(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】KRAS阻害剤である複素環式中間体に適用される合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/73 20060101AFI20241220BHJP
C07D 213/82 20060101ALI20241220BHJP
C07C 255/30 20060101ALI20241220BHJP
C07C 255/17 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
C07D213/73
C07D213/82 CSP
C07C255/30
C07C255/17
(21)【出願番号】P 2022513928
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2020114560
(87)【国際公開番号】W WO2021047603
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】201910858876.2
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522077694
【氏名又は名称】キラル クエスト (スーチョウ) カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHIRAL QUEST (SUZHOU) CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】522077708
【氏名又は名称】ジャンシー ロングライフ バイオ-ファーマスーティカル カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGXI LONGLIFE BIO-PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シォンウェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェングェ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ポン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031476(JP,A)
【文献】Sakamoto, Takao et al.,Condensed heteroaromatic ring systems. VI. Synthesis of indoles and pyrrolopyridines from o-nitroarylacetylenes,Chemical & Pharmaceutical Bulletin,1986年,34(6),2362-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの化合物から式Iの化合物を調製する方法であって、
ホフマン転位反応により、前記式IIの化合物からアミド基をアミノ基に変換して前記式Iの化合物を作製すること:
【化1】
を含む、方法。
【請求項2】
前記ホフマン転位反応の条件が、NaOBrと水との混合系を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NaOBrが、NaOBrの水溶液の形態である、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記NaOBrは、NaOHと水との混合物にBr
2を加えて前記NaOBrの水溶液を得る工程によって調製され;NaOHとBr
2との質量比を0.9:1とし;前記NaOHと水の混合物中におけるNaOHと水との質量比を0.3:1とし;前記式IIの化合物とBr
2との質量比を1:1とし;前記式IIの化合物とNaOBrとのモル比は、(0.8~1.2):1である
請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
前記NaOBrと水との混合系は、NaOBrを前記式IIの化合物と水との混合物に添加する工程で得られ;前記添加は滴下であり;前記添加は-10℃~10℃の温度で行われ;前記式IIの化合物と水との混合物において、前記式IIの化合物と前記水との質量比は、0.5:1である
請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
前記混合系において、水の総量と前記式IIの化合物との質量比は7:1である、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記
ホフマン転位反応は10~100℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、ワークアップのプロセスをさらに含み、前記ワークアップのプロセスは、前記
ホフマン転位反応が完了し反応混合物をもたらした後、抽出のために前記反応混合物に有機溶媒を添加し有機相を得て、前記有機相を洗浄、濃縮、分離、及び精製する工程を含み;前記有機溶媒は酢酸エチルであり;前記洗浄は、洗浄溶媒として飽和ブラインを用いて行われ;前記分離及び精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式IIIの化合物を酸で加水分解して前記式IIの化合物を得る工程:
