続する。
【0017】
複数の導通部材29はそれぞれ、たとえば直方体状のブロック材であり、平面視矩形状である。各導通部材29は、たとえばCuで形成される。Cuに代えて、他の導電性材料を用いてもよい。たとえば、Cu以外の金属であってもよいし、不純物がドープされ、電気伝導率が高められた半導体材料(たとえばSiなど)であってもよい。
【0018】
複数の導通部材29はそれぞれ、主面291および裏面292を有する。主面291および裏面292は、z方向に互いに離間している。主面291は、z2方向を向き、裏面292は、z1方向を向く。主面291および裏面292はそれぞれ、z方向に直交する平坦面であるが、本開示はこれに限定されない。主面291には、第1接続部材71が接合されている。これにより、導通部材29は、第1接続部材71に導通する。
【0019】
各導通部材29と、当該導通部材29に導通する電子素子3とは、z方向に直交する直交方向に並んでいる。
図3に示す例では、当該直交方向は、平面視においてこれらを導通させる第1接続部材71が延びる方向に相当する。主面291は、たとえば、当該直交方向に見て、電子素子3に重なる。導通部材29の厚さ(z方向の寸法)は、配線部2の厚さと第1リード61の厚さとの差よりも大きい。好ましくは、主面291は、電子素子3の主面(上述の素子主面31)に重なる。主面291は、z方向において、各電子素子3よりも上方(z2方向)に位置していてもよい。
【0020】
各導通部材29は、導電性接合材(図示略)により、各パッド部21(配線部2)に接合されている。当該導電性接合材としては、たとえば、はんだ、金属ペースト(銀ペーストまたは銅ペーストなど)あるいは焼結金属(焼結銀など)が用いられる。各導通部材29が各パッド部21に接合された状態において、裏面292は、各パッド部21に対向する。各導通部材29と各パッド部21との接合方法は、超音波接合やレーザ接合など、他の手法であってもよい。
図3に示す例では、各導通部材29は、平面視において、当該導通部材29が接合されたパッド部21よりも大きい。これに代えて、導通部材29がパッド部21と同じ大きさ(実質的に同じである場合を含む)であってもよいし、当該パッド部21よりも小さくてもよい。
【0021】
2つの電子素子3はそれぞれ、各第1リード61(第1パッド部611)の上に配置されている。2つの電子素子3を区別する場合、一方を電子素子3aとし、他方を電子素子3bとする。各電子素子3は、たとえば電力を制御するパワートランジスタである。各電子素子3は、たとえばSiC(炭化シリコン)基板からなるMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。なお、各電子素子3は、SiC基板に変えてSi基板からなるMOSFETであってもよく、たとえばIGBT素子を含んでいてもよい。あるいは、GaN(窒化ガリウム)を含むMOSFETであってもよい。電子装置A1は、2つの電子素子3を備えているが、電子素子3の数は限定されず、電子装置A1に求められる要求に応じて適宜変更される。
【0022】
各電子素子3は、素子主面31および素子裏面32を有する。素子主面31および素子裏面32は、z方向に互いに離間している。素子主面31は、z2方向を向き、素子裏面32は、z1方向を向く。素子主面31および素子裏面32はそれぞれ、平坦であるが、本開示はこれに限定されない。各電子素子3において、素子主面31には、第1主面電極311および第2主面電極312が形成されている。第1主面電極311と第2主面電極312とは互いに離間している。平面視において、第2主面電極312は、第1主面電極311よりも大きい。各第1主面電極311には、各第1接続部材71の一端が接合されている。各第2主面電極312には、各第2接続部材72の一端が接合されている。各電子素子3において、素子裏面32には、裏面電極321が形成されている。裏面電極321は、素子裏面32の全面(あるいは実質的に全面)に形成されている。各裏面電極321は、第1リード61(第1パッド部611)に接合されている。各電子素子3がMOSFETで構成された例において、第1主面電極311は、たとえばゲート電極であり、第2主面電極312は、たとえばソース電極であり、裏面電極321は、たとえばドレイン電極である。
【0023】
電子素子3aは、制御素子4(後述の制御素子4a)から第1主面電極311に駆動信号が入力され、入力された駆動信号に応じてスイッチング動作を行う(すなわち、導通状態と遮断状態とが切り替わる)。導通状態では、裏面電極321(ドレイン電極)から第2主面電極312(ソース電極)に電流が流れ、遮断状態では、このような電流は流れない。
【0024】
電子素子3bも、電子素子3aと同様に、制御素子4(後述の制御素子4b)から第1主面電極311に駆動信号が入力され、入力された駆動信号に応じて導通状態と遮断状態とが切り替わる。
【0025】
2つの保護素子39はそれぞれ、各電子素子3に逆電圧が印加されることを防ぐためのものである。各保護素子39は、たとえばダイオードである。各保護素子39は、各第1リード61(第1パッド部611)上に配置されている。各保護素子39は、各電子素子3と逆並列に接続されている。保護素子39は、主面電極391および裏面電極392を含む。主面電極391は、保護素子39の主面(z2方向を向く面)に形成され、裏面電極392は、保護素子39の裏面(z1方向を向く面)に形成されている。主面電極391には、各第2接続部材72が接合されており、各第2接続部材72を介して、主面電極391と第2主面電極312とが導通する。裏面電極392は、各第1リード61に接合されており、各第1リード61を介して、裏面電極392と裏面電極321とが導通する。各保護素子39がダイオードである場合、主面電極391はアノード電極であり、裏面電極392はカソード電極である。電子装置A1は、保護素子39を備えていなくてもよい。
