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  • 特許-時計用ムーブメント 図1
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  • 特許-時計用ムーブメント 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】時計用ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/05 20060101AFI20241220BHJP
   G04B 29/02 20060101ALI20241220BHJP
   G04B 17/28 20060101ALI20241220BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
G04B37/05 H
G04B29/02 Z
G04B17/28
G04B45/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022519011
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2020077244
(87)【国際公開番号】W WO2021063953
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】19200461.2
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】01238/19
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】523207504
【氏名又は名称】グルーベル フォルセイ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】GREUBEL FORSEY S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン フォルセイ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン コルネイユ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203759431(CN,U)
【文献】国際公開第2013/104945(WO,A1)
【文献】特開2012-088313(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03226081(EP,A1)
【文献】特開2000-056040(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01181584(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 29/02-29/04
G04B 17/28
G04B 37/05
G04B 45/02
G04B 19/00-19/02
G04B 13/00
G04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源及び前記動力源によって駆動されるように配置された少なくとも1つのベースギア列用の支持体として機能するメインフレームと、
- 前記メインフレームの部材上に片持ち梁方式で取り付けられ、前記メインフレームの上に重なって延びる少なくとも1つの浮揚ブリッジ、を備える時計用ムーブメントであって、
前記浮揚ブリッジは、浮揚ギア列を介して前記ベースギア列に動的に接続された少なくとも1つの機能部材を担持し、前記機能部材及び前記浮揚ギア列の少なくとも一部の部材は、前記浮揚ブリッジによって全体が支持さ
前記浮揚ブリッジは、前記メインフレームに面する面を有し、
前記浮揚ギア列は、複数の歯車を有し、
前記少なくとも1つの機能部材及び前記浮揚ギア列の前記複数の歯車は、前記浮揚ブリッジによって完全に支持され、前記複数の歯車は、前記メインフレームに面する前記浮揚ブリッジの前記面上に取り付けられる、
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項2】
請求項に記載のムーブメントであって、前記機能部材は表示部材である、ムーブメント。
【請求項3】
請求項に記載のムーブメントであって、前記機能部材は調速システムである、ムーブメント。
【請求項4】
請求項に記載のムーブメントであって、前記部材は振り座である、ムーブメント。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のムーブメントであって、それぞれがそれぞれの浮揚ギア列を担持する少なくとも2つの浮揚ブリッジを含む、ムーブメント。