【化2】
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸が硫酸であり、前記酸と前記式IIIの化合物との質量比は2.25:1であり、及び、前記加水分解は、105℃で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解後、前記加水分解で得られた加水分解反応混合物に水を添加してpHを10~11に調整し;濾過し、乾燥して前記式IIの化合物を得る工程をさらに含み;50%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって前記pHを調整し;前記式IIの化合物を前記
ホフマン転位反応に直接使用する
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
N-メチルピロリドン及び鉄触媒の存在下で、有機溶媒中で式IVの化合物とイソプロピルグリニャール試薬との熊田カップリング反応を行い、前記式IIIの化合物を得る工程:
【化3】
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒はエーテル溶媒であり;前記式IVの化合物と前記有機溶媒との質量-体積比は0.03~0.04g/mLであり;前記N-メチルピロリドンと前記式IVの化合物との体積対質量比は9.5:1であり;前記鉄触媒は鉄トリアセチルアセトナートであり;前記イソプロピルグリニャール試薬はエーテル溶媒中のイソプロピルマグネシウムクロリド溶液であり;前記イソプロピルグリニャール試薬と前記式IVの化合物との体積対質量比は、(2.6~4.4):1であり;及び、前記熊田カップリング反応は0~10℃で行われる
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熊田カップリング反応の完了後、前記熊田カップリング反応から得られる熊田カップリング反応混合物に、クエン酸水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、及び有機溶媒を順に添加して有機相を得て;前記有機相を抽出、濃縮、分離、及び精製して前記式IIIの化合物を得ることをさらに含み;抽出のための前記有機溶媒は、エステル溶媒であり;前記分離及び精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで行われる
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
式Vの化合物に環化反応を施して前記式IIIの化合物を得ること:
【化4】
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記環化反応が、前記式Vの化合物とアンモニア源とを反応させ、次いで分子内置換反応を行って前記式IIIの化合物を形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アンモニア源は、アンモニアガス、酢酸アンモニウム、及び塩化アンモニウムからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式VIの化合物:
【化5】
に縮合反応を施して前記式Vの化合物を得ることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記縮合反応は、反応物としてN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF-DMA)またはN,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート付加物(DMF-DMS)の存在下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式VIIの化合物にアセトンとの前記縮合反応を施して式VIの化合物を得ること:
【化6】
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(1):有機溶媒中、塩基性アルミナの存在下で、式VIIの化合物をアセトンと縮合反応させて式VIの化合物を得ること;
工程(2):有機溶媒中、無水酢酸及びトリエチルアミンの存在下で、前記式VIの化合物をN,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート縮合物と縮合反応させて、前記式Vの化合物を得ること:
【化7】
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
工程(1)における前記有機溶媒が芳香族溶媒であり;
及び/または、工程(1)において、前記式VIIの化合物と前記有機溶媒との質量-体積比は、0.10~0.20g/mLであり;
及び/または、工程(1)において、前記塩基性アルミナと前記式VIIの化合物との質量比は、(2~4):1であり;
及び/又は、工程(1)において、前記縮合反応の温度は0~50℃であり;