【0026】
2つの制御素子4はそれぞれ、各電子素子3の駆動を制御する。各制御素子4はそれぞれ、基板主面11上に配置されている。2つの制御素子4を区別する場合、一方を制御素子4aとし、他方を制御素子4bとする。
【0027】
制御素子4aは、電子素子3aの駆動を制御する。制御素子4aは、電子素子3aの第1主面電極311(ゲート電極)に駆動信号(たとえばゲート電圧)を入力することで、電子素子3aのスイッチング動作を制御する。制御素子4aには、複数の第3接続部材73のそれぞれが接合されている。制御素子4aは、各第3接続部材73、配線部2、導通部材29および第1接続部材71を介して、電子素子3aの第1主面電極311に導通する。よって、制御素子4aから出力される駆動信号は、各第3接続部材73、配線部2、導通部材29および第1接続部材71を介して、電子素子3aの第1主面電極311に入力される。
図9に示すように、制御素子4aの上面(z2方向を向く面)は、各電子素子3の素子主面31よりもz1方向に位置する。制御素子4aの上面は、z方向において、たとえば後述の第1パッド部611の上面(z2方向を向く面)と同じ(または実質的に同じ)位置にある。
【0028】
制御素子4bは、電子素子3bの駆動を制御する。制御素子4bは、電子素子3bの第1主面電極311(ゲート電極)に駆動信号(たとえばゲート電圧)を入力することで、電子素子3bのスイッチング動作を制御する。本実施形態では、制御素子4bは、樹脂パッケージ401および複数の接続端子402とともに、制御装置40を構成している。制御装置40は、SOP(Small Outline Package)タイプのパッケージである。制御装置40のパッケージタイプは、SOPタイプに限定されず、例えばQFP(Quad Flat Package)タイプ、SOJ(Small Outline J-lead Package)タイプ、QFN(Quad Flatpack No Lead)タイプ、SON(Small-Outline No Lead)タイプ等の他のタイプのパッケージであってもよい。樹脂パッケージ401は、たとえばエポキシ樹脂からなり、制御素子4bを覆う。複数の接続端子402は、樹脂パッケージ401から突き出ており、樹脂パッケージ401の内部において制御素子4bに導通する。制御素子4bは、各接続端子402が、導電性接合材(たとえばはんだ、金属ペーストあるいは焼結金属など)を介して、各パッド部21(配線部2)に導通接合されている。制御素子4bは、配線部2、導通部材29および第1接続部材71を介して、電子素子3aの第1主面電極311に導通する。よって、制御素子4bから出力される駆動信号は、配線部2、導通部材29および第1接続部材71を介して、電子素子3bの第1主面電極311に入力される。
【0029】
複数の受動素子5はそれぞれ、基板1の基板主面11上に配置されており、各パッド部21(配線部2)に接合されている。複数の受動素子5は、たとえば、抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオードなどである。複数の受動素子5には、サーミスタ5aが含まれている。
【0030】
サーミスタ5aは、配線部2の2個のパッド部21に導通接合されている。各パッド部21はそれぞれが、配線部2を介して、互いに異なる2つの第3リード63に導通する。サーミスタ5aは、当該2つの第3リード63の間に電圧が印加されることで、周囲の温度に応じた電流を出力する。
【0031】
複数のリード6はそれぞれ、金属を含む材料から構成されている。好ましくは、各リード6は、基板1よりも熱伝導率が高い。各リード6は、たとえば銅(Cu)、アルミニウム、鉄(Fe)、無酸素銅、またはこれらの合金(たとえば、Cu-Sn合金、Cu-Zr合金、Cu-Fe合金等)から構成される。各リード6の表面には、めっき(たとえばニッケルめっき)が施されていてもよい。複数のリード6は、たとえば、金型を金属板に押し付けるプレス加工により形成されていてもよいし、金属板をエッチングすることにより形成されてもよい。各リード6の厚さ(z方向の寸法)は特に限定されないが、たとえば0.4mm以上0.8mm以下である。複数のリード6は互いに離間している。各リード6は、樹脂部材8に覆われた部分と、樹脂部材8から露出する部分とを含む。
【0032】
複数の第1リード61はそれぞれ、樹脂部材8および基板1により支持される。各第1リード61は、第1パッド部611および第1端子部612を含む。各第1リード61において、第1パッド部611と第1端子部612とは導通する。
【0033】
各第1パッド部611は、樹脂部材8に覆われている。各第1パッド部611は、基板1の基板主面11上に配置されており、平面視において、基板1に重なる。各第1パッド部611は、接合材(図示略)により、基板主面11に接合されている。各第1パッド部611と基板1との接合強度を高めるために、各第1パッド部611が接合される基板主面11上に金属層を設けてもよい。当該金属層は、配線部2と同じ材料にすることで、配線部2の形成とともに、当該金属層も一括して形成できる。
