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特許7607649材料要求の少ない構造クロスチャンネル充填要素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】材料要求の少ない構造クロスチャンネル充填要素
(51)【国際特許分類】
   F28F 25/08 20060101AFI20241220BHJP
   B01J 19/32 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F28F25/08 A
B01J19/32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022522246
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2020077123
(87)【国際公開番号】W WO2021073859
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】19202989.0
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515169326
【氏名又は名称】ズルツァー マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アオスナー、イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ウェールリ、マルク
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ホルシッツ、ベルンハルト
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-310125(JP,A)
【文献】特開2007-222763(JP,A)
【文献】特開2005-257605(JP,A)
【文献】米国特許第05267444(US,A)
【文献】国際公開第2013/015415(WO,A1)
【文献】米国特許第03687818(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 25/08
B01J 10/00 - 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重い流体相と軽い流体相との間での物質移動及び/又は熱交換のためのカラム(10)のための構造クロスチャンネル充填要素(12)であって、
前記構造クロスチャンネル充填要素(12)は、各々が開口部(40、40’、40’’、40’’’)を有するエキスパンドメタル・シートで作られた少なくとも2つの隣接する層(32、32’)を有し、前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)は、分離要素(42)によって囲まれて互いに分離されており、
前記少なくとも2つの層(32、32’)のうちの少なくとも2つの層が、互いに平行に且つ互いに接触するように、前記充填要素(12)の長手方向(V)に配置され、それにより前記少なくとも2つの層(32、32’)の一方の端部から反対側の端部まで延びるオープンスペース(30)が前記少なくとも2つの層(32、32’)の間に提供され、それにより前記重い流体相及び前記軽い流体相のうちの少なくとも一方が前記オープンスペース(30)を通って流れることができ、
隣接する開口部(40、40’、40’’、40’’’)の間の前記分離要素(42)の少なくとも50%の平均幅(b)と、シート材料厚さ(s)との間の比が少なくとも15であり、前記長手方向(V)に垂直である平面内で測定した前記少なくとも2つの層(32.32’)のうちの少なくとも2つの層の間の最大距離(D)と、前記分離要素(42)の前記平均幅(b)との間の比が少なくとも4であり、また前記エキスパンドメタル・シートの延伸方向に垂直である方向において分離要素(42)に隣接する2つの開口部(40、40’’’)の間の距離(u)と、この分離要素(42)の前記平均幅(b)との間の比が、すべての分離要素(42)の少なくとも50%において、4から6であり、
前記距離(u)は、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向に垂直な方向における開口部(40)の縁部の一方側の最外ポイントと、前記エキスパンドメタル・シートの同じ方向における隣接する開口部(40’’’)の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を決定することによって測定され、前記充填要素(12)の前記長手方向は本明細書で定義される通りであり、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向は、前記構造クロスチャンネル充填要素(12)の前記長手方向(V)に垂直な方向であり、また
分離要素(42)の前記平均幅(b)は、前記分離要素(42)を、それぞれがセクション長さdiを有する個別のセクションi=1、2、3、...nへ分割することによって決定され、前記セクションの各々に関して、前記セクション内の前記隣接する縁部の間の最短距離biが測定され、積di・biの和がdiの和で割られて、前記分離要素(42)の前記平均幅bが得られる、構造クロスチャンネル充填要素(12)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの層(32、32’)の少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、エキスパンドメタル・シートで作られ、且つ周期的な変形部分(26、28、34)を有し、
前記層(32、32’)は、前記隣接する層(32、32’)の前記周期的な変形部分(26、28、34)が、前記長手方向(V)に対して斜めに延びる前記層(32、32’)の前記周期的な変形部分(26、28、34)と十字交差態様で交差するように方向付けられ、
各層(32、32’)が、前記層(32、32’)の前記周期的な変形部分(26、28、34)と、前記隣接する層(32、32’)の前記変形部分との間の交差ポイントで前記隣接する層(32、32’)の各々に接触し、また
前記少なくとも2つの層(32、32’)の間の前記オープンスペース(30)は、前記周期的な変形部分(26、28、34)によって画定される、請求項1に記載の構造充填要素(12)。
【請求項3】
前記距離(u)と、少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素(42)の前記平均幅(b)との間の比が、4から6、好適には4.5から5.5、より好適には4.9から5.1である、請求項1又は2に記載の構造充填要素(12)。
【請求項4】
少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部(40、40’、40’’、40’’’)において、前記距離(u)が、5mmから20mm、好適には7.5mmから15mm、より好適には9mmから11mmである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項5】
前記長手方向(V)に垂直な方向である前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向において互いに隣接する第1の開口部(40)と第2の開口部(40’)との間の前記距離(u)と、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向に垂直な方向において互いに隣接する前記第1の開口部(40)と第3の開口部j(40’’)との間の前記距離(u)との間の比が0.4から0.7であり、
前記距離(u)は、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向における前記第1の開口部(40)の前記縁部の一方側の前記最外ポイントと、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向において隣接する前記隣接する第2の開口部(40’)の前記縁部の同じ側の前記最外ポイントとの間の距離を決定することによって測定され、また
前記距離(u)は、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向に垂直な方向における前記第1の開口部(40)の前記縁部の一方側の前記最外ポイントと、前記エキスパンドメタル・シートの同じ方向における前記隣接する第3の開口部(40’’’)の前記縁部の同じ側の前記最外ポイントとの間の距離を決定することによって測定される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項6】
少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部(40、40’、40’’、40’’’)において、前記距離(u)と前記距離(u)との間の比が0.4から0.7、好適には0.45から0.70、より好適には0.49から0.55である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項7】
少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部(40、40’、40’’、40’’’)において、前記距離(u)が、2mmから8mmであり、好適には3mmから7mmであり、より好適には4mmから6mmである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項8】
隣接する開口部(40、40’、40’’、40’’’)の間の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素(42)の前記平均幅(b)が、1.5mmから4mm、好適には1.6mmから3.5mm、最も好適には1.8mmから3.0mmである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項9】
隣接する開口部(40、40’、40’’、40’’’)の間の少なくとも1つの分離要素(42)の前記平均幅(b)と、前記シート材料厚さ(s)との間の比が、少なくとも18である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項10】
前記少なくとも2つの層(32、32’)の少なくとも50%の間、好適には少なくとも75%の間、より好適には少なくとも80%の間、さらに好適には少なくとも90%の間、さらに好適には少なくとも95%の間、最も好適にはすべての前記少なくとも2つの層(32、32’)の間において、前記長手方向(V)に垂直である前記平面内で測定した前記最大距離(D)と、前記分離要素(42)の前記平均幅(b)との間の比が、4から15、好適には5から13、最も好適には8から12である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項11】
前記少なくとも2つの層(32、32’)の少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%において、前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)の全面積を前記層(32、32’)のシート面積(A)で割ったときの比が、20%から38%の間、好適には25%から35%の間、最も好適には28%から32%の間である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項12】
前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)の少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、1mmから4mm、好適には2mmから3mmである前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)のより短い固有長さ(e)と、2mmから8mm、好適には2.5mmから7mm、最も好適には3mmから6mmであるより長い固有長さ(e)とを有し、
開口部(40、40’、40’’、40’’’)の前記より短い固有長さ(e)が、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向における前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)の最大寸法であり、開口部(40、40’、40’’、40’’’)の前記より長い固有長さ(e)が、前記エキスパンドメタル・シートの前記延伸方向に垂直な方向における前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)の最大寸法である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項13】
前記開口部(40、40’、40’’、40’’’)の少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてにおいて、開口部(40、40’、40’’、40’’’)の前記より短い固有長さ(e)と、同じ開口部(40、40’、40’’、40’’’)の前記より長い固有長さ(e)との間の比が、0.4から0.7、好適には0.45から0.6mm、最も好適には0.49から0.55mmである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの構造充填要素(12)を有する物質移動カラム。