及び/または、工程(1)はまた、ワークアッププロセスを含み、前記ワークアッププロセスは、前記縮合反応が完了したとき、濾過し、前記濾過したケークを前記有機溶媒で洗浄し、得られた濾液を合わせて工程(2)で直接使用する工程を含み;
及び/または、工程(2)において、前記有機溶媒は芳香族溶媒であり;
及び/または、工程(2)において、前記N,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート縮合物と前記式VIIの化合物との質量比は、(2-4):1であり;
及び/または、工程(2)において、前記無水酢酸と前記式VIIの化合物との質量比は、(0.1~0.4):1であり;
及び/または、工程(2)において、前記トリエチルアミンと前記式VIIの化合物との質量対体積比は、1~2mL/gであり;
及び/または、工程(2)において、前記縮合反応の温度は0~50℃であり;
及び/または、工程(2)は、工程(1)で得られた前記式VIの化合物に無水酢酸及びトリエチルアミンを順次加えて、物質の混合物中でN,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェートと縮合させ、前記縮合反応を行う工程であり;無水酢酸を添加する温度は0~10℃であり;トリエチルアミンを添加する温度は20~30℃であり;
及び/または、工程(2)はまた、ワークアッププロセスを含み、前記ワークアッププロセスは、縮合反応が完了したとき、水を添加して撹拌し、層を分離し、有機溶媒で水相を抽出し、前記有機相を合わせて濃縮し、分離し、精製して、前記式Vの化合物を得る工程を含み;抽出のための前記有機溶媒は、ジクロロメタンであることができ;前記分離及び精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであることができる
請求項17に記載の方法。
【請求項23】
式II:
【化8】
、
式V:
【化9】
、若しくは
式VI:
【化10】
、または
それらの塩
を有する化合物であって、
式V中、ジメチルアミノ基に結合する二重結合は、Z、E、またはZとEとの混合物の形態である、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年9月11日に出願した中国特許出願第2019108588762号の優先権を主張する。本願は、上記中国特許出願の全文を参照する。
【0002】
本願は、医薬合成分野、特に、KRAS阻害剤の複素環式中間体に適用される合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
KRAS突然変異は、ヒト癌において非常に一般的である(約30%)。これは、最も一般的な腫瘍駆動遺伝子の1つであり、肺癌、結腸癌、及び膵臓癌において高い発生率を有する。しかしながら、KRAS突然変異タンパク質の薬剤結合ポケットがないため、KRAS阻害剤を設計することは困難である。
【0004】
Amgenは、2019年ASCO年次総会において、小分子KRAS阻害剤AMG510の第I相臨床結果を発表し、歴史的ブレークスルーを達成した。次いで、AMG510の必須断片としての2-イソプロピル-3-アミノ-4-メチルピリジン(化合物I)の重要性も強調されている。
【0005】
これまでのところ、関連特許はほとんど報告されていない。特許における主な合成経路は、イノベーターであるAmgen(WO2018217651)の合成経路:
【化1】
である。
【0006】
WO2018217651(235頁)の例40では、カップリング反応において、高い触媒担持量と高価なパラジウム触媒と亜鉛試薬が用いられている。一方、化合物XIは市販されていない。その合成は、Journal fuer Praktische Chemie (Leipzig) paper (331 (1989), 369-374)に収率46%で報告されている。
【化2】
【0007】
化合物Iの合成を改良するために、合成経路は、高価な遷移金属触媒クロスカップリング反応を変更するために、特に、クロスカップリング触媒の活性を害する基質中のアミノ基を回避するために、再設計される必要がある。さらに、クロスカップリング反応を無くすことができれば、この医薬中間体の原料コストを効果的に低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の第1の目的は、式II、V及びVIの化合物、それらの調製方法、及びKRAS阻害剤の中間体への適用を提供することである。
【0009】
本願の別の目的は、式Iの化合物の調製方法を提供することである。
【0010】
本願は、上記課題を解決するために、以下の技術的スキームを提供する。
【0011】
一態様では、本願は、式II:
【化3】
、
式V:
【化4】
、及び
式VI:
【化5】
の化合物を提供する。
【0012】
式Vにおいて、ジメチルアミン基の二重結合は、Z構成、E構成、またはZ構成とE構成との混合物である。
【0013】
本願は、KRAS阻害剤の中間体としての化合物を提供し、その構造は、式II:
【化6】
、
式V:
【化7】
、及び
式VI:
【化8】
に示される。
【0014】
別の態様では、本願は、式IIの化合物から式Iの化合物を合成するための方法であって、転位反応による式IIの化合物の脱カルボキシル化を含む方法:
【化9】
を提供する。
【0015】