【0034】
各第1パッド部611には、一対の電子素子3および保護素子39が搭載されている。各第1パッド部611には、導電性接合材(図示略)により、各電子素子3の裏面電極321(ドレイン電極)および各保護素子39の裏面電極392(カソード電極)が導通接合されている。当該導電性接合材は、たとえば、はんだ、金属ペースト、あるいは焼結金属である。これより、各電子素子3の裏面電極321と各保護素子39の裏面電極392とが導通する。各電子素子3の素子裏面32および各保護素子39の裏面(z1方向を向く面)は、各第1パッド部611に対向している。
図8に示すように、各第1パッド部611の厚さ(z方向の寸法)T2は、配線部2の厚さ(z方向の寸法)T1よりも大きい。
【0035】
各第1端子部612は、樹脂部材8から露出する。各第1端子部612は、z2方向に屈曲している。各第1端子部612は、電子装置A1の外部端子である。各第1パッド部611が各電子素子3の裏面電極321に導通することから、各第1端子部612には、各電子素子3のドレイン電流が流れる。
【0036】
複数の第2リード62はそれぞれ、樹脂部材8により支持される。各第2リード62は、第2パッド部621および第2端子部622を含む。各第2リード62において、第2パッド部621と第2端子部622とは導通する。
【0037】
各第2パッド部621は、樹脂部材8に覆われている。各第2パッド部621は、平面視において、基板1に重ならない。各第2パッド部621には、複数の第2接続部材72がそれぞれ接合されている。各第2パッド部621に接合された各第2接続部材72は、各電子素子3の第2主面電極312に接合されている。これにより、各第2パッド部621は、各第2接続部材72を介して、各電子素子3の第2主面電極312(ソース電極)に導通する。
【0038】
各第2端子部622は、樹脂部材8から露出する。各第2端子部622は、z2方向に屈曲している。各第2端子部622は、電子装置A1の外部端子である。第2パッド部621が各電子素子3の第2主面電極312(ソース電極)に導通することから、第2端子部622には、各電子素子3のソース電流が流れる。
【0039】
複数の第3リード63はそれぞれ、樹脂部材8および基板1により支持される。各第3リード63は、第3パッド部631および第3端子部632を含む。各第3リード63において、第3パッド部631と第3端子部632とは導通する。
【0040】
各第3パッド部631は、樹脂部材8に覆われている。各第3パッド部631は、基板1の基板主面11上に配置されており、平面視において、基板1に重なる。各第3パッド部631は、導電性接合材(図示略)により、配線部2の各パッド部21に導通接合されている。各第3パッド部631が接合された各パッド部21は、各接続配線22を介して、各制御素子4に導通する。よって、各第3パッド部631は、配線部2を介して、各制御素子4に導通する。
【0041】
各第3端子部632は、樹脂部材8から露出する。各第3端子部632は、z2方向に屈曲している。各第3端子部632は、電子装置A1の外部端子である。各第3パッド部631が各制御素子4に導通することから、各第3端子部632は、各制御素子4への各種制御信号の入力端子あるいは各制御素子4からの各種制御信号の出力端子である。
【0042】
複数の第4リード64はそれぞれ、樹脂部材8および基板1により支持される。各第4リード64は、第4パッド部641および第4端子部642を含む。各第4リード64において、第4パッド部641と第4端子部642とは導通する。
【0043】
各第4パッド部641は、樹脂部材8に覆われている。各第4パッド部641は、基板1の基板主面11上に配置されており、平面視において、基板1に重なる。各第4パッド部641は、導電性接合材(図示略)により、配線部2の各パッド部21に導通接合されている。各第4パッド部641が接合された各パッド部21は、各接続配線22を介して、各サーミスタ5aに導通する。よって、各第4パッド部641は、配線部2を介して、各サーミスタ5aに導通する。
【0044】
各第4端子部642は、樹脂部材8から露出する。各第4端子部642は、z2方向に屈曲している。各第4端子部642は、x方向に見て、各第3端子部632に重なる。各第4端子部642は、電子装置A1の外部端子である。各第4パッド部641がサーミスタ5aに導通することから、各第4端子部642は、温度検出端子である。
【0045】
図3に示す例では、2つの電子素子3のそれぞれに対して、1つの第1リード61および1つの第2リード62が設けられている。つまり、電子装置A1は、2つの第1リード61と2つの第2リード62とを備えている。電子素子3の数が増えるほど、第1リード61の数および第2リード62の数も増える。同様に、電子装置A1は、4つの第4リード64を備えている(2つのサーミスタ5aのそれぞれに対して、2つの第4リード64が設けられている)。
【0046】
複数の第1接続部材71、複数の第2接続部材72、複数の第3接続部材73、および、第4接続部材74はそれぞれ、互いに離間する2つの部材を導通させる。図示の例では、複数の第1接続部材71、複数の第2接続部材72、複数の第3接続部材73、および、第4接続部材74はそれぞれ、ワイヤ(ボンディングワイヤ)である。
【0047】