【請求項6】
請求項に記載のムーブメントであって、前記浮揚ギア列は互いに係合する、ムーブメント。
【請求項7】
請求項に記載のムーブメントであって、前記浮揚ギア列は、該浮揚ギア列の各々の最後の歯車の高さで互いに係合する、ムーブメント。
【請求項8】
ガラスによって少なくとも一面で閉じられるケース、及び、請求項1~のいずれか一項に記載のムーブメントを備えると共に前記ケース内に載置される時計であって、
前記機能部材及び前記少なくとも1つの浮揚ブリッジは、前記メインフレームと前記ガラスとの間に配置される、
時計。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、時計製造の分野に関する。より詳細には本発明は、特定のフレーム構造を有する時計用ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「複雑な」時計、すなわちいくつかの追加機構を含む時計において、よく遭遇する問題の1つは、様々な機構を配置するため、並びに/又は、文字盤上での表示部材、アニメーション、及び他の視覚部材を配置するためのムーブメント内での容積が不足することである。ムーブメントが混み合っている場合、最も一般的に用いられる解決策は、ムーブメントの厚みを増大させることで、追加の高さ(の組)で機構を配置することである。そのため、ムーブメントが非常に厚くなり、その分時計ケースも大きくなってしまう。MB&Fの「レガシー・マシン」シリーズは、この問題をある程度解決している。この構造では、テンプとヒゲゼンマイのアセンブリは、フレームに従来通り配置された第1ベアリングと、機構を搭載し浮揚ブリッジを構成する一対の片持ち梁アームに担持される第2ベアリングとの間に取り付けられている。しかし、脱進機システムは依然として比較的従来通りの方法でフレームに配置されており、テンプの軸のための通路を必要としている。テンプの軸のためのベアリングの1つがフレーム上に従来通り配置されているということは、脱進機の配置と同様にフレーム上の枢動に関する従来の構造の制約を意味する。
【0003】
表示部材やアニメーションなどを配置する場合、これらの視覚部材の一部を透明なケースバックを通して見えるように時計の裏側に配置することが一般的な解決策である。しかし、これらの部材は、ユーザが時計を装着しているときには見ることができず、これらの表示を見ることができるようにするためには、時計を取り外し、裏返すことが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、前述の欠点の一又は他が少なくとも部分的に克服された時計ムーブメントを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
より具体的には、本発明は、請求項1によって定義される時計用ムーブメントに関する。当該ムーブメントは、
- 典型的にはプレートと少なくとも1つのブリッジを含み、動力源及び前記動力源によって駆動されるように配置された少なくとも1つのベースギア列用の支持体として機能するメインフレーム
- 前記メインフレームの部材上に片持ち梁方式で取り付けられ、前記メインフレームの上に重なって延びる少なくとも1つの浮揚ブリッジ、
を備える。
【0006】
本発明によれば、前記浮揚ブリッジは、浮揚ギア列を介して前記ベースギア列に動的に接続された、表示部材、調速システム(テンプ-ヒゲゼンマイ-脱進機システムなど)、振り座などの少なくとも1つの機能部材を担持している。さらに、前記機能部材及び前記浮揚ギア列の少なくとも一部の部材は、前記浮揚ブリッジによって全体が支持されている。言い換えれば、当該部材は、前記メインフレーム上に配置されたいかなるベアリングを使用することなく、前記浮揚ブリッジのみで枢動される。
【0007】
これらの手段により、前記機能部材は、前記表示部材、前記調速装置(又はその部材)、その他の部材のいずれであっても、担持されるベアリングを必要とせずに、前記メインフレームに重畳して配置されることが可能である。これにより、前記メインフレーム上に多くの段を設けることなく当該ムーブメントに空間が生成される。これは前記メインフレーム上だけでなく前記浮揚ブリッジ上での同様である。その結果製造者の自由度が増す。実際、当該ムーブメントが収納されたとき、前記浮揚ブリッジは、前記メインフレームとガラス(あるいはその代わりにケースバック-これも透明であり得る)との間の隙間内で延びるので、通常使用されない空間を使用することになる。
【0008】
有利には、前記浮揚ギア列の全体が、前記浮揚ブリッジによって完全に支持される。
【0009】
一の特別な実施形態では、当該ムーブメントは、それぞれがそれぞれの浮揚ギア列を担持する少なくとも2つの浮揚ブリッジを含むことができる。これらの浮揚ギア列は、互いに独立してよく、あるいは、前記メインフレームの一の側から他の側へトルクを伝達するために、各浮揚ギア列のそれぞれの歯車で互いに係合してよい。特にこの係合は、各浮揚ギア列の最後の歯車の高さで行われ得る。