本願における1つのスキームにおいて、式Iの化合物の合成は、次の工程を含む:
化合物IIはホフマン転位反応条件下で反応して化合物Iを生成する。ホフマン転位反応条件はNaOBrと水との混合系を含む。
【0016】
ここで、NaOBrは、NaOHと水との混合物にBr2を加えて調製されるNaOBr水溶液の形態で用いることができる。NaOHとBr2との質量比は0.9:1であり、NaOHと水との混合物中のNaOHと水との質量比は0.3:1である。
【0017】
化合物IIとNaOBrとのモル比は、(0.8~1.2):1であり、例えば、(0.9~1.1):1である。上記の工程で調製されるNaOBr水溶液を用いる場合、化合物IIとBr2との質量比は1:1である。
【0018】
混合系は、化合物IIと水との混合物にNaOBrを添加することにより得ることができる。添加方法は滴下である。添加温度は-10~10℃であり、0℃等である。化合物IIと水との混合物において、化合物IIと水との質量比は0.5:1である。
【0019】
混合系において、水の総量(NaOBr水溶液を用いる場合は、NaOBr水溶液中の水を含む)と化合物IIとの質量比は7:1である。
【0020】
転位反応の反応温度は10~100℃、例えば室温(10~30℃)~80℃である。
【0021】
転位反応の進行は、当技術分野における従来の試験方法(例えば、TLC、HPLC、またはNMR)でモニターすることができ、化合物IIが消失するか、またはそれ以上反応が起こらなくなると、反応は終点に達する。反応時間は1~5時間である。
【0022】
ワークアップが本合成方法に含まれ、ワークアップには以下の工程が含まれる:転位反応が完了した後、反応混合物を有機溶媒で抽出する。次いで、得られた有機相をリンスし、濃縮し、単離し、そして精製する。抽出用有機溶媒は酢酸エチルである。リンス溶液は飽和ブラインである。単離及び精製方法は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、例えば、溶離液として酢酸エチル及びn-ヘプタン(体積比1:2)を用いるカラムクロマトグラフィーである。
【0023】
本願における1つの溶液において、式IIの化合物の合成は、酸中で化合物IIIを加水分解して化合物IIを得る工程:
【化10】
を含む。
【0024】
加水分解反応の条件及び操作は、当該技術分野におけるそのような反応における従来の条件及び操作であることができ、本願においては、以下が好ましい:
酸は濃硫酸であり、例えば98%濃硫酸である。
酸と化合物IIIとの質量比は2.25:1である。
加水分解温度は105℃である。
【0025】
加水分解反応の進行は、当技術分野における従来の試験方法(例えば、TLC、HPLC、またはNMR)でモニターすることができ、化合物IIIが消失するか、またはそれ以上反応が起こらなくなると、反応は終点に達する。反応時間は1~5時間である。
【0026】
ワークアップが本合成方法に含まれ、加水分解反応が完了した後、水を添加し、pHを10~11に調整し、濾過し、乾燥して、化合物IIを得る工程が含まれる。50%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整する。化合物IIの生成物は、転位反応に直接用いることができる。
【0027】
本願における1つの解決手段において、本合成方法は、スキーム1及び2を含む。
【0028】
スキーム1は、N-メチル-ピロリドン及び鉄触媒の存在下、有機溶媒中での化合物IVとイソプロピルグリニャール試薬との熊田カップリング反応の工程:
【化11】
を含む。
【0029】
熊田カップリング反応の条件及び操作は、当該技術分野におけるそのような反応における従来の条件及び操作であることができ、本願においては、以下が好ましい:
有機溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒である。
有機溶媒の量は、反応に影響を与えない限り、制限する必要はない。例えば、化合物IVの有機溶媒に対する質量対体積比は、0.03~0.04g/mLである。
N-メチル-ピロリドンと化合物IVとの質量比は9.5:1である。
鉄触媒は、鉄(III)アセチルアセトネートである。鉄触媒と化合物IVとの質量比は1:(2~2.2)である。
イソプロピルグリニャール試薬はイソプロピルマグネシウムクロリドである。イソプロピルグリニャール試薬は、溶液形態で使用することができる。溶液の溶媒は、エーテル溶媒等の有機溶媒である。例えば、1.0~2.5mol/Lテトラヒドロフラン溶液である。
イソプロピルグリニャール試薬と化合物IVとの体積対質量比は、(2.6~4.4):1である。
熊田カップリングの反応温度は0~10℃である。
【0030】
熊田カップリングの進行は、当技術分野における従来の試験方法(例えば、TLC、HPLC、またはNMR)によってモニターすることができ、化合物IVが消失するかまたはそれ以上反応が起こらなくなると、反応は終点に達する。反応時間は0.2~5時間であることができる。
【0031】