【請求項15】
物質移動及び/又は熱交換のための、請求項1から13までのいずれか一項に記載の構造充填要素(12)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重い流体相(heavy fluid phase)と軽い流体相(light fluid phase)との間の物質移動及び/又は熱交換用カラムのための構造クロスチャンネル充填要素に関する。
【背景技術】
【0002】
構造充填要素(structured packing element;規則充填要素)は、物質移動カラムで、例えば分留カラム、蒸留カラム、吸収カラム、抽出カラム、又は煙道ガス・スクラバなどで使用される。構造充填要素は、異なる密度の少なくとも2つの流体相の間での物質移動及び/又は熱伝達を改善するように機能し、構造充填要素は、通常、対向流内で動作する。蒸留用途及び吸収用途では軽相がガス又は蒸気であり、重相が凝縮物又は液体であるのに対して、抽出プロセスでは両方の相が異なる密度を有する液体である。構造充填要素は複数の異なる層を有し、複数の異なる層の各々がより重い相のための表面積を提供する。より重い相は層の表面に沿って下方にゆっくりと流れて(trickle down;滴下して)拡散する。加えて、構造充填要素の異なる層の間にオープンスペースが設けられ、オープンスペースに軽相(例えば、蒸留においては、蒸気又はガス)が充填され、オープンスペースが上行する軽相のための経路を提供し、同時に、軽相が圧力勾配によって移動させられる。圧力勾配は流れ抵抗に打ち勝つのに必要である。対向流の物質移動の一般的な事例では、軽相の平均流れ方向が構造充填要素の底部から頂部に、したがって、より重い相の平均流れ方向の反対に向かう。構造充填要素の表面上で1つの重相が拡散するのを可能にすることにより、少なくとも2つの相の間に界面が作り出され、その結果、相の間での効率的な熱伝達及び物質移動が界面で確立される。2つ以上の重相を用いる用途も存在する可能性がある。1つの例が抽出蒸留である。
【0003】
物質移動カラムが、通常、構造充填要素の複数のベッドを有する。通常、そこを通って軽相が上行するのに十分なスペースを残しながら、ベッドの断面にわたって重相を一様に分散させるために、分散装置が各ベッドの頂部に配置される。さらに、多くの場合、グリッド状の保持デバイス及び収集装置が各ベッドの下方に配置され、グリッド状の構造がベッドをその定位置で維持し、収集装置がベッドから下方にゆっくりと流れる重相を収集し、この間、軽相を上行させるための十分なオープンスペースが収集装置内に残される。
【0004】
一般的な種類の構造充填要素は、いわゆるクロスチャンネル波形充填物(cross-channel corrugated sheel packing)であり、このクロスチャンネル波形充填物は、例えば複数の波形シートから組み立てられ、複数の波形シートが互いに平行であり互いに接触している。通常、波形メタルシートが、波形シートの長手方向セクションに対して垂直に波形シートを貫通する複数の棒により互いに対して固定され、棒が、ワッシャ及びナットにより、又は棒を曲げることにより、最初の及び最後の波形シートに対して固定される。各波形シートが、交互の向きの山及び谷などの、複数の周期的な変形部分を有し、隣接する波形シートが、これらの隣接する波形シートの波形を、垂直方向又は長手方向に対して斜めに延在する波形シートの波形と十字交差で交差させるように方向付けられ、それにより、互いを連続的に横断する傾斜チャンネルを形成する。これらのチャンネルが充填物内のガス相及び液相の流れに良い影響を与え、相の間での物質移動を促進する。つまり、ガス相及び液相が構造充填要素のチャンネル内で接触させられ、したがって、相の間での物質移動さらには熱伝達が促進される。より具体的には、上行するガスが、シートの表面上に存在する液体に接触し、物質移動カラムを通って下方に流れるときにチャンネルを形成する。この接触中、ガス中に豊富に含まれる成分が液体の中へ及びその逆で移送される。これは効率的な物質移動が行われていることを意味する。これらの充填物は、例えば、DE1253673、CA1270751、及び米国特許第6,206,349(B1)号で開示されている。
【0005】
単位時間当たりの物質移動の量はガスと液体との間の界面の面積に比例し、界面の面積が、充填要素の層の表面のうちの液体によって湿っている部分が増すにつれて、大きくなる。金網で作られたクロスチャンネル波形充填物は、金網の毛管力による波形シートの表面での重相の良好な拡散のおかげで良好な湿潤性を有し、したがって(この良好な湿潤性のおかげで)高い物質移動効率を有することが知られている。このような構造充填要素の例として、1960年代に最初に出されたSulzer充填物タイプBX及びCYがある。このような構造充填要素の別の例がEP1477224A1に開示されている。しかし、金属ワイヤの網は高価な材料である。これを理由として、網材料を多数の小さい開口部を有する波形メタルシートに置き換える試みが行われてきた。1つの例として市販されているMontz-Pak Type BSHがある。物質移動カラムの動作中、毛管力によりこの充填物の開口部は重相で満たされる。このような波形の、比較的精密に構造化された有孔性メタルシートの湿潤性は金網に基づく充填物の湿潤性より低く、シートの生産が依然として比較的高価なままであり、これは部分的に、精密な構造に付随する低速の生産プロセスを原因とする。
【0006】
上述したように、高い物質移動効率のためには、構造充填要素の表面が液体によって良好に覆われることが重要である。その理由は、与えられ得る充填物の物理的面積(physical area)ほどには軽相が重相に接触しないことで、不十分性(failure)により充填材料が無駄になるからである。層の表面上での重相の拡散を促進するための代替の提案(構造充填要素のための材料として金網又は波形の非常に精密なエキスパンドメタル(expanded metal)シートを使用することの代わり)が、米国特許第4,296,050号、GB1,569,828、米国特許第4,981,621号、及びEP3003550A1などで開示されているように、有孔性を有する層及び別の表面テクスチャを提供することである。
【0007】
構造充填要素の表面の使用をさらに改善するために、既に、DE3818917C1及びCN88200252Uで、高い空隙率(つまり、層内の開口部の全面積を層のシート面積によって割ったときの大きい商)を有する有孔性層で作られたクロスチャンネル波形充填物を提供することが提案されている。より具体的には、DE3818917C1が、分離要素により互いに分離された開口部を有するシート層で作られた構造充填要素を開示している。開口部の縁部が突出するリム部を有し、隣接する開口部のリム部がシート層の表面の上側から上方に及びシート層の表面の下側から下方に交互に延在する。さらに、DE3818917C1が、層の開口部が、隣接する開口部の間に位置する分離要素の幅より3倍から7倍大きいことを教示している。これにより、50%以上のオーダーの非常に高い空隙率を有する有孔のメタルシート(open metal sheet)で作られた構造充填要素が得られる。CN88200252Uが、0.1mmから0.5mmの厚さを有する有孔性シートで作られた構造充填要素を開示している。開口部がひし形形状を有し、開口部の幅が2mmから3mmの間であり、シート上の有孔エリア(open area)のパーセンテージすなわち空隙率が40%から50%である。したがって、これらの両方の従来技術文献は、40%を超え、好適には約50%である、非常に高い空隙率を有するシート層を有する構造充填要素を提供することを教示するものである。これらとは対照的に、従来の構造充填要素は最大でも10%程度の非常に低い空隙率しか有さない。
【0008】
クロスチャンネル波形充填物ではない別の原理に基づく構造充填要素が、例えば、EP0069241A1、米国特許第4,304,738号、及びEP0250061A1に開示されている。これらの構造充填要素の層が、エキスパンド・シートメタルから構成され、層が引き伸ばしプロセスにより特定の層幅を呈することになる。しかし、クロスチャンネル波形充填物とは異なり、これらの構造充填要素の層は波形ではなく、引き伸ばしプロセスに付随する変形部分を除いて、変形しない。これにより、上行する蒸気のためのオープンスペースが制限される。したがって、物質移動効率が最適なものとならない。その理由は、層の間のオープンスペースが、構造充填要素の断面の平面の全体にわたっての均質的な分散を促進する手法で上行する蒸気を移動させる明確に画定される経路を提供しないからである。充填物の形状を画定するときに自由度を増大させることにより蒸気を特定の方向に強制的に動かす(impose on)ことが望ましい。
【0009】
高い物質移動効率とは別に、容量が、構造充填要素のための重要な側面である。構造充填要素内での軽相及び重相の流量が増大すると、構造充填要素内での圧力降下が増大する。特定の圧力降下においては、2つの相の間の摩擦に対抗するのに重力では十分な強さとはならず、それぞれの重相又は液相がそれぞれの軽相又はガス相に混入し、したがって重相又は液相が構造充填要素に沿ってそれ以上降下することができなくなる。この時点で物質移動が停止する。この状況はフラッディングと呼ばれる。このフラッディング・ポイントが構造充填要素の容量を決定し、つまり、構造充填要素の容量が、2つの流量のうちのいずれの増大がフラッディングに到達するときに超えることになる対向流相のペアの最大流量によって特徴付けられる。フラッディング・ポイントは固有の圧力降下に関連し、固有の圧力降下は一般には充填物高さ1メートル当たり10hPa(10mbar)のオーダーである。
【0010】
構造充填要素が良好な物質移動効率さらには良好な容量を有することが最適である。その理由は、これにより、所与の容量において物質移動カラムの直径及び/又は高さを低減すること、並びにそれにより物質移動カラムの投資コストを最小にすることが可能となるからである。しかし、これらの2つの特性は比面積(specific area)及び他の幾何学的パラメータに関して反対の傾向に依存する。より具体的には、大きい比面積、つまり構造充填要素の幾何学的面積(geometrical area)を構造充填要素によって占有されるボリュームによって割ったときの大きい商が、軽相と重相との間での高い程度の接触に繋がる。その理由は、それぞれの構造充填要素が、通常は充填物高さ1m当たりの理論段数(NTSM)の数として表される、高い物質移動効率を有するからである。しかし、大きい比面積を有する構造充填要素は軽相に対しての高い流れ抵抗によって特徴付けられる。その理由は、それぞれの構造充填要素が、充填物の単位高さ当たりのより大きい圧力降下を有し(軽相の所与の流量において)、したがって、小さい比面積を有する充填物より小さい容量を有するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】DE1253673
【文献】CA1270751
【文献】米国特許第6,206,349(B1)号
【文献】EP1477224A1
【文献】米国特許第4,296、050号
【文献】GB1,569,828
【文献】米国特許第4,981,621号
【文献】EP3003550A1
【文献】DE3818917C1
【文献】CN88200252U
【文献】EP0069241A1
【文献】米国特許第4,304,738号
【文献】EP0250061A1
【文献】EP0190435B1
【文献】EP0995958B1
【文献】米国特許第6,874,769(B2)号
【非特許文献】
【0012】
【文献】U.Onken、W.Arlt、「Recommended Test Mixtures for Distillation Columns」、2nd Ed.1990、The Institution of Chemical Engineers、Rugby、England.ISBN0-85295-248-1
【文献】M.R.Fenske、Ind、Engng.Chem.24、482頁、1932年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記を鑑みて、本発明の根底にある目的は、それぞれ、所与の容量においてより高い物質移動効率を有する、又は所与の物質移動効率においてより大きい容量を有する、或いは所与の物質移動効率においてより小さい重量を有する、高コスト効率の多目的な構造充填要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、この目的は、重い流体相と軽い流体相との間での物質移動及び/又は熱交換のためのカラムのための構造クロスチャンネル充填要素を提供することによって達成され、構造クロスチャンネル充填要素が、開口部を各々有するエキスパンドメタル・シートで作られた少なくとも2つの隣接する層を有し、開口部が分離要素によって囲まれてこれらの分離要素によって互いに分離され、少なくとも2つの層のうちの少なくとも2つの層が充填要素の長手方向において互いに平行に且つ互いに接触するように配置され、その結果、少なくとも2つの層の一方の端部から反対側の端部まで延在するオープンスペースがこれらの少なくとも2つの層の間に設けられ、その結果、重い流体相及び軽い流体相のうちの少なくとも1つの相がそこを通って流れることができるようになり、隣接する開口部の間の分離要素のうちの少なくとも1つの分離要素の、また好適には少なくとも50%の平均幅とシート材料厚さとの間の比が少なくとも15であり、長手方向に対して垂直である平面で測定される少なくとも2つの層のうちの少なくとも2つの層の間の最大距離と分離要素の平均幅との間の比が少なくとも4であり、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向において分離要素に隣接する2つの開口部の間の距離とこの分離要素の平均幅との間の比が好適にはすべての分離要素の少なくとも50%において4から6であり、2つの開口部の間の距離が、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向における開口部のうちの1つの開口部の縁部の一方側の最外ポイントとエキスパンドメタル・シートの同じ方向における隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を決定することによって測定され、充填要素の長手方向が本明細書で定義される通りであり、エキスパンドメタル・シートの延伸方向が構造クロスチャンネル充填要素の長手方向に対して垂直である方向であり、分離要素の平均幅が、分離要素を、セクション長さdiを各々有する個別のセクションi=1、2、3、...nへ分割することによって決定され、これらのセクションの各々のセクションにおいて、セクション内の隣接する縁部の間の最短距離biが測定され、積di・biの合計値がdiの合計値によって割られ、分離要素の平均幅bが得られる。