【0010】
本発明はまた、ガラスによって少なくとも一面が閉じられたケースと、本明細書に記載したようなムーブメントとを備えると共に前記ケースに取り付けられた時計に関する。当該時計では、前記機能部材及び前記浮揚ブリッジは、前記メインフレームと前記ガラスとの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の詳細は、添付図面を参照してなされる以下の説明を読めば、より明確になるであろう。
図1】本発明による時計用ムーブメントの一部を示す概略断面図である。
図2】本発明による時計ムーブメントの他の変形例の一部の等角図であり、互いに噛み合う浮揚ギア列を担持する2つの浮揚ブリッジを含んでいる。
図3】本発明による時計ムーブメントの他の変形例の一部の概略図である。図中、浮揚ブリッジが調速システムを担持している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明による時計用ムーブメント1の一部を模式的に示している。このムーブメントは、一般に知られており、したがって詳細に説明する必要がないように、プレートと少なくとも1つのブリッジを含むメインフレーム3を備える。
【0013】
メインフレーム3は、ゼンマイバネを収容する動力源5-ここでは従来の香箱として図示されている-を担持している。電気モーターのような他の種類の動力源5も、本発明によるムーブメント1に用いられ得る。動力源5は、2つのフレーム部材の間で枢動自在に取り付けることができ、あるいは、一般に知られているように、その一方の側面のみで支持される浮揚方式で取り付けることができる。
【0014】
動力源5は、部分的に図示された主ギア列7を駆動し(主ギア列7の残りの部分は太い矢印によって概略的に図示されている)、この主ギア列は、フレームによって支持され、一般的に知られているように、複数の歯車、1つ以上のベルト、チェーン等、又はそのような部材の組み合わせを含む。さらに、歯車の歯形の種類は、構造の必要性とブリッジの形状に応じて、ストレートカット型だけでなく、螺旋型、傾斜型、クラウン型、又は同様のものであってもよい。
【0015】
この場合、ギア列7は、メインフレーム3に取り付けられた調速システム9-例えばあらゆる種類のテンプ-ヒゲゼンマイ-脱進機型、一軸、二軸、三軸のトゥールビヨン、カルーセル、又はムーブメントの速度を決定するために用いられる他の既知の調速システム-も駆動させる。さらに、調速システムの各々は、メインフレーム3の平面に対して傾斜していてもよいし、傾斜していなくてもよい。
【0016】
時計用ムーブメントはまた、メインフレーム3上、特にブリッジ上又はメインフレーム3のプレート上に片持ち梁方式で取り付けられた浮揚ブリッジ11を含む。言い換えれば、浮揚ブリッジは、メインフレーム3に固定された一端と、自由な一端を有する。浮揚ブリッジ11は、メインフレーム3と重なって延び、少なくとも1つの機能部材13を担持し、この場合、秒、分、時間、曜日、日付、週番号、ムーンフェイズなどの時計情報を表示するように配置された針である。針の代わりに、ディスクや他の種類の表示部材を設けることも可能である。同様に、表示機構は、例えば、レトログラード、ジャンプ、又は当業者に知られている任意の型の機構であってもよい。
【0017】
この機能部材13は、浮揚ブリッジ11の両側に配置された一対のベアリング15a、15bによって、又はそれを支持するのに役立つ他の任意の特別な配置によって、完全に浮揚ブリッジ11によって支持される。例えばボールベアリング又は当業者に知られている他の種類のベアリングなど、任意の種類のベアリングが想定され得ることは明らかである。
【0018】
機能部材13は、3つの歯車17a、17b、17cからなる浮揚ギアの組17の部材17aに回転可能に固定されている。これらの歯車はそれぞれ浮揚ブリッジ11によって全体的に支持されている。これらの歯車はギア列を形成する。ギア列は、メインフレーム3に取り付けられた駆動輪7aによって駆動されて、かつ動力源5によって駆動される。図示の実施形態では、歯車17a、17cはそれぞれ単一の歯付き歯車を含み、歯車17bはギアとピニオンからなるが、歯型部材の他の組合せも可能である。「完全に支持されている」とは、歯車17a、17b、17cが、メインフレーム3上に配置されたベアリングを一切使用せずに、専ら浮揚ブリッジ上で枢動することを意味する。
【0019】
図示されているように、歯車17a、17b、17cの全ては、メインフレーム3に面した浮揚ブリッジ11の下側に取り付けられているが、使用者に面したブリッジ11の反対側に全てを取り付けることも可能である。さらに、浮揚ブリッジ11の両側の歯型部材の組み合わせも可能であり、この場合、少なくとも一部の歯車は、ブリッジの両側の有歯部材を含み、これらはシャフトやチューブなどによって互いに連結され得る。