複数の第1接続部材71はそれぞれ、各電子素子3の第1主面電極311(ゲート電極)と各導通部材29の主面291とに接合され、各電子素子3の第1主面電極311と導通部材29とを導通させる。各第1接続部材71は、たとえばAuにより構成されるが、CuやAlによって構成されてもよい。各第1接続部材71の線径および第1接続部材71の本数は、
図3に示す例に限定されない。
【0048】
各第1接続部材71は、一対の接合部711,712および線状部713を含む。接合部711は、第1主面電極311に接合される部位である。接合部712は、導通部材29の主面291に接合される部位である。線状部713は、一対の接合部711,712を繋ぐ部位である。線状部713は、一対の接合部711,712のそれぞれから延びている。
【0049】
各第1接続部材71は、たとえば、接合部711が接合部712よりも先に形成される。
図7および
図8に示す例では、各第1接続部材71は、キャピラリを用いたワイヤボンディング装置によって形成されている。具体的には、接合部711はボールボンディングにより形成され、接合部712はステッチボンディングにより形成される。接合部711が「先行ボンディング部」の一例であり、接合部712が「後行ボンディング部」の一例である。本実施形態と異なり、接合部712が接合部711よりも先に形成されてもよい。この場合、接合部712がボールボンディングにより形成され、接合部711がステッチボンディングにより形成される。また、各第1接続部材71は、キャピラリの代わりにウェッジツールを用いたワイヤボンディング装置によって形成されてもよい。この場合、接合部711および接合部712はそれぞれ、ウェッジボンディングによって形成される。
【0050】
複数の第2接続部材72はそれぞれ、電子素子3の第2主面電極312(ソース電極)と、第2リード62の第2パッド部621とに接合され、第2主面電極312と第2リード62とを導通させる。複数の第2接続部材72はそれぞれ、電子素子3の第2主面電極312(ソース電極)と、保護素子39の主面電極391(アノード電極)とに接合され、第2主面電極312と主面電極391とを導通させる。各第2接続部材72は、たとえばAl、Cu、またはAuからなるが、本開示はこれに限定されない。各第2接続部材72の線径および第2接続部材72の本数は、
図3に示す例に限定されない。
【0051】
各第2接続部材72は、
図6に示すように、一対の接合部721,722、中間接合部723および2つの線状部724を含む。接合部721は、第2主面電極312に接合される部位である。接合部722は、第2リード62の第2パッド部621に接合される部位である。中間接合部723は、保護素子39の主面電極391に接合される部位である。2つの線状部724の一方は、接合部721と中間接合部723とを繋ぐ部位であり、他方は、接合部722と中間接合部723とを繋ぐ部位である。
【0052】
図3および
図6に示す例では、1つの第2接続部材72によって、第2主面電極312(電子素子3)と主面電極391(保護素子39)と第2パッド部621(第2リード62)とが互いに導通しているが、本開示はこれに限定されない。たとえば、各第2接続部材72の代わりに、第2主面電極312と主面電極391とを導通させるワイヤと、主面電極391と第2パッド部621とを導通させるワイヤとを別々に設けてもよい。各第2接続部材72の代わりに、第2主面電極312と第2パッド部621とを導通させるワイヤと、第2主面電極312と主面電極391とを導通させるワイヤとを設けてもよい。
【0053】
複数の第3接続部材73はそれぞれ、制御素子4aと配線部2の各パッド部21とに接合され、制御素子4と配線部2とを導通させる。各第3接続部材73は、たとえばAu、Cu、Alからなる。各第3接続部材73の線径および第3接続部材73の本数は、
図3に示す例に限定されない。
【0054】
第4接続部材74は、電子素子3bの第2主面電極312と導通部材29の主面291とに接合され、第2主面電極312と導通部材29とを導通させる。この導通部材29は配線部2に導通することから、配線部2には、電子素子3bの第2主面電極312に流れる電流(たとえばソース電流)を検出するための検出信号が伝送される。第4接続部材74は、たとえばAu、CuまたはAlからなる。第4接続部材74の線径は、
図3に示す例に限定されない。また、複数の第4接続部材74を使用してもよい。第4接続部材74は、各第1接続部材71と同様に、第2主面電極312に接合される部位が主面291に接合される部位よりも先に形成される。これらの形成順序は反対であってもよい。第4接続部材74は、キャピラリを用いたワイヤボンディング装置によって形成されてもよいし、ウェッジツールを用いたワイヤボンディング装置によって形成されてもよい。
【0055】
樹脂部材8は、基板1(基板裏面12を除く)、配線部2、2つの電子素子3、2つの制御素子4(制御装置40)、複数の受動素子5、複数のリード6の一部ずつ、複数の第1接続部材71、複数の第2接続部材72、複数の第3接続部材73および第4接続部材74を覆っている。樹脂部材8の構成材料としては、たとえばエポキシ樹脂、シリコーンゲルなどの絶縁材料が採用される。樹脂部材8は、たとえばモールド成形により形成される。
【0056】