【0015】
この解決策は、隣接する開口部の間の分離要素の平均幅が開口部に対して相対的に大きく(つまり、分離要素に隣接するエキスパンドメタル・シートの延伸方向(長手方向に対して垂直である方向)に対して垂直である2つの開口部の間の距離とこの分離要素の平均幅との間の比が4から6である)、さらにはシート材料厚さより大幅に幅広である(つまり、15倍以上)場合に、所与の容量における物質移動効率が有意に改善され得る、という驚くべき発見に基づく。
【0016】
これは特に予期できないことであった。その理由は、これがDE3818917C1及びCN88200252Uの教示に矛盾するからである。これらの2つの従来技術の文献は、分離要素の間に吊設される独立フィルム(free film)が物質移動面積に2倍寄与することを暗に示しており、したがって、さらに分離要素の幅を最小にすること及び物理的面積のさらなる部分を取り除くことを提案している。これを鑑みて、上で言及したパラメータを上述したように調整することにより所与の容量における物質移動効率が大幅に改善されるということはさらに驚くべきこととなる。
【0017】
本発明による構造充填要素の別の有意な利点は、これが高価な層材料の使用に一切基づかないことである。むしろ、これらの層はエキスパンドメタル・シートから単純に生産され、つまり、薄いメタルプレートを切断及び延伸して第2のステップでエキスパンドメタル・シートを例えば波形シートへと変形させることにより、単純に生産される。したがって、高コスト効率の原材料が使用され、原材料を延伸することによりこの高コスト効率の原材料の材料の必要量がさらに低減される。全体として見ると、本発明は、それぞれ、所与の容量においてより高い物質移動効率を有する、又は所与の物質移動効率においてより大きい容量を有する、高コスト効率の多目的な構造クロスチャンネル充填要素を提供する。
【0018】
構造クロスチャンネル充填要素の長手方向が、物質移動及び/又は熱交換のカラムに組み込まれた場合の構造クロスチャンネル充填要素の頂部エリアから底部エリアまでの方向であり、つまり、長手方向が、物質移動及び/又は熱交換のカラムの頂部から底部までの方向である。言い換えると、これは、構造クロスチャンネル充填要素並びに物質移動及び/又は熱交換のカラムのそれぞれの動作中のより重い相の重力駆動の(gravity-driven)意図される流れ方向である。より具体的には、構造クロスチャンネル充填要素の長手方向が以下のように決定され得る:構造クロスチャンネル充填要素が水平方向エリア上に配置され、その結果、互いに平行に配置されて互いに接触している構造クロスチャンネル充填要素の層が垂直方向に延在し、さらにその結果、層の一方の端部から反対側の端部まで延在するオープンスペース(又は、層の周期的な変形部分によってそれぞれ囲まれてしたがって画定されるチャンネル)が、構造クロスチャンネル充填要素の頂部から底部まで延在する。したがって、長手方向が、このように配置された構造クロスチャンネル充填要素の頂部から底部までの方向であり、つまり、言い換えると:このように配置された構造クロスチャンネル充填要素の頂部の上に落下する例えば水などの重相がオープンスペースに沿って重力駆動で下方に流れ、長手方向が重相の平均流れ方向である。
【0019】
最大距離(以降、「D」とも称され、つまり「D」と略される)が、上で言及した平面で測定される1つの単層の延在範囲である層幅(以降、「W」とも称され、つまり「W」と略される)に密接に関連する。通常、Wの値はDの約半分である。2つの層の間のオープンスペースが層幅Wにより得られる。長手方向に対して垂直である平面で測定される、構造充填要素の2つの隣接する層の間の最大距離Dが、本発明によると、これらの層の間の距離を意味する(2つの平行な平坦シートの事例などにおいて、これらの層の間の距離が隣接する層の表面全体にわたって一定である場合)。層の間の距離が隣接する層の表面全体にわたって一定ではない場合、つまり層の異なる表面部分の間の距離が異なる場合、2つの隣接する層の間の最大距離Dが、両方の層の間の長手方向に対して垂直である平面の距離を最大とするような、両方の層の表面部分の間の距離である。より具体的には、長手方向に対して垂直である平面で測定される構造充填要素の2つの隣接する層の間の最大距離Dが、本発明によると、最も離れた2つのポイントA及びBの間の距離を意味し、ポイントAが第1の層上にあり、ポイントBが第2の層上にある。2つの平行な平面が画定され、一方の平面がポイントAを含み、もう一方の平面がポイントBを含む。これらの2つの平行な平面が、2つの層の向きに実質的に平行に方向付けられる。距離Dが、これらの2つの平行な平面の間の距離として定義される。
【0020】
本発明によると、構造充填要素が、長手方向において互いに平行に配置された少なくとも2つの層を有する。2つの層の平行な配置構成は、本発明によると、層のうちの一方の層が、もう一方の層に対して、最大+/-20°、好適には最大+/-10°、より好適には最大+/-5°、さらに好適には最大+/-2°の角度で傾斜し、最も好適には、もう一方の層に対して一切傾斜していないことを意味する。
【0021】
さらに、本発明によると、隣接する開口部の間の分離要素の少なくとも50%の平均幅とシート材料厚さとの間の比が少なくとも15である。これは、分離要素の少なくとも50%において、それぞれの分離要素の平均幅とシート材料厚さとの間の比が少なくとも15であることを意味する。好適には、隣接する開口部の間の分離要素の、少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての平均幅とシート材料厚さとの間の比が少なくとも15である。
【0022】
シート材料厚さは、それぞれ、層を構成又は形成する材料の厚さを意味する。本発明によると層がエキスパンドメタル・シートによって作られることから、シート材料厚さはシート厚さである。シート厚さが層のエリアにわたって変化する場合、シート材料厚さは、例えばマイクロメータねじにより、シート材料厚さの外側縁部のうちの1つの外側縁部で測定されるシート厚さである。例えば、層を形成する材料の厚さが、マイクロメータねじを用いて外側縁部のうちの1つ又は複数の外側縁部の、少なくとも2つの、好適には少なくとも3つの、より好適には少なくとも5つのロケーションにおいて測定され、その後、得られた数値が合計され、合計値を測定数で割ることにより平均が求められる。例えば、マイクロメータねじを用いて層の外側縁部のうちの1つ又は複数の外側縁部の、2個から20個、好適には2個から10個、より好適には3個から10個、最も好適には5個から10個のロケーションで厚さが測定される場合、良好な結果が得られ、異なるロケーションが外側縁部に沿って互いに約3cm離れる。マイクロメータねじは、1つの固定測定エリア及び1つの可変測定エリアを有する既知の測定デバイスであり、可変測定エリアが精密なねじを用いて調整可能である。可変測定エリアが固定測定エリアまで完全に移動させられると、それぞれ、両方の測定エリアが互いに接触することができるか又は触れることができる。両方の測定エリアが平坦であり、円形であり、両方の測定エリアの直径が好適には5mmから6mmである。
【0023】
本発明によると、分離要素が一定の幅を有する場合、分離要素の2つの平行な隣接する縁部の間の距離を測定することにより、分離要素の平均幅(以降、「b」とも称され、つまり「b」と略される)が決定される。分離要素が一定の幅を有さない場合、分離要素を、セクション長さdを各々有する個別のセクションi=1、2、3、...nへ分割することにより、分離要素の平均幅bが決定される。これらのセクションの各々において、セクション内の隣接する縁部の間の最短距離bが測定される。積d・bの合計値がdの合計値によって割られ、分離要素の平均幅bが得られる。分離要素の非一様性が増すと、より多くのより短いセクションが選択されなければならない。好適には、分離要素ごとの測定のためにとられる個別のセクションiの数nは、1から1000、より好適には5から100、最も好適には5から20である(8から15など)。例えば、分離要素1cmごとに5つのセクションが選択される。
【0024】
好適には、分離要素の平均幅bが、分離要素に隣接する開口部のうちの1つの開口部の上面図又は平面図上で決定される。これが、有利には、開口部の写真画像(photographic picture)を撮ることによって達成される。エキスパンドメタル・シートを平坦な表面の上に置いて、エキスパンドメタル・シートの頂部の上にプレートを置いて、分離要素及び開口部のジオメトリ及び寸法を変化させることなく、つまりエキスパンドメタル・シートのグリッド構造のジオメトリ及び寸法を変化させることなく、周期的な変形部分を取り除くためにエキスパンドメタル・シートを平坦化することのみのために十分に小さい圧力でプレートを下方に押圧することにより、それぞれのエキスパンドメタル・シートを平坦化した後で、開口部の写真画像を作ることにより、開口部の上面図が作られる。開口部の平面図は、構造クロスチャンネル充填要素内で使用されるときのその形態にあるエキスパンドメタル・シート上で作られ、つまり、エキスパンドメタル・シートを平坦化するか又は他のかたちで機械的に加工することなく、作られる。より具体的には、開口部の平面図は、開口部の隣接する縁部によって画定される平面の垂直軸に沿うものである。いくつかの事例では、このような平面が明確には画定されない。この事例では、トライアル・アンド・エラーにより最も適切な図が得られる。種々の角度から、少なくとも5個の写真又は好適には少なくとも10個の写真などの、複数の写真が撮られる。この場合、開口部を最大にする写真が開口部の平面図とみなされる。平面図上でさらには上面図上で長さ及びサイズを決定するのに1つの基準長さzが使用され得る。これは、開口部の近傍にある実際の物体上の特定の長さzを識別又はマーキングして開口部の長さを測定することにより、最良に達成される。平面図上で測定される他のすべての距離を拡大・縮小するためには、それぞれの平面図又は上面図上でのこの距離の有効長さz’と実際の物体上で測定される距離zとの間の比が使用される。例えば、セグメント幅の実際の長さがb=b’・(z/z’)によって得られ、ここでダッシュの付いた変数はそれぞれ、平面図又は上面図上で測定された長さを意味し、ダッシュの付かない変数は実際の長さを意味する。
【0025】
本発明によると、公式4A/Pを用いて開口部の水力直径dが計算される。Aが開口部の断面積であり、Pが同じ開口部の周長である。開口部の形状が単純であり、例えば平坦な三角形、長方形、四辺形、又は台形などである場合、基本的な測定の基準(measure)(形状の長さ及び高さ(shape length and height))並びに基本的な幾何学的公式(ユークリッド幾何学から知られている)を利用することにより、開口部の断面積が決定され得る。好適には、開口部の上面図又は平面図上で面積が決定される。複雑な形状は近似され得、面積Aを有するj個(j=1、2、3、...m)の単純な形状に細分化され得る。これらの形状の面積が、基本的な測定の基準及び基本的な幾何学的公式を利用して、再び計算され得る。開口部内の決定されたすべての面積Aを合計することにより、開口部の面積Aが得られる。開口部の形状の複雑さが増すと、より多くの細分化が必要となる。好適には、測定のためにとられる個別の単純な形状のセクションjの数mは、1から1000、好適には5から100、より好適には5から20(8から15など)である。上記と同様に、上で定義した比z/z’に基づいて実際の長さが決定される。
【0026】
単純な形状の開口部の周長が、基本的な測定の基準及び基本的な幾何学的公式を利用して決定され得る。最も一般的な事例では、開口部の上面図又は平面図が使用される。開口部の周長が、開口部を最良に近似して閉じたポリゴンで開口部を表すk個(k=1、2、3、...K)の個別の直線Pに細分化される。これらの直線の長さを合計することにより、周長Pが得られる。再び、上で定義した比z/z’を利用して、これらの長さが実際の長さに変換される。
【0027】
平均幅b、開口部の面積A、及びその周長Pを決定するのに、数値画像処理(numeric image processing)の方法が使用され得る。この事例では、ピクセルのサイズにより基本ユニットが決定される。ピクセルベースの長さ及び面積を変換するために、比z/z’が、例えば上記で説明した手法などの適切な手法で定義され得る。分離要素に属するピクセル及び開口部に属する他のピクセルを識別するのに濃淡値が使用され得る。ピクセルを足し合わせて合計値にピクセル(実際の物体に関連する)の実際の面積を掛けることにより、直接的な手法で面積が計算され得る。セグメントの幅b又は長さdを決定するとき、幅の向きがピクセルの辺に平行ではない場合、三角法の法則が適用されなければならない。