ワークアップが本合成方法に含まれ、熊田カップリング反応が完了した後、反応混合物にクエン酸水溶液及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、有機溶媒で抽出する工程が含まれる。次いで、有機相を洗浄、濃縮、単離、及び精製する。抽出用有機溶媒は、酢酸エチル等のエステル溶媒である。単離及び精製方法は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、例えば、溶離液として酢酸エチル及びn-ヘプタン(体積比1:6)を用いるカラムクロマトグラフィーである。化合物IIIの生成物は、加水分解反応に直接使用することができる。
【0032】
スキーム2は、有機溶媒中で、化合物Vをアンモニア源で環化させ、化合物IIIを得る工程:
【化12】
を含む。
【0033】
スキーム2において、環化反応は、化合物Vとアンモニア源との反応であり、次いで分子内置換反応で化合物IIIを生成する。
【0034】
環化反応の条件及び操作は、当該技術分野におけるそのような反応における従来の条件及び操作であることができ、本願においては、以下が好ましい:
有機溶媒は、メタノール等のアルコール溶媒である。
有機溶媒の量は、反応に影響を与えない限り、制限する必要はない。例えば、化合物Vと有機溶媒との質量対体積比は、0.03~0.04g/mLである。
アンモニア源は、アンモニア、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムであることができ;例えば、アンモニア源が酢酸アンモニウムである場合、酢酸アンモニウムと化合物Vとの質量比は、(3~4):1であり、例えば、3.67:1である。
環化反応の反応温度は0~50℃であり、例えば20~30℃である。
【0035】
環化反応の進行は、当技術分野における従来の試験方法(例えば、TLC、HPLC、またはNMR)によってモニターすることができ、化合物Vが消失するかまたはそれ以上反応が起こらなくなると、反応は終点に達する。反応時間は1~10日、例えば5日である。
【0036】
ワークアップが本合成方法に含まれ、ワークアップには以下の工程が含まれる:環化反応が完了した後、反応混合物を濃縮し、単離し、そして精製して、化合物IIIの生成物を得る。単離及び精製方法は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、例えば、溶離液として酢酸エチル及びn-ヘプタン(体積比1:6)を用いるカラムクロマトグラフィーである。化合物IIIの生成物は、加水分解反応に直接使用することができる。
【0037】
本願の別の解決手段では、スキーム2は、次の工程を含む。
【0038】
工程(1)において、有機溶媒中、アルカリ性酸化アルミニウムの存在下で、化合物VIIをアセトンと縮合させ、化合物VIを得る。
【0039】
工程(2)において、有機溶媒中、無水酢酸及びトリエチルアミンの存在下で、化合物VIをN,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート縮合物(DMF-DMS)と縮合させて化合物Vを得る。
【化13】
【0040】
工程(1)及び(2)の縮合反応の条件及び操作は、当該技術分野におけるそのような反応における従来の条件及び操作であることができ、本願においては、以下のものが好ましい:
【0041】
工程(1)で用いる有機溶媒は、トルエン等の芳香族溶媒である。
工程(1)における有機溶媒の量は、反応に影響を与えない限り、制限する必要はない。例えば、化合物VIIと有機溶媒との質量対体積比は、0.10~0.20g/mLであることができる。
工程(1)において、アルカリ性酸化アルミニウムと化合物VIIとの質量比は、(2~4):1であり、例えば2.3:1である。
工程(1)における縮合反応の反応温度は、0~50℃、例えば20~30℃である。
【0042】
工程(1)において、縮合反応の進行は、当技術分野における従来の試験方法(例えば、TLC、HPLC、またはNMR)によって監視することができ、化合物VIIが消失するかまたはそれ以上反応が起こらなくなると、反応は終点に達する。反応時間は0.5~2日、例えば1日である。
【0043】
工程(1)のワークアップは本合成方法に含まれ、ワークアップには以下の工程が含まれる;縮合反応が完了した後、反応混合物を濾過し、濾過ケークを有機溶媒でリンスし、濾液を合わせ、工程(2)で直接使用する。
【0044】
工程(2)で用いる有機溶媒は、トルエン等の芳香族溶媒である。
工程(2)において、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート縮合物(DMF-DMS)と化合物VIIとの質量比は、(2-4):1であり、例えば3:1である。
工程(2)において、無水酢酸と化合物VIIとの質量比は、(0.1~0.4):1であり、例えば0.18:1である。
工程(2)において、トリエチルアミンと化合物VIIとの体積対質量比は、1~2mL/gであり、例えば1.5mL/gである。
工程(2)における縮合反応の反応温度は、0~50℃、例えば0~10℃から20~30℃である。
【0045】
1つのスキームにおいて、工程(2)は、工程(1)で得られた化合物VIとN,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート縮合物との混合物に、無水酢酸及びトリエチルアミンを連続的に添加して縮合反応させる工程を含む。添加温度は、無水酢酸については0~10℃、及びトリエチルアミンについては20~30℃である。
【0046】