樹脂部材8は、樹脂主面81、樹脂裏面82および複数の樹脂側面831~834を有する。樹脂主面81および樹脂裏面82は、z方向に互いに離間している。樹脂主面81は、z2方向を向き、樹脂裏面82は、z1方向を向く。樹脂主面81および樹脂裏面82はそれぞれz方向に直交する平坦面であるが、本開示はこれに限定されない。樹脂裏面82からは、基板裏面12が露出している。本実施形態では、
図6、
図7および
図9に示すように、基板裏面12と樹脂裏面82とは、面一であるが、本開示はこれに限定されない。複数の樹脂側面831~834はそれぞれ、樹脂主面81および樹脂裏面82に繋がる。2つの樹脂側面831,832は、x方向に互いに離間している。樹脂側面831は、x1方向を向き、樹脂側面832は、x2方向を向く。2つの樹脂側面833,834は、y方向に互いに離間している。樹脂側面833は、y1方向を向き、樹脂側面834は、y2方向を向く。図示の例では、各樹脂側面831~834は、z方向の中央(あるいは中央付近)で屈曲しているが、本開示はこれに限定されない。たとえば、各樹脂側面831~834は、全体として平坦であってもよいし、所定の曲率をもって湾曲していてもよい。
【0057】
電子装置A1では、複数の第1リード61および複数の第2リード62はそれぞれ、樹脂側面833から突き出ており、複数の第3リード63および複数の第4リード64はそれぞれ、樹脂側面834から突き出ている。すなわち、各電子素子3に導通する電力用の端子と、各制御素子4に導通する制御信号用の端子とは、互いに反対側の側面から突き出ている。
【0058】
以下、電子装置A1の作用効果について説明する。
【0059】
電子装置A1は、基板1(基板主面11)に形成された配線部2を備える。配線部2は、各電子素子3を制御するための制御信号(たとえば駆動信号)を伝送する経路を構成する。詳細には、たとえば、電子素子3に対する駆動信号は、制御素子4から出力され、配線部2、導通部材29および第1接続部材71を介して、第1主面電極311に入力される。配線部2は、たとえば、基板1に銀ペーストを所定のパターンで印刷した後に、これを焼成することにより形成される。この構成によると、金属のリードフレームによって伝送経路を構成する場合と異なり、当該伝送経路の細線化や高密度化を図ることが可能である。したがって、電子装置A1では、高集積化が可能となる。
【0060】
電子装置A1は、配線部2に導通する導通部材29を備えている。また、第1接続部材71を用いて、電子素子3(の第1主面電極311)と導通部材29(の主面291)とを導通させている。一般に、ボンディングワイヤで構成された第1接続部材71は、インダクタンス成分が相対的に大きく、ノイズの発生原因となりうる。これに対し、電子装置A1では、第1接続部材71を直接配線部2に接合するのではなく、ブロック材で構成された導通部材29(第1接続部材71よりも小さいインダクタンス成分を有する)に接合している。これにより、第1接続部材71の長さを短くする(すなわちインダクタンス成分を小さくする)ことができるので、ノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0061】
比較のため、電子装置A1と異なり、導通部材29を設けない構成を想定する。この場合、たとえば
図8の想像線(二点鎖線)で示すように、第1接続部材71’は、電子素子3の第1主面電極311と配線部2とに直接接続される。しかしながら、第1接続部材71’は、
図8に示すように、第1パッド部611に接触しやすく、意図せぬ短絡を発生させる可能性がある。第1接続部材71’と第1パッド部611とが接触する一因は、第1主面電極311の上面(素子主面31)と、パッド部21の上面との高低差が大きいことにある。これに対し、電子装置A1では、導通部材29を設け、第1接続部材71を、電子素子3の第1主面電極311と導通部材29の主面291とに接合することで、上述の高低差を低減させている。その結果、第1接続部材71と第1パッド部611との接触を抑制することが可能となる。つまり、電子装置A1は、意図せぬ短絡を抑制し、信頼性が向上する。特に、電子装置A1では、導通部材29の主面291は、水平方向(z方向に直交する直交方向)において、電子素子3に重なる。当該直交方向は、平面視において、各導通部材29と当該導通部材29に導通する各電子素子3とが並ぶ方向に相当する。この場合、第1接続部材71の全体が、第1パッド部611よりも上方(z2方向)に位置するため、第1接続部材71と第1パッド部611との接触を確実に回避できる。
【0062】
導通部材29を設けることなく、第1接続部材71と第1パッド部611との接触を回避する手法として、たとえば次に示す代替手法が考えられる。それは、第1接続部材71の線状部713を長くして、z方向において当該線状部が第1パッド部611から十分離間するように構成することである。しかしながら、この代替手法では、第1接続部材71の全体長が大きくなるため、インダクタンス成分が増大してしまう。また、第1接続部材71の線径や構成材料(たとえばAuやCu)によっては、樹脂部材8の形成時において、流し込まれたモールド樹脂に押し倒されてしまい、断線や意図せぬ短絡などの導通不良の原因となる。このようなことに鑑みれば、電子装置A1の構成は、インダクタンス成分の増大を抑制し、かつ、導通不良を抑制する上で有利である。
【0063】