【0028】
測定方法に関するさらなる詳細及び例示の実例が図に関連して後でさらに与えられる。
【0029】
本発明によると、構造クロスチャンネル充填要素の層がエキスパンドメタル・シートで作られ、エキスパンドメタル・シートが、シートメタルを引き伸ばすことにより、つまりシートメタルを切断して延伸することにより、生産される。したがって、得られる開口部は、一般的には、実質的に、楕円、レンズ状、台形、又はひし形であり、通常は、実質的に、レンズ状又は台形の形状である。したがって、図に概略的に示されるように、及び後でさらに詳細に説明されるように、各エキスパンドメタル・シートが実際には開口部を有するグリッドであり、各開口部が、幅bを各々有する分離要素によって囲まれ、隣接する開口部の分離要素が接点ポイントで互いに接続される。水力直径は一般に未知であるが、上述したように決定され得るか、又は後で説明するように一般的に使用される固有寸法(characteristic dimension)から計算され得る。エキスパンド・シートは、通常、それらの開口部の寸法及び分離要素bの(平均)幅によって特徴付けられる。したがって、通常は実質的にレンズ状又は台形として成形される開口部はより短い及びより長い固有長さ(characteristic length)を有し、開口部のより短い固有長さ(以降、「e」とも称され、つまり「e2」と略される)がエキスパンドメタル・シートの延伸方向における開口部の最大寸法であり、開口部のより長い固有長さ(以降、「e」とも称され、つまり「e」と略される)がエキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向における開口部の最大寸法である。エキスパンドメタル・シートの延伸方向は、エキスパンドメタル・シートの生産中にシートメタルを延伸するときに沿う方向である。より具体的には、延伸方向は、本発明によると、構造クロスチャンネル充填要素の長手方向に対して垂直である方向である。したがって、延伸方向に対して垂直である方向が、構造クロスチャンネル充填要素の長手方向である。分離要素bの(平均)幅b及び開口部の固有長さが隣接する開口部の間の距離を決定する。エキスパンドメタル・シートの延伸方向において隣接する開口部の間の距離が、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向において隣接する開口部の間の距離とは異なる。以降、エキスパンドメタル・シートの延伸方向において互いに隣接する第1の開口部と第2の開口部との間の距離はuとも称され、つまりuと略される。対して、第1の開口部と、エキスパンドメタル・シート延伸方向に対して垂直である方向において第1の開口部に隣接する第3の開口部との間の距離はuとも称され、つまりuと略される。これらの距離u及びuは、図を参照して後で詳細に説明されるように測定され得る。開口部が概略ひし形形状である場合、それぞれの開口部の水力直径(以降、「d」とも称され、つまり「d」と略される)を決定するために以下の方程式が使用され得る。
=u-b√(1+u /u
=e・u/u
d=e・e/√(e +e
【0030】
エキスパンドメタル・シートで現実的であるように、e/eの比が約0.5以下である場合、それぞれの開口部の水力直径dを決定するのに、e及びeのための以下の単純化された方程式が使用され得る:
=u-b・u/u
=u-b
【0031】
さらに、エキスパンドメタル・シートが、u/2bとして定義される延伸係数(stretching factor)によって特徴付けられ得る。この延伸の逆数が、中実のメタルシートと比較して実現され得る材料節約を良好に示す。例示の実例を用いるこれらの寸法に関するさらなる詳細が図に関連して後でさらに与えられる。
【0032】
本発明によると、充填要素が構造クロスチャンネル充填要素である。したがって、少なくとも2つの層の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、エキスパンドメタル・シートで作られ、周期的な変形部分を有し、これらの層が、これらの隣接する層の周期的な変形部分を、長手方向に対して斜めに延在する層の周期的な変形部分と十字交差で交差させるように方向付けられる。層の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適には各々が、層の周期的な変形部分と隣接する波形層の変形部分との間の交差ポイントにおいて隣接する層の各々に接触し、少なくとも2つの層の間のオープンスペースが周期的な変形部分によって画定される。好適には、層の2つの隣接する周期的な変形部分の最も上側のポイントの間の距離が、表面積に応じて、10mmから25mmの間であり、より好適には13mmから23mmの間である。
【0033】
具体的には、少なくとも2つの層のエキスパンドメタル・シートの延伸係数が1.1から1.5の間であり、より好適には1.2から1.35の間である場合、良好な結果が達成される。
【0034】
本発明によると、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向において開口部のうちの1つの開口部の縁部の一方側の最外ポイントとエキスパンドメタル・シートの同じ方向において隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を決定することにより、距離uが測定される。例えば、構造クロスチャンネル充填要素の層の上面図又は平面図の写真画像が作られる場合(延伸方向が写真画像の垂直方向に示され、延伸方向に対して垂直である方向が写真画像の水平方向に示される)、距離uが、開口部の縁部の左側の最外ポイントとエキスパンドメタル・シートの同じ方向においてこの開口部に隣接する開口部の縁部の左側の最外ポイントとの間の距離として決定され得る。
【0035】
距離uを特に正確に決定するためには、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向における開口部の縁部の一方側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向においてこの開口部に対して配置される第5の又は第nの隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離が測定され得、4又は(n-1)によって割られ得る。
【0036】
より好適には、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向における開口部の縁部の一方側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向においてこの開口部に対して配置される第10の隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を測定して、9で割ることにより、距離uが決定される。
【0037】
本発明によると、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向において分離要素に隣接する2つの開口部の間の距離u1と、この分離要素の平均幅との間の比が、すべての分離要素の少なくとも50%において、4から6である。具体的には、距離uと、少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素の平均幅bとの間の比が、4から6、好適には4.5から5.5、より好適には4.9から5.1である場合、良好な決定が達成される。
【0038】
本発明の着想のさらなる発展形態では、距離uが、好適には、少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部において、5mmから20mmである。より好適には距離uが、好適には少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部において、7.5mmから15mmであり、最も好適には9mmから11mmである。
【0039】
本発明の別の特定の実施例によると、エキスパンドメタル・シートの延伸方向において互いに隣接する第1の開口部と第2の開口部との間の距離uと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向において互いに隣接する第1の開口部と第3の開口部との間の距離uとの間の比が0.4から0.7であり、エキスパンドメタル・シートの延伸方向における第1の開口部の縁部の一方側の最外ポイントとエキスパンドメタル・シートの延伸方向において隣接する隣接の第2の開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を決定することにより、距離uが測定され、距離uが上述したように測定される。
【0040】
距離uを決定する場合と同様に、好適には、エキスパンドメタル・シートの延伸方向における第1の開口部の縁部の一方側の最外ポイントとエキスパンドメタル・シートの延伸方向においてこの開口部に対して配置される第5の又はさらには第10(第n)の隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を決定して、この距離を4又は9(n-1)でそれぞれ割ることにより、距離uが測定される。
【0041】
具体的には、距離uと距離uとの間の比が、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部において、0.4から0.7、より好適には0.45から0.70、最も好適には0.49から0.55である場合、良好な結果が達成される。
【0042】
加えて、好適には、距離uが、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての開口部において、2mmから8mmであり、より好適には3mmから7mmであり、最も好適には4mmから6mmである。
【0043】
本発明の別の特定の実施例によると、隣接する開口部の間の少なくとも1つの分離要素の平均幅bが、隣接する開口部の平均水力直径dの70%から125%の間である。
【0044】
本発明の着想のさらなる発展形態では、隣接する開口部の間の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素の平均幅bが、隣接する開口部の平均水力直径dの70%から125%の間であることが提案される。より好適には、隣接する開口部の間の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素の平均幅bが、隣接する開口部の平均水力直径dの75%から100%の間である。
【0045】
層表面上での重相の最適な拡散を達成するためには、隣接する開口部の間の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素の平均幅bが、1.5mmから4.0mmであることが好適である。より好適には、隣接する開口部の間の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての分離要素の平均幅bが、1.6mmから3.5mm、最も好適には1.8mmから3.0mmである。
【0046】
本発明によると、隣接する開口部の間の分離要素の少なくとも50%の平均幅bと層材料厚さ(以降、「s」とも称され、つまり「s」と略される)との間の比が、少なくとも15である。隣接する開口部の間の分離要素の少なくとも50%の平均幅bと層材料厚さとの間の比が少なくとも18である場合、特に良好な決定が得られる。好適には、隣接する開口部の間の分離要素の少なくとも75%、より好適には80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての平均幅とシート材料厚さとの間の比が、少なくとも18である。
【0047】
本発明によると、長手方向に対して垂直である平面で測定される少なくとも2つの層のうちの少なくとも2つの隣接する層の間の最大距離Dと分離要素の平均幅bとの間の比が、少なくとも4である。これは、長手方向に対して垂直である平面で測定される少なくとも2つの層のうちの少なくとも2つの隣接する層の間の最大距離Dと、分離要素の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての平均幅bとの間の比が、少なくとも4であることを意味する。
【0048】
長手方向に対して垂直である平面で測定される最大距離と、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての、少なくとも2つの層の間の分離要素の平均幅との間の比が、少なくとも4である場合、特に良好な結果が得られる。
【0049】
さらに、長手方向に対して垂直である平面で測定される、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての、少なくとも2つの層の間の最大距離Dと、分離要素の平均幅bとの間の比が、少なくとも5、より好適には少なくとも8であることが好適である。
【0050】
本発明の着想のさらなる発展形態では、長手方向に対して垂直である平面で測定される、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての、少なくとも2つの層の間の最大距離Dと、分離要素の平均幅bとの間の比が、4から15、好適には5から13、最も好適には8から12であることが提案される。
【0051】
具体的には、長手方向に対して垂直である平面で測定される、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての、少なくとも2つの層の間の最大距離Dが、8mmから80mm、好適には12mmから51mm、最も好適には16mmから30mmである場合、良好な結果が得られる。したがって、層幅Wが、4mmから40mm、より好適には6mmから25.5mm、最も好適には8mmから15mmであることが好適である。