【0020】
さらに、複数の機能部材13をそれぞれ浮揚ギア列17の異なる歯車17a、17b、17cと回転可能に固定された状態で設けることも可能である。ギア比を適切に適合させることにより、浮揚ギア列は、例えば、歯車17aと一緒に回転するように固定された機能部材13によって時間を表示し、歯車17b又は17cと一緒に回転するように固定されるか又は歯車17b若しくは17cによって駆動される機能部材によって分を表示して、ダイヤル列として機能することが可能である。このように、浮揚ギア列の歯車17a、17b、17cの傾斜に応じて、それぞれの歯車の軸に平行に、1つずつ異なる傾斜を有する後者のいくつか(又は実際にはすべて)に固定される追加の機能部材を有することが可能である。これにより、時計に独特の外観を与えることができる。
【0021】
メインフレーム3によって担持される部材が示されていない図2に示されているように、複数の浮揚ブリッジ11及び浮揚ギア列17を設けることも可能であり、これらはそれらの最後の歯車17aで互いに係合することができる。あるいは、2つの浮揚ギア列17が互いに直接協働しないようにすることも可能である。このような配置により、時計メーカーは、例えば、ムーブメント1の中央に空間を設けることができ、ムーブメントの部材の大部分は、浮揚ギア列17の一部を形成する。この空間は、透明であってもよいし、任意の物体(彫刻物、アニメーション、ゲーム装置など)を含むことができる。
【0022】
図示の変形例では、各歯車17aは針などの機能部材13を担持しているが、浮揚ギア列17の一方又は他方が担持する機能部材を1つだけ設けることも可能である。この構造では、針は、2つの歯車17aの間のギア比に依存する角速度比で、反対方向に回転する。また、2つの車輪17aの間に中間歯車を介在させたり、歯車17bで回転が固定された指針の一方を浮揚ギア列17の一方又は他方に取り付けたりすることも可能である。あるいは、2つの浮揚ギアトレイン17は、メインフレームの一方から他方へトルクを伝達するために使用することができ、メインフレームを通過するかさばったギア列やクラウン輪を必要としない。
【0023】
メインフレーム3によって担持される部材も示されていない図3は、調速システム9がメインフレーム3上に配置される代わりに浮揚ブリッジ11によって担持される、さらに別の実施形態を示している。図示された変形例では、調速システム9は、従来型の脱進機システム25によって振動を維持されるテンプ21-ヒゲゼンマイ23のアセンブリを備える。調速システム9は、本発明の意味においては機能部材とみなされる。あるいは、他の種類の調速システム(デテント式脱進機、トゥールビヨン、カルーセルなど)が使用されてもよい。
【0024】
テンプ21は、例えばボールベアリングを介して浮揚ブリッジ11に支持されることにより、その一方の面(「浮揚テンプ」)のみで支持されるように取り付けることができる。あるいは、浮揚ブリッジ11は、従来のベアリングを搭載したプレート(図示せず)を含むこともでき、このプレートは、例えば開口部11aと協働して、ねじ等によって浮揚ブリッジ11に固定される。
【0025】
図示の構造では、歯車17dは、浮揚ブリッジ11の下側に位置するピニオン17d1と、浮揚ブリッジ11の上側に位置する脱進ギア17d2とを含む脱進歯車である。脱進歯車は、既知の方法でアンカー25aと協働し、歯車がブリッジ11のいずれかの側に位置する歯型部材を含むことができるという原理を明確に示している。
【0026】
これらの手段により、浮揚ブリッジ上に位置するテンプ21-ヒゲゼンマイ23-脱進機25のアセンブリは、動力源5によって駆動されるベースギア列7の速度を調節する。これらの最後の2つの部材は図3には示されていない。
【0027】
上述した原理に基づく他の代替案も可能である。例えば、浮揚ブリッジ11によって担持される機能部材は、任意の型のアニメーション、時間又は運動(パワーリザーブなど)に関連する任意の種類の時計情報を表示する装置、香箱5を巻くために配置された振動錘、又は同様のものであり得る。
【0028】
以上のことから、ムーブメント1が収納されるとき、機能部材13、21と同様に浮揚ブリッジ11が、中央側であれ裏側であれ、メインフレーム3とガラスの間に介在することになるのは明らかである。
【0029】
また、文字盤、時計ケース、巻上げ及び/又は時刻設定手段等の他の標準的な部材は表されていないことに留意されたい。
【0030】
本発明を特定の実施形態に関連して前述してきたが、他の追加の変形例もまた、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく可能である。
図1
図2
図3