電子装置A1では、電子素子3は、第1パッド部611に接合されており、電子素子3の裏面電極321と第1リード61とが導通する。また、電子素子3の第2主面電極312は、複数の第2接続部材72を介して、第2リード62に導通する。この構成によれば、比較的大きな電流が流れる、電子素子3への経路を、第1リード61および第2リード62により構成できる。これは、電子素子3への電流経路を配線部2で構成する場合よりも、許容電流量を大きくすることができ、有利である。つまり、電子装置A1は、電子素子3への許容電流を確保しつつ、高集積化が可能となる。
【0064】
電子装置A1では、2つの第1リード61は、基板1よりも熱伝導率が高い。これにより、各電子素子3からの放熱量の低下を抑制することができる。特に電子素子3は、第1リード61の第1パッド部611上に搭載されていることから、電子素子3からの熱を各第1リード61へとより効率よく伝達できる。また、各第1リード61が樹脂部材8から露出していることにより、外部から各電子素子3への導通経路を構成するとともに、電子素子3からの放熱特性をより高めることができる。さらに、基板1の基板裏面12が、樹脂部材8(樹脂裏面82)から露出していることにより、各電子素子3から基板1に伝わった熱を、効率よく外部に放出することができる。
【0065】
電子装置A1において、制御装置40は、制御素子4bを覆う樹脂パッケージ401を備えている。これに代えて、制御素子4bを覆う樹脂パッケージを用いない場合には、出荷検査に必要な高電圧高電流を制御素子4bに流すことができない。そのため、出荷検査は、樹脂部材8を備えた完成品になるまで待つ必要がある。この場合、出荷検査で制御素子4bが不良品と判定されると、制御素子4b以外の部品が正常であっても、完成品全体を廃棄することになる。一方、制御装置40は、制御素子4bが樹脂パッケージ401によって覆われているので、出荷検査に必要な高電圧高電流を流すことができる。したがって、完成品ができる前に制御装置40の検査を行い、制御素子4bが不良品であれば、当該制御装置40のみを廃棄することが可能である。
【0066】
図10および
図11を参照して、第2実施形態にかかる電子装置A2について説明する。
図10は、電子装置A2を示す平面図であって、樹脂部材8を想像線で示している。
図11は、
図10のXI-XI線に沿う断面図である。
【0067】
図10に示すように、電子装置A2は、電子装置A1と異なり、2つの電子素子3が電気的に接続されている。後述するように、電子装置A2において、2つの電子素子3は、互いに接続されて、レグを構成する。電子素子3aは当該レグの上アーム回路を構成し、電子素子3bは、当該レグの下アーム回路を構成する。
【0068】
電子装置A2において、複数のリード6は、複数の第3リード63、複数の第4リード64、2つの入力リード65,66、出力リード67および検出リード68を含んでいる。2つの入力リード65,66、出力リード67および検出リード68は、各々の一部分が樹脂部材8に覆われ、他の部分が樹脂部材8から露出する。
【0069】
入力リード65は、樹脂部材8および基板1により支持される。入力リード65は、パッド部651および端子部652を含む。入力リード65において、パッド部651と端子部652とは互いに導通する。
【0070】
パッド部651は、樹脂部材8に覆われている。パッド部651は、基板主面11上に配置されており、平面視において、基板1に重なる。パッド部651は、たとえば接合材(図示略)により基板主面11に接合されている。パッド部651と基板1との接合強度を高めるために、パッド部651と基板主面11との間に金属層を設けてもよい。当該金属層は、たとえば、配線部2と同じ材料から形成される。これにより、配線部2および当該金属層を一括して形成できる。
【0071】
パッド部651には、電子素子3aが搭載されている。パッド部651と電子素子3aの裏面電極321(ドレイン電極)とは、導電性接合材(図示略)により、互いに導通接合されている。当該導電性接合材は、たとえば、はんだ、金属ペースト、あるいは焼結金属である。電子素子3aの素子裏面32は、パッド部651に対向している。
【0072】
端子部652は、樹脂部材8から露出する。端子部652は、樹脂部材8から所定距離だけ離れた箇所でz2方向に屈曲している。端子部652は、電子装置A2の外部端子である。パッド部651が電子素子3aの裏面電極321に導通することから、端子部652には、電子素子3aのドレイン電流が流れる。
【0073】
入力リード66は、樹脂部材8により支持される。入力リード66は、パッド部661および端子部662を含む。入力リード66において、パッド部661と端子部662とは互いに導通する。
【0074】
パッド部661は、樹脂部材8に覆われている。パッド部661は、平面視において、基板1に重ならない。パッド部661には、複数の第2接続部材72がそれぞれ接合されている。パッド部661に接合された各第2接続部材72は、電子素子3bの第2主面電極312にも接合されている。これにより、パッド部661は、各第2接続部材72を介して、電子素子3bの第2主面電極312(ソース電極)に導通する。
【0075】
端子部662は、樹脂部材8から露出する。端子部662は、樹脂部材8から所定距離だけ離れた箇所でz2方向に屈曲している。端子部662は、電子装置A2の外部端子である。パッド部661が電子素子3bの第2主面電極312(ソース電極)に導通することから、端子部662には、電子素子3bのソース電流が流れる。
【0076】