【0052】
本発明の特に好適な実施例によると、少なくとも2つの層のうちの少なくとも1つの層において、層内の開口部の全面積を層のシート面積によって割ったときの商、すなわち層の空隙率が、20%から38%の間である。層のシート面積Aは、本発明によると、一方側のみで測定されるすべての分離要素の物理的面積と、分離要素によって包囲される開口部の全面積との合計値である。開口部の合計値は、単に、開口部の面積(断面積)Aの合計値である。さらに、構造充填要素のシート面積Aは、構造充填要素に含まれる層のシート面積の合計値である。上述したように、充填物層の空隙率は、この層内の開口部の総面積をこの層のシート面積によって割ったときの商である。
【0053】
好適には、少なくとも2つの層の、少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてにおいて、層の空隙率が20%から38%の間である。これにより本発明の利点を特に高い程度で達成することが可能となる。
【0054】
さらに、少なくとも2つの層の、少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてにおいて、層の空隙率が、25%から35%、最も好適には28%から32%の間であることが好適である。これが、本発明による構造充填要素の層の特に良好な湿潤に繋がる。
【0055】
エキスパンドメタル・シートのグリッド構造が一様である場合、つまり開口部及び分離要素のすべて又は少なくとも大部分が等しいか又は少なくとも互いに高い程度で類似する場合、特に良好な結果が得られる。これを鑑みて、各々の少なくとも2つの層の開口部の、少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、すべての開口部の平均水力直径の、50%から150%、好適には70%から130%、より好適には80%から120%、最も好適には90%から110%の間である水力直径dを有することが好適である。
【0056】
各々の少なくとも2つの層の開口部の、少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての水力直径dが、1.25mmから5.0mmであることが好適である。さらに好適には、各々の少なくとも2つの層の開口部の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべての水力直径dが、2.0mmから4.0mm、最も好適には2.2mmから3.5mmである。
【0057】
本発明の代替的実施例によると、開口部の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、1.0mmから4.0mm、好適には2.0mmから3.0mmのより短い固有長さeと、2.0mmから8.0mm、好適には2.5mmから7.0mm、最も好適には3.0mmから6.0mmのより長い固有長さeとを有する。上述したように、開口部のより短い固有長さeが、エキスパンドメタル・シートの延伸方向における開口部の最大寸法であり、開口部のより長い固有長さeが、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向における開口部の最大寸法である。
【0058】
本発明の着想のさらなる発展形態では、開口部のより短い固有長さeと同じ開口部のより長い固有長さeとの間の比が、開口部の少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてにおいて、0.4から0.7、好適には0.45から0.6、最も好適には0.49から0.55であることが提案される。上述したように、開口部のより短い固有長さeが、エキスパンドメタル・シートの延伸方向における開口部の最大寸法であり、開口部のより長い固有長さeが、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直である方向における開口部の最大寸法である。
【0059】
本発明は、構造充填要素のエキスパンドメタル・シートの材料に関して特には限定されない。例えば、エキスパンドメタル・シートが、ステンレス鋼、或いは、アルミニウム、銅、チタン、ジルコニウム、及び合金からなる群から選択される合成物で作られ得る。
【0060】
好適には、各エキスパンドメタル・シートのシート材料厚さsが、s=0.05mmから0.50mm、より好適にはs=0.08mmから0.20mm、最も好適にはs=0.09から0.15mmである。
【0061】
通常、構造充填要素の層の開口部の、少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、さらに好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、実質的に、楕円、レンズ状、又は台形の断面を有する。
【0062】
生産後、つまりメタルプレートの切断及び延伸後、得られたエキスパンドメタル・シートがもはや平坦ではない。これは、個別の分離要素の変形、歪み、曲げ、又は跳ね上がり、並びに他の部分に対しての分離要素の相対的変形(例えば、傾斜)の結果である。ばりなどの他の特徴的部分(feature)が穿孔プロセスから発生する可能性があり、したがって厚さに寄与する可能性がある。エキスパンドメタル・シートの得られる寸法はグリッド厚さと呼ばれ(以降、「g」とも称され、つまり「g」と略される)、層材料厚さに等しくなり得るか(これは、圧延によって平坦化されることを理由としてエキスパンドメタル・シートが平坦である場合に当てはまる)、又は層材料厚さより数倍大きくなり得る。グリッド厚さは、通常、分離要素の幅bの大きさのオーダーであり、幅bより大幅に大きくなるべきではない。したがって、分離要素の平均幅bに対してのグリッド厚さgの比が、0から最大約1.2、より好適には0.4から1、最も好適には0.5から0.8の範囲である。グリッド厚さgは、長手方向に対して垂直な平面で測定される2つの隣接する層の間の最大距離Dより有意に小さい。
【0063】
さらに好適には、各層の平均グリッド厚さgとシート材料厚さsとの間の比が少なくとも6である。
【0064】
具体的には、各層(32、32’)の平均グリッド厚さgが、1.0mmから1.4mm、好適には1.1mmから1.3mm、より好適には1.15mmから1.25mmである場合、良好な結果が達成される。
【0065】
上述したようにグリッドの頂部の上でプレートを押圧することによっても、グリッドが平坦化され得る。
【0066】
本発明の別の実施例が、エキスパンドメタル・シートにテクスチャード加工された表面を提供するための、エキスパンドメタル・シートの圧延を含む。より具体的には、特には波形など、周期的な変形部分の各々が、連続的に横断する毛管チャンネルを画定する、複数の凸部及び凹部を含むパターン化された前面を有する降下表面(trickle surface)を有することができる。例えばEP0190435B1で開示されるように、凸部が隣接する凸部に当接するように配設され得、その間にチャンネルを画定する側壁を有することができ、前面と等しいパターン化された背面を有することができ、連続的に横断する毛管チャンネルを画定する。凸部が、さらなる処理を一切用いることなく、グリッド厚さgと同等の範囲の高さを有することができる。
【0067】
好適には、グリッド厚さgに対しての最大距離Dの比(すなわち、D/g)が少なくとも3である。
【0068】
具体的には、長手方向に対して垂直である平面で測定される少なくとも2つの層のうちの各々の隣接する層の間の最大距離Dと開口部の平均水力直径dとの間の比が最大でも15である場合、良好な結果が得られる。
【0069】
エキスパンドメタル・シートが、図7cに示されるように、粗い側及び滑らかな側を提供する。好適には、構造クロスチャンネル充填要素の単層が、層の粗い側の上に粗い側を置くように隣接する層を配置することになるように、及び層の滑らかな側の上に滑らかな側を置くように隣接する層を配置することになるように、配置される。
【0070】
本発明の着想のさらなる発展形態では、少なくとも2つの層の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、周期的な変形部分を有し、少なくとも2つの層の間のオープンスペースがこれらの周期的な変形部分によって画定されることが提案される。本発明の構造充填要素のすべての層がこのような周期的な変形部分を有すること、つまり、本発明の構造充填要素が平坦な層を一切有さないことが特に好適である。好適には、長手方向に対しての各々の周期的な変形部分の角度(以降、「α」とも称され、つまり「α」と略される)が、10°から60°、より好適には20°から50°、最も好適には25°から47°であり、隣接する層の周期的な変形部分が好適には反対方向に方向付けられる。
【0071】
例えば、周期的な変形部分が、交互の向きの複数の山及び谷を有する波形であってよく、層の山が隣接する層の谷に接触し、層の谷が隣接する層の山に接触し、これらの隣接する層が、これらの隣接する層の山及び谷を、長手方向に対して斜めに延在する層の山及び谷と十字交差で交差させるように方向付けられる。したがって、好適には、少なくとも2つの層の、少なくとも50%、好適には少なくとも75%、より好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、さらに好適には少なくとも95%、最も好適にはすべてが、周期的な変形部分を有し、クロス・パッケージ(cross-package)要素の周期的な変形部分が、交互の向きの複数の山及び谷を有する波形であり、層の山が隣接する層の谷に接触し、層の谷が隣接する層の山に接触し、これらの隣接する層が、これらの隣接する層の山及び谷を、長手方向に対して斜めに延在する層の山及び谷と十字交差で交差させるように方向付けられる。もちろん、層のすべての山が隣接する層の1つ又は複数の谷に接触するわけではなく、層の山の一部が隣接する層の1つ又は複数の谷に接触することも可能であり、この逆も可能である。しかし、2つの隣接する層の間に少なくとも3つの接触ポイントが存在するべきである。好適には、隣接する層の山及び谷が互いに対向する、これらのロケーションの30%から90%、より好適には50%から80%において、接触が無い。残りのロケーションにおいて、隣接する層のそれぞれの山及び谷が互いに触れている。
【0072】
具体的には、この実施例では、長手方向に対しての各々の山及び各々の谷の角度αが、10°から60°、好適には20°から50°、最も好適には25°から47°である場合、良好な結果が得られ、隣接する層の山及び谷が好適には反対方向に方向付けられる。これにより、断面の少なくとも1つの方向において構造充填要素の上で軽相を一様に分散させることが可能となる。この角度は、圧力降下を最小にし、容量を最大にするために、過度に大きくなるべきではない。
【0073】
構造充填要素の圧力損失を低減するために、本発明の着想のさらなる発展形態で、層の終端部分内の谷及び山が、終端部分の間に配置された中央部分の谷及び山に対して曲げられ、その結果、構造充填要素の終端ゾーン内での流れ抵抗が、終端ゾーンの間に配置されるゾーンの流れ抵抗に対して低減される、ことが提案される。したがって、この実施例の層の山及び谷は線形に延在しない。好適には、山及び谷が、少なくとも実質的に垂直に延在するように層の終端部分内で曲げられる。実質的に垂直とは、層の下側縁部及び上側縁部において、垂直方向に対して、10°を超えて、好適には5°を超えて、より好適には2°を超えて、山及び谷が傾斜しないことを意味する。終端ゾーンは、シート長さに沿って、30%で、好適には25%で、より好適には20%以下で、層の上側縁部及び下側縁部から延在する、層の最も上側のゾーン及び最も下側のゾーンであり、シート長さが層の長手方向に沿う方向である。終端ゾーンの各々が、中央ゾーンの山及び谷とは異なる高さを有する山及び谷を有することができ、中央ゾーンが2つの終端ゾーンの間にある層のゾーンである。両方の終端部分においてこのような曲げ部分及び異なる高さを提供することの代わりに、これらの終端ゾーンのうちの一方の終端ゾーンのみにこれらが存在してもよい。
【0074】
本発明の代替的実施例によると、周期的な変形部分が、山及び谷を有する、正方形断面、三角形断面、正弦曲線断面、又は蛇行タイプの断面を有する波であり、層の山が隣接する層の谷に接触し、層の谷が別の隣接する層の山に接触し、これらの隣接する層が、これらの隣接する層の山及び谷を、長手方向に対して斜めに延在する層の山及び谷と十字交差で交差させるように方向付けられる。
【0075】
具体的には、この実施例では、長手方向に対しての各々の山及び各々の谷の角度αが、10°から60°、好適には20°から50°、最も好適には25°から47°である場合に、良好な結果が得られ、隣接する層の山及び谷が好適には反対方向に方向付けられる。これにより、構造充填要素の断面の少なくとも1つの方向において、軽相を一様に分散させることが可能となる。
【0076】
本発明は、中に含まれる層の数に関して特に限定されない。充填要素内の層の数は、物質移動カラムの直径と、物質移動のために必要となる比面積aとによって決定される。より大きい表面が必要となると、つまり比面積が増大すると、より多くの層が存在することになり、それに応じて最大直径Dが縮小することになる。構造充填要素は円形断面を有する概略円筒形状あるが、熱交換及び/又は物質移動のカラムの形状に応じて、例えば長方形形状などの、他の形状の断面が存在してもよい。カラムが大きい直径を有する場合、重量を低減するために及び区分的な装着を可能にするために、要素が一般には複数のセグメント又はタイルに細分化される。