工程(2)における縮合反応の進行は、当技術分野における従来の試験方法(例えば、TLC、HPLC、またはNMR)でモニターすることができ、化合物VIが消失するか、またはそれ以上反応が起こらなくなると、反応は終点に達する。反応時間は5~24時間、例えば20時間である。
【0047】
ワークアップが工程(2)の手順に含まれ、縮合反応終了後、反応混合物に水を加え、5時間撹拌し、層を分離し、水相を有機溶媒で抽出し、有機相を合わせ、凝縮し、精製して化合物Vの生成物を得る。抽出用有機溶媒はジクロロメタンである。単離及び精製方法は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、例えば、溶離液として酢酸エチル及びn-ヘプタン(体積比1:6)を用いるカラムクロマトグラフィーである。化合物Vの生成物は、環化反応に直接使用することができる。
【0048】
他の態様において、本願は、化合物IVをカップリング反応させて化合物IIIを生成し、次いで化合物IIIを加水分解することを含む、化合物IIの合成方法を提供する。この方法は、次の工程:
【化14】
を含む。
【0049】
カップリング反応及び加水分解反応の条件及び操作は、上記の対応する反応の条件及び操作であることができる。
【0050】
化合物IIIを合成するための特定のカップリング反応の実施形態では、鉄触媒が熊田カップリングで使用され、化合物IVおよびイソプロピルグリニャール試薬が反応体である。
【0051】
別のスキームにおいて、本願は、化合物IIの合成方法を提供する。この方法は、次の工程:
【化15】
を含み、化合物VIIとアセトンとの縮合反応により化合物VIを作製すること、縮合反応により化合物VIから化合物Vを生成すること、次いで、化合物Vのリード化合物IIIへの環化反応、最後に化合物IIIの加水分解反応により化合物IIを生成することを含む。
【0052】
縮合、環化、及び加水分解反応の条件及び操作は、上記の対応する反応の条件及び操作であることができる。
【0053】
化合物VIの縮合による化合物Vの合成の特定の実施形態において、化合物VI及びN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF-DMA)またはN,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート縮合物(DMF-DMS)が、縮合反応の反応物として用いられる。化合物Vを介する化合物IIIの合成において、環化反応は、化合物Vとアンモニア源との反応、次いで分子内置換反応により化合物IIIを生成することを含む。より好ましくは、アンモニア源は、アンモニア、酢酸アンモニウム、及び塩化アンモニウムから選択される。
【0054】
従来技術と比較して、本願における式Iの化合物の合成方法は、次の利点を有する:
1.原材料が容易に入手でき、安価である。
2.操作が単純であり、プロセスがスケールアップ及び工業生産に容易である。
3.より安全で環境にやさしい。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下の実施形態は、本願の実施を説明し、当業者は、これらの具体的な実施形態は、本願の目的を達成するために選択された実施技術的解決手段を示すに過ぎず、技術的解決手段を制限するものではないことを認識すべきである。本願の教示によれば、従来技術と組み合わせた本願の技術的解決手段の改良は明らかであり、それらは全て本願の保護範囲内に属するものである。
【0056】
実施形態で採用する実施条件は、特定の要件に応じてさらに調整することができ、未定義の実施条件は、通常、従来の実験における条件である。
【0057】
中でも、以下の実施形態で用いる既知の化学試薬は、全て市販の化学試薬である。
【0058】
本開示の例示的な実施において、当業者はまた、合成経路に変更を加えることができ、例えば、必要に応じて、特定の反応条件を変更したり、または合成経路の所定の工程もしくはいくつかの工程を調整することができる。本願の要旨から逸脱しない範囲で行われる変更は、本願の保護範囲内である。
【0059】
【0060】
500mLの三口フラスコに、化合物IV(6.0g)、THF(150mL)、NMP(57mL)、及びFe(acac)3(2.77g)を添加した。反応混合物に窒素を3回再充填し、0~10℃に冷却した。THF(39mL)中のiPrMgClを反応混合物に0~10℃で滴下した。30分間撹拌した後、クエン酸水溶液(60mL、0.5mol/L)で反応をクエンチさせ、次いで、飽和NaHCO3水溶液(60mL)及びEtOAc(60mL)を加えた。層を分離した。水層をEtOAc(60mL)で抽出した。有機相を合わせ、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー精製(EtOAc:n-ヘプタン=1:6)により、化合物3(3.59g)を収率57%の油性液体として 得た。
【0061】
化合物IIIの1H NMR:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.63(d,J=5.1Hz,1H),7.35(dd,J=5.0,0.8Hz,1H),3.41(m,J=6.8Hz,1H),2.50(s,J=0.6Hz,3H),1.27(d,J=6.8Hz,6H)。