出力リード67は、樹脂部材8および基板1に支持される。出力リード67は、パッド部671および端子部672を含む。出力リード67において、パッド部671と端子部672とは互いに導通する。
【0077】
パッド部671は、樹脂部材8に覆われている。パッド部671は、基板主面11上に配置されており、平面視において基板1に重なる。パッド部671は、接合材(図示略)により基板主面11に接合されている。パッド部671と基板1との接合強度を高めるために、パッド部671と基板主面11との間に金属層を設けてもよい。当該金属層は、たとえば、配線部2と同じ材料から形成される。これにおり、配線部2および当該金属層を一括して形成できる。
【0078】
パッド部671には、電子素子3bが搭載されている。パッド部671と電子素子3bの裏面電極321(ドレイン電極)とは、導電性接合材(図示略)により、互いに導通接合されている。当該導電性接合材は、たとえば、はんだ、金属ペースト、あるいは焼結金属である。電子素子3bの素子裏面32は、パッド部671に対向している。また、パッド部671には、複数の第2接続部材72がそれぞれ接合されている。パッド部671に接合された各第2接続部材72は、電子素子3aの第2主面電極312にも接合されている。これにより、パッド部671は、各第2接続部材72を介して、電子素子3aの第2主面電極312(ソース電極)に導通する。
【0079】
端子部672は、樹脂部材8から露出する。端子部672は、樹脂部材8から所定距離だけ離間した箇所でz2方向に屈曲している。端子部672は、電子装置A2の外部端子である。パッド部671が電子素子3bの裏面電極321(ドレイン電極)に導通することから、端子部672には、電子素子3bのドレイン電流が流れる。また、パッド部671が電子素子3aの第2主面電極312(ソース電極)に導通することから、端子部672には、電子素子3aのソース電流が流れる。
【0080】
電子装置A2において、2つの入力リード65,66の間には、たとえば電源電圧が印加される。入力リード65は、正極(P端子)であり、入力リード66は、負極(N端子)である。2つの入力リード65,66の間に入力された電源電圧は、2つの電子素子3a,3bの各スイッチング動作により、交流電力(電圧)に変換される。当該交流電力は、出力リード67から出力される。このように、2つの入力リード65,66は、上記電源電圧の入力端子であり、出力リード67は、2つの電子素子3a,3bにより電圧変換された交流電力の出力端子である。
【0081】
検出リード68は、樹脂部材8および基板1により支持される。検出リード68は、パッド部681および端子部682を含む。検出リード68において、パッド部681と端子部682とは互いに導通する。
【0082】
パッド部681は、樹脂部材8に覆われている。パッド部681は、基板主面11上に配置されており、平面視において、基板1に重なる。パッド部681は、接合材(図示略)により、基板主面11に接合されている。パッド部681と基板1との接合強度を高めるために、パッド部681と基板主面11との間に金属層を設けてもよい。当該金属層は、たとえば、配線部2と同じ材料から形成される。これにより、配線部2および当該金属層は、一括して形成できる。
【0083】
パッド部681には、複数の受動素子5のうちの1つが接合される。図示の例では、シャント抵抗5bがパッド部681に接合されている。シャント抵抗5bは、パッド部671(出力リード67)とパッド部681(検出リード68)とに跨って配置されており、パッド部671およびパッド部681にそれぞれ導通接合されている。出力リード67に流れる電流がシャント抵抗5bにより分流されて、パッド部681に伝達される。
【0084】
端子部682は、樹脂部材8から露出する。端子部682は、樹脂部材8から所定距離だけ離れた箇所でz2方向に屈曲している。端子部682は、電子装置A2の外部端子である。パッド部681がシャント抵抗5bを介してパッド部671に導通することから、端子部682には、出力リード67から分流した電流が流れる。
【0085】
電子装置A2は、複数の第5接続部材75を備えている。各第5接続部材75は、第1接続部材71ないし第4接続部材74と同様に、ボンディングワイヤである。各第5接続部材75は、たとえばAu、CuまたはAlから形成される。第5接続部材75を介して、第4リード64に導通する配線部2が、サーミスタ5aに導通する配線部2と導通している。
【0086】
電子装置A2においても、電子装置A1と同様に、基板主面11上に形成された配線部2を備えている。そして、電子装置A1と同様に、配線部2は、電子素子3を制御するための制御信号(たとえば駆動信号)を伝送しており、当該制御信号の伝送経路を構成する。したがって、電子装置A2は、当該伝送経路の細線化や高密度化を図ることが可能であり、高集積化が可能となる。
【0087】
電子装置A2は、導通部材29を備えることにより、インダクタンス成分を小さくし、ノイズの発生を抑制できる。また、電子装置A2は、導通部材29を備えることにより、第1接続部材71と第1パッド部611との接触を抑制でき、信頼性の向上を図ることができる。
【0088】
本開示にかかる電子装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示の電子装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。本開示は、以下の付記に記載された実施形態を含む。
付記1.