【0077】
本発明による構造充填要素が、60m/mから750m/m、120m/mから500m/m、最も好適には200m/mから450m/mの比面積aを有する場合、物質移動効率と容量との特に良好な組み合わせが得られる。
【0078】
比面積aは、構造充填要素によって占有されるボリュームVによって割られる構造充填要素の幾何学的面積Aとして定義される。構造充填要素の幾何学的面積Aは、要素に含まれるすべての層の幾何学的面積の合計値であり、開口部又は孔が存在しないかのように、層の両側において層の幾何学的面積が合計される。言い換えると、充填物層のシート面積Aに2を掛けることによって幾何学的面積が近似的に得られる。その理由は、層の両側が幾何学的面積を構成するからである。
【0079】
層内の開口部の面積及び層の物理的面積Aを足し合わせることにより、構造充填物層のシート面積Aが得られる。Aは物理的に存在する表面のみを勘定に入れる。孔又は開口部はこの値に寄与しない。構造充填要素のシート面積Aは、中に含まれるすべての層のシート面積を足し合わせることによって得られる。
【0080】
構造充填物層の物理的面積Aは、構造充填物層に含まれるすべての分離要素の一方の選択された側で測定される表面の合計値である。層材料厚さsの縁部がこの面積に寄与しない。充填物の物理的面積Aが、中に含まれるすべての層の物理的面積の合計値である。
【0081】
面積のための定義a、A、A、及びAとは別に、「表面」及び「表面積」という表現が本発明の記述でより定性的に又は直感的に使用される。
【0082】
好適には、構造充填要素が、100mmから300mm、好適には150mmから250mmの高さを有する。
【0083】
別の態様によると、本発明が、上述した少なくとも1つの構造充填要素を有する物質移動カラムに関連する。
【0084】
好適には、物質移動カラムが、1個から10個、より好適には2個から8個、最も好適には2個から4個のベッドを有し、各ベッドが上述した少なくとも1つの構造充填要素を有する。好適には、1つのベッドが、2個から20個、より好適には4個から15個、最も好適には6個から10個の構造充填要素を有する。ベッド中での非常に良好なガスの分散を達成するために、2つの隣接する構造充填要素が、長手方向に概して平行であるカラムの軸に沿って回転させられる。回転角度が、約50°から約120°、より好適には約70°から110°、最も好適には80°から100°である。
【0085】
加えて、好適には、物質移動カラムが、物質移動カラムの動作中に構造充填要素ベッドの断面の上での重相の少なくとも実質的に均質的な分散を可能にするために、構造充填要素のベッドの各々の上方にある分散装置を有する。
【0086】
本発明の別の好適な実施例によると、物質移動カラムが、構造充填要素の各ベッドの底部の下方に、収集装置を有し、収集装置が、物質移動カラムの動作中に構造充填要素の層の表面を下方にゆっくりと流れる重相を収集するのを可能にすることが提案される。
【0087】
次いで、添付図面を参照して、例として、本発明による具体的な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】本発明の一実施例による複数の構造クロスチャンネル充填要素を有する物質移動カラムを示す概略側面図である。
図2a】本発明の一実施例による構造クロスチャンネル充填要素のシートの一部分を示す分解図である。
図2b図2aに示される構造クロスチャンネル充填要素を示す概略側面図である。
図2c図2aに示される構造クロスチャンネル充填要素の2つの層を示す図である。
図3】本発明の別の実施の形態による構造クロスチャンネル充填要素を示す部分図である。
図4a】本発明による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートのグリッド構造の多様な実施例を示す概略図である。
図4b】本発明による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートのグリッド構造の多様な実施例を示す概略図である。
図4c】本発明による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートのグリッド構造の多様な実施例を示す概略図である。
図4d】本発明による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートのグリッド構造の多様な実施例を示す概略図である。
図4e】本発明による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートのグリッド構造の多様な実施例を示す概略図である。
図4f】本発明による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートのグリッド構造の多様な実施例を示す概略図である。
図5a】分離要素の平均幅及び開口部の平均水力直径の決定を示す概略図である。
図5b】分離要素の平均幅及び開口部の平均水力直径の決定を示す概略図である。
図6】波形層で作られた構造クロスチャンネル充填要素の最小変形部分の決定を示す図である。
図7a】本発明の別の実例による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートを示す概略上面図である。
図7b図7aの平面Aに沿う概略図である。
図7c図7aの平面Bに沿う概略図である。
図8図7に示される構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートを示す概略平面図である。
図9】面積A図9b)、A図9c)、A、V、及びa図9d)の定義を示すための、充填物層の断面を示す概略図である。
図10】960hPa(960mbar)の蒸留カラムの上部圧力における、実例1及び比較例1で得られた効率曲線を示すグラフである。
図11】100hPa(100mbar)の蒸留カラムの上部圧力における、実例1及び比較例1で得られた効率曲線を示すグラフである。
図12】100hPa(100mbar)の蒸留カラムの上部圧力における、実例1及び比較例1で得られた圧力降下を示すグラフである。
図13】960hPa(960mbar)の蒸留カラムの上部圧力における、実例2並びに比較例2及び3で得られた効率曲線を示すグラフである。
図14】100hPa(100mbar)の蒸留カラムの上部圧力における、実例2並びに比較例2及び3で得られた効率曲線を示すグラフである。
図15】100hPa(100mbar)の蒸留カラムの上部圧力における、実例2並びに比較例2及び3で得られた圧力降下を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1が、本発明の一実施例による、物質移動カラム10の、またより具体的には蒸留カラム10の、概略側面図を示す(図の透明の内部は単に例示を目的とする)。やはり例示を目的として、層のグリッド構造が図1には示されないが図4のみに示される。蒸留カラム10が、2つのベッド14、14’の形態で配置される複数の構造クロスチャンネル充填要素12を有する。2つのベッド14、14’の各々の上方で、分散装置16、16’が、そこを通って蒸気が上行するのに十分なスペースを残しながら、ベッドの断面にわたって液体を一様に分散させるように配置される。各ベッド14、14’の下方に、グリッド状の保持デバイス18及び収集装置20が配置され、グリッド状の保持デバイス18がベッド14をその定位置で維持し、収集装置20がベッド14から下方にゆっくりと流れる液体を収集し、この間、蒸気を上行させるための十分なオープンスペースが収集装置内に残される。
【0090】
蒸留カラム10の動作中、ガスが軽相として底部から頂部まで上行し、対して重相としての液体が対向流中で蒸留カラム10の頂部から底部まで降下する。より具体的には、液体が分散装置16によりベッド14の断面にわたって実質的に均質的に分散され、構造クロスチャンネル充填要素12の層の表面に沿って下方にゆっくりと流れる。構造クロスチャンネル充填要素12の異なる層の間にオープンスペースが設けられ、これらのオープンスペースにガスが充填され、これらのオープンスペースが上行するガスのための経路を提供し、この間、ガスが圧力勾配によって移動させられる。構造クロスチャンネル充填要素12の層の表面上で液体が拡散するのを可能にすることにより、界面で液体とガスとの間での効率的な熱伝達及び物質移動を確立するように、2つの相の間に大きい界面が作り出される。ベッド14の底部において、液体が収集装置20内に収集され、パイプ22を介して第2のベッド14’の上方の分散装置16’まで下方に案内される。
【0091】
図2aから2cが、いわゆるクロスチャンネル波形充填物のタイプの構造クロスチャンネル充填要素12を示す。例示のために、層のグリッド構造が図2には示されないが、図4のみに示される。構造クロスチャンネル充填要素12が複数の波形シート24、24’から組み立てられ、複数の波形シート24、24’が互いに平行であり互いに接触している。波形シート24、24’の各々が、上述したように、及び図4により後でさらに詳細に説明するように、グリッドである。図2cの右下に、波形シート24の一部であるグリッド構造が概略的に示される。上記の明細書から理解されるように、波形シート24、24’のすべてが実際にこのようなグリッドから構成される。これは単に例示することを理由として、図2aから2cには示されない。本実施例では、波形シート24、24’がエキスパンド・シート材料から作られ、つまり、波形シート24、24’が、薄いメタルプレートを切断及び延伸して次いでエキスパンド・シートメタルを波形シート24、24’へと変形させることにより、用意される。
【0092】
波形メタルシート24、24’が、波形シート24、24’の長手方向セクションに対して垂直に波形シート24、24’を貫通する複数の棒(図示せず)により互いに対して固定され、棒が、ワッシャ及びナットにより、又は棒を曲げることにより、或いは任意の他の手段(図示せず)により、最初の及び最後の波形シートに対して固定される。各波形シート24、24’が、交互の向きの複数の山26及び谷28を有し、隣接する波形シート24、24’が、隣接する波形シート24、24’の波形26、28を、長手方向に対して斜めに延在する波形シート24、24’の波形26、28と十字交差で交差させるように方向付けられ、それにより、互いを連続的に横断する傾斜チャンネル30を形成する。より具体的には、長手方向Vに対しての各々の山26及び各々の谷28の角度αが、10°から60°、好適には20°から50°、最も好適には25°から47°であり、隣接する層32、32’又は24、24’の山26及び谷28が、それぞれ、反対方向に方向付けられる。チャンネル30が、例えば20mmなどである、隣接する波形シート24、24’の間の最大距離Dを画定する。これらのチャンネル30が、構造クロスチャンネル充填要素12内のガス相及び液相の流れに良い影響を与え、相の間での物質移動を促進する。つまり、ガス相及び液相が構造クロスチャンネル充填要素12のチャンネル30内で接触させられ、したがって、相の間での物質移動さらには熱伝達が促進される。より具体的には、上行するガスが、波形シート24、24’の表面上に存在する液体に接触し、物質移動カラムを通って下方に流れるときにチャンネル30を画定する。全体として見ると、軽相がそれぞれオープンスペース又はチャンネル30を通って流れ、構造クロスチャンネル充填要素12の層32、32’のグリッド38の開口部40を通るバイパス流が存在しない。これが、軽相と重相との間での特に効率的な物質移動及びエネルギー伝達に繋がる。さらに、チェンネル30の十字交差の方式が、左から右への層の最適な分散に繋がる。
【0093】
図3が、代替的実施例による、構造クロスチャンネル充填要素の部分図を示す。図3の構造クロスチャンネル充填要素は、波形シート24、24’が線形に延在する山及び谷を有さないが、波形シート24、24’の山26、26’及び谷が終端部分33、33’内で曲げられており、したがって、波形シート24、24’の終端部分33、33’内で実質的に垂直方向に延在することを除いて、図2aから2cに示される構造クロスチャンネル充填要素に類似する。図3では、実線が見る人の方に提示される波形シート24の面の中の波形の山26を描いており、対して破線26’が、この面のすぐ後方にある、波形シート24’の対応する面の中の波形の山の見た目を描いている。波形シート24、24’の終端部分33、33’の中で実質的に垂直方向に延在させるようにそれぞれ終端部分又は終端ゾーン33、33’を曲げることにより、波形シート24、24’の終端部分33、33’の間に位置する部分の流れ抵抗と比較して、波形シート24,24’の終端部分33、33’の流れ抵抗が低減される。これが、構造クロスチャンネル充填要素の圧力損失の低減に繋がる。終端ゾーンは、波形シート24、24’の長さに沿って、30%で、好適には25%で、より好適には20%以下で、波形シート24、24’の上側縁部及び下側縁部から延在する波形シート24、24’の最も上側のゾーン及び最も下側のゾーン33、33’であり、波形シート24、24’の長さは、波形シート24、24’の長手方向に沿う方向である。終端ゾーン33、33’の各々が、中央ゾーンの山及び谷とは異なる高さを有する山26、26’及び谷を有することができ、中央ゾーンが2つの終端ゾーン33、33’の間の層のゾーンである。異なる高さ又は曲げ部分としてのこのような構造部は波形シート24、24’の両方の終端ゾーン33、33’内のみに存在してよい。
【0094】