【0062】
化合物IIIについてのMS:[M+H]+=161.1。
【0063】
【0064】
50mLの反応フラスコ中の化合物III(3.0g)に、濃硫酸(6.76g)を滴下して加えた。混合物を105℃に加熱し、4時間撹拌した。反応終了後、反応物を70~75℃に冷却した。水(6g)を反応物に加えた。30分後、反応物を0~10℃に冷却した。水(21g)及び50%水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応混合物のpHを10~11に調整した。30分後、混合物を濾過した。ケークを50℃で乾燥し、オフホワイトの固体(2.5g、収率75%)を得た。
【0065】
化合物IIの1H NMR:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.38(d,J=4.9Hz,1H),7.90(s,1H),7.63(s,1H),7.08(d,J=4.7Hz,1H),3.14(m,1H),2.26(s,3H),1.20(d,J=6.8Hz,6H)。
【0066】
化合物IIについてのMS:[M+H]+=179.1。
【0067】
【0068】
25mLの丸底フラスコA内の水酸化ナトリウム(0.45g)と水(1.5mL)との混合物に、氷水浴中でBr2(0.5g)を滴下して加えた。室温で10分間撹拌した後、得られたNaOBr水溶液を、氷水浴中の25mL丸底フラスコB中の化合物II(0.5g)と水(1mL)との混合物に添加した。室温で1.5時間撹拌した後、水(1mL)を加えた。反応混合物を80℃に加熱し、1.5時間撹拌した。反応終了後、反応物を20~30℃に冷却し、EtOAc(10mL)を加えた。層を分離した。水相をEtOAc(10mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和ブライン(10mL)で洗浄し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:n-ヘプタン=1:2)で精製して、化合物I(140mg、収率33%)を淡黄色の油状液体として得た。
【0069】
化合物Iの1H NMR:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.67(d,J=4.7Hz,1H),6.78(d,J=4.6,0.8Hz,1H),4.72(s,2H),3.19(m,1H),2.08(s,3H),1.15(d,J=6.7Hz,6H)。
【0070】
化合物IのMS:[M+H]+=151.2。
【0071】
【0072】
100mL丸底フラスコA中の化合物VII(5.0g)とアセトン(6.7mL)との混合物に、塩基性Al2O3(11.5g)及びトルエン(30mL)を加えた。反応物を20~30℃で24時間撹拌した。反応終了後、混合物を濾過した。ケークをトルエン(20mL)でリンスし、濾液を250mL丸底フラスコBに移し、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルサルフェート付加物(DMF-DMS)(15.4g)、無水酢酸(0.92g)を加えた。混合物を0~10℃に冷却し、次いでトリエチルアミン(7.5mL)を滴下して添加した。反応物を20~30℃で15時間撹拌した。水(40mL)を加えた。混合物をさらに5時間撹拌した。層を分離した。水相をDCM(3×30mL)で抽出した。合わせた有機相を濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:n-ヘプタン=1:10)で精製して、化合物V(3.0g、32%)を淡黄色固体として得た。
【0073】
化合物Vの1H NMR:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.96(d,J=12.8Hz,1H),7.55(d,J=12.8Hz,1H),3.31(d,J=2.2Hz,1H),3.25(s,3H),3.13(m,1H),2.97(s,3H),2.24(s,3H),1.01(dd,J=6.8,3.6Hz,7H)。
【0074】
化合物VのMS:[M+H]+=207.1。
【0075】
【0076】
10mL丸底フラスコ中の化合物V(60mg)、メタノール(1.8mL)、及び酢酸アンモニウム(0.22g)の混合物を20~30℃で5日間撹拌した。反応終了後、反応混合物を減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:N-ヘプタン=1:6)で精製して、化合物III(23mg、収率50%)を油性液体として得た。
【0077】
化合物IIIの1H NMR:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.63(d,J=5.1Hz,1H),7.35(dd,J=5.0,0.8Hz,1H),3.41(m,1H),2.50(s,J=0.6Hz,3H),1.27(d,J=6.8Hz,6H)。
【0078】
化合物IIIについてのMS:[M+H]+=161.1。
【0079】
本願は、上記実施形態を含むが、これらに限定されるものではない。本願の精神の原則の下でなされる同等の代替または部分的な改良は、本願の保護範囲内であるとみなされる。