厚さ方向において相互に離間した基板主面および基板裏面を有する基板と、
素子主面を有し、前記素子主面に第1主面電極が形成された電子素子と、
前記基板主面上に形成され、前記電子素子を制御するための制御信号を伝送する配線部と、
前記厚さ方向において互いに離間した主面および裏面を有し、前記裏面が前記配線部に接合された導通部材と、
前記基板主面上に配置された、導電性の第1リードと、
前記導電部材の前記主面と前記第1主面電極とに接合された第1接続部材と、
を備えており、
前記第1リードは、前記配線部から離間し且つ前記電子素子が接合された第1パッド部を含み、
前記配線部と前記第1主面電極とは、前記導通部材および前記第1接続部材を介して互いに導通する、電子装置。
付記2.
前記第1パッド部は、前記厚さ方向の寸法が、前記配線部よりも大きい、付記1に記載の電子装置。
付記3.
前記厚さ方向に見て、前記導通部材および前記電子素子は、前記厚さ方向に直交する直交方向に沿って並んでおり、
前記導電部材の前記主面は、前記直交方向に見て、前記電子素子に重なる、付記2に記載の電子装置。
付記4.
前記導電部材の前記主面は、前記直交方向に見て、前記素子主面に重なる、付記3に記載の電子装置。
付記5.
前記第1接続部材は、ワイヤである、付記1ないし付記4のいずれかに記載の電子装置。
付記6.
前記第1接続部材は、前記第1主面電極にボンディングされた先行ボンディング部と、前記導電部材の前記主面にボンディングされた後行ボンディング部と、を含む、付記5に記載の電子装置。
付記7.
前記電子素子は、前記素子主面とは反対側の素子裏面を有し、
前記素子裏面には、前記第1パッド部に導通接合された裏面電極が形成されている、付記1ないし付記6のいずれかに記載の電子装置。
付記8.
前記第1リードから離間した、導電性の第2リードをさらに備えており、
前記素子主面には、前記第1主面電極と離間し且つ前記第2リードに導通する第2主面電極が形成されている、付記7に記載の電子装置。
付記9.
前記第2リードと前記第2主面電極とに接合された第2接続部材をさらに備えている、付記8に記載の電子装置。
付記10.
前記第2接続部材は、ワイヤである、付記9に記載の電子装置。
付記11.
前記基板主面上に配置され且つ前記電子素子の駆動を制御する制御素子をさらに備え、
前記制御信号は、前記電子素子の駆動を制御するための駆動信号を含む、付記8ないし付記10のいずれかに記載の電子装置。
付記12.
前記制御素子と前記配線部とに接合された第3接続部材をさらに備えている、付記11に記載の電子装置。
付記13.
前記第3接続部材は、ワイヤである、付記12に記載の電子装置。
付記14.
前記第1リードおよび前記第2リードから離間する、導電性の第3リードをさらに備えており、
前記第3リードは、前記配線部に接合され、前記配線部を介して前記制御素子に導通する、付記11ないし付記13のいずれかに記載の電子装置。
付記15.
前記基板の少なくとも一部、前記配線部、前記導通部材、前記電子素子、前記制御素子、および前記第1接続部材を覆う樹脂部材をさらに備えており、
前記第1リード、前記第2リードおよび前記第3リードの各々は、前記樹脂部材から露出する部分を有している、付記14に記載の電子装置。
付記16.
前記基板裏面は、前記樹脂部材から露出している、付記15に記載の電子装置。
付記17.
前記第1パッド部は、前記厚さ方向に見て前記基板に重なる、付記1ないし付記16のいずれかに記載の電子装置。
付記18.
前記導通部材は、Cuを含有する、付記1ないし付記17のいずれかに記載の電子装置。
付記19.
前記基板は、セラミックを含有する、付記1ないし付記18のいずれかに記載の電子装置。
付記20.
前記電子素子は、パワートランジスタである、付記1ないし付記19のいずれかに記載の電子装置。
【符号の説明】
【0089】
A1,A2:電子装置 1:基板 11:基板主面
12:基板裏面 2:配線部 21:パッド部
22:接続配線 29:導通部材
291:(導電部材の)主面
292:(導電部材の)裏面 3,3a,3b:電子素子
31:素子主面 311:第1主面電極
312:第2主面電極
32:素子裏面 321:裏面電極 39:保護素子
391:主面電極 392:裏面電極
4,4a,4b:制御素子
40:制御装置 401:樹脂パッケージ
402:接続端子
5:受動素子 5a:サーミスタ 5b:シャント抵抗
6:リード 61:第1リード 611:第1パッド部
612:第1端子部 62:第2リード
621:第2パッド部
622:第2端子部 63:第3リード
631:第3パッド部
632:第3端子部 64:第4リード
641:第4パッド部
642:第4端子部 65,66:入力リード
651,661:パッド部 652,662:端子部
67:出力リード 671:パッド部 672:端子部
68:検出リード 681:パッド部 682:端子部
71:第1接続部材 711:接合部 712:接合部
713:線状部 72:第2接続部材 721:接合部
722:接合部 723:中間接合部 724:線状部
73:第3接続部材 74:第4接続部材
75:第5接続部材
8:樹脂部材 81:樹脂主面 82:樹脂裏面
831~834:樹脂側面