図4aから4fが、例えば、図2aから2c及び3のいずれかに示されるような構造クロスチャンネル充填要素内で使用されるのに適する、本発明による構造クロスチャンネル充填要素12の層32を形成するグリッド38の多様な実施例の概略図である。図4aに示される構造クロスチャンネル充填要素の層32のグリッド38が、四辺形断面を有する開口部40を有し、開口部40が分離要素42によって囲まれて分離要素42により互いに分離される。分離要素42は例えば2mmである平均幅bを有する細いストリップであり、分離要素42が開口部40を完全に囲んでいる。開口部40の2つの辺長a、aが、例えば3mmである適切な水力直径dを有する開口部40を得るように選択される。本分野で知られているように、水力直径dは公式4A/Pに従って計算され得る。Aが開口部40の断面積であり、Pが開口部40の周長である。
【0095】
グリッド38は、エキスパンド・シート材料で単純に生産され、つまり、薄いメタルプレートを切断及び延伸して次いでエキスパンド・シートメタルを波形シートなどの所望の形態へと変形させることにより、単純に生産される。
【0096】
多様なジオメトリの開口部40及び多様なジオメトリの分離要素42を有するグリッド38が図4bから4fに示される。図2b及び2cのグリッド38の開口部40が四辺形であり、図2dのグリッド38の開口部40が不規則であり、図2e及び2fのグリッド38の開口部40が楕円である。これらはレンズ状の形状であってもよい。
【0097】
次いで、本発明による構造充填要素の、分離要素42の幅b及びグリッド38の開口部40の水力直径dの決定が、図5a及び5bを参照して説明される。最初に、構造充填要素12の開口部40、40’のうちの1つの開口部の複数の平面図が、異なる角度の、開口部40の3つの写真画像44a、44b、44cを撮ることによって作られる。開口部40の写真画像44a、44b、44cの平面図が、分離要素42の隣接する縁部48、48’によって画定される平面の垂直軸に沿っている。この場合、開口部40を最大にする写真画像44bが開口部40の平面図とみなされる。平面図上で長さ及びサイズを決定するのに1つの基準長さzが使用される。これが、開口部40の近傍にある実際の物体上の特定の長さzを識別又はマーキングして開口部の長さを測定することにより、達成される。平面図上のこの距離の有効長さz’と、実際の物体上で測定される見かけの距離zとの間の比が、平面図上で測定されるすべての他の距離を拡大・縮小するのに使用される。
【0098】
分離要素42の幅bを決定するために、平面図の分離要素42が、セクション長さdを各々有するi=1、2、3...nとして指定される個別のセクション46に分割される。各々のセクションにおいて、セクション46内の隣接する縁部48、48’の間の最短距離bが測定される。積d・biの合計値をdの合計値で割ったものに係数z/z’を掛けることにより、分離要素42の平均幅bが得られる。
【0099】
開口部40の水力直径が公式4A/Pを用いて計算される。Aが開口部40の断面積であり、Pが同じ開口部40の周長である。開口部40の断面積が、単純な形状を各々有するj個(j=1、2、3、...m)のセクション50に細分化される。各セクション50の面積がAとして指定され、基本的な測定の基準及び基本的な幾何学的公式を利用して計算される。開口部40内で決定されたすべての面積Aを合計することにより、開口部40の面積Aが得られる。
【0100】
開口部40’の周長Pを、開口部40’を最良に近似して閉じたポリゴンで開口部を表すk個(k=1、2、3、...K)の個別の直線Pに細分化することにより、開口部40’の周長Pが決定される。これらの直線Pの長さを合計することにより、周長Pが得られる。再び、上で定義した比z/z’を利用して、これらの長さが実際の長さに変換されなければならない。
【0101】
図6が、層32、32’としての波形シート24、24’で作られた構造充填要素の最小変形部分の決定を示す。上述したように、本発明の好適な実施例では、構造充填要素12の層32、32’がエキスパンド・シートメタルで作られ、つまり、薄いメタルプレートを切断及び延伸して次いでエキスパンド・シートメタルを例えば波形シート24、24’へと変形させることにより作られる。この加工の後、開口部及び分離要素が、同様に、波形シート24、24’の波形の山26及び谷28の周りで歪められ、及び/又は延伸される。
【0102】
しかし、山26及び谷28を接続するグリッドの概略直線部分によって画定される傾斜面が、ほぼ修正されないサイズの開口部及び分離要素を有する。その理由は、これらの傾斜面では変形の程度が低いからである。したがって、本発明によると、波形シート24、24’の「最小変形部分」として指定されるあまり変形していない層の部分のみで寸法を測定することが好適である。この「最小変形部分」は以下のように定義される:波形シートが平均層幅Wを有する。この平均層幅が、層24の山26及び谷28の大部分の振幅によって決定される。以下では、図中の2つの破線によって表される上側の及び下側の平面が、層の山26及び谷28の大部分に触れるように描かれている。これらの2つの破線の間の距離が平均層幅Wと呼ばれ、これは、通常、最大距離Dの約半分である。値Wは非常に高い頻度で一定の値であるが、値Wは、2つの平面が平行である必要がないというような最も一般的な事例においては変化することができ、充填要素が異なる幅の層を含むことができる。第3の中央の平面52が画定され、この第3の中央の平面52が、この中央の平面52上の各ポイントから上側の及び下側の平面までで測定される距離を等しくするように、配置される。グリッドの固有寸法を決定するときに考慮されることになる波形層24の最小変形部分が上側の及び下側の制限平面54、54’によって境界を画定され、上側の及び下側の制限平面54、54’が中央の平面52を中心としてWの±20%のところ、より好適には±30%のところ、最も好適には±40%のところに配置される。孔の平均水力直径及び分離要素の平均幅などのパラメータを決定するとき、この最小変形部分内の開口部及び分離要素、つまり、これらの2つの制限平面54、54’の間に見られる開口部及び分離要素が分析される。本特許出願の一実施例によると、制限平面の間の孔の少なくとも90%において、以下のことが当てはまる:各開口部が、その周囲の分離要素のシステムと共に、等しい外観を有することになり、等しい水力直径dを有することになる。周囲の分離要素が平均して等しい幅bを有することになる。この条件(statement)を満たす構造充填要素の層が、一様なグリッドで作られた層とみなされる。
【0103】
上記の所見は任意の異なる形状の層にも当てはまる。これは波形層のみに限定されない。
【0104】
図7aが、本発明の別の実例による構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートの概略上面図である。エキスパンドメタル・シートを平坦な表面の上に置いて、エキスパンドメタル・シートの頂部の上にプレートを置いて、分離要素及び開口部のジオメトリ及び寸法を変化させることなく、エキスパンドメタル・シートを平坦化することのみのために十分に小さい圧力でエキスパンドメタル・シートの頂部の上でプレートを下方に押圧することにより、エキスパンドメタル・シートを平坦化した後で、エキスパンドメタル・シートの写真画像を撮ることにより、上面図が作られる。エキスパンドメタル・シートが、分離要素42によって互いに分離された、実質的に台形の形態を有する開口部40、40’、40’’、40’’’を有する。したがって、開口部40、40’、40’’がより短い固有長さe及びより長い固有長さeを有し、開口部40、40’、40’’のより短い固有長さeがエキスパンドメタル・シートの延伸方向SDにおける開口部の最大距離であり、開口部40、40’、40’’のより長い固有長さeがエキスパンドメタル・シートの延伸方向SDに対して垂直な方向における開口部の最大寸法である。エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDは、エキスパンドメタル・シートの生産中にシートメタルを延伸するときに沿う方向である。例えば、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDに対して垂直な方向における開口部40’’の縁部の左側の最外ポイントと右側の最外ポイントとの間の距離を測定することにより、開口部40、40’、40’’のより長い固有長さeが決定され、対して、開口部40の縁部の最も上側のポイントと最も下側のポイントとの間の距離を測定することにより、開口部40、40’、40’’のより短い固有長さeが決定され得る。固有長さe及びeを特に正確に決定するためには、少なくとも5個の異なる開口部40、40’、40’’、より好適には少なくとも10個の異なる開口部40、40’、40’’において、それぞれの寸法が測定され得、次いで、測定した値の合計値がそれぞれ5又は10で割られる。
【0105】
開口部40の縁部の一方の側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDに対して垂直な方向において隣接する開口部40’’’の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を測定することにより、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDに対して垂直な方向において互いに隣接しており分離要素42によって分離された2つの開口部40、40’、40’’の間の距離uが決定される。図7aでは、開口部40の縁部の左側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDに対して垂直な方向において隣接する開口部40’’’の縁部の左側の最外ポイントとの間の距離を測定することにより、距離uが決定される。加えて、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDにおける開口部40の縁部の一方側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDにおいて隣接する開口部40’の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を測定することにより、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDにおいて互いに隣接しており分離要素42によって分離された2つの開口部40、40’の間の距離uが決定される。図7aでは、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDにおける開口部40の縁部の上側の最も上側のポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向SDにおいて隣接する開口部40’の縁部の上側の最も上側のポイントとの間の距離を測定することにより、距離uが決定される。距離uを特に正確に決定するために、エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直な方向における開口部40の縁部の一方側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの同じ方向における第5の又は第10の隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を測定して、この距離をそれぞれ4又は9で割ることにより、距離uが決定され得る。これと同様に、エキスパンドメタル・シートの延伸方向における開口部40の縁部の一方側の最外ポイントと、エキスパンドメタル・シートの延伸方向において開口部40に対して配置される第5の又は第10の隣接する開口部の縁部の同じ側の最外ポイントとの間の距離を測定して、この距離をそれぞれ4又は9で割ることにより、距離uが決定され得る。
【0106】
再び、上で定義した係数z/z’を利用して、写真画像上で決定された寸法が実際の長さに変換され得る。
【0107】
開口部が正確にひし形形状である場合、以下の方程式により、上で言及した値から、開口部40、40’、40’’、40’’’の面積及び周囲長さPが得られ得る:
A=e・e/2
P=2・√(e +e
【0108】
さらに、エキスパンドメタル・シートが、f=u/2bとして定義される延伸係数によって特徴付けられ得る。
【0109】
図7b及び7cが、それぞれ、図7aの平面A及び図7bの平面Bに沿う概略図である。これらの図に示されるように、生産プロセスから得られた、つまりメタルプレートを切断及び延伸することにより得られたエキスパンドメタル・シートがもはや平坦ではない。これは、個別の分離要素の変形、歪み、曲げ、又は跳ね上がり、並びに他の部分に対しての分離要素の相対的変形(例えば、傾斜)の結果である。ばりなどの他の特徴的部分が穿孔プロセスから発生する可能性があり、したがって厚さに寄与する可能性がある。エキスパンドメタル・シートの得られる寸法がグリッド厚さgであり、層材料厚さに等しくなり得るか(これは、圧延によって平坦化されることを理由として、エキスパンドメタル・シートが平坦である場合に当てはまる)、又は層材料厚さより数倍大きくなり得る。本発明の別の実施例が、エキスパンドメタル・シートにテクスチャード加工された表面を提供するための、エキスパンドメタル・シートの圧延を含む。より具体的には、特には波形などである、周期的な変形部分の各々が、連続的に横断する毛管チャンネルを画定する、複数の凸部及び凹部を含むパターン化された前面を有する降下表面を有することができる。例えばEP0190435B1で開示されるように、凸部が隣接する凸部に当接するように配設され得、その間にチャンネルを画定する側壁を有することができ、前面と等しいパターン化された背面を有することができ、連続的に横断する毛管チャンネルを画定する。凸部が、さらなる処理を一切用いることなく、グリッド厚さgと同等の範囲の高さを有することができる。グリッド厚さgは、通常、分離要素の幅bの大きさのオーダーであり、幅bより大幅に大きくなるべきではない。したがって、分離要素の平均幅bに対してのグリッド厚さgの比が、最も好適には0.5から0.8の範囲である。グリッド厚さgは、長手方向に対して垂直な平面で測定される2つの隣接する層の間の最大距離Dより有意に小さい。
【0110】
図8が、図7に示される構造クロスチャンネル充填要素の層のエキスパンドメタル・シートの概略平面図である。この平面図は上述したように得られる。
【0111】
図9が、表面の面積のための多様な表現を区別する方法を説明するための、充填物層の断面の概略図を示す。図9aが、構造充填要素12の一般的な層の断面を示す。分離要素42を形成する材料が黒線によって表され、対して白い部分が層32、32’内の開口部40、40’を表す。各々の黒い部分が分離要素42を通る断面である。黒線の厚さが層材料厚さsを表す。図8bから8dでは、この層上の面積が、層の外形に従う細線のみによって表される。構造充填物層32、32’の物理的面積A図9bに示される。これは、そのすべての分離要素42の選択した一方側で測定された表面の合計値である。分離要素42の縁部48、48’(標準の幅sを有する)はこの面積に寄与しない。むしろ、Aは物理的に存在する表面のみを勘定に入れる。したがって、孔はこの値に寄与しない。構造充填要素12の物理的面積Aは、中に含まれるすべての層32、32’の物理的面積Aの合計値である。図9cが充填物層のシート面積Aを定義する。これは、層内の開口部の面積及び層の物理的面積Aの両方を足し合わせることによって得られる。中に含まれるすべての層32,32’のシート面積Aを足し合わせることにより、構造充填要素12のシート面積Aが得られる。開口部40、40’又は孔が存在しないかのように、層の両側において、図9dで定義されるように層の幾何学的面積Aが合計される。言い換えると、充填物層のシート面積Aに2を掛けることによって幾何学的面積Aが近似的に得られる。その理由は、層の両側が幾何学的面積Aを構成するからである。比面積aは、構造充填要素の幾何学的面積Aを、構造充填要素によって占有されるボリュームVによって割ったものとして定義される。
【0112】
実例及び比較例
図2に示される構造充填要素12を蒸留カラム内で試験した。一般的に知られる標準的な手順により、全還流の条件下で2成分混合物を使用して、充填物ベッドに跨っての圧力降下及び物質移動効率を決定する。特許EP0995958B1が、152kPa(22psiа)の圧力で酸素及びアルゴンを用いるこのような試験を開示している。米国特許第6,874,769(B2)号が、類似沸点の(close-boiling)2成分混合物であるパラキシレン及びオルソキシレンを使用することによる、構造充填要素の試験を開示している。本発明では、この混合物として、同様の理想的な特性の2成分混合物、すなわち、モノクロロベンゼン(低沸点溶剤)及びエチルベンゼン(高沸点溶剤)を使用した。蒸留設備の性能を評価するための他の標準的な類似沸点の理想的な2成分混合物は、U.Onken、W.Arlt、「Recommended Test Mixtures for Distillation Columns」、2nd Ed.1990、The Institution of Chemical Engineers、Rugby、England.ISBN0-85295-248-1に明記されている。
【0113】
カラムの動作中に適切な液体レベルを維持するために、蒸留カラムの底部に十分な量の2成分混合物を充填した。再沸器が始動され、液体混合物の一部が継続的に蒸発し、蒸気がカラムの頭部に向かって上昇した。蒸気の流量は係数Fを用いて表され得、一般に、再沸器の又はカラム・ヘッドにある凝縮装置のエネルギー・バランスを介して間接的に決定される。凝縮装置が蒸気を冷却し、その結果、蒸気が凝結して液体に戻った。好適な全還流の条件下で、全量の液体が充填物ベッドの頂部に送り戻され、そこで、液体が分散装置により分散された。分散装置は、通常、均等に離間された1組のオリフィスを提供している、液体を受け取るためのチャンネルを有するデバイスであり、これらの均等に離間された1組のオリフィスを通って、液体が下方にゆっくりと流れて構造充填物ベッドの頂部側の充填物の上に到達する。構造充填物ベッドを通ってゆっくりと流れた後で、カラムの底部において又はベッドの底部において収集装置により全量の液体が収集され、収集装置から液体がカラムの底部に送り戻された。底部において液体が液体プールに合流し、液体プールから液体が再び蒸留した。余剰の不活性ガスを取り除くために真空ポンプとの組み合わせで凝縮装置の冷却の仕事量(cooling duty)を制御することにより、一定の上部圧力pが確立された。
【0114】
再沸器の一定の仕事量(duty)での一定時間の動作後、定常状態条件が達成された。この時点で、充填物ベッドを跨っての圧力降下及びカラムに沿う関連ポイントでの温度が読み取られ、混合物の頂部側の及び底部側のサンプルが、充填物ベッドの頂部にある分散装置から、及び充填物ベッドの下側端部にある収集装置から、又はサンプから、採取された。上部圧力を変化させないように維持しながら、係数F(蒸気流れ)及び充填物ベッドを通る関連の液体流れに影響を与える熱交換量(及び、冷却の仕事量)を変化させることにより、複数の動作ポイントを測定した。複数の上部圧力の設定で、同じ実験を繰り返した。
【0115】
較正したガス・クロマトグラフにより、サンプルの組成を分析した。頂部側の及び底部側のサンプルが、それらが含有する低沸点溶剤の量の分だけ、変化した。底部側のサンプルよりも頂部側のサンプルでより多くの低沸点溶剤つまり低い沸騰温度を有する合成物が見つかった。2成分の組成が判明した後、1m当たりの理論段数(NTSM)を決定するためにFenske(M.R.Fenske、Ind、Engng.Chem.24、482頁、1932年)による方程式を適用した。場合によっては、理論段相当高さと呼ばれる逆数値HETPが使用される。
HETP=1/NTSM
【0116】
高NTSM(又は、低HETP)は良好な物質移動効率を意味する。
【0117】
係数Fは:
F=v・√ρ
によって定義され、vが上昇する蒸気の平均速度であり、この平均速度が、再沸器でのエネルギー・バランスを介して質量流量から決定され得る。第2の変数ρが関連の蒸気/液体の平衡状態における蒸気密度である。カラムに沿っての圧力及び温度の変化により、流体の蒸気密度及び他の物理的特性がカラムに沿って変化したが、2成分混合物のための関連情報も入手可能である。このような変数は、係数Fの適切な定義を選択することを必要とする。これは、充填物ベッドの頂部及び底部での条件下で有功となる特性により、決定され得る。別法として、ベッド全体にわたっての変化を考慮に入れて平均値が算出され得る。すべての試験に対して同じアプローチが使用されることを条件として、比較を目的として、考えられるアプローチのうちの任意のアプローチが有功となる。
【0118】
大きい係数Fがカラム内で高い流量を意味する。達成可能であるFの値は、通常、充填物の容量を決定するフラッディングによって制限される。場合によっては、Fの代わりに容量係数cが使用され、容量係数cが、液体及び蒸気の密度差の平方根によりFを割ることによって得られる。
【0119】
充填物ベッドにわたっての圧力降下が実験の別の関連結果であった。圧力降下が、充填物ベッドの頂部及び底部における圧力読取値の差をベッド高さHで割ったものとして得られた:
ΔP/Δz=(ptop-pbottom)/H
【0120】
本実例及び比較例では、P1-250、R-250、P2-500、P3-500、及びR-500と名付けられた5種類の構造充填要素が使用された。構造充填要素P1-250及びP2-500が、本発明による層で作られたクロスチャンネル波形充填物であったのに対して、構造充填要素P3-500、R-250、及びR-500が、本発明によるものではない構造充填要素であった。より具体的には、構造充填要素R-250及びR-500が、Mellapak 250.Y及びMellapak 500.Xの名称で市場に流通している、GB1,569,828及び米国特許第4,981,621号で開示されているような、穿孔(層の約10%の空隙率に繋がる)及び表面テクスチャリングを有する既知の標準的なクロスチャンネル波形充填物であった。すべての構造充填要素が約200mmの高さを有するものであった。上で言及した構造充填要素の関連パラメータを表面1にまとめる。
【表1】
【0121】
「実例1及び比較例1」
本発明による構造充填要素P1-250及び本発明によるものではない基準の構造充填要素R-250が、p=960hPa(960mbar)(大気に近い)及びp=100hPa(100mbar)の上部圧力において、モノクロロベンゼン及びエチルベンゼンを使用して、全還流で、1mの内径を有する蒸留カラム内で試験された。充填物ベッドが4.3mの高さを有するものであった。得られた効率曲線が図10及び図11に示される。両方の事例で、示される本発明による構造充填要素P1-250が、基準の構造充填要素R-250と比較して、より高い物質移動効率(より高いNTSM)、及び係数Fによって特徴付けられるわずかに増大した容量も示した(効率が急激に低下する)。注目すべきこととして、及び驚くべきこととして、基準の構造充填要素R-250より30%低い材料使用である(20%低い物理的面積Aを有する)構造充填要素P1-250が、より良好な物質移動の結果を達成する。
【0122】
両方の構造充填要素の圧力降下が図12に示される。これらの圧力降下は非常に類似するものであった。したがって、本発明による構造充填要素P1-250は低い係数Fにおいてより高い圧力降下を有するものであったが、勾配がより緩やかなものであった。これにより、この新しい充填物に容量の利点が与えられた。P-250は、高い流量においてはより低い圧力降下を有するものであった。
【0123】
「実例2及び比較例2から3」
本発明による構造充填要素P2-250及び基準の構造充填要素R-500が、p=960hPa(960mbar)及びp=100hPa(100mbar)の上部圧力において、モノクロロベンゼン及びエチルベンゼンを使用して、全還流で、0.25mの内径を有するカラム内で試験された。さらに、構造充填要素P3-500が試験された。P2-500に類似するが、構造充填要素P3-500は、重要な幾何学的パラメータが本発明で明記される数値範囲から外れる値に設定される程度に異なるものであった。より具体的には、構造充填要素P3-500の場合、延伸方向に対して垂直に測定される隣接する開口部の間の距離u1と分離要素u/bの平均幅との間の比が7.2であり、層材料厚さに対しての分離要素の平均幅の比b/sが7であった。つまり、これらの比の両方が、本発明において上記で明記される数値範囲から外れるものであった。P2-500及びP3-500を用いる充填物ベッドが2.4mの高さを有し、基準のR-500を用いる充填物ベッドが2.6mの高さを有するものであった。
【0124】
これらの構造充填要素のための得られた効率曲線が図13及び図14に示され、これらの構造充填要素のための得られた圧力降下が図15に示される。
【0125】
960hPa(960mbar)の上部圧力及び100hPa(100mbar)の上部圧力の両方において構造充填要素P3-500及びR-500(本発明によるものではない)と比較した場合の、本発明による構造充填要素P2-500のより良好な効率が、図13及び14から容易に推論され得る。低い上部圧力において物質移動効率の隔たりが特に見受けられる。興味深いことに、P3-500は良好な容量を有するが、効率はR-500の効率より有意に低い。両方の構造充填要素P2-500及びP3-500が、初期状態において、R-500より大きい圧力降下を有するが、Fが増大すると、これらの構造充填要素が恩恵を受け、このグラフでは両方の容量がより高いことも認識され得る。
【符号の説明】
【0126】
10 物質移動カラム/蒸留カラム
12 構造クロスチャンネル充填要素
14、14’ 構造充填要素のベッド
16、16’ 分散装置
18 保持デバイス
20 収集装置
22 パイプ
24、24’ 波形シート
26 層の山
26’ 隣接する層の山
28 谷
30 チャンネル/オープンスペース
32、32’ 層
33、33’ 波形シートの終端部分
34 ディンプル
36 ディンプルの谷の壁
38 グリッド
40、40’、40’’、40’’’ グリッドの開口部
42 グリッドの分離要素
44a、44b、44c 異なる角度で撮られた開口部の写真画像
46 分離要素セクション
48、48’ 分離要素セクションの縁部
50 開口部セクション
52 中央平面
54、54’ 波形層で作られた構造充填要素の最小変形部分を決定する上側及び下側の制限平面
A 開口部の断面積
開口部の辺長
開口部の第2の辺長
充填物又は層の比面積
開口部セクションの面積
幾何学的面積
物理的面積
シート面積
b 分離要素の平均幅
分離要素セクションの隣接する縁部の間の最短距離
d 開口部の平均水力直径
分離要素セクションの長さ
開口部のより長い固有長さ
開口部のより短い固有長さ
g グリッド厚さ
s 層材料厚さ
D 少なくとも2つの層/波形シートのうちの少なくとも隣接する層/波形シートの間の最大距離
P 開口部の周長
開口部の周長セクションの直線
SD エキスパンドメタル・シートの延伸方向
エキスパンドメタル・シートの延伸方向に対して垂直な方向において隣接する2つの開口部の間の距離
エキスパンドメタル・シートの延伸方向において隣接する2つの開口部の間の距離
V 通常は垂直方向である長手方向
W 層又は波形シートの平均層幅
z 層の基準長さ
z’ 写真画像の平面図上での基準長さ
α 長手方向に対しての各々の山及び各々の谷の角度
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10
図11
図12
図13
図14